(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018655
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】光信号状態推定装置、光信号状態推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/075 20130101AFI20240201BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240201BHJP
【FI】
H04B10/075
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122109
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】児玉 純
(72)【発明者】
【氏名】榮 純明
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑嗣
(72)【発明者】
【氏名】市原 悦子
(72)【発明者】
【氏名】西岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】小梨 貴史
(72)【発明者】
【氏名】多賀戸 裕樹
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AD15
5K102AH14
5K102AH26
5K102AH27
5K102LA02
5K102LA11
5K102LA52
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH17
5K102PH22
5K102PH31
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】高い精度で光信号の信号状態を推定する。
【解決手段】光信号状態推定装置(1)は、光信号のコンスタレーションを取得する取得部(11)と、コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成部(12)と、学習済モデルに時系列データを入力することにより光信号の状態を推定する推定部(13)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成部と、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記推定対象の光信号の状態を推定する推定部と、
を備える光信号状態推定装置。
【請求項2】
前記特定数は、前記光信号の変調方式に応じた数である、
請求項1に記載の光信号状態推定装置。
【請求項3】
前記光信号の変調方式は、16QAM変調方式であり、
前記特定数は、10である、
請求項1に記載の光信号状態推定装置。
【請求項4】
前記光信号の変調方式は、2A8PSK変調方式であり、
前記特定数は、10である、
請求項1に記載の光信号状態推定装置。
【請求項5】
前記光信号の状態は、前記光信号のノイズ比である、
請求項1に記載の光信号状態推定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光信号状態推定装置を備えた、
光信号多重化装置。
【請求項7】
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置が、
前記光信号のコンスタレーションを取得することと、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成することと、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定することと、
を含む光信号状態推定方法。
【請求項8】
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置の光信号状態推定方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する処理と、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号状態推定装置、光信号状態推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ中を伝送される光信号の振幅や位相に基づいて、当該光信号の状態を把握する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、光信号内に含まれるシンボル情報を特定する信号点を分類する複数のシンボル領域を複数の分割領域に分割し、当該分割領域毎の信号点の集計数に基づき、光信号の位相雑音を算出する光信号処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光信号処理装置では、時間の経過による信号点の変化は考慮されていないため、光信号の状態を精度高く把握することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、高い精度で光信号の信号状態を推定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る光信号状態推定装置は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成部と、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記推定対象の光信号の状態を推定する推定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る光信号状態推定方法は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置が、前記光信号のコンスタレーションを取得することと、所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成することと、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定することと、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置の光信号状態推定方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記光信号のコンスタレーションを取得する処理と、所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する処理と、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、高い精度で光信号の信号状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る光信号状態推定装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る光信号状態推定方法の流れを示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る光信号多重化装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る前処理部が実行する処理の一例を示す図である。
【
図5】各実施例におけるグリッド数と正答数との関係を示すグラフである。
【
図6】各例示的実施形態に係る光信号状態推定装置として機能するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポート乃至インタフェースを備える構成としてもよいが、これらの構成については図示を省略する。
【0013】
(光信号状態推定装置1の構成)
本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1の構成例を示すブロック図である。
【0014】
本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する装置である。光信号状態推定装置1は、
図1に示すように、取得部11、生成部12、および推定部13を備えている。
【0015】
取得部11は、光信号のコンスタレーションを取得する。取得部11は、取得したコンスタレーションを、生成部12に供給する。
【0016】
コンスタレーションは、QPSK、16QAM等のデジタル直交変調方式における同相成分方向のチャネル(Iチャネル)と直交成分方向のチャネル(Qチャネル)の位相及び振幅の組合せを示す信号点の配置を定めたものである。
【0017】
生成部12は、所定時間内に取得したコンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する。生成部12は、生成した時系列データを推定部13に供給する。
【0018】
推定部13は、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定する。既知の状態の一例として、光信号のノイズ比(SN比)、クロストーク、帯域狭窄等が挙げられる。
【0019】
学習済モデルは、一例として、ニューラルネットワークにディープラーニング(深層学習)を行わせて生成された学習済モデルである。ここで、ニューラルネットワークの一例として、再帰型ニューラルネットワークRNN(Recurrent Neural Network)が挙げられる。
【0020】
以上のように、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1においては、光信号のコンスタレーションを取得する取得部11と、所定時間内に取得したコンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成部12と、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定する推定部13と、を備える構成が採用されている。
【0021】
このように、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1によれば、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力する。このため、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1によれば、時間の経過によるコンスタレーションの変化を考慮した上で光信号の状態を推定するので、高い精度で光信号の信号状態を推定することができる。
【0022】
また、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1によれば、光信号のコンスタレーションをそのまま用いるのではなく、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを用いる。このため、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置1によれば、コンスタレーションのグリッドパターンを考慮して光信号の状態を推定するので、高い精度で光信号の信号状態を推定することができる。
【0023】
(光信号状態推定方法S1の流れ)
本例示的実施形態に係る光信号状態推定方法S1の流れについて、
図2を参照して説明する。
図2は、本例示的実施形態に係る光信号状態推定方法S1の流れを示すフロー図である。
【0024】
(ステップS11)
ステップS11において、取得部11は、光信号のコンスタレーションを取得する。取得部11は、取得したコンスタレーションを、生成部12に供給する。
【0025】
(ステップS12)
ステップS12において、生成部12は、所定時間内に取得したコンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する。生成部12は、生成した時系列データを推定部13に供給する。
【0026】
(ステップS13)
ステップS13において、推定部13は、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定する。
【0027】
以上のように、本例示的実施形態に係る光信号状態推定方法S1においては、取得部11が光信号のコンスタレーションを取得することと、生成部12が、所定時間内に取得したコンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成することと、推定部13が、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定することと、を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る光信号状態推定方法S1によれば、上述した光信号状態推定装置1と同様の効果が得られる。
【0028】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0029】
(光信号多重化装置100の構成)
本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100について、
図3を参照して説明する。
図3は、本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100の構成例を示すブロック図である。
【0030】
本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100は、
図3に示すように、PBS31-1および31-2と、90度ハイブリッド32-1および32-2と、光検出部33-1および33-2と、ADC(Analog Digital Converter)34-1および34-2と、DSP(Digital Signal Processor)35と、を含んで構成されている。また、本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100は、
図3に示すように、光信号状態推定装置40を備えた光信号多重化装置である。なお、
図3には、光信号の送信部分の構成は記載していないが、送信部分は一般的な構成で実現可能である。
【0031】
光信号多重化装置100は、通信路から入力された複数の光信号を多重化する装置である。光信号の変調方式は特に限定されないが、一例として、16QAM変調方式、2A8PSK変調方式が挙げられる。
【0032】
PBS(Polarizing Beam Splitter)31-1は、通信路から入力された光信号S(t)を偏波分離し、X偏波を90度ハイブリッド32-1に出力し、Y偏波を90度ハイブリッド32-2に出力する。また、PBS31-2は、局所光を偏波分離し、X偏波を90度ハイブリッド32-1に出力し、Y偏波を90度ハイブリッド32-2に出力する。
【0033】
90度ハイブリッド32-1は、PBS31-1から入力される光信号のX偏波成分と、PBS31-2から入力される局所光のX偏波成分とを位相が互いに90度異なる2つの経路で合波する。90度ハイブリッド32-1は、光信号と局所光とを位相が90度異なる経路で合波することで生成したI相(In-phase)成分の信号と、Q相(Quadrature)成分の信号とを光検出部33-1に出力する。
【0034】
90度ハイブリッド32-2は、PBS31-1から入力される光信号のY偏波成分と、PBS31-2から入力される局所光のY偏波成分とを位相が互いに90度異なる2つの経路で合波する。90度ハイブリッド32-2は、光信号と局所光とを位相が90度異なる経路で合波することで生成したI相成分の信号と、Q相成分の信号とを光検出部33-2に出力する。
【0035】
光検出部33-1および33-2は、フォトダイオードを用いて構成されており、入力された光信号を電気信号に変換して出力する。光検出部33-1は、90度ハイブリッド32-1から入力されるX偏波のI相成分の光信号と、Q相成分の光信号とをそれぞれ電気信号に変換してADC34-1に出力する。また、光検出部33-2は、90度ハイブリッド32-2から入力されるY偏波のI相成分の光信号と、Q相成分の光信号とをそれぞれ電気信号に変換してADC34-2に出力する。
【0036】
ADC34-1は、光検出部33-1から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、X偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’としてDSP35に出力する。また、ADC34-2は、光検出部33-2から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、Y偏波のIチャネルIy’、Y偏波のQチャネルQy’としてDSP35に出力する。
【0037】
DSP35は、入力された信号の歪み補正、復号および誤り訂正等の受信処理を行ってADC34-1および34-2から入力される電気信号を復調し、X偏波のIチャネルIx、X偏波のQチャネルQx、Y偏波のIチャネルIy、Y偏波のQチャネルQyとして出力する。
【0038】
光信号状態推定装置40は、取得部41と、前処理部42と、生成部43と、推定部44と、学習部45と、データベース46とを含む。前処理部42および生成部43は、本例示的実施形態において推定部を実現する構成である。光信号状態推定装置40に含まれる各部が実行する処理の一例については、後述する。
【0039】
取得部41は、光信号のコンスタレーションを取得する。具体的には、取得部41は、ADC34-1および34-2から出力されるX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’を取得する。
【0040】
なお、取得部41は、DSP35から出力される復調後のX偏波のIチャネルIx、X偏波のQチャネルQx、Y偏波のIチャネルIy、およびY偏波のQチャネルQyを取得するようにしてもよい。
【0041】
前処理部42は、取得部41によって取得されたX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’に前処理を行って、処理結果を生成部43へ出力する。
【0042】
生成部43は、前処理部42から出力された処理結果に基づき、時系列データを生成する。
【0043】
推定部44は、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定する。
【0044】
学習部45は、後述するデータベース46に格納されている、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて、推定部44が用いる学習済モデルを学習させる。一例として、学習部45は、所定時間における光信号のノイズ比と、当該光信号のコンスタレーションとの複数の組を教師データとして、学習済モデルを学習させる。
【0045】
データベース46は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、ハードディスク等によって構成されている。データベース46には、学習部45によって参照される、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データが格納される。また、データベース46には、既知の状態と、コンスタレーションの特徴量とが対応付けて格納される。ここで、データベース46に格納されている、既知の状態に対応付けられたコンスタレーションの特徴量とは、コンスタレーションを上述した学習済モデルに入力し、学習済モデルから出力された特徴量である。
【0046】
(光信号状態推定装置40が実行する処理の例)
光信号状態推定装置40が実行する処理の一例について説明する。
【0047】
まず、取得部41は、ADC34-1および34-2から出力されるX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’を取得する。
【0048】
続いて、前処理部42が実行する処理の一例について、
図4を参照して説明する。
図4は、本例示的実施形態に係る前処理部42が実行する処理の一例を示す図である。
【0049】
前処理部42は、所定時間内に取得部41が取得したX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’を取得する。一例として、
図4の左端に示すように、前処理部42は、所定時間内に取得部41が取得したX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’を、それぞれX1、Y1、X2、Y2として取得する。
【0050】
ここで、所定時間は特に限定されず、例えば、10秒、20秒であってもよい。また、
図4の左端では、8192点または1180点の二次元座標データ(1秒/1シート)が取得されているため、8192点または1180点の二次元座標データを取得するための時間が所定時間として設定されてもよい。
【0051】
次に、前処理部42は、
図4の中央に示すように、X1、Y1、X2、Y2を複素平面上に描画する。そして、前処理部42は、複素平面を特定数(m行×n列)に分割した各グリッドに含まれる数を集計する。特定数mおよび特定数nは特に限定されないが、
図4の中央に示す図では、特定数は10である。換言すると、
図4の中央に示す図では、複素平面を10行×10列に分割している。
【0052】
また、特定数は、光信号の変調方式に応じた数であってもよい。
一例として、前処理部42は、光信号の変調方式が16QAM変調方式である場合、特定数10で分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成してもよい。
【0053】
他の例として、前処理部42は、光信号の変調方式が2A8PSK変調方式である場合、特定数10で分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成してもよい。
【0054】
当該構成により、光信号状態推定装置40は、変調方式に応じて光信号の信号状態を推定することができる。
【0055】
さらに、前処理部42は、後述する学習済モデルを学習させた既知の状態に応じた数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べて生成する構成であってもよい。一例として、学習済モデルを学習させた既知の状態がクロストークまたは帯域狭窄の場合は、特定数10以外(例えば、8、16など)で分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成してもよい。
【0056】
続いて、生成部43は、m行×n列のグリッドそれぞれに含まれる信号点数を計測し、m×n個のデータを作成する。すなわち、生成部43は、m×n個の時系列データを生成する。
【0057】
図4の中央に示す図では、上述したように複素平面を10行×10列に分割しているので、前処理部42は、10×10個の時系列データを作成する。なお、
図4においては、前処理部42が、ADC34-1から出力されるX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’に対して前処理を行ったデータと、ADC34-2から出力されるY偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’に対して前処理を行ったデータとの、2ファイルを作成する場合を示している。
【0058】
生成部43がm×n個の時系列データを生成すると、推定部44は、当該m×n個の時系列データを学習済モデルに入力する。学習済モデルについては、上述した通りである。そして、推定部44は、学習済モデルの出力に基づき、光信号の信号状態を推定する。
【0059】
一例として、推定部44は、学習済モデルから推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データの特徴量を取得する。そして、推定部44は、データベース46を参照し、取得した特徴量と近似している特徴量がデータベース46に格納されている場合、データベース46において当該特徴量に対応付けられた既知の状態を、光信号の信号状態であると推定する。
【0060】
このように、推定部44は、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データの特徴量と近似している特徴量の時系列データが過去にあったか否かに応じて、光信号の信号状態を推定する。このため、推定部44は、時間の経過によるコンスタレーションの変化を考慮した上で光信号の状態を推定するので、高い精度で光信号の信号状態を推定することができる。
【0061】
また、一例として、推定部44は、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを所定の間隔で学習済モデルに入力してもよい。例えば、10秒間に取得されたコンスタレーションに基づいて、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データが生成され、9:00:00から1秒間隔で当該時系列データを学習済モデルに入力する場合を例に挙げて説明する。
【0062】
推定部44はまず、9:00:00~9:00:10の10秒間に取得された推定対象の光信号のコンスタレーションに基づいて生成された時系列データを学習済モデルに入力し、光信号の状態を推定する。次に、推定部44は、1秒後の9:00:01~9:00:11の10秒間に取得された推定対象の光信号のコンスタレーションに基づいて生成された時系列データを学習済モデルに入力し、光信号の状態を推定する。
【0063】
このように、本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100によれば、光信号のコンスタレーションを取得する取得部41と、所定時間内に取得したコンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する前処理部42および生成部43と、既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された時系列データを入力することにより、推定対象の光信号の状態を推定する推定部44と、を備える構成が採用されている。したがって、本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100によれば、高い精度で光信号の信号状態を推定することができる。
【0064】
(実施例1)
本発明の一実施例について、
図5の上側を参照して以下に説明する。
図5は、実施例1および実施例2におけるグリッド数と正答率との関係を示すグラフである。
【0065】
図5の上側は、以下の条件においてグリッド数毎に正答率を算出したグラフである。また、実線は直交座標を用いた場合の結果を示し、点線は極座標を用いた場合の結果を示している。
・推定する光信号の状態:10db~35dbのノイズ比
・光信号の変調方式:2A8PSK変調方式
図5の上側に示すように、直交座標を用いた場合も、極座標を用いた場合も、10x10に分割した場合の正答率が最も高くなった。
【0066】
(実施例2)
本発明の他の実施例について、
図5の下側を参照して以下に説明する。
【0067】
図5の下側は、以下の条件においてグリッド数毎に正答率を算出したグラフである。また、実線は直交座標を用いた場合の結果を示し、点線は極座標を用いた場合の結果を示している。
・推定する光信号の状態:20db~35dbのノイズ比
・光信号の変調方式:2A8PSK変調方式
図5の下側に示すように、直交座標を用いた場合も、極座標を用いた場合も、10x10に分割した場合の正答率が最も高くなった。
【0068】
〔ソフトウェアによる実現例〕
光信号状態推定装置1、40の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0069】
後者の場合、光信号状態推定装置1、40は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図6に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを光信号状態推定装置1、40として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、光信号状態推定装置1、40の各機能が実現される。
【0070】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0071】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0072】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0073】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0075】
(付記1)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成部と、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記推定対象の光信号の状態を推定する推定部と、
を備える光信号状態推定装置。
【0076】
(付記2)
前記特定数は、前記光信号の変調方式に応じた数である、
付記1に記載の光信号状態推定装置。
【0077】
(付記3)
前記光信号の変調方式は、16QAM変調方式であり、
前記特定数は、10である、
付記1または2に記載の光信号状態推定装置。
【0078】
(付記4)
前記光信号の変調方式は、2A8PSK変調方式であり、
前記特定数は、10である、
請求項1または2に記載の光信号状態推定装置。
【0079】
(付記5)
前記光信号の状態は、前記光信号のノイズ比である、
付記1~4の何れかに記載の光信号状態推定装置。
【0080】
(付記6)
付記1~5のいずれかに記載の光信号状態推定装置を備えた、
光信号多重化装置。
【0081】
(付記7)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置が、
前記光信号のコンスタレーションを取得することと、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成することと、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定することと、
を含む光信号状態推定方法。
【0082】
(付記8)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置の光信号状態推定方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する処理と、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定する処理と、
を実行させるプログラム。
【0083】
(付記9)
少なくとも1つのプロセッサを備え、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
前記プロセッサは、
前記光信号のコンスタレーションを取得する取得処理と、
所定時間内に取得した前記コンスタレーションが、同相成分方向および直交成分方向をそれぞれ特定数に分割した各グリッドに含まれる数を集計したヒストグラム情報を時系列に沿って並べた時系列データを生成する生成処理と、
既知の状態の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを用いて学習された学習済モデルに、推定対象の光信号のコンスタレーションから生成された前記時系列データを入力することにより、前記光信号の状態を推定する推定処理と、
を実行する光信号状態推定装置。
【0084】
なお、この光信号状態推定装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記取得処理と、前記生成処理と、前記推定処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、40 光信号状態推定装置
11、41 取得部
12、43 生成部
13、44 推定部
31-1、31-2 PBS
32-1、32-2 度ハイブリッド
33-1、33-2 光検出部
34-1、34-2 ADC
35 DSP
42 前処理部
45 学習部
46 データベース
100 光信号多重化装置