(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018647
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240201BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/02 645Z
B60R16/02 660H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122099
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤江 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】茂刈 武志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿治
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA06
5K033BA06
5K033BA08
5K033DA01
5K033DB25
5K033EA02
5K033EA04
(57)【要約】
【課題】スレーブノードを異常から保護する。
【解決手段】第1遮断部76は、遮断条件が成立すると、電源8からスレーブノード7を経由して車載デバイス60に至る電流経路CPを遮断する遮断状態となる。第2遮断部77は、電流経路CPにおいて電源8と第1遮断部76との間に設けられる。スレーブノード7は、第1遮断部76の状態を示す状態情報と、電流経路CPを流れる電流の電流値を示す電流情報とを、マスタノード2に送信する。マスタノード2は、状態情報および電流情報に基づいて、第1遮断部76および第2遮断部77を制御するための指令をスレーブノード7に送信する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載デバイスを制御する車両制御システムであって、
前記車載デバイスと前記車両に搭載された電源とに接続され、前記電源から供給される電源電圧に基づいて操作信号を生成し、前記操作信号を前記車載デバイスに出力するスレーブノードと、
通信ネットワークを経由して前記スレーブノードと通信を行うことで、前記スレーブノードを制御するマスタノードとを備え、
前記スレーブノードは、
前記操作信号の生成および出力のための経路であり前記電源から該スレーブノードを経由して前記車載デバイスに至る電流経路に設けられ、予め定められた遮断条件が成立すると、前記電流経路を遮断する遮断状態となる第1遮断部と、
前記電流経路において前記電源と前記第1遮断部との間に設けられ、前記電流経路を遮断する遮断状態にすることが可能な第2遮断部と、
前記電流経路を流れる電流の電流値を検出する電流検出部とを有し、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部の状態を示す状態情報と、前記電流検出部により検出された電流値を示す電流情報とを、前記マスタノードに送信し、
前記マスタノードは、前記スレーブノードから送信された前記状態情報および前記電流情報に基づいて、前記第1遮断部および前記第2遮断部を制御するための指令を前記スレーブノードに送信する
車両制御システム。
【請求項2】
請求項1の車両制御システムにおいて、
前記マスタノードは、前記状態情報に示された前記第1遮断部の状態が前記遮断状態である場合に、前記第1遮断部を前記遮断状態にして前記操作信号の生成を停止することを指示する指令を前記スレーブノードに送信する
車両制御システム。
【請求項3】
請求項2の車両制御システムにおいて、
前記マスタノードは、前記第1遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信した後に、前記スレーブノードから送信された前記電流情報に示された電流値が予め定められた電流異常閾値を上回る場合に、前記第2遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信する
車両制御システム。
【請求項4】
請求項1の車両制御システムにおいて、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部が異常状態であることを検出する異常検出部を有し、前記異常検出部により前記第1遮断部の異常状態が検出されると、前記第1遮断部が異常状態であることを示す異常通知情報をマスタノードに送信し、
前記マスタノードは、前記スレーブノードから送信された異常通知情報に応答して、前記第2遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信する
車両制御システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つの車両制御システムにおいて、
前記遮断条件は、前記電流検出部により検出された電流値が予め定められた過電流閾値を上回るという条件を含む
車両制御システム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つの車両制御システムにおいて、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部の温度を検出する温度検出部を有し、
前記遮断条件は、前記温度検出部により検出された温度が予め定められた過熱閾値を上回るという条件を含む
車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車載デバイスを制御する車両制御システムには、マスタスレーブ方式を採用したものがある。例えば、特許文献1には、マスタスレーブ方式の車室照明システムが開示されている。このシステムでは、複数のスレーブECUの各々は、車両に搭載されるマスタECUと多重通信を行い、マスタECUの指示に従って光源を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両制御システムでは、スレーブノードを異常(例えば過電流や過熱など)から保護することが求められる。しかしながら、特許文献1には、スレーブノードを異常から保護することについては、開示も示唆もない。
【0005】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スレーブノードを異常から保護することが可能な車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、車両に搭載された車載デバイスを制御する車両制御システムに関し、この車両制御システムは、
前記車載デバイスと前記車両に搭載された電源とに接続され、前記電源から供給される電源電圧に基づいて操作信号を生成し、前記操作信号を前記車載デバイスに出力するスレーブノードと、
通信ネットワークを経由して前記スレーブノードと通信を行うことで、前記スレーブノードを制御するマスタノードとを備え、
前記スレーブノードは、
前記操作信号の生成および出力のための経路であり前記電源から該スレーブノードを経由して前記車載デバイスに至る電流経路に設けられ、予め定められた遮断条件が成立すると、前記電流経路を遮断する遮断状態となる第1遮断部と、
前記電流経路において前記電源と前記第1遮断部との間に設けられ、前記電流経路を遮断する遮断状態にすることが可能な第2遮断部と、
前記電流経路を流れる電流の電流値を検出する電流検出部とを有し、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部の状態を示す状態情報と、前記電流検出部により検出された電流値を示す電流情報とを、前記マスタノードに送信し、
前記マスタノードは、前記スレーブノードから送信された前記状態情報および前記電流情報に基づいて、前記第1遮断部および前記第2遮断部を制御するための指令を前記スレーブノードに送信する。
【0007】
前記の構成では、第1遮断部を設けることにより、遮断条件が成立した場合に、マスタノードからの指示を待たずに電流経路(電源からスレーブノードを経由して車載デバイスに至る電流経路)を遮断することができる。これにより、電流経路を迅速に遮断することが要求される異常(例えば過電流や過熱など)からスレーブノードを保護することができる。
【0008】
また、前記の構成では、第1遮断部とともに第2遮断部を設けることにより、第1遮断部の異常が原因で第1遮断部が遮断状態にならない場合であっても、第2遮断部を遮断状態にすることで電流経路を遮断することができる。これにより、第1遮断部が遮断状態にならない場合であっても、スレーブノードを異常から保護することができる。
【0009】
なお、前記車両制御システムにおいて、
前記マスタノードは、前記状態情報に示された前記第1遮断部の状態が前記遮断状態である場合に、前記第1遮断部を前記遮断状態にして前記操作信号の生成を停止することを指示する指令を前記スレーブノードに送信してもよい。
【0010】
前記の構成では、遮断条件が成立して第1遮断部が遮断状態となった場合に、第1遮断部を遮断状態にすることをマスタノードがスレーブノードに指示している状態にすることができる。これにより、マスタノードによる指示に応答してスレーブノードが処理をしている状態(システム上の整合がとれた状態)にすることができ、その後に行われるマスタノードによるスレーブノードの制御を円滑にすることができる。
【0011】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記マスタノードは、前記第1遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信した後に、前記スレーブノードから送信された前記電流情報に示された電流値が予め定められた電流異常閾値を上回る場合に、前記第2遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信してもよい。
【0012】
前記の構成では、第1遮断部の異常が原因で第1遮断部が遮断状態にならずに電流経路に電流が流れている場合に、第2遮断部を遮断状態にすることができる。これにより、第1遮断部が遮断状態にならない場合であっても、スレーブノードを異常から保護することができる。
【0013】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部が異常状態であることを検出する異常検出部を有し、前記異常検出部により前記第1遮断部の異常状態が検出されると、前記第1遮断部が異常状態であることを示す異常通知情報をマスタノードに送信してもよく、
前記マスタノードは、前記スレーブノードから送信された異常通知情報に応答して、前記第2遮断部を前記遮断状態にすることを指示する指令を前記スレーブノードに送信してもよい。
【0014】
前記の構成では、第1遮断部が異常状態である場合に、第2遮断部を遮断状態にすることができる。これにより、第1遮断部が異常状態である場合に、スレーブノードを異常から保護することができる。
【0015】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記遮断条件は、前記電流検出部により検出された電流値が予め定められた過電流閾値を上回るという条件を含んでもよい。
【0016】
前記の構成では、スレーブノードを過電流から保護することができる。
【0017】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記スレーブノードは、前記第1遮断部の温度を検出する温度検出部を有してもよく、
前記遮断条件は、前記温度検出部により検出された温度が予め定められた過熱閾値を上回るという条件を含んでもよい。
【0018】
前記の構成では、スレーブノードを過熱から保護することができる。
【発明の効果】
【0019】
ここに開示する技術によれば、スレーブノードを異常から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】マスタノードとスレーブノードの機能分配の一例を示す概念図である。
【
図3】マスタノードの構成例を示すブロック図である。
【
図4】スレーブノードの構成例を示すブロック図である。
【
図5】ドライバ群の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図6】車両制御システムの要部の構成例を示すブロック図である。
【
図8】第1保護処理について説明するためのフローチャートである。
【
図9】第2保護処理について説明するためのフローチャートである。
【
図10】第3保護処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0022】
なお、本開示において、「システム」「ユニット」「モジュール」「ノード」という用語が示す構成の一部または全部は、特定用途向け集積回路(Application specific integrated circuit:ASIC)またはプログラマブルロジックアレイ(Programmable logic array:PLA)などの専用回路により実現され得る。また、上記の一部または全部は、コンピュータで読み取り可能な命令(例えばプログラム)を実行して、所定の処理ステップを実行することにより特定の機能を実行させるプロセッサ回路により実現され得る。
【0023】
また、以下の説明において、「車載デバイス」は、車両に搭載されたデバイスのことである。車載デバイスは、センサおよび操作対象となる部品(例えばモータやLEDなど)の少なくとも一方を有する。
【0024】
(実施形態)
図1は、実施形態の車両制御システムの構成の一例を示す。
図1に示すように、車両制御システム1は、車両CAに搭載されており、マスタノード2と複数のスレーブユニットとが車載の通信ネットワークを介して接続された構成となっている。
【0025】
図1の例では、複数のスレーブユニットとして、コンビスイッチユニット4、左右のサイドミラーユニット5、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、オーバーヘッドコンソールユニット32、左右のシートヒータユニット33、および、左右のドアラッチユニット34が例示されている。各スレーブユニットには、それぞれに共通の構成を有するスレーブノード7(
図4参照)が搭載されている。なお、説明の便宜上、サイドミラーユニット5、ドアラッチユニット34、シートヒータユニット33は、それぞれ左右で共通の符号を付している。
【0026】
マスタノード2と複数のスレーブユニット(この例では、コンビスイッチユニット4、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、右のサイドミラーユニット5、右のシートヒータユニット33、右のドアラッチユニット34)の各々に設けられたスレーブノード7は、通信回線B1でバス接続されている。また、マスタノード2と他の複数のスレーブユニット(この例では、オーバーヘッドコンソールユニット32、左のサイドミラーユニット5、左のシートヒータユニット33および左のドアラッチユニット34)の各々に設けられたスレーブノード7は、通信回線B2でバス接続されている。以下の説明では、通信回線B1,B2を総称して「通信回線B」と記載する。通信回線Bは、通信ネットワークを構成する。
【0027】
通信回線Bは、例えば、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に準拠した通信回線である。CXPIはイベント型の通信プロトコルの一例である。なお、通信方式は、CXPIに限定されず、他の通信方式(有線方式、無線方式を問わない)であってもよい。また、通信ネットワークに使用される通信回線の本数は、特に限定されない。また、通信回線の途中に、通信中継用のHUB(図示省略)やECU(図示省略)などが設けられてもよい。
【0028】
〔マスタノードとスレーブノードの機能分配〕
図2は、車両CAの行動に対するマスタノード2とスレーブノード7の機能分配の一例を示す概念図である。
図2では、車両CAの動作工程を、「認知工程Iz」と「判断工程Pz」と「操作工程Oz」とに分け、それぞれの工程を細分化している。そして、マスタノード2に分配された機能20を破線で囲み、スレーブノード7に分配された機能30を実線で囲んでいる。
【0029】
以下では、認知工程Izと判断工程Pzと操作工程Ozの各々において実行される処理について、晴天から雨天への天気の変化(以下では単に「天気の変化」と記載)が起こった場合の例を交えて説明する。
【0030】
〔認知工程〕
認知工程Izでは、車載デバイスに搭載されたセンサの出力信号に基づいて、センサにより取得された情報を認知する。なお、本開示において、「センサ」という用語は、温度,電圧,電流などの各種の物理量の測定・検知をするセンサに加えて、各種の操作を受け付けるスイッチ、車内外を撮像するカメラ、車外の物標等を認識するレーダ、機械電気変換信号を出力するデバイスなどを含む概念で用いられる。センサは、車両の挙動情報、乗員の操作情報、乗員の状態情報、外部環境情報、アクチュエータを流れる電流の情報、アクチュエータに印加される電圧の情報、故障状態情報などを取得する。以下では、これらを総称して「検知情報」と記載する。
【0031】
認知工程Izは、スレーブノード7において実行される工程Iz2,Iz3と、マスタノード2において実行される工程Iz4,Iz5を含む。なお、以下では、車載デバイスがスレーブノード7内に実装されている例について説明するが、車載デバイスは、スレーブノード7の外部に設けられてもよい。
【0032】
まず、工程Iz1において、車載デバイスに搭載されたセンサにおいて何らかの検知情報が検知される。前述の「天気の変化」の例では、センサとしての雨滴センサおよび受光センサ(図示省略)において検知情報(例えば、雨滴の付着、受光量の変化など)が検知される。
【0033】
次の工程Iz2において、スレーブノード7は、後述するポートPを介してセンサの出力を受ける。上記のセンサの出力には、例えば、センサの検知信号、センサで検出される電流,電圧,温度などの物理量、機械電気変換信号などが含まれる。
【0034】
次の工程Iz3において、スレーブノード7は、センサ出力に対してシグナル化処理およびデータ化処理を行い、これらの処理により得られた信号を検知信号としてマスタノード2に送信する。スレーブノード7からマスタノード2に送信される検知信号は、CXPIに準拠した信号である。
【0035】
なお、シグナル化処理は、例えば、センサから出力された情報を「優位な情報」と「無意な情報」とに分け、有意な情報のみを取り出す処理である。シグナル化処理の例としては、チャタリングフィルタなどのフィルタリング処理が挙げられる。データ化処理は、例えば、離散化された情報を連続処理に適した情報に加工する処理である。データ化処理の例としては、後段の情報化処理においてPID制御などの連続処理を行う場合に、離散データに対して移動平均処理を行うことで連続信号を得るという処理が挙げられる。
【0036】
すなわち、スレーブノード7は、工程Iz2,Iz3において、入力情報(検知情報)の具体的内容についての認知および判断を行わずに、センサの出力を所定の信号形式に変換し、検知信号としてマスタノード2に送信する。
【0037】
次の工程Iz4において、マスタノード2は、スレーブノード7から送信された検知信号を受信する。次の工程Iz5(情報化処理)において、マスタノード2は、その検知信号の経時変化と後述する接続データとに基づいて、センサからスレーブノード7に入力された検知情報の具体的な内容を認知する。前述の「天気の変化」の例では、情報化処理により、例えば、「フロントガラスを透過する光度が所定値未満になって車外が暗くなっており、且つ、雨が降ってきた」という認知情報が得られる。なお、以下では、認知工程で認知された情報を「認知情報」と記載する。
【0038】
〔判断工程〕
判断工程Pzでは、認知工程Izにおいて認知された認知情報に基づいて車両CAの行動や対応を決定する。判断工程Pzの構成要素である工程Pz1~Pz4は、マスタノード2において実行される。
【0039】
具体的には、工程Pz1において、マスタノード2は、認知工程Izにおいて認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動の目的を決定する。前述の「天気の変化」の例では、例えば「車外環境が暗くなりかつ雨が降ってきた場合に対応したふるまいをする」という目的が決定される。
【0040】
次の工程Pz2において、マスタノード2は、工程Pz1において決定された目的を達成するための行動計画を設定する。なお、このとき、代替手段を含めた行動計画が列挙される。例えば、行動計画をリスト化した行動リストが生成される。前述の「天気の変化」の例では、「車外環境が暗くかつ降雨時のふるまい」に対応した行動計画の中に、「ワイパを作動する」、「車両CAのオートライト機能をオンにする」、「車両CAの上限速度を制限する」といった行動計画が含まれる。
【0041】
次の工程Pz3において、マスタノード2は、行動計画において列挙された行動の中で実際に実行に移す行動を決定する。例えば、マスタノード2は、行動リストの中から実際に実行させる行動を選択する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパを作動する」および「車両のオートライト機能をオンにする」という行動が、実行対象の行動として選択される。
【0042】
次の工程Pz4において、マスタノード2は、工程Pz3において決定された行動を実現するための手段(対応手段)を選択する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパを作動する」および「車両のオートライト機能をオンにする」という行動に対して、ワイパユニット(図示省略)と、ヘッドライトユニット(図示省略)と、テールライトユニット(図示省略)とが選択される。
【0043】
〔操作工程〕
操作工程Ozは、マスタノード2において実行される工程Oz1,Oz2と、スレーブノード7において実行される工程Oz3~Oz5を含む。
【0044】
まず、工程Oz1において、マスタノード2は、判断工程Pzにおいて決定された行動や対応を実現するための操作対象およびその操作量を決定する。ここで、操作対象は、行動や対応を実現するために操作する対象物を広く含むものとし、例えば、照明デバイスとアクチュエータを含む。照明デバイスは、前照灯、インジケータ、ターンランプなどに用いられる各種LEDや電球などを含む。アクチュエータは、ワイパ、ミラー駆動用のモータといったボディ系デバイスと、エンジン、ブレーキなどに用いられる動力系デバイスとを含む。
【0045】
前述の「天気の変化」の例では、例えば、ワイパユニットの操作内容として、フロントガラス用のワイパをオンすることと、そのワイパの操作スピードおよび操作間隔とが決定される。また、ヘッドライトユニットおよびテールライトユニットの操作内容として、ヘッドライトおよびテールライトを点灯させることと、その照度とが決定される。
【0046】
次の工程Oz2において、マスタノード2は、(1)操作対象が接続されたポートP(以下では「操作ポートP」と記載)を接続データに基づいて特定し、(2)操作ポートPの出力内容を命令する命令コードを生成し、(3)その命令コードが含まれた操作命令信号を操作ポートPが設けられたスレーブノードに送信する処理を実行する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、マスタノード2は、ワイパが接続された操作ポートPの出力内容を命令する命令コード(操作命令信号)をワイパユニット(図示省略)に送信し、ヘッドライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す命令コードをヘッドライトユニット(図示省略)に送信し、テールライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す命令コードをテールライトユニット(図示省略)に送信する。なお、マスタノード2からスレーブノード7に送信される操作命令信号は、CXPIに準拠した信号である。
【0047】
各スレーブノード7では、マスタノード2から送信された命令コードを受信し、その命令コードに基づく操作ポートPから命令コードに基づく操作信号を出力する。
【0048】
具体的には、スレーブノード7は、命令コードのプロトコル変換および/または指定されたレジスタの参照などを経て、命令コードに基づいて操作ポートPから出力する信号を生成する(工程Oz3)。そして、命令コードで指定された操作ポートPから車載デバイス(具体的には車載デバイスに含まれる操作対象となるデバイス)に対して操作信号を出力する(工程Oz4)。これにより、(1)ワイパユニットではワイパが駆動され、(2)ヘッドライトユニットではヘッドライトが点灯され、(3)テールライトユニットではテールライトが点灯される。
【0049】
次に、
図3および
図4を参照して、マスタノード2およびスレーブユニットの構成について詳細に説明する。
【0050】
〔マスタノード〕
図3は、マスタノード2の構成の一例を示す。
図3に示すように、マスタノード2は、通信モジュール21と、認知モジュール22と、判断モジュール23と、操作モジュール24と、メモリ25とを備える。
【0051】
マスタノード2は、例えば、1つまたは複数の電子制御ユニット(ECU)により構成される。電子制御ユニットは、単一のIC(Integrated Circuit)を用いて構成されてもよいし、複数のICを用いて構成されてもよい。また、IC内には、単一のコアまたはダイが設けられてもよいし、連携する複数のコアまたはダイが設けられてもよい。
【0052】
通信モジュール21は、通信回線Bを介して各スレーブノード7からの信号を受信したり、各スレーブノード7に信号を送信したりする機能を有する。
【0053】
メモリ25は、それぞれのスレーブノード7に対応するコンフィグデータ(以下では「マスタコンフィグデータ」と記載)が格納されている。
【0054】
マスタコンフィグデータは、それぞれのスレーブノード7に設定される初期コンフィグデータと、接続データとを含む。言い換えると、マスタノード2は、それぞれのスレーブノード7に設定されている初期コンフィグデータを保有している。接続データは、スレーブノード7の各ポートPと車載デバイスのデバイスポートとの接続関係を示すデータである。言い換えると、接続データは、スレーブノード7の各ポートPに、車載デバイスのどういった機能のデバイスポートが接続されているかを示すデータである。
【0055】
なお、メモリ25は、上記ECUを構成するICに内蔵された内部メモリであってもよく、上記ICに外付けされた外付けメモリであってもよい。また、メモリには、例えば、上記ICに搭載されたCPUを動作させるためのプログラムが記憶されてもよく、CPUでの処理結果などの情報が記憶されてもよい。
【0056】
認知モジュール22は、前述の認知工程Izのうちの工程Iz4,Iz5の認知処理を実行する。具体的には、認知モジュール22は、メモリに格納された接続データと、スレーブノードから受信される検出信号(例えば検出信号の経時変化)とに基づいて、車載デバイス(具体的には車載デバイスに含まれるセンサ)において取得された検知情報を認知する認知処理を実行する。なお、検出信号は、スレーブノード7のどのポートにおいてどのようなセンサ出力を入力したのかを示す。接続データは、スレーブノード7のどのポートにどの車載デバイスが接続されているのかを示す。
【0057】
この例では、認知モジュール22は、デコードモジュール221と、情報化モジュール222とを含む。デコードモジュール221は、スレーブノード7から受信した検知信号のデコード処理をする。情報化モジュール222は、前述の工程Iz5の情報化処理をする。
【0058】
判断モジュール23は、前述の判断工程Pz(具体的には工程Pz1~Pz4)の判断処理を実行する。具体的には、判断モジュール23は、認知モジュール22による認知処理において認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動を決定する。
【0059】
この例では、判断モジュール23は、前述の工程Pz1を実行する目的決定モジュール231と、前述の工程Pz2を実行する行動計画モジュール232と、前述の工程Pz3を実行する行動決定モジュール233と、前述の工程Pz4を実行する対応決定モジュール234とを含む。
【0060】
操作モジュール24は、操作工程Ozのうちの工程Oz1,Oz2の処理を実行する。具体的には、操作モジュール24は、判断処理で決定された車両の行動に対応する車載デバイスを特定し、その特定された車載デバイス(具体的には車載デバイスに含まれる操作対象となるデバイス)の操作を命令する命令コードを生成して、その特定されたデバイスが接続されたスレーブノード7に送信する。
【0061】
この例では、操作モジュール24は、前述の工程Oz1を実行する操作決定モジュール241と、前述の工程Oz2を実行する命令生成モジュール242とを含む。
【0062】
〔スレーブユニット〕
図4は、
図1に例示したスレーブユニットのうち、コンビスイッチユニットおよび右のサイドミラーユニット5(以下では「右サイドミラーユニット5」と記載)の構成例を示す。
【0063】
図4に示すように、コンビスイッチユニット4および右サイドミラーユニット5には、それぞれ、共通のスレーブノード7が設けられている。各スレーブノード7には、車載デバイスを接続するためのポートPが12個ずつ設けられている。
【0064】
この例において、コンビスイッチユニット4では、ポートP1~P4にワイパを操作するワイパスイッチ41、ポートP5~P9にライトを操作するライトスイッチ42、ポートP10,P11にターンライトを操作するターンスイッチ43がそれぞれ接続される。P12はリザーブ用のポートである。ワイパスイッチ41、ライトスイッチ42およびターンスイッチ43は、センサのみを含む車載デバイスの一例である。
【0065】
同様に、右サイドミラーユニット5では、ポートP1,P2にターンライト用のLED51(以下では「ターンLED51」と記載)、ポートP3~P6にインジケータ用のLED52、ポートP7~P12にミラー格納用のモータ53がそれぞれ接続される。ターンLED51、LED52、モータ53は、センサと操作対象となるデバイスとの両方を有する車載デバイスの一例である。
【0066】
〔スレーブノード〕
各スレーブノード7は、それぞれ、通信モジュール71と、レジスタ72と、セレクタ73と、ドライバ群74とを備える。
【0067】
通信モジュール71は、通信回線Bを介してマスタノード2の通信モジュール21と接続され、CXPIに準拠した双方向通信ができるように構成されている。通信モジュール71は、例えば、通信回線Bに接続される入出力回路、入出力回路から出力する信号を生成するエンコーダ、入出力回路から出力する信号を変換するデコーダなどを備える。なお、通信モジュール71の具体的な回路構成については、従前から知られている構成を適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0068】
ドライバ群74は、複数のポートPに1対1接続された複数のドライバユニット740(
図4では図示省略)を備える。例えば、スレーブノード7に12個のポートPが設けられている場合、ドライバ群74には、12個のドライバユニット740が設けられる。
【0069】
ドライバユニット740は、外部設定により入力ポートとして使用したり、出力ポートとして使用したりできるIO回路である。ドライバユニット740として、例えば、従来から知られている汎用入出力回路(GPIO : General Purpose Input/Output)を適用することができる。
【0070】
〔ドライバユニット〕
図5には、ドライバユニット740の構成例を示す。
図5に示すように、ドライバユニット740は、ポートPに接続された出力回路743と、出力レジスタ742の設定値に基づいて出力回路743を駆動するドライバ回路741とを備える。出力レジスタ742の設定値は、OUT端子から入力された設定信号により書き換えが可能になっている。
【0071】
ドライバユニット740は、ポートPへの入力を受ける入力回路745と、入力回路745に受けた入力を検出信号に変換するレシーバ回路746とを備える。レシーバ回路746は、ADコンバータ747と、比較器748とを備える。ADコンバータ747は、ポートPの属性がアナログ入力の場合に、ポートPの入力をアナログデジタル変換してAI端子から出力する。比較器748は、ポートPの属性がデジタル入力の場合に、ポートPの入力をデジタル信号としてDI端子から出力する。
【0072】
ドライバユニット740は、コンフィグ信号に基づいて、各構成要素の設定が変更できるようになっている。例えば、ドライバユニット740は、コンフィグ信号に基づいてレシーバ回路746のデジタルフィルタのフィルタ定数が変更できるようになっている。
【0073】
セレクタ73は、レジスタ72に記録された各ポートPの属性情報に基づいて、それぞれのドライバユニット740の端子(OUT端子、AI端子、DI端子)のうち、どの端子を有効にするのかを選択する機能を有する。
【0074】
AI端子が有効にされた場合、ポートPからアナログ入力信号が入力される。この場合、アナログ入力信号は、入力回路745およびADコンバータ747でデジタル信号に変換されてAI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0075】
DI端子が有効にされた場合、ポートPからデジタル入力信号が入力される。この場合、デジタル入力信号は、入力回路745および比較器748を介してDI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0076】
OUT端子が有効にされた場合、命令コードに基づく出力設定データが、ドライバ回路741の出力レジスタ742に反映される。ドライバ回路741は、出力回路743をドライブして、出力レジスタ742の出力設定データに基づく操作信号(デジタル信号、アナログ信号、または、PWM信号のいずれか)をポートPから出力させる。
【0077】
ここで、出力設定データは、例えば、マスタノード2から受信された命令コードに基づいて、セレクタ73内の論理回路(図示省略)を用いたり、レジスタ72の値を用いたりして生成される。言い換えると、命令コードに基づくポートPに接続されたドライバ回路741の出力レジスタ742に、命令コードに基づく出力設定がされる。そして、出力回路743は、その出力設定データに基づいて、ポートPを介して命令コードに基づく操作信号を出力する。命令コードは、例えば、操作対象が接続されたポートPの識別データと、その識別データに紐づけられた各ポートPの出力設定とを含むコードである。
【0078】
なお、セレクタの具体的な回路構成については、従来から知られている構成を用いることができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0079】
レジスタ72には、スレーブノード7毎に設定されたコンフィグデータ(以下では「スレーブコンフィグデータ」と記載)が格納される。コンフィグデータは、各ポートPの属性データを含む。
【0080】
スレーブコンフィグデータは、例えば、(1)各ポートPの属性データ、(2)属性が入力であるポートP(以下では単に「入力ポートP」と記載)のフィルタ定数、(3)入力ポートPへの入力信号に基づくWakeUp設定データ、(4)属性が出力であるポートP(以下では単に「出力ポートP」と記載)の出力設定データを含む。
【0081】
本開示では、スレーブコンフィグデータの初期設定情報のことを「初期コンフィグデータ」と記載する。初期コンフィグデータは、マスタノード2から所定のタイミング(例えば電源投入時)でスレーブノード7に送信するようにしてもよいし、予め各スレーブノード7に設定されていてもよい。
【0082】
〔車両制御システムの要部〕
次に、
図6を参照して、実施形態の車両制御システム1の要部について説明する。車両制御システム1は、車両に搭載された車載デバイス60を制御する。車両制御システム1は、スレーブノード7と、マスタノード2とを備える。
【0083】
スレーブノード7は、車載デバイス60と、車両に搭載された電源8とに接続される。例えば、車載デバイス60は、シートヒータである。電源8は、直流の電源電圧を供給する直流電源である。例えば、電源8は、車両に搭載されたバッテリである。なお、
図1および
図4では、電源8の図示を省略している。
【0084】
スレーブノード7は、電源8から供給される電源電圧に基づいて操作信号を生成し、操作信号を車載デバイス60(具体的には車載デバイス60に含まれる操作対象となるデバイス)に出力する。
【0085】
マスタノード2は、通信ネットワーク(この例では通信回線B)を経由してスレーブノードと通信を行うことで、スレーブノード7を制御する。
【0086】
〔スレーブノードの構成〕
図6に示すように、スレーブノード7は、スレーブIC75と、IPD(Intelligent Power Device)76と、電源リレー77とを有する。IPD76の内部には、電流検出回路81、温度検出回路82などが設けられる。なお、
図4では、IPD76と電源リレー77の図示を省略している。
【0087】
〈スレーブIC〉
スレーブIC75は、通信ネットワークを経由してマスタノード2と通信を行う。スレーブIC75は、スレーブノード7の各部を制御することでスレーブノード7の動作を制御する。この例では、スレーブIC75は、
図4に示した通信モジュール71と、レジスタ72と、セレクタ73と、ドライバ群74とを含む。スレーブIC75は、スレーブノード7に設けられるスレーブ制御部の一例である。
【0088】
スレーブIC75は、マスタノード2から送信された各種の指令に応答して動作する。この例では、スレーブIC75は、IPD76に制御信号を出力することでIPD76の動作(状態)を制御する。また、スレーブIC75は、電源リレー77に制御信号を出力することで電源リレー77の動作(状態)を制御する。
【0089】
また、スレーブIC75は、車載デバイス60(具体的には車載デバイス60に含まれるセンサ)から出力された情報およびスレーブノード7の各部において得られた情報を受ける。スレーブIC75は、各種の情報をマスタノード2に送信する。
【0090】
〈IPD〉
IPD76は、電流経路CPに設けられる。電流経路CPは、操作信号の生成および出力のための経路であり、電源8からスレーブノード7を経由して車載デバイス60に至る電流経路である。また、IPD76は、予め定められた遮断条件が成立すると、電流経路CPを遮断する遮断状態となる。IPD76は、第1遮断部の一例である。
【0091】
この例では、IPD76は、スレーブICから出力された制御信号に応答して、オン状態とオフ状態との切り換え(スイッチング動作)を行う。また、IPD76は、遮断条件が成立して遮断状態になると、IPD76が遮断状態であることをスレーブICに通知する。
【0092】
なお、この例では、遮断条件は、後述する電流検出回路81により検出された電流値(電流経路CPを流れる電流の電流値)が予め定められた過電流閾値を上回るという条件を含む。IPD76は、電流経路CPを流れる電流の電流値が過電流閾値を上回ると遮断状態となり、電流経路CPを流れる電流の電流値が過電流閾値を上回らなくなると遮断状態を解除する。
【0093】
〈電源リレー〉
電源リレー77は、電流経路CPにおいて電源8とIPD76との間に設けられる。電源リレー77は、電流経路CPを遮断する遮断状態にすることが可能である。電源リレー77は、第2遮断部の一例である。
【0094】
〈電流検出回路〉
電流検出回路81は、電流経路CPを流れる電流の電流値を検出する。電流検出回路81は、電流検出部の一例である。
【0095】
例えば、電流検出回路81は、電流経路CPに直列接続されたシャント抵抗を含んでもよい。電流検出回路81から出力される信号は、シャント抵抗により得られる電圧値(シャント抵抗の両端の電位差に応じた電圧値)を示す信号であってもよい。なお、「シャント抵抗により得られる電圧値」と「シャント抵抗の抵抗値」とに基づいて、電流経路CPを流れる電流の電流値を導出することが可能である。このような導出は、後述する制御回路85において行われてもよい。シャント抵抗により得られる電圧値は、電流経路CPを流れる電流の電流値を示す情報の一例である。
【0096】
〈温度検出回路〉
温度検出回路82は、IPD76の温度を検出する。IPD76の温度の例としては、IPD76の構成要素が搭載された基板(図示省略)の温度、IPD76の構成要素が収容されるケーシング(図示省略)内の温度などが挙げられる。温度検出回路82は、温度検出部の一例である。
【0097】
〔IPDの構成〕
図7は、IPD76の構成例を示す。IPD76は、電流検出回路81および温度検出回路82の他に、スイッチング要素80と、制御回路85とを有する。
【0098】
〈スイッチング要素〉
スイッチング要素80は、電流経路CPに設けられる。スイッチング要素80は、オン状態とオフ状態とに切り換え可能である。例えば、スイッチング要素80は、絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0099】
スイッチング要素80をオン状態にすると、電流経路CPが導通して電流経路CPに電流が流れる。一方、スイッチング要素80をオフ状態にすると、電流経路CPが遮断されて電流経路CPに電流が流れなくなる。このスイッチング要素80のオン状態とオフ状態との切り換え(スイッチング動作)により、車載デバイス60を操作(駆動)する操作信号が生成される。また、スイッチング要素80がオフ状態に固定されることにより、IPD76が遮断状態となる。
【0100】
〈制御回路〉
制御回路85は、スレーブIC75から出力された制御信号に応答して動作する。制御回路85は、IPD76の各部を制御することでIPD76の動作を制御する。
【0101】
この例では、制御回路85は、スイッチング要素80に制御信号を出力することでスイッチング要素80の動作(状態)を制御する。具体的には、制御回路85は、スレーブICから出力された制御信号に応答して、スイッチング要素80のスイッチング動作を制御する。
【0102】
制御回路85は、IPD76の各部において得られた情報を受ける。この例では、制御回路85は、電流検出回路81により検出された電流値(電流経路CPを流れる電流の電流値)と、温度検出回路82により検出された温度(IPD76の温度)とを取得する。
【0103】
この例では、制御回路85は、電流検出回路81により検出された電流値(電流経路CPを流れる電流の電流値)が過電流閾値を上回るか否かを判定する。
【0104】
電流検出回路81により検出された電流値が過電流閾値を上回ると、制御回路85は、スイッチング要素80をオフ状態に固定し、IPD76が遮断状態であることをスレーブIC75に通知する。これにより、IPD76が遮断状態となるとともに、IPD76が遮断状態であることがスレーブICに通知される。
【0105】
一方、電流検出回路81により検出された電流値が過電流閾値を上回らなくなると、制御回路85は、スイッチング要素80のオフ状態の固定を解除し、IPD76が遮断状態ではないことをスレーブIC75に通知する。これにより、IPD76の遮断状態が解除されるとともに、IPD76が遮断状態ではないことがスレーブICに通知される。
【0106】
また、この例では、制御回路85は、温度検出回路82により検出された温度(IPD76の温度)が予め定められた温度異常閾値を上回るか否かを判定し、その判定結果に基づいてIPD76が温度異常であるか否かをスレーブIC75に通知する。温度異常は、第1遮断部の異常状態の一例である。制御回路85は、第1遮断部の異常状態を検出する異常検出部の一例である。なお、温度異常閾値は、後述する過熱閾値よりも低い温度に設定されてもよい。
【0107】
具体的には、温度検出回路82により検出された温度が温度異常閾値を上回ると、制御回路85は、IPD76が温度異常であることをスレーブICに通知する。一方、温度検出回路82により検出された温度が温度異常閾値を上回らなくなると、制御回路85は、IPD76が温度異常ではないことをスレーブIC75に通知する。
【0108】
なお、制御回路85は、特定用途向け集積回路(Application specific integrated circuit:ASIC)またはプログラマブルロジックアレイ(Programmable logic array:PLA)などの専用回路により実現され得る。また、制御回路85は、コンピュータで読み取り可能な命令(例えばプログラム)を実行して、所定の処理ステップを実行することにより特定の機能を実行させるプロセッサ回路により実現され得る。
【0109】
〔第1保護処理〕
次に、
図8を参照して、車両制御システム1の第1保護処理について説明する。第1保護処理は、スレーブノード7において遮断条件が成立してIPD76が遮断状態となるときに行われる処理である。
【0110】
まず、ステップS11において、スレーブノード7(詳しくはスレーブIC75)は、遮断条件が成立してIPD76が遮断状態になると、IPD76の状態が遮断状態であることを示す状態情報をマスタノード2に送信する。状態情報は、IPD76の状態を示す情報である。
【0111】
次に、ステップS12において、マスタノード2は、スレーブノード7から送信された状態情報を受信する。次に、ステップS13において、マスタノード2は、ステップS12において受信された状態情報を参照することで、スレーブノード7に設けられたIPD76が遮断状態であることを確認する。そして、マスタノード2は、IPD76を遮断状態にして操作信号の生成を停止することを指示する指令(第1遮断指令)をスレーブノード7に送信する。
【0112】
次に、ステップS14において、スレーブノード7は、マスタノード2から送信された第1遮断指令を受信する。そして、ステップS15において、スレーブノード7は、第1遮断指令に応答して、IPD76が遮断状態になるようにIPD76を制御する。なお、IPD76に遮断異常(故障)がなければ、遮断条件の成立によりIPD76が既に遮断状態になっているので、IPD76は、スレーブノード7の制御に応答して遮断状態を維持する。
【0113】
〔第2保護処理〕
次に、
図9を参照して、車両制御システム1の第2保護処理について説明する。第2保護処理は、マスタノード2からスレーブノード7に第1遮断指令(IPD76を遮断状態にすることを指示する指令)が送信された後に行われる処理である。第2保護処理は、定期的に繰り返し行われる。
【0114】
まず、ステップS21において、マスタノード2は、電流経路CPを流れる電流の電流値を示す電流情報の送信を要求するするためのリクエスト(電流リクエスト)を、スレーブノード7に送信する。ステップS22において、スレーブノード7(詳しくはスレーブIC75)は、マスタノード2から送信された電流リクエストを受信する。そして、ステップS23において、スレーブノード7は、電流検出回路81により検出された電流値(電流経路CPを流れる電流の電流値)を示す電流情報を、マスタノード2に送信する。
【0115】
次に、ステップS24において、マスタノード2は、スレーブノード7から送信された電流情報を受信する。そして、ステップS25において、マスタノード2は、ステップS24において受信された電流情報に示された電流値が予め定められた電流異常閾値を上回るか否かを判定する。電流情報に示された電流値が電流異常閾値を上回る場合には、ステップS26の処理が行われ、そうでない場合には、処理を終了する。
【0116】
ステップS26において、マスタノード2は、電源リレー77を遮断状態にして操作信号の生成を停止することを指示する指令(第2遮断指令)を、スレーブノード7に送信する。ステップS27において、スレーブノード7は、マスタノード2から送信された第2遮断指令を受信する。そして、ステップS28において、スレーブノード7は、第2遮断指令に応答して、電源リレー77が遮断状態になるように電源リレー77を制御する。
【0117】
〔第3保護処理〕
次に、
図10を参照して、車両制御システム1の第3保護処理について説明する。第3保護処理は、定期的に繰り返し行われる。
【0118】
まず、ステップS31において、マスタノード2は、IPD76の状態を示す状態情報の送信を要求するするためのリクエスト(状態リクエスト)を、スレーブノード7に送信する。ステップS32において、スレーブノード7(詳しくはスレーブIC75)は、マスタノード2から送信された状態リクエストを受信する。そして、ステップS33において、スレーブノード7は、IPD76の状態を示す状態情報を、マスタノード2に送信する。
【0119】
次に、ステップS34において、マスタノード2は、スレーブノード7から送信された状態情報を受信する。そして、ステップS35において、マスタノード2は、ステップS34において受信された状態情報が「IPD76が異常(この例では温度異常)であることを示す異常通知情報」であるか否かを判定する。状態情報が異常通知情報である場合には、ステップS36の処理が行われ、そうでない場合には、処理を終了する。
【0120】
ステップS36において、マスタノード2は、電源リレー77を遮断状態にして操作信号の生成を停止することを指示する指令(第2遮断指令)を、スレーブノード7に送信する。ステップS37において、スレーブノード7は、マスタノード2から送信された第2遮断指令を受信する。そして、ステップS38において、スレーブノード7は、第2遮断指令に応答して、電源リレー77が遮断状態になるように電源リレー77を制御する。
【0121】
〔実施形態の効果〕
以上のように、実施形態の車両制御システム1では、スレーブノード7は、IPD76と、電源リレー77と、電流検出回路81とを有する。IPD76は、電流経路CPに設けられ、遮断条件が成立すると、電流経路CPを遮断する遮断状態となる。電源リレー77は、電流経路CPにおいて電源8とIPD76との間に設けられ、電流経路CPを遮断する遮断状態にすることが可能である。電流検出回路81は、電流経路CPを流れる電流の電流値を検出する。スレーブノード7は、IPD76の状態を示す状態情報と、電流検出回路81により検出された電流値を示す電流情報とを、マスタノード2に送信する。マスタノード2は、スレーブノード7から送信された状態情報および電流情報に基づいて、IPD76および電源リレー77を制御するための指令をスレーブノード7に送信する。
【0122】
上記の構成では、IPD76を設けることにより、遮断条件が成立した場合に、マスタノード2からの指示を待たずに電流経路CP(電源8からスレーブノード7を経由して車載デバイス60に至る電流経路)を遮断することができる。これにより、電流経路CPを迅速に遮断することが要求される異常(例えば過電流や過熱など)からスレーブノード7を保護することができる。
【0123】
また、IPD76とともに電源リレー77を設けることにより、IPD76の異常が原因でIPD76が遮断状態にならない場合であっても、電源リレー77を遮断状態にすることで電流経路を遮断することができる。これにより、IPD76が遮断状態にならない場合であっても、スレーブノード7を異常から保護することができる。
【0124】
また、実施形態の車両制御システム1では、マスタノード2は、状態情報に示されたIPD76の状態が遮断状態である場合に、IPD76を遮断状態して操作信号の生成を停止することを指示する指令をスレーブノード7に送信する。
【0125】
上記の構成では、遮断条件が成立してIPD76が遮断状態となった場合に、IPD76を遮断状態にすることをマスタノード2がスレーブノード7に指示している状態にすることができる。これにより、マスタノード2による指示に応答してスレーブノード7が処理をしている状態(システム上の整合がとれた状態)にすることができ、その後に行われるマスタノード2によるスレーブノード7の制御を円滑にすることができる。
【0126】
また、実施形態の車両制御システム1では、マスタノード2は、IPD76を遮断状態にすることを指示する指令をスレーブノード7に送信した後に、スレーブノード7から送信された電流情報に示された電流値が電流異常閾値を上回る場合に、電源リレー77を遮断状態にすることを指示する指令をスレーブノード7に送信する。
【0127】
上記の構成では、IPD76の異常が原因でIPD76が遮断状態にならずに電流経路CPに電流が流れている場合に、電源リレー77を遮断状態にすることができる。これにより、IPD76が遮断状態にならない場合であっても、スレーブノード7を異常から保護することができる。
【0128】
また、実施形態の車両制御システム1では、スレーブノード7は、IPD76が過熱異常であることを検出する制御回路85(異常検出部の一例)を有し、制御回路85によりIPD76の過熱異常が検出されると、IPD76が過熱異常であることを示す異常通知情報をマスタノード2に送信する。マスタノード2は、スレーブノード7から送信された異常通知情報に応答して、電源リレー77を遮断状態にすることを指示する指令をスレーブノード7に送信する。
【0129】
上記の構成では、IPD76が温度異常である場合に、電源リレー77を遮断状態にすることができる。これにより、IPD76が温度異常である場合に、スレーブノード7を異常から保護することができる。
【0130】
また、実施形態の車両制御システム1では、遮断条件は、電流検出回路81により検出された電流値が過電流閾値を上回るという条件を含んでいる。このような構成により、スレーブノード7を過電流から保護することができる。
【0131】
(実施形態の変形例)
実施形態の変形例の車両制御システム1は、遮断条件が実施形態の車両制御システム1と異なる。実施形態の変形例の車両制御システム1のその他の構成および処理は、実施形態の車両制御システム1の構成および処理と同様である。
【0132】
実施形態の変形例の車両制御システム1では、遮断条件は、温度検出回路82により検出された温度(すなわちIPD76の温度)が予め定められた過熱閾値を上回るという条件を含む。IPD76において、制御回路85は、温度検出回路82により検出された温度(IPD76の温度)が過熱閾値を上回るか否かを判定する。IPD76の温度が過熱閾値を上回ると、制御回路85は、スイッチング要素80をオフ状態に固定し、IPD76が遮断状態であることをスレーブIC75に通知する。一方、IPD76の温度が過熱閾値を上回らなくなると、制御回路85は、スイッチング要素80のオフ状態の固定を解除し、IPD76が遮断状態ではないことをスレーブIC75に通知する。
【0133】
〔実施形態の変形例の効果〕
以上のように、実施形態の変形例の車両制御システム1では、遮断条件は、温度検出回路82により検出された温度が過熱閾値を上回るという条件を含む。上記の構成では、スレーブノード7を過熱から保護することができる。
【0134】
なお、遮断条件は、電流検出回路81により検出された電流値が過電流閾値を上回るという第1条件と、温度検出回路82により検出された温度が過熱閾値を上回るという第2条件の両方を含んでもよい。この場合、IPD76は、第1条件および第2条件の少なくとも一方が成立すると遮断状態となり、第1条件および第2条件のどちらも成立しなくなると遮断状態を解除する。このような構成により、スレーブノード7を過電流および過熱の両方から保護することができる。
【0135】
(その他の実施形態)
また、以上の説明では、電流経路CPを流れる電流の電流値を検出する電流検出部の例として、IPD76の内部に設けられた電流検出回路81を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、電流検出部は、電流経路CPにおいてIPD76と車載デバイス60との間に設けられた電流検出回路であってもよい。また、電流検出部は、電流経路CPを流れる電流の電流値を直接的に検出してもよいし、電流経路CPを流れる電流の電流値を間接的に検出してもよい。例えば、電流検出部は、電流経路CPを流れる電流と相関のある物理量に基づいて、電流経路CPを流れる電流の電流値を導出(推定)してもよい。
【0136】
また、以上の実施形態を適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、ここに開示する技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上説明したように、ここに開示する技術は、車両制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 車両制御システム
2 マスタノード
7 スレーブノード
8 電源
60 車載デバイス
75 スレーブIC
76 IPD(第1遮断部)
77 電源リレー(第2遮断部)
81 電流検出回路(電流検出部)
82 温度検出回路(温度検出部)
85 制御回路(異常検出部)
CP 電流経路