(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018652
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240201BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240201BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
B60R16/023 P
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122105
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤江 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】茂刈 武志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿治
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA02
5G503DA13
5G503DA17
(57)【要約】
【課題】車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応できるようにしつつ、バッテリの電力の枯渇を適切に抑制する。
【解決手段】バッテリBTと、バッテリBTからの電力を操作デバイスに振り分けるための特定リレー101を操作可能な電力操作部と、を備え、スレーブノードは、マスターノード2との間の通信異常時において、接続された操作デバイスを作動させ続けることがあるように、マスターノード2によりコンフィグレーションされた特定スレーブノードを含み、マスターノード2は、マスターノード2と特定スレーブノードとの間に通信異常がありかつ所定の遮断条件が満たされたときには、特定スレーブノードに接続された操作デバイスへの電力供給が遮断されるように、電力操作部に操作命令信号を送信する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターノードと複数のスレーブノードとがネットワーク接続され、該マスターノードから送信される情報に基づいて、該各スレーブノードが操作対象である操作デバイスをそれぞれ作動させる車両制御システムであって、
前記操作デバイスに供給される電力が蓄積されたバッテリと、
前記バッテリからの電力を、前記操作デバイスに振り分けるためのリレーと、
前記マスターノードとネットワーク接続され、該マスターノードから送信される情報に基づいて前記リレーを操作可能な電力操作部と、を備え、
前記スレーブノードは、前記マスターノードとの間の通信異常時において、接続された前記操作デバイスを作動させ続けることがあるように、前記マスターノードによりコンフィグレーションされた特定スレーブノードを含み、
前記特定スレーブノードは、マイコンを有しておらず、
前記電力操作部は、前記マスターノードと前記特定スレーブノードとの通信回線とは別の通信回線により当該マスターノードに接続されており、
前記マスターノードは、該マスターノードと前記特定スレーブノードとの間に通信異常がありかつ所定の遮断条件が満たされたときには、前記特定スレーブノードに接続された操作デバイスへの電力供給が遮断されるように、前記電力操作部に情報を送信することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記電力操作部は、前記リレーに接続されかつ前記特定スレーブノードとは別の前記スレーブノードであり、前記リレーをオフさせることができるように前記マスターノードによりコンフィグレーションされていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御システムにおいて、
前記遮断条件は、車両が駐車場で停車されかつ該車両の動力装置がオフされているという条件を含むことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御システムにおいて、
前記遮断条件は、前記車両が駐車場で停車されかつ前記動力装置がオンの状態で所定時間が経過しているという条件を含むことを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両制御システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の電動化が顕著であり、車両に搭載されたデバイスを電子制御により制御するようになっている。
【0003】
特許文献1には、車載ネットワークを介してECU同士が接続され、それぞれのECUにセンサやアクチュエータ等の機器が接続されている車載ネットワークの構成例が示されている(特許文献1の
図1参照)。
【0004】
また、特許文献2では、各センサの出力に基づいて、複数のアクチュエータの目標出力を算出する中央制御装置と、中央制御装置と各アクチュエータと通信経路の間にそれぞれ設けられ、中央制御装置で生成された制御信号を中継する複数の中継装置(末端の制御装置)とを備えた制御システムにおいて、一部の中継装置は、中央演算装置との間の通信状態に異常があったときに、接続されているアクチュエータに対して常時オンの信号を出力することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-212725号公報
【特許文献2】特開2021-20651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2のようにフェールセーフ機能として、操作対象である操作デバイスを常時オンさせる場合、車両のイグニッション又は電源がオフされた状態であっても、操作デバイスがオン状態となる。この結果、バッテリに蓄積された電力が消費され続けてしまい、電力が枯渇するおそれがある。
【0007】
特許文献1のように、各操作デバイスに対してマイコンを含むECUを配置すれば、センサを含むスイッチからの信号に基づいてある程度の制御を行えるようになるため、適切なタイミングで操作デバイスをオフさせることも可能である。
【0008】
しかしながら、各操作デバイスに対してマイコンを搭載する場合には、操作デバイスとマイコンとをユニットとして作り込むに必要がある。このため、操作デバイスの機能進化の際には、ユニット単位での入れ換えが必要となり、近年の急速な車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速な対応ができないという課題がある。
【0009】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応できるようにしつつ、バッテリの電力の枯渇を適切に抑制することが可能な車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、マスターノードと複数のスレーブノードとがネットワーク接続され、該マスターノードから送信される情報に基づいて、該各スレーブノードが操作対象である操作デバイスをそれぞれ作動させる車両制御システムを対象として、前記操作デバイスに供給される電力が蓄積されたバッテリと、前記バッテリからの電力を、前記操作デバイスに振り分けるためのリレーと、前記マスターノードとネットワーク接続され、該マスターノードから送信される情報に基づいて前記リレーを操作可能な電力操作部と、を備え、前記スレーブノードは、前記マスターノードとの間の通信異常時において、接続された前記操作デバイスを作動させ続けることがあるように、前記マスターノードによりコンフィグレーションされた特定スレーブノードを含み、前記特定スレーブノードは、マイコンを有しておらず、前記電力操作部は、前記マスターノードと前記特定スレーブノードとの通信回線とは別の通信回線により当該マスターノードに接続されており、前記マスターノードは、該マスターノードと前記特定スレーブノードとの間に通信異常がありかつ所定の遮断条件が満たされたときには、前記特定スレーブノードに接続された操作デバイスへの電力供給が遮断されるように、前記電力操作部に情報を送信する、という構成とした。
【0011】
この構成によると、特定スレーブノードは、マイコンを有していないため、自ら状況を判断して操作デバイスへの電力供給を遮断することは出来ず、マスターノードから情報が入力されない限り操作デバイスの操作を変更しない。このため、マスターノードと特定スレーブノードとの間に通信異常が生じたときには、特定スレーブノードは、操作デバイスを作動させ続けることがある。これにより、バッテリの電力が枯渇してしまうおそれがある。
【0012】
これに対して、本開示の技術では、電力操作部により操作デバイスへの電力供給が遮断される。これにより、操作デバイスが停止されて、当該操作デバイスではバッテリの電力が消費されなくなる。この結果、バッテリの電力の枯渇を適切に抑制することができる。
【0013】
また、特定スレーブノードは、マイコンを有していないため、操作デバイスの機能変化の際は、特定スレーブノードを操作デバイスごと入れ換える必要がない。このため、車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応することができる。
【0014】
前記車両制御システムにおいて、前記電力操作部は、前記リレーに接続されかつ前記特定スレーブノードとは別の前記スレーブノードであり、前記リレーをオフさせることができるように前記マスターノードによりコンフィグレーションされている、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、特定スレーブノードが接続されたリレーに接続されたスレーブノードにより、リレーをオフさせることができる。これにより、部品点数を出来る限り少なくすることができる。また、マスターノードと特定スレーブノードとの通信回線とは別の通信回線で接続されかつ特定スレーブノードが接続されたリレーに接続されているスレーブノードでさえあれば、マスターノードによるコンフィグレーションにより、電力操作部とすることができる。これにより、冗長性を出来る限り高くすることができる。
【0016】
前記車両制御システムにおいて、前記遮断条件は、車両が駐車場で停車されかつ前記車両の動力装置がオフされているという条件を含む、という構成でもよい。
【0017】
また、前記遮断条件は、前記車両が駐車場で停車されかつ前記動力装置がオンの状態で所定時間が経過しているという条件を含む、という構成でもよい。
【0018】
すなわち、車両が駐車場に停車された状態で動力装置がオフされたということは、運転者が少なくとも一定期間は走行しないことを選択したとみなすことができる。また、動力装置がオフになっていなくとも、駐車場で停車した状態である程度時間が経過した場合にも、運転者が少なくとも一定期間は走行しないことを選択したとみなすことができる。このため、このような状態を遮断条件とすることで、適切なタイミングで操作デバイスを停止させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応できるようにしつつ、バッテリの電力の枯渇を適切に抑制することが可能な車両制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、マスターノードとスレーブノードの機能分配の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、マスターノードの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、スレーブノードの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、ドライバ群の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図6】
図6は、車両制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ワイパーの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、リレーの操作システムを含む、ワイパーの制御システムを示すブロック図である。
【
図9】
図9は、マスターノードにより操作デバイスへの電力供給を遮断する際の処理動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、車両制御システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本開示において、「システム」「ユニット」「モジュール」「ノード」という用語が示す構成に関し、その一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはPLA(Programmable Logic Array)等の専用回路によって実現され得る。また、その一部または全部は、コンピュータで読み取り可能な命令(例えばプログラム)を実行して、所定の処理ステップを実行することにより特定の機能を実行させるプロセッサ回路によって実現され得る。
【0023】
また、以下の説明において、「車載デバイス」とは、車両CAに搭載されたデバイスであって、センサ及び操作対象となるデバイス(モータやLEDなど)の少なくとも一方を有するものを示す。車載デバイスのうち特に操作対象となるデバイスを示すときには、単に操作デバイスということがある。
【0024】
(全体構成)
<車両制御システム>
図1は、実施形態の車両制御システムの構成の一例を示す。
【0025】
図1に示すように、車両制御システム1は、車両CAに搭載されており、マスターノード2と複数のスレーブユニットとが車載の通信ネットワークを介して接続された構成となっている。
【0026】
図1の例では、複数のスレーブユニットとして、コンビスイッチユニット4、左右のサイドミラーユニット5、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、オーバーヘッドコンソールユニット32、左右のシートヒーターユニット33、及び、左右のドアラッチユニット34を例示している。各スレーブユニットは、それぞれに共通の構成を有するスレーブノード7(
図4参照)が搭載されたユニットである。便宜上、サイドミラーユニット5、ドアラッチユニット34、シートヒーターユニット33は、それぞれ左右で共通の符号を付すものとする。
【0027】
マスターノード2と各スレーブノード7との間は、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に準拠した通信回線Bで接続されている。
【0028】
具体的に、マスターノード2と、複数のスレーブユニット(この例では、コンビスイッチユニット4、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、右のサイドミラーユニット5、右のシートヒーターユニット33、右のドアラッチユニット34)とが、通信回線B1でバス接続されている。また、マスターノード2と、他の複数のスレーブユニット(この例では、オーバーヘッドコンソールユニット32、左のサイドミラーユニット5、左のシートヒーターユニット33及び左のドアラッチユニット34)とが、通信回線B2でバス接続されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、フェールセーフ機能を考慮して、複数(
図1では2つ)の通信回線を備える構成となっている。なお、通信回線B1と通信回線B2とは通信的に接続されていてもよい。また、通信回線数は3つ以上であってもよい。なお、通信方式は、CXPIに限定されず、他の通信方式(有線方式、無線方式を問わない)を用いてもよい。
【0029】
図2は、車両CAの行動に対するマスターノード2とスレーブノード7の機能分配の一例を示す概念図である。
図2では、車両CAの動作工程を、認知工程Iz、判断工程Pz、操作工程Ozに分け、それぞれの工程を細分化している。そして、マスターノード2に分配された機能20を破線で囲み、スレーブノード7に分配された機能30を実線で囲んでいる。
【0030】
以下の説明では、マスターノード2及びスレーブノード7において、認知工程Iz、判断工程Pzおよび操作工程Ozの各工程で実行される処理について、晴天から雨天への天気の変化(以下、単に「天気の変化」という)が起こった場合の例を交えて説明する。
【0031】
〔認知工程〕
認知工程Izでは、車載デバイスに搭載されたセンサの出力信号に基づいて、センサで取得された情報を認知する。本開示において「センサ」との用語は、温度・電圧・電流等の各種の物理量の測定・検知をするセンサに加えて、各種の操作を受け付けるスイッチ、車内外を撮像するカメラ、車外の物標等を認識するレーダ、アクチュエータの機械電気変換信号等を広く含む概念で用いる。センサは、車両の挙動情報、乗員の操作情報、乗員の状態情報及び/または外部環境情報等(以下、総称して「検知情報」という)を取得する。
【0032】
認知工程Izは、スレーブノード7で実行される工程Iz2,Iz3及びマスターノード2で実行される工程Iz4,Iz5を含む。
【0033】
まず、工程Iz1において、車載デバイスに搭載されたセンサで何らかの検知情報が検知される。具体例として、前述の「天気の変化」があった場合、センサとしての雨滴センサ及び受光センサ(図示省略)で検知情報(例えば、雨滴の付着、受光量の変化)が検知される。
【0034】
スレーブノード7では、後述するポートPを介してセンサの出力を受ける(工程Iz2)。ここでの出力には、例えば、センサの検知信号、センサで検出される電流・電圧・温度等の物理量、アクチュエータの機械電気変換信号等が含まれる。
【0035】
次の工程Iz3において、スレーブノード7は、センサ出力のシグナル化処理を行い、検知信号としてマスターノード2に送信する。ここでいうシグナル化処理は、例えば、CXPIに準拠した信号へのプロトコル変換である。
【0036】
すなわち、スレーブノード7では、工程Iz2,Iz3において、入力情報の具体的内容についての認知及び判断は行わずに、センサからの入力を所定の信号形式に変換し、検知信号としてマスターノード2に送信する。
【0037】
マスターノード2では、スレーブノード7から検知信号を受信し(工程Iz4)、その検知信号の経時変化と後述する接続データとに基づいて、センサからスレーブノード7に入力された検知情報の具体的な内容を認知する(工程Iz5)。前述の「天気の変化」の例では、情報化処理により、例えば、フロントガラスを透過する光度が所定値未満になって車外が暗くなっており、かつ、雨が降ってきたという認知情報が得られる。以下の説明では、認知工程で認知された情報を「認知情報」と呼ぶ。
【0038】
〔判断工程〕
判断工程Pzでは、認知工程において認知された認知情報に基づいて車両CAの行動や対応を決定する。判断工程Pzの構成要素である工程Pz1~Pz4は、マスターノード2で実行される。
【0039】
具体的に、工程Pz1において、マスターノード2では、認知工程Izで認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動の目的を決定する。前述の「天気の変化」の例では、例えば「車外環境が暗くなりかつ雨が降ってきた場合に対応したふるまいをする」という目的が決定される。
【0040】
次の工程Pz2において、マスターノード2では、工程Pz1で決定された目的を達成するための行動計画を設定する。このとき、代替手段を含めた行動計画が列挙され、例えば、行動計画をリスト化した行動リストが生成される。例えば、上記の「車外環境が暗くかつ降雨時のふるまい」に対応した行動計画の中には、「ワイパーを作動する」、「車両CAのオートライト機能をオンにする」、「車両CAの上限速度を制限する」といった行動計画が含まれる。
【0041】
次の工程Pz3において、マスターノード2では、行動計画で列挙された行動の中で、実際に実行に移す行動を決定する。例えば、行動リストの中から実際に実行させる行動を選択する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパーを作動する」及び「車両のオートライト機能をオンにする」という行動が、実行対象の行動として選択される。
【0042】
次の工程Pz4において、マスターノード2では、工程Pz3で決定された行動を実現するための手段(以下、「対応手段」ともいう)を選択する。「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパーを作動する」及び「車両のオートライト機能をオンにする」という行動に対して、ワイパーユニット8(
図8参照)、ヘッドライトユニット(図示省略)及びテールライトユニット(図示省略)が選択される。
【0043】
〔操作工程〕
操作工程Ozは、マスターノード2で実行される工程Oz1,Oz2及びスレーブノード7で実行される工程Oz3~Oz5を含む。
【0044】
工程Oz1において、マスターノード2は、判断工程Pzで決定された行動や対応を実現するための操作対象及びその操作量を決定する。ここで、操作対象は、行動や対応を実現するために操作する対象物を広く含むものとし、例えば、照明デバイスとアクチュエータを含む。照明デバイスは、前照灯、インジケータ、ターンランプ等に用いられる各種LEDや電球等を含む。アクチュエータは、ワイパー81(
図8参照)やミラー駆動用のモータといったボディ系デバイスと、エンジン、ブレーキ等に用いられる動力系デバイスとを含む。
【0045】
前述の「天気の変化」の例では、例えば、ワイパーユニット8の操作内容として、フロントガラス用のワイパー81をオンすること及びそのワイパー81の操作スピードや操作間隔が決定される。また、例えば、ヘッドライトユニット及びテールライトユニットの操作内容として、ヘッドライト及びテールライトを点灯させること及びその照度が決定される。
【0046】
次の工程Oz2において、マスターノード2は、(1)操作対象が接続されたポートP(以下、「操作ポートP」という)を接続データに基づいて特定し、(2)操作ポートPの出力内容を命令する命令コードを生成し、(3)操作ポートPが設けられたスレーブノードに送信する処理を実行する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、マスターノード2は、ワイパー81が接続された操作ポートPの出力内容を命令する操作命令信号をワイパーユニット8に送信し、ヘッドライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す操作命令信号をヘッドライトユニットに送信し、テールライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す操作命令信号をテールライトユニットに送信する。
【0047】
各スレーブノード7では、マスターノード2から操作命令信号を受信し、操作命令信号に基づく操作ポートPから命令コードに基づく操作信号を出力する。
【0048】
具体的には、各スレーブノード7は、操作命令信号のプロトコル変換及び/または指定されたレジスタの参照等を経て、操作命令信号に基づいて操作ポートPから出力する信号を生成する(工程Oz3)。そして、操作命令信号で指定された操作ポートPから操作デバイスに対して操作信号を出力する(工程Oz4)。これにより、(1)ワイパーユニット8ではワイパー81が駆動され、(2)ヘッドライトユニットではヘッドライトが点灯され、(3)テールライトユニットではテールライトが点灯される。
【0049】
次に、マスターノード2及びスレーブノード7の構成について詳細に説明する。
図3は、マスターノード2の構成の一例を示すブロック図であり、
図4は、スレーブノード7の構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
図3に例示するマスターノード2は、通信モジュール21と、認知モジュール22と、判断モジュール23と、操作モジュール24と、メモリ25とを備える。
【0051】
マスターノード2は、例えば、1つまたは複数の電子制御ユニット(ECU)により構成される。電子制御ユニットは、単一のIC(Integrated Circuit)を用いて構成されてもよいし、複数のICを用いて構成されてもよい。また、IC内には、単一のコアまたはダイが設けられてもよいし、連携する複数のコアまたはダイが設けられてもよい。
【0052】
通信モジュール21は、通信回線Bを介して各スレーブノード7からの受信信号を受信したり、各スレーブノード7に送信信号を送信したりする機能を有する。
【0053】
メモリ25は、それぞれのスレーブノード7に対応するコンフィグデータ等が格納されている。なお、メモリ25は、上記ECUを構成するICに内蔵された内部メモリであってもよく、上記ICに外付けされた外付けメモリであってもよい。また、メモリには、例えば、上記ICに搭載されたCPUを動作させるためのプログラムが記憶されてもよく、CPUでの処理結果などの情報が記憶されてもよい。
【0054】
認知モジュール22は、前述の認知工程Izのうちの工程Iz4,Iz5の認知処理を実行する。具体的には、認知モジュール22は、メモリに格納された接続データと、スレーブノードから受信される検出信号の経時変化に基づいて、検知デバイスで取得された検知情報を認知する認知処理を実行する。
【0055】
認知モジュール22は、スレーブノード7から受信した検知信号のデコード処理をするデコードモジュール221と、前述の工程Iz5の情報化処理をする情報化モジュール222とを含む。
【0056】
判断モジュール23は、前述の判断工程Pz(Pz1~Pz4)の判断処理を実行する。具体的には、判断モジュール23は、認知モジュール22で実行された認知処理において認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動を決定する判断処理を実行する。
【0057】
判断モジュール23は、前述の工程Pz1を実行する目的決定モジュール231と、前述の工程Pz2を実行する行動計画モジュール232と、前述の工程Pz3を実行する行動決定モジュール233と、前述の工程Pz4を実行する対応決定モジュール234とを備える。
【0058】
操作モジュール24は、操作工程Ozのうちの工程Oz1,Oz2の処理を実行する。具体的に、判断処理で決定された車両の行動に対応する操作デバイスを特定し、特定された操作デバイスの操作を命令する操作命令信号を生成して、操作デバイスが接続されたスレーブノードに送信する操作処理を実行する。
【0059】
操作モジュール24は、前述の工程Oz1を実行する操作決定モジュール241と、前述の工程Oz2を実行する命令生成モジュール242とを備える。
【0060】
図4では、
図1に例示したスレーブノード7のうち、コンビスイッチユニット4及び右のサイドミラーユニット5(以下、「右サイドミラーユニット5」という)の構成例を示す。
【0061】
図4に示すように、コンビスイッチユニット4及び右サイドミラーユニット5には、それぞれ、共通のスレーブノード7が設けられている。各スレーブノード7には、車載デバイスを接続するためのポートPが12個ずつ設けられている。
【0062】
この例において、コンビスイッチユニット4には、ポートP1~P4にワイパー81を操作するワイパースイッチ41、ポートP5~P9にライトを操作するライトスイッチ42、ポートP10,P11にターンライトを操作するターンスイッチ43がそれぞれ接続されている。P12はリザーブ用のポートである。ワイパースイッチ41、ライトスイッチ42及びターンスイッチ43は、車載デバイスのうちのセンサのみを含むものの一例である。
【0063】
同様に、右サイドミラーユニット5には、ポートP1,P2にターンライト用のLED51(以下、「ターンLED51」という)、ポートP3~P6にインジケータ用のLED52、ポートP7~P12にミラー格納用のモータ53がそれぞれ接続されている。ここで、ターンLED51、LED52及びモータ53は、車載デバイスのうちの操作デバイスの一例である。特に、モータ53はモータの回転位置を検出する位置センサを有しており、センサと操作デバイスとの両方を有する車載デバイスである。
【0064】
各スレーブノード7は、それぞれ、通信モジュール71と、レジスタ72と、セレクタ73と、ドライバ群74と、タイマー75とを備える。
【0065】
通信モジュール71は、通信回線Bを介して後述するマスターノード2の通信モジュール21と接続され、CXPIに準拠した双方向通信ができるように構成されている。通信モジュール71は、例えば、通信回線Bに接続される入出力回路、入出力回路から出力する信号を生成するエンコーダ、入出力回路から出力する信号を変換するデコーダ等を備える。なお、通信モジュール71の具体的な回路構成については、従前から知られている構成を適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0066】
ドライバ群74は、それぞれのポートPに1対1接続された複数のドライバ群740を備える。例えば、スレーブノード7に12個のポートPが設けられている場合、ドライバ群74には、12個のドライバ群740が設けられる。
【0067】
ドライバ群740は、外部設定により入力ポートとして使用したり、出力ポートとして使用したりできるIO回路である。ドライバ群740として、例えば、従来から知られている汎用入出力回路(GPIO : General Purpose Input/Output)を適用することができる。
図5には、ドライバ群740の構成例を示す。
【0068】
図5に例示するドライバ群740は、ポートPに接続された出力回路743と、出力レジスタ742の設定値に基づいて出力回路743を駆動するドライバ回路741とを備える。出力レジスタ742の設定値は、OUT端子から入力された設定信号により書き換えが可能になっている。出力回路743は、半導体スイッチとしても機能するように構成されている。出力回路473は、IPD(Intelligent Power Device)を含む構成となっていてもよい。
【0069】
ドライバ群740は、ポートPへの入力を受ける入力回路745と、入力回路745に受けた入力を検出信号に変換するレシーバ回路746とを備える。レシーバ回路746は、ADコンバータ747と比較器748とを備える。ADコンバータ747は、ポートPの属性がアナログ入力の場合に、ポートPの入力をアナログ-デジタル変換してAI端子から出力する。比較器748は、ポートPの属性がデジタル入力の場合に、ポートPの入力をデジタル信号としてDI端子から出力する。
【0070】
ドライバ群740は、コンフィグ信号に基づいて、各構成要素の設定が変更できるようになっている。例えば、コンフィグ信号に基づいてレシーバ回路746のデジタルフィルタのフィルタ乗数が変更できるようになっている。
【0071】
セレクタ73は、レジスタ72に記録された各ポートPの属性情報に基づいて、それぞれのドライバ群740の端子(OUT端子、AI端子、DI端子)のうち、どの端子を有効にするのかを選択する機能を有する。
【0072】
AI端子が有効にされた場合、ポートPからアナログ入力信号が入力される。この場合、アナログ入力信号は、入力回路745及びADコンバータ747でデジタル信号に変換されてAI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0073】
DI端子が有効にされた場合、ポートPからデジタル入力信号が入力される。この場合、デジタル入力信号は、入力回路745及び比較器748を介してDI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0074】
OUT端子が有効にされた場合、出力設定情報が、セレクタ73を介してドライバ回路741の出力レジスタ742に反映される。そして、ドライバ回路741は、出力レジスタ742の設定情報に基づいて、出力回路743を介してポートPからデジタル信号、アナログ信号、または、PWM信号のいずれかを出力させる。
【0075】
なお、セレクタの具体的な回路構成については、従来から知られている構成を用いることができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0076】
レジスタ72には、スレーブノード7毎に設定されたコンフィグデータが格納される。コンフィグデータは、各ポートPの属性データを含む。また、このコンフィグデータには、後述するスレーブノード7のフェールセーフ機能が含まれている。
【0077】
タイマー75は、水晶発振器などの一定の周波数で動作する発信器と、発信器からクロックをカウントするカウンタとを有する。タイマー75は、例えば、マスターノードから情報が送られてきてからの経過時間などの計測する際に利用される。また、タイマー75は、決まった時間だけ操作デバイスをオンさせる必要があるときに、該操作デバイスをオンさせてからの経過時間を計測する際に利用される。
【0078】
次に、車両制御システムの動作の一例を
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、ステップS1の初期コンフィグレーション処理後において、運転者により、コンビスイッチユニット4に設けられたターンスイッチ43が右ターン側に操作された場合の処理について説明する。
【0079】
車両制御システム1において、電源が投入されると、ステップS1の初期コンフィグレーション処理が実行される。
【0080】
初期コンフィグレーション処理では、マスターノード2から各スレーブノード7に、初期コンフィグデータが送信される。各スレーブノード7では、マスターノード2から受信した初期コンフィグデータをレジスタ72に格納する。そして、各スレーブノード7は、レジスタ72に初期コンフィグデータを格納した後、設定完了の返信をする。なお、初期コンフィグデータがあらかじめ各スレーブノード7に格納されている場合には、ステップS1では何もせずに次のステップに進む。
【0081】
次に、ステップS2において、ターンスイッチ43が右ターン側に操作されると、ターンスイッチ43のデジタルアウトプットポートDORからドライバ群74のポートP10にON設定信号が入力される。
【0082】
次いで、ステップS3において、スレーブノード7は、マスターノード2にイベント通知を送信する。イベント通知では、検知信号領域の変化内容が通知される。
【0083】
次のステップS4において、マスターノード2では、イベント通知の内容に応じた処理(「イベント処理」ともいう)を実行する。イベント処理では、前述の認知工程、判断工程及び操作工程の処理が実行される。
【0084】
この例では、マスターノード2は、認知工程として、ステップS1で受信した検出データと、今回受信した検出データD4との差分データに基づく、情報化処理を実行する。具体的に、マスターノード2は、コンビスイッチユニット4のポートP10の変化と、接続データとに基づいて、ターンスイッチ43が右ターン側に操作されたことを認知する。
【0085】
次に、マスターノード2は、判断工程の工程Pz1~Pz4を経て、「車両CAの右ターンランプ(右サイドミラーユニット5の右ターンランプを含む)をオンにする」という行動が、車両CAの実行対象の行動として決定される。
【0086】
次に、マスターノード2は、操作工程として、右ターンランプが接続されたスレーブノード7を操作対象とし、操作内容として右ターンランプを点滅させることを決定する。そして、マスターノード2は、右ターンランプを点滅させることを命令する操作命令信号を生成し、該操作命令信号を右ターンランプが接続されたスレーブノード7(右サイドミラーユニット5を含む)に送信する。
【0087】
次に、ステップS6において、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号を受信する。
【0088】
次いで、ステップS7において、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号に基づくポートから操作命令信号に基づく操作信号を出力する。具体的には、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号に基づいて、ポートP2からオン制御を指示するデジタル形式の操作信号を出力する。
【0089】
次に、ステップS8において、マスターノード2は、操作命令信号を送信したスレーブノード7に対して、操作命令信号に基づく出力設定がされているかどうかを確認するアクノリッジを要求する。そして、次のステップS9において、アクノリッジの要求を受けたスレーブノード7は、操作命令信号に基づく出力設定の状況を示すアクノリッジをマスターノード2に返信する。
【0090】
(ワイパーユニットのフェールセーフ機能)
次に、マスターノード2とスレーブノードとの間で通信線が断線するなどの通信異常が生じたときのフェールセーフ機能について、ワイパーユニット8を例にして説明する。
【0091】
図7は、ワイパー81の動作を例示的に示すフローチャートである。まず、マスターノード2により、初期コンフィグレーションが実行される。このとき、ワイパーユニット8のスレーブノード7(以下、ワイパースレーブノード7aという)のフェールセーフ機能が設定される。ワイパー81は、雨や雪が降っていない限りは動作させる必要がないが、雨や雪が降っているときには動作を継続させなければ、運転に支障をきたしてしまう。このため、ワイパースレーブノード7aのフェールセーフ機能としては、直前の動作を継続させる機能が採用される。すなわち、ワイパースレーブノード7aは、マスターノード2との間に通信異常が発生したときに、直前にワイパー81を停止させていたときにはワイパー81を停止させたままにする一方で、ワイパー81を作動させていたときには、同じ速度でワイパー81を作動させ続ける。
【0092】
次に、ワイパースイッチ41がオンされると、コンビスイッチユニット4からマスターノード2へイベント通知が送信される。マスターノード2は、前述したフローにしたがってイベント処理を行い、ワイパー81を作動させるべく、ワイパースレーブノード7aに操作命令信号を送信する。
【0093】
マスターノード2から操作命令信号を受信したワイパースレーブノード7aは、出力回路743を操作にすることにより、操作命令信号が示す速度でワイパー81を作動させる。ワイパースレーブノード7aは、操作命令信号が示す速度でワイパー81を作動させるべく、ワイパー81(厳密には、ワイパー81を作動させるモータ)に適切な電力が供給されるように、出力回路743を操作する。
【0094】
そして、マスターノード2は、ワイパースレーブノード7aに対してアクノリッジの要求をする。このアクノリッジの要求はワイパーユニット8に定期的に送られる。マスターノード2とワイパースレーブノード7aとの間の通信が正常であれば、前述のように、ワイパースレーブノード7aからマスターノード2にアクノリッジの要求に対する返信がある。
【0095】
ここで、
図7に示すように、マスターノード2とワイパースレーブノード7aとの間に通信異常が生じて、ワイパーユニット8がアクノリッジの要求を受信できなかったとする。ワイパースレーブノード7aは、アクノリッジの要求を、予め設定された設定時間受信できなかったときには、フェールセーフ機能をオンにする。ここでは、ワイパー81はオンされている(モータが作動されている)ため、ワイパースレーブノード7aは、同じ速度でワイパー81が動作し続けるように、出力回路743を操作する。所定時間が経過したか否かは、タイマー75により計測される。
【0096】
(電力枯渇の抑制)
前述のように、本実施形態に係る車両制御システム1では、マスターノード2とスレーブノード7との間に通信異常が生じた際のフェールセーフ機能として、操作デバイスを作動させ続ける場合がある。前述のようにスレーブノード7は、マイコンを有していないため、センサからの信号等に基づいて自発的に操作デバイスをオフすることができない。このため、前記のように、フェールセーフ機能として操作デバイスをオンさせ続けることがあり得るようにコンフィグレーションされたスレーブノード(以下、特定スレーブノードという)は、フェールセーフ機能を実行して操作デバイスをオン状態とした後、エンジンやモータなどの車両CAの動力装置がオフされたとしても、操作デバイスをオンさせ続ける。操作デバイスがオンし続けると、バッテリBT(
図8参照)の電力が消費され続けるため、車両を走行させていない間にバッテリBTに蓄電された電力が枯渇してしまうおそれがある。
【0097】
そこで、本実施形態では、
図8に示すように、フェールセーフ機能を実行した後、バッテリBTの電力が枯渇してしまうのを抑制するために、特定スレーブノードに接続されたリレー(以下、特定リレー101という)を直接オフさせて、操作デバイスへの電力供給を遮断させるためのリレー用ユニット100を設けるようにした。なお、
図8では、特定スレーブノードとして、ワイパーユニット8のスレーブノードを示している。
【0098】
リレー用ユニット100は、前述したスレーブノード7と同様にマイコンを有しておらず、スレーブノード7と同様の回路構成となっている。リレー用ユニット100は、マスターノード2がコンフィグレーションすることによって、特定リレー101をオフする機能を有するようになる。言い換えると、リレー用ユニット100は、特定リレー101を操作デバイスとするスレーブノードのような役割を果たす。リレー用ユニット100は、マスターノード2からの操作命令信号により特定リレー101をオフさせる。特定リレー101が別のリレーに交換されたときには、リレー用ユニット100は、マスターノード2により再度コンフィグレーションされる。
図8に示すように、リレー用ユニット100は、常時電源に接続されており、動力装置がオフになった状態であっても作動し続けることができる。
【0099】
リレー用ユニット100は、マスターノード2とワイパーユニット8(厳密にはワイパーユニット8内のスレーブノード)との間の通信回線とは別の通信回線によりマスターノード2と通信的に接続されている。ここでは、例えば、ワイパーユニット8は、通信回線B1によりマスターノード2と通信的に接続されている一方で、リレー用ユニット100は、通信回線B3によりマスターノード2と通信的に接続されている。詳細な図示は省略するが、マスターノード2とリレー用ユニット100との間の通信回線B3は、マスターノード2と特定スレーブノードとの間の通信回線よりも短く設定されたり、太く設定されたりして、断線しにくく設計されている。マスターノードとリレー用ユニット100との間の通信回線B3は、専用で設けるようにすると特に好ましい。
【0100】
マスターノード2は、マスターノード2とワイパーユニット8との間に通信異常がありかつ所定の遮断条件が満たされたときに、ワイパー81への電力供給が遮断されるように、リレー用ユニット100に操作命令信号を送信する。所定の遮断条件は、ワイパーユニット8が動作させる操作デバイス(ここではワイパー81)を停止させたとしても、運転者に支障を与えない条件であって、少なくとも一定期間は車両CAを走行させないと判断できる条件である。具体的には、所定の遮断条件は、車両CAが駐車場に停車しておりかつ動力装置がオフ(イグニッションオフ又は電源オフ)されているという第1遮断条件と、車両CAが駐車場に停車しておりかつ動力装置がオンされておりかつ所定時間が経過しているという第2遮断条件とを含む。
【0101】
すなわち、車両CAが駐車場に停車している状態であれば、運転者が車両CAを走行させる意思が低いと判断できる。また、駐車場で停車中していれば、ワイパー81の作動を停止させたとしても、運転者の行動に支障を与える可能性が低い。そして、第1遮断条件のように動力装置がオフされていれば、運転者が車両CAの走行させる意思がないことが明確になるため、ワイパーユニット8への電力供給を遮断しても問題ない。一方で、動力装置がオンの状態であったとしても、所定時間が経過したときには、少なくとも一定期間は継続して車両CAを走行させないとみなすことができる。このため、第2遮断条件が満たされた場合でも、ワイパーユニット8への電力供給を遮断しても問題ない。所定時間は、例えば、1分程度である。
【0102】
マスターノード2は、複数のセンサからの情報に基づいて車両CAが駐車場に停車しているか否かを判定する。具体的には、マスターノード2は、車速センサから車速が0であることを示す信号を受信したときに、車両CAが停車していると判定する。また、マスターノード2は、GPS(Global Positioning System)センサからの信号で車両CAの現在地を取得するとともに、定期的に更新される地図情報とを照らし合わせて、現在地が駐車場であるか否かを判定する。マスターノード2は、更にカメラにより撮影された車外環境の情報に基づいて、現在地が駐車場であるか否かを判定してもよい。例えば、マスターノード2は、カメラにより、車両CAの停車位置を示す白線が一定間隔で並んでいる状況が撮影されたときに、現在地が駐車場であると判定することができる。
【0103】
マスターノード2は、マスターノード2とワイパーユニット8との間に通信異常がある状態で、第1遮断条件と第2遮断条件とのいずれかの条件が満たされたときには、ワイパーユニット8への電力供給を遮断すべく、特定リレー101をオフさせる操作命令信号をリレー用ユニット100に送信する。マスターノード2は、車両CAが走行し始めた場合など、第1遮断条件及び第2遮断条件が満たされなくなったときには、ワイパーユニット8に再度電力が供給されるようにすべく、特定リレー101をオンさせるようにリレー用ユニット100に操作命令信号を送信する。ワイパーユニット8は、リレー用ユニット100により電力供給が遮断されたときには、電力供給が遮断されたことによりワイパー81を動作させることができなくなる。しかし、ワイパーユニット8のスレーブノード7は、ワイパー81を作動させる状態になっているままであるため、リレー用ユニット100により電力供給が再開されたときには、ワイパー81を再度作動させることになる。
【0104】
次に、
図9を参照しながら、マスターノード2がリレー用ユニット100を介して特定スレーブノードへの電力供給を遮断する際の、マスターノード2の処理動作について説明する。
【0105】
まず、ステップS101において、マスターノード2は、特定スレーブノード(例えば、前述のワイパーユニット8)との間に通信異常が生じているか否かを判定する。マスターノード2は、特定スレーブノードから信号を受信できないときに、特定スレーブノードとの間に通信異常が生じていると判定する。マスターノード2は、特定スレーブノードとの間に通信異常が生じているYESのときには、ステップS102に進む。一方で、マスターノード2は、特定スレーブノードとの間に通信異常が生じていないNOのときには、リターンする。
【0106】
前記ステップS102では、マスターノード2は、車両CAが駐車場に停車しているか否かを判定する。前述したように、マスターノード2は、複数のセンサからの情報に基づいて、車両CAが駐車場に停車しているか否かを判定する。マスターノード2は、車両CAが駐車場に停車しているYESのときには、ステップS103に進む。一方で、マスターノード2は、車両CAが走行中であったり、停車していたとしても路肩であったりといったNOのときには、リターンする。
【0107】
前記ステップS103では、マスターノード2は、動力装置がオフされているか否かを判定する。マスターノード2は、動力装置がオフされているYESのときには、ステップS105に進む。一方で、マスターノードは、動力装置がオンの状態であるNOのときには、ステップS104に進む。
【0108】
前記ステップS104では、マスターノード2は、所定時間が経過したか否かを判定する。マスターノード2は、所定時間が経過したYESのときには、ステップS105に進む。一方で、マスターノード2は、所定時間が経過していないNOのときには、リターンする。
【0109】
前記ステップS105では、マスターノード2は、特定リレー101をオフして、特定スレーブノードへの電力供給を遮断すべく、リレー用ユニット100に操作命令信号を送信する。マスターノードは、ステップS105の後は、リターンする。
【0110】
(変形例)
図10は、本実施形態の変形例を示し、この変形例では、リレー用ユニット100が設けられておらず、他のスレーブノードが電力操作部の役割を担っている。この他のスレーブノード(以下、兼用スレーブノード300という)は、特定リレー101に接続されかつ特定スレーブノード(
図10ではワイパーユニット8)とは別の通信回線でマスターノード2と接続されたスレーブノードである。
図10に示す変形例では、兼用スレーブノード300は、特定リレー101を介してバッテリBTからの電力を操作デバイスに供給するよう構成されている。尚、兼用スレーブノード300は、特定リレー101と通信的に接続されていればよく、特定リレー101とは別のリレーを介してバッテリBTからの電力を操作デバイスに供給するように構成されていてもよい。また、兼用スレーブノード300は、マスターノード2の近傍に配置されたスレーブノード7で構成されていると、断線の可能性が低くなるため好ましい。
【0111】
兼用スレーブノード300は、特定リレー101を操作対象とするスレーブノードとしての機能を有するように、初期コンフィグレーションの時にマスターノード2によりコンフィグレーションされる。特定リレー101が別のリレーに交換されたときには、兼用スレーブノード300は、マスターノード2により再度コンフィグレーションされる。
【0112】
マスターノード2は、マスターノード2とワイパーユニット8との間に通信異常がある状態で、前記第1遮断条件と前記第2遮断条件とのいずれかの条件が満たされたときには、ワイパー81への電力供給を遮断すべく、特定リレー101をオフさせる操作命令信号を兼用スレーブノード300に送信する。マスターノード2から操作命令信号を受信した兼用スレーブノード300は、特定リレー101をオフして、ワイパー81に電力が供給されないようにする。マスターノード2は、車両CAが走行し始めた場合など、前記第1遮断条件及び前記第2遮断条件が満たされなくなったときには、ワイパー81に再度電力が供給されるようにすべく、特定リレー101をオンさせるように兼用スレーブノード300に操作命令信号を送信する。
【0113】
この変形例では、兼用スレーブノード300よりワイパー81への電力供給が遮断される。これにより、ワイパー81が停止されて、当該操作デバイスではバッテリBTの電力が消費されなくなる。この結果、バッテリBTの電力の枯渇を適切に抑制することができる。また、マスターノード2と特定スレーブノードとの通信回線とは別の通信回線で接続されかつ特定リレー101に接続されているスレーブノードでさえあれば、マスターノード2によるコンフィグレーションにより、兼用スレーブノード300とすることができる。これにより、冗長性を出来る限り高くすることができる。
【0114】
(まとめ)
したがって、本実施形態では、マスターノード2と、マスターノード2と通信的に接続され、マスターノード2から送信される情報に基づいて、操作デバイスをそれぞれ作動させる複数のスレーブノード7と、操作デバイスに供給される電力が蓄積されたバッテリBTと、バッテリBTからの電力を、操作デバイスに振り分けるための特定リレー101と、マスターノード2とネットワーク接続され、マスターノード2から送信される情報に基づいて特定リレー101を操作可能な電力操作部(リレー用ユニット100、兼用スレーブノード300)と、を備え、スレーブノード7は、マスターノード2との間の通信異常時において、接続された操作デバイスを作動させ続けることがあるように、マスターノード2によりコンフィグレーションされた特定スレーブノードを含み、特定スレーブノードは、マイコンを有しておらず、電力操作部は、マスターノード2と特定スレーブノードとの通信回線とは別の通信回線により当該マスターノード2に接続されており、マスターノード2は、マスターノード2と特定スレーブノードとの間に通信異常がありかつ所定の遮断条件が満たされたときには、特定スレーブノードと接続された操作デバイスへの電力供給が遮断されるように、電力操作部に操作命令信号を送信する。これにより、電力操作部により操作デバイスへの電力供給が遮断されるため、操作デバイスが停止されて、当該操作デバイスではバッテリの電力が消費されなくなる。この結果、バッテリBTの電力の枯渇を適切に抑制することができる。また、特定スレーブノードは、マイコンを有していないため、操作デバイスの機能変化の際は、特定スレーブノードを操作デバイスごと入れ換える必要がない。このため、車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応することができる。また、本実施形態では、電力操作部を構成するリレー用ユニット100や兼用スレーブノード300もマイコンを有していない。このため、特定リレー101が交換されるときであっても、電力操作部まで交換する必要はなく、そのまま転用することができる。新たな特定リレー101に対する電力操作部の操作は、マスターノード2がコンフィグレーションにより設定することができる。この点からも、本実施形態は、車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速に対応することができる。
【0115】
また、本実施形態では、遮断条件は、車両CAが駐車場で停車されかつ車両CAの動力装置がオフされているという第1遮断条件と、車両CAが駐車場で停車されかつ動力装置がオンの状態で所定時間が経過しているという第2遮断条件とを含む。これにより、運転者に支障を与えない適切なタイミングで操作デバイスを停止させることができる。
【0116】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0117】
例えば、前述の実施形態では、特定スレーブノードとしてワイパースレーブノード7aを例示した。これに限らず、ヘッドライトユニット(図示省略)を操作するスレーブノードについても、特定スレーブノードとなり得る。ヘッドライトは、通信異常時に常時オンすることが好ましいため、ヘッドライトへの電力供給を遮断できるようにしなければ、バッテリが枯渇するおそれがある。このため、ヘッドライトユニットと接続されたリレーについても、前述のようなリレー用ユニット100または兼用スレーブノード300により、ヘッドライトへの電力供給を遮断できるようにすることが好ましい。
【0118】
また、前述の実施形態では、リレー用ユニット100はマイコンを有しておらず、マスターノード2によるコンフィグレーションにより、特定リレー101をオフにする機能を有していた。これに限らず、リレー用ユニット100はマイコンを有していてもよい。
【0119】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
ここに開示された技術は、マスターノードと複数のスレーブノードとがネットワーク接続され、マスターノードから送信される情報に基づいて、各スレーブノードが操作対象である操作デバイスをそれぞれ作動させる車両制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0121】
1 車両制御システム
2 マスターノード
3 スレーブノード
7a ワイパースレーブノード(特定スレーブノード)
81 ワイパー(操作デバイス)
100 リレー用ノード(電力操作部)
101 特定リレー
300 兼用スレーブノード(電力操作部)
BT バッテリ
CA 車両