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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018689
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】センサおよびセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240201BHJP
   G01N 29/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01N5/02 A
G01N29/02 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122169
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】島田 貴士
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA04
2G047EA12
(57)【要約】
【課題】実装基板からのセンサの脱着を容易とすることが可能なセンサモジュールを提供する。
【解決手段】センサモジュールは、側面の少なくとも一部が上面と鈍角になるように傾斜する傾斜面11を有する基板10と、前記基板上および/または内に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子21と、前記検出素子上に設けられた感応膜24と、前記検出素子と電気的に接続され前記傾斜面に設けられた金属層20a~20dと、を備えるセンサ100と、上面に前記センサが設けられる実装基板30と、前記実装基板に設けられ、先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記センサを脱着可能とする導電部材と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の少なくとも一部が上面と鈍角になるように傾斜する傾斜面を有する基板と、前記基板上および/または内に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子と、前記検出素子上に設けられた感応膜と、前記検出素子と電気的に接続され前記傾斜面に設けられた金属層と、を備えるセンサと、
上面に前記センサが設けられる実装基板と、
前記実装基板に設けられ、先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記センサを脱着可能とする導電部材と、
を備えるセンサモジュール。
【請求項2】
前記センサは、前記感応膜に前記液体を案内する案内路を備える請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記金属層は、前記基板の第1側面における第1傾斜面に設けられた第1金属層と、前記基板の第1側面に対向する第2側面における第2傾斜面に設けられた第2金属層と、を含み、
前記導電部材は、前記第1金属層に当接する第1導電部材と、前記第2金属層に当接する第2導電部材と、を含む請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記第1導電部材の前記第1金属層に当接する先端は、前記実装基板に対し固定され、前記第2導電部材の前記第2金属層に当接する先端は、前記実装基板に対し移動可能である請求項3に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記実装基板に設けられる固定部材を備え、
前記金属層は、前記基板の第1側面における傾斜面に設けられ、
前記導電部材は、先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記基板の前記第1側面に対向する第2側面が、前記固定部材に当接し、前記センサを脱着可能とする請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記傾斜面は凹凸面である請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記検出素子は、弾性表面波素子または圧電薄膜共振器である請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記検出素子は、前記基板上に設けられた複数の電極指を有するIDTを備え、
前記金属層は前記IDTの前記複数の電極指が配列する方向における前記基板の側面には設けられていない請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項9】
前記感応膜は、抗体を含む請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項10】
側面の少なくとも一部が上面と鈍角になるように傾斜する傾斜面である基板と、
前記基板の上面に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子と、
前記検出素子上に設けられた感応膜と、
前記感応膜に前記液体を案内する案内路と、
前記検出素子と電気的に接続され前記傾斜面に設けられた金属層と、
を備えるセンサ。
【請求項11】
前記センサは実装基板に設けられ、
前記実装基板に設けられた導電部材の先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記センサを脱着可能とする請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
実質的に6面体からなり、平面視で対向する2つの側辺の一端から他端まで設けられた2つのテーパ面と、前記2つのテーパ面の間に平坦面を有し、前記平坦面上に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子用の第1領域と、前記第1領域の周囲で、前記平坦面に延在する配線用の第2領域と、前記テーパ面に設けられ外部と接続される接続電極用の第3領域と、を有する基板と、
前記第1領域に設けられた検出素子内の電極と、前記第2領域に設けられた配線と、前記第3領域に設けられ前記配線を介し前記電極と電気的に接続する接続電極と、を有する導電パターンと、
前記検出素子上に設けられた感応膜と、
を備えるセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサおよびセンサモジュールに関し、液体に関する情報を検出するセンサおよびセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の物質等の液体に関する情報を検出するためSAW(Surface Acoustic Wave)素子上に感応膜(反応膜)を設けるセンサが知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公報第2006/027893号
【特許文献2】国際公報第2005/027945号
【特許文献3】国際公開第2008/120511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体に関する情報を検出するセンサでは、感応膜が液体に暴露される。このため、感応膜に液体が残存しやすく、センサが実装された実装基板からセンサを頻繁に交換することになる。実装基板とセンサとがはんだ等によって接合されている場合、はんだを溶融させてセンサを取り除くことは、簡便性に欠け、負担が大きい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、実装基板からのセンサの脱着を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側面の少なくとも一部が上面と鈍角になるように傾斜する傾斜面を有する基板と、前記基板上および/または内に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子と、前記検出素子上に設けられた感応膜と、前記検出素子と電気的に接続され前記傾斜面に設けられた金属層と、を備えるセンサと、上面に前記センサが設けられる実装基板と、前記実装基板に設けられ、先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記センサを脱着可能とする導電部材と、を備えるセンサモジュールである。
【0007】
上記構成において、前記センサは、前記感応膜に前記液体を案内する案内路を備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記金属層は、前記基板の第1側面における第1傾斜面に設けられた第1金属層と、前記基板の第1側面に対向する第2側面における第2傾斜面に設けられた第2金属層と、を含み、前記導電部材は、前記第1金属層に当接する第1導電部材と、前記第2金属層に当接する第2導電部材と、を含む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1導電部材の前記第1金属層に当接する先端は、前記実装基板に対し固定され、前記第2導電部材の前記第2金属層に当接する先端は、前記実装基板に対し移動可能である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記実装基板に設けられる固定部材を備え、前記金属層は、前記基板の第1側面における傾斜面に設けられ、前記導電部材は、先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記基板の前記第1側面に対向する第2側面が、前記固定部材に当接し、前記センサを脱着可能とする構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記傾斜面は凹凸面である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記検出素子は、弾性表面波素子または圧電薄膜共振器である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記検出素子は、前記基板上に設けられた複数の電極指を有するIDTを備え、前記金属層は前記IDTの前記複数の電極指が配列する方向における前記基板の側面には設けられていない構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記感応膜は、抗体を含む構成とすることができる。
【0015】
本発明は、側面の少なくとも一部が上面と鈍角になるように傾斜する傾斜面である基板と、前記基板の上面に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子と、前記検出素子上に設けられた感応膜と、前記感応膜に前記液体を案内する案内路と、前記検出素子と電気的に接続され前記傾斜面に設けられた金属層と、を備えるセンサである。
【0016】
上記構成において、前記センサは実装基板に設けられ、前記実装基板に設けられた導電部材の先端が前記センサの外側から前記金属層の方向に向かって前記金属層に当接し、前記センサを脱着可能とする構成とすることができる。
【0017】
本発明は、実質的に6面体からなり、平面視で対向する2つの側辺の一端から他端まで設けられた2つのテーパ面と、前記2つのテーパ面の間に平坦面を有し、前記平坦面上に設けられ液体内の特定の物質を検出する検出素子用の第1領域と、前記第1領域の周囲で、前記平坦面に延在する配線用の第2領域と、前記テーパ面に設けられ外部と接続される接続電極用の第3領域と、を有する基板と、前記第1領域に設けられた検出素子内の電極と、前記第2領域に設けられた配線と、前記第3領域に設けられ前記配線を介し前記電極と電気的に接続する接続電極と、を有する導電パターンと、前記検出素子上に設けられた感応膜と、を備えるセンサである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、実装基板からのセンサの脱着を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)から図1(d)は、センサチップの断面図である。
図2図2は、実施例1におけるセンサの平面図である。
図3図3(a)および図3(b)は、それぞれ図1のA-A断面図およびB-B断面図である。
図4図4(a)は、実施例1におけるセンサモジュールの平面図、図4(b)は、図4(a)のA-A断面図である。
図5図5は、実施例1の変形例1におけるセンサの平面図である。
図6図6は、実施例1の変形例1におけるセンサモジュールの断面図である。
図7図7は、実施例1の変形例2におけるセンサの平面図である。
図8図8は、実施例1の変形例3におけるセンサの平面図である。
図9図9(a)および図9(b)は、実施例1の変形例4におけるセンサの断面図である。
図10図10(a)および図10(b)は、実施例1の変形例5におけるセンサの断面図である。
図11図11は、実施例2におけるセンサの平面図である。
図12図12(a)および図12(b)はそれぞれ図11のA-A断面図およびB-B断面図である。
図13図13(a)および図13(b)は、実施例2の変形例1におけるセンサの断面図である。
図14図14は、実施例3におけるセンサの平面図である。
図15図15(a)から図15(c)は、図14のA-A断面図である。
図16図16は、実施例4におけるセンサの平面図である。
図17図17は、図16のA-A断面図である。
図18図18(a)から図18(c)は、実施例5におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図19図19(a)から図19(c)は、実施例5の変形例1におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図20図20(a)および図20(b)は、実施例5の変形例2におけるセンサの製造方法を示す断面図である。
図21図21(a)は、実施例6に係る検出システムのブロック図、図21(b)は、実施例6の変形例1に係る検出システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(a)から図1(d)は、センサチップ80の断面図である。センサチップ80は、一般的にほぼ6面体である。センサチップ80は、ウエハなどの大判の基板上および/または内に作り込まれる。ウエハには、センサチップ80となるユニットが行列状に形成される。そしてダイシング装置を用いユニットの境界をフルダイシングすると、6面体のセンサチップ80となる。
【0021】
センサの種類にもよるが、圧電層を有するセンサであれば、基板上に下部電極、下部電極上に能動部材の圧電層、圧電層上に上部電極等を積層する。上部電極上に感応膜が形成される。またセンサをFET(Field Effect Transistor)などの半導体素子を用い形成する場合は、基板の表面および基板内に活性領域としてP型半導体層、イントリンシック半導体層および/またはN型半導体層などが作り込まれる。そしてこの6面体のセンサチップ80の上面には、センサを駆動するため、少なくとも2つの電極が形成される。
【0022】
一方、このセンサチップ80は、例えば、液体を検出するセンサでは、感応膜が液体に浸される。このため、センサチップ80を頻繁に交換することが要求され、取り換えの簡単な機構が求められる。
【0023】
このセンサチップ80を簡単に取り換えする場合は、機械的な押圧力でセンサチップ80が破壊することを抑制しなければならない。以下に説明する実施例では、機械的な押圧機構で、センサチップ80の破壊を抑制しつつ、センサチップ80の実装基板30への装着と、センサチップ80と実装基板30との電気的な接続と、を可能とする。
【0024】
センサチップ80においてほとんどの部材は、支持基板またはセンサを形成する材料からなる基板などである。支持基板または基板の構成材料は、セラミックもしくは半導体材料などの単結晶、多結晶もしくはアモルファス、または、ガラス、サファイアもしくはSiNなどの無機絶縁料である。これらの材料は、センサチップ80の完成品ではその厚みが薄い。
【0025】
センサチップ80は、ほぼ直方体であり、厚みが薄い。つまり、上面80aおよび下面80bの面積が大きく側面80cおよび80dの面積が小さい。図1(a)のように、センサチップ80に上面80aまたは下面80bから厚み方向に力F1が加わると、センサチップ80は容易に破壊に到る可能性がある。
【0026】
また、図1(b)のように、センサチップ80の側面80cおよび80dと上面80aおよび下面80bとなす角はほぼ90°である。対向する側面80cおよび80dに加わる水平面方向の力F2に対しては、センサチップ80はある程度の強度がある。しかし、センサチップ80が薄いため、破線のように、センサチップ80は上方または下方に反ってしまう。これにより感応膜等に反りが発生して、安定した液体への浸漬または安定したセンシングを実現できないおそれがある。
【0027】
以上の問題を解決するため、本発明では、以下の形態を開示する。図1(c)のように、センサチップ80に上面80aとの角度θが鈍角をなす側面80cおよび80dを形成する。左の側面80dに固定治具85を当接し、右の側面80cに導電部材86を矢印88のように上から押し当てると、側面80cには上面80aの平面方向に力Fxが加わり、センサチップ80の横ずれを防止する。また下方向に力Fzが加わる。力Fzは、センサチップ80を実装基板30に固定する力となる。よって固定治具85と導電部材86により、センサチップ80は簡単に実装基板30に固定できる。傾斜面である側面80cに接続電極84が設けられている。導電部材86が接続電極84に機械的に当接して、導電部材86と接続電極84との電気的接続が可能となる。
【0028】
さらに、図1(d)のように別の形態を開示する。センサチップ80では、支持基板82と支持基板82上に設けられたセンサ層81とが積層されている。この場合、支持基板82の側面82cおよびセンサ層81の側面81cを傾斜面とする。接続電極84を側面82cから81cに延在させる。これにより、図1(c)で示した場合と同様に、センサチップ80の取り外しが容易となる。
【0029】
以上のように、センサチップ80の側面80cを傾斜面とし、センサチップ80内の検出素子と電気的に接続された接続電極84を側面80c斜面に設けることで、センサチップ80の取り外しが可能となる。以下に、具体的な実施例を説明する。
【実施例0030】
実施例1は、検出素子として、遅延線型弾性表面波素子を用いる例である。図2は、実施例1におけるセンサ100の平面図、図3(a)および図3(b)は、それぞれ図2のA-A断面図およびB-B断面図である。
【0031】
基板10の上面の弾性波の伝搬方向をX方向(長辺方向)、基板10の上面の法線方向をZ方向、基板10の上面に平行でありかつX方向に直交する方向をY方向(短辺方向)とする。図2では、感応膜24を破線で示し、空洞27、導入口27aおよび排出口27bを実線で示している。流体チップ26、導入路28aおよび排出路28bの図示を省略している。
【0032】
図2から図3(b)に示すように、センサ100(図1(c)のセンサチップ80に相当)では、基板10上にIDT(Interdigital Transducer)16aおよび16bが設けられている。IDT16aと16bとは離間している。IDT16aおよび16bは金属膜17により形成されている。IDT16aおよび16bは、各々一対の櫛型電極14aおよび14bを有する。櫛型電極14aは、複数の電極指12aおよびバスバー13aを有し、櫛型電極14bは、電極指12bおよびバスバー13bを有する。X方向に延びるバスバー13aおよび13bには、Y方向に延伸する複数の電極指12aのY端および電極指12bの-Y端がそれぞれ接続される。
【0033】
X方向から見て、電極指12aと12bとが重なる領域は、弾性表面波が伝搬する領域15aおよび15bである。領域15aおよび15bの少なくとも一部の領域において、電極指12aと12bとは1本毎に交互に設けられている。領域15aおよび15bがX方向に延伸する領域15cは弾性表面波が主に伝搬する領域である。IDT16aのバスバー13aおよび13bは配線18を介し金属層20aおよび20b(図1(c)の接続電極84に相当)にそれぞれ電気的に接続されている。IDT16bのバスバー13aおよび13bは配線18を介し金属層20cおよび20d(接続電極)にそれぞれ電気的に接続されている。
【0034】
IDT16aと16bとの間における領域15cは弾性表面波が主に伝搬する伝搬路15である。伝搬路15の基板10上に金属膜22が設けられている。金属膜22はIDT16aおよび16bを形成する金属膜17と同じ材料からなる膜でもよいし、異なる材料からなる膜でもよい。金属膜22は、感応膜24に検出対象の液体が接触したときに、液体の誘電率および電気伝導率により影響される電気的効果をキャンセルし、伝搬路15に質量負荷の効果を得るためのセンシング電極として機能する。金属膜22は設けられていなくてもよい。金属膜22上に自己組織化単分子膜などのリンカーを介して感応膜24が設けられている。
【0035】
この流体チップ26は、例えば、マイクロ流路である。流体チップ26には空洞27が設けられている。空洞27の下面は、感応膜24の上面に接するか、または感応膜24を囲んでいる。空洞27の上面および側面は流体チップ26の内壁に相当する。空洞27はセンシング対象の液体が溜まるセンシング空間である。流体チップ26には、空洞27につながる導入口27aおよび排出口27bが設けられている。図2で示すように、導入口27aおよび排出口27bは、例として、空洞27の上面に位置している。導入口27aは、平面視において矩形の伝搬路15の+X側の短辺の近傍において空洞27の+X側端に接続され、排出口27bは、伝搬路15の-X側の短辺の近傍において空洞27の-X側端に接続されている。なお、導入口27aおよび排出口27bの位置は以上の構成に限定されない。
【0036】
導入口27aおよび排出口27bにはそれぞれ導入路28aおよび排出路28bが接続される。導入路28aおよび排出路28bは、例えば送液継手であり、チューブ29aおよび29bが接続される。矢印50aのように、チューブ29aから導入路28aに検出対象の液体が導入され、液体は導入路28a、導入口27aおよび空洞27を介し感応膜24の上面に供給される。感応膜24は液体に暴露(浸漬)される。物質等を検出後の液体は空洞27、排出口27bおよび排出路28bを介し矢印50bにチューブ29bに排出される。導入口27aおよび導入路28a、排出口27bおよび排出路28bは、複数設けられていてもよい。
【0037】
金属層20aをグランド電位とし、金属層20bに高周波信号を加えると、IDT16aは基板10の表面付近に弾性表面波を励振する。弾性表面波は伝搬路15における基板10の表面付近を伝搬しIDT16bに達する。IDT16bでは、弾性表面波により、グランド電位の金属層20cに対し金属層20dに高周波信号が出力される。
【0038】
感応膜24に液体内の物質等が吸着すると感応膜24が重くなる。これにより、伝搬路15に付加される質量が大きくなり、伝搬路15を伝搬する弾性表面波の速度が遅くなる。このため、IDT16aの送信する高周波信号とIDT16bから受信する高周波信号との位相差の変化から弾性表面波の速度の変化を検出できる。これにより、液体内の物質等を検出できる。このように、基板10の上面に設けられた、IDT16a、16bおよび伝搬路15は、液体に関する情報を検出する検出素子21として機能する。
【0039】
基板10の平面形状は略矩形であり、基板10の±Y側の側面(2つの長辺側の側面)は、上面との角度θが鈍角である傾斜面11であり、基板10の±X側の側面(短辺側の側面)は、基板10の上面に対し垂直な垂直面11aである。傾斜面11は、基板10の上面となす角度θが鈍角である。垂直面11aは、基板10の上面となす角度がほぼ90°である。金属層20a~20dは、傾斜面11に設けられている。なお、基板10の±X側の側面は基板10の上面に対し傾斜してもよい。基板10の側面は、一般には、ダイシングブレードを用い形成される。意図的に傾斜面11とする側面以外の側面は、基板10を切断するダイシングブレードの形状により決定される。
【0040】
基板10は、実質的に6面体であり、平面視で対向する2つの側辺の一端から他端まで設けられた傾斜面11(テーパ面)と、傾斜面11の間の平坦面である上面と、を有する。上面には、検出素子21用の第1領域と、第1領域の周囲で、上面に延在する配線18用の第2領域と、傾斜面11に設けられ外部と接続される接続電極(金属層20a~20d)用の第3領域と、を有する。第1領域に設けられた検出素子21内の電極(IDT16aおよび16b)と、第2領域に設けられた配線18と、第3領域に設けられ配線18を介し電極と電気的に接続する金属層20a~20dと、を有する導電パターンが設けられている。
【0041】
基板10は、例えば圧電基板であり、タンタル酸リチウム(LiTaO)基板、ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板または水晶基板であり、例えば、単結晶回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または単結晶回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。
【0042】
金属膜17は、例えばアルミニウム、銅およびモリブデンの少なくとも1つの金属を主成分とする。配線18、金属層20および金属膜22は、例えば金、銅およびアルミニウムを主成分とする。配線18および金属膜22と金属膜17とは、同時に形成され、互いに同じ材料からなってもよい。
【0043】
感応膜24は、例えば、金属膜22にリンカー等の接続部により接続された抗体である。抗体は、液体内の特定の抗原(例えばウィルスまたは細菌等のうち抗体が結合する蛋白質、またはそれ以外の蛋白質自体)と結合する。
【0044】
流体チップ26は、例えばポリジメチルシロキサン等の樹脂、シリコン基板、ガラス基板または金属等からなる。導入路28aおよび排出路28bは例えば樹脂等からなる。
【0045】
図4(a)は、実施例1におけるセンサモジュールの平面図、図4(b)は、図4(a)のA-A断面図である。
【0046】
図4(a)および図4(b)に示すように、実装基板30上にセンサ100が装着されている。実装基板30上には導電ピン36a~36dが固定されている。導電ピン36aおよび36c(第1導電部材)は、センサ100の基板10の+Y側(図4(a)における上側)の長辺に相当する第1側面における傾斜面11(第1傾斜面)に設けられた金属層20aおよび20c(第1金属層)に当接している。導電ピン36bおよび36d(第2導電部材)は、センサ100の基板10の-Y側(図4(a)における下側)の長辺に相当する第2側面における傾斜面11(第2傾斜面)に設けられた金属層20bおよび20d(第2金属層)に当接している。導電ピン36a~36dは、ピン部37aおよびコネクタ部37bを備えている。コネクタ部37bは固定部材34により実装基板30に固定される。ピン部37aの先端はセンサ100の外側から傾斜面11に設けられた金属層20a~20dにそれぞれ機械的に当接する。そして導電ピン36a~36dは、図4(a)の左側(-X側)に示すように、配線32を介し端子38に電気的に接続されている。
【0047】
端子38は、実装基板30とは別に設けられたマザーボートのコネクタ端子に差し込まれ、センサモジュール120を駆動する回路と接続される。その回路は、例えば液体内の物質等を検出する回路である。なお、液体内の物質等を検出する回路は、実装基板30に設けられていてもよい。
【0048】
実装基板30は、樹脂またはセラミックス等の絶縁基板である。導電ピン36a~36dは、例えばスプリングピン(可動式導電部材)または固定ピン(固定型導電部材)である。スプリングピンは、内部にバネが装着されている。ピン部37aの先端を、コネクタ部37bの方に押圧すると、ピン部37aはコネクタ部37bの方に移動する。このとき、スプリングを設けることで、ピン部37aの先端は矢印51aの方向に力が働き、金属層20cに機械的に押圧される。これにより、ピン部37aの先端は金属層20cに電気的に接続される。固定ピンは、剛体であり伸縮しない。固定部材34は、例えばはんだである。配線32および端子38は、例えば銅、金またはアルミニウム等を主成分とする金属層である。
【0049】
図4(b)の矢印51aのように、導電ピン36a~36dの先端(すなわちピン部37aの先端)は、センサ100の外側から内側の方向に力が働いている。これにより、導電ピン36a~36dの先端は金属層20a~20dを矢印51aの方向にそれぞれ押し付け、導電ピン36a~36dと金属層20a~20dとのが電気的に接続される。さらに、金属層20a~20dは傾斜面11に設けられている。このため、矢印51bのように傾斜面11を下方向に押し当てる力が加わる。これにより、センサ100は実装基板30に押し当てられ、機械的に固定される。
【0050】
図4(a)の上側(+Y側)の導電ピン36aおよび36c、または下側(-Y側)の導電ピン36bおよび36dを可動しない固定ピンとし、他方をスプリングピンとしてもよい。この構造にすることで、図1(c)において説明したように、センサ100を実装基板30から容易に脱着することができる。
【0051】
センサ100を実装基板30に装着する方法を説明する。例えば導電ピン36aおよび36cは、固定ピンであり、かつ実装基板30に固定されている。導電ピン36bおよび36dは、実装基板30に固定されず、全体が実装基板30に対し図4(a)の紙面における上下(±Y方向)に移動可能とする。または、導電ピン36bおよび36dはスプリングピンである。すなわち、導電ピン36bおよび36dのコネクタ部37bは、ハンダ等で実装基板30に固定されており、ピン部37aは、バネを介してコネクタ部37bに取り付けられており、実装基板30に対し±Y方向に移動が可能となっている。このように、導電ピン36aおよび36bの先端は、実装基板30に対し固定されている。導電ピン36bおよび36dの先端は、実装基板30に対し移動可能である。
【0052】
まず、センサ100の上側(+Y側)の金属層20aおよび20cを導電ピン36aおよび36cのピン部37aの先端に押し当て、その後に、導電ピン36bおよび36dのピン部37aを、実装基板30に対し紙面における上側(+Y側)に移動させ、導電ピン36bおよび36dのピン部37aの先端を金属層20bおよび20dに押し当てる。これにより、導電ピン36bおよび36dの先端は金属層20bおよび20dに機械的に当接され、導電ピン36bおよび36dと金属層20bおよび20dとは電気的に接続される。
【0053】
また、導電ピン36bおよび36dの先端を、実装基板30に対し下側(-Y側)に移動させれば、センサ100の取り外しが可能となる。図4(a)および図4(b)において、導電ピン36aおよび36cと導電ピン36bおよび36dから基板10に加わる力の方向は、センサ100の2つの短辺の延伸方向(Y方向)である。基板10に短辺の延伸方向(Y方向)に力を加えることで、基板10に長辺の延伸方向(X方向)に力を加えるよりも、基板10の反り等を抑制できる。
【0054】
感応膜24が液体に触れると感応膜24に液体が残存しやすい。また、センサ100が液体を感応膜24に案内する流体チップ26(案内路)を有する場合、流体チップ26の空洞27に液体が残存しやすい。このため、センサ100が実装された実装基板30からセンサ100を頻繁に交換することになる。特に、感応膜24が抗体を含む場合、抗原を抗体から脱離させることが難しく、1回の測定でセンサ100を交換することになる。
【0055】
実施例1によれば、検出素子21と電気的に接続された金属層20a~20dは、傾斜面11に設けられている。導電ピン36a~36d(導電部材)の先端は、センサ100の外側からセンサ100の金属層20a~20dの方向に向かって金属層20a~20dに当接し、センサ100を脱着可能とする。これにより、センサ100と実装基板30とを電気的に接続可能とすると同時に、センサ100は実装基板30に簡単に脱着可能となる。さらに、図4(b)の矢印51bのように、センサ100を実装基板30に押し当てることができるため、安定した測定が可能である。
【0056】
センサ100を実装基板30に押し当てるためには、傾斜面11と基板10の上面とのなす角度θは、100°以上かつ170°以下が好ましく、110°以上かつ160°以下がより好ましく、120°以上かつ150°以下がさらに好ましい。基板10の厚さは、導電ピン36a~36dが金属層20a~20dにそれぞれ押し当てやすいように、例えば300μm~500μmである。金属層20a~20dに導電ピン36a~36dがそれぞれ押し当てられたときに、金属層20a~20dが剥がれないように、金属層20a~20dの厚さは0.5μm以上が好ましい。
【0057】
[実施例1の変形例1]
図5は、実施例1の変形例1におけるセンサ102の平面図である。2対の金属層20a~20dが、基板10の平面形状におけるいずれか一方の長辺に設けられている。図5では、下側(-Y側)の長辺に傾斜面11が設けられる。4つの金属層20a~20dが下側(-Y側)の長辺の傾斜面11に設けられている。配線18は、右のIDT16aおよび左のIDT16bの電極指12aおよび12bと金属層20a~20dとを電気的に接続し、IDT16aおよび16bを金属層20a~20bに再配置する。この場合、基板10の上側(+Y側)の長辺は傾斜面の加工が施されてなく垂直面11aである。よって、基板10の+Y側に設けられた垂直面11aを固定部材35(図6参照)の垂直面にしっかりと当接でき、かつ導電ピン36a~36dの全てのピン部37aの先端を基板10の-Y側に設けられた傾斜面11の金属層20a~20dにそれぞれ当接できる。この当接作業は、実施例1のように導電ピン36a~36dを基板10両側の傾斜面11に当てるよりも簡単である。
【0058】
図6は、実施例1の変形例1におけるセンサモジュールの断面図であり、図5のセンサ102を、固定部材35を使って実装基板30取り付けた図である。固定部材35は、実装基板30に接着剤または半田などで固定されている。一方、導電ピン36a~36d全体が、実装基板30に対し移動が可能である。あるいは、導電ピン36a~36dはスプリングピンである。導電ピン36a~36dの機構は図4(a)および図4(b)と同じである。センサ102の基板10の垂直面11aを固定部材35に当接させ、導電ピン36a~36dのピン部37aの先端を金属層20a~20dにそれぞれ当接させるように、導電ピン36a~36d自体または導電ピン36a~36dのピン部37aを動かすことで、センサ102の実装基板30への機械的な固定と、センサ102と実装基板30との電気的接続と、が可能となる。
【0059】
[実施例1の変形例2]
図7は、実施例1の変形例2におけるセンサ104の平面図である。図7の基板10の平面形状における下側(-Y側)と上側(+Y側)の長辺に傾斜面11が設けられたセンサ104である。図4(a)および図4(b)のように導電ピン36a~36dを傾斜面11に当接させるため、2つの長辺には、図4(b)と同様に、矢印51bの力を発生させて、センサ104を実装基板30に固定できる。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0060】
図5から図7の実施例1の変形例1および2のように、金属層20a~20dが設けられた傾斜面11は、基板10の1つの側面に設けられていてもよい。この場合、図6のように、センサ102を実装基板30に押し付ける力は、1つの傾斜面11にのみ生じる。このため、センサ102を実装基板30に押し付ける力が小さい。
【0061】
そこで、実施例1の図4(b)のように、対向する2つの傾斜面11において、センサ100を実装基板30に押し当てる力が生じる。よって、図6の構造に比べて、センサ100を実装基板30により大きな力で押し当てることができる。
【0062】
[実施例1の変形例3]
図8は、実施例1の変形例3におけるセンサ106の平面図である。センサ106では、基板10の2つの短辺側(±X側)の側面は傾斜面11であり、長辺側(±Y側)の側面は垂直面11aである。図8に示すように、左側(-X側)の2つの配線18は、バスバー13aおよび30bの延伸方向(X方向)に対し傾斜角を有し延在する。左側(+X側)の傾斜面11に金属層20aおよび20bが設けられている。右側(+X側)の2つの配線18は、バスバー13aおよび13bの延伸方向(X方向)と傾斜角を有し延在し、右側(+X側)の傾斜面11に金属層20c、20dが設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0063】
実施例1およびその変形例では、IDT16aにおいて励振された弾性表面波は、矢印53aおよび53bのように、+X方向と-X方向に伝搬する。仮に、領域15aを左側(-X側)の短辺における側面に延長した部分に金属層が設けられ、領域15bを右側(+Y側)の短辺における側面に延長した部分に金属層が設けられているとする。この場合、矢印53bのように伝搬した弾性表面波は金属層により反射し、矢印53cのようにIDT16aに戻り、伝搬路15を伝搬してしまう。金属層により反射した弾性表面波がIDT16bに到達すると、ノイズが増加し、検出素子21の感度が低下してしまう。全ての実施例は、この弾性波の主伝搬領域を回避して設けられている。
【0064】
金属層20a~20dは、電極指12aおよび12bが配列する方向に設けられていない。これにより、矢印53cの弾性表面波の反射を抑制でき、検出素子21の感度を向上できる。
【0065】
[実施例1の変形例4]
図9(a)および図9(b)は、図8のA-A断面図およびB-B断面図に相当する。変形例4におけるセンサ108では、傾斜面11は凹凸面である。図8の変形例3と同様に、基板10の長辺側(±Y側)の側面には金属層は設けられていない。また、図9(b)のように、領域15aおよび15b(図8参照)の±Y方向の外側の長辺方向(X方向)の傾斜面11に金属層20aおよび20cが設けられている。さらに、図9(a)のように、金属層20a~20dは、電極指12aおよび12bが配列する領域15aおよび15b(IDT16aおよび16b)のX方向における延長領域に設けられていない。これにより、矢印53cの弾性表面波の反射を抑制でき、検出素子21の感度を向上できる。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0066】
実施例1の変形例4では、傾斜面11が凹凸面である。これにより、図9(b)のように、アンカー効果により、金属層20a~20dと傾斜面11との密着性が向上する。よって、導電ピン36a~36dの先端が金属層20a~20dを押圧した場合にも金属層20a~20dが傾斜面11から剥離することを抑制できる。傾斜面11の凹凸面は、例えば、基板10をダイシングブレードを用い切断する場合、またはレーザ光を基板10にパルス照射することにより基板10を切断する場合に発生する切断面の凹凸である。さらに、基板10をエッチングすることにより傾斜面11を形成する場合にも傾斜面11に凹凸を形成することが可能である。金属層20a~20dに導電ピン36a~36dを機械的に当接させるとき、傾斜面11の凹凸により、金属層20a~20dと基板10との密着性を向上させることができる。
【0067】
[実施例1の変形例5]
図10(a)および図10(b)は、実施例1の変形例5におけるセンサ110の断面図であり、それぞれ図1のA-A断面およびB-B断面に相当する。
【0068】
図10(a)および9(b)に示すように、実施例1の変形例5を示す。このセンサ110では、基板10は、支持基板10aと支持基板10a上に設けられた圧電層10bとを備えている。支持基板10aは、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板である。圧電層10bは、例えばタンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板または水晶基板である。支持基板10aと圧電層10bとの間に、酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の絶縁膜が設けられていてもよい。なお、傾斜面11および金属層20a~20dは、基板10の長辺側(±Y側)に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【実施例0069】
実施例2は、検出素子として、弾性表面波共振器を用いる例である。図11は、センサ112の平面図、図12(a)および図12(b)はそれぞれ図11のA-A断面図およびB-B断面図である。図11では、金属膜22および感応膜24を破線で示し、空洞27、導入口27aおよび排出口27bを実線で示している。流体チップ26、導入路28aおよび排出路28bの図示を省略している。
【0070】
図11から図12(b)に示すように、実施例2のセンサ112では、図2から図3(a)に示したIDT16a、16bおよび伝搬路15の代わりに検出素子として弾性表面波共振器21aが設けられている。弾性表面波共振器21aは、基板10上に設けられたIDT16および反射器19を有している。IDT16および反射器19は金属膜17により形成されている。
【0071】
IDT16は櫛型電極14aおよび14bを有する。櫛型電極14aは、複数の電極指12aおよびバスバー13aを有する。X方向から見て電極指12aと12bが重なる領域は、領域15aとして示す。IDT16の構成は、実施例1のIDT16aおよび16bと同じである。IDT16のX方向の両側に反射器19が形成されている。領域15aにおいてIDT16が励振した弾性表面波は主にX方向に伝搬し、反射器19は弾性波を反射する。電極指12aのピッチおよび電極指12bのピッチをλとする。λは、IDT16が励振する弾性表面波の波長に相当する。λは複数の電極指12aおよび12bのピッチDの2倍である。なお、λはピッチDの2倍以外の場合もある。
【0072】
基板10上に、IDT16および反射器19を覆うように絶縁膜25が設けられている。絶縁膜25上に、領域15aと重なるように金属膜22が設けられている。絶縁膜25上に、金属膜22を覆うように感応膜24が設けられている。IDT16のバスバー13aおよび13bは配線18を介し金属層20aおよび20bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0073】
感応膜24に液体内の物質等が吸着すると感応膜24が重くなる。これにより、IDT16に付加される質量が大きくなり、弾性表面波共振器21aの共振周波数が低くなる。弾性表面波共振器21aの共振周波数の変化を検出することで、液体に関する情報を検出することができる。
【0074】
基板10、金属膜17、22、金属層20a、20b、感応膜24、流体チップ26、導入路28aおよび排出路28bの材料は実施例1と同じである。絶縁膜25は、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜である。
【0075】
[実施例2の変形例1]
図13(a)および図13(b)は、実施例2の変形例1におけるセンサ114の断面図であり、それぞれ図11のA-A断面およびB-B断面に相当する。
【0076】
図13(a)および12(b)に示すように、実施例2の変形例1のセンサ114では、実施例1の変形例5の図10(a)および図10(b)と同様に、基板10は、支持基板10aと支持基板10a上に設けられた圧電層10bとを備えている。圧電層10b上にIDT16(センシング電極)が設けられ、IDT16上に感応膜24が設けられている。支持基板10aおよび圧電層10bの材料は実施例1の変形例5と同じである。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【実施例0077】
実施例3は、検出素子として、バルク弾性波共振器(すなわちBAW(Bulk Acoustic Wave)共振器)を用いる例である。図14は、実施例3におけるセンサ116の平面図、図15(a)から図15(c)は、図14のA-A断面図である。図14では、下部電極42および感応膜24を破線で示し、流体チップ26、導入路28aおよび排出路28bの図示を省略している。
【0078】
図14および図15(a)に示すように、実施例3のセンサ116では、基板10上面の平面視における中央部に凹部が設けられ、凹部内は空隙40(キャビティ)である。このキャビティは、基板10裏面から貫通してもよい。図15(a)に示すように、下部電極42は、基板10および空隙40上に設けられている。下部電極42上に重なるように圧電層44が設けられている。下部電極42および圧電層44と重なるように、上部電極46が設けられている。圧電層44を挟み下部電極42と上部電極46とが対向する領域は厚み縦振動モードまたは厚みすべり振動モード等の弾性波が共振する領域45である。領域45の平面形状は、楕円形状、円形状、四角形状または五角形状等の多角形状でもよい。領域45内の上部電極46上に感応膜24が設けられている。
【0079】
感応膜24に液体および液体内の物質等が吸着すると感応膜24が重くなる。これにより、圧電薄膜共振器21bの共振周波数が低くなる。圧電薄膜共振器21bの共振周波数の変化を検出することで、液体に関する情報を検出することができる。
【0080】
基板10は、例えばシリコン基板、サファイア基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板である。下部電極42および上部電極46は、例えばルテニウム、クロム、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、ロジウムまたはイリジウム等の単層膜またはこれらの膜から複数種類を選択した積層膜である。一例として、下部電極42および上部電極46は、ルテニウム膜である。
【0081】
圧電層44は、例えば窒化アルミニウム膜、酸化亜鉛膜、窒化ガリウム膜、チタン酸ジルコン酸鉛膜、チタン酸鉛膜、タンタル酸リチウム膜またはニオブ酸リチウム)膜である。一例として、圧電層44は、窒化アルミニウムを主成分とする。窒化アルミニウムの(002)方位はZ方向でもよいし、Z方向に対し傾斜していてもよい。
【0082】
図15(b)に示すように、センサ116aでは、基板10の上面は平坦であり、基板10と下部電極42との間にドーム状の空隙40が設けられている。その他の構成は図15(a)のセンサ116と同じである。
【0083】
図15(c)に示すように、センサ116bでは、空隙40の代わりに、音響反射膜41が設けられている。音響反射膜41では、音響インピーダンスの低い膜41aと音響インピーダンスの高い膜41bとが交互に積層されている。膜41aおよび41bの各々の厚さを弾性波の波長の約1/4とすることで、弾性波は音響反射膜41において反射する。その他の構成は図15(a)のセンサ116と同じである。
【0084】
図15(a)および図15(b)のセンサ116および116aのように、検出素子はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)でもよい。図15(c)のセンサ116bのように、SMR(Solidly Mounted Resonator)でもよい。
【実施例0085】
実施例4は、検出素子として、QCM(Quartz Crystal Microbalance)を用いている。図16は、実施例4に係るセンサ118の平面図、図17は、図16のA-A断面図である。図16では、下部電極42および感応膜24を破線で示し、流体チップ26、導入路28aおよび排出路28bの図示を省略している。
【0086】
センサ118の基板10は単結晶水晶である。基板10の下面に下部電極42が設けられ、基板10の上面に上部電極46が設けられている。下部電極42は、基板10を貫通する貫通電極47を介し配線18に電気的に接続されている。基板10を挟み下部電極42と上部電極46とが対向する領域は厚みすべり振動モード等の弾性波が共振する領域45である。領域45の平面形状は、楕円形状、円形状、四角形状または五角形状等の多角形状でもよい。
【0087】
感応膜24に液体内の物質等が吸着すると感応膜24が重くなる。これにより、領域45に付加される質量が大きくなり、QCMの共振周波数が低くなる。QCMの共振周波数の変化を検出することで、液体に関する情報を検出することができる。実施例4の場合でも、基板10の一対の短辺側(±X側)に傾斜面11が設けられ、この傾斜面11に金属層20aおよび20bが設けられている。
【実施例0088】
実施例5は、実施例1から4および変形例の製造方法を説明している。図1(a)から図1(d)において説明したように、センサチップは、一般には大判のウエハに行列状にセンサとなるユニットを形成して、ウエハを個片化することにより形成する。以下の説明では、ウエハ内において互いに隣接したユニットを断面図で示した。図18(a)に示すように、基板10上に全ての検出素子21を形成する。続いて、基板10の上面にレーザ光54aおよび54bを照射する。レーザ光54aはスクライブラインに沿って、X方向とY方向に走査される。
【0089】
図18(b)に示すように、レーザ光54aおよび54bを照射することで、基板10に溝56が形成される。続いて、ダイシングブレード55を用い、溝56の間の基板10を切断する。図18(c)に示すように、切断溝57が形成される。切断溝57の上部57aは、溝56に相当する傾斜面11であり、傾斜面11と基板10の上面とのなす角度θは鈍角である。切断溝57の下部57bは垂直面11aである。以上により、基板10が切断溝57において切断され、センサが個片化される。その後、図3(a)のように、傾斜面11を覆うように金属層20a~20dを、スパッタリング法、真空蒸着法またはめっき法を用い形成する。感応膜24の形成は、センサを個片化した後に行ってもよい。傾斜面11がパルス状のレーザ光の走査により形成されるため、傾斜面11に凹凸が形成される。これにより、金属層20a~20dの密着性が向上する。なお、傾斜面11の凹凸は、ダイシングブレードにより傾斜面11を形成する場合に比べると小さくなる。
【0090】
[実施例5の変形例1]
図19(a)から図19(c)は、エッチングとダイシングブレードを用いたセンサの製造方法を示す断面図である。図19(a)に示すように、基板10上に開口58aを有するマスク層58を形成する。マスク層は例えばフォトレジストである。そしてこのマスク層58を使い、開口58a下の基板10に溝59を形成する。図19(b)に示すように、溝59の側面は傾斜面である。例えば、マスク層58をマスクに基板10をウエットエッチングすることで、溝59の側面を傾斜面とすることができる。また、傾斜面の形成にはドライエッチングを用いてもよい。
【0091】
続いて、ダイシングブレード55を用い、傾斜面を残して溝59にダイシングブレード55を合わせて基板10をフルカットする。その結果、図19(c)に示すように、切断溝57が形成される。溝59を、エッチング法を用い形成する場合、傾斜面11は凹凸が少ない面となる。溝59を、ブラスト法を用いて形成する場合、傾斜面11を凹凸面とすることもできる。図3(a)のように、傾斜面11を覆うように金属層20a~20dを形成する。
【0092】
[実施例5の変形例2]
図20(a)および図20(b)は、実施例5の変形例2におけるセンサの製造方法を示す断面図である。図20(a)に示すように、ダイシングブレード60の先端における側面60aは、回転軸62の延伸方向に対し垂直である。側面60aの回転軸62側の側面60bは、側面60aに対し傾斜している。
【0093】
図20(b)のように、ダイシングブレード60を用い、基板10をフルカットすることで、切断溝57を形成する。切断溝57の上部57aは側面60bに対応する傾斜面11となり、下部57bは側面60aに対応する垂直面11aとなる。傾斜面11および垂直面11aは凹凸面となる。ダイシングブレード60の粒度を320番とすると、凹凸面の最大高さ粗さRzは例えば50μm程度となる。凹凸面の最大高さ粗さRzは例えば1μmまたは10μm以上である。ダイシングブレード60の粒度を適宜選択することで、傾斜面11の粗さを選択できる。
【0094】
図20(a)および図20(b)のように、ダイシングブレード60を用い、切断面の少なくとも一部が基板10の上面とのなす角度θが鈍角となる傾斜面11となるように、基板10を切断し、複数の基板10を形成する。その後、図9(a)および図9(b)のように、傾斜面11に、検出素子21と電気的に接続される金属層20a~20dを形成する。これにより、傾斜面11に凹凸を形成することができる。よって、金属層20a~20dと傾斜面11との密着性を向上できる。
【実施例0095】
実施例6は、検出システムの例である。図21(a)は、実施例6に係る検出システムのブロック図である。図21(a)に示すように、実施例6の検出システム124では、発振回路71は共振器70を有する。共振器70は、実施例2~4およびその変形例における検出素子である。発振回路71は、共振器70の共振周波数に対応する発振周波数を有する発振信号を出力する。検出器72は、測定器73および算出器74を備えている。測定器73は、発振回路71が出力する発振信号の周波数を測定する。測定器73は、例えばネットワークアナライザでもよい。算出器74は、測定器73が測定した発振信号の周波数の変化量に基づき、液体内の物質等の液体に関する情報を検出する。
【0096】
[実施例6の変形例1]
実施例6の変形例1は、実施例1およびその変形例を用いた検出システムの例である。図21(b)は、実施例6の変形例1に係る検出システムのブロック図である。図21(b)に示すように、実施例6の変形例1の検出システム126では、送信器75は、実施例1の検出素子21のIDT16aに高周波信号を送信する。受信器76は、検出素子21のIDT16bから高周波信号を受信する。検出器77は測定器78および算出器79を備えている。測定器78は、送信器75が送信した高周波信号と受信器76が受信した高周波信号との位相差を測定する。算出器79は、測定器78が測定した位相差の変化量に基づき、液体に関する情報を検出する。
【0097】
本発明の実施例では、液体内の物質を検知する検出素子を開示したが、これに限定されない。例えば、検出素子は、気体内の物質を検知してもよい。
【0098】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 基板
11 傾斜面
11a 垂直面
12a、12b 電極指
13a、13b バスバー
14a、14b 櫛型電極
15a~15c 領域
15 伝搬路
16、16a、16b IDT
17、22 金属膜
18、32 配線
19 反射器
20a~20d 金属層
21 検出素子
24 感応膜
26 流体チップ
27 空洞
27a 導入口
27b 排出口
28a 導入路
28b排出路
29a、29b チューブ
30実装基板
34、35 固定部材
36a~36d 導電ピン
40 空隙
41 音響反射膜
42 下部電極
44 圧電層
45 領域
46 上部電極
47 貫通電極
54a、54b レーザ光
56、57 溝
58 マスク層
図1
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