(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018680
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】不断流工法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F16L55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122156
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳和
(57)【要約】
【課題】施工が簡便な不断流工法を提供する。
【解決手段】流路を構成している流体管2に対して、上下に分割可能な筐体10を構成する下部筐体30を、高さ調整機能及び荷重支持機能を有するジャッキ4,4を用いて配置する下部筐体配置工程と、下部筐体30に筐体10を構成する上部筐体20を載置して連結する連結工程と、互いに連結された下部筐体30及び上部筐体20を流体管2に対して位置調整手段10C,10C,…を用いて位置合わせを行う位置調整工程と、筐体10と流体管2との間を密封する密封工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を構成している流体管に対して、上下に分割可能な筐体を構成する下部筐体を、高さ調整機能及び荷重支持機能を有するジャッキを用いて配置する下部筐体配置工程と、
前記下部筐体に前記筐体を構成する上部筐体を載置して連結する連結工程と、
互いに連結された前記下部筐体及び前記上部筐体を前記流体管に対して位置調整手段を用いて位置合わせを行う位置調整工程と、
前記筐体と前記流体管との間を密封する密封工程と、を含むことを特徴とする不断流工法。
【請求項2】
前記下部筐体配置工程では、前記流体管に当接させた状態にある前記下部筐体を前記ジャッキで支持することを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項3】
前記位置調整工程において、クレーンにて連結された前記上部筐体及び前記下部筐体を吊支した後、前記ジャッキを前記下部筐体から離間させることを特徴とする請求項2に記載の不断流工法。
【請求項4】
前記位置調整工程において、前記位置調整手段である前記筐体に設けられた調整ボルト及びクレーンを用いて位置調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項5】
前記上部筐体及び前記下部筐体には前記調整ボルトが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の不断流工法。
【請求項6】
前記ジャッキは、前記流体管の管軸方向に離間して複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項7】
少なくとも一つの前記ジャッキは、前記流体管の軸心から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の切除を伴う不断流工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の流路は、経年劣化の対処や新たな分岐路を形成するために、既設の流体管の一部が新たな流体管に更新される場合や他の流路と接続される場合等において、流体管の少なくとも一部を切除して行われる不断流工法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される不断流工法は、既設の流路における流体管の途中に仕切弁を設置する場合に行われるものであって、上部筐体及び下部筐体から構成される筐体を流体管に密封状に外嵌させ、密封状態を保持したまま筐体の開口部を通じて流体管の一部を切除し、密封状態を保持したまま筐体内において切断された流体管の一端と他端との間に仕切弁を挿入・設置するとともに、仕切弁の蓋によって筐体の開口部を密封する。これにより、筐体を流路の一部として機能する流路構成部材として利用することができるため、仕切弁を簡素に設置することができる。
【0004】
また、上述したような不断流工法には、例えばT字状の筐体を採用して、既設の流路を構成する流体管に上部筐体及び下部筐体から構成される筐体を密封状に外嵌させ、同筐体に分岐管を接続し、上述したように流体管の切除、筐体の開口部の密封を行うことで、既設の流路に分岐管を接続する不断流工法も知られている。このように、流路構成部材として利用される筐体の構成は、実施される不断流工法に応じて適宜変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-132715号(第9~12頁、第16図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の不断流工法においては、流体管と筐体との位置合わせが行われて、これらの間に密封部材が圧入されるため、周方向に亘って安定して密封することができるようになっている。
【0007】
流体管と筐体との位置合わせについて詳しくは、H型鋼の上に下部筐体を載置した状態で、下部筐体に仮固定した上部筐体と共に流体管に対する位置合わせが行われる。例えばH型鋼の高さが好適な位置よりも低い場合には、H型鋼と下部筐体との間に楔形状の部材等を打ち込むことや、H型鋼の下部に角材や板等を敷くことで下部筐体の位置を上昇させる。しかしながら、H型鋼の高さが好適な位置よりも高い場合には、H型鋼をより寸法の短いものに取り換える必要があるため、上部筐体及び下部筐体の仮固定を一度解除し、これらを取り外さなければならず、作業工数が増える要因となっていた。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、施工が簡便な不断流工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の不断流工法は、
流路を構成している流体管に対して、上下に分割可能な筐体を構成する下部筐体を、高さ調整機能及び荷重支持機能を有するジャッキを用いて配置する下部筐体配置工程と、
前記下部筐体に前記筐体を構成する上部筐体を載置して連結する連結工程と、
互いに連結された前記下部筐体及び前記上部筐体を前記流体管に対して位置調整手段を用いて位置合わせを行う位置調整工程と、
前記筐体と前記流体管との間を密封する密封工程と、を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、連結された下部筐体及び上部筐体を流体管に対する移動代を確保して配置することができる。これにより、流体管に対する筐体の位置合わせを確実に行うことができるため、施工を簡便にすることができる。
【0010】
前記下部筐体配置工程では、前記流体管に当接させた状態にある前記下部筐体を前記ジャッキで支持することを特徴としている。
この特徴によれば、安全に下部筐体を保持することができる。
【0011】
前記位置調整工程において、クレーンにて連結された前記上部筐体及び前記下部筐体を吊支した後、前記ジャッキを前記下部筐体から離間させることを特徴としている。
この特徴によれば、安全かつ容易に移動代を確保することができる。
【0012】
前記位置調整工程において、前記位置調整手段である前記筐体に設けられた調整ボルト及びクレーンを用いて位置調整を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、クレーンによって筐体を支持することにより、流体管に対する連結された上部筐体及び下部筐体の細やかな位置合わせを容易に行うことができる。
【0013】
前記上部筐体及び前記下部筐体には前記調整ボルトが設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、調整ボルトを簡素な構成で設けることができる。
【0014】
前記ジャッキは、前記流体管の管軸方向に離間して複数配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管が傾斜している場合であっても、傾斜に合わせて位置決めすることができる。
【0015】
少なくとも一つの前記ジャッキは、前記流体管の軸心から離間した位置に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体が流体管の管軸方向回りに回動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1における不断流工法において下部筐体を配置した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図2】(a)はジャッキの配置について説明するための下面図であり、(b)はジャッキについて説明するための正面図である。
【
図3】下部筐体に上部筐体を仮固定した状態を示す正面図である。
【
図4】ジャッキによる流体管に対する下部筐体及び上部筐体の位置合わせについて説明するための図である。
【
図5】上部筐体の調整ボルトによる流体管に対する下部筐体及び上部筐体の位置合わせについて説明するための図である。
【
図6】下部筐体の調整ボルトによる流体管に対する下部筐体及び上部筐体の位置合わせについて説明するための図である。
【
図7】流体管に筐体を密封状に外嵌した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図8】筐体の一部をコンクリートで埋設した状態を示す正面図である。
【
図9】筐体に作業弁を取り付けた状態を一部破断して示す正面図である。
【
図10】切除装置を用いて流体管の一部を切除した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図11】挿入装置を用いてバタフライ弁挿入開始時の状態を一部破断して示す正面図である。
【
図12】バタフライ弁設置後の状態を一部破断して示す正面図である。
【
図13】実施例2における不断流工法について説明するための正面図である。
【
図14】実施例2におけるジャッキの配置について説明するための下面図である。
【
図15】実施例3における不断流工法について説明するために一部破断して示す正面図である。
【
図16】(a)は実施例3におけるジャッキ及びジャッキの配置について説明するための側面図であり、(b)は実施例3におけるジャッキの配置について説明するための下面図である。
【
図17】実施例4における不断流工法について説明するための正面図である。
【
図19】実施例4におけるジャッキについて説明するための正面図である。
【
図20】実施例4における不断流工法の別態様について説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る不断流工法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0018】
実施例1に係る不断流工法として、既設の流路を構成している流体管2にバタフライ弁14を設置するための不断流工法を、
図1から
図12を参照して説明する。
【0019】
本実施例の不断流工法として、地中に埋設された既設の流路を構成している流体管2の所定箇所を筐体10内にて切除し、その切除箇所に制流体としてのバタフライ弁14を設置するまでの一連の流れについて説明する。なお、流体管内の流体は、本実施例では上水であるが、これに限らず例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0020】
また、本発明に係る流体管は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円筒状に形成されている。なお、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらになお、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0021】
まず、作業現場を整備する整備工程を行う。
図1を参照して、整備工程では、地中に埋設された流体管2の周囲を掘削し、穴の底部にコンクリートを打設して基礎Fを形成する。基礎Fの上面は露出した流体管2の管底部から上下方向に離間している。なお、基礎は、筐体10の下部筐体30を支持可能であれば敷鉄板等であってもよい。
【0022】
次に、下部筐体30を配置する下部筐体配置工程を行う。下部筐体配置工程では、まず図示しないクレーンに吊支されるフックを備えた吊り具H及びワイヤWにより吊持した下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、荷重支持機能及び高さ調整機能を有する2つのジャッキ4,4(
図2(b)参照)を下部筐体30と基礎Fとの間に配置する。以降、下部筐体配置工程について詳しく説明する。
【0023】
下部筐体30は、下方に向かって延び、有底円筒状に形成されている胴部31と、胴部31に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状に湾曲形成されている曲板状の半割腕部32,33を備える正面視T字状に形成されている。
【0024】
図1において吹き出し内に図示するように、下部筐体30の半割腕部33には、径方向に貫通形成されている雌ネジに調整ボルト10Cが螺合されており、この調整ボルト10Cの後端の操作部は、半割腕部33の外側に露出している。これにより、調整ボルト10Cの操作部を治具等で回動させることにより、径方向に進退移動させることが可能となっている。なお調整ボルト10Cの不使用時は、着脱可能なキャップ10p等で操作部を保護している。また、調整ボルト10Cは、半割腕部33において周方向に複数に等配(本実施例では2等配)されている。これらは、半割腕部32側についても同様である。なお、
図1の吹き出し内等以外では、調整ボルト10Cを×印で簡略的に示している。
【0025】
このように、半割腕部32,33に調整ボルト10C,10C,…を進退可能に配置することにより、別途に調整ボルト10Cを保持する部材を設ける構成と比較して、簡素な構成で調整ボルト10C,10C,…を設けることができる。
【0026】
図2(a)に示されるように、胴部31の底壁31aは、その下端に下方に向け突出形成されているX字状のリブ31bによって構造強度が高められている。また、底壁31aの外底面は、リブ31bによって4つの平坦面31c,31c,…に区画されており、各平坦面31cは略扇状となっている。
【0027】
図2(b)に示されるように、ジャッキ4は、台座を有する有底円筒状の基台4aに形成されている雌ネジにボルト4bが螺合されている、いわゆる機械式のジャッキである。また、ボルト4bの上端4dには、平坦な円板状の皿4cが載置されている。
【0028】
ボルト4bの上端4dは円錐状に形成されている。皿4cの下面の径方向中心には、断面視円錐状に凹設され、皿4cの厚み方向、すなわち上下方向に貫通している凹部4eが形成されている。ボルト4bの上端4dと皿4cの凹部4eは、嵌合可能に形成されている。これにより、皿4cは、ボルト4bに対して着脱可能であるとともに、ボルト4bの回動に伴って共回りすることを規制することができる。また、皿4cをボルト4bに載置するにあたり、位置決めが容易である。なお、皿4cの凹部4eの円錐角度を、ボルト4bの上端4dの円錐角度よりも緩やかにすることが好ましく、このようにすることで、皿4cをボルト4bに対し若干傾斜させることができる。
【0029】
図2(a)に示されるように、ジャッキ4,4を基礎F上に載置するにあたって、胴部31の中心を基準として外径側に離間した位置かつ流体管2に対して下面視における直交方向に離間した位置に配置する(二点鎖線で示すジャッキ4,4の皿4c,4c参照)。
【0030】
これら皿4c,4cの上に、下部筐体30の平坦面31c,31cを載置する。このとき、ジャッキ4の皿4cの上端面を下部筐体30の平坦面31cに面当接させることにより、下部筐体30の荷重を分散して支持することができる。
【0031】
下部筐体30を流体管2に外嵌させるにあたって詳しくは、クレーンにて吊持している状態の下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、
図1において吹き出し内に図示するように、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接するように吊り上げる。この際、下部筐体30の内周面と流体管2の外周面2aの当接箇所には、傷を防止するためにゴムシート等を挟み込んでもよい。そして、下部筐体30の平坦面31cと基礎Fの離間寸法に応じてジャッキ4,4の長さを調整し、平坦面31cと基礎Fの間にジャッキ4,4を配置する。
【0032】
これにより、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接された状態が保持されるため、言い換えれば下部筐体30が、流体管2及びジャッキ4,4によって上下方向に挟持されて安定した状態となるため、吊り具H及びワイヤWを下部筐体30から取外すことができる。
【0033】
次に、下部筐体30に筐体10の上部筐体20を密封状に連結するする連結工程を行う。
図3に示されるように、連結工程では、まず吊り具H及びワイヤWを介してクレーンで上部筐体20を吊り下ろし、上部筐体20を流体管2に外嵌させつつ、下部筐体30の割面30aに上部筐体20の割面20aを当接させて載置する。
【0034】
上部筐体20は、上方に向かって延び、略円筒状に形成されている首部21と、首部21に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状の曲板状に形成されている半割腕部22,23を備える正面視倒立T字状に形成されている。
【0035】
調整ボルト10Cは、下部筐体30と同様に、上部筐体20の半割腕部22,23に設けられており、周方向に2等配されている。また上部筐体20の半割腕部22及び下部筐体30の半割腕部32に設けられた調整ボルト10Cは、管軸方向に略同じ位置に配設され、周方向に2時、4時、8時及び10時の位置に配置されている。上部筐体20の半割腕部23及び下部筐体30の半割腕部33に設けられた調整ボルト10Cについても同様である。
【0036】
また、上部筐体20の半割腕部22,23の及び下部筐体30に半割腕部32,33には、それぞれの割面20a,30aと略平行かつ外側に突出する矩形板状のフランジ24,34が形成されている。これらフランジ24,34をボルトB1、ナットN1にて締結することにより、上部筐体20及び下部筐体30を仮固定することができる。
【0037】
そして、上部筐体20及び下部筐体30の割面20a,30a同士を密封状に溶接することで、筐体10が構成される。これに伴い、半割腕部22,32により筐体10における円筒状の腕部10A(
図7参照)が構成され、半割腕部23,33により筐体10における円筒状の腕部10B(
図7参照)が構成される。
【0038】
次に、調整ボルト10C,10C,…を用いて流体管2に対する筐体10の位置合わせを行う位置調整工程を行う。なお、本工程の説明にて参照する
図4~
図6では、流体管2に対する筐体10の位置の変化について明確に示すべく、図示を誇張している。
【0039】
位置調整工程では、予めジャッキ4,4により流体管2に対する筐体10の移動代Mが確保されている。これについて詳しくは、
図4(a)に示されるように、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接させた状態を保持している時点のジャッキ4の皿4cの位置より、
図4(b)に示されるように、移動代M分、皿4cを流体管2より離間方向に後退させることができる。
【0040】
図3に示されるように、位置調整工程では、まずクレーンで筐体10を僅かに吊り上げ、ジャッキ4,4を一度取り外して若干収縮させた後、再配置する。このとき、ジャッキ4,4を配置したまま単に収縮させてもよい。次いで、クレーンを操作して流体管2の軸心に対して筐体10における腕部10A,10Bの軸心のおおよその位置合わせを行う。
【0041】
そして、位置調整手段かつ保持手段であるクレーンによって筐体10を吊持した状態のまま、調整ボルト10C,10C,…による細やかな位置調整を行う。これについて詳しくは、筐体10を流体管2に対し下方側に移動させる場合には、
図5(b)から
図5(a)に移行するように、上部筐体20の調整ボルト10C,10Cを外径側に後退させるとともに、
図6(a)から
図6(b)に移行するように、下部筐体30の調整ボルト10C,10Cを内径側に進出させる。
【0042】
また逆に、筐体10を流体管2に対し上方側に移動させる場合には、
図5(a)から
図5(b)に移行するように、上部筐体20の調整ボルト10C,10Cを内径側に進出させるとともに、
図6(b)から
図6(a)に移行するように、下部筐体30の調整ボルト10C,10Cを外径側に後退させる。
【0043】
なお、図示は省略するが、腕部10Bを流体管2の管軸方向に見て、筐体10を流体管2に対し3時方向に移動させる場合には、3時側(2時及び4時)に位置する調整ボルト10C,10Cを内径側に進出させ、9時側(8時及び10時)に位置する調整ボルト10C,10Cを外径側に後退させる。
【0044】
また同様に、筐体10を流体管2に対し9時方向に移動させる場合には、9時側(8時及び10時)に位置する調整ボルト10C,10Cを内径側に進出させ、3時側(2時及び4時)に位置する調整ボルト10C,10Cを外径側に後退させる。
【0045】
このとき、流体管2に対して筐体10の位置合わせを行うにあたって、クレーンにより筐体10が吊持されているため、流体管2に筐体10の重量の大半が直接作用することを防止することができる。
【0046】
また、筐体10の重量によって上部筐体20側の各調整ボルト10C,10C,…が流体管2の外周面2aに押圧され、外周面2aに過度な負荷がかかることを防止することができる。これにより、各調整ボルト10C,10C,…の回動操作が容易となるため、細やかな調整を容易に行うことができる。
【0047】
また、クレーンにより筐体10が吊持されているため、例えばジャッキ4の皿4c等に載置された状態で上述したような位置調整を行う場合と比較して、摩擦等の抵抗が生じにくい点からも細やかな調整が容易となる。
【0048】
腕部10A,10Bの中心が流体管2の管軸とほぼ一致したら、この状態をクレーンで保ちながら、各調整ボルト10C,10C,…を内径側に進出させて流体管2に食い込ませる。これにより、腕部10A,10Bの中心を流体管2の管軸と位置合わせした状態を保持することができる。
【0049】
さらに、下部筐体30の平坦面31cと基礎Fの離間寸法に応じてジャッキ4,4の長さを調整し、平坦面31cと基礎Fの間にジャッキ4,4を配置する。これにより、筐体10の荷重がジャッキ4,4に支持されるため、吊り具H及びワイヤWを筐体10から取外すことができる。
【0050】
次に、筐体10と流体管2との間を密封する密封工程を行う。
図7に示されるように、密封工程では、まず流体管2の外周面2aにシールリング12を周方向に亘って配置し、半割状に形成された押輪13をそれぞれ流体管2に外嵌して連結し、腕部10Bのフランジと押輪13をT頭ボルトB2にナットN2で締結する。
【0051】
このとき、腕部10Bの中心が流体管2の管軸と位置合わせされていることから、腕部10Bの内周面と流体管2の外周面2aの間に、周方向に亘り略一定幅の環状の隙間が形成されている。これにより、腕部10Bと流体管2の間にシールリング12を軸方向に圧入しやすいばかりか、圧入されたシールリング12を周方向に亘って均一の力で腕部10Bの内周面及び流体管2の外周面2aに圧着させて密封することができる。
【0052】
さらに、周方向に等配されているボルト13A,13A,…を用いて、押輪13の内径側に配置されている爪部材13Bを流体管2の外周面2aに押しつける。なお、腕部10A側については、腕部10B側の説明と同様であるため、その説明は省略する。
【0053】
以上のように、流体管2に筐体10を外嵌するにあたって、筐体10を流体管2に対する移動代M(
図4参照)を確保した状態で配置することができる。これにより、流体管2に対する筐体10の位置合わせを確実に行うことができるため、施工を簡便にすることができる。
【0054】
また、下部筐体設置工程において、下部筐体30を流体管2及びジャッキ4,4により挟持させることができるため、同じクレーンを用いて上部筐体20の運搬、筐体10の吊持を行うことができる。
【0055】
次いで、直接の図示は省略するが、筐体10のフランジ21aに水圧テスト用のフランジ蓋を装着し、筐体10の内周面と流体管2の外周面2aとの密封した隙間に流体管2内と略同圧の水圧をかけてテストを行う。このとき、筐体10内に上水が満たされ、総重量が増大するものの、筐体10はジャッキ4,4によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0056】
また、筐体10は、流体管2が軸通されている状態にあるものの、上面視においてジャッキ4,4が流体管2の軸心から外径側に離間した位置かつ同軸心に対する直交方向に沿った位置に対向配置されているため、筐体10が流体管2を軸として管軸回りに回動する虞が防止されている。
【0057】
水圧テストの終了後、フランジ蓋を撤去し、流体管2及び筐体10と基礎Fとの間にコンクリートC1を打設する打設工程を行う。
図8に示されるように、打設工程では、ドット柄で示すコンクリートC1を、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分、基礎Fを一体化させるように打設する。腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分についても同様である。この打設工程において上記したジャッキ4,4は筐体10等の荷重を下方で支持しているため、コンクリートC1が固まるまでの間、筐体10の位置を保持し続けることができる。
【0058】
次いで、流体管2を切除する切除工程を行う。
図9に示されるように、切除工程では、まず首部21のフランジ21aと作業弁5の弁箱5aを図示しないボルトナットで締結する。なお、首部21のフランジ21aと弁箱5aとの間にガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0059】
続けて、
図10に示されるように、弁箱5a(
図9参照)のフランジと取付フランジ筒6の下方のフランジを図示しないボルトナットで連結し、取付フランジ筒6の上方のフランジと切除装置7を図示しないボルトナットで連結する。なお、弁箱5aのフランジと取付フランジ筒6の下方のフランジとの間、取付フランジ筒6の上方のフランジと切除装置7との間にそれぞれガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0060】
このように、作業弁5、取付フランジ筒6、及び切除装置7の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0061】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の上方に一体に立設され重心位置の高い作業弁5、取付フランジ筒6、及び切除装置7が転倒する虞がない。
【0062】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分は、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されており、腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分は、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、流体管2に筐体10の総重量の大半が作用することが防止されている。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0063】
そして、作業弁5の弁箱5a内から図示しない弁体を後退させて開放状態とし、切除装置7のカッタ8により流体管2の一部を不断流状態で切断する。これにより、筐体10の内部に管内流体が流入する。
【0064】
このとき、筐体10は調整ボルト10C,10C,…によって流体管2に連結され、押輪13,13はボルト13A,13A,…によって流体管2の端部2H,2Tに連結されているため、流体管2を切断するにあたって生じる急激な流れの変化等が生じて流体管2が跳ね上がるような挙動が生じたとしても、筐体10及び押輪13,13から流体管2が抜け出すことを防止することができる。
【0065】
また、筐体10内に上水が満たされ、筐体10の総重量がさらに増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1によって支持されているため、切断された流体管2の端部2H,2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。
【0066】
これにより、端部2Hが傾動することを防止できるため、端部2Hに繋がる流路に意図しない負荷が及ぶことを防止できるばかりでなく、流体管2を切断後のカッタ8の抜出しに必要な開口面積を確保することができる。そのため、カッタ8を容易に抜出すことができる。
【0067】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の総重量がさらに増大しても安定して支持されている。
【0068】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分を含む端部2Hは、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び腕部10B側の露出部分を含む端部2Tについても同様である。
【0069】
なお、筐体10の底壁31aは、流体管2よりも十分に離間した位置に設けられているため、流体管2を切断するにあたってカッタ8の円筒部材8a及びセンタドリル8bが接触しにくくなっている。
【0070】
また、流体管2を接続するにあたって、底壁31aの下方に設けられているフランジ筒にドレン管Dを接続しておくことにより、カッタ8により流体管2を切断する際に発生する切り粉を流体と共に外部へ排出することができる。
【0071】
その後、直接の図示は省略するが、カッタ8を流体管2の切片と共に引き上げ、作業弁5の弁体を弁箱5a内に進出させて閉塞状態とする。これにより、上水の漏水を防止して不断流状態を保ったまま切除装置7、取付フランジ筒6を作業弁5より取外すことができる。
【0072】
次いで、筐体10内に制流体としてのバタフライ弁14を設置する制流体設置工程を行う。
図11に示されるように、制流体設置工程では、まず弁箱5aのフランジと挿入装置9の筐体9aを連結する。続けて、作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構9bを操作して開放状態にあるバタフライ弁14を筐体10内に配置する。なお、弁箱5aのフランジと筐体9aとの間にガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0073】
このように、作業弁5、挿入装置9、及びバタフライ弁14の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1によって支持されているため、流体管2の端部2H、2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。これにより、流体管2の端部2H,2Tが傾動することを防止できるため、バタフライ弁14を安定して挿入することができる。
【0074】
特に、バタフライ弁14の設置時には、挿入装置9によってバタフライ弁14を筐体10の内底面に向けて一時的に下方に押圧して荷重をかけるが、ジャッキ4,4及びコンクリートC1,C1により、作業弁5、挿入装置9等の重量及び下方の荷重に抗して支持できる。
【0075】
また、腕部10A、流体管2における端部2Hは、腕部10Aと共にコンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、筐体10の重量が変化しても、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び端部2Tについても同様である。
【0076】
そして、バタフライ弁14を筐体10内に挿入し、筐体10内に形成されている座面にパッキン40,41が圧着された状態で配置される。ここで、パッキン40は、弁体42と共に流体管2の端部2H,2T間を仕切るための仕切壁43の両側面及び底面に亘って固着されている。パッキン41は、筐体10の首部21を閉塞するための円板状の蓋部44の外周に亘って固着されている。これらパッキン40,41は連続するように接続されている。
【0077】
さらに、
図12を参照して、首部21の周方向に配置されている複数の押さえボルト25を首部21の内径側に進出させる。押さえボルト25について詳しくは、首部21の周壁を貫通し、この周壁に形成された貫通部の雌ネジに螺合されている。押さえボルト25は所定方向に回動させることで首部21の内径側に進出するため、バタフライ弁14の蓋部44に当接させることで、蓋部44の抜け止めをなすことができる。なお、押さえボルト25のような押さえ手段は、貫通部の雌ネジに螺合される進出部材と、進出部材に従動して制流体に当接する当接部材が別体であってもよく、その数や配置を含め、適宜変更されてもよい。また、周壁内面に凹部が設けられ、プレート等を嵌め込んで固定する態様であってもよい。
【0078】
その後、挿入装置9、作業弁5を筐体10から取り外し、首部21の内周面と蓋部44に外嵌されたリング45との間にパッキン46を配置した後、首部21のフランジ21aと蓋11を図示しないボルトナットにて締結する。これにより、首部21の内周面と蓋部44の間は密封される。なお、首部21のフランジ21aと蓋11との間にガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0079】
以上説明したように、流体管2の所定箇所に不断流状態を保ちながらバタフライ弁14を設置する本実施例の不断流工法を行うことができる。
【0080】
なお、上述したように蓋11を筐体10に取り付けた後、ジャッキ4,4を取り外してもよく、ジャッキ4,4を回収することで、他の施工において再度使用することができる。
【0081】
また、筐体10の保持手段としてクレーンを例に説明したが、これに限られず、ジャッキ4,4を保持手段として使用してもよい。すなわち、筐体10をジャッキ4,4に載置した状態のまま、ジャッキ4,4を伸縮させることにより、おおよその位置合わせを行ってもよい。
【0082】
また、制流体はバタフライ弁14であるとして説明したが、これに限られず、ゲート弁、ボール弁等他の種類の弁でもよいし、これらの弁に限らず仕切板やプラグ等であってもよく、適宜変更されてもよい。
切換弁114は、筐体110内に設置され、流体管2の端部2Hから筐体110内に流入した上水を、流体管2の端部2T及び接続部10Dそれぞれに分岐させるとともに、それぞれの流量を調整するためのものである。そのため、流体管2の端部2T側を閉塞すること、接続部10D側を閉塞することも可能である。
本実施例の不断流工法では、前記実施例1と同様に、整備工程、下部筐体配置工程、連結工程、位置調整工程、密封工程、打設工程、切除工程、制流体設置工程にて行われる。本実施例では、前記実施例1と相違する下部筐体配置工程、打設工程について主に説明し、他の工程は前記実施例1と略同一であるためその説明を省略する。
これにより、胴部131の下端に下方に向け突出形成されている井の字状のリブ131b、胴部131の下部に接続されているドレン管Dを回避して、ジャッキ4の皿4cに平坦面31c,31cを載置することができる。
なお、分岐管の接続については、切換弁114にて接続部10D側を閉塞状態とし、フランジ蓋15を取り外した後、分岐管を接続することで不断流状態を保ちながら実施することができる。また、フランジ蓋15の代わりに、接続部10Dに分岐管を直接接続して切除工程を行ってもよい。このような構成であれば、分岐管の途中または接続部10Dとの間に、いずれかの弁を配置して、流体管2の切断によって筐体110内に流入する管内流体が流出することを防止することが好ましい。
以上説明したように、流体管2の所定箇所に不断流状態を保ちながら流路を分岐可能な筐体110及び切換弁114を設置する本実施例の不断流工法を行うことができる。