(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018686
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】シンタリング治具、シンタリング金型、ピックアップユニット、フィルム処理装置、シンタリング装置およびシンタリング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122164
(22)【出願日】2022-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正明
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047BA15
5F047FA07
5F047FA31
5F047FA59
5F047FA62
(57)【要約】
【課題】トレイ内の電子部品の酸化を防止することが可能なシンタリング治具、シンタリング金型、ピックアップユニット、フィルム処理装置、シンタリング装置およびシンタリング方法の提供。
【解決手段】基材P1上に接合材を介して半導体素子P2が搭載された電子部品Pを、加熱および加圧することにより接合するシンタリング装置に用いられるシンタリング治具1であって、電子部品Pが載置される凹部10、凹部10内に不活性ガスを導入するガス導入路とを有するトレイ11と、凹部10を覆うフィルムFであり柔軟性を有するフィルムFをトレイ11の上端面に押さえ付ける枠状部材12であり、半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔12Aを有する枠状部材12とを含むシンタリング治具1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するシンタリング装置に用いられるシンタリング治具であって、
前記電子部品が載置される凹部と、前記凹部内に不活性ガスを導入するガス導入路とを有するトレイと、
前記凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを前記トレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、前記半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材と
を含むシンタリング治具。
【請求項2】
前記ガス導入路は、前記不活性ガスの逆流防止機構を有する請求項1記載のシンタリング治具。
【請求項3】
前記枠状部材は、前記フィルムを底面に保持するものである請求項1記載のシンタリング治具。
【請求項4】
前記枠状部材は、前記フィルムを底面にバキューム吸着する吸引孔を有する請求項1記載のシンタリング治具。
【請求項5】
前記トレイは、前記凹部を複数有し、それぞれの凹部の底面にそれぞれの凹部に載置される電子部品を加圧するための部材が進退するための複数の第2貫通孔を有する請求項1記載のシンタリング治具。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシンタリング治具内に載置された電子部品を加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、
前記シンタリング治具が載置される載置枠を有する第1型枠と、前記載置枠の内面を摺動可能な可動コアと、前記可動コアを押圧駆動する駆動部と、不活性ガスを前記シンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、
前記第1型枠と協働して前記シンタリング金型を型締めするための第2型枠と、前記駆動部により前記可動コアが押し上げられることにより、前記枠状部材の貫通孔を通じて、前記基材上に接合材を介して搭載された半導体素子を、前記フィルムを介して加圧する前記凸部材とを備える上型と
を含むシンタリング金型。
【請求項7】
前記上型は、弾性部材により付勢される押圧部材であり、前記枠状部材を介して前記フィルムを前記トレイの上端面に押圧する押圧部材を有する請求項6記載のシンタリング金型。
【請求項8】
前記凸部材は、前記基材上に搭載された複数の半導体素子に対応する数であり、それぞれが対応する第2弾性部材により付勢されるものである請求項6記載のシンタリング金型。
【請求項9】
前記載置枠、前記可動コア、前記駆動部および前記凸部材は、前記電子部品および前記シンタリング治具の種類に応じて着脱自在である請求項6記載のシンタリング金型。
【請求項10】
請求項5記載のシンタリング治具の複数の凹部内にそれぞれ載置された電子部品を加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、
前記シンタリング治具が載置される載置台を有する第1型枠であり、前記シンタリング治具の複数の第2貫通孔にそれぞれ対応する複数の第3貫通孔を有する第1型枠と、前記複数の第3貫通孔の内面をそれぞれ摺動可能な複数の可動コアと、前記複数の可動コアをそれぞれ押圧駆動する複数の駆動部と、不活性ガスを前記シンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、
前記第1型枠と協働して前記シンタリング金型を型締めするための第2型枠と、前記駆動部により前記複数の可動コアがそれぞれ押し上げられることにより、前記枠状部材の貫通孔を通じて、前記電子部品に搭載された半導体素子を、前記フィルムを介してそれぞれ加圧する複数の前記凸部材とを備える上型と
を含むシンタリング金型。
【請求項11】
前記載置台、前記可動コア、前記駆動部および前記凸部材は、前記電子部品および前記シンタリング治具の種類に応じて着脱自在である請求項10記載のシンタリング金型。
【請求項12】
基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、
前記電子部品が載置される凹部を有するトレイの前記凹部を覆うフィルムを枠状部材により前記トレイの上端面に押さえ付けて前記凹部を密閉し、前記トレイの内部を不活性ガスにより満たし、前記電子部品を加熱および加圧する型枠を有するシンタリング金型。
【請求項13】
型枠の型締めにより形成される内部空間において基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、
前記型枠は、前記電子部品が載置される凹部を有するトレイの前記凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを枠状部材により前記トレイの上端面に押さえ付けて前記凹部を密閉し、前記トレイの内部を不活性ガスにより満たし、前記電子部品を加熱および加圧するものであるシンタリング金型。
【請求項14】
請求項4記載のシンタリング治具の全部または一部を搬送するピックアップユニットであって、
前記トレイ、前記枠状部材または前記シンタリング治具を側面から保持する保持部と、
前記保持部を昇降させる昇降部と、
前記枠状部材を上面から押さえ付ける押接部であり、前記枠状部材の吸引孔と連通してエア吸引することにより前記フィルムを前記枠状部材の底面に吸着、または前記枠状部材の吸引孔と連通してエア噴出することにより前記フィルムを前記枠状部材の底面から剥離する第2吸引孔を備えた押接部と
を有するピックアップユニット。
【請求項15】
請求項4記載のシンタリング治具のフィルム処理装置であって、
ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構であり、前記ロール状フィルムをセットするセット部と、前記ロール状フィルムから所定長さのフィルムを送り出す駆動部とを備えるフィルム供給機構と、
前記ロール状フィルムから1回分または複数回分の枚葉フィルム長さを引き出して保管しておくバッファ部であり、前記フィルムに一定の保持テンションをかけるテンションローラと、前記フィルムの端を保持しておくフィルム端保持部とを備えるバッファ部と、
前記バッファ部のフィルムの端部をグリッパーで掴んで1回分の枚葉フィルム長さを引き出し、引き出されたフィルムを第2載置台の上面で吸着し、カッターで所定長さのフィルムに切断する切断機構と、
前記枠状部材を保持して前記第2載置台上の所定長さのフィルム上に載置し、前記枠状部材の吸引孔を通して前記フィルムを前記枠状部材の下面に吸着し、前記枠状部材とともに前記フィルムを前記トレイの上面に搬送するピックアップユニットと
を含むフィルム処理装置。
【請求項16】
請求項5記載のシンタリング治具のフィルム処理装置であって、
前記シンタリング治具を載置する第3載置台と、
前記シンタリング治具を保持して搬送するピックアップユニットであり、エア吸引することにより前記フィルムを前記枠状部材に吸着した状態で前記フィルムを前記枠状部材とともに前記トレイから隔離することにより前記フィルムを前記トレイ内の半導体素子から剥離、またはエア噴出することにより前記フィルムを前記枠状部材から剥離するピックアップユニットと、
前記第3載置台の下から前記トレイの前記複数の第2貫通孔を通して基材を吸引することにより前記トレイとともに前記電子部品を前記第3載置台に保持する吸引保持部と、
前記ピックアップユニットにより前記枠状部材から剥離される前記フィルムを破棄するフィルム廃棄部と
を含むフィルム処理装置。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシンタリング治具を備えたシンタリング装置。
【請求項18】
前記トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、前記フィルムを保持する前の前記枠状部材を仮置きする仮置台と、前記トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部を有する請求項17記載のシンタリング装置。
【請求項19】
請求項6記載のシンタリング金型を備えたシンタリング装置。
【請求項20】
前記電子部品が載置されたトレイを供給する材料供給部と、
前記フィルムを供給するフィルム供給部であり、ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構と、前記ロール状フィルムを所定長さのフィルムに切断する切断機構とを備えるフィルム供給部と、
型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を備えるプレス部と、
シンタリングおよび冷却が完了した電子部品が載置された前記シンタリング治具が載置される第3載置台であり、電子部品からフィルムを剥離する第3載置台と、
電子部品が載置された前記トレイを収納する製品収納部と、
前記枠状部材に保持された使用済みのフィルムを廃棄するフィルム廃棄部と、
前記トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、前記フィルムを保持する前または前記フィルムを廃棄後の前記枠状部材を仮置きする仮置台と、前記トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部と
を含む請求項17記載のシンタリング装置。
【請求項21】
前記プレス部を複数備え、
前記搬送部は、前記冷却部を複数備える
請求項20記載のシンタリング装置。
【請求項22】
基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品をトレイの凹部内に載置し、前記凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを前記トレイの上端面に枠状部材により押さえ付け、前記凹部内を不活性ガスで満たし、前記電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングするシンタリング方法。
【請求項23】
基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するシンタリング方法であって、
前記電子部品が載置される凹部を有するトレイを準備する工程と、
前記凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを準備する工程と、
前記フィルムを前記トレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、前記半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材を準備する工程と、
型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を準備する工程と、
前記電子部品が凹部に載置されたトレイの上端面に、前記凹部を覆うフィルムを前記枠状部材により押さえ付け、前記凹部を密閉してシンタリング治具とする工程と、
前記シンタリング金型内に前記シンタリング治具を載置する工程と、
前記シンタリング治具の前記凹部内に不活性ガスを供給して前記電子部品を覆う工程と、
前記シンタリング治具内の電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングする工程と、
前記シンタリング後、前記不活性ガスの前記シンタリング治具の前記凹部内へのガス導入路を閉止し、前記シンタリング治具を前記シンタリング金型から取り出す工程と、
前記シンタリング金型から取り出した前記シンタリング治具内の電子部品を冷却する工程と
を含むシンタリング方法。
【請求項24】
前記シンタリング後、前記枠状部材を、前記フィルムを前記トレイの上端面に押さえ付ける工程へ循環搬送して再利用することを含む請求項22または23に記載のシンタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ペーストや銅ペーストなどの接合材を用いてシンタリング(焼結法)により電子部品を接合するためのシンタリング治具およびシンタリング金型、シンタリング治具を搬送するピックアップユニット、シンタリング治具のフィルム処理装置、並びに、シンタリング治具を備えたシンタリング装置およびシンタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀ナノペーストなどの接合材を用いてシンタリングにより電子部品を接合する電子部品のシンタリング装置として、例えば、特許文献1には、基板上に接合材を介して半導体チップが載置された電子部品をトレイ内に載置した状態で予熱する予熱部と、予熱部において予熱された電子部品を加熱、加圧してシンタリング処理するシンタリングプレス部と、シンタリングプレス部においてシンタリング処理された電子部品を冷却する冷却部と、電子部品をトレイごと保持し、予熱部からシンタリングプレス部へ搬送する第1搬送部と、シンタリングプレス部から冷却部へ電子部品をトレイごと搬送する第2搬送部とを含み、第2搬送部は、不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給路を有し、第1不活性ガス供給路から供給される不活性ガスによりトレイ内の電子部品を覆ったままの状態でシンタリングプレス部から冷却部へ搬送するものであり、冷却部は、第2搬送部により搬送される電子部品をトレイごと第2搬送部との間で挟み込み、不活性ガスにより電子部品を覆ったままの状態で冷却するものであるシンタリング装置が開示されている。
【0003】
このシンタリング装置では、基板上に接合材を介して半導体チップが載置された電子部品をトレイ内に載置した状態で予熱し、接合材の水分や溶媒等を除去した後、シンタリングプレス部においてシンタリング処理されたトレイ内の電子部品を不活性ガスにより覆った状態として冷却部へ搬送し、さらに不活性ガスにより覆ったままの状態で冷却することで、シンタリング処理により高温となって酸化しやすくなっている部材の酸化を防止することができ、品質を低下させることなく、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となっている。
【0004】
近年、電子部品の接合材として使用される銀ペーストに代えて、安価な銅ペーストの使用が増えてきている。また、基材にも銅材料を使用するものもある。しかしながら、銅材は高温で酸化しやすいため、高温、高圧で処理するシンタリングの過程で銅材が酸化してしまい、シンタリング品質の低下に繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のシンタリング装置では、シンタリングプレス部でのシンタリング中と、シンタリング後の冷却部への搬送中と、冷却部での冷却中において、酸化防止のために不活性ガスを供給することが記載されているが、具体的な酸化防止の構造や方法の記載がない。また、搬送途中にトレイが開放状態となるタイミングがあり、トレイ内に酸素が侵入する恐れがあるため、電子部品の酸化を防止することができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、トレイ内の電子部品の酸化を防止することが可能なシンタリング治具、シンタリング金型、ピックアップユニット、フィルム処理装置、シンタリング装置およびシンタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシンタリング治具は、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するシンタリング装置に用いられるシンタリング治具であって、電子部品が載置される凹部と、凹部内に不活性ガスを導入するガス導入路とを有するトレイと、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムをトレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材とを含むものである。
【0009】
本発明のシンタリング治具では、凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面を、柔軟性を有するフィルムを介して枠状部材で押さえ付ける。これにより、フィルムは、凹部を覆うとともに、枠状部材で圧縮されて枠状部材とトレイの上端面との隙間を埋め、トレイの上端面を密閉する。その後、ガス導入路より凹部内に不活性ガスを導入して、電子部品を不活性ガスで覆うことができる。また、枠状部材の貫通孔を通じて凸部材を進入させることで、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができる。
【0010】
ガス導入路は、不活性ガスの逆流防止機構を有することが望ましい。これにより、ガス導入路より凹部内に導入した不活性ガスの逆流が防止され、不活性ガスの流出を防ぐことができる。
【0011】
枠状部材は、フィルムを底面に保持するものであることが望ましい。これにより、フィルムを底面に保持した枠状部材を、凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面に押さえ付けるだけで、トレイの上端面を密閉することが可能となる。
【0012】
枠状部材は、フィルムを底面にバキューム吸着する吸引孔を有することが望ましい。これにより、吸引孔により枠状部材の底面にフィルムをバキューム吸着することで、フィルムを枠状部材の底面に保持し、この枠状部材を凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面に押さえ付けるだけで、トレイの上端面を密閉することが可能となる。
【0013】
トレイは、凹部を複数有し、それぞれの凹部の底面にそれぞれの凹部に載置される電子部品を加圧するための部材が進退するための複数の第2貫通孔を有する構成とすることができる。これにより、トレイの複数の凹部の底面に載置される複数の電子部品のそれぞれの高さに応じて複数の第2貫通孔を通じて加圧することができる。
【0014】
本発明のシンタリング金型は、前記シンタリング治具内に載置された電子部品を加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、シンタリング治具が載置される載置枠を有する第1型枠と、載置枠の内面を摺動可能な可動コアと、可動コアを押圧駆動する駆動部と、不活性ガスをシンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、第1型枠と協働してシンタリング金型を型締めするための第2型枠と、駆動部により可動コアが押し上げられることにより、枠状部材の貫通孔を通じて、基材上に接合材を介して搭載された半導体素子を、フィルムを介して加圧する凸部材とを備える上型とを含むものである。
【0015】
本発明のシンタリング金型によれば、前記のようにトレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉されたシンタリング治具が下型の第1型枠の載置枠に載置され、下型のガス供給路からシンタリング治具のガス導入路に不活性ガスが供給されてトレイの凹部内に不活性ガスが導入され、電子部品が不活性ガスで覆われる。そして、第1型枠と第2型枠とで型締めを行い、駆動部により可動コアを押し上げると、枠状部材の貫通孔を通じて凸部材が進入し、フィルムを介して基材上に接合材を介して搭載された半導体素子を加圧し、シンタリングすることができる。
【0016】
上型は、弾性部材により付勢される押圧部材であり、枠状部材を介してフィルムをトレイの上端面に押圧する押圧部材を有することが望ましい。これにより、弾性部材により付勢される押圧部材により枠状部材がトレイの上端面に押圧されることで、フィルムが枠状部材およびトレイの上端面にしっかりと密着する。
【0017】
凸部材は、基材上に搭載された複数の半導体素子に対応する数であり、それぞれが対応する第2弾性部材により付勢されるものであることが望ましい。これにより、基材上に複数の半導体素子が搭載されている場合にそれぞれの半導体素子の高さに応じてそれぞれが第2弾性部材により付勢される複数の凸部材によりフィルムを介して電子部品に搭載された各種の半導体素子を加圧し、シンタリングすることができる。
【0018】
載置枠、可動コア、駆動部および凸部材は、電子部品およびシンタリング治具の種類に応じて着脱自在であることが望ましい。これにより、シンタリング金型全体を交換することなく、載置枠、可動コア、駆動部および凸部材を着脱して交換することにより、電子部品の段取り替えを迅速に行うことが可能となる。
【0019】
本発明のシンタリング金型は、シンタリング治具の複数の凹部内にそれぞれ載置された電子部品を加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、シンタリング治具が載置される載置台を有する第1型枠であり、シンタリング治具の複数の第2貫通孔にそれぞれ対応する複数の第3貫通孔を有する第1型枠と、複数の第3貫通孔の内面をそれぞれ摺動可能な複数の可動コアと、複数の可動コアをそれぞれ押圧駆動する複数の駆動部と、不活性ガスをシンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、第1型枠と協働してシンタリング金型を型締めするための第2型枠と、駆動部により複数の可動コアがそれぞれ押し上げられることにより、枠状部材の貫通孔を通じて、電子部品に搭載された半導体素子を、フィルムを介してそれぞれ加圧する複数の凸部材とを備える上型とを含むものである。
【0020】
本発明のシンタリング金型によれば、トレイの複数の凹部に複数の電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉されたシンタリング治具が下型の第1型枠の載置台に載置されると、下型のガス供給路からシンタリング治具のガス導入路に不活性ガスが供給されてトレイの凹部内に不活性ガスが導入され、電子部品が不活性ガスで覆われる。そして、第1型枠と第2型枠とで型締めを行い、複数の駆動部により複数の可動コアをそれぞれ押し上げると、枠状部材の貫通孔を通じて凸部材が進入し、フィルムを介してそれぞれの電子部品に搭載された半導体素子を複数の電子部品の高さ応じてそれぞれ加圧し、シンタリングすることができる。
【0021】
載置台、可動コア、駆動部および凸部材は、電子部品およびシンタリング治具の種類に応じて着脱自在であることが望ましい。これにより、シンタリング金型全体を交換することなく、載置台、可動コア、駆動部および凸部材を着脱して交換することにより、電子部品の段取り替えを迅速に行うことが可能となる。
【0022】
本発明のシンタリング金型は、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、電子部品が載置される凹部を有するトレイの凹部を覆うフィルムを枠状部材によりトレイの上端面に押さえ付けて凹部を密閉し、トレイの内部を不活性ガスにより満たし、電子部品を加熱および加圧する型枠を有するものである。
【0023】
本発明のシンタリング金型によれば、トレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉され、トレイの内部が不活性ガスにより満たされることにより、電子部品が不活性ガスで覆われた状態で電子部品を加圧し、シンタリングすることができる。
【0024】
本発明のシンタリング金型は、型枠の型締めにより形成される内部空間において基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するためのシンタリング金型であって、型枠は、電子部品が載置される凹部を有するトレイの凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを枠状部材によりトレイの上端面に押さえ付けて凹部を密閉し、トレイの内部を不活性ガスにより満たし、電子部品を加熱および加圧するものである。
【0025】
本発明のシンタリング金型によれば、型枠の型締めにより形成される内部空間においてトレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材および柔軟性を有するフィルムにより密閉され、トレイの内部が不活性ガスにより満たされることにより、電子部品が不活性ガスで覆われた状態で電子部品を加圧し、シンタリングすることができる。
【0026】
本発明のピックアップユニットは、前記シンタリング治具の全部または一部を搬送するピックアップユニットであって、トレイ、枠状部材またはシンタリング治具を側面から保持する保持部と、保持部を昇降させる昇降部と、枠状部材を上面から押さえ付ける押接部であり、枠状部材の吸引孔と連通してエア吸引することによりフィルムを枠状部材の底面に吸着、または枠状部材の吸引孔と連通してエア噴出することによりフィルムを枠状部材の底面から剥離する第2吸引孔を備えた押接部とを有するものである。
【0027】
本発明のピックアップユニットによれば、シンタリング治具、トレイまたは枠状部材のいずれかを選択的に側面から保持して搬送可能であり、枠状部材を搬送する場合は、枠状部材を側面から保持した保持部を、昇降部により上昇させ、または上昇位置の保持部で枠状部材を側面から保持することにより、押接部により枠状部材を上面から押さえ付け、第2吸引孔を枠状部材の吸引孔と連通してエア吸引することによりフィルムを枠状部材の底面に吸着して保持し、この枠状部材を凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面に押さえ付けることで、トレイの上端面を密閉することが可能となる。一方、フィルムの廃棄の際は、第2吸引孔を枠状部材の吸引孔と連通してエア噴出することによりフィルムを枠状部材の底面から剥離することができる。
【0028】
本発明フィルム処理装置は、ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構であり、ロール状フィルムをセットするセット部と、ロール状フィルムから所定長さのフィルムを送り出す駆動部とを備えるフィルム供給機構と、ロール状フィルムから1回分または複数回分の枚葉フィルム長さを引き出して保管しておくバッファ部であり、フィルムに一定の保持テンションをかけるテンションローラと、フィルムの端を保持しておくフィルム端保持部とを備えるバッファ部と、バッファ部のフィルムの端部をグリッパーで掴んで1回分の枚葉フィルム長さを引き出し、引き出されたフィルムを第2載置台の上面で吸着し、カッターで所定長さのフィルムに切断する切断機構と、枠状部材を保持して第2載置台上の所定長さのフィルム上に載置し、枠状部材の吸引孔を通してフィルムを枠状部材の下面に吸着し、枠状部材とともにフィルムを前記トレイの上面に搬送するピックアップユニットとを含むものである。
【0029】
本発明のフィルム処理装置によれば、フィルム供給機構によりロール状フィルムから所定長さのフィルムを送り出し、一回分または複数回分の枚葉フィルム長さを引き出してバッファ部に保管し、このバッファ部のフィルムの端部をグリッパーで掴んで1回分の枚葉フィルム長さを引き出し、引き出されたフィルムを第2載置台の上面で吸着し、カッターで所定長さのフィルムに切断し、この第2載置台上の所定長さのフィルム上にピックアップユニットにより保持した枠状部材を載置し、枠状部材の吸引孔を通してフィルムを枠状部材の下面に吸着し、枠状部材とともにフィルムをトレイの上面に搬送することができる。
【0030】
本発明のフィルム処理装置は、シンタリング治具を載置する第3載置台と、シンタリング治具を保持して搬送するピックアップユニットであり、エア吸引することによりフィルムを枠状部材に吸着した状態でフィルムを枠状部材とともにトレイから隔離することによりフィルムをトレイ内の半導体素子から剥離、またはエア噴出することによりフィルムを枠状部材から剥離するピックアップユニットと、第3載置台の下からトレイの複数の第2貫通孔を通して基材を吸引することによりトレイとともに電子部品を第3載置台に保持する吸引保持部と、ピックアップユニットにより枠状部材から剥離されるフィルムを破棄するフィルム廃棄部とを含むものである。
【0031】
本発明のフィルム処理装置によれば、第3載置台上に載置されたシンタリング治具の下から吸引保持部により基材を吸引してトレイとともに基材を第3載置台に保持し、ピックアップユニットによりフィルムをエア吸引により枠状部材に吸着した状態でフィルムを枠状部材とともにトレイから隔離することにより、フィルムをトレイ内の半導体素子から剥離し、フィルム廃棄部においてエア噴出することによりフィルムを枠状部材から剥離して廃棄することができる。
【0032】
本発明のシンタリング装置は、前記シンタリング治具を備えたものである。本発明のシンタリング装置によれば、前記シンタリング治具において、凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面を、フィルムを介して枠状部材で押さえ付けて密閉し、ガス導入路より凹部内に不活性ガスを導入して、電子部品を不活性ガスで覆い、枠状部材の貫通孔を通じて凸部材を進入させることで、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができる。
【0033】
本発明のシンタリング装置は、さらに、トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、フィルムを保持する前の枠状部材を仮置きする仮置台と、トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部を有するものである。本発明のシンタリング装置によれば、電子部品が載置されたトレイが材料供給部から搬送部の予熱部に供給されて予熱され、搬送部の仮置台に仮置きされた枠状部材が搬送され、フィルムが枠状部材の下面で保持されると、枠状部材とともに予熱部で予熱中のトレイの上面に載置され、フィルムを介して枠状部材によりトレイの上端面を押さえ付けることによりトレイの上面が密閉されてシンタリング治具が形成され、このシンタリング治具が搬送部により搬送され、ガス導入路より凹部内に不活性ガスが導入され、電子部品が不活性ガスで覆われた状態でシンタリングされ、シンタリング後、シンタリング治具のトレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態の電子部品が搬送部の冷却部に載置されて冷却される。
【0034】
本発明のシンタリング装置は、前記シンタリング金型を備えたものである。本発明のシンタリング装置によれば、前記シンタリング金型において、トレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉されたシンタリング治具が下型の第1型枠の載置枠に載置されると、下型のガス供給路からシンタリング治具のガス導入路に不活性ガスが供給されてトレイの凹部内に不活性ガスが導入され、電子部品が不活性ガスで覆われて、第1型枠と第2型枠とで型締めを行い、駆動部により可動コアを押し上げると、枠状部材の貫通孔を通じて凸部材が進入し、フィルムを介して電子部品に搭載された半導体素子を加圧し、シンタリングすることができる。
【0035】
本発明のシンタリング装置は、電子部品が載置されたトレイを供給する材料供給部と、フィルムを供給するフィルム供給部であり、ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構と、ロール状フィルムを所定長さのフィルムに切断する切断機構とを備えるフィルム供給部と、型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を備えるプレス部と、シンタリングおよび冷却が完了した電子部品が載置されたシンタリング治具が載置される第3載置台であり、電子部品からフィルムを剥離する第3載置台と、電子部品が載置されたトレイを収納する製品収納部と、枠状部材に保持された使用済みのフィルムを廃棄するフィルム廃棄部と、トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、フィルムを保持する前またはフィルムを廃棄後の枠状部材を仮置きする仮置台と、トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部とを含むものである。
【0036】
本発明のシンタリング装置によれば、電子部品が載置されたトレイが材料供給部から搬送部の予熱部に供給されて予熱され、枠状部材が搬送部の仮置台からフィルム供給部へ搬送され、フィルム供給部においてロール状フィルムから切り出された所定長さのフィルムが枠状部材の下面で保持され、枠状部材とともに予熱部で予熱中のトレイの上面に載置され、フィルムを介して枠状部材によりトレイの上端面を押さえ付けることによりトレイの上面が密閉されてシンタリング治具が形成され、このシンタリング治具が搬送部によりプレス部へ搬送されてシンタリング金型に載置され、ガス導入路より凹部内に不活性ガスが導入され、電子部品が不活性ガスで覆われた状態でシンタリングされ、シンタリング後、シンタリング治具のトレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態の電子部品が搬送部の冷却部に載置されて冷却され、シンタリングおよび冷却が完了した電子部品が載置されたシンタリング治具は第3載置台に搬送され、第3載置台においてフィルムが剥離され、枠状部材に保持された使用済みのフィルムはフィルム廃棄部に廃棄される。また、枠状部材は搬送部の仮置台に載置され、電子部品が載置されたトレイは第3載置台から製品収納部へ搬送される。
【0037】
本発明のシンタリング装置は、プレス部を複数備え、搬送部が、冷却部を複数備える構成とすることができる。本発明のシンタリング装置によれば、プレス部によるシンタリングと、冷却部による冷却を並行することが可能となり、大量生産に対応するとともにシンタリング装置の待機時間を減らすことが可能となる。
【0038】
本発明のシンタリング方法は、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品をトレイの凹部内に載置し、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムをトレイの上端面に枠状部材により押さえ付け、凹部内を不活性ガスで満たし、電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングすることを特徴とする。
【0039】
本発明のシンタリング方法によれば、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品がトレイの凹部内に載置され、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムがトレイの上端面に枠状部材により押さえ付けられ、凹部内が不活性ガスで満たされて、電子部品が加熱および加圧されることによりシンタリングされる。
【0040】
本発明のシンタリング方法は、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品を、加熱および加圧することにより接合するシンタリング方法であって、電子部品が載置される凹部を有するトレイを準備する工程と、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムを準備する工程と、フィルムをトレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材を準備する工程と、型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を準備する工程と、電子部品が凹部に載置されたトレイの上端面に、凹部を覆うフィルムを枠状部材により押さえ付け、凹部を密閉してシンタリング治具とする工程と、シンタリング金型内にシンタリング治具を載置する工程と、シンタリング治具の凹部内に不活性ガスを供給して電子部品を覆う工程と、シンタリング治具内の電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングする工程と、シンタリング後、不活性ガスのシンタリング治具の凹部内へのガス導入路を閉止し、シンタリング治具をシンタリング金型から取り出す工程と、シンタリング金型から取り出したシンタリング治具内の電子部品を冷却する工程とを含むことを特徴とする。
【0041】
本発明のシンタリング方法によれば、基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品がトレイの凹部内に載置され、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムがトレイの上端面に枠状部材により押さえ付けられ、凹部内が不活性ガスで満たされて、電子部品が加熱および加圧されることによりシンタリングされ、シンタリング後、不活性ガスのシンタリング治具の凹部内へのガス導入路が閉止され、凹部内を不活性ガスで満たしたままシンタリング治具がシンタリング金型から取り出され、電子部品が冷却される。
【0042】
本発明のシンタリング方法は、シンタリング後、枠状部材を、フィルムをトレイの上端面に押さえ付ける工程へ循環搬送して再利用することが望ましい。これにより、シンタリング後の枠状部材は、循環搬送して再利用される。
【発明の効果】
【0043】
(1)電子部品が載置される凹部と、凹部内に不活性ガスを導入するガス導入路とを有するトレイと、凹部を覆うフィルムであり柔軟性を有するフィルムをトレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材とを含むシンタリング治具によれば、電子部品を不活性ガスで覆ったまま、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、トレイ内の電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0044】
(2)ガス導入路が、不活性ガスの逆流防止機構を有することにより、不活性ガスの流出を防ぐことができるので、不活性ガスの供給を停止してシンタリング治具をシンタリング金型から取り出しても不活性ガスを凹部内に保持し、電子部品の酸化防止を維持できる。また、不活性ガスの使用量を減らしてコスト削減することができる。
【0045】
(3)枠状部材が、フィルムを底面に保持するものであることにより、フィルムを底面に保持した枠状部材を、凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面に押さえ付けるだけで、トレイの上端面を密閉することが可能となり、シンプルな構造で確実な密閉空間を形成することができる。
【0046】
(4)枠状部材が、フィルムを底面にバキューム吸着する吸引孔を有することにより、吸引孔により枠状部材の底面にフィルムをバキューム吸着することで、フィルムを枠状部材の底面に保持し、この枠状部材を凹部に電子部品が搭載されたトレイの上端面に押さえ付けるだけで、トレイの上端面を密閉することが可能となり、メカニカルなフィルム保持機構が不要で、コスト削減と動作の安定性を実現できる。
【0047】
(5)トレイが、凹部を複数有し、それぞれの凹部の底面にそれぞれの凹部に載置される電子部品を加圧するための部材が進退するための複数の第2貫通孔を有することにより、トレイの複数の凹部の底面に載置される複数の電子部品のそれぞれの高さに応じて複数の第2貫通孔を通じて加圧することができ、複数の電子部品のそれぞれの高さにバラツキがあっても複数の電子部品を一括してシンタリング処理可能であり、大量生産による生産効率アップに繋がる。
【0048】
(6)シンタリング治具が載置される載置枠を有する第1型枠と、載置枠の内面を摺動可能な可動コアと、可動コアを押圧駆動する駆動部と、不活性ガスをシンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、第1型枠と協働してシンタリング金型を型締めするための第2型枠と、駆動部により可動コアが押し上げられることにより、枠状部材の貫通孔を通じて、電子部品に搭載された半導体素子を、フィルムを介して加圧する凸部材とを備える上型とを含むシンタリング金型によれば、トレイ内の電子部品を不活性ガスで覆ったまま、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0049】
(7)上型が、弾性部材により付勢される押圧部材であり、枠状部材を介してフィルムをトレイの上端面に押圧する押圧部材を有することにより、弾性部材により付勢される押圧部材により枠状部材がトレイの上端面に押圧されることで、フィルムが枠状部材およびトレイの上端面にしっかりと密着し、トレイ内に酸素が侵入するのを確実に防ぎ、シンタリング中の電子部品の酸化を防止することができる。
【0050】
(8)凸部材が、基材上に搭載された複数の半導体素子に対応する数であり、それぞれが対応する第2弾性部材により付勢されるものであることにより、基材上に複数の半導体素子が搭載されている場合にそれぞれの半導体素子の高さに応じてそれぞれが第2弾性部材により付勢される複数の凸部材によりフィルムを介して電子部品に搭載された各種の半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、複数の電子部品のそれぞれの高さにバラツキがあっても幅広い電子部品のシンタリングにフレキシブルに対応することができる。
【0051】
(9)載置枠、可動コア、駆動部および凸部材が、電子部品およびシンタリング治具の種類に応じて着脱自在であることにより、シンタリング金型全体を交換することなく、載置枠、可動コア、駆動部および凸部材を着脱して交換することにより、電子部品の段取り替えを迅速に行うことが可能となり、生産効率をアップできる。
【0052】
(10)シンタリング治具が載置される載置台を有する第1型枠であり、シンタリング治具の複数の第2貫通孔にそれぞれ対応する複数の第3貫通孔を有する第1型枠と、複数の第3貫通孔の内面をそれぞれ摺動可能な複数の可動コアと、複数の可動コアをそれぞれ押圧駆動する複数の駆動部と、不活性ガスをシンタリング治具のガス導入路に供給するガス供給路とを備える下型と、第1型枠と協働してシンタリング金型を型締めするための第2型枠と、駆動部により複数の可動コアがそれぞれ押し上げられることにより、枠状部材の貫通孔を通じて、電子部品に搭載された半導体素子を、フィルムを介してそれぞれ加圧する複数の凸部材とを備える上型とを含むシンタリング金型によれば、フィルムを介してそれぞれの電子部品に搭載された半導体素子を複数の電子部品のそれぞれの高さに応じてそれぞれ加圧し、シンタリングすることができるので、複数の電子部品のそれぞれの高さにバラツキがあっても複数の電子部品を一括してシンタリング処理可能であり、大量生産による生産効率アップに繋がる。
【0053】
(11)載置台、可動コア、駆動部および凸部材が、電子部品およびシンタリング治具の種類に応じて着脱自在であることにより、シンタリング金型全体を交換することなく、載置台、可動コア、駆動部および凸部材を着脱して交換することにより、電子部品の段取り替えを迅速に行うことが可能となり、生産効率をアップできる。
【0054】
(12)電子部品が載置される凹部を有するトレイの凹部を覆うフィルムを枠状部材によりトレイの上端面に押さえ付けて凹部を密閉し、トレイの内部を不活性ガスにより満たし、電子部品を加熱および加圧する型枠を有するシンタリング金型によれば、トレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉され、トレイの内部が不活性ガスにより満たされることにより、電子部品が不活性ガスで覆われた状態で電子部品を加圧し、シンタリングすることができ、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0055】
(13)型枠が、電子部品が載置される凹部を有するトレイの凹部を覆うフィルムを枠状部材によりトレイの上端面に押さえ付けて凹部を密閉し、トレイの内部を不活性ガスにより満たし、電子部品を加熱および加圧するものであるシンタリング金型によれば、型枠の型締めにより形成される内部空間においてトレイの凹部に電子部品が搭載されて枠状部材およびフィルムにより密閉され、トレイの内部が不活性ガスにより満たされることにより、電子部品が不活性ガスで覆われた状態で電子部品を加圧し、シンタリングすることができ、閉じられた内部空間において、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合するので、電子部品の品質を向上させることがさらに確実となる。
【0056】
(14)トレイ、枠状部材またはシンタリング治具を側面から保持する保持部と、保持部を昇降させる昇降部と、枠状部材を上面から押さえ付ける押接部であり、枠状部材の吸引孔と連通してエア吸引することによりフィルムを枠状部材の底面に吸着、または枠状部材の吸引孔と連通してエア噴出することによりフィルムを枠状部材の底面から剥離する第2吸引孔を備えた押接部とを有するピックアップユニットによれば、1つのピックアップユニットでシンタリング治具の全部または一部のいずれでも搬送可能であり、装置構成および制御のシンプル化によるコスト削減および生産効率のアップとなる。
【0057】
(15)ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構であり、ロール状フィルムをセットするセット部と、ロール状フィルムから所定長さのフィルムを送り出す駆動部とを備えるフィルム供給機構と、ロール状フィルムから1回分または複数回分の枚葉フィルム長さを引き出して保管しておくバッファ部であり、フィルムに一定の保持テンションをかけるテンションローラと、フィルムの端を保持しておくフィルム端保持部とを備えるバッファ部と、バッファ部のフィルムの端部をグリッパーで掴んで1回分の枚葉フィルム長さを引き出し、引き出されたフィルムを第2載置台の上面で吸着し、カッターで所定長さのフィルムに切断する切断機構と、枠状部材を保持して第2載置台上の所定長さのフィルム上に載置し、枠状部材の吸引孔を通してフィルムを枠状部材の下面に吸着し、枠状部材とともにフィルムを前記トレイの上面に搬送するピックアップユニットとを含むフィルム処理装置によれば、効率的、安定的にフィルムを供給することにより生産効率をアップできる。
【0058】
(16)エア吸引することによりフィルムを枠状部材に吸着した状態でフィルムを枠状部材とともにトレイから隔離することによりフィルムをトレイ内の半導体素子から剥離、またはエア噴出することによりフィルムを枠状部材から剥離するピックアップユニットと、第3載置台の下からトレイの複数の第2貫通孔を通して基材を吸引することによりトレイとともに電子部品を第3載置台に保持する吸引保持部と、ピックアップユニットにより枠状部材から剥離されるフィルムを破棄するフィルム廃棄部とを含むフィルム処理装置によれば、シンタリング処理後に不要となったフィルムを効率的に剥離、廃棄することが可能となる。
【0059】
(17)前記シンタリング治具を備えたシンタリング装置によれば、電子部品を不活性ガスで覆ったまま、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0060】
(18)さらに、トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、フィルムを保持する前の枠状部材を仮置きする仮置台と、トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部を有するシンタリング装置によれば、1つの搬送部でシンタリング治具の全部または一部を同時に同一方向に搬送しながら電子部品の予熱、枠状部材の仮置き、および、シンタリング後の電子部品の冷却を行うことができ、装置構成および制御のシンプル化によるコスト削減と生産効率アップを実現できる。
【0061】
(19)前記シンタリング金型を備えたシンタリング装置によれば、電子部品を不活性ガスで覆ったまま、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0062】
(20)電子部品が載置されたトレイを供給する材料供給部と、フィルムを供給するフィルム供給部であり、ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構と、ロール状フィルムを所定長さのフィルムに切断する切断機構とを備えるフィルム供給部と、型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を備えるプレス部と、シンタリングおよび冷却が完了した電子部品が載置されたシンタリング治具が載置される第3載置台であり、電子部品からフィルムを剥離する第3載置台と、電子部品が載置されたトレイを収納する製品収納部と、枠状部材に保持された使用済みのフィルムを廃棄するフィルム廃棄部と、トレイに載置された電子部品を予熱する予熱部と、フィルムを保持する前またはフィルムを廃棄後の枠状部材を仮置きする仮置台と、トレイ内で不活性ガスにより覆われたままの状態のシンタリング後の電子部品を載置し冷却する冷却部とを、同時に同一方向に搬送する搬送部とを含むシンタリング装置によれば、電子部品を効率良く高品質にシンタリングすることができる。
【0063】
(21)プレス部を複数備え、搬送部が、冷却部を複数備えるシンタリング装置によれば、プレス部によるシンタリングと、冷却部による冷却を並行することが可能となり、大量生産に対応するとともにシンタリング装置の待機時間を減らすことが可能となるので、電子部品のシンタリングを効率良く安定して処理することができる。
【0064】
(22)基材上に接合材を介して半導体素子が搭載された電子部品をトレイの凹部内に載置し、凹部を覆うフィルムをトレイの上端面に枠状部材により押さえ付け、凹部内を不活性ガスで満たし、電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングすることを特徴とするシンタリング方法によれば、電子部品を不活性ガスで覆ったまま、フィルムを介して半導体素子を加圧し、シンタリングすることができるので、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0065】
(23)電子部品が載置される凹部を有するトレイを準備する工程と、凹部を覆うフィルムを準備する工程と、フィルムをトレイの上端面に押さえ付ける枠状部材であり、半導体素子を加圧するための凸部材が進退するための貫通孔を有する枠状部材を準備する工程と、型枠の型締めによりシンタリングするシンタリング金型を準備する工程と、電子部品が凹部に載置されたトレイの上端面に、凹部を覆うフィルムを枠状部材により押さえ付け、凹部を密閉してシンタリング治具とする工程と、シンタリング金型内にシンタリング治具を載置する工程と、シンタリング治具の凹部内に不活性ガスを供給して電子部品を覆う工程と、シンタリング治具内の電子部品を加熱および加圧することによりシンタリングする工程と、シンタリング後、不活性ガスのシンタリング治具の凹部内へのガス導入路を閉止し、シンタリング治具をシンタリング金型から取り出す工程と、シンタリング金型から取り出したシンタリング治具内の電子部品を冷却する工程とを含むシンタリング方法によれば、電子部品の酸化を防止し、電子部品を効率良く接合して、電子部品の品質を向上させることが可能となる。
【0066】
(24)シンタリング後、枠状部材を循環搬送して再利用することにより、廃棄物が少なく、コスト削減と資源の有効活用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明の実施の形態におけるシンタリング治具を分解した状態の正面図である。
【
図2】
図1のシンタリング治具の組立手順を示す正面図である。
【
図3】
図1のシンタリング治具を組み立てた状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図4】
図1のトレイの詳細図であって、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるシンタリング金型を開いた状態の断面図である。
【
図6】
図5のシンタリング金型にシンタリング治具をセットした状態の断面図である。
【
図7】
図5のシンタリング金型を型締めした状態の断面図である。
【
図8】
図5のシンタリング金型により電子部品を加圧した状態を示す断面図である。
【
図9】シンタリング治具に複数の電子部品を載置する場合のシンタリング金型の実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図9のシンタリング治具のトレイの詳細を示す断面図である。
【
図11】基材に複数の半導体素子が搭載された電子部品をシンタリングする場合のシンタリング金型の実施形態を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態におけるシンタリング装置の概略平面図である。
【
図13】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図14】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図15】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図16】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図17】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図18】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図19】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図20】
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【
図21】プレス部を複数備えたシンタリング装置の概略平面図である。
【
図22】トレイを搬送するピックアップユニットを示す説明図である。
【
図23】枠状部材およびフィルムを搬送するピックアップユニットを示す説明図である。
【
図24】シンタリング治具を搬送するピックアップユニットを示す説明図である。
【
図25】第3載置台においてフィルムを剥離するピックアップユニットを示す説明図である。
【
図26】フィルム廃棄部へフィルムを廃棄するピックアップユニットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
<シンタリング治具>
本発明のシンタリング治具の実施の形態について
図1~
図4を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるシンタリング治具を分解した状態の正面図、
図2は
図1のシンタリング治具の組立手順を示す正面図、
図3は
図1のシンタリング治具を組み立てた状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、
図4は
図1のトレイの詳細図であって、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0069】
図1~
図4に示すように、本発明の実施の形態におけるシンタリング治具1は、基材P1上に銀ペーストや銅ペーストなどの接合材(図示せず。)を介して半導体素子P2が搭載された電子部品Pを、加熱および加圧することにより接合するシンタリング装置4(
図12参照。)に用いられるものである。シンタリング治具1は、電子部品Pが載置される凹部10を有するトレイ11と、凹部10を覆うフィルムFをトレイ11の上端面11Aに押さえ付ける枠状部材12とを有する。
【0070】
図4に示すように、トレイ11は、凹部10内に不活性ガスを導入するガス導入路13を備える。ガス導入路13は、トレイ11の底面11Bから上端面11Aまで貫通するように設けられ、凹部10に接続されている。また、ガス導入路13には、不活性ガスの逆流防止機構としての逆止弁13Aが設けられている。逆止弁13Aは、例えば耐熱性を有するセラミックボールなどにより構成される。また、トレイ11の凹部10の側壁には、凹部10内の残留酸素を排出する排出孔14が側壁外面11Cから凹部10内まで貫通して設けられている。
【0071】
枠状部材12は、半導体素子P2を加圧するための凸部材26(
図5参照。)が進退するための貫通孔12Aを有する。
図2に示すように、枠状部材12は、フィルムFを底面に保持し、トレイ11の上端面11Aに押さえ付ける。これにより、
図3に示すように凹部10はフィルムFにより覆われる。このとき、フィルムFは枠状部材12で圧縮されて枠状部材12とトレイ11の上端面11Aとの隙間を埋め、トレイ11の上端面11Aを密閉する。
【0072】
<シンタリング金型>
本発明のシンタリング金型の実施の形態について
図5~
図8を参照して説明する。
図5は本発明の実施の形態におけるシンタリング金型を開いた状態の断面図、
図6は
図5のシンタリング金型にシンタリング治具をセットした状態の断面図、
図7は
図5のシンタリング金型を型締めした状態の断面図、
図8は
図5のシンタリング金型により電子部品を加圧した状態を示す断面図である。
【0073】
図5に示すように、本発明の実施の形態におけるシンタリング金型2は、前述のシンタリング治具1内に載置された電子部品Pを加熱および加圧することにより接合するための金型である。シンタリング金型2は、下型2Aと上型2Bとを備える。下型2Aは、シンタリング治具1が載置される載置枠20を有する第1型枠21と、載置枠20の内面20Aを摺動可能な可動コア22と、可動コア22を押圧駆動する駆動部23と、不活性ガスをシンタリング治具1のガス導入路13に供給するガス供給路24とを備える。
【0074】
駆動部23は、例えば、上昇のみ油圧駆動とし、下降は上昇加圧停止後、図示しないバネで押し下げる単動の油圧ピストンにより構成することができる。また、可動コア22はフリー状態としている。
【0075】
ガス供給路24は、第1型枠21に形成された第1供給路24A、載置枠20に形成された第2供給路24B、および、可動コア22に形成された第3供給路24Cから構成されている。ガス供給路24の第1供給路24Aに供給される不活性ガスは、第2供給路24Bおよび第3供給路24Cを通じてシンタリング治具1のガス導入路13へ供給される。なお、載置枠20に形成された第2供給路24Bと可動コア22に形成された第3供給路24Cとの連通部分は、可動コア22が載置枠20の内面20Aで摺動しても連通状態を維持するように構成されている。
【0076】
上型2Bは、第1型枠21と協働してシンタリング金型2を型締めするための第2型枠25を備える。第2型枠25内には、電子部品Pを加圧する凸部材26と、枠状部材12を押圧する押圧部材27とを備える。凸部材26は、固定部材28により第2型枠25内に固定されている。押圧部材27は、弾性部材27Aにより枠状部材12に向かって付勢されている。押圧部材27は、固定部材28によって摺動可能に保持されている。また、第1型枠21および第2型枠25内には、加熱手段としてのヒーター29がそれぞれ設けられている。
【0077】
図6に示すように、前述のようにトレイ11の凹部10に電子部品Pが搭載されて枠状部材12およびフィルムFにより密閉されたシンタリング治具1が下型2Aの第1型枠21の載置枠20に載置され、
図7に示すように、第1型枠21と第2型枠25とが協働してシンタリング金型2を型締めする。このとき、弾性部材27Aにより付勢される押圧部材27によって枠状部材12がトレイ11の上端面11Aに押圧されることで、フィルムFが枠状部材12およびトレイ11の上端面11Aにしっかりと密着し、凹部10が密閉される。その後、ガス供給路24を通じてシンタリング治具1のガス導入路13より凹部10内に不活性ガスを導入し、電子部品Pを不活性ガスで覆う。
【0078】
そして、第1型枠21および第2型枠25のヒーター29によりシンタリング治具1内の電子部品Pを所定の温度に加熱する。
図8に示すように、駆動部23により可動コア22を押し上げると、凸部材26が枠状部材12の貫通孔12Aを通じて、電子部品Pに搭載された半導体素子P2がフィルムFを介して所定の力で所定時間加圧され、シンタリングされる。このとき、ガス導入路13は逆止弁13Aを有するので、不活性ガスの供給を停止しても、ガス導入路13より凹部10内に導入した不活性ガスの逆流が防止され、凹部10内の不活性ガスが保持される。また、シンタリング後にシンタリング金型2が型開きしてシンタリング治具1を取り出した後も不活性ガスの流出が防止される。
【0079】
このように、本実施形態におけるシンタリング金型2によれば、第1型枠21および第2型枠の型締めにより形成される内部空間においてトレイ11の凹部10に電子部品が搭載されて枠状部材12およびフィルムFにより密閉され、トレイ11の内部が不活性ガスにより満たされることにより、電子部品Pを不活性ガスで覆った状態で加圧し、シンタリングすることができる。
【0080】
次に、本発明のシンタリング治具およびシンタリング金型の別の実施形態について
図9~
図11を参照して説明する。
図9はシンタリング治具に複数の電子部品を載置する場合のシンタリング金型の実施形態を示す断面図、
図10は
図9のシンタリング治具のトレイの詳細を示す断面図である。なお、
図9および
図10において前述のものと共通する構成部分については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図9に示すシンタリング金型3では、シンタリング治具30の複数の凹部10に複数の電子部品Pを載置して加熱および加圧することにより同時にシンタリングを行う。
図10に示すように、シンタリング治具30のトレイ31Aは、電子部品Pを載置する凹部10を複数有する。また、それぞれの凹部10の底面には、それぞれの凹部10に載置される電子部品Pを加圧するための部材(後述する可動コア36)が進退するための複数の第2貫通孔32を有する。第2貫通孔32は、平面視で半導体素子P2より大きく、基材P1より小さい。
【0082】
シンタリング金型3は、下型3Aと上型3Bとを備える。下型3Aは、シンタリング治具30が載置される載置台33を有する第1型枠34Aと、シンタリング治具30の複数の第2貫通孔32にそれぞれ対応する複数の第3貫通孔35と、複数の第3貫通孔35の内面をそれぞれ摺動可能な複数の可動コア36と、複数の可動コア36をそれぞれ押圧駆動する複数の駆動部37と、不活性ガスをシンタリング治具30のガス導入路13に供給するガス供給路38とを備える。駆動部37は、例えば油圧ユニット37Aにより作動させる油圧ピストンにより構成される。
【0083】
上型3Bは、第1型枠34Aと協働してシンタリング金型3を型締めするための第2型枠34Bを備える。第2型枠34B内には、電子部品Pを加圧する複数の凸部材26と、枠状部材31Bを押圧する押圧部材27とを備える。枠状部材31Bは、複数の凸部材26が進退するための複数の貫通孔12Aを有する。
【0084】
このようなシンタリング金型3によれば、トレイ31Aの複数の凹部10に複数の電子部品Pが搭載されて枠状部材31BおよびフィルムFにより密閉されたシンタリング治具30が下型3Aの第1型枠34Aの載置台33に載置されると、下型3Aのガス供給路38からシンタリング治具30のガス導入路13に不活性ガスが供給されてトレイ31Aの凹部10内に不活性ガスが導入され、電子部品Pが不活性ガスで覆われる。
【0085】
そして、第1型枠34Aと第2型枠34Bとで型締めを行い、弾性部材27Aにより付勢される押圧部材27によって枠状部材31Bが押圧され、フィルムFが枠状部材31Bおよびトレイ31Aの上端面にしっかりと密着し、凹部10が密閉される。不活性ガスはこの後に供給されても良い。次に、複数の駆動部37により複数の可動コア36をそれぞれ押し上げると、枠状部材31Bの貫通孔12Aを通じて凸部材26が進入し、複数の電子部品Pの高さのバラツキに応じ、対応する複数の駆動部37で個別に下面から所定の均等な圧力で加圧する。すなわち、シンタリング金型3によれば、フィルムFを介してそれぞれの電子部品Pに搭載された半導体素子P2を複数の電子部品Pの高さのバラツキに応じてそれぞれ加圧し、シンタリングすることができる。
【0086】
図11は基材に複数の半導体素子が搭載された電子部品をシンタリングする場合のシンタリング金型の実施形態を示す断面図である。なお、
図11において前述のものと共通する構成部分については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図11に示すように、基材P1に複数の半導体素子P2が搭載された電子部品Pをシンタリングする場合には、前述の凸部材26を、基材P1上に搭載された複数の半導体素子P2に対応する数の凸部材26A,26Bとする。また、凸部材26A,26Bは、それぞれが対応する第2弾性部材26A-1,26B-1により付勢されるものとする。
【0088】
これにより、基材P1上に複数の半導体素子P2が搭載されている場合にそれぞれの半導体素子P2の高さに応じてそれぞれが複数の凸部材26A,26Bまたは第2弾性部材26A-1,26B-1により付勢される複数の凸部材26A,26BによりフィルムFを介して電子部品Pに搭載された半導体素子P2をそれぞれの半導体素子Pの高さに応じた力で加圧し、シンタリングすることができる。
【0089】
<シンタリング装置>
本発明のシンタリング装置の実施の形態について
図12~
図21を参照して説明する。
図12は本発明の実施の形態におけるシンタリング装置の概略平面図、
図13~
図20は
図12のシンタリング装置の動作を示す概略平面図である。
【0090】
図12に示すように、本発明の実施の形態におけるシンタリング装置4は、電子部品Pが載置されたトレイ11を供給する材料供給部40と、フィルムFを供給するフィルム供給部41と、トレイ11に載置された電子部品Pを予熱する予熱部42と、第1型枠21と第2型枠25との型締めによりシンタリングするシンタリング金型2を備えるプレス部46と、トレイ11に載置されたシンタリング後の電子部品Pを冷却する冷却部44と、冷却後の電子部品Pが載置されたトレイ11を収納する製品収納部47とを有する。
【0091】
フィルム供給部41は、ロール状フィルムを供給するフィルム供給機構41Aと、ロール状フィルムを所定長さのフィルムに切断する切断機構41Bとを備える。フィルム供給部41の詳細については後述する。
【0092】
予熱部42および冷却部44は、搬送部45に設けられている。また、搬送部45には、枠状部材12を仮置きするための仮置台43が設けられている。仮置台43には、フィルムFを保持する前またはフィルムFを廃棄後の枠状部材12が仮置きされる。搬送部45は、予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する。
【0093】
また、シンタリング装置4は、シンタリングおよび冷却が完了した電子部品Pが載置されたシンタリング治具1が載置され、電子部品PからフィルムFを剥離する第3載置台48と、枠状部材12に保持された使用済みのフィルムFを廃棄するフィルム廃棄部49とを有する。
【0094】
上記構成のシンタリング装置4では、電子部品Pが載置される凹部10を有するトレイ11を準備し、このトレイ11の凹部10に電子部品Pを載置して材料供給部40へ収納する。この電子部品Pが載置されたトレイ11は、材料供給部40から取出台40Aに搬送される(
図12の矢印A1参照。)。搬送部45は、取出台40Aから予熱部42へトレイ11を搬送可能な
図12に示す位置(以下、「X1位置」と称す。)へ、予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する。仮置台43には、前述の枠状部材12が準備され、載置されている。
【0095】
電子部品Pが載置されたトレイ11は取出台40Aから予熱部42へ搬送され(
図12の矢印A2参照。)、予熱される。トレイ11が材料供給部40から取出台40Aへ搬送された後、材料供給部40では次のトレイ11が取出台40Aへ搬送できるように送り出される(
図12の矢印A3、
図13参照。)。
【0096】
搬送部45は、仮置台43からフィルム供給部41へ枠状部材12を搬送可能な
図13に示す位置(以下、「X2位置」と称す。)へ、予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図12の矢印A4、
図13参照。)。枠状部材12は仮置台43からフィルム供給部41へ搬送される(
図13の矢印A5参照。)。
【0097】
フィルム供給部41では、ロール状フィルムが所定長さのフィルムに切断されることにより、凹部10を覆う枚葉のフィルムFが準備される。枠状部材12は、フィルム供給部41において切り出された枚葉のフィルムFを下面で保持する(
図14参照。)。搬送部45は、X1位置へ予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図13の矢印A6、
図14参照。)。
【0098】
枠状部材12の下面に保持されたフィルムFは、枠状部材12とともに予熱部42で予熱中のトレイ11上に搬送されて(
図14の矢印A7参照。)、トレイ11の上端面に載置される。これにより、枠状部材12が保持したフィルムFでトレイ11の上端面11Aが覆われ、前述のシンタリング治具1が形成される(
図15参照。)。シンタリング治具1は、トレイ11の上端面11AにフィルムFが枠状部材12により押さえ付けられることで、凹部10が密閉される。
【0099】
搬送部45は、予熱部42からプレス部46へシンタリング治具1を搬送可能な
図15に示す位置(以下、「X3位置」と称す。)へ、予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図14の矢印A8、
図15参照。)。シンタリング治具1は予熱部42からプレス部46に搬送され(
図15の矢印A9参照。)、シンタリング金型2内に載置される(
図16参照。)。
【0100】
プレス部46には、シンタリング金型2が準備されている。プレス部46では、シンタリング金型2からシンタリング治具1の凹部10内に不活性ガスが供給され、この不活性ガスにより電子部品Pが覆われる。プレス部46では、シンタリング治具1内の電子部品Pを不活性ガスで覆った状態で加熱および加圧することによりシンタリングする。搬送部45は、プレス部46から冷却部44へシンタリング後のシンタリング治具1を搬送可能な
図16に示す位置(以下、「X4位置」と称す。)へ予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図15の矢印A10参照。)。
【0101】
シンタリング後、不活性ガスのシンタリング治具1の凹部10内へのガス導入路13を逆止弁13Aで閉止し、シンタリング治具1をシンタリング金型2から取り出して冷却部44に載置する(
図16の矢印A11参照。)。冷却部44では、トレイ11内で不活性ガスにより覆われたままの状態で、シンタリング治具1内の電子部品Pが冷却される。搬送部45は、冷却部44から第3載置台48へ冷却後のシンタリング治具1を搬送可能な
図17に示す位置(以下、「X5位置」と称す。)へ予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図16の矢印A12参照。)。
【0102】
電子部品Pの冷却後、シンタリング治具1は第3載置台48に搬送される(
図17の矢印A13、
図18参照。)。第3載置台48においてフィルムFが電子部品Pから剥離され、フィルムFとともに枠状部材12はフィルム廃棄部49に搬送され(
図18の矢印A14参照。)、フィルム廃棄部49において、枠状部材12が保持するフィルムFは廃棄される。
【0103】
搬送部45は、フィルム廃棄部49から仮置台43へフィルムF廃棄後の枠状部材12を搬送可能な
図19に示す位置(以下、「X6位置」と称す。)へ予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する。フィルムF廃棄後の枠状部材12は、フィルム廃棄部49から仮置台43に載置され(
図19の矢印A15、
図20参照。)、循環搬送して再利用される。また、電子部品Pを載置したトレイ11は、第3載置台48から製品収納部47へ搬送される(
図19の矢印A16、
図20参照。)。
【0104】
搬送部45は、枠状部材12を仮置台43に載置したまま、次のトレイ11の受け入れのために、取出台40Aから予熱部42へトレイ11を搬送可能なX1位置へ、予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する(
図20の矢印A17、
図12参照。)。製品収納部47では、完成した電子部品Pが載置されたトレイ11を、次のトレイ11の受け入れスペースを確保するために移動する(
図20の矢印A18参照。)。材料供給部40は電子部品Pが載置されたトレイ11を取出台40Aに搬送する(
図20の矢印A19参照。)。
【0105】
図21はプレス部46を複数備えたシンタリング装置4Aの概略平面図である。
図21に示すように、このシンタリング装置4Aでは、プレス部46を複数備え、搬送部45は複数の冷却部44を備えている。このシンタリング装置4Aでは、プレス部46によるシンタリングと、冷却部44による冷却を並行することが可能であるため、大量生産に対応するとともにシンタリング装置4Aの待機時間を減らすことが可能となるので、電子部品Pのシンタリングを効率良く安定して処理することが可能である。
【0106】
上記シンタリング装置4Aによれば、電子部品Pを不活性ガスで覆ったまま、フィルムFを介して半導体素子P2を加圧し、シンタリングすることができるので、電子部品Pの酸化を防止し、電子部品Pを効率良く接合して、電子部品Pの品質を向上させることが可能となる。
【0107】
また、シンタリング装置4は、搬送部45が予熱部42、仮置台43および冷却部44を同時に同一方向に搬送する構成であるため、この1つの搬送部45でシンタリング治具1の全部または一部を同時に同一方向に搬送しながら電子部品の予熱、枠状部材12の仮置き、および、シンタリング後の電子部品Pの冷却を行うことができ、装置構成および制御のシンプル化によるコスト削減と生産効率アップを実現できる。
【0108】
なお、少なくとも載置枠20、載置台33、可動コア22,36、駆動部23,37および凸部材26,26A,26Bは、電子部品Pおよびシンタリング治具1の種類に応じて着脱自在となっている。これにより、シンタリング金型2全体を交換することなく、載置枠20、載置台33、可動コア22,36、駆動部23,37および凸部材26,26A,26Bを着脱して交換することにより、電子部品Pの段取り替えを迅速に行うことが可能となっている。
【0109】
また、本実施形態においては、搬送部45の仮置台43に1つの枠状部材12のみを一時仮置きする構成としているが、この仮置台43に対して複数の枠状部材12を重ねて置いておく構成とすることも可能である。この場合、例えば仮置台43に枠状部材12の側面をガイドする側面ガイドを設けて、枠状部材12を積み重ねて置く構成とすることができる。これにより、プレス部46が1つの場合であっても、1つのシンタリング治具1がシンタリング中に、別のシンタリング治具1が冷却中で、さらに予熱部42等により次のシンタリング治具1を準備中とする場合は、シンタリング装置4内で同時に3個の枠状部材12が循環搬送することになるため、これに対応することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態においては、材料供給部40および製品収納部47において電子部品Pが搭載されたトレイ11が保管された構成について説明したが、これらは複数のトレイ11を収納するマガジンに保管する構成とすることが可能である。
【0111】
<ピックアップユニット>
本発明のピックアップユニットの実施の形態について
図22~
図26を参照して説明する。本発明の実施の形態におけるピックアップユニットは、前述のシンタリング治具30、トレイ31Aまたは枠状部材31Bを搬送するものである。
【0112】
図22はトレイ31Aを搬送するピックアップユニットを示す説明図である。同図(A)に示すように、ピックアップユニット5は、本体50と、トレイ31Aを側面から保持する保持部51と、保持部51を本体50に対して昇降させる昇降部52とを備える。ピックアップユニット5は、昇降部52により保持部51を降ろし、保持部51の間隔を拡げた状態として、本体50をトレイ31Aの上方から降ろしていく。そして、同図(B)に示すように、保持部51の間隔を狭め、保持部51によりトレイ31Aを側面から保持する。
【0113】
図23は枠状部材31BおよびフィルムFを搬送するピックアップユニットを示す説明図である。同図に示すように、ピックアップユニット5は、枠状部材31Bを上面から押さえ付ける押接部53を備えている。枠状部材31Bは、フィルムFを底面にバキューム吸引するための吸引孔31Cを有している。押接部53には、保持部51により枠状部材31Bを側面から保持した際に枠状部材31Bの吸引孔31Cと連通する第2吸引孔54を備えている。
【0114】
ピックアップユニット5は、
図23(A)に示すように、昇降部52を上げ、保持部51の間隔を拡げた状態として、本体50を枠状部材31Bの上方から降ろしていく。そして、同図(B)に示すように、保持部51の間隔を狭め、保持部51により枠状部材31Bを側面から保持する。このとき、ピックアップユニット5は、枠状部材31Bを押接部53により上面から押さえ付けた状態となり、押接部53の第2吸引孔54が枠状部材31Bの吸引孔31Cと連通する。ピックアップユニット5は、押接部53の第2吸引孔54が枠状部材31Bの吸引孔31Cと連通してエア吸引することによりフィルムFを枠状部材31Bの底面に吸着して保持し、トレイ31A上に搬送することができる。なお、保持部51を降ろした状態で、枠状部材31Bを保持した後、昇降部52を上げて、枠状部材31Bを押接部53で押さえても良い。
【0115】
図24はシンタリング治具30を搬送するピックアップユニットを示す説明図である。同図(A)に示すように、ピックアップユニット5は、昇降部52により保持部51を降ろし、保持部51の間隔を拡げた状態として、予熱部42、シンタリング金型2または冷却部44上に載置されたシンタリング治具30に向かって本体50を降ろし、同図(B)に示すように、保持部51の間隔を狭め、保持部51によりシンタリング治具30を側面から保持する。
【0116】
図25は第3載置台においてフィルムを剥離するピックアップユニットを示す説明図である。同図(A)に示すように、第3載置台48は、第3載置台48の下からトレイ31Aの複数の第2貫通孔32を通して電子部品Pの基材P1を吸引することによりトレイ31Aとともに電子部品Pを第3載置台48に保持する吸引保持部48Aを備える。
【0117】
ピックアップユニット5は、保持部51の間隔を拡げて昇降部52により保持部51を上昇させた状態において、まず第3載置台48の吸引保持部48Aによりトレイ31Aとともに電子部品Pを吸引保持する。次に、
図25(B)に示すように、ピックアップユニット5は、再び保持部51の間隔を狭めて枠状部材31Bを保持し、押接部53の第2吸引孔54が枠状部材31Bの吸引孔31Cと連通してエア吸引することによりフィルムFを枠状部材31Bの底面に吸着保持し、本体50を上昇させると、フィルムFが枠状部材31Bとともにトレイ31Aから隔離する。これにより、フィルムFがトレイ31A内の半導体素子P2から剥離される。
【0118】
ピックアップユニット5は、このように枠状部材31Bとともにトレイ31Aから剥離したフィルムFを保持したままフィルム廃棄部49へ移動し、
図26に示すように保持部51により、枠状部材31Bを保持した状態で枠状部材31Bの吸引孔31Cと連通する押接部53の第2吸引孔54からエア噴出することで、フィルムFを枠状部材31Bから剥離し、フィルム廃棄部49へと廃棄する。
【0119】
<フィルム処理装置>
本発明のフィルム処理装置の実施の形態について
図27および
図28を参照して説明する。
図27および
図28はフィルム処理装置の動作説明図である。
【0120】
図27(A)に示すように、フィルム処理装置6は、前述のフィルム供給機構41Aと、フィルム供給機構41Aより供給されるフィルムを1回分または複数回分の長さ引き出して保管しておくバッファ部41Cと、前述の切断機構41Bと、前述のピックアップユニット5(
図28(B)参照。)とから構成される。
【0121】
フィルム供給機構41Aは、ロール状フィルムFRをセットするセット部60と、ロール状フィルムFRから所定長さのフィルムFを送り出す駆動部61とを備える。バッファ部41Cは、フィルムFに一定の保持テンションをかけるテンションローラ62と、フィルムFの端を保持しておくフィルム端保持部63とを備える。
【0122】
切断機構41Bは、バッファ部41CのフィルムFの端部を掴んで1回分の枚葉フィルム長さを引き出すグリッパー64と、グリッパー64により引き出されたフィルムFを載置する第2載置台65と、フィルムFを切断するカッター66とを備える。
【0123】
フィルム処理装置6では、
図27(A)に示すようにフィルム供給機構41Aによりロール状フィルムFRから所定長さのフィルムFを送り出し、一回分または複数回分の枚葉フィルム長さを引き出してバッファ部41Cに保管する。同図(B)に示すように、バッファ部41CのフィルムFの端部をグリッパー64で掴み、同図(C)に示すように、1回分の枚葉フィルム長さを引き出す。この引き出されたフィルムFに対して第2載置台65を上昇させ、
図28(A)に示すように、引き出されたフィルムFを第2載置台65の上面で吸着し、カッター66で所定長さのフィルムに切断する。
【0124】
図28(B)に示すように、この第2載置台65上の所定長さのフィルムF上にピックアップユニット5により保持した枠状部材31Bを載置する。同図(C)に示すように枠状部材31Bの吸引孔31Cを通してフィルムFを枠状部材31Bの下面に吸着する。これにより、同図(D)に示すようにピックアップユニット5を上昇させて、枠状部材31BとともにフィルムFを前述のようにトレイ31Aの上面に搬送することができる。
【0125】
なお、前述の第3載置台48、吸引保持部48A、フィルム廃棄部49およびピックアップユニット5により第2フィルム処理装置を構成することもできる(
図25および
図26参照。)。この第2フィルム処理装置によれば、第3載置台48上に載置されたシンタリング治具30の下から吸引保持部48Aにより基材P1を吸引してトレイ31Aとともに基材P1を第3載置台48に保持し、ピックアップユニット5によりフィルムFをエア吸引により枠状部材31Bに吸着した状態でフィルムFを枠状部材31Bとともにトレイ31Aから隔離することにより、フィルムFをトレイ31A内の半導体素子P2から剥離し、フィルム廃棄部49においてエア噴出することによりフィルムFを枠状部材31Bから剥離して廃棄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、銀ペーストや銅ペーストなどの接合材を用いてシンタリング(焼結法)により電子部品を接合するためのシンタリング治具およびシンタリング金型、シンタリング治具を搬送するピックアップユニット、シンタリング治具のフィルム処理装置、並びに、シンタリング治具を備えたシンタリング装置およびシンタリング方法として有用である。
【符号の説明】
【0127】
P 電子部品
P1 基材
P2 半導体素子
F フィルム
FR ロール状フィルム
1 シンタリング治具
2,3 シンタリング金型
2A,3A 下型
2B,3B 上型
4,4A シンタリング装置
5 ピックアップユニット
6 フィルム処理装置
10 凹部
11 トレイ
11A 上端面
11B 底面
11C 側壁外面
12 枠状部材
12A 貫通孔
13 ガス導入路
13A 逆止弁
14 排出孔
20 載置枠
20A 内面
21 第1型枠
22 可動コア
23 駆動部
24 ガス供給路
24A 第1供給路
24B 第2供給路
24C 第3供給路
25 第2型枠
26,26A,26B 凸部材
26A-1,26B-1 第2弾性部材
27 押圧部材
27A 弾性部材
28 固定部材
29 ヒーター
30 シンタリング治具
31A トレイ
31B 枠状部材
31C 吸引孔
32 第2貫通孔
33 載置台
34A 第1型枠
34B 第2型枠
35 第3貫通孔
36 可動コア
37 駆動部
37A 油圧ユニット
38 ガス供給路
40 材料供給部
40A 取出台
41 フィルム供給部
41A フィルム供給機構
41B 切断機構
41C バッファ部
42 予熱部
43 仮置台
44 冷却部
45 搬送部
46 プレス部
47 製品収納部
48 第3載置台
48A 吸引保持部
49 フィルム廃棄部
50 本体
51 保持部
52 昇降部
53 押接部
54 第2吸引孔
60 セット部
61 駆動部
62 テンションローラ
63 フィルム端保持部
64 グリッパー
65 第2載置台
66 カッター