(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001867
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】プラントキャリア
(51)【国際特許分類】
A01G 9/00 20180101AFI20231227BHJP
A01G 31/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A01G9/00 C
A01G31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023098395
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】22180540.1
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503314705
【氏名又は名称】ユングハインリヒ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロールヴァ, フォルカー
【テーマコード(参考)】
2B314
2B327
【Fターム(参考)】
2B314PD06
2B327TA02
2B327TC09
2B327UA03
2B327UA26
(57)【要約】
【課題】間欠的な潅水に適していて簡易に構成されたプラントキャリアを提供する。
【解決手段】潅水室(2)と、流入部(5)と、流出経路構造(15)を有する流出部(6)とを備えるプラントキャリア(1)が記載される。流出経路構造(15)は第1の流動方向を有する第1の流出経路と第2の流出経路とを有し、第2の流出経路は第1の流出経路への少なくとも1つの連通部を有するとともに、連通部の領域に、連通部の領域で第1の流動方向と反対を向く方向成分を含む第2の流動方向を有することが意図される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潅水室(2)と、流入部(5)と、流出経路構造(15)を有する流出部(6)とを備えるプラントキャリア(1)において、前記流出経路構造(15)は第1の流動方向を有する第1の流出経路(19)と第2の流出経路(20)とを有し、前記第2の流出経路(20)は前記第1の流出経路(19)への少なくとも1つの連通部(21)を有するとともに、前記連通部(21)の領域に、前記連通部の領域(21)で前記第1の流動方向と反対を向く方向成分を含む第2の流動方向を有することを特徴とする、プラントキャリア(1)。
【請求項2】
前記第2の流出経路(20)は、前記第1の流出経路(19)への少なくとも5つの連通部(21)を有することを特徴とする、請求項1に記載のプラントキャリア。
【請求項3】
前記第1の流出経路(19)は直列につながれた少なくとも1つの第1の区域(24)と第2の区域(25)とを有し、前記第1の区域(24)と前記第2の区域(25)は相並んで配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【請求項4】
前記第1の流出経路(19)は、直列につながれて相並んで配置された奇数個の区域(24~26)を有することを特徴とする、請求項3に記載のプラントキャリア。
【請求項5】
前記流出部は、衝突ヘッド装置(29)を介して前記流出経路構造(15)と接続された流出開口部(28)を有し、前記衝突ヘッド装置(29)は重力方向で上方に向く衝突ヘッド(30)を有し、その表面(31)は第1の通路(32)の壁部へと移行し、前記流出経路構造(15)は前記衝突ヘッド構造(29)の少なくとも1つの開口部(34)を介して第2の通路(33)と接続され、前記第1の通路(32)と前記第2の通路(33)は前記流出開口部(28)に連通し、又はこれらを通過して延びることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラントキャリア。
【請求項6】
前記衝突ヘッド装置(29)は、重力方向に沿って前記流出開口部(28)とアライメントされることを特徴とする、請求項5に記載のプラントキャリア。
【請求項7】
前記重力ヘッド装置(29)は、重力方向で上方に向くパイプ(36)と接続されることを特徴とする、請求項5又は6に記載のプラントキャリア。
【請求項8】
オーバーフロー(44)を介して前記潅水室(2)と接続された第3の流出経路が設けられることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプラントキャリア。
【請求項9】
前記第1の流出経路(19)と前記第2の流出経路(20)は、前記オーバーフロー(44)により規定される高さよりも高い壁部(38)によって前記第3の流出経路から分離されることを特徴とする、請求項8に記載のプラントキャリア。
【請求項10】
前記流入部は衝突プレート(40)によって中断される流動断面(39)を含む流入パイプ(11)を有し、前記流入パイプ(11)は前記衝突プレートの領域(40)に少なくとも1つの出口開口部(42)を含むパイプ壁(41)を有することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプラントキャリア。
【請求項11】
前記流入パイプ(11)は、流入室(7)の底面から事前決定された高さに配置された少なくとも1つの入口開口部(43)をその壁部(41)に有することを特徴とする、請求項10に記載のプラントキャリア。
【請求項12】
前記流入室(7)は、少なくとも1つの貫流開口部(10)を有する分離壁(8)によって前記潅水室(2)から分離されることを特徴とする、請求項11に記載のプラントキャリア。
【請求項13】
前記貫流開口部(10)は、前記潅水室(2)の底面(9)に接することを特徴とする、請求項12に記載のプラントキャリア。
【請求項14】
前記流入部(5)と前記流出部(6)は、前記潅水室(2)の同じ縁部に配置されることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のプラントキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潅水室と、流入部と、流出経路構造を有する流出部とを備えるプラントキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
このような種類のプラントキャリアは、特にいわゆる「垂直農法」で利用され、すなわち、このような種類の複数のプラントキャリアが重力方向に相上下して配置された栽培室構造で利用される。このとき1つの特別に好ましい利用法は、プラントキャリアが直接的に積み重ねられるブロック型保管庫にプラントキャリアを配置することである。
【0003】
プラントキャリアでは種子、実生、又は若い植物が、培地又はその他の基層の上で育成される。このとき植物は、厳密に言うと植物の根は、時おり潅水されなければならない。その際に、植物の根をある程度の時間、湿潤させ、当該時間帯の経過後に再び水を流出させて、根が酸素と接触するようにするのが望ましい場合が多い。
【0004】
しかしこうした間欠的な潅水は、特に、潅水室から水を流出させるために、又はそこに留めておくために、流出部の領域に配置されるバルブを必要とする、比較的高い制御コストを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、間欠的な潅水のために適していて簡易に構成されたプラントキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭に述べた種類のプラントキャリアにおいて、流出経路構造は第1の流動方向を有する第1の流出経路と第2の流出経路とを有し、第2の流出経路は第1の流出経路への少なくとも1つの連通部を有するとともに、連通部の領域に、連通部の領域で第1の流動方向と反対を向く方向成分を含む第2の流動方向を有することによって解決される。
【0007】
このような種類のプラントキャリアでは、流れ出るときの水を制御するためにバルブが必要なくなる。流れ出る水は、一方では第1の流出経路を通って、及び他方では第2の流出経路を通って、流れる。第2の流出経路を通って流れる水は、第1の流出経路を通って流動する水と合流するが、第2の流動経路からの水は、第1の流出経路を通って水が流動する方向と反対向きの方向成分を有しているので、第2の流出経路を通って流れる水が第1の流出経路の水を減速させ、それにより、潅水室から全体として流れ出る水の流動の絞りにつながる。ただしこの絞りは、植物残滓、汚れ粒子などによる詰まりの危険がある小さい断面によって実現されるのではなく、反対方向を向く流動によって惹起される。このとき流出経路の寸法は、植物残滓などによる詰まりのリスクを低く抑えることができる程度の大きさに選択される。このとき両方の流出経路の配置は、たとえば米国特許1329 559号から公知であるようなテスラバルブの構造に相当する。このようなテスラバルブは「阻止方向」で作動する。ただし、流動経路を通る流動が完全に阻止されるのではなく、遅延されるにすぎない。ここで、及び以下において、「水」という言葉を用いるときには、それによって純粋な水だけでなく、プラントキャリアに収容されている植物へ養分や水分を運ぶことができるあらゆる液体も意味される。
【0008】
第2の流動経路は、少なくとも5つの連通部を第1の流動経路に有するのが好ましい。それに伴い、第1の流動経路を通って流れ出る水の流動が阻害されて減速される、5つの阻害個所が生じる。連通部が多く存在しているほど、絞り作用がいっそう高くなる。
【0009】
第1の流動経路は、直列につながれた少なくとも1つの第1の区域と第2の区域とを有するのが好ましく、第1の区域と第2の区域は相並んで配置される。すなわち第1の区域と第2の区域の間で、流れ出る水が約180°だけ反転をしなければならず、このことは、流出経路構造を通って流れる水の流動のさらなる絞りと減速につながる。第1の流出経路の第2の区域に対して、当然ながら、第2の流出経路の第2の区域が並列につながれていてもよく、それにより第2の区域でも、第1の流出経路への第2の流出経路の連通が生じる。このことは絞り作用を更にいっそう改善する。
【0010】
第1の流出経路は、直列につながれて相並んで配置された奇数個の区域を有するのが好ましい。この場合、流出経路構造を通って流れる水の相応に多い数の方向転換部を含む、第1の流出経路のメアンダ状の導通が生じる。第1の流出経路の「入口」は、「出口」と同じ端部にあるのではない。すべての区域に第2の流出経路の連通部が存在していてよく、すべての連通部で第1の流出経路での流動が、第2の流出経路の反対方向を向く流動に当たる。
【0011】
第1の流出部が、衝突ヘッド装置を介して流出経路構造と接続された流出開口部を有するのも好ましく、衝突ヘッド装置は重力方向で上方に向く衝突ヘッドを有し、その表面は第1の通路の壁部へと移行し、流出経路構造は衝突ヘッド構造の少なくとも1つの開口部を介して第2の通路と接続され、第1の通路と第2の通路は流出開口部に連通し、又はこれらを通過して延びる。複数のプラントキャリアが相上下して配置されている場合、重力方向で高いほうに配置されているプラントキャリアから流れ出る水は、更に下に配置されている1つ又は複数のプラントキャリアを通って流動しなければならず、ある意味では使用済みである流れ出た水が、更に下に配置されている1つ又は複数のプラントキャリアの潅水室を通って流れるのを回避しようとすれば、上側のプラントキャリアから流れ出る水が、更に下に配置されているプラントキャリアの流出部を通って流れ出ることができるように配慮しなくてはならない。その際に、流れ出る水の大きすぎる落下高さを回避するために、上側のプラントキャリアから流れ出る水が当たる衝突ヘッドが設けられる。衝突ヘッドから、水が第1の通路を通って流出開口部へと誘導される。このような衝突ヘッド装置を装備しているプラントキャリアから流れ出た水が、第2の通路に流れ込む。上側のプラントキャリアからの水と下側のプラントキャリアからの水の混合は、衝突ヘッドで初めて行われるか、又は更にその後で行われる。それに伴い、上側のプラントキャリアから流れ出る水が、下側のプラントキャリアの潅水室へ侵入するのを回避することができる。
【0012】
衝突ヘッド装置は、重力方向に沿って流出開口部とアライメントされているのが好ましい。このことが特に好ましいのは、プラントキャリアがスタック可能に構成されている場合である。このようなケースでは、衝突ヘッド装置は重力方向で、その上に配置されているプラントキャリアの流出開口部の下方にある。このとき、大きすぎる落下高さを生じることなく、2つを超えるプラントキャリアを重力方向で相上下して配置することもできる。
【0013】
このとき衝突ヘッド装置は、重力方向で下方に向くパイプと接続されているのが好ましい。このようなパルプを通って、重力方向で更に上に配置されているプラントキャリアからの水が下方に向かって流れることができ、衝突ヘッド装置の衝突ヘッドへと確実に誘導される。
【0014】
オーバーフローを介して潅水室と接続された第3の流出経路が設けられるのが好ましい。このような構成により、水の流入の制御もきわめて大幅に簡易化される。潅水室を充填するのに必要な容積を明らかに超える容積をもって、水を供給することができる。水は、オーバーフローを介して流出できるようになるまで、潅水室の中に滞留する。すなわちオーバーフローは、潅水室の水の充填水位高さを定義する。オーバーフローは、流れ出る水を事実上いかなる流動抵抗でも妨げることがなく、第3の流出経路は第2の流出経路と並列に配置されるので、水が絞られることはなく、もしくは容認できる程度にしか絞られることがなく、それにより水が流出することができ、オーバーフローの高さに相当する、潅水室の充填水位高さが遵守される。すべてのプラントキャリアの潅水室が十分な程度に充填されたときに、水の供給流を中断することができ、水が第1及び第2の流出経路を通って流出できるようになり、このとき流れ出る水の流動は、上で説明したとおり強力に絞られるので、事前決定された時間のあいだ植物に潅水するために十分な水が潅水室にまだ存在する。
【0015】
このとき第1の流出経路と第2の流出経路は、オーバーフローにより規定される高さよりも高い壁部によって、第3の流出経路から分離されるのが好ましい。すなわちオーバーフローを介して第3の流出経路へ、更にそこから流出部へと流れる水が、第1及び第2の流出経路を通って流れる水と混ざることがない。
【0016】
流入部は、衝突プレートによって中断される流動断面を含む流入パイプを有するのが好ましく、流入パイプは、衝突プレートの領域に少なくとも1つの出口開口部を含むパイプ壁を有する。流入部についても、大きすぎる落下高さが回避される。プラントキャリアが相上下して配置されている場合、供給される水は1つの流入パイプから次の流入パイプへのみ流れることができるが、上下にスタックされた複数のプラントキャリアの高さ全体にわたって流れることはできない。重力方向で上側に配置されているプラントキャリアを通って流動する水は、せいぜいのところ、重力方向でその下に配置された次のプラントキャリアの流入パイプの衝突プレートまでしか流れることができない。そこで水は方向転換されて、外方に向かって出口開口部を通って流れ出るほかない。
【0017】
このとき流入パイプは、流入室の底面から事前決定された高さに配置された少なくとも1つの入口開口部をその壁部に有するのが好ましい。その場合、流入パイプの出口開口部から出ていく水が、入口開口部を通って再び流入パイプへと入り、更に流入パイプを通って更に下方に向かって流動して、重力方向で更に下側に配置されているプラントキャリアに水を供給する。入口開口部の高さが、すなわち流入室の底面から入口開口部までの間隔が、充填高さを規定する。
【0018】
流入室は、少なくとも1つの貫流開口部を有する分離壁によって潅水室から分離されるのが好ましい。分離壁は、植物残滓、ちぎれた根、汚れなどが潅水室から流入室に入り、そこから他のプラントキャリアへと一緒に押し流されるのを防止する。貫流開口部を通るこのような種類の通過を完全に排除することはできないものの、流入室から潅水室への流動が貫流開口部で生じるので、非常に確率が低い。
【0019】
貫流開口部は、潅水室の底面に接するのが好ましい。すなわち貫流開口部はいわば「下側」に配置され、このことは汚れ、植物残滓などが入り込む危険を少なく抑える。
【0020】
流入部と流出部は、潅水室の同じ縁部に配置されるのが好ましい。このことは、特にプラントキャリアをブロック型保管庫構造に配置されるべきである場合に、構成を簡素化する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、好ましい実施例を用いて図との関連で本発明を説明する。
【
図2】流入部と流出部とを有するプラントキャリアの端部を示す拡大図である。
【
図5】衝突ヘッド装置を部分的に断面図で示す斜視図である。
【
図8】
図7の流入パイプを部分的に断面図で示す図である。
【
図9】流入部を部分的に断面図で示す斜視図である。
【
図10】流出部を部分的に断面図で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、「ベンチ」とも呼ぶことができるプラントキャリア1を示している。プラントキャリア1は、壁部3で取り囲まれた潅水室2を有している。潅水室2は、培地、不織布などの上に配置される植物を収容するための役目を果たす。そこで植物を種子や実生などの初期段階から成長した植物へと育成してから、収穫することができる。
【0023】
プラントキャリア1は、特に、ブロック型保管庫又はスタック式保管庫構造で利用されるために意図される。このとき複数のプラントキャリア1が、重力方向で相上下して配置される。複数のプラントキャリア1は、互いに適合するジオメトリーを有する、詳しくは図示しないスペーサを有しており、それにより、ブロック型保管庫に複数のプラントキャリア1のスタックを配置することができる。プラントキャリア1は、重力方向で下側の面に走行レール4を有しており、及び場合により、重力方向でそれぞれのプラントキャリアの下の位置に配置されるプラントキャリアの植物を照明することができる、図示しない照明装置を有する。
【0024】
植物はその成長のために、以下においては一般的に「水」と呼ぶ液体を必要とする。水とともに、通常、植物への養分も運ばれる。
【0025】
水の供給を確保するために、プラントキャリア1は流入部5と流出部6を有している。流入部5と流出部6が、
図2に拡大して図示されている。流出部6については、
図3から
図6との関連で詳しく説明する。流入部5については、
図7から
図10との関連で詳しく説明する。
【0026】
流入部5は、壁部8によって潅水室2から分離された流入室7を有している。潅水室2は底面9を有している。壁部8は、底面9の領域に複数の開口部10を有していて、これを通って水が流入室7から潅水室2に流れ込むことができる。壁部8は、あとで説明する流入パイプ11を示すために、ここでは部分的に開いた状態で図示されている。流入パイプ11は、重力方向で上方に向かって突き出すパイプ12と接続されている。このパイプ12は、重力方向でプラントキャリア1の上方に配置されているプラントキャリアからプラントキャリア1へと水を流れさせるために設けられる。パイプ12は重力方向で上側の端部にスリーブ13を有していて、その中に、重力方向でプラントキャリア1の上方に配置される別のプラントキャリアの流入パイプ11(
図9)の下側の端部14を入れることができる。
【0027】
流出部6は、
図3及び
図4との関連で詳しく説明する流出経路構造15を有している。流出経路構造15は、壁部17によって潅水室2から分離された流出室16に配置されている。壁部17は、潅水室2の底面9の領域に、複数の開口部18を有している。更に壁部17は、たとえば開口部として構成されていてよいオーバーフロー44を有している。
【0028】
流出経路構造15は第1の流出経路19を有していて、その先頭部が
図4に破線で図示されている。水は第1の流出経路19の中で、
図4に破線で示す領域で右から左へと向かう流動方向で流動することができる。更に流出経路構造15は、流れ出る水が円弧部で案内される、連通部21をもって第1の流出経路19に連通する第2の流出経路20を有している。連通部21の領域で、第2の流出経路20を通って流動する水は、第1の流出経路19における流動方向と反対を向く成分を含む流動方向を有する。
【0029】
第1の流出経路19と第2の流出経路20は、そらせ板22によって互いに分離されている。第2の流出経路20は、第1の流出経路19と反対を向く誘導壁23を有していて、この誘導壁は、直線区域と、150°から180°の範囲内の屈曲角を有する屈曲区域とを有している。
【0030】
第1の流出経路19は、第1の区域24と、第2の区域25と、第3の区域26とを有している。3つの区域24~26は流動方向で直列につながれており、すなわち相前後して配置されている。ただし3つの区域24~26は相並んで配置されており、それにより、第1の流出経路19を通って流動する水は、流出経路構造15を完全に貫流できるようにするには、約180°の方向変更を2回行わなくてはならない。第2の区域25及び第3の区域26にも同じく連通部21が設けられていて、それにより、第2の区域25及び第3の区域26でも、流れ出る水の流動の絞りを実現することができ、この絞りは、すなわち流動速度の遅延は、断面狭隘化によって引き起こされるのではない。その逆に、断面を比較的広く選択することができる。このことは、壁部17にある開口部18の大きさについても当てはまる。それに伴い、ちぎれた根などの植物残滓によって、あるいは汚れ粒子によって、流出部が詰まるというリスクが予防される。
【0031】
第2の流出経路20は、第2の区域25及び第3の区域26でも第1の流出経路19と並列に配置されており、それに応じて、流出経路構造15の流動長さ全体にわたって減速をさせるように作用することができる。すなわち、潅水室2からの水の非常に低速の流れ出しを保証することができ、そのためにバルブを必要とすることがない。潅水室2から完全に流れ出るのに水が必要とする時間を、流出経路構造15の相応の寸法決めによって、比較的正確に調整することができる。
【0032】
特に
図10に見られるとおり、流出部6は、潅水室2の底面9に形成された流出開口部28を有している。流出開口部28には、流出経路構造15と接続された衝突ヘッド装置29が配置されている。衝突ヘッド装置29は衝突ヘッド30を有していて、その表面31は、流出開口部28を貫く第1の通路32と接続されている。重力方向で更に上側に配置されているプラントキャリアから流れ出る水が衝突ヘッド30に衝突し、第1の通路32を通って更に下方に向かって、たとえば更に下側に配置されているプラントキャリアへと流れる。
【0033】
衝突ヘッド装置は、衝突ヘッド装置29の壁部35にある開口部34を介して流出経路構造15と接続された第2の通路33を有している。流出経路構造15を貫流した水は、開口部34を通って第2の通路33に入り、同じく下方に向かって、重力方向で更に下側に配置されているプラントキャリアへと流れ出ることができる。
【0034】
すなわち、現在のプラントキャリア1からの水が、その上に位置するプラントキャリアからの水とプラントキャリア1で混ざり合うことがない。
【0035】
衝突ヘッド装置29は、重力方向で上方に向くパイプ36と接続されており、このパイプは、重力方向で上側の端部にスリーブ37を有していて、このスリーブの中に、プラントキャリア1から流れ出る水をその次の下側のプラントキャリアへと排出するために、衝突ヘッド装置29と接続されたパイプ45を入れることができる。
【0036】
壁部17にあるオーバーフロー44を通って流れる水も、衝突ヘッド装置29にある開口部34を通って直接的に流れ出ることができる。そのために、第1の流出経路19及び第2の流出経路20から分離された、すなわちオーバーフロー44により規定される高さよりも高い壁部38によって分離された、第3の流出経路が設けられている。すなわち壁部38は、オーバーフロー44の下側エッジと潅水室2の底面9との間の間隔よりも大きい高さを有している。
【0037】
上で述べたとおり、流入部5には流入パイプ11が配置されている。流入パイプは、衝突プレート40によって中断される流動断面39を有している。重力方向で上側のプラントキャリアから流れ込む水が、下方に向かって流入室7へと流れ出るのを可能にするために、流入パイプ11の壁部41は複数の出口開口部42を有していて、これらを通って水が流入室7に流れ込むことができる。そして流入室7の中の水のレベルは、水が入口開口部43を通って再び流入パイプ11の中に入ることができるようになるまで上昇していく。水位の高さは、潅水室2の底面から、入口開口部43のそれぞれ下側のエッジまでの間隔によって規定される。流入室7の底面は、通常、潅水室2の底面9に相当する。
【0038】
流入パイプ11の出口開口部42によって、及び壁部8にある開口部10によって、水が流入室7と潅水室2との間で受ける流動抵抗は、流出経路構造15が生成する流動抵抗よりも明らかに低い。
【0039】
このような構造により、プラントキャリア1の中に配置される植物への潅水の制御が、プラントキャリア1でバルブを使用することなく、簡易な方式で可能となる。
【0040】
潅水を開始するために、水が流入部5を通して供給される。水はパイプ12を通って流動して流入パイプ11に達し、そこから流入室7に達する。それから水は開口部10を通って潅水室2へと流れ、入口開口部43に到達すると、更に下側に配置されているプラントキャリアにも流れる。すなわち充填されるべきプラントキャリア1の個数に依存して、比較的多い容積流量を、一番上のプラントキャリア1のパイプ12に供給することができる。潅水室2の過充填が起こることはあり得ない。潅水室2の充填水位高さは、それ自体として入口開口部43によって規定される、流入室7の中の水のレベルよりも高くなることが決してないからである。
【0041】
潅水室2にある開口部10を通って入ってきた水は壁部17まで流れ、そこから壁部17にある開口部18を通って流出室16へと流れる。ただし、流れ出る水は流出経路構造15によって減速され、それにより潅水室2の中で滞留し、すなわちオーバーフロー44に到達するまで滞留する。潅水室2の中で、水がこれよりも高く上昇することはあり得ない。オーバーフロー44を介して流出室16の中に入った水は、衝突ヘッド装置29を通って直接的に流れ出ることができる。
【0042】
1つのスタックのすべてのプラントキャリア1が十分に水の供給を受けると、水供給が単に中止される。すると潅水室2の水が流れ出ることはできるが、ただし非常に低速であり、それは、流出経路構造15によって著しい絞り作用が水に及ぼされるからである。上で説明したとおり、流出経路構造15を通って外に出るために潅水室2の水容積が必要とする時間を、比較的正確に調整することができる。すなわちそれに伴って、植物又は植物の根がどれだけ長く潅水室2で水の提供を受けられるかを規定することができる。
【0043】
図1及び
図2に見ることができるように、流入部5と流出部6は、潅水室2の同じ縁部に配置されている。それに応じて、潅水室2への水供給のために必要なすべての部材を1つの縁部の領域に格納することができる。
【0044】
図3及び
図4に見ることができるように、第2の流出経路20は、多数の連通部21を介して第1の流出経路19と接続されている。少なくとも5つの連通部21を利用するのが好都合である。
【0045】
第1の流出経路19の3つの区域24~26が図示されている。奇数個の区域を利用するのが好都合であり、それにより、水が流出経路構造15の一方の端部で中に入り、これと向かい合う流出経路構造15の端部で外に出ることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潅水室(2)と、流入部(5)と、流出経路構造(15)を有する流出部(6)とを備えるプラントキャリア(1)において、前記流出経路構造(15)は第1の流動方向を有する第1の流出経路(19)と第2の流出経路(20)とを有し、前記第2の流出経路(20)は前記第1の流出経路(19)への少なくとも1つの連通部(21)を有するとともに、前記連通部(21)の領域に、前記連通部(21)の領域で前記第1の流動方向と反対を向く方向成分を含む第2の流動方向を有することを特徴とする、プラントキャリア(1)。
【請求項2】
前記第2の流出経路(20)は、前記第1の流出経路(19)への少なくとも5つの連通部(21)を有することを特徴とする、請求項1に記載のプラントキャリア。
【請求項3】
前記第1の流出経路(19)は直列につながれた少なくとも1つの第1の区域(24)と第2の区域(25)とを有し、前記第1の区域(24)と前記第2の区域(25)は相並んで配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【請求項4】
前記第1の流出経路(19)は、直列につながれて相並んで配置された奇数個の区域(24~26)を有することを特徴とする、請求項3に記載のプラントキャリア。
【請求項5】
前記流出部は、衝突ヘッド装置(29)を介して前記流出経路構造(15)と接続された流出開口部(28)を有し、前記衝突ヘッド装置(29)は重力方向で上方に向く衝突ヘッド(30)を有し、その表面(31)は第1の通路(32)の壁部へと移行し、前記流出経路構造(15)は前記衝突ヘッド構造(29)の少なくとも1つの開口部(34)を介して第2の通路(33)と接続され、前記第1の通路(32)と前記第2の通路(33)は前記流出開口部(28)に連通し、又はこれらを通過して延びることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【請求項6】
前記衝突ヘッド装置(29)は、重力方向に沿って前記流出開口部(28)とアライメントされることを特徴とする、請求項5に記載のプラントキャリア。
【請求項7】
前記重力ヘッド装置(29)は、重力方向で上方に向くパイプ(36)と接続されることを特徴とする、請求項5に記載のプラントキャリア。
【請求項8】
オーバーフロー(44)を介して前記潅水室(2)と接続された第3の流出経路が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【請求項9】
前記第1の流出経路(19)と前記第2の流出経路(20)は、前記オーバーフロー(44)により規定される高さよりも高い壁部(38)によって前記第3の流出経路から分離されることを特徴とする、請求項8に記載のプラントキャリア。
【請求項10】
前記流入部は衝突プレート(40)によって中断される流動断面(39)を含む流入パイプ(11)を有し、前記流入パイプ(11)は前記衝突プレートの領域(40)に少なくとも1つの出口開口部(42)を含むパイプ壁(41)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【請求項11】
前記流入パイプ(11)は、流入室(7)の底面から事前決定された高さに配置された少なくとも1つの入口開口部(43)をその壁部(41)に有することを特徴とする、請求項10に記載のプラントキャリア。
【請求項12】
前記流入室(7)は、少なくとも1つの貫流開口部(10)を有する分離壁(8)によって前記潅水室(2)から分離されることを特徴とする、請求項11に記載のプラントキャリア。
【請求項13】
前記貫流開口部(10)は、前記潅水室(2)の底面(9)に接することを特徴とする、請求項12に記載のプラントキャリア。
【請求項14】
前記流入部(5)と前記流出部(6)は、前記潅水室(2)の同じ縁部に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラントキャリア。
【外国語明細書】