(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018667
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】粒子操作装置、及び粒子操作方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/10 20060101AFI20240201BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01J19/10
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122138
(22)【出願日】2022-07-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔1〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年8月9日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=uc95gFuyYx4 〔2〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年8月10日 (2) ウェブサイトのアドレス https://youtu.be/FlUKv7hT2mc 〔3〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年8月11日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=myEfvHulsTQ 〔4〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年9月27日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=iS6BsQzeQ4g
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔5〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=WI31jcQfX14 〔6〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=jSbNkMfxvfU 〔7〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=DPlYI1ZetfU 〔8〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=U9ZoOnP4t2c 〔9〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=GfOJlvejimM 〔10〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=gbQfRbAhSZ0 〔11〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=cZzg_wFB7ls 〔12〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=iHxUoLyAutc 〔13〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年11月25日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=qET6OMRxN80
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔14〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月8日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=qyKZt0JWVBs 〔15〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月8日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=egWNU5VwR_c 〔16〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月8日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=95csO6zE7ZE 〔17〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月13日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=gSfwnisTE-g 〔18〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月14日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=7RFYaZS-OJQ 〔19〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和3年12月14日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=Fpt9slkAcTU
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔20〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月2日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=c1Yd2gTDg8k 〔21〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月2日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=erhtqPtgStE 〔22〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月3日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=g2iTLSlIufc 〔23〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月20日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=xN7Wk3-5iJs 〔24〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月20日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=8HSVNY913gI
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔25〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月3日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=Icpnikx6R8U 〔26〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月6日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=EZaySlqeBqA 〔27〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月10日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=EtbB3MYtiGI 〔28〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月13日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=8yF7RRkppRs 〔29〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月22日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/XRdp54gJnKo 〔30〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月24日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=wvEttjMeQ4c 〔31〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月24日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=MW_oGgZT2Fs 〔32〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月24日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=_28t5a4hspc 〔33〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月24日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=T8awEFMZJXc 〔34〕 (1) ウェブサイトの掲載日 令和4年2月24日 (2) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=1e0JCWsF-oc
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】伏見 龍樹
(72)【発明者】
【氏名】落合 陽一
(72)【発明者】
【氏名】頃安 祐輔
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA61
4G075BA10
4G075BB05
4G075BB10
4G075CA23
4G075DA02
4G075EB50
4G075FA03
4G075FC20
(57)【要約】
【課題】サイズの大きい粒子であっても、3次元方向の任意の位置に操作することが可能であり、かつ、複数の粒子を個別に操作することが可能な粒子操作装置、及びこれを用いた粒子操作方法を提供する。
【解決手段】音場生成手段と、前記音場生成手段に隣接して配されたステージと、前記音場生成手段を制御する制御手段と、を有し、前記音場生成手段は、振動素子を配置したものからなり、前記ステージは音波を通過させるシート材からなり、前記制御手段は、前記ステージに配される粒子に向けて、前記振動素子で生じる音波ビームを前記粒子に向けて照射させ、該音波ビームを前記ステージの任意の位置に移動させることにより、前記粒子を前記ステージの任意の3次元位置に移動するように前記音場生成手段を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音場生成手段と、前記音場生成手段に隣接して配されたステージと、前記音場生成手段を制御する制御手段と、を有し、
前記音場生成手段は、振動素子を配置したものからなり、
前記ステージは音波を通過させるシート材からなり、
前記制御手段は、前記ステージに配される粒子に向けて、前記振動素子で生じる音波ビームを前記粒子に向けて照射させ、該音波ビームを前記ステージの任意の位置に移動させることにより、前記粒子を前記ステージの任意の3次元位置に移動するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする粒子操作装置。
【請求項2】
前記粒子は液滴であることを特徴とする請求項1に記載の粒子操作装置。
【請求項3】
前記液滴は水を含み、前記シート材は、撥水性を有するメッシュシートからなることを特徴とする請求項2に記載の粒子操作装置。
【請求項4】
前記音場生成手段は、前記ステージに対して所定の間隔を開けて、前記ステージの下部に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子操作装置。
【請求項5】
前記音場生成手段は、前記ステージの上面に沿った横方向に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子操作装置。
【請求項6】
前記音波は、超音波であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子操作装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記音波ビームの照射位置を前記ステージの上面側において複数形成し、複数の前記粒子を前記ステージの上面の任意の3次元位置にそれぞれ移動するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の粒子操作装置。
【請求項8】
前記制御手段は、複数の前記液滴を前記ステージの上面の任意の位置で一体化させて1つの前記液滴となるように前記音場生成手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の粒子操作装置。
【請求項9】
前記制御手段は、1つの前記液滴を前記ステージの上面の任意の位置で分割して複数の前記液滴となるように前記音場生成手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の粒子操作装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記ステージの上面から上方向に向けて前記粒子が跳躍するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の粒子操作装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の粒子操作装置を用いた粒子操作方法であって、前記ステージの任意の位置に前記音波ビームの照射位置を合わせることによって、前記照射位置に前記粒子を移動させることを特徴とする粒子操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子操作装置、及びこれを用いた粒子操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の化学物質や検体の研究において、実験の処理能力の向上、再現性の向上のために、マイクロリットル単位の液滴を操作することによる自動化技術が求められている。誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)、静電、及び音響浮揚プラットフォーム等のマイクロ流体の制御方法は、優れた液体(液滴)の操作及び高速制御をもたらすとされている。
【0003】
例えば、非特許文献1~9には、デジタルマイクロ流体力学(DMF)プラットフォームが開示されている。しかし、DMFの分野においては、誘電体表面へのEWODが依然として最も普及した方法である。非特許文献10には、表面上の液滴を3次元方向に操作するEWODに関する技術が開示されている。こうした液滴の面上に沿った操作に加えて、更に液滴を十分な高さで高さ方向に跳躍させる技術が望まれている。例えば、非特許文献10~17には、液滴を高さ方向に跳躍させる技術が開示されている。
【0004】
一方、上述したDMF技術と並行して、液滴の浮揚技術に基づく3Dマイクロ流体力学も研究されている。音響浮揚は、浮揚対象が特定の材料特性(例えば、磁性)を有することを必要としないため、液滴の浮揚技術の中でも有望である。例えば、Forestiらは、音響浮揚を使用して、水平空中統合器と、空中での化学/生物学実験を実証している(例えば、非特許文献18)。
【0005】
液滴の音響浮揚技術に基づく3Dマイクロ流体力学における現行のシステムでは、液滴の操作として定常波の使用が必須であるとされている。(例えば、非特許文献20~23)。これにより、論理的に可能な液滴の浮揚サイズ(球体の半径)は、定常波の波長の4分の1に限定される(非特許文献24)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】RB Fair, Digital microfluidics: is a true lab-on-a-chip possible? Microfluid. Nanofluidics 3, 245-281 (2007).
【非特許文献2】S Waheed, et al., 3D printed microfluidic devices: Enablers and barriers. Lab on a Chip 16, 1993-2013 (2016).
【非特許文献3】Y Zhang, NT Nguyen, Magnetic digital microfluidics - a review. Lab on a Chip 17, 994-1008 (2017).
【非特許文献4】U Umapathi, P Shin, K Nakagaki, D Leithinger, H Ishii, Programmable Droplets for Interaction in Extended Abstracts of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. (ACM, New York, NY, USA), pp. 1-1 (2018).
【非特許文献5】T Franke, AR Abate, DA Weitz, A Wixforth, Surface acoustic wave (SAW) directed droplet flow in microfluidics for PDMS devices. Lab on a Chip 9, 2625 (2009).
【非特許文献6】X Tang, et al., Mechano-regulated surface for manipulating liquid droplets. Nat. Commun. 8, 1-10 (2017).
【非特許文献7】Y Jin, et al., Electrostatic tweezer for droplet manipulation. Proc. Natl. Acad. Sci. United States Am. 119 (2022).
【非特許文献8】C Yang, Y Ning, X Ku, G Zhuang, G Li, Automatic magnetic manipulation of droplets on an open surface using a superhydrophobic electromagnet needle. Sensors Actuators, B: Chem. 257, 409-418 (2018).
【非特許文献9】Q Sun, et al., Surface charge printing for programmed droplet transport. Nat. Mater. 18, 936-941 (2019).
【非特許文献10】Y Mi, et al., 3D Photovoltaic Router of Water Microdroplets Aiming at Free-Space Microfluidic Transportation. ACS Appl. Mater. & Interfaces 13, 45018-45032 (2021).
【非特許文献11】SJ Lee, S Lee, KH Kang, Droplet jumping by electrowetting and its application to the threedimensional digital microfluidics. Appl. Phys. Lett. 100 (2012).
【非特許文献12】SJ Lee, J Hong, KH Kang, IS Kang, SJ Lee, Electrowetting-induced droplet detachment from hydrophobic surfaces. Langmuir 30, 1805-1811 (2014).
【非特許文献13】Z Wang, et al., Jumping drops on hydrophobic surfaces, controlling energy transfer by timed electric actuation. Soft Matter 13, 4856-4863 (2017).
【非特許文献14】K Takeda, A Nakajima, K Hashimoto, T Watanabe, Jump of water droplet from a superhydrophobic film by vertical electric field. Surf. Sci. 519, 3-6 (2002).
【非特許文献15】B Traipattanakul, C Tso, CY Chao, Study of jumping water droplets on superhydrophobic surfaces with electric fields. Int. J. Heat Mass Transf. 115, 672-681 (2017).
【非特許文献16】W Yan, et al., Optically Guided Pyroelectric Manipulation of Water Droplet on a Superhy-drophobic Surface. ACS Appl. Mater. Interfaces 13, 23181-23190 (2021).
【非特許文献17】N Li, et al., Ballistic Jumping Drops on Superhydrophobic Surfaces via Electrostatic Manipulation. Adv. Mater. 30, 1703838 (2018).
【非特許文献18】MAB Andrade, N Perez, JC Adamowski, Review of Progress in Acoustic Levitation. Braz. J. Phys. 48, 190-213 (2018).
【非特許文献19】D Foresti, M Nabavi, M Klingauf, A Ferrari, D Poulikakos, Acoustophoretic contactless transport and handling of matter in air. Proc. Natl. Acad. Sci. 110, 12549-12554 (2013).
【非特許文献20】MAB Andrade, TSA Camargo, A Marzo, Automatic contactless injection, transportation, merging, and ejection of droplets with a multifocal point acoustic levitator. Rev. Sci. Instruments 89, 125105 (2018).
【非特許文献21】A Watanabe, K Hasegawa, Y Abe, Contactless Fluid Manipulation in Air: Droplet Coalescence and Active Mixing by Acoustic Levitation. Sci. Reports 8, 10221 (2018).
【非特許文献22】SJ Brotton, RI Kaiser, Controlled Chemistry via Contactless Manipulation and Merging of Droplets in an Acoustic Levitator. Anal. Chem. 92, 8371-8377 (2020).
【非特許文献23】T Matsubara, K Takemura, Containerless Bioorganic Reactions in a Floating Droplet by Levitation Technique Using an Ultrasonic Wave. Adv. Sci. 8, 1-5 (2021).
【非特許文献24】RR Whymark, Acoustic field positioning for containerless processing. Ultrasonics 13, 251-436 261 (1975).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、化学及び物理学における一般的な実験では、例えば、40μLを超える容量の液滴の混合及び取り扱いが必要であり、最も一般的に使用される音響周波数が40kHz(λ=8.6mm)であるとすると、非特許文献24に開示された技術では、こうした容量の大きい液滴を操作することができないという課題があった、また、従来の音響による液滴の浮揚では、常に全ての液滴が浮揚される必要があるため、同時に取り扱い可能な液滴の数が少数に制限されてしまうといった課題もあった。さらに、音響浮揚を用いて液滴を分割することも困難であるといった課題もあった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、サイズの大きい粒子であっても、3次元方向の任意の位置に操作することが可能であり、かつ、複数の粒子を個別に操作することが可能な粒子操作装置、及びこれを用いた粒子操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、音波を通過させる撥液性のシート材の上面に配された液滴などの粒子に対して、音波を集束した音波ビームを照射し、この音波ビームの焦点位置をシート材の上部の任意の3次元位置に移動させることにより、容量の大きい液滴であっても、シート材の上面の任意の位置まで移動させ、また、従来よりも高い位置まで跳躍させることが可能であることを見出した。また、撥水性等が無いシートの表面であっても,ライデンフロスト効果など、音波を通過する面から液滴などの粒子が少し浮く状態であれば、同様の液滴操作が可能であることを見出した。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態の粒子操作装置は、以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の粒子操作装置は、音場生成手段と、前記音場生成手段に隣接して配されたステージと、前記音場生成手段を制御する制御手段と、を有し、前記音場生成手段は、振動素子を配置したものからなり、前記ステージは音波を通過させるシート材からなり、前記制御手段は、前記ステージに配される粒子に向けて、前記振動素子で生じる音波ビームを前記粒子に向けて照射させ、該音波ビームを前記ステージの任意の位置に移動させることにより、前記粒子を前記ステージの任意の3次元位置に移動するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする。
【0011】
(2)本発明の態様2は、態様1の粒子操作装置において、前記粒子は液滴であることを特徴とする。
【0012】
(3)本発明の態様3は、態様2の粒子操作装置において、前記液滴は水を含み、前記シート材は、撥水性を有するメッシュシートからなることを特徴とする。
【0013】
(4)本発明の態様4は、態様1から3のいずれか1つの粒子操作装置において、前記音場生成手段は、前記ステージに対して所定の間隔を開けて、前記ステージの下部に形成されることを特徴とする。
【0014】
(5)本発明の態様5は、態様1から4のいずれか1つの粒子操作装置において、前記音場生成手段は、前記ステージの上面に沿った横方向に形成されることを特徴とする。
【0015】
(6)本発明の態様6は、態様1から5のいずれか1つの粒子操作装置において、前記音波は、超音波であることを特徴とする。
【0016】
(7)本発明の態様7は、態様1から6のいずれか1つの粒子操作装置において、前記制御手段は、前記音波ビームの照射位置を前記ステージの上面側において複数形成し、複数の前記粒子を前記ステージの上面の任意の3次元位置にそれぞれ移動するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする。
【0017】
(8)本発明の態様8は、態様2の粒子操作装置において、前記制御手段は、複数の前記液滴を前記ステージの上面の任意の位置で一体化させて1つの前記液滴となるように前記音場生成手段を制御することを特徴とする。
【0018】
(9)本発明の態様9は、態様2の粒子操作装置において、前記制御手段は、1つの前記液滴を前記ステージの上面の任意の位置で分割して複数の前記液滴となるように前記音場生成手段を制御することを特徴とする。
【0019】
(10)本発明の態様10は、態様1から9のいずれか1つの粒子操作装置において、前記制御手段は、前記ステージの上面から上方向に向けて前記粒子が跳躍するように前記音場生成手段を制御することを特徴とする。
【0020】
(11)本発明の態様11の粒子操作方法は、態様1から10のいずれか1つの粒子操作装置を用いた粒子操作方法であって、前記ステージの任意の位置に前記音波ビームの照射位置を合わせることによって、前記照射位置に前記粒子を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サイズの大きい粒子であっても、3次元方向の任意の位置に操作することが可能であり、かつ、複数の粒子を個別に操作することが可能な粒子操作装置、及びこれを用いた粒子操作方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒子操作装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】振動素子の位相差制御によって音波ビームを生成する様子を示す模式図である。
【
図3】ステージの中心に液滴の目標位置を設定した際の、それぞれの振動素子の位相差を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の粒子操作装置によって操作される液滴の挙動例を示す模式図である。
【
図5】本発明の別な実施形態の粒子操作装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の粒子操作装置、及びこれを用いた粒子操作方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0024】
本願発明における操作対象となる粒子は、固体の粒子、および液体の粒子、即ち液滴のいずれも含んでいる。以下の各実施形態では、これら粒子のうち、液滴を例示して説明するが、本願発明における粒子は、液滴に限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施形態の粒子操作装置、およびこれを用いた粒子操作方法について説明する。
図1は、本実施形態の粒子操作装置の構成を示す模式図である。
本実施形態の粒子操作装置10は、音場生成手段11と、ステージ12と、音場生成手段11を制御する制御手段13と、音場生成手段11を動作させる電源14と、スタンド15と、を備えている。
【0026】
音場生成手段11は、例えば、複数の振動素子21,21…を平面上に配列したものから構成されている。音場生成手段11は複数の振動素子21,21…のそれぞれの位相を制御することで、音波、本実施形態では超音波を、ステージ12に向けて、任意の強度で照射することができる。これにより、複数の振動素子21,21…から、ステージ12の一面12a上の1つの座標に向けて超音波を集束させることによって、この1つの座標を焦点にした、超音波を集束させた超音波ビーム(音波ビーム)Bを形成することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、音場生成手段11を複数の振動素子21から構成しているが、1つの振動素子で音場生成手段11を構成することもできる。
【0028】
本実施形態では、振動素子21として、音波のうち、波長が20kHz~20MHz程度の超音波を照射する素子を用いているが、振動素子21は、こうした超音波よりも波長が長い音波を照射する素子を用いることもできる。それぞれの振動素子21は、制御手段13によって位相が制御され、振動素子21どうしで位相差を形成することができる。
【0029】
また、本実施形態の音場生成手段11は、X方向およびY方向にそれぞれ16個、合計256個の振動素子21を配列したものから構成されているが、振動素子21の配列個数は限定されるものではなく、個々の振動素子21の性能(出力値)やステージ12の大きさに応じて、適宜選択されればよい。
【0030】
ステージ12は、一面12a上に操作される液滴(粒子)Qが載置される。こうしたステージ12は、例えばスタンド15に支持されたフレーム16の開口部分に四方を支持されている。このステージ12は、振動素子21から照射される音波、例えば超音波ビームBを通過可能なシート状の材料、本実施形態では、メッシュ部材から構成されている。
また、このステージ12は、本実施形態では撥水性を有している。こうしたステージ12は、例えば、樹脂層の形成などによって撥水加工を施した布などを用いることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、ステージ12の一面12a上で操作する液滴Qとして、水を含む液滴を想定して撥水性を有しているが、これ以外にも、例えば操作する液滴として水に不溶性の油滴を用いる場合、ステージ12として撥油性を有するシート材を用いることができる。
【0032】
制御手段13は、例えば、パソコン、増幅回路、およびインターフェースなどから構成され、電源14から供給される電力によって、音場生成手段11を構成する個々の振動素子21の出力強度及び位相を制御する。
【0033】
なお、本実施形態では、液滴(粒子)Qを操作するための超音波ビームの照射位置の制御として、位相差を用いた例を示しているが、これ以外にも、例えば、振動素子21の振幅差や振幅を制御することでも、液滴(粒子)Qを操作することができる。
【0034】
図2に示すように、音場生成手段11を構成する個々の振動素子21の位相差を制御することによって、任意の座標を焦点にした超音波ビーム(音波ビーム)Bを形成することができる。即ち、平面上に配列された複数の振動素子21を動作させる際に、振動素子21どうしで遅延時間を設定することで、振動素子21どうしで位相差が形成される。
これにより、平面上に配列された複数の振動素子21から、ステージ12の一面12a上の任意の座標を焦点Fにして、超音波を集束させた超音波ビーム(音波ビーム)Bが照射される。
【0035】
なお、本実施形態では、液滴(粒子)Qの操作位置を、ステージ12の一面12a上で超音波が集束した焦点位置としているが、これに限定されるものではない。焦点位置は一例であり、制御対象となる液滴(粒子)Qに対して安定的な音響放射力を照射するものであれば、どのようなものであってもよい。また,不安定な音響放射力であっても、閉制御ループを組み込めば、液滴(粒子)Qを操作することができる。また、音響場の位相勾配やOrbital Angular Momentum(軌道角運動)を用いて粒子を動かすことも可能である。
また、本実施形態では、液滴(粒子)Qは、ステージ12の上面となる一面12a上で操作しているが、液滴(粒子)Qの位置はこれに限定されるものではなく、ステージ12の下面で操作することもでき、位置が限定されるものではない。
【0036】
制御手段13は、例えばパソコンから液滴Qの操作情報が入力されると、この操作情報に基づいて振動素子21どうしの位相差の変化を算出し、音場生成手段11を構成する個々の振動素子21を制御する。
【0037】
例えば、ステージ12の一面12a上で操作される液滴Qの移動経路の座標や跳躍高さなどが入力されると、超音波ビームの焦点座標が変化する経路に基づいて、音場生成手段11を構成する個々の振動素子21の位相差の変化が算出される。そして、この位相差の変化に基づいて個々の振動素子21が制御され、ステージ12の一面12a上において、超音波ビームBの焦点の3次元座標を任意の位置に変化させることができる。
図3に、ステージ12の中心に液滴の目標位置を設定した際の、それぞれの振動素子21の位相差の模式図を示す。
【0038】
そして、こうした超音波ビームBの焦点位置において液滴Qがトラップされ、液滴Qがステージ12の一面12a上において任意の3次元位置に制御される。
なお、本実施形態では、超音波ビームBの焦点座標は、液滴Qの実際の目標位置よりも僅かに上(例えば10mm)に設定している。
【0039】
音場生成手段11とステージ12との距離は、任意の距離だけ離間していればよいが、本実施形態では、音場生成手段11とステージ12との距離を10cmに設定している。
【0040】
図4は、本実施形態の粒子操作装置によって操作される液滴の挙動例を示す模式図である。
図4(a)では、所定の座標上で液滴Qをステージ12の一面12aから離間させ、高さ方向(z)に向けて跳躍させている。こうした液滴Qの跳躍は、液滴Qに向けて照射される超音波ビームBの出力値を高めることによって行うことができる。本実施形態の粒子操作装置10によれば、容量が40μLを超える液滴Qを、従来よりも高い10cm程度まで跳躍させることができる。
【0041】
図4(b)では、液滴Qをステージ12の一面12a上で円を描くように回転移動させている。こうした液滴Qのステージ12の一面12a上での移動は、超音波ビームBの焦点位置の変化(経路)を制御手段13に入力することにより、超音波ビームBの焦点位置が変化し、この焦点位置でトラップされる液滴Qが任意の経路で移動する。なお、こうした実施形態は、密度が高いため、操作がやや難しい。
【0042】
図4(c)では、2つの液滴Qを1つの液滴として合体させるように移動させている。この例では、ステージ12の一面12a上の2箇所にある液滴Q1,Q2のそれぞれに対して超音波ビームBの焦点を設定し、次に、2つの超音波ビームBの焦点がステージ12の一面12a上の中心付近で一致するように移動させる。これにより、2つの液滴Q1,Q2を合体させて、1つの大きな液滴Qにすることができる。
【0043】
このように、ステージ12は、撥水性を有しているため、複数の液滴は、ステージ12表面に吸着されることなく、ステージ12の一面12a上に楕円球形の液滴として留まることができるため、最小限の超音波ビームBの出力で複数の液滴Qを効率的に操作することができる。そして、この例のように、複数の液滴を合体させて1つにする操作は、例えば、器具による吸引や混合が困難な、ごく微量で、かつ反応性の高い薬液の混合、反応等に利用することができる。
【0044】
図4(d)では、1つの液滴Qを2つの液滴に分割している。
この例では、ステージ12の一面12a上にある液滴Qの上部に、表面撥水加工を行ったナイフKを設置し、このナイフKに向けて液滴Qを跳躍させることにより、1つの液滴Qが2つの液滴Q1,Q2に分割され、ステージ12の一面12a上の互いに離れた位置に着地する。
この例のように、1つの液滴を分割して2つにする操作は、例えば、器具による分取が困難な、ごく微量の薬液を正確に分割するなどの目的で利用することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の粒子操作装置10によれば、複数の振動素子21を配列した音場生成手段11と、この音場生成手段11から離間して配され、撥液性のシート材からなるステージ12と、を備えることにより、液滴Qがシート材の表面に吸着されないため、従来と同様の超音波ビームBの出力であっても、液滴Qの操作力が高められる。これにより、液滴Qを撥水性のステージ12の一面12a上で精密に、かつ自在に制御することができる。例えば、液滴Qは、従来よりも高い10cm以上に跳躍させることが可能になる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、音場生成手段11はステージ12の下部に配置しているが、音場生成手段11の形成位置はこれに限定されるものではない。
図5は、本発明の別な実施形態の粒子操作装置の構成を示す模式図である。
この実施形態の粒子操作装置30では、ステージ12の下部に音場生成手段31Aが形成されると共に、ステージ12の一面12aに沿った横方向にも音場生成手段31Bが形成される。
【0047】
このような構成によれば、ステージ12の一面12aに載置された液滴Qを、より高速で横方向に効率的に移動させたり、斜め上方に液滴Qを大きく跳躍させたりすることができる。音場生成手段は、これ以外にも、ステージ12の一面12aのうち対向する2辺に形成されていたり、ステージ12を取り巻くように4辺に沿って形成されていてもよく、形成位置が限定されるものではない。
【0048】
また、上述した実施形態以外にも、音波を通過可能なステージを複数重ね合わせた構成にすることもできる。これにより、それぞれのステージごとに配置された液滴(粒子)を操作することも可能になる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0050】
以下、本発明の粒子操作装置を用いて、実際に液滴の操作を行ったいくつかの実施例を示す。
(実施例1)
ステージ上で液滴を移動させる実験を行った。
図6(A)は、ステージ上を移動する液滴(容量45μL)のタイムラプス画像を示しており、
図6(B)、(C)は、振動素子の印可電圧を10Vにした時の、4つの容量(15、30、45、及び60μL)の液滴の2つの周波数(f=1.0Hz(
図6(B))、λ=0.2Hz(
図6(C)))に対する水平位置の水平軌跡を示している。
【0051】
図6(B)、(C)に示される通り、本発明の粒子操作装置を用いると、大きな容量の液滴であって、高速での移動が困難な60μLの場合を除いて、特定された軌跡をほぼ辿っている。すべての容量の液滴について、
図6(B)では、t=1/2f及び1/fで、何らかのオーバーシュート及び減衰不足の振動が観察された。
【0052】
減衰不足の振動は、液滴の移動中、
図6(B)よりも
図6(C)においてより優勢となっており、定常偏差の大きさは、双方のケースで同様であった。これらの軌跡偏差は無視できる程度でないものの、より正確な液滴制御を達成するために、液滴位置を検出することで、クローズドループコントロールを実現してもよい。
【0053】
(実施例2)
ステージ上で液滴を跳躍させる実験を行った。
図7(A)~(H)は、メッシュからなるステージ上から液滴を上方に跳躍させるプロセスを示している。液滴の容量が15、30、45、及び60μLでの液滴の跳躍を検証した。振動素子の印可電圧は、12V及び16Vとした。放物運動には変動性があるため、実験は5回繰り返した。
【0054】
ここで、それぞれの液滴の跳躍高さは、ピーク時及び最初の液滴の重心間の差として規定される。振動素子への印可電圧が12Vであったとき、液滴の平均跳躍高さは、15、30、45、60μLに対して、それぞれ、30.7(SD=0.778)、33.2(SD=1.87)、15.8(SD=4.23)、及び3.25mm(SD=0.752)であった(
図7(A)~(D))。
【0055】
振動素子への印可電圧を16Vに上昇したとき、液滴の平均跳躍高さは、15、30、45、及び60μLに対して、それぞれ、109(SD=15.1)、78.0(SD=15.7)、59.7、27.4mmに上昇した(
図7(E),(F))。記録された最大跳躍高さは、16V、15μLで128mmである。これは、従来のEWODによって達成された跳躍高さ、焦電方法によって達成された跳躍高さ、及び起電力によって達成された跳躍高さの、それぞれ、32倍、8倍、及び4倍であった。
【0056】
なお、実施例2はそれぞれ5回繰り返し、
図7(A)~(H)の画像は、5回の実験のうち最も高い跳躍高さのものである。また、
図7(A)~(H)の図面の目盛りは、ステージからの高さである。
【0057】
(実施例3)
ステージ上で2つの液滴を合体させて1つの液滴にする実験を行った。
図8(A)は、ステージ上を移動する2つの液滴のタイムラプス画像を示している。また、
図8(B)には、2つの液滴の時間経過に伴うx座標の位置の変化を示している。
振動素子の印加電圧を25Vとして、両端にある2つの液滴をそれぞれ中央に向けて移動させた。移動開始から0.84秒で2つの液滴が合体し、最終的に中央で1つの液滴となった。
【0058】
(実施例4)
ステージ上で2つの液滴をナイフによって分割して2つの液滴にする実験を行った。
図9は、ステージ上を跳躍して2つに分割される液滴のタイムラプス画像を示している。
ステージ上の高さ5mmの位置に撥水加工されたナイフを設置し、振動素子の印加電圧を12Vとして、容量45μLの液滴を上方に跳躍させた。ナイフは、液滴を約70msで半分に切断し、液滴は、垂直方向に移動し続け、自由落下の後、再びステージ上に着地した。液滴の容量を15μL、30μLにした場合でも、同様に2つの液滴に分割された。
【0059】
(実施例5)
ステージ上で互いに化学反応する2つの液滴を合体させて、化学反応させた液滴にする実験を行った。
図10は、2つの液滴がステージ上を移動して合体し、化学反応後の1つの液滴が形成される様子を示すタイムラプス画像である。
一方の液滴として米酢(容量30μL)、他方の液滴として塩基性状態(黄色に呈色)のブロモチモールブルー(BTB)溶液(容量30μL)を用い、ステージの中央に向けて、それぞれの液滴を移動させた。
【0060】
その結果、移動開始から0.71s後に液滴どうしが合体し始め、0.88s後には米酢とブロモチモールブルーとが化学反応を起こし、青色に変化した液滴が得られた。こうした実験から、僅かな液量の化学物質を反応させて合成物を得るといった用途にも利用できることが確認できた。
【0061】
(実施例6)
ステージ上で液滴を移動させて、微小な固形物を包み込んだ液滴を形成する実験を行った。
図11は、液滴が円状に移動し、その途上で微小な固形物を包み込んで移動する様子を示すタイムラプス画像である。
振動素子の印加電圧を11Vとして、液滴として水滴(容量30μL)を、ステージ上で円形軌道で移動させた。また、この軌道内に、予め固形物としてプラスチックビーズを配置した。水滴は軌道内で0.57秒後に固形物を取り込み、ビーズを包含した水滴として、10.7秒後に出発位置に戻った。こうした実験から、特定の化学物質(固形物)を液滴に取り込むといった、実験の自動化において特に有用である。
【0062】
(実施例7)
ステージ上で液滴を大きく跳躍させて、容器に収容する実験を行った。
図12は、液滴を跳躍させて容器に入れる様子を示すタイムラプス画像である。
振動素子の印加電圧を18Vとして、液滴として水滴(容量5μL)をステージ上から放物線を描くように跳躍させ、高さ80mmのカップ内に収容させることができた。このような液滴の大きな3次元飛翔力により、調理中の味付けの自動化、添加物製造、実験の自動化などの用途に適用することができる。
本発明の粒子操作装置、粒子操作方法によれば、種々の化学物質や検体の研究において、マイクロリットル単位の液滴の操作を自動化することができる。これにより、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)、静電、及び音響泳動プラットフォーム等のマイクロ流体の制御を容易にかつ精密に行うことに寄与する。従って、本発明は産業上の利用可能性を有する。