IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイエスピーの特許一覧

特開2024-18684熱可塑性樹脂発泡粒子及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体
<>
  • 特開-熱可塑性樹脂発泡粒子及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体 図1
  • 特開-熱可塑性樹脂発泡粒子及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018684
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡粒子及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20240201BHJP
   H05K 9/00 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
H05K9/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122161
(22)【出願日】2022-07-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】千葉 琢也
【テーマコード(参考)】
4F074
5E321
【Fターム(参考)】
4F074AA17A
4F074AC02
4F074AC17
4F074AD05
4F074AD12
4F074AD16
4F074AE01
4F074AE04
4F074AG08
4F074AG10
4F074BA32
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA18
4F074DA22
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA47
5E321BB31
5E321GG11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導電性炭素材料を含み且つ難燃性に優れ、導電性炭素材料の脱離による汚染が抑制された熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を得ることが可能な熱可塑性樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】導電性炭素材料及び難燃剤を含む熱可塑性樹脂発泡粒子であって、熱可塑性樹脂発泡粒子が、熱可塑性樹脂から構成されている発泡状態の被覆層と、熱可塑性樹脂から構成されている芯層とからなり、被覆層と芯層との質量比が99:1~50:50であり、導電性炭素材料としてカーボンナノチューブ等を用い、芯層中の導電性炭素材料の含有量が1質量%以上30質量%以下であり、被覆層中の導電性炭素材料の含有量が3質量%以下であり、被覆層中の難燃剤の含有量が5質量%以上25質量%以下であり、被覆層中の導電性炭素材料の含有量が芯層中の導電性炭素材料の含有量よりも少なく、芯層中の導電性炭素材料の含有量に対する芯層中の難燃剤の含有量の比が0.2以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性炭素材料及び難燃剤を含む熱可塑性樹脂発泡粒子であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子が、熱可塑性樹脂から構成されている発泡状態の被覆層と、熱可塑性樹脂から構成されている芯層とからなり、前記被覆層と前記芯層との質量比が99:1~50:50であり、前記導電性炭素材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノストラクチャー及びグラフェンから選択される1種以上であり、前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)が1質量%以上30質量%以下であり、前記被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)が3質量%以下であり(ただし、0を含む)、前記被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)が5質量%以上25質量%以下であり、前記被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)が前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)よりも少なく、前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)に対する前記芯層中の難燃剤の含有量(Yi)の比(Yi/Xi)が0.2以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)が前記芯層中の難燃剤の含有量(Yi)よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記導電性炭素材料がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子の見掛け密度が25~150kg/mであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記芯層を形成する熱可塑性樹脂及び前記被覆層を形成する熱可塑性樹脂がともにポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記被覆層の平均気泡径が50μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記芯層が発泡状態の芯層であり、前記芯層の平均気泡径が5μm以上50μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項8】
前記被覆層と前記芯層との質量比が99:1~80:20であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の発泡粒子を型内成形してなる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡粒子及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体に関し、詳しくは、導電性炭素材料及び難燃剤を含む熱可塑性樹脂発泡粒子及びこれを用いた熱可塑性樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂発泡粒子は、用途に合わせて様々な形状に成形が可能である。該発泡粒子から型内成形により得られる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、誘電体、電波遮蔽体、断熱材、電子部品用包装材料、衝撃吸収材、通い箱等広範な用途に用いられている。例えば、特許文献1には機能性添加剤を含む熱可塑性樹脂発泡粒子が開示されている。
【0003】
一方で、例えば、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を電波吸収体とする場合には、機能性添加剤として導電剤を添加する必要がある。しかしながら、高い導電性を持つ導電剤は支燃性を有するため、電波吸収体としての成形体が強電界に晒されると成形体が発熱し発火するおそれがあった。また、より高い電波吸収性能を確保するために、高導電性の導電剤を多量に添加すると、さらに発熱、発火する可能性が高くなるという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる電波吸収体の発熱に伴う発火を防止するために、熱可塑性樹脂に対して導電剤としてのカーボンブラックやグラファイト等の炭素材料とともに、難燃剤を添加した成形体が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/199693号公報
【特許文献2】特開平4-155899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の提案のように、カーボンブラック等の炭素材料を導電剤として難燃剤を添加して成形体とした場合、成形体の表面から導電剤が脱離し、脱離した炭素材料による汚れが生じやすく、低汚染性と難燃性を両立することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、導電性炭素材料を含みつつも難燃性に優れ、導電性炭素材料の脱離による汚染が抑制された熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を得ることが可能な熱可塑性樹脂発泡粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子を提供する。
<1>導電性炭素材料及び難燃剤を含む熱可塑性樹脂発泡粒子であって、前記熱可塑性樹脂発泡粒子が、熱可塑性樹脂から構成されている発泡状態の被覆層と、熱可塑性樹脂から構成されている芯層とからなり、前記被覆層と前記芯層との質量比が99:1~50:50であり、前記導電性炭素材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノストラクチャー及びグラフェンから選択される1種以上であり、前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)が1質量%以上30質量%以下であり、前記被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)が3質量%以下であり(ただし、0を含む)、前記被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)が5質量%以上25質量%以下であり、前記被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)が前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)よりも少なく、前記芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)に対する前記芯層中の難燃剤の含有量(Yi)の比(Yi/Xi)が0.2以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡粒子。
<2>前記被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)が前記芯層中の難燃剤の含有量(Yi)よりも多いことを特徴とする<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<3>前記導電性炭素材料がカーボンナノチューブであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<4>前記熱可塑性樹脂発泡粒子の見掛け密度が25~150kg/mであることを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<5>前記芯層を形成する熱可塑性樹脂及び前記被覆層を形成する熱可塑性樹脂がともにポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<6>前記被覆層の平均気泡径が50μm以上300μm以下であることを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<7>前記芯層が発泡状態の芯層であり、前記芯層の平均気泡径が5μm以上50μm未満であることを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<8>前記被覆層と前記芯層との質量比が99:1~80:20であることを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<9><1>から<8>のいずれかに記載の発泡粒子を型内成形してなる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子によれば、導電性炭素材料を含みつつも難燃性に優れ、機能性添加剤の脱離による汚染が抑制された熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が得られる熱可塑性樹脂発泡粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る熱可塑性樹脂発泡粒子の一実施形態を模式的に示した概略斜視図である。
図2】熱可塑性樹脂発泡粒子における芯層と被覆層の見掛け密度の測定方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態をあげて、本発明の発泡粒子をさらに詳細に説明する。図1に、本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子の一実施形態を模式的に示した概略斜視図を示す。
【0012】
[熱可塑性樹脂発泡粒子]
本実施形態の熱可塑性樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう)は熱可塑性樹脂から形成されている芯層と、熱可塑性樹脂から形成されている発泡状態の被覆層とを備えている。
【0013】
(芯層)
本発明の発泡粒子における芯層は、熱可塑性樹脂から形成され、必須の成分として導電性炭素材料及び難燃剤が含有されている。
【0014】
(被覆層)
本発明の発泡粒子における被覆層は、芯層の外周を覆うように形成される発泡層であり、被覆層を形成する発泡構造は、熱可塑性樹脂を発泡させてなる気泡を有する構造である。従来、発泡粒子に多量に導電性炭素材料を含有させて電波吸収性能を発現させる場合には、該発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体とするのに際し、発泡粒子成形体の融着率や二次発泡性が低下したり、寸法安定性や外観が低下したりするおそれがあった。一方、融着性を向上させるためには発泡粒子を成形する際に、成形圧を高くすることや、予め発泡粒子を加圧しておく等の操作を行う必要があった。しかし、成形圧を高くすると、成形体の収縮率が大きく、寸法安定性や外観が低下しやすくなり、また、発泡粒子を高い圧力で加圧するには、長時間の加圧工程が必要であるため、生産性の観点から課題を残していた。
【0015】
これに対して、本発明では、発泡粒子が芯層と被覆層とからなるとともに、各々の層を特定の質量比とし、芯層に導電性炭素材料を含有させる一方で、被覆層の導電性炭素材料の含有量を芯層よりも低く設定することを条件としている。また、被覆層が発泡することにより、発泡粒子の2次発泡性の低下が抑制される。さらに、該発泡粒子は、型内成型時に被覆層が2次発泡できるので、発泡粒子同士が十分に融着して良好な発泡粒子成形体を形成することができる。従って、本発明の発泡粒子から得られる熱可塑性樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう)は、導電性炭素材料が配合されているにもかかわらず、二次発泡性に優れ、融着率が低下することなく、収縮率が小さい発泡粒子成形体とすることができる。
【0016】
なお、図1に示す実施形態においては、芯層と被覆層の二層発泡粒子を例示しているが、本発明の効果を阻害しない範囲において、さらに他の層を設けて多層化してもよい。
【0017】
(熱可塑性樹脂)
本発明の発泡粒子において、芯層及び被覆層を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂及びこれらのブレンドポリマー等を挙げることができ、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0018】
また、ポリオレフィン系樹脂と他樹脂の混合樹脂を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましく、95質量%以上含有することがよりさらに好ましい。
【0019】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体やその分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー系樹脂等を挙げることができる。
【0020】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンに由来する構造単位が50質量%以上のプロピレン系共重合体が挙げられ、該共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等のプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等を例示することができる。なお、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0021】
なお、熱可塑性樹脂は、後述する導電性炭素材料を均一に混合した状態を形成することが容易である点で、無架橋のものを用いることが好ましい。また、芯層及び被覆層に用いる熱可塑性樹脂は同じものであっても異なるものであっても構わないが、芯層及び被覆層に用いる熱可塑性樹脂が両方共にポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0022】
(導電性炭素材料)
本発明で用いる導電性炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノストラクチャー及びグラフェンから選択される1種以上であり、これらの中でもカーボンナノチューブを好適に用いることができる。前記導電性炭素材料は、高導電性で電波吸収性能を有する導電剤であることが好ましい。前記導電性炭素材料の形状は特に限定されず、例えば、前記材料からなるシート状、繊維状、網状等のものを挙げることができる。前記形状の導電性炭素材料を用いることにより、熱可塑性樹脂へのアンカー効果と導電剤自体の絡まりにより、脱離し難く、製品汚染を低く抑えることが可能となる。
【0023】
前記導電性炭素材料の中でも、取り扱い性に優れることからカーボンナノチューブが好ましい。カーボンナノチューブを用いる場合、単層カーボンナノチューブであってもよく、多層カーボンナノチューブであってもよい。また、カーボンナノチューブとして、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブとの両方が含まれていてもよい。取り扱い性及びコストの観点からは多層カーボンナノチューブが好ましい。カーボンナノチューブの平均外径は5nm以上25nm以下であることが好ましく、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。また、カーボンナノチューブのアスペクト比は50以上500以下であることが好ましく、100以上200以下であることがより好ましい。なお、前記アスペクト比は、カーボンナノチューブの平均長さを平均直径で除することにより求められる。カーボンナノチューブのサイズが前記範囲であると、樹脂中での優れた分散性により発泡粒子毎の性状が均一になり、静電容量等の性能を安定化させることができる。また、本発明で用いる導電性炭素材料は、導電性カーボンブラックと比較して少量の添加で優れた電波吸収性能を発揮することができる。そのため、例えば、本発明の発泡粒子を型内成形した発泡粒子成形体を電波吸収材として使用する場合、優れた電波吸収性能と優れた難燃性を両立させることができる。
【0024】
なお、カーボンナノチューブの平均直径は、例えば、以下の方法により測定することができる。まず、発泡粒子を図1に示すA-A断面で略二等分して、その切断面を走査型電子顕微鏡により撮影し、発泡粒子の切断面像を取得する。この切断面像中に存在するカーボンナノチューブの直径を無作為に選択した50か所において測定する。そして、得られた直径の平均値を平均直径とすることができる。
【0025】
また、カーボンナノチューブの平均長さは、例えば、以下の方法により測定することができる。まず、前記カーボンナノチューブの平均直径の測定と同様に、走査型電子顕微鏡により発泡粒子の切断面像を取得する。取得した面像から無作為に50本のカーボンナノチューブを選択し、画像解析により各カーボンナノチューブの長さを測定する。なお、カーボンナノチューブが直線状ではなく、折れ曲がった形状である場合には、キルビメーター等を用いてカーボンナノチューブの形状に沿った長さを測定すればよい。このようにして得られた長さの平均値を平均長さとすることができる。
【0026】
(芯層中の導電性炭素材料の含有量)
芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)は、1質量%以上30質量%以下である。優れた静電容量を発現させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。一方、低汚染性の観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0027】
(被覆層中の導電性炭素材料の含有量)
被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)は、3質量%以下である(ただし、0を含む)。また、被覆層の発泡性向上の観点からは、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、被覆層には導電性炭素材料が非含有であってもよい。なお、本発明においては、被覆層中の導電性炭素材料の含有量(Xo)が芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)よりも少ないことを条件としている。
【0028】
(難燃剤及び難燃助剤)
本発明の発泡粒子で用いられる難燃剤は、高い難燃性を示すことから臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤であるであることが好ましい。これらの中でも、少量の添加で高い難燃性が得られやすいことから臭素系難燃剤を好適に用いることができる。
【0029】
臭素系難燃剤としては、例えば、エポキシ樹脂に臭素を付加させた臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキサイド、2,3-ジブロモプロピルペンタブロモフェニルオキサイド、ポリブロモフェニルインダン、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレンーブタジエンースチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン等の臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素および窒素原子含有化合物、テトラブロモシクロオクタン等のハロゲン化脂肪族化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2-ブロモエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル等の臭素化ビスフェノールA類およびその誘導体、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS(2-ブロモエチル)エーテル等の臭素化ビスフェノールS類およびその誘導体、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールエポキシオリゴマー等の臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェート等のハロゲン含有リン化合物等を挙げることができる。
【0030】
特に、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、及びビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホンが少量の添加で高い難燃性を発揮するため好ましい。
【0031】
少量の添加で優れた難燃性を得る観点から、臭素系難燃剤中の臭素含有率は60質量%以上であることが好ましく、63質量%以上であることがより好ましい。なお、臭素含有率はJIS K7392:2009に基づき求めることができる。
【0032】
前記難燃剤は、5%分解温度が260~340℃の範囲であることが好ましい。難燃剤の5%分解温度が前記範囲であることにより、樹脂の熱分解が進む温度範囲において、臭素系難燃剤による十分な難燃効果を発現できる。同様の観点から前記難燃剤の5%分解温度は、270~320℃が好ましく、285~305℃であることがより好ましい。なお、難燃剤の5%分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)により測定することができる。具体的には、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:40℃から500℃、窒素雰囲気下、サンプルパンの材質:Pt、サンプル質量:10mgという測定条件にて、示差熱減量曲線を測定し、該示差熱減量曲線において重量が5%減少したときの温度をもって5%分解温度とすることができる。
【0033】
また、本発明においては、前記難燃剤とともに難燃助剤を添加することができる。難燃助剤としては、例えば、水酸化金属、シリコーン化合物、テフロン、モンモリロナイト、金属酸化物、トリアンジン化合物、グアニジン化合物等を挙げることができる。これらの中でも、臭素系難燃剤との併用で相乗効果が得られる金属酸化物を好適に用いることできる。
【0034】
金属酸化物としては、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等を挙げることができる。これらの中でも、少量添加で十分な効果を発揮することから三酸化アンチモン、スズ酸亜鉛を好適に用いることができる。
【0035】
(芯層中の難燃剤、難燃助剤の含有量)
芯層中の難燃剤の含有量(Yi)は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは4質量%以上である。また、芯層中の難燃剤の含有量(Yi)は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは8質量%以下の範囲である。
【0036】
また、芯層中の難燃助剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、よりさらに好ましくは2質量%以上である。また、芯層中の難燃助剤の含有量は、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以下である。難燃剤、難燃助剤の含有量を前記の範囲とすることにより、発泡粒子により高度な機能性を付与しつつ高い難燃性を付与することができる。
【0037】
(被覆層中の難燃剤、難燃助剤の含有量)
被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)は5質量%以上25質量%以下の範囲である。高い難燃性を付与する観点から被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)は、好ましくは6質量%以上、より好ましくは6.5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。一方、二次発泡性の観点から被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)は好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0038】
また、被覆層中の難燃助剤の含有量は、高い難燃性を付与する観点から好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上である。また、2次発泡性の観点から被覆層中の難燃助剤の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0039】
なお、被覆層中の難燃剤の含有量(Yo)は、芯層中の難燃剤の含有量(Yi)よりも多いことが好ましい。前記難燃剤の含有量についての関係を満足することによって、優れた難燃性を担保しやすくすることができるため好ましい。
【0040】
(その他の添加剤等)
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子における被覆層及び芯層には、必要に応じて添加剤を配合することができる。これらの添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、顔料、染料、核剤、滑剤、親和剤等を挙げることができる。前記添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲において使用することができるが、その添加量は、各層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、それぞれ5質量部以下であることが好ましく、それぞれ3質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
(芯層と被覆層の質量比)
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子において、被覆層:芯層の質量比は99:1~50:50である。被覆層と芯層との質量比を前記範囲とすることにより、導電性炭素材料の量が多い芯層が被覆層により確実に被覆されると共に被覆層が発泡可能となり、且つ2次発泡性も確保されるため、導電性炭素材料の量を多くしつつ成形時の融着性、成形品の寸法安定性に優れる発泡粒子を得ることができる。係る観点から、好ましくは99:1~60:40、より好ましくは99:1~80:20、さらに好ましくは95:5~90:10である。なお、前記質量比における質量は、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂に含有される導電性炭素材料を含む質量である。
【0042】
また、本発明の発泡粒子においては、芯層が被覆層で完全に覆われていても、一部の芯層が露出していても構わない。芯層が露出した構造とは、例えば、円柱状の芯層の側面のみが被覆層で覆われており、円柱の上面及び/又は底面に芯層が露出している構造などが挙げられる。
【0043】
[熱可塑性樹脂発泡粒子の機能]
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子では、芯層に対して導電性炭素材料及び難燃剤を含有するが、芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)に対する芯層中の難燃剤の含有量(Yi)の比(Yi/Xi)は0.2以上である。芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)と難燃剤の含有量(Yi)の配合比(Yi/Xi)を前記の条件とすることにより、導電性炭素材料を含みつつ難燃性を付与することができる。係る観点から、前記配合比(Yi/Xi)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。一方、前記配合比(Yi/Xi)は10以下が好ましく、5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明の発泡粒子においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて芯層と被覆層の他に、例えば、最外層や、芯層と被覆層の間に他の層を形成した構成の発泡粒子とすることもできる。
【0045】
前記の条件を有する本発明の発泡粒子によれば、発泡粒子全体として導電性炭素材料、難燃剤を大量に含有していても熱可塑性樹脂発泡粒子の2次発泡性が阻害されず、発泡粒子成形体の融着性を維持することが可能となる。したがって、発泡粒子を成形する際に、成形圧を高くすることや予め発泡粒子を加圧しておくこと等の操作を行わなくても、導電性炭素材料、難燃剤を多量に含有しつつ、融着率が高く、二次発泡性に優れ、収縮が抑制された発泡粒子成形体を得ることが可能となる。また、熱可塑性樹脂発泡粒子を用いて形成される熱可塑性樹脂発泡粒子成形体についても、導電性炭素材料、難燃剤を様々な種類、量にて調製することができるので、様々な機能性を付与した発泡粒子成形体を得ることができる。
【0046】
[熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明の発泡粒子は、例えば、以下の方法により樹脂粒子を製造することができる。まず、2基の押出機を準備し、一方の押出機で芯層を形成するための熱可塑性樹脂組成物を混練し、他方の押出機で被覆層を形成するための熱可塑性樹脂組成物を混練した後、所定形状のダイから共押出を行い、芯層と、芯層を被覆する被覆層とからなる鞘芯型の紐状の複合体を得る。次に、引取機を備えた切断機で所定の質量又は大きさにて共押出された紐状の複合体を切断することにより、芯層と被覆層とからなる柱状の複合樹脂粒子を得ることができる。
【0047】
樹脂粒子の発泡物である発泡粒子は、従来公知の押出発泡粒子製造方法や加圧可能な密閉容器から発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を放出して発泡する方法、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を加熱軟化させて発泡する方法等の従来公知の発泡方法により製造することができる。前記製造方法の中でも本発明の発泡粒子は、芯層と被覆層からなる複合樹脂粒子を、加圧可能な密閉容器(例えば、オートクレーブ)中の水性媒体(通常は水)に分散させ、分散剤を添加し、所要量の発泡剤を圧入し加圧し所要時間加温下に撹拌して発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させた後、水性媒体と一緒に内容物を容器内圧力より低圧域に放出することにより発泡させて得ることが好ましい。密閉容器から発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を放出して発泡する方法は、得られる発泡粒子の被覆層と発泡層の平均気泡径を後述する好ましい範囲としやすいため好ましい。
【0048】
発泡剤としては、熱可塑性樹脂の発泡に用いる通常公知の有機系物理発泡剤や無機系物理発泡剤を用いることができる。有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン及びシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等を用いることができ、無機系物理発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴン、水等を用いることができる。
【0049】
分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等、水に難溶性の無機物質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の水溶性高分子系保護コロイド剤等を用いることができる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等を用いることができる。
【0050】
(見掛け密度)
本発明の発泡粒子の見掛け密度は、25~150kg/mであることが好ましい。発泡粒子の見掛け密度を前記範囲とすることにより軽量性に優れると共に優れた成形性を得ることができる。かかる観点から、見掛け密度は30~125kg/mがより好ましく、35~100kg/mがさらに好ましい。
【0051】
発泡粒子の見掛け密度は、23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に、発泡粒子群(発泡粒子群の重量W[g])を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V[cm]を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除し(W/V)、さらに[kg/m]に単位換算することにより求めることができる。
【0052】
(独立気泡率)
前記発泡粒子の独立気泡率は、発泡成形性の観点から、80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、前記発泡粒子の独立気泡率は、以下の手順で求められる。恒温室内にて、10日間以上放置した発泡粒子を測定用サンプルとし、前記発泡粒子の見掛け密度における測定方法(水没法)により正確に見掛けの体積Vaを測定する。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製「空気比較式比重計930」等により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定する。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記式により独立気泡率を計算し、サンプル5個(N=5)の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)
ただし、
Vx:前記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0053】
(被覆層の平均気泡径)
本発明の発泡粒子において、被覆層の平均気泡径は50μm以上300μm以下であることが好ましい。二次発泡性に優れ、収縮率が小さい発泡粒子成形体を得るという観点から、被覆層の平均気泡径は55μm以上250μm以下であることがより好ましく、60μm以上200μm以下がさらに好ましい。
【0054】
芯層は、発泡状態の芯層でも、実質的に非発泡状態の芯層であってもよい。優れた静電容量を発揮しやすいという観点から、芯層は、発泡状態の芯層であることが好ましい。芯層が発泡状態であるときには芯層の平均気泡径は被覆層の平均気泡径よりも小さいことが好ましく、50μm未満であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましく、35μm以下であることがよりさらに好ましい。また、芯層の平均気泡径は5μm以上であることが好ましい。芯層の平均気泡径が前記範囲を満足すると優れた静電容量をより発揮しやすくなる。なお、実質的に非発泡とは、芯層に気泡が全く存在しないもの(発泡粒子を発泡させる際に一旦形成された気泡が溶融破壊されて気泡が消滅したものも包含する)のみならず、極めて微小な気泡が僅かに存在するものも包含される。芯層が発泡状態であるとき、芯層の平均気泡径に対する被覆層の平均気泡径の比(被覆層の平均気泡径/芯層の平均気泡径)は、1.5~8であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。
【0055】
被覆層及び芯層の平均気泡径は、発泡粒子を図1に示すA-A断面で略二等分して、その切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のようにして求めることができる。まず、発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の切断面の中心を通るように上端表面から下端表面まで最小距離をとるような線分に対する垂直二等分線lを引き、lが通る発泡粒子の左端表面から右端表面までの線分lの長さを測定して、その長さをLc(μm)とし、直線lが交わる気泡の数Nc(個)を求め、LsをNで除した値(Lc/Nc)を発泡粒子1個の芯層部分の平均気泡径とする。上端表面から100μm内側を通る曲線を右端表面から左端表面まで引き、その長さLs(μm)と曲線と交わる気泡の数Ns(個)を求め、LsをNsで除した値(Ls/Ns)を発泡粒子1個の被覆層の平均気泡径とする。
【0056】
また、芯層は、後述する被覆層よりも高密度であることが好ましい。芯層が被覆層よりも高密度であることを確認する方法としては以下の方法が挙げられる。無作為に選択した20個以上の発泡粒子について、図2に示すように、発泡粒子を等間隔に3等分してA、B、Cに切断して切り出す。そして、A+Cを発泡粒子片I、Bを発泡粒子片IIとして、後述する発泡粒子の見掛け密度と同様の方法により各々の見掛け密度を求める。これらの見掛け密度の結果から見掛け密度の比(発泡粒子片II/発泡粒子片I)を求める。前記見掛け密度の比(発泡粒子片II/発泡粒子片I)が1よりも大きい値であるときには芯層が被覆層よりも高密度であるとみなすことができる。前記見掛け密度の比(発泡粒子片II/発泡粒子片I)は、1.0を超えることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。
【0057】
(高温ピークの融解熱量)
本発明の発泡粒子がポリオレフィン系樹脂発泡粒子の場合には、二次結晶を有し、該二次結晶の示差熱分析による高温ピークの融解熱量(高温ピーク熱量)が1~30J/gであることが好ましい。即ち、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子2~10mgを熱流束示差走査熱量測定法により、10℃/分の昇温速度で23℃から220℃まで加熱したときに得られるDSC曲線(第1回加熱のDSC曲線)が、ポリオレフィン系樹脂に固有の頂点温度を有する吸熱ピークA(固有ピーク)と、該固有ピークの高温側の温度領域に頂点温度を有する、前記二次結晶に由来する1つ以上の吸熱ピークB(高温ピーク)とを有することが好ましい。また、該高温ピーク熱量が1~30J/gであることが好ましく、5~20J/gであることがより好ましい。高温ピーク熱量が前記範囲内であることにより、成形融着性に優れた発泡粒子成形体を得ることができる。前記高温ピーク熱量は高温ピークの面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α-β)を引く。なお、前記融解終了温度Tは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点と対応する温度である。次に、前記固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をσとする。高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(σ-β)と、線分(γ-σ)とによって囲まれる部分の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。なお、前記高温ピークBは、前記のようにして測定した発泡粒子の第1回加熱のDSC曲線には現れるが、第1回加熱のDSC曲線を得た後、200℃から10℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、再び10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した時に得られる第2回加熱のDSC曲線には現れず、第2回加熱のDSC曲線には固有ピークAと同様な吸熱ピークしか現れない。そのため、固有ピークAと高温ピークBとを、容易に判別できる。
【0058】
なお、DSC曲線における高温ピークを有する発泡粒子は、発泡粒子製造工程において、加熱時にポリオレフィン系樹脂の融解終了温度(T)以上に昇温することなく、ポリオレフィン系樹脂の融点(Tm)より20℃低い温度以上、融解終了温度(T)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めて、その温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10~60分程度保持し(一段保持工程)、その後、融点(Tm)より15℃低い温度から融解終了温度(T)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に調節し、必要により当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10~60分程度、その温度で保持(二段保持工程)してから発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させる方法により得ることができる。
【0059】
[熱可塑性樹脂発泡粒子成形体]
本発明の発泡粒子を用いた発泡粒子成形体は、本発明の発泡粒子のみを用いて型内成形して成形することができ、また、本発明の発泡粒子と、通常公知の他の熱可塑性系樹脂発泡粒子を併用して成形することもできる。発泡粒子成形体の大きさや形状は特に限定されるものではなく、板状や柱状、多角錐や円錐等、種々の立体形状とすることができる。
【0060】
[熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形方法]
発泡粒子成形体は、例えば、型内成形法を用いて製造することができる。具体的には、まず、所望の形状に設計された金型を準備する。次に金型内に前記本発明の発泡粒子を充填し、金型内にスチームを供給して金型内を加熱する。このとき、隣り合う発泡粒子の被覆層が融着し合い、さらに熱可塑性樹脂発泡粒子が二次発泡して発泡粒子間の間隙を埋め、金型内に充填された多数の熱可塑性樹脂発泡粒子が一体化する。その後、金型を冷却して、金型内から内容物を取出し、発泡粒子成形体を得ることができる。
【0061】
(成形体密度)
本発明の発泡粒子成形体は、その成形体密度を特に限定するものではないが、通常、9~300kg/mであることが好ましい。成形体密度は、成形体の質量を成形体の体積で除することにより求めることができる。発泡粒子成形体の体積は、成形体の外形寸法等から求めることができる。
【0062】
(融着率)
発泡粒子成形体は、寸法安定性や外観に優れた発泡粒子成形体を得ることを考慮した場合、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の融着率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることが望ましい。
【0063】
本発明の発泡粒子成形体は、静電容量が0.12~0.4pFであることが好ましく、0.2~0.35pFであることがより好ましい。発泡粒子成形体の静電容量が上記範囲を満足すると優れた電波吸収性能が期待でき、電波吸収材として好適な成形体とすることができる。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0065】
以下の原料を用いて原料マスターバッチ(MB)を調整し、表5に示す実施例1~10及び表6に示す比較例1~5の熱可塑性樹脂発泡粒子を得た。
(原料)
原料として、以下に示す熱可塑性樹脂、導電性炭素材料、難燃剤、難燃助剤を用いた。
熱可塑性樹脂:表1に示すポリプロピレン系樹脂
導電性炭素材料:表2、表3に示す導電性炭素材料
難燃剤、難燃助剤:表4に示す難燃剤、難燃助剤
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
[原料マスターバッチ(MB)の調製]
表1に示すポリプロピレン系樹脂、表2、表3に示す導電性炭素材料、表4に示す難燃剤、難燃助剤の各々を、下記表5、表6に示す配合割合で、内径20mmの二軸押出機に供給し、150~190℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを冷却、切断して、実施例1~10、比較例1、2、4、5の芯層及び被覆層形成用マスターバッチ及び比較例3の芯層形成用マスターバッチを得た。
【0071】
[熱可塑性樹脂粒子(樹脂粒子)の製造]
(実施例1)
内径25mmの樹脂粒子芯層用単層押出機及び内径26mmの樹脂粒子被覆層用二軸押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイを付設した押出機を用い、表5に示した配合となるように、前記芯層形成用マスターバッチを内径25mmの樹脂粒子芯層用押出機に、また、同時に前記被覆層形成用マスターバッチを内径26mmの樹脂粒子被覆層用押出機に供給し、それぞれを設定温度190~210℃に加熱、溶融、混練した後、前記ダイに供給した。そして、ダイ内で合流させて押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の側面に被覆層が被覆された多層ストランドとして共押出した。次に、その共押出したストランドを水冷し、ペレタイザーで2mg、L/D=2.4になるように切断して2層(鞘芯構造)に形成された円柱状の表5に記載の樹脂粒子を得た。なお、被覆層には気泡調整剤としてホウ酸亜鉛を含有量が1000質量ppmとなるように供給した。また、芯層:被覆層の質量比を7:93とした。
【0072】
[熱可塑性樹脂発泡粒子(発泡粒子)の製造]
前記樹脂粒子1kgを、分散媒体の水3Lと共に5Lのオートクレーブ内に仕込み、分散媒中に、分散剤としてカオリン3g、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04g、及び硫酸アルミニウム0.1gをそれぞれ添加し、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を表5に示した密閉容器内圧力になるように圧入し、撹拌下に発泡温度まで加熱昇温して同温度に15分間保持して、高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気圧下に水と共に放出して発泡粒子を得た。
【0073】
[熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の製造]
前記で得られた発泡粒子を縦250mm(長辺)×横200mm×厚さ50mmの平板成形型のキャビティに充填し、スチーム加熱による型内成形を行って板状発泡成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表5に示す成形加熱蒸気圧力(成形圧)で加熱した。なお、(G)はゲージ圧を意味する。
【0074】
なお、成形圧は、成形体が大きく収縮せずに、外観に優れる成形体を得られる最低圧力を示す。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生して発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子成形体の物性を表5に示した。
【0075】
(実施例2~10)
製造条件を表5に示す条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂粒子、発泡粒子、発泡粒子成形体を得た。
【0076】
(比較例1~5)
比較例1、2、4、5は、製造条件を表6に示す条件とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂粒子、発泡粒子、発泡粒子成形体を得た。比較例3は、表6に示した配合となるように芯層形成用マスターバッチのみを製造して、内径25mmの樹脂粒子芯層用押出機に供給し、設定温度190~210℃に加熱、溶融、混練した後、押出機先端に取り付けた口金の細孔から単層ストランドとして押出した。次に、その単層ストランドを水冷し、ペレタイザーで2mg、L/D=2.4になるように切断して単層に形成された円柱状の表6に記載の樹脂粒子を得た。それ以降は実施例1と同様の手順で発泡粒子成形体を得た。
【0077】
なお、表5、6中、被覆層/芯層(質量比)とは、粒子全質量に占める被覆層、芯層それぞれの質量比率(%)を示す。
また、各々の樹脂粒子の押出加工性について以下の基準で評価した。その結果を表5、6に示す。
○:押出時にサージングを起こさず (ストランド毎の微妙な吐出変動がなく)、ストランドの太さが常に一定であった
△:押出時に若干サージングが起こり (ストランド毎の微妙な吐出変動が若干あり)、ストランドの太さが僅かに変化した。
【0078】
実施例1~10、比較例1~5各々の発泡粒子及び発泡粒子成形体の物性測定及び評価を下記の方法により行った。その結果を表5、6に示す。
(発泡粒子の見掛け密度)
発泡粒子の見掛け密度は以下の手順で求めた。まず、23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に、発泡粒子群(発泡粒子群の重量W[g])を、金網を使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V[cm]を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除し(W/V)、さらに[kg/m]に単位換算することにより求めた。
【0079】
(見掛け密度の比)
見掛け密度の比を以下の方法で測定した。まず、無作為に選択した20個の発泡粒子について、図2に示すように、発泡粒子を等間隔に3等分してA、B、Cに切断して切り出した。そして、A+Cを発泡粒子片I、Bを発泡粒子片IIとして、前記発泡粒子の見掛け密度と同様の方法により各々の見掛け密度を求めた。また、これらの見掛け密度の結果から見掛け密度の比(発泡粒子片II/発泡粒子片I)を求めた。
【0080】
(発泡粒子の独立気泡率)
発泡粒子の独立気泡率は、以下の手順で測定した。恒温室内にて、10日間放置した嵩体積約20cmの発泡粒子を測定用サンプルとし、前記発泡粒子の見掛け密度における測定方法(水没法)により正確に見掛けの体積Vaを測定した。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製「空気比較式比重計930」により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定した。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記式により独立気泡率を計算し、サンプル5個(N=5)の平均値を発泡粒子の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)
ただし、
Vx:前記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0081】
(被覆層及び芯層の平均気泡径)
被覆層及び芯層の平均気泡径を以下の手順で測定した。発泡粒子を、図1に示すA-A断面で略二等分して、その切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めた。まず、発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の切断面の中心を通るように上端表面から下端表面まで最小距離をとるような線分に対する垂直二等分線lを引き、lが通る発泡粒子の左端表面から右端表面までの線分lの長さを測定して、その長さをLc(μm)とし、直線lが交わる気泡の数Nc(個)を求め、LsをNで除した値(Lc/Nc)を発泡粒子1個の芯層部分の平均気泡径とした。
上端表面から100μm内側を通る曲線を右端表面から左端表面まで引き、その長さLs(μm)と曲線と交わる気泡の数Ns(個)を求め、LsをNsで除した値(Ls/Ns)を発泡粒子1個の被覆層の平均気泡径とした。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の芯層及び被覆層の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の芯層及び被覆層の平均気泡径とした。なお、比較例3は芯層の平均気泡径のみを求めた。
【0082】
(発泡粒子の高温ピーク熱量)
発泡粒子の高温ピークの熱量を以下の手順で測定した。発泡粒子1~3mgを、熱流束示差走査熱量計によって25℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱したときに得られるDSC曲線(第1回加熱のDSC曲線)において、熱可塑性樹脂固有の頂点温度を有する吸熱ピークA(固有ピーク)と、該固有ピークの高温側の温度領域に頂点温度を有する1以上の吸熱ピークB(高温ピーク)が現れた。高温ピーク熱量は明細書中に記載の方法にて算出した。なお、無作為に選択したサンプル5個(N=5)の平均値を発泡粒子の高温ピーク熱量とした。
【0083】
(発泡粒子成形体の融着率)
融着率の測定は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合(融着率)に基づいて行った。具体的には、発泡粒子成形体から試験片を切り出し、カッターナイフで各試験片に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から発泡粒子成形体を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とした。
【0084】
(発泡粒子成形体の密度)
発泡粒子成形体の密度(成形体密度)は、成形体の質量(kg)を成形体の外形寸法から求めた体積(m)で割り算することにより求めた。
【0085】
(収縮率)
発泡粒子成形体の収縮率[%]は、(250[mm]-成形体の長辺長さ[mm])/250[mm]×100で求めた。なお、「250[mm]」とは成形用金型の長辺寸法であり、「成形体の長辺長さ[mm]」とは、実施例及び比較例で得られた発泡粒子成形体を80℃の雰囲気下で12時間養生した後、徐冷し、さらに23℃の雰囲気下で6時間養生した後の発泡粒子成形体の長辺の長さを計測した値である。
【0086】
(二次発泡性)
成形体の二次発泡性は次のように評価した。
○:成形体表面の発泡粒子間隙が完全に埋まっている
△:成形体表面の発泡粒子間隙がやや認められる
×:成形体表面の発泡粒子間隙が明らかに埋まっていない。
【0087】
(難燃性)
発泡粒子成形体の厚さ方向におけるほぼ中央から、難燃規格UL94のHBF試験用試験片として、縦150mm×横50mm×厚さ13mmの直方体試験片を切り出した(縦150mm×横50mmの一方面に成形スキン層を残して作製)。得られた試験片を用いて、成形スキン層が下面となるように配置して難燃規格UL94のHBF試験を行い、難燃性を以下の評価基準に従って評価した。
〇:5つの試験片中のすべてが100mm標線間の燃焼速度が40mm/分以下、燃焼距離が125mm未満、又はその両方を満足するものであった
×:5つの試験片中の1つ以上が100mm標線間の燃焼速度が40mm/分超、燃焼距離が125mm以上、又はその両方を満足するものであった
【0088】
(静電容量)
発泡粒子成形体の静電容量は、山本電機インスツルメント株式会社製、静電容量測定器CM113Nを用いて測定した。プローブ(A1407‐8065)は検出電極直径98mm、ガード電極外径150mm、内径100mm、電極幅50mm、電極間の絶縁距離2mmのものを使用した。先ず、水平面上に対向電極となる金属板を置き、その上にブランクとして縦300mm×横300mm×厚み200mmの導電剤を含まない成形体密度30kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を乗せ、その上に測定プローブのガード電極と隙間がなくなるように設置した。設置後、静電容量を測定し原点調整を行った。その後、実施例及び比較例で得られた各発泡粒子成形体(縦250mm×横200mm×厚み50mm)の上に測定プローブを乗せ、発泡粒子成形体の静電容量を測定した。
【0089】
(汚染性)
発泡粒子成形体の汚染性を布への汚染度で評価した。布への汚染試験方法は以下のように実施した。幅10mm×長さ300mm×厚み5mmの無着色のポリプロピレン製の棒(A)を台の上に固定した。その上に綿製のカナキン3号の白布幅100mm×長さ200mm(B)を棒(A)の上に固定した。発泡粒子成形体の成形スキン層50mm×50mmを1面残した状態で50mm×50mm×25mm厚の寸法で切り出し試験用サンプル(C)を作製し、発泡粒子成形体の成形スキン層を下向きになるように白布(B)の上に乗せ、さらにその上に錘(D)3kgを乗せた。
【0090】
サンプル(C)と錘(D)を治具で固定し、白布(B)上を往復運動させ、布に対する汚染性をL*値として比較した。尚、往復運動の振幅は200mm、周波数4.5Hz、試験時間10sの条件で実施した。白布(B)、サンプル(C)を都度変えて、1種類につき、5回試験を実施した。
【0091】
布の汚染度の評価は以下のように実施した。汚染試験前の白布のL*値(L*B)を測定し、前記5回の試験で得られた各サンプルについて汚染試験後の白布の汚染部のL*値(L*A)を測定し、L*A-L*Bの値(ΔL*)を求め、各ΔL*を算術平均した値を汚染度とした。なお、L*値の測定は、分光測色計・色彩色差計(コニカミノルタジャパン製CM-5)を用い、測定部メッシュサイズ:φ8mm、測定方式:反射測定、SCE方式の条件により測定した。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
実施例1~10の発泡体は、芯層には導電性炭素材料が高充填されているとともに、被覆層には難燃剤が配合され発泡しているため、発泡粒子成形体において、型内成形時に2次発泡することにより、導電性炭素材料を多量に含有し、安定した静電容量を有しつつ、融着性、寸法安定性に優れると共に、難燃性と耐汚染性に優れた発泡成形体が得られることが確認された。
【0095】
一方、比較例1は、導電性炭素材料としてカーボンブラックを用いた例であり、静電容量が実施例と比較して高い値となるとともに、導電性炭素材料の脱離が見られ汚染度が高いものであった。比較例2は、芯層中の導電性炭素材料の含有量(Xi)に対する芯層中の難燃剤の含有量(Yi)の比(Yi/Xi)が本発明の規定より低い、即ち、導電性炭素材料の含有量(Xi)に対して芯層中の難燃剤の含有量(Yi)が少なすぎる例であり、難燃性が劣るものであった。比較例3は、芯層の構成のみの単層の発泡粒子を用いた例であり、二次発泡性が著しく劣り、汚染度が高いものであった。また、比較例4は、芯層を発泡させ、被覆層に導電性炭素材料を含有させた例であり、難燃性が著しく劣り、かつ汚染度が高いものであった。さらに、比較例5は、芯層の導電性炭素材料の含有量が少ない例であり、静電容量が著しく低いものであった。
図1
図2