(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001872
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20231227BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H04B7/08 982
H04L27/26 114
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100885
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0076024
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516157382
【氏名又は名称】イノワイアレス カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】クワク,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヨン フン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イル ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョン ピル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基地局と試験装備の間の連結によって付随的に発生する基地局のビームフォーミング特性の歪曲を、基地局で送信する特定の信号を利用して補償する基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】方法は、基地局が複数のアレイアンテナを使って送信したSSB(Synchronization Signal Block)信号を受信しS10、受信信号分析を通じてSSB信号を検出しS20、検出したSSB信号に既知のSSB信号のビームフォーミング係数を適用して基地局のすべてのアレイアンテナ経路に対する特性を測定しS30、測定した経路特性を補償するための補償係数を算出し、算出した補償係数を適用して受信信号に対するキャリブレーションを実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局が複数のアレイアンテナを使って送信したSSB(Synchronization Signal Block)信号yn(t)を受信する(a)段階と、
受信信号分析を通じてSSB信号Y’i,nを検出する(b)段階と、
(b)段階で検出されたSSB信号Y’i,nに既知のSSB信号のビームフォーミング係数Wi、nを適用して、基地局のすべてのアレイアンテナ経路に対する特性H’nを測定する(c)段階と、
(c)段階で測定された経路特性H’nを補償するための補償係数Cn(=1/H’n)を算出する(d)段階と、
(d)段階で算出された補償係数Cnを適用して、受信信号に対するキャリブレーションを実行する(e)段階と、を含み、
iはビームのインデックスを表し、nはアレイアンテナのインデックスを表す、基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法。
【請求項2】
(c)段階で測定された経路特性H’
nは、以下の数1により算出され、
【数1】
(数1で、「H」の上に「~」が付された文字が、H’
nである。)
経路特性H’
nと実際の経路特性H
nは、以下の数2のように表され、
【数2】
(数2で、「H」の上に「~」が付された文字が、H’
nである。)
S
iはi番目のビームフォーミング対象信号s
i(t)に含まれたSSBの基準シンボルであることを特徴とする、請求項1に記載の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法。
【請求項3】
(d)段階および(e)段階は、ベースバンド段で実行されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法。
【請求項4】
(d)段階はベースバンド段で実行され、(e)段階はRF段で実行されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法。
【請求項5】
基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータと、
ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号にSSBインデックスを適用して、各アレイアンテナポート別SSB信号を測定するSSB分析器と、SSB分析器を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号に該当ビームフォーミング係数を適用して補償係数を算出する補償係数算出器およびA/Dコンバータを経た各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号に、各アンテナポート別補償係数に対する複素数かけ算演算を実行する複素乗算器と、を備える歪曲補償部と、
複素乗算器を通じて歪曲が補償されたデジタルベースバンドSSB信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、
D/Aコンバータを経たアナログベースバンドSSB信号をアップコンバージョンして歪曲が補償されたRF信号を出力するアップコンバータと、を含む、
基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置。
【請求項6】
基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータと、
ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号にSSBインデックスを適用して、各アレイアンテナポート別SSB信号を測定するSSB分析器と、SSB分析器を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号に該当ビームフォーミング係数を適用して補償係数を算出する補償係数算出器と、補償係数算出器によって算出された補償係数によってアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号の振幅歪曲および位相歪曲をそれぞれ補償する減衰器と、位相シフターと、を備える歪曲補償部と、を含む、
基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局ビームフォーミング試験時に基地局と試験装備の連結によって付随的に発生する基地局のビームフォーミング特性の歪曲を、基地局で送信する特定の信号を利用して補償する、基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来ビームフォーミング技術を採択した基地局のキャリブレーション過程を説明するための図面である。
図1に図示した通り、5G NR(New Radio)では、基地局100のデジタルデータ処理装置(DU:Digital Unit)110を分離させて多数のDU110を一つの場所に集めて管理し、基地局100には無線信号処理装置(RU:Radio Unit)120のみ設置した状態で、DU110とRU120を連結するフロントホール(Fronthaul)として、例えばCPRI(Common Public Radio Interface)を使うクラウド無線接続網(C-RAN:Cloud Radio Access Network)を採択している。
【0003】
一方、5G移動通信技術の最も大きな特徴は、アレイアンテナ122を使って複数の指向性ビームで運用されるビームフォーミング基盤のマッシブ(massive)MIMO技術(以下、簡単に「ビームフォーミング」技術という)であるが、ビームフォーミング技術で必ず必要なものは、それぞれのアンテナ経路に対してビームフォーミング係数とアンテナ122の間の回路、例えばDAC/RFアンプ121のようなRF回路および配線/ケーブルの振幅と位相特性を一致させることである。このために、基地局のDU110ではRU120を通過して各アンテナ122に到達する(A)経路、すなわち
図1でDU110とDAC/RFアンプ121、DAC/RFアンプ121とアンテナ122を連結する配線/ケーブルおよびアンテナ122までの経路((1)-(2)-(3)経路)の特性を測定して補償するキャリブレーション過程を実行する。
【0004】
これとは異なり、ビームフォーミング基盤の基地局をテストし、ビームフォーミング基盤の基地局を使ってビームフォーミング試験をする場合、基地局のアレイアンテナポート123とビームフォーミング試験装備200の間の(B)経路、すなわち
図1でDU110とDAC/RFアンプ121、DAC/RFアンプ121とアレイアンテナポート123を連結する配線/ケーブル、アレイアンテナポート123および試験装備200、例えば後述する本出願人の先行特許発明である特許文献1~4に記載のチャネルシミュレータのRF入力ポート201の間の経路((1)-(2)-(4)-(5)経路)を有線で連結することになる。しかし、RU120でDAC/RFアンプ121を経た信号をアレイアンテナ122とアレイアンテナポート123に分配するスプリッタのようなRF回路(図示されず)、及び、アレイアンテナポート123と試験装備200の入力ポート201を連結するケーブル124などは、基地局のキャリブレーション対象に含まれないため、それぞれのRF回路とケーブルなどの振幅と位相特性が異なる場合、基地局で形成したビームパターンに歪曲が発生する。
【0005】
これを補償するために、各アレイアンテナ経路上のRF構成要素をネットワーク分析器(network analyzer)等で測定して補償してもよいが、測定のためのケーブル脱着および締結過程で振幅と位相特性が変わることによって補償の正確度が低下する可能性が高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報10-1286023号(発明の名称:チャネルシミュレータ)
【特許文献2】韓国登録特許公報10-2003877号(発明の名称:ビームスペース方式のマッシブMIMO用チャネルエミュレータ)
【特許文献3】韓国登録特許公報10-2158149号(発明の名称:マッシブMIMO用チャネルシミュレータのチャネル生成方法)
【特許文献4】韓国登録特許公報10-1606354号(発明の名称:チャネルシミュレータのキャリブレーション方法)
【特許文献5】韓国公開特許公報10-2021-0089900号(発明の名称:位相配列アンテナをキャリブレーションするための方法および装置)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述した問題点を解決するために案出されたもので、基地局のビームフォーミング試験のためにチャネルシミュレータのような試験装備を使う場合、基地局と試験装備の間の連結によって付随的に発生する基地局のビームフォーミング特性の歪曲を、基地局で送信する特定の信号を利用して補償することによって基地局と試験装備のビームフォーミング関連連動試験を可能にする、基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の一特徴によると、基地局が複数のアレイアンテナを使って送信したSSB(Synchronization Signal Block)信号yn(t)を受信する(a)段階;受信信号分析を通じてSSB信号Y’i,nを検出する(b)段階と、(b)段階で検出されたSSB信号Y’i,nに既知のSSB信号のビームフォーミング係数Wi、nを適用して基地局のすべてのアレイアンテナ経路に対する特性H’nを測定する(c)段階と、(c)段階で測定された経路特性H’nを補償するための補償係数Cn(=1/H’n)を算出する(d)段階と、(d)段階で算出された補償係数Cnを適用して受信信号に対するキャリブレーションを実行する(e)段階と、を含み、iはビームのインデックスを表し、nはアレイアンテナのインデックスを表す基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法が提供される。
【0009】
(c)段階で測定された経路特性H’
nは、以下の数1により算出され、
【数1】
(数1で、「H」の上に「~」が付された文字が、H’
nである。)
【0010】
経路特性H’
nと実際の経路特性H
nは、以下の数2のように表され、
【数2】
(数2で、「H」の上に「~」が付された文字が、H’
nである。)
S
iはi番目のビームフォーミング対象信号s
i(t)に含まれたSSBの基準シンボルである。
【0011】
(d)段階および(e)段階は、ベースバンド段で実行されるか、(d)段階はベースバンド段で実行され(e)段階はRF段で実行される。
【0012】
本発明の他の特徴によると、基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータと、ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号にSSBインデックスを適用して、各アレイアンテナポート別SSB信号を測定するSSB分析器と、SSB分析器を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号に該当ビームフォーミング係数を適用して補償係数を算出する補償係数算出器と、A/Dコンバータを経た各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号に各アンテナポート別補償係数に対する複素数かけ算演算を実行する複素乗算器と、を備える歪曲補償部と、複素乗算器を通じて歪曲が補償されたデジタルベースバンドSSB信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、D/Aコンバータを経たアナログベースバンドSSB信号をアップコンバージョンして歪曲が補償されたRF信号を出力するアップコンバータと、を含む、基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によると、基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータと、ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号にSSBインデックスを適用して各アレイアンテナポート別SSB信号を測定するSSB分析器と、SSB分析器を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号に該当ビームフォーミング係数を適用して補償係数を算出する補償係数算出器と、補償係数算出器によって算出された補償係数によってアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力されるSSB信号の振幅歪曲および位相歪曲をそれぞれ補償する減衰器と、位相シフターと、を備える歪曲補償部と、を含む基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置によると、基地局のビームフォーミング試験のためにチャネルシミュレータのような試験装備を使う場合、基地局と試験装備の間の連結によって付随的に発生する基地局のビームフォーミング特性の歪曲を、基地局で送信する特定の信号を利用して補償することによって基地局と試験装備のビームフォーミング関連連動試験を信頼性があるように実行できるように支援する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来ビームフォーミング技術を採択した基地局のキャリブレーション過程を説明するための図面である。
【
図2】本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法の動作原理を説明するための図面である。
【
図3】本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置のブロック構成図である。
【
図5】本発明の他の実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置のブロック構成図である。
【
図6】本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法によってキャリブレーションした後にビームパターン測定試験を実行した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置の好ましい実施例について詳細に説明するが、以下で信号を表すすべての変数は振幅と位相成分で表示される複素変数である。
【0017】
図2は、本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法の動作原理を説明するための図面である。
図2に図示した通り、基地局のDU110では、ビームフォーミングをしようとする対象信号s(t)にビームフォーミング係数、W
i、nをかけてビームフォーミングが適用された数3に示すx
n(t)を出力する。
【0018】
【0019】
数3において、iは、ビームのインデックスを表す。実際に基地局のDU110には複数のビームフォーマがあって各ビームフォーマ出力を足してそれぞれのアレイアンテナに出力するが、以下では説明を単純にするために一つのビームフォーマのみを例に挙げて説明する。
【0020】
一方、基地局出力信号xn(t)をビームフォーミング測定装備、例えば、前述したチャネルシミュレータなどに連結すれば問題がないが、連結する過程で前述した通り、別途のRF回路、例えば、スプリッタとケーブルなどのキャリブレーション対象物150が各アレイアンテナ経路別に連結されるので、経路特性Hnによって歪曲された信号yn(t)が受信される。
【0021】
これを勘案して、本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置CAでは、このような歪曲を補償する補償係数Cnを求めた後、これを適用して下記の数4のように歪曲が補償された信号zn(t)を得ることができる。
【0022】
【0023】
図3は、本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法を説明するためのフローチャートである。本発明で提案するキャリブレーション方法を適用するためには、基地局送信信号、例えば基地局SSB(Synchronization Signal Block)のビームフォーミング係数のうち1個以上のビームに対するアンテナ別係数値を知っているか、基地局使用者から提供を受けなければならない。5G NR基地局が送信するSSB信号は、5GPP規格に定義されているので、特別な情報なしに分析が可能であるため、本発明では、基地局送信信号としてSSB信号を使うことができる。
【0024】
一方、基地局では複数のSSBを使うが、それぞれのSSB信号に互いに異なるビームフォーミング係数セットをかけてアレイアンテナを通じて伝送することによって、電波空間上の指向性を形成する。それぞれのSSB信号は、互いに異なる時間区間に割り当てられて時間的に同時に伝送されはしないので、それぞれのSSB信号の間に干渉が発生しない。
【0025】
基地局がi番目のSSB信号を送信する時点で、アレイアンテナそれぞれの送信信号xn(t)に含まれたi番目の信号成分Xi、nは、下記の数5の通りである。
【0026】
【0027】
ここで、Siは、i番目のビームフォーミング対象信号si(t)に含まれたSSBの基準シンボル(reference symbol)を表し、Xi、nは、i番目のSSBに対するn番目のアンテナポートのビームフォーミング係数を表す。
【0028】
本発明で提案するキャリブレーション方法は、次のような過程で実行される。
【0029】
まず、段階S10では、基地局からキャリブレーション対象物150、例えば、基地局RF回路とケーブルなどを通過した信号を受信する。基地局送信信号は、キャリブレーション対象物150の基地局RF回路とケーブルなどの特性によって歪曲されるので、キャリブレーション装置CAに受信される信号yn(t)に含まれたSSB信号成分は、下記の数6のように表すことができる。
【0030】
【0031】
次に、段階S20では、キャリブレーション装置CAが受信信号を分析してSSB信号を抽出する。ここで、SSB信号は5GPP規格に定義された技術事項を適用して分析が可能であるところ、SSB分析器を通じて測定したSSB信号をY’i,n(ただし、n=0、1、…、N-1)(本明細書中の数式で、「Y」の上に「^」が付された文字が、Y’i,nである。)で表示する(SSB分析器自体は本発明の範疇に含まれない)。
【0032】
次に、段階S30では、基地局ビームフォーミング係数を適用して基地局のすべてのアレイアンテナ経路に対する特性を測定するが、このような経路特性は下記の数7のように表すことができる。
【0033】
【0034】
ここで、W
i、nは既知のi番目のSSBのビームフォーミング係数値であるが、S
iが分かるのであればこれを数7に代入して経路特性H
nの測定に使ってもよいが、S
iはすべてのアレイアンテナ経路に対して同一の値であるので計算に反映しなくても、ビームフォーミング試験には影響を与えない。したがって、本発明の方法では経路特性H
nの測定値を下記の数8によって算出する。
【数8】
【0035】
数7と数8によって経路特性測定値H’n(本明細書中の数式では、「H」の上に「~」が付された文字)と実際の経路特性値Hnの間の関係を下記の数9のように表すことができる。
【0036】
【0037】
数9で等号を使わなかった理由は、測定誤差を反映するためである。
【0038】
次に、段階S40では、抽出されたSSB信号を利用して経路特性を補償するための補償係数を算出するが、このような補償係数は下記の数10によって算出され得る。
【0039】
【0040】
最後に、段階S50では、前記にて算出された補償係数を反映して歪曲された信号を補償(キャリブレーション)するが、経路特性によって歪曲された信号を補償する過程は、前述した数4に示した通り、受信信号に補償係数をかけてなされる。
【0041】
数4に数6、9および10を代入すると、下記の数11が導き出されるが、これによると、補償された信号で経路特性Hnが相殺されるので、本発明のキャリブレーション方法が有効であることが分かる。
【0042】
【0043】
図4は、本発明の一実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置のブロック構成図であるところ、ベースバンド段でキャリブレーションを実行する実施例を示している。
【0044】
図4に図示した通り、本発明の一実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置は、基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力される特定RF受信信号、例えばSSB信号y
n(t)をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータ220、ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ230、各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号Y
i,nにSSBインデックスを適用して各アレイアンテナポート別SSB信号Y’
i,nを測定するSSB分析器211、SSB分析器211を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号Y’
i,nに該当ビームフォーミング係数W
i、nを適用して補償係数C
nを算出する補償係数算出器212およびA/Dコンバータ230を経た各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号Y
i,nに各アンテナポート別補償係数C
nに対する複素数かけ算演算を実行する複素乗算器213を具備した歪曲補償部210’、複素乗算器213を通じて歪曲が補償されたデジタルベースバンドSSB信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ240およびD/Aコンバータ250を経たアナログベースバンドSSB信号をアップコンバージョンして歪曲が補償されたRF信号z
n(t)を出力するアップコンバータ250を含んでなり得る。
【0045】
図5は、本発明の他の実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置のブロック構成図であるところ、RF段でキャリブレーションを実行する実施例を示している。
【0046】
図5に図示した通り、本実施例に係る基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置は、基地局で送信された後、キャリブレーション対象物を経て歪曲されたまま複数のアレイアンテナポートそれぞれを通じて入力される特定RF受信信号、例えばSSB信号y
n(t)をダウンコンバージョンしてベースバンド信号に変換するダウンコンバータ220、ダウンコンバージョンされたベースバンドSSB信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ230、各アレイアンテナポート別デジタルベースバンドSSB信号Y
i,nにSSBインデックスを適用して各アレイアンテナポート別SSB信号Y’
i,nを測定するSSB分析器211、SSB分析器211を通じて測定された各アレイアンテナポート別SSB信号Y’
i,nに該当ビームフォーミング係数W
i、nを適用して補償係数C
nを算出する補償係数算出器212、補償係数算出器210により算出された補償係数C
nによって受信信号、例えばSSB信号y
n(t)の振幅(amplitude)歪曲および位相(phase)歪曲をそれぞれ補償する減衰器(attenuator)と位相シフター(phase shifter)を具備した歪曲補償部210’’を含んでなり得る。
【0047】
前述した構成で、補償係数C
nは下記の数12のように複素数で表現されてもよく、極座標形式で表現されてもよい。
【数12】
【0048】
数12で、aiはi番目のポートの振幅歪曲補償係数であり、θiはi番目のポートの位相歪曲補償係数である。
【0049】
図4および
図5の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション装置は、独立的に構成されるか基地局ビームフォーミング試験装備、例えばチャネルシミュレータに一部の機能として搭載され得る。
【0050】
図6は、本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法によってキャリブレーションした後にビームパターン測定試験を実行した結果を示したグラフである。本出願人は、本発明のキャリブレーション方式が搭載された本出願人が製造したチャネルシミュレータに5G NR基地局と5G NR端末を連結した状態でリアルタイムSSBビームパターン測定試験を実行した。
【0051】
この過程で、端末が-60度から60度の間の円弧線上を移動するようにシミュレーションを実行したところ、
図6に示した通り、各角度別に端末が測定した正面SSBビームのRSRP(Reference Signal Received Power)パターンが、基地局が送信したSSBビームパターンと一致することを確認することができる(キャリブレーションを適用しないと、両パターンが無関係な形態を見せる)。
【0052】
以上、添付した図面を参照して本発明の基地局ビームフォーミング試験装備のアレイ経路キャリブレーション方法および装置の好ましい実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明の技術的思想の範疇内で多様な変形と変更が可能であろう。したがって、本発明の権利範囲は以下の請求の範囲の記載によって定められるべきである。
【0053】
例えば、本明細書で、単数型は文面で特に言及しない限り複数型も含む。明細書で使われる「含む」および/または「含む」は言及された構成要素、段階、動作および/または素子は一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0054】
本明細書で使われる「実施例」などは、記述された任意の態様(aspect)または設計が他の態様または設計より良好であるとか利点があると解釈されるべきものではない。
【0055】
また、「または」という用語は、排他的論理和(exclusive or)であるよりは包含的な論理和(inclusive or)を意味する。
【0056】
他の定義がなければ、本明細書で使われるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使われ得るであろう。また、一般的に使われる辞書に定義されている用語は明白に特に定義されていない限り理想的にまたは過度に解釈されない。
【0057】
また、明細書に記載された「…部」、「…器」などの用語は少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェアまたはハードウェアおよびソフトウェアの結合で実現され得る。
【符号の説明】
【0058】
100:基地局
110:DU(Digital Unit)
120:RU(Radio Unit)
121:DAC/RFアンプ
122:アレイアンテナ
123:アレイアンテナポート
124:連結ケーブル
200:ビームフォーミング試験装備
201:入力ポート
210’、210’’:歪曲補償部
211:SSB分析器
212:補償係数算出器
213:複素乗算器
214:減衰器
215:位相シフター
220:ダウンコンバータ
230:D/Aコンバータ
240:A/Dコンバータ
250:アップコンバータ