(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018695
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/20 20110101AFI20240201BHJP
B62J 27/20 20200101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R21/20
B62J27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122180
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】野上 光男
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054CC29
3D054FF13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】エアバッグを適切な圧縮形状に保持することができるエアバッグ装置及び、エアバッグ装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の第1の態様に係るエアバッグ装置は、車両の乗員又は歩行者を保護するエアバッグ装置であって、ガスによって膨張・展開するエアバッグと;前記エアバッグに敷設された可塑性のワイヤ状保持部材と;を備える。そして、前記エアバッグを圧縮した状態で前記ワイヤ状保持部材を変形させることで、前記エアバッグを所定の収容形状とするように構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員又は歩行者を保護するエアバッグ装置であって、
ガスによって膨張・展開するエアバッグと;
前記エアバッグに敷設された可塑性のワイヤ状保持部材と;を備え、
前記エアバッグを圧縮した状態で前記ワイヤ状保持部材を変形させることで、前記エアバッグを所定の収容形状とするように構成されたことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、自動車の窓枠の上部から下方に向かって展開するカーテンエアバッグであることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの長手方向に沿って配置されることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ワイヤ状保持部材は、自動車の車両構造部に対して固定される上端固定部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは下方から上方に向かう短手方向に折り畳み又はロールして圧縮され、
前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から圧縮された前記エアバッグの外周に沿って湾曲し、少なくとも前記エアバッグの下端を含む範囲に位置する下方湾曲部を有することを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から自動車の窓側を通って前記エアバッグの下端に達し、車室側で上方に延びるように成形されることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記ワイヤ状保持部材の前記下方湾曲部は、前記カーテンエアバッグが展開した時に、湾曲状態が開放されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から車室側を通って前記エアバッグの下方に延びるように成形されることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの上方への展開を規制するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記エアバッグは、オートバイ用のエアバッグであり、
前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの収容時の外周形状を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記エアバッグの表面に、前記ワイヤ状保持部材を覆うパッチを更に備えたことを特徴とする請求項10に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ワイヤ状保持部材は、金属又は樹脂からなるワイヤであることを特徴とする請求項1,2,3,5乃至11の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項13】
請求項1,2,3,5乃至11の何れか一項に記載のエアバッグ装置の製造方法において、
前記エアバッグに対して前記ワイヤ状保持部材を敷設する工程と;
前記エアバッグをロール又は折り畳むこことで圧縮する工程と;
前記ワイヤ状保持部材を変形させることで、前記エアバッグを所定の収容形状とする工程と;を含むことを特徴とするエアバッグ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを膨張展開させることで車両の乗員(搭乗者)や歩行者を保護するエアバッグ装置及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグ装置を車両に設けることは周知である。エアバッグ装置としては、例えば、ステアリングホイールの中心付近から展開して運転者を保護する、いわゆるドライバエアバッグ装置や、窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ装置や、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員の側部(シートの側部)で展開するサイドエアバッグ装置などの様々な形態がある。また、自動車以外にもオートバイに搭載されるエアバッグ装置もある。本発明は、種々のエアバッグ装置に適用可能なものである。
【0003】
エアバッグ装置を収容するスペースは限られており、エアバッグをコンパクトに圧縮・収容することが求められる。また、収容空間に合わせて効率の良い収容形状にすることが重要である。例えば、カーテンエアバッグ装置においては、窓枠上部の狭く、複雑な形状の空間にエアバッグを圧縮して収容する必要がある。オートバイ用のエアバッグ装置においては、自動車よりも更に収容空間が限られているため、圧縮するエアバッグの形状にも制限が多いのが現実である。
【0004】
エアバッグの圧縮形状、収容状態が不適切であると、収容作業に手間がかかるだけでなく、エアバッグの展開挙動が悪化する恐れもある。そこで、圧縮したエアバッグを樹脂カバーやテープで保持したり、熱圧縮工程で折り畳まれたエアバッグを所望の形状にする方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、樹脂カバーやテープを使用する手法や、熱圧縮工程を採用する場合には、追加の材料費、製造工程の複雑化によって製造コストが高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、簡素な構造でありながら、エアバッグを適切な圧縮形状に保持することができるエアバッグ装置及び、エアバッグ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、エアバッグの展開挙動の安定化に寄与するエアバッグ装置及び、エアバッグ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るエアバッグ装置は、車両の乗員又は歩行者を保護するエアバッグ装置であって、ガスによって膨張・展開するエアバッグと;前記エアバッグに敷設された可塑性のワイヤ状保持部材と;を備える。そして、前記エアバッグを圧縮した状態で前記ワイヤ状保持部材を変形させることで、前記エアバッグを所定の収容形状とするように構成する。
【0009】
「車両」としては、自動車、オートバイ、電動スケートボード等、エアバッグを備えるあらゆる車両を対象とすることができる。
【0010】
「乗員又は歩行者」とは、車両に乗車している乗員の他に、車両に衝突する可能性のある歩行者、サイクリスト等を含むことができる意味である。
【0011】
「可塑性のワイヤ状保持部材」には、例えば、工具を用いて人間の力によって変形させることができる程度の強度を有する金属性や樹脂製のワイヤを含むことができる。
【0012】
「敷設」とは、エアバッグに対して接触した状態で保持されている形態を意味するものであり、エアバッグに対して一部が係止され、他の部分が単に接触しているような形態や、エアバッグに形成されたトンネル状の空間に挿入された状態で保持される形態を含むことができる。したがって、ワイヤ状保持部材は、エアバッグの全面に渡って張り巡らされる必要は無く、また、エアバッグに対して完全に固定される必要は無い。
【0013】
上記のような本発明においては、ワイヤ状保持部材を変形させることで、圧縮したエアバッグの収容形状を調整することができるため、特殊な工程を追加することなく、簡素な構造でありながら、求められる空間に対してエアバッグを適切な形状で収容することが可能となる。
【0014】
また、ワイヤ状保持部材の構造を工夫することにより、エアバッグの展開方向を規制し、好ましい方向に展開させることができ、エアバッグの展開挙動の安定化に寄与することになる。
【0015】
前記エアバッグは、自動車の窓枠の上部から下方に向かって展開するカーテンエアバッグとすることができる。また、本発明に係るエアバッグは、助手席用エアバッグや、サイドエアバックや、オートバイ用エアバッグ等に適用可能なものである。
【0016】
カーテンエアバッグは、狭く細長い限られた空間に収容する必要があるため、本発明の思想は極めて有効である。
【0017】
前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの長手方向に沿って配置することができる。
【0018】
ワイヤ状保持部材をエアバッグの長手方向に沿って配置することにより、エアバッグの圧縮形状を長手方向全体に渡って調整することが可能となる。例えば、ピラーの位置において、細長く圧縮されたエアバッグを屈曲させたり、凹ませたりすることもできる。
【0019】
前記ワイヤ状保持部材は、自動車の車両構造部に対して固定される上端固定部を有することができる。
【0020】
カーテンエアバッグは、通常は上端の複数箇所が車両構造部に対して固定されるため、ワイヤ状保持部材についても同様に上端部分を固定することによって、圧縮されたエアバッグを安定的に保持することが可能となる。
【0021】
前記エアバッグは下方から上方に向かう短手方向に折り畳み又はロールして圧縮され、前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から圧縮された前記エアバッグの外周に沿って湾曲し、少なくとも前記エアバッグの下端を含む範囲に位置する下方湾曲部を有することができる。
【0022】
このとき、前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から自動車の窓側を通って前記エアバッグの下端に達し、車室側で上方に延びるように成形することが好ましい。
【0023】
また、前記ワイヤ状保持部材の前記下方湾曲部は、前記カーテンエアバッグが展開した時に、湾曲状態が開放されるように構成することが好ましい。
【0024】
ワイヤ状保持部材が、窓枠の上部から窓側(キャビンと反対側)を通って、ロール状のエアバッグの外周に沿って、キャビン側まで延びる構成とすることで、エアバッグが展開したときに、ワイヤ状保持部材の下方湾曲部が延び、例えば、トリムと窓との間の隙間を塞ぐカバーのような役割を果たすことになる。その結果、当該隙間にエアバッグが入り込まずに、エアバッグが確実に車室内に展開することとなる。
【0025】
前記ワイヤ状保持部材は、前記上端固定部から車室側を通って前記エアバッグの下方に延びるように成形することができる。
【0026】
前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの上方への展開を規制するように構成することができる。
【0027】
ワイヤ状保持部材が上端固定部から車室側を通ってロール状に圧縮されたエアバッグの下方に延びるように成形することで、エアバッグが展開した時に、エアバッグの上部をワイヤ状保持部材で押さえ付けるような格好となり、エアバッグを確実に下方に向かって展開させることが可能となる。
【0028】
前記エアバッグは、オートバイ用のエアバッグであり、前記ワイヤ状保持部材は、前記エアバッグの収容時の外周形状を規制するように構成することができる。
【0029】
「外周形状を規制」とは、圧縮されたエアバッグを平面的に見たときに、圧縮されたエアバッグの外周形状とワイヤ状保持部材の外周形状が概ね一致し、又は概ね相似形となるようにすることを含む。例えば、平面視で四角形の外形を有するワイヤ状保持部材を採用した場合には、圧縮されたエアバッグの外周形状もワイヤ状保持部材の四角形に沿った四角形とする場合を含む。
【0030】
オートバイにおいては、自動車よりもエアバッグの収容空間の容量、形状が更に限定されるため、本発明に係るワイヤ状保持部材を採用するのは効果的である。
【0031】
前記エアバッグの表面には、前記ワイヤ状保持部材を覆うパッチを設けることができる。
【0032】
ここで、「パッチ」とは、当て布のような布片であり、平置き状態のエアバッグよりも面積が小さいものと表現することができる。なお、パッチはエアバッグの表面に縫製によって袋状に成形し、その内部にワイヤ状保持部材を収容するような格好とすることができる。
【0033】
本発明の第2の態様に係るエアバッグ装置の製造方法は、前記エアバッグに対して前記ワイヤ状保持部材を敷設する工程と;前記エアバッグをロール又は折り畳むこことで圧縮する工程と;前記ワイヤ状保持部材を変形させることで、前記エアバッグを所定の収容形状とする工程と;を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置を備えた自動車の車室部分の断面図であり、エアバッグが展開時の状態を示す。
【
図2】
図1に示すカーテンエアバッグ装置において、エアバッグを圧縮した収容形態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B)である。
【
図4】
図4(A)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の収容状態を示す説明図と、本実施例の他の態様を示す説明図(B)である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B)、(C)である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B)、(C)である。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置が作動した状態を示す側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置の構造を示す平面図であり、エアバッグを圧縮した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ、第1乃至第4実施例に基づいて詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10を備えた自動車の車室部分の断面図であり、展開時の状態を示す。
図1に示すように、車室側方の窓ガラスの上部において、ヘッドライニングに覆われたインナーパネルには、エアバッグ12が複数の取付けタブ14を用いてボルトによって固定される。
【0037】
なお、符号11はAピラーを示す。また、エアバッグ12の前縁部とAピラー11とを連結するストラップ15が設けることができる。ストラップ15は、エアバッグ12と同一の素材(ファブリック)により、幅の均一な帯状に成形さすることができる。なお、ストラップ15自体は、エアバッグと別素材(例えば、合成樹脂等)で成形することもできる。
【0038】
図2は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10の構造を示す正面図である。本実施例に係るカーテンエアバッグ装置10においては、エアバッグ12は折り畳まれ、又はロール状に圧縮される。
図1にも示しているが、エアバッグ12の上縁部には、当該エアバッグ12から延出したタブ14が設けられる。
【0039】
エアバッグ12は、ほぼ同一の2枚のシートの可撓性材料、例えば織布を互いに重ね、揃えた端を周囲縫い目により相互接続し、ガス発生器などのインフレータ20からの膨張ガスを受ける大きな内部膨張可能部分がこれらのシート間に形成される。エアバッグ12は、また、1枚のシートの可撓性材料を半分に折って2枚の層を重ね、周囲縫い目により相互接続することができる。あるいは、所謂「ワンピースウィービング(OPW)」技法により織り上げることもでき、膨張領域と非膨張領域とを形成する縦糸と緯糸を選択された部分で織り合わせて、複数のシートの織り構造を形成して膨張室(チャンバ)と複数シートが相互接続する周囲結合部を形成する。
【0040】
エアバッグ12を作製する布は、好ましくは可塑性の布であり、例えばポリアミド繊維の縦糸と緯糸を織り合わせて形成される布である。布は熱可塑性材料でコーティングしてもよい。
図2に示すように、エアバッグ12は、インフレータ20をエアバッグ12内に挿入するための開口部を有するように形成される。例えば、筒状のインフレータが開口部を通って延び、その長さの大部分がエアバッグ12内部に存在する。
【0041】
車両に設置できるようにエアバッグ12をパッケージ化するために、エアバッグ12はまず下方から上方に向かってロールされかつ/または折り畳まれロッド状に形成される。エアバッグ12を折り畳んで、またはエアバッグ12に2つ以上のロールを形成して、またはそれ自体公知のエアバッグのロール化と折り畳みの技法を組み合わせて、パッケージを形成してもよい。ロール化の技法の場合、エアバッグ12を心棒(図示せず)の周りに巻いてできたパッケージを軸方向に引き抜いてもよい。
【0042】
(第1実施例)
図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B)である。本実施例に係るエアバッグ装置は、車両の乗員又は歩行者を保護するエアバッグ装置であって、ガスによって膨張・展開するエアバッグ12と;エアバッグ12に敷設された可塑性のワイヤ状保持部材18と;を備える。そして、エアバッグ12を圧縮した状態でワイヤ状保持部材18を変形させることで、エアバッグ12を所定の収容形状とするように構成されている。
【0043】
図3(A),(B)に示すように、ワイヤ状保持部材18は、圧縮されたエアバッグ12の上縁部に沿って長手方向に延び、膨張チャンバを形成する縫製16とタブ14を形成する縫製14aとの間に挿入された状態で設けられる。ワイヤ状保持部材18の上端部は、タブ14の形状に沿って屈曲している。なお、
図3(A)において、ワイヤ状保持部材18実際にはエアバッグ12によって見えないが、便宜上、実線で示すものとする。
【0044】
図3(B)に示すように、ワイヤ状保持部材18は、タブ14とエアバッグ12のチャンバ部分との境界近傍に屈曲部22が形成されている。この屈曲部22によって、タブ14を車両構造部に容易に連結可能となるとともに、エアバッグ12の収容姿勢を安定させることが可能となる。
【0045】
ワイヤ状保持部材18としては、例えば、工具を用いて人間の力によって変形させることができる程度の強度を有する金属性や樹脂製のワイヤを使用することができる。
【0046】
ワイヤ状保持部材18は、エアバッグに対して接触した状態で保持されるが、平置きされたエアバッグ12の全面に渡って張り巡らされる必要はなく、また、エアバッグ12に対して完全に固定される必要もない。
【0047】
図4(A)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の収容状態を示す説明図と、本実施例の他の態様を示す説明図(B)である。なお、
図4(A),(B)において、ワイヤ状保持部材18は破線で示すものとする。
【0048】
図4(A)に示すように、ロール状に圧縮されたエアバッグ12の上縁部分に沿ってワイヤ状保持部材18が設けられている場合には、ワイヤ状保持部材18を屈曲させることにより、エアバッグ12もワイヤ状保持部材18に沿って変形させることができる。
【0049】
一方、
図4(B)に示す例においては、ロール状に圧縮されたエアバッグ12の対向する2つの縁部に沿ってワイヤ状保持部材18a,18bが設けられており、一方の縁部のワイヤ状保持部材18bをエアバッグロールの中心側に向かって押し込むことによって、エアバッグ12に凹部(陥没部)26を形成することができる。例えば、ピラーに対応する箇所に凹部26を形成することで、エアバッグ12の車室側への出っ張りを無くすことができる。
【0050】
(第2実施例)
図5は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B),(C)である。なお、本実施例において上述した第1実施例と同一又は対応する構成要素については同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
【0051】
図5(A),(B)に示すように、本実施例においては、ワイヤ状保持部材118は、タブ14の位置からエアバッグ12の外周に沿って湾曲し、エアバッグ12の下端を含む範囲に位置する下方湾曲部118cを備えている。ワイヤ状保持部材118は、上端部から自動車の窓121側を通ってエアバッグ12の下端に達し、車室側で上方に延びるように成形される。
【0052】
ワイヤ状保持部材118の上端部は、タブ14の内部を通っているが、起点118aからエアバッグ12の外側に延び出て、エアバッグ12の外周に沿って湾曲して先端部118bに達する。
図5(B)に示すように、起点118aから先端部11bの範囲は、例えば、270°程度とすることが好ましい。なお、図において符号122はルーフライニングを示し、符号124はトリムを示す。
【0053】
本実施例において、エアバッグ12が展開を開始すると、
図5(C)に示すように、ワイヤ状保持部材118の下方湾曲部118cが解かれて直線状になるように延びる。そして、ワイヤ状保持部材118がトリム124と窓121との間の隙間を塞ぐカバーのような役割を果たすことになる。その結果、当該隙間にエアバッグ12が入り込まずに、エアバッ12グが確実に車室内に展開することになる。
【0054】
(第3実施例)
図6は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す正面図(A)及び断面図(B),(C)である。なお、本実施例において上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
【0055】
本実施例においては、
図6(A),(B)に示すように、ワイヤ状保持部材218が、上端固定部(14)から車室側を通ってエアバッグ12の下方に延びるように成形されている。ワイヤ状保持部材218の上端部は、タブ14の内部を通っているが、起点218aからエアバッグ12の外側に延び出て、エアバッグ12の外周に沿って湾曲し、エアバッグ12の上方への展開を規制するようになっている。
【0056】
図6(C)に示すように、ワイヤ状保持部材218が上端固定部から車室側を通ってロール状に圧縮されたエアバッグ12の下方に延びるように成形されているため、エアバッグ12が展開した時に、エアバッグ12の上部をワイヤ状保持部材218で押さえ付けるような格好となり、エアバッグ12を確実に下方に向かって展開させることが可能となる。
【0057】
(第4実施例)
図7は、本発明の第4実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置が作動した状態を示す側面図である。
図8は、本発明の第4実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置の構造を示す平面図であり、エアバッグを圧縮した状態を示す。
図9は、
図8のB1-B1方向の断面図である。
【0058】
図7に示すように、オートバイ310が前方の障害物に衝突すると、ウィンドシールド314の内側下部からエアバッグ312が展開し、乗員Rを保護するようになっている。なお、符号316はハンドルを示す。
【0059】
図8及び
図9に示すように、エアバッグ312はワイヤ状保持部材318の外周形状に沿って概ね長方形状に折り畳まれる。ワイヤ状保持部材318は、実際にはパッチ330によって覆われるが、
図8においては、便宜上実線で示すものとする。
【0060】
エアバッグ装置は、エアバッグ312に対して膨張ガスを供給するインフレータ320を備えている。インフレータ320は、ディスク状のインフレータであり、フランジ部分322の四隅にスタッドボルト324が貫通し、車両に対して固定される。また、インフレータ320は、エアバッグ312の下端近傍において当該エアバッグ312の内部に収容される。
【0061】
図9に示すように、パッチ330は、当て布のような布片であり、折り畳まれたエアバッグ312の平置き面積よりも小さく、エアバッグ312の表面に縫製によって袋状に成形され、その内部にワイヤ状保持部材318を収容するようになっている。また、パッチ330は、インフレータ320に重なり、当該インフレータ320を覆うような位置に縫製される。
【0062】
ワイヤ状保持部材318の一部は、インフレータ320のスタッドボルト324の外周に巻き付くように係止されている。なお、
図8において、ワイヤ状保持部材318は2つの端部を有する1本のワイヤとして形成されているが、無端環状とすることもできる。また、本実施例では、ワイヤ状保持部材318が全体として二重に延びているが、一重とすることもできる。
【0063】
図8に示すように、ワイヤ状保持部材318とパッチ330とは、全体の外形が概ね相似形となっており、ワイヤ状保持部材318がパッチ330の縫製部327によって、それ以上広がらないように規制される。なお、ワイヤ状保持部材318及びパッチ330は、エアバッグ312が展開した時に乗員Rと面する側と反対側の面に設置される。
【0064】
本実施例においては、エアバッグ312を折り畳んだ後に、例えば、工具を用いてワイヤ状保持部材318に外力を加えることで屈曲部328を形成する。そして、屈曲部328の下方部分をオートバイ本体に収容し、上方部分をウィンドシールド314の下部に配置することができる。
【0065】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。