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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018736
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】洗浄用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D83/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122264
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】菅原 信也
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB02
3E014PD02
3E014PE06
3E014PE11
3E014PE14
3E014PE17
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】長時間使用しても洗浄効率が低下しにくい洗浄用エアゾール製品10を提供する。
【解決手段】原液および噴射剤からなる内容物Aが充填されたエアゾール容器11と、内容物Aを噴射するためにエアゾール容器11に取り付けられた噴射部材12とを備え、噴射剤が圧縮ガスであり、25℃における初期の製品圧力が0.5~0.9MPaとされ、噴射量が10~50g/10秒であり、噴射部材12が備える噴口から拡がる噴射角が20~90度であり、噴口から5cmの距離における噴射力が50~300mN/5cmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を含有する原液および噴射剤からなる内容物が充填されたエアゾール容器と、
内容物を噴射するためにエアゾール容器に取り付けられた噴射部材とを備え、
前記噴射剤が圧縮ガスであり、25℃における初期のエアゾール容器内の圧力が0.5~0.9MPaとされ、
噴射量が10~50g/10秒であり、
噴射部材が備える噴口から拡がる噴射角が20~90度であり、
噴口から5cmの距離における噴射力が50~300mNである
洗浄用エアゾール製品。
【請求項2】
前記噴射部材が噴口の両側に一対の遮蔽壁を有し、
遮蔽壁同士の間隔が噴口の最大差し渡しよりも小さい
請求項1記載の洗浄用エアゾール製品。
【請求項3】
前記噴口が略矩形状であり、噴口の長辺部が遮蔽壁の内面と連続している
請求項2記載の洗浄用エアゾール製品。
【請求項4】
遮蔽壁の半径方向の長さが噴口の長辺部の長さの1.1倍以上である、請求項3記載の洗浄用エアゾール製品。
【請求項5】
前記噴射剤が炭酸ガスを含有する、請求項1~4いずれかに記載の洗浄用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアコンディショナ(以下、エアコンともいう)の室内機、とくに熱交換器、自動車などのタイヤ、塀、窓サッシなどの建物の屋外部分に洗剤や防黴剤、消臭剤を噴射するために用いる洗浄用エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンの室内機は内部にほこりが溜まりやすく、また、湿潤状態にあることが多いことから黴が発生しやすい。そのため、エアコン始動時や運転時に黴臭などの悪臭やほこりがいっしょに送風され、不快な思いをすることがある。しかしエアコンの室内機の熱交換器では、多数枚のフィンが狭い間隔で配列されており、一般の使用者が清掃や洗浄をするのは難しい。また、洗浄液をスプレーする洗浄用エアゾール製品も提案されているが、フィンの隙間の奥までスプレー成分を到達させることは難しい。
【0003】
特許文献1には、エアゾール製品の噴射力を49mN/5cm以上と強くすることを提案しており、それにより効率的にスプレー成分をエアコン内部まで到達させうるとしている。さらに噴射量を75~180g/30秒とすれば、熱交換器のアルミフィンへの噴射物の付着が適切になるとされている。
【0004】
特許文献2は、噴口を挟んだ対称位置に一対の突起を設けることにより、突起のない方向に噴射パターンが伸びるようにし、それにより得られる楕円状の噴射パターンで薬液を噴射する洗浄用エアゾール製品を開示している。このものはフィンの方向に楕円の長軸を合わせて噴射すると、薬液の跳ね返りが少なく、薬液をむらなく有効に噴射できるとされている。
【0005】
特許文献3は親水性付与成分、親水性有機溶剤、界面活性剤および水からなる原液と噴射剤を含有した熱交換フィンの洗浄用エアゾール組成物を開示しており、段落[0019]、実施例2、実施例3には、噴射剤として窒素や炭酸ガス等の圧縮ガスを使用することが記載されている。なお、特許文献1の段落[0058]や特許文献2の段落[0012]にも、噴射剤として圧縮ガスを用いることが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-060442号公報
【特許文献2】特開2006-021107号公報
【特許文献3】特開2001-296099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように噴射力を強くしたり噴射量を増やせば、洗浄力を向上させうることが予想される。しかしエアコンなどの洗浄では長時間連続で噴射するので、噴射剤として液化ガスを使用する場合は気化熱により容器内の内容物の温度が低下し、容器内の圧力(内圧)が低下して充分な噴射力、噴射量を確保できなくなる。噴射剤として圧縮ガスが列挙されているが、特許文献1で求める噴射量や噴射力で圧縮ガスを用いて、通常の仕様で噴射することは難しい。
【0008】
特許文献2のように噴口を挟んで突起を設けると、ある程度細長い噴射パターンが得られる。そのため長手方向をフィンの方向に合わせて狭いフィンの隙間に薬液を効率よく送り込むことができる。しかし特許文献2の図2のように、長径が短径の1.2倍程度では、細長の形状が不十分であり、長く噴射すると噴射途中で噴射物が拡がらずに棒状に変化する場合がある。特に、特許文献2のエアゾール製品では、圧縮ガスを噴射剤に用いると、特許文献2のような形状の噴口では、記載されているような噴射状態にすることは難しい。
【0009】
特許文献3には、窒素や炭酸ガスを噴射剤に用いた実施例2、3が開示されており、洗浄テストで好結果が得られたとしている。しかし洗浄テストでは流動パラフィンを塗布したアルミニウム板からなるサンプルに噴射するだけで、フィンに対する噴射状態や結果については記載されていない。
【0010】
本発明は、長時間使用しても洗浄効率が低下しにくい洗浄用エアゾール製品を提供することを課題としている。さらに本発明は、狭い隙間に効率よく噴射できる洗浄用エアゾール製品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の洗浄用エアゾール製品10は、有効成分を含有する原液および噴射剤からなる内容物Aが充填されたエアゾール容器11と、内容物Aを噴射するためにエアゾール容器11に取り付けられた噴射部材12とを備え、前記噴射剤が圧縮ガスであり、25℃における初期のエアゾール容器11内の圧力が0.5~0.9MPaとされ、噴射量が10~50g/10秒であり、噴射部材12が備える噴口16cから拡がる噴射角θ1が20~90度であり、噴口16cから5cmの距離における噴射力が50~300mNであることを特徴としている。
【0012】
このような洗浄用エアゾール製品10においては、前記噴射部材12が噴口16cの両側に一対の遮蔽壁16dを有し、遮蔽壁16d同士の間隔(B)が噴口16cの最大差し渡しdよりも小さいものが好ましい。前記噴口16cが略矩形状であり、噴口16cの長辺部16c2が遮蔽壁16dの内面16d1と連続しているものが好ましい。また、遮蔽壁16dの半径方向の長さ(L)が噴口16cの長辺部16c2の長さdの1.1倍以上であるものが好ましい。また、噴射剤が炭酸ガスを含有するものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄用エアゾール製品は、噴射剤として圧縮ガスを用いると共に、25℃における初期のエアゾール容器内の圧力を0.5~0.9MPaとし、噴射量を10~50g/10秒、噴口16cから拡がる噴射角θ1を20~90度としているので、噴射力を50~300mNに維持することができ、優れた洗浄効果が得られる。
【0014】
また、長時間噴射でも気化熱による内容物の温度低下が少なく、噴射力が低下して噴射途中で噴射物が拡がらずに棒状に変化することもない。そのため、連続して洗浄作業を続けることができ、とくにエアコン洗浄に適した噴射状態を使用中、常に保つことができる。さらに効率的にエアコン室内機の内部、とくにフィンの奥の方や、自動車のタイヤのトレッド溝の奥まで洗浄剤などのスプレー成分を届けることができる。
【0015】
このような洗浄用エアゾール製品において、前記噴射部材が、噴口の両側に一対の遮蔽壁を有し、遮蔽壁同士の間隔が噴口の最大差し渡しよりも小さい場合は、噴射剤として圧縮ガスを使用しているにもかかわらず、噴口から噴射された噴射物が一対の遮蔽壁によって遮られ、遮蔽壁と平行する方向に細長く、遮蔽壁と垂直に交差する方向に薄くすることができる。そのため、狭いフィンの隙間に対して効率よく洗浄液などを噴射することができる。
【0016】
前記噴口が略矩形状であり、噴口の長辺部が遮蔽壁の内面と連続している場合は、噴射物は遮蔽壁で大きな抵抗を受けずに噴射角を制御しやすく、噴射力を維持しやすい。
【0017】
遮蔽壁の半径方向の長さが噴口の長辺部の長さの1.1倍以上である場合は、内容物の噴射に伴いエアゾール容器内の圧力が低下しても、噴射角を調整しやすい。
【0018】
このような洗浄用エアゾール製品において、噴射剤が炭酸ガスを含有する場合は、噴射力を高めやすく、維持しやすい。その結果、噴射物の状態が安定しやすく、安定した洗浄効果が得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の洗浄用エアゾール製品の一実施形態を示す一部切り欠き側面図である。
図2図2A図1の噴射部材の側面図、図2Bは噴射ノズルの正面図、図2C図2BのX-X線断面図、図2D図2BのY-Y線断面図である。
図3図3Aは噴射ノズルの他の実施形態を示す先端側の正面図、図3B図3AのIIIb-IIIb線断面図、図3Cは斜視図、図3D図3AのIIId-IIId線断面図である。
図4】噴射ノズルと噴射パターンの関係を示す正面図。
図5】噴射ノズルと噴射パターンの関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す洗浄用エアゾール製品10は、内容物(エアゾール組成物)Aを充填したエアゾール容器11と、噴射操作を行う噴射部材12とを備えている。エアゾール容器11は、容器本体14とバルブ15とからなる。バルブ15のステム15aに前述の噴射部材12が取り付けられており、噴射部材12は内容物Aを噴射する噴射ノズル16を備えている。
【0021】
この洗浄用エアゾール製品10は、エアコンディショナ(エアコン)、自動車などのタイヤ、塀、窓サッシなどの洗浄の際に、洗浄剤や防黴剤などの有効成分を含む内容物Aを噴射するものであり、とくにエアコンの熱交換器のフィンの洗浄に好ましく使用される。この洗浄用エアゾール製品10では、エアゾール容器内の圧力(内圧)、噴射量、噴射物の拡がり(噴射角)を適切な範囲に規定して、噴射部材12から噴射される内容物A(噴射物)の適切な噴射状態を維持して、高い噴射力を維持し、安定した洗浄効果が得られる。
【0022】
本発明の洗浄用エアゾール製品10は、噴射力を50mN/5cm以上としており、とくに70mN/5cm以上とするのが好ましい。それにより噴射物が対象物に当たる力が適切になり、洗浄力を高めることができる。他方、噴射力は300mN/5cm以下としており、とくに250mN/5cm以下とするのが好ましい。それにより噴射物が洗浄個所を通り抜けたり、飛び散りにより噴射物を無駄にすることなく、洗浄性を向上させることができる。
【0023】
前記噴射力とは、本発明では、5cm離れたところから測定用のデジタルフォースゲージ(FGP-0.5:日本電産シンポ(株)製)に向かって内容物を直接噴射したときに、噴射物の中心軸の進行方向にかかる力を測定した値である。その値が100mNの場合は、本発明においては、100mN/5cmと記載している。
【0024】
噴射力の強さは、単位時間あたりの噴射量(時間当たりに流れる重量)、内圧、噴射角、噴射剤の種類により調整することができる。噴射量は、噴射ノズルの噴口やバルブのステム孔の径を大きくすると多くなり、小さくすると少なくなる。また、一定の範囲では内圧が高くなると噴射速度が速くなるので噴射量が多くなり、内圧が低くなると噴射量が少なくなる傾向がある。
【0025】
本発明の洗浄用エアゾール製品を噴射したときの噴射量は、10~50g/10秒としており、とくに15~45g/10秒とするのが好ましい。該噴射量が10g/10秒未満になると、噴射力が低下し、充分な洗浄効果が得られにくくなる傾向があり、50g/10秒を超えると、噴射物がフィンの隙間などの洗浄箇所を通り抜けやすく、または洗浄個所から飛び散りやすく、洗浄効率が悪くなりやすい。
【0026】
前記噴射量は、未使用の洗浄用エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に30分間浸漬して内容物の温度を25℃に調整し、噴射ボタンを押し下げて10秒間噴射させ、(噴射前の重量-噴射後の重量)を測定することにより求めることができる。
【0027】
前記内容物Aは原液と噴射剤とからなり、有効成分や任意の添加成分は、通常、原液に溶剤と共に含まれる。
【0028】
前記溶剤は、前記有効成分や添加成分を溶解または乳化・分散させるために使用される。溶剤が洗浄性を有する場合には、溶剤兼洗浄剤として使用される。
【0029】
前記溶剤としては、使用時に消費者に有害、危険などがなく、洗浄対象物を劣化しない溶剤である限りとくに限定なく使用し得る。
【0030】
前記溶剤の具体例としては、たとえば精製水、イオン交換水、水道水などの水;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、ケロシン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロオレフィンなどのハイドロフルオロオレフィンなど、各種有機溶剤があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
前記溶剤の含有量は、原液中80~99.9質量%、さらには85~99.8質量%であることが好ましい。
【0032】
前記有効成分としては、たとえば、洗浄剤があげられ、さらに添加成分としては、防黴剤、消臭剤、防錆剤、pH調整剤、香料などがあげられる。
【0033】
前記洗浄剤は、エアコン内部などに付着した汚れ、黴などを洗浄するために用いられる。通常の洗浄剤と異なる点は、内容物がアルミフィンなどに大きな噴射力で噴射され、噴射物の衝突で汚れを落とす効果を向上させること、泡の発生が少なく、短時間で消泡して汚れと接触させて流れ落ちやすくすること、エアコンの後洗浄が不要または容易なことなどが好ましいことである。
【0034】
前記洗浄剤としては、たとえば、界面活性剤が用いられる。前記界面活性剤は、噴射物の洗浄対象物へのなじみをよくする、油汚れを除去しやすくするなどのために使用される成分である。
【0035】
前記界面活性剤としては、たとえば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩などのアニオン界面活性剤;脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などのカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体および硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、シリコーンポリエーテルコポリマーなどのノニオン界面活性剤などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
前記界面活性剤の含有量は、原液中0.01~15質量%、さらには0.05~10質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の含有量が0.01質量%よりも少ない場合は洗浄効果が得られにくくなる傾向があり、15質量%を超える場合は洗浄対象物上に残留しやすく、洗浄後に埃などが付着しやすくなる傾向がある。
【0037】
前記防黴剤としては、たとえば、ベンズイソチアゾリン-3-オン化合物、2-メチルベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチルベンズイソチアゾリン-3-オン、N-エチル、N-n-プロピル、N-n-ペンチル、N-n-ヘキシル、N-シクロプロピル、N-イソブチルベンズイソチアゾリン-3-オンおよび1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンなどがあげられる。
【0038】
前記消臭剤としては、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどがあげられる。
【0039】
前記防錆剤としては、たとえばクエン酸三ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどがあげられる。
【0040】
前記pH調整剤としては、たとえばクエン酸、クエン酸三ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸一水素カリウム(KHPO)などがあげられる。
【0041】
前記香料としては、たとえば、天然香料、合成香料などがあげられる。
【0042】
前記添加成分の含有量は、通常使用される使用割合を参考にして適宜設定すればよい。
【0043】
前記原液は、充填される内容物(原液および噴射剤からなる洗浄用エアゾール組成物)全量に対して90~99.9質量%、さらには92~99.8質量%であることが好ましい。原液の含有量が90質量%よりも少ない場合は圧縮ガスの充填割合が多くなりすぎ、内圧が高く、洗浄対象物上で飛び散りやすく、洗浄効率が低下しやすい傾向があり、99.9質量%を超える場合は圧縮ガスの充填割合が少なくなりすぎ、原液に溶解する圧縮ガスが少なく、噴射力が弱くなりやすく、洗浄効果が充分に得られない傾向がある。
【0044】
前記噴射剤としては、圧縮ガスが使用される。たとえば、窒素ガス、炭酸ガス、圧縮空気、亜酸化窒素、これらの混合ガスなどがあげられる。特に炭酸ガスを含有する場合は、原液に溶解しやすく、後述する噴射ノズルにて内容物が空になるまで噴射物が拡がりやすく、高い噴射力が得られやすい。
【0045】
前記噴射剤は、充填される内容物全量に対して0.1~10質量%、さらには0.2~8質量%であることが好ましい。噴射剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は内圧が低く、原液に溶解する圧縮ガスが少なく、噴射力が弱くなりやすい傾向があり、10質量%を超える場合は内圧が高くなりすぎ、洗浄対象物上で飛び散りやすく、洗浄効率が低下しやすい傾向がある。
【0046】
前記原液および噴射剤を充填した後の初期のエアゾール容器の圧力(内圧)は0.5~0.9MPa(25℃)、さらには0.55~0.85MPaであることが好ましい。内圧が0.5MPaよりも低い場合は噴射力が弱くなり洗浄効果が充分に得られない傾向があり、0.9MPaを超える場合は噴射力が高くなりすぎ、噴射物が飛び散りやすく、洗浄効率が低くなりやすい傾向がある。
【0047】
図1に戻って、容器本体14は、底部14aと、胴部14bと、目金部(肩部、ドーム部)14cとからなる。胴部14bの上端に目金部14cの周囲部が巻き締められ、胴部14bの下端に底部14aの周囲部が巻き締められている。それらの2部品あるいは全体を一体に成形することもできる。また、目金部14cの上端開口の周囲のビード部14dにバルブ15のマウンティングカップ15bがクリンチされている。バルブ15はハウジング15cと、前述のステム15aと、ステム15aを上向きに付勢するバネと、ステム15aのステム孔を塞ぎ、操作のときにステム孔をあけるステムラバーを有する押し下げ開閉タイプの公知のバルブである。傾動操作タイプなど、他のタイプのバルブを用いることもできる。
【0048】
図2Aに示すように、噴射ノズル16はスペーサ17を介して本体12aに取り付けられている。本体12aの前面に設けられる凹部12bにスペーサ17が取り付けられ、スペーサ17の前面の凹部17aに噴射ノズル16が取り付けられている。本体12aの下端にはステム連結部12cが設けられ、ステム連結部12cと噴射ノズル16は内部通路12d、17bを介して連通している。
【0049】
図2B図2Cに示すように、噴射ノズル16は略円柱状で、内部に円柱状の空洞からなる通路16aが形成されている。通路16aの先端側16bは円錐状とされ、先端の噴口16cを介して外部と連通している。この実施形態では噴口16cは貫通孔16c1の先端開口であり、内径(噴口の最大差し渡しd)は0.5~1.5mm、好ましくは0.6~1.0mmである。貫通孔16c1は円筒状であり、長さL1は0.1~5mm、さらには0.2~2mm程度が好ましい。通路16aの内径d1は2.0~4.0mmである。
【0050】
噴射ノズル16の外面の前端には、噴口16cを挟んで両側に、噴射物の拡がりを制御するための一対の遮蔽壁16dが設けられている。遮蔽壁16dの内面16d1同士は略平行であり、噴射ノズル16の前面16eに対して略直角である。前側に向かっていくらか広がっていてもよい。図2B図2Dに示すように、一対の遮蔽壁16dにより、それらの間に噴射ノズル16の半径方向に延びる断面矩形の溝16fが形成される。前記噴口16cは溝16fの底16gで開口している。
【0051】
溝16fの内幅B(遮蔽壁同士の間隔)は噴口16cの最大差し渡しdよりも小さく、そのため、噴口16cは、図2Bに示すように正面から見ると略矩形状(トラック形状)となっている。なお、この実施形態では最大差し渡しdは矩形の長辺部16c2の長さよりも長い。溝16fの内幅B、すなわち短辺部16c3の長さは噴口16cの最大差し渡しdの15~80%、さらには20~70%とするのが好ましい。この噴口16cの長辺部16c2は遮蔽壁16dの内面16d1と連続しており、この噴口16cから噴射される内容物Aは最初から一対の遮蔽壁16dの内面16d1に沿って噴射されるため、遮蔽壁16dで大きな抵抗を受けずに縦長(遮蔽壁16dの内面と平行する方向)の噴射パターンに制御しやすく、噴射力を維持しやすい。
【0052】
溝16fの長さL(この実施形態では噴射ノズル16の外径(遮蔽壁の半径方向の長さD)と略同一)は噴口16cの長辺部16c2の長さの1.1倍以上、特に1.5倍以上であることが好ましい。この場合、内容物の噴射に伴いエアゾール容器内の圧力が低下しても、噴射角を調整しやすい。
【0053】
なお、溝16fの内幅Bは0.1~1.2mm、好ましくは0.15~0.7mmであり、深さDp(この実施形態では噴射方向の長さDp)は0.2~2mm、好ましくは0.3~1.5mmである。また、深さDpは内幅Bの1.5~3倍程度とするのが好ましい。
【0054】
噴口16cから噴射される噴射物の噴射角θ1は、内圧、噴射量、内容物A(原液)の粘度、圧縮ガスの種類などにより調整することができる。なお噴射角θ1は、噴口16c表面の中心を原点とし、遮蔽壁16dの内面と平行する方向に拡がる噴射物の角度をいう。噴射剤として圧縮ガスを使用しているため、遮蔽壁16dがない場合はほとんど拡がらずに棒状となるが、遮蔽壁16により拡げられて噴射角が20~90度になるのが好ましい。噴射角θ1が20度より小さい場合は噴射物が洗浄対象物を突き抜けやすく洗浄効率が低くなりやすく、洗浄対象物全体の洗浄に手間がかかる。噴射角θ1が90度より大きい場合は、噴射力が小さくなり、洗浄効果が充分に得られにくくなる傾向がある。
【0055】
なお、噴口16cから5cm離れた位置における遮蔽壁16dの内面と平行する方向に拡がる噴射パターンPの長さが20~100mmとなるのが好ましい。その場合、噴射パターンPは、幅Bpが長さの20~60%程度となるように、扁平になるのが好ましい。噴射剤として圧縮ガスを使用しているため噴射に伴い内容物が減少し内圧が徐々に低下するが、噴射ノズル16を使用することにより最後まで噴射物の噴射角を制御し、洗浄に適した噴射力を維持しやすく、洗浄しやすい。
【0056】
図3Aの噴射ノズル16Aでは、略矩形状(長方形状)の噴口16cの両側に一対の遮蔽壁16d2を設けている。この実施形態では、遮蔽壁16d2の外径Lは噴射ノズル16Aの外径Dより小さくしているので、噴射ノズル16Aの前面から突起(遮蔽壁部)が突出していると見ることもできる。遮蔽壁16d2の内面16d3同士の間隔Bは噴口16cの短辺部16c3の長さと同じであり、噴口16cの長辺部16c2の長さより小さい。また、遮蔽壁16d2は外径(遮蔽壁の長さL)を噴射ノズル16Aの外径Dよりも小さくしているため、噴口16cの長辺部16c2の長さに対する遮蔽壁16d2の半径方向の長さLを調整することができる。この場合でも図3B図3Dに示すように、噴口16cから噴射される内容物Aは一対の遮蔽壁16d2の内面16d3によって遮られ、遮蔽壁16d2に沿って拡がる縦長の噴射パターンPとなる(図4図5参照)。なお、遮蔽壁16d2がないときは、噴口16cから噴射される内容物Aは拡がりが小さく棒状になり、対象物に対して小さな円形に噴射される(図4の想像線P1参照)。
【0057】
図2A~Dの噴射ノズル16および図3A~Dの噴射ノズル16Aでは、噴口16cの両側に一対の遮蔽壁16d、16d2が立ち上がっているので、噴射物は遮蔽壁16d、16d2によって遮られ、遮蔽壁16d、16d2がない側、すなわち溝16fが延びている側に多く噴射される。そのため、噴射物の噴射パターンは、図3D図4のような、溝16f、すなわち遮蔽壁16d、16d2の内面16d1、16d3と並行する方向に細長く伸びる扁平な楕円錐状に拡がるパターンPとなる。他方、遮蔽壁16d、16d2に遮られる方向へは、図3Cのθ2のように狭い範囲しか広がらない。
【0058】
上記のように、噴射される内容物が縦長であるので、図5に示すようにエアコンの熱交換器のフィンFが伸びている向きに噴射物の噴射パターンPの長手方向を合わせることにより、前述の噴射力および噴射量と相まって、フィンFの隙間の面に対して内容物Aを効率よく付着させることができ、洗浄効果が高くなる。
【実施例0059】
以下に、本発明の洗浄用エアゾール製品を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
表1記載の原液と、噴射剤として炭酸ガスとをエアゾール容器(バルブ:ステム孔径0.5mm、ハウジングの下孔径2.0mm、ベーパータップ無し)に充填してエアコン洗浄用エアゾール製品を製造した。エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間浸漬して内容物の温度を25℃に調整し、初期のエアゾール容器内の圧力を測定した。そして、表2記載の噴射ノズル1を用いて内容物を噴射し、そのときの噴射量、噴射力、噴射角を測定した。ここで、噴射角は噴射ノズルの水平方向から、噴射物の状態を撮影し、噴口を原点として噴射物の拡がり角度を測定することで求めた。結果を表3に示す。
【0061】
【表1】
*1:Tl-10、日光ケミカルズ株式会社製
*2:SLS、日光ケミカルズ株式会社製
【0062】
【表2】
【0063】
[実施例2、3]
実施例2、3は、実施例1と同じ洗浄用エアゾール製品を製造し、表2に示す噴射ノズル2、3を用いて、噴射量、噴射力、噴射角を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同じ洗浄用エアゾール製品を製造し、表2に示す噴射ノズル4(特許文献2記載の噴射ノズルに相当)を用いて、噴射量、噴射力、噴射角を測定した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示すように実施例1~実施例3の洗浄用エアゾール製品は、初期はいずれも噴射量が10g/10秒以上、噴射力が50mN/5cm以上、噴射角が20度以上であり、中期から終期にかけても噴射物は拡がっており、遮蔽壁の効果によってエアコン洗浄に適した噴射状態となった。他方、特許文献2に相当する噴射ノズル4を使用した比較例1は、初期から終期までほとんど棒状で噴射されており、エアコン洗浄には適さない噴射状態となった。
【0067】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、図3A~Dの円柱状の遮蔽壁部を四角柱状にしてもよい。また、図3A~Dの噴射ノズルにおいても、図2Aと同様の貫通孔16c1を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 洗浄用エアゾール製品
A 内容物(噴射物)
11 エアゾール容器
12 噴射部材
12a 本体
12b 凹部
12c ステム連結部
12d 内部通路
14 容器本体
14a 底部
14b 胴部
14c 目金部
14d ビード部
15 バルブ
15a ステム
15b マウンティングカップ
15c ハウジング
16、16A 噴射ノズル
16a 通路
16b 先端側
16c 噴口
16c1 貫通孔
16c2 長辺部
16c3 短辺部
16d、16d2 遮蔽壁
16d1、16d3 遮蔽壁の内面
16e 噴射ノズルの前面
16f 溝
16g 底
D 噴射ノズルの外径
L 溝の長さ(遮蔽壁の長さ)
d1 通路の内径
B 溝の内幅
Dp 溝の深さ
d 噴口の最大差し渡しの長さ
L1 貫通孔の長さ
17 スペーサ
17a 凹部
17b 内部通路
F フィン
P 縦長の噴射パターン
P1 円形の噴射パターン
θ1 長手方向の噴射角度
θ2 制限された噴射角度
Bp 噴射パターンの幅
図1
図2
図3
図4
図5