IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特開2024-18656学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム
<>
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図1
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図2
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図3
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図4
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図5
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図6
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図7
  • 特開-学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018656
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/075 20130101AFI20240201BHJP
【FI】
H04B10/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122110
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】児玉 純
(72)【発明者】
【氏名】榮 純明
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑嗣
(72)【発明者】
【氏名】市原 悦子
(72)【発明者】
【氏名】西岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】多賀戸 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】小梨 貴史
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AD01
5K102AD15
5K102AH14
5K102AH22
5K102AH26
5K102AH27
5K102LA02
5K102LA11
5K102LA52
5K102MH03
5K102MH14
5K102PB01
5K102PH22
5K102PH31
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】複素平面におけるコンスタレーションが回転した場合でも、高い精度で信号状態を推定することができるように学習モデルを学習させる。
【解決手段】学習装置(1)は、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する取得部(11)と、コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する生成部(12)と、コンスタレーションおよび補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させる学習部(13)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の状態を推定する学習モデルの学習装置であって、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する生成部と、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる学習部と、
を備えた学習装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記補正コンスタレーションとして、前記コンスタレーションを複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション、前記コンスタレーションを複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション、および、前記コンスタレーションを複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーションをそれぞれ生成する、請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記状態は、ノイズ比である、請求項1に記載の学習装置。
【請求項4】
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、前記取得部が取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する推定部と、
を備えた光信号状態推定装置。
【請求項5】
前記補正コンスタレーションは、前記コンスタレーションを複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション、前記コンスタレーションを複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション、および、前記コンスタレーションを複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーションを含む、請求項4に記載の光信号状態推定装置。
【請求項6】
前記状態は、ノイズ比である、請求項4に記載の光信号状態推定装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の光信号状態推定装置を備えた、光信号多重化装置。
【請求項8】
光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法であって、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得し、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成し、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる、
学習方法。
【請求項9】
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定方法であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得し、
既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する、
光信号状態推定方法。
【請求項10】
光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する処理と、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、光信号状態推定装置、学習方法、光信号状態推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光信号の多重化装置であるWDM(Wavelength Division Multiplexing)に機械学習機能を搭載し、信号状態やパラメータ情報を学習させることで信号状態の推定や故障状態の推定を行うAI-WDMの研究開発が盛んに行われている。これに関連する技術として、下記の特許文献1に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1には、コンスタレーションデータなどの信号受信データと同様のデータを取得して、特徴データを生成し、生成した特徴データに基づいてコアの異常状態を推定し、推定結果を出力することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-140666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光信号の復調(エラー訂正)の過程において、復調後信号のIQ平面(複素平面)におけるコンスタレーションが複数の要因で回転してしまい、元データと異なるコンスタレーションとなる場合があり、正しく信号状態の推定が行えないといった問題がある。特許文献1に開示された技術を用いたとしても、このような問題を解決することはできない。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、IQ平面(複素平面)におけるコンスタレーションが回転した場合でも、高い精度で信号状態を推定することが可能な技術を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る学習装置は、光信号の状態を推定する学習モデルの学習装置であって、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する生成部と、前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる学習部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る光信号状態推定装置は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、前記取得部が取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する推定部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る学習方法は、光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法であって、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得し、前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成し、前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる。
【0010】
本発明の一態様に係る光信号状態推定方法は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定方法であって、前記光信号のコンスタレーションを取得し、既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する。
【0011】
本発明の一態様に係るプログラムは、光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する処理と、前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する処理と、前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、IQ平面(複素平面)におけるコンスタレーションが回転した場合でも、高い精度で信号状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の例示的実施形態に係る学習装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の例示的実施形態に係る学習装置の処理方法の流れを示すフロー図である。
図3】コンスタレーションの回転を説明するための図である。
図4】本発明の第1の例示的実施形態に係る光信号状態推定装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の例示的実施形態に係る光信号状態推定装置の処理方法の流れを示すフロー図である。
図6】本発明の第2の例示的実施形態に係る光信号状態推定装置を含んだ光多重化装置の構成例を示すブロック図である。
図7】コンスタレーション情報の前処理の一例を示す図である。
図8】各例示的実施形態に係る学習装置または光信号状態推定装置として機能するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔例示的実施形態1〕
<例示的実施形態1に係る学習装置1>
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポート乃至インタフェースを備える構成としてもよいが、これらの構成については図示を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1の例示的実施形態に係る学習装置1の構成例を示すブロック図である。本例示的実施形態に係る学習装置1は、光信号の状態を推定する学習モデルの学習装置であって、図1に示すように、取得部11と、生成部12と、学習部13と、を備えている。
【0016】
取得部11は、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する。既知の状態は、例えば、ノイズ比、クロストーク、帯域狭窄等の信号状態である。コンスタレーションは、QPSK、16QAM等のデジタル直交変調方式における同相チャネル(Iチャネル)と直交チャネル(Qチャネル)の位相及び振幅の組合せを示す信号点の配置を定めたものである。
【0017】
光信号の復調(エラー訂正)の過程において、復調後信号のIQ平面(複素平面)におけるコンスタレーションが複数の要因で回転してしまい、元データと異なるコンスタレーションとなる場合がある。この現象は、コンスタレーションデータの取得タイミングが回転事象の復調前であることに起因する。本出願人は、現在のAI-WDMにおいて、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、0°(回転なし)、90°、180°、270°の4パターンで発生することを確認している。
【0018】
生成部12は、コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する。上述のように、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、0°、90°、180°、270°の4パターンで発生するため、例えば、生成部12は、取得部11によって取得されたコンスタレーションから、コンスタレーションを複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション、コンスタレーションを複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション、および、コンスタレーションを複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーションをそれぞれ生成する。
【0019】
学習部13は、コンスタレーションおよび補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させる。上述のように、補正コンスタレーションは、コンスタレーションを複素平面上において回転させたものであるため、コンスタレーションと共に補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させることにより、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定できるように学習モデルを生成することができる。
【0020】
また、学習部13は、コンスタレーションと既知の状態との組、および、補正コンスタレーションと既知の状態との組を教師データとして、学習モデルを学習させるようにしてもよい。
【0021】
学習モデルは、一例として、ニューラルネットワークにディープラーニング(深層学習)を行わせて生成された学習モデルである。ここで、ニューラルネットワークとしては、CNN(Convolutional Neural Network)やRNN(Recurrent Neural Network)等を挙げることができる。なお、当該学習モデルは、これらの構成に限定されるものではなく、SVM(Support Vector Machine)等の他の機械学習であってもよいし、これら他の機械学習とニューラルネットワークとを組み合わせたものであってもよい。なお、学習モデルは、推論モデル、推定モデル、識別モデルなどとも表現され得るものである。
【0022】
<学習装置1の効果>
以上説明したように、本例示的実施形態に係る学習装置1によれば、学習部13が、コンスタレーションと共に補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させる。したがって、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定できるように学習モデルを生成することができる。
【0023】
<学習装置1による処理方法の流れ>
以上のように構成された学習装置1が実行する処理方法の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、第1の例示的実施形態に係る学習装置1の処理方法の流れを示すフロー図である。図2に示すように、処理方法S1は、光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法であって、ステップS11~S13を含む。
【0024】
まず、取得部11は、光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する(S11)。既知の状態は、例えば、ノイズ比、クロストーク、帯域狭窄等の信号状態である。コンスタレーションは、QPSK、16QAM等のデジタル直交変調方式における同相チャネル(Iチャネル)と直交チャネル(Qチャネル)の位相及び振幅の組合せを示す信号点の配置を定めたものである。
【0025】
次に、生成部12は、コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する(S12)。
【0026】
図3は、コンスタレーションの回転を説明するための図である。図3において、四角で囲まれている部分は、パイロット信号と呼ばれる補助信号を示しており、このパイロット信号がコンスタレーション上に影響を及ぼしている。
【0027】
図3の左端の図は、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、0°(回転なし)の場合を示している。図3の左から2番目の図は、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、90°の場合を示している。図3の左から3番目の図は、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、180°の場合を示している。図3の右端の図は、複素平面上におけるコンスタレーションの回転が、270°の場合を示している。
【0028】
図3に示すように、コンスタレーションの回転パターンが4パターンであり、また回転対象の信号点は特定可能であることから、擬似的にソフトウェア処理で該当信号点の座標をずらすことで各コンスタレーションの回転パターンを再現し、データオーグメンテーション(データ拡張)を行うことができる。
【0029】
最後に、学習部13は、コンスタレーションおよび補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させる(S13)。上述のように、補正コンスタレーションは、コンスタレーションを複素平面上において回転させたものであるため、コンスタレーションと共に補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させることにより、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定できるように学習モデルを生成することができる。
【0030】
<学習装置1の処理方法の効果>
以上説明したように、本例示的実施形態に係る学習装置1の処理方法によれば、学習部13が、コンスタレーションと共に補正コンスタレーションを用いて学習モデルを学習させる。したがって、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定できるように学習モデルを生成することができる。
【0031】
<例示的実施形態1に係る光信号状態推定装置2>
図4は、本発明の第1の例示的実施形態に係る光信号状態推定装置2の構成例を示すブロック図である。本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置2は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、図4に示すように、取得部21と、推定部22と、を備えている。
【0032】
取得部21は、光信号のコンスタレーションを取得する。コンスタレーションは、QPSK、16QAM等のデジタル直交変調方式における同相チャネル(Iチャネル)と直交チャネル(Qチャネル)の位相及び振幅の組合せを示す信号点の配置を定めたものである。
【0033】
推定部22は、既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得部21が取得したコンスタレーションから、光信号の状態を推定する。既知の状態は、例えば、ノイズ比、クロストーク、帯域狭窄等の信号状態である。
【0034】
また、推定部22は、既知の状態の光信号のコンスタレーションと既知の状態との組、および、既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションと既知の状態との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、取得部21が取得したコンスタレーションから、光信号の状態を推定するようにしてもよい。
【0035】
<光信号状態推定装置2の効果>
以上説明したように、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置2によれば、推定部22が、コンスタレーションおよび補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得部21が取得したコンスタレーションから、光信号の状態を推定する。したがって、推定部22は、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定することができる。
【0036】
<光信号状態推定装置2による処理方法の流れ>
以上のように構成された光信号状態推定装置2が実行する処理方法の流れについて、図5を参照して説明する。図5は、本例示的実施形態に係る光信号状態推定装置2の処理方法の流れを示すフロー図である。図5に示すように、光信号状態推定装置2の処理方法S2は、光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定方法であって、ステップS21~S22を含む。
【0037】
まず、取得部21が、光信号のコンスタレーションを取得する(S21)。コンスタレーションは、QPSK、16QAM等のデジタル直交変調方式における同相チャネル(Iチャネル)と直交チャネル(Qチャネル)の位相及び振幅の組合せを示す信号点の配置を定めたものである。
【0038】
次に、推定部22は、既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得部21が取得したコンスタレーションから、光信号の状態を推定する。
【0039】
<光信号状態推定方法の効果>
以上説明したように、本例示的実施形態に係る光信号状態推定方法によれば、推定部22が、コンスタレーションおよび補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得部21が取得したコンスタレーションから、光信号の状態を推定する。したがって、推定部22は、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定することができる。
【0040】
〔例示的実施形態2〕
<例示的実施形態2に係る光信号多重化装置100の構成例>
図6は、本発明の第2の例示的実施形態に係る光信号多重化装置100の構成例を示すブロック図である。本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100は、PBS31-1および31-2と、90度ハイブリッド32-1および32-2と、光検出部33-1および33-2と、ADC(Analog Digital Converter)34-1および34-2と、DSP(Digital Signal Processor)35と、光信号状態推定装置40と、を含む。なお、図6には、光信号の送信部分の構成は記載していないが、送信部分は一般的な構成で実現可能である。
【0041】
PBS(Polarizing Beam Splitter)31-1は、通信路から入力された光信号S(t)を偏波分離し、X偏波を90度ハイブリッド32-1に出力し、Y偏波を90度ハイブリッド32-2に出力する。また、PBS31-2は、局所光を偏波分離し、X偏波を90度ハイブリッド32-1に出力し、Y偏波を90度ハイブリッド32-2に出力する。
【0042】
90度ハイブリッド32-1は、PBS31-1から入力される光信号のX偏波成分と、PBS31-2から入力される局所光のX偏波成分とを位相が互いに90度異なる2つの経路で合波する。90度ハイブリッド32-1は、光信号と局所光とを位相が90度異なる経路で合波することで生成したI相(In-phase)成分の信号と、Q相(Quadrature)成分の信号とを光検出部33-1に出力する。
【0043】
90度ハイブリッド32-2は、PBS31-1から入力される光信号のY偏波成分と、PBS31-2から入力される局所光のY偏波成分とを位相が互いに90度異なる2つの経路で合波する。90度ハイブリッド32-2は、光信号と局所光とを位相が90度異なる経路で合波することで生成したI相成分の信号と、Q相成分の信号とを光検出部33-2に出力する。
【0044】
光検出部33-1および33-2は、フォトダイオードを用いて構成されており、入力された光信号を電気信号に変換して出力する。光検出部33-1は、90度ハイブリッド32-1から入力されるX偏波のI相成分の光信号と、Q相成分の光信号とをそれぞれ電気信号に変換してADC34-1に出力する。また、光検出部33-2は、90度ハイブリッド32-2から入力されるY偏波のI相成分の光信号と、Q相成分の光信号とをそれぞれ電気信号に変換してADC34-2に出力する。
【0045】
ADC34-1は、光検出部33-1から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、X偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’としてDSP35に出力する。また、ADC34-2は、光検出部33-2から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、Y偏波のIチャネルIy’、Y偏波のQチャネルQy’としてDSP35に出力する。
【0046】
DSP35は、入力された信号の歪み補正、復号および誤り訂正等の受信処理を行ってADC34-1および34-2から入力される電気信号を復調し、X偏波のIチャネルIx、X偏波のQチャネルQx、Y偏波のIチャネルIy、Y偏波のQチャネルQyとして出力する。
【0047】
光信号状態推定装置40は、取得部41と、前処理部42と、生成部43と、特徴量変換部44と、特徴量DB45と、特徴量検索部46と、状態判定部47とを含む。特徴量変換部44、特徴量DB45、特徴量検索部46、および状態判定部47は、本例示的実施形態において推定部を実現する構成である。
【0048】
取得部41は、光信号のコンスタレーションを取得する。具体的には、取得部41は、ADC34-1および34-2から出力されるX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’を取得する。
【0049】
なお、取得部41は、DSP35から出力される復調後のX偏波のIチャネルIx、X偏波のQチャネルQx、Y偏波のIチャネルIy、およびY偏波のQチャネルQyを取得するようにしてもよい。
【0050】
前処理部42は、取得部41によって取得されたX偏波のIチャネルIx’、X偏波のQチャネルQx’、Y偏波のIチャネルIy’、およびY偏波のQチャネルQy’に前処理を行って、処理結果を生成部43へ出力する。
【0051】
図7は、コンスタレーション情報の前処理の一例を示す図である。図7の左端に示すように、コンスタレーション情報は、例えば、8192点または1108点の2次元座標データ(1秒/1シート)として取得される。
【0052】
図7の中央に示すように、前処理部42は、2次元座標データを複素平面上に描画した後、特定の大きさのグリッドに区切って、複数のグリッド(例えば、m行×n列)に分割する。
【0053】
そして、図7の右端に示すように、前処理部42は、m行×n列のグリッドそれぞれに含まれる信号点数を計測し、m×n個のデータを作成する。なお、図7においては、前処理部42が、ADC34-1および34-2から出力されるコンスタレーション情報に対して前処理を行ったデータと、DSP35から出力されるコンスタレーション情報に対して前処理を行ったデータとの、2ファイルを作成する場合を示している。
【0054】
生成部43は、前処理部42によって前処理された後のコンスタレーション情報を複素平面上において回転させた補正コンスタレーション情報を生成する。具体的には、生成部43は、補正コンスタレーション情報として、コンスタレーション情報を複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション情報、コンスタレーション情報を複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション情報、および、コンスタレーション情報を複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーション情報をそれぞれ生成する。
【0055】
特徴量変換部44は、前処理部42によって前処理された後のコンスタレーション情報、および生成部43によって生成された補正コンスタレーション情報を用いた機械学習により学習モデルを生成する。このとき、コンスタレーション情報および補正コンスタレーション情報から特徴量を抽出できるように学習モデルの学習が行われる。そして、特徴量変換部44は、学習モデルの機械学習が終了すると、機械学習によって生成された学習モデルを用いて、既知の状態の光信号のコンスタレーション情報を特徴量に変換し、既知の状態と共に特徴量DB45に蓄積する。なお、既知の状態は、例えば、ノイズ比である。
【0056】
特徴量DB45は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、ハードディスク等によって構成されており、特徴量変換部44によって変換された特徴量と既知の状態とを対応付けて逐次記憶して蓄積する。
【0057】
特徴量変換部44は、信号状態を推定する場合、機械学習された学習モデルに対して、光ファイバ中を伝送される光信号のコンスタレーション情報を入力することによって、コンスタレーション情報を特徴量に変換する。そして、特徴量検索部46は、特徴量DB45に記憶される特徴量を検索する。
【0058】
状態判定部47は、特徴量DB45に、光信号のコンスタレーション情報の特徴量に近似している特徴量がある場合には、その特徴量に対応付けられた既知の状態を参照することによって、現在の光信号の状態等を判定することができる。そして、状態判定部47は、判定結果を外部へ出力する。
【0059】
<光信号多重化装置100の効果>
以上説明したように、本例示的実施形態に係る光信号多重化装置100によれば、生成部43が、補正コンスタレーション情報として、コンスタレーション情報を複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション情報、コンスタレーション情報を複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション情報、および、コンスタレーション情報を複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーション情報をそれぞれ生成する。したがって、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度で信号状態を推定できるように学習モデルを生成することができる。
【0060】
また、光信号状態推定装置40は、既知のノイズ比の光信号のコンスタレーション、および、既知のノイズ比の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得部41が取得したコンスタレーションから、光信号のノイズ比を推定する。したがって、コンスタレーションデータの回転事象が発生した場合でも、高い精度でノイズ比を推定することができる。
【0061】
〔ソフトウェアによる実現例〕
学習装置1、光信号状態推定装置2、40、光信号多重化装置100の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0062】
後者の場合、学習装置1、光信号状態推定装置2、40、光信号多重化装置100は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を図8に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを学習装置1、光信号状態推定装置2、40、光信号多重化装置100として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、学習装置1、光信号状態推定装置2、40、光信号多重化装置100の各機能が実現される。
【0063】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0064】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAMを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0065】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0066】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0068】
(付記1)
光信号の状態を推定する学習モデルの学習装置であって、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する生成部と、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる学習部と、
を備えた学習装置。
【0069】
(付記2)
前記生成部は、前記補正コンスタレーションとして、前記コンスタレーションを複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション、前記コンスタレーションを複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション、および、前記コンスタレーションを複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーションをそれぞれ生成する、
付記1に記載の学習装置。
【0070】
(付記3)
前記状態は、ノイズ比である、
付記1または2に記載の学習装置。
【0071】
(付記4)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得する取得部と、
既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、前記取得部が取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する推定部と、
を備えた光信号状態推定装置。
【0072】
(付記5)
前記補正コンスタレーションは、前記コンスタレーションを複素平面上において90度回転させた第1の補正コンスタレーション、前記コンスタレーションを複素平面上において180度回転させた第2の補正コンスタレーション、および、前記コンスタレーションを複素平面上において270度回転させた第3の補正コンスタレーションを含む、
付記4に記載の光信号状態推定装置。
【0073】
(付記6)
前記状態は、ノイズ比である、
付記4または5に記載の光信号状態推定装置。
【0074】
(付記7)
付記4~6のいずれかに記載の光信号状態推定装置を備えた、
光信号多重化装置。
【0075】
(付記8)
光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法であって、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得し、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成し、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる、
学習方法。
【0076】
(付記9)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定方法であって、
前記光信号のコンスタレーションを取得し、
既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する、
光信号状態推定方法。
【0077】
(付記10)
光信号の状態を推定する学習モデルの学習方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する処理と、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる処理と、
を実行させるプログラム。
【0078】
(付記11)
光信号の状態を推定する学習モデルの学習装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、
光ファイバ中を伝送される、既知の状態の光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
前記コンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを生成する処理と、
前記コンスタレーションおよび前記補正コンスタレーションを用いて前記学習モデルを学習させる処理と、
を実行させる学習装置。
【0079】
なお、この学習データ抽出装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記取得する処理と、前記生成する処理と、前記学習させる処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【0080】
(付記12)
光ファイバ中を伝送される光信号の状態を推定する光信号状態推定装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記光信号のコンスタレーションを取得する処理と、
既知の状態の光信号のコンスタレーション、および、前記既知の状態の光信号のコンスタレーションを複素平面上において回転させた補正コンスタレーションを用いて学習させた学習済みモデルを用いて、取得した前記コンスタレーションから、前記光信号の状態を推定する処理と、
を実行する光信号状態推定装置。
【0081】
なお、この光信号状態推定装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記取得する処理と、前記推定する処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 学習装置
2,40 光信号状態推定装置
11,21,41 取得部
12,43 生成部
13 学習部
22 推定部
31-1,31-2 PBS
32-1,32-2 90度ハイブリッド
33-1,32-2 光検出部
34-1,34-2 ADC
35 DSP
42 前処理部
44 特徴量変換部
45 特徴量DB
46 特徴量検索部
47 状態判定部
100 光信号多重化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8