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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018737
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】アオリ水平保持器具
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/027 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B62D33/027 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122265
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】399051700
【氏名又は名称】東電物流株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518198130
【氏名又は名称】株式会社石渡運輸
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】草薙 正人
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝男
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く、かつ効率よく軽量化を図ることができるアオリ水平保持器具を提供する。
【解決手段】荷台3のアオリ5と車体部品8との間に架け渡されてアオリ5を水平状態に保持するアオリ水平保持器具10において、繊維ベルトで形成され、器具長さ方向で順に連結される複数の繊維スリング20(車体側スリング21およびアオリ側スリング25)と、器具長さ方向で隣り合う車体側スリング21およびアオリ側スリング25とを互いに連結する中間連結構造30と、を備え、中間連結構造30は、前記繊維ベルトよりも器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い第一環部材31および第二環部材32を備え、第一環部材31および第二環部材32を介して、車体側スリング21とアオリ側スリング25とが互いに連結されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台のアオリと車体部品との間に架け渡され、前記アオリを水平状態に保持するアオリ水平保持器具において、
繊維ベルトで形成され、器具長さ方向で順に連結される複数の繊維スリングと、
前記複数の繊維スリングの内、前記器具長さ方向で隣り合う第一スリングと第二スリングとを互いに連結する連結構造と、を備え、
前記連結構造は、前記繊維ベルトよりも前記器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い環部材を備え、前記環部材を介して、前記第一スリングと前記第二スリングとが互いに連結されているアオリ水平保持器具。
【請求項2】
前記連結構造は、複数の環部材を備え、前記複数の環部材は、前記器具長さ方向で鎖状に繋がれている請求項1に記載のアオリ水平保持器具。
【請求項3】
前記連結構造は、一対の環部材で構成されている請求項2に記載のアオリ水平保持器具。
【請求項4】
前記複数の繊維スリングは、一対の前記第一スリングおよび前記第二スリングで構成されている請求項3に記載のアオリ水平保持器具。
【請求項5】
前記第一スリングおよび前記第二スリングの各々は、前記器具長さ方向両端部の環状部が互いに同一方向に開口している請求項4に記載のアオリ水平保持器具。
【請求項6】
前記器具長さ方向の両端部の少なくとも一方に、前記繊維ベルトよりも前記器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い端部環部材を備え、
前記端部環部材は、前記車体部品に備える車体側フックまたは前記アオリに備えるアオリ側フックに掛けられる請求項1に記載のアオリ水平保持器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アオリ水平保持器具に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやトレーラ等の荷台(平ボディ)には、荷台床面の外周を囲むアオリが設けられている。アオリは、荷台外周の床枠にヒンジ(蝶番)を介して回動可能に支持されている。アオリは、上向きに起立した上向き状態から下向きに垂下した下向き状態まで180°回動可能である。アオリを下向き状態とすることで、荷台床面の周囲が開放され、荷台への荷物の積み下ろしが容易になる。
ところで、荷物がアオリ近くまで積載されると、荷台上の作業者の足場は床枠部分に僅かに残るのみとなり、荷物の固縛およびシート掛け等の作業がし難くなる。そこで、アオリを一時的な足場として利用するべく、アオリを水平状態で保持する手法が提案されている。
例えば、特許文献1には、水平状態となって荷台の側方に張り出したアオリと、荷台前端の衝立(鳥居)等の車体部品と、の間にチェーンを架設し、チェーンの張力でアオリを水平状態に保持するアオリ水平保持器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-162940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、車体部品に備える既存のアオリロック金具を利用して、チェーン一端側の板部材を車体部品に固定し、チェーン他端側は、アオリに形成した開口を利用してアオリに巻き掛けることで、アオリの保持角度を調整可能としている。
しかし、上記従来の技術では、既存のアオリロック金具を利用するものの、アオリに開口を形成する改造が必要になり、汎用性の面で課題がある。また、チェーンをアオリに巻き掛けることから、チェーンを長く設ける必要があり、重量を増加させるという課題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、汎用性が高く、かつ効率よく軽量化を図ることができるアオリ水平保持器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、荷台のアオリと車体部品との間に架け渡され、前記アオリを水平状態に保持するアオリ水平保持器具において、繊維ベルトで形成され、器具長さ方向で順に連結される複数の繊維スリングと、前記複数の繊維スリングの内、前記器具長さ方向で隣り合う第一スリングと第二スリングとを互いに連結する連結構造と、を備え、前記連結構造は、前記繊維ベルトよりも前記器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い環部材を備え、前記環部材を介して、前記第一スリングと前記第二スリングとが互いに連結されている。
【0007】
この構成によれば、車体とアオリとの間に架け渡されるアオリ水平保持器具が、複数の繊維スリングを備えて構成されることで、繊維スリングの端部をアオリロック金具等のフックに直接または間接的に掛けるのみで、車体とアオリとの間に架け渡すことができる。したがって、車両側の加工が不要となり、汎用性を高めることができる。また、アオリ水平保持器具の全体が金属製のチェーン、ワイヤー等で構成される場合と比べて、軽量化を図るとともに周辺への傷つきも抑え、作業性がよく扱いやすいアオリ水平保持器具を提供することができる。
【0008】
一方、複数の繊維スリング間の連結構造に金属製の環部材を備えることで、環部材が錘となって強風等によるアオリ水平保持器具のバタつきを抑え、アオリを安定して水平状態に保持することができる。また、複数の繊維スリング間を連結する環部材を錘とすることで、単に錘を設置する場合に比べて、複数の繊維スリングの少なくとも一つの長さを抑え、アオリ水平保持器具のバタつきを効率よく抑えることができる。また、複数の繊維スリング間を金属製の環部材を介して連結することで、繊維スリング同士を直接連結する場合に比べて、連結構造における摩擦を抑え、複数の繊維スリングの相対揺動をしやすくする。これにより、アオリ水平保持器具のバタつきを効率よく抑えるとともに折り畳みを容易にすることができる。
【0009】
本発明の第二の態様は、第一の態様において、前記連結構造は、複数の環部材を備え、前記複数の環部材は、前記器具長さ方向で鎖状に繋がれている。
【0010】
この構成によれば、複数の環部材同士が鎖状に繋がって自在に揺動することで、複数の繊維スリングの相対揺動をより一層しやすくし、アオリ水平保持器具のバタつきを効率よく抑えることができる。また、アオリ水平保持器具の器具長さ方向の中間部(中央部に限らない)が揺動自在となるので、強風等によるアオリ水平保持器具のバタつきが器具長さ方向で伝わり難くなり、アオリ水平保持器具の端部の外れを抑制することができる。また、複数の環部材によって連結構造が十分な錘となり、アオリ水平保持器具のバタつきを効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第三の態様は、第二の態様において、前記連結構造は、一対の環部材で構成されている。
【0012】
この構成によれば、環部材が単一である場合に比べて、錘としての重量を確保するとともに連結構造を揺動自在とすることができる。また、環部材が三つ以上である場合に比べて、部品点数および重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0013】
本発明の第四の態様は、第三の態様において、前記複数の繊維スリングは、一対の前記第一スリングおよび前記第二スリングで構成されている。
【0014】
この構成によれば、複数の繊維スリングとして一対の繊維スリングを備えることで、部品点数の増加を抑えるとともに、アオリ水平保持器具の器具長さ方向の中央近傍に連結構造を配置可能となり、アオリ水平保持器具のバタつきを効果的に抑えることができる。
また、第一スリングおよび第二スリングが二連リングで連結されることで、第一スリングおよび第二スリングが本体部(ベルト部)の厚さ方向を互いに直交させて配置される。これにより、アオリ水平保持器具全体が一方向からの風を受けたときに、第一スリングおよび第二スリングが同時にベルト幅全体で風を受けることがなく、アオリ水平保持器具全体のバタつきを抑えることができる。
【0015】
本発明の第五の態様は、第四の態様において、前記第一スリングおよび前記第二スリングの各々は、前記器具長さ方向両端部の環状部が互いに同一方向に開口している。
【0016】
この構成によれば、各繊維スリングにおいて、器具長さ方向両端部の環状部が互いに同一方向に開口することで、連結構造が二連リングで構成されることと相まって、第一スリングおよび第二スリングの捩れを抑えることができる。
【0017】
すなわち、アオリ水平保持器具の器具長さ方向一端部(車体側の端部)は、一般に上方に屈曲する車体側フックに掛けられる。このため、第一スリングの器具長さ方向一端部(環状部)は開口を上下方向に向ける。このとき、第一スリングに捩れがなければ、第一スリングの器具長さ方向他端部(環状部)も開口を上下方向に向ける。
第一スリングの器具長さ方向他端部に二連リングを介して第二スリングの器具長さ方向一端部を連結すると、第二スリングの器具長さ方向一端部(環状部)は開口を前後方向(水平方向)に向ける。このとき、第二スリングに捩れがなければ、第二スリングの器具長さ方向他端部(環状部)も開口を前後方向(水平方向)に向ける。
【0018】
アオリ側フックは、一般にアオリの端部から回動軸方向(水平方向)に突出しており、このアオリ側フックに第二スリングを捩ることなく器具長さ方向他端部を直接掛けることが可能となる。このとき、各繊維スリングに捩れを生じさせることなく、アオリ水平保持器具の器具長さ方向両端部を車体およびアオリにそれぞれ係止することができる。
これにより、各繊維スリングの捩れによるストレス(負荷)を軽減した上で、アオリを水平状態に吊り下げることができる。
【0019】
本発明の第六の態様は、第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記器具長さ方向の両端部の少なくとも一方に、前記繊維ベルトよりも前記器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い端部環部材を備え、前記端部環部材は、前記車体部品に備える車体側フックまたは前記アオリに備えるアオリ側フックに掛けられる。
【0020】
この構成によれば、アオリ水平保持器具の端部に備える重量のある端部環部材が、車体側フックおよびアオリ側フックの内の対応するものに掛けられることで、端部環部材を錘として利用し、アオリ水平保持器具の外れを抑制することができる。
特に、アオリ水平保持器具の上端部(車体側の端部)に端部環部材を設け、この端部環部材を上方に屈曲する車体側フックに掛けることで、端部環部材を錘として利用し、アオリ水平保持器具の上端部が車体側フックから外れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、汎用性が高く、かつ効率よく軽量化を図ることができるアオリ水平保持器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における車両の斜視図である。
図2】上記車両の荷台後部にアオリ水平保持器具を取り付けた状態の斜視図である。
図3】上記車両の荷台後部からアオリ水平方向を外した状態の斜視図である。
図4】上記アオリ水平保持器具の中間連結構造の変形例を示す斜視図である。
図5】上記アオリ水平保持器具の車体側係止構造の変形例を示す斜視図であり、(a)は単一の環部材を介して係止するもの、(b)は環部材を介さず直接係止するものをそれぞれ示す。
図6】上記アオリ水平保持器具のアオリ側係止構造の変形例を示す斜視図であり、(a)は単一の環部材を介して係止するもの、(b)は一対の環部材を介して係止するものをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両(トラック)における向きと同一とする。本実施形態で用いる「中間」とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意とする。
【0024】
<車両>
図1に示す車両1はトラック(貨物自動車)であり、運転者等が乗るキャブ2の後方に荷台(平ボディ)3を備えている。荷台3における水平な床面4の左右側方および後方には、立板としてのアオリ5が設けられている。アオリ5は、荷台3の左右側縁に沿って設けられる左右一対の側アオリ5aと、荷台3の後縁に沿って設けられる後アオリ5bと、を備えている。荷台3の前端部には、垂直に起立した前端衝立(鳥居)6が設けられている。例えば、荷台3の後端部の左右両側には、垂直に起立した後端支柱7が着脱可能に設けられている。
【0025】
図2図3を併せて参照し、側アオリ5aは、下端が床枠の左右側部にヒンジ(蝶番)を介して回動可能に支持されている。側アオリ5aは、前後方向に沿うヒンジ軸C1を中心に回動し、荷台3の床面4に対して垂直に起立した上向き状態(閉状態、図3に実線で示す)から下向き状態(開状態、不図示)まで180°回動可能である。
後アオリ5bは、下端が床枠の後部にヒンジ(蝶番)を介して回動可能に支持されている。後アオリ5bは、左右方向に沿うヒンジ軸C2を中心に回動し、荷台3の床面4に対して垂直に起立した上向き状態(閉状態、図示状態)から下向き状態(開状態、不図示)まで180°回動可能である。
【0026】
図2を参照し、側アオリ5aは、上向き状態から90°回動した水平状態において、実施形態のアオリ水平保持器具10を用いて吊り下げ可能である。側アオリ5aは、前記水平状態でアオリ水平保持器具10によって吊り下げられ、下向きへの回動が規制された状態に保持可能である。実施形態では、アオリ水平保持器具10を側アオリ5aに用いた例を説明する。実施形態のアオリ水平保持器具10の構成は、後アオリ5bを水平状態に保持するアオリ水平保持器具にも適用可能であるが、その詳細説明は省略する。
【0027】
実施形態のアオリ水平保持器具10は、側アオリ5aと車体部品8(前端衝立6等)との間に架け渡されて、側アオリ5aを水平状態に保持する。例えば、側アオリ5aは、前後一対のアオリ水平保持器具10を用いて水平状態に保持される。
前側のアオリ水平保持器具10は、水平状態の側アオリ5aの前端部と前端衝立6の左右側部との間に、前後方向から見て斜めに架け渡される。後側のアオリ水平保持器具10は、水平状態の側アオリ5aの後端部と後端支柱7との間に、前後方向から見て斜めに架け渡される。
前後のアオリ水平保持器具10により、水平状態に開いた側アオリ5aの回動が規制され、側アオリ5aが作業者の足場として利用可能となる。これにより、荷台3上の荷物の固縛およびシート掛け等の作業がしやすくなる。
【0028】
後側のアオリ水平保持器具10を掛ける車体部品8として、後端支柱7を例示したが、後端支柱7に代わり、回動をロックされた後アオリ5bの左右端部を車体部品8として利用してもよい。また、後アオリ5bを水平状態に保持する際には、後端支柱7に代わり、回動をロックされた側アオリ5aの後端部を車体部品8として利用してもよい。
【0029】
車体部品8には、側アオリ5aの回動を固定(回動ロック)するためのアオリロック金具11が備えられている。アオリロック金具11は、車体部品8に固定されるL字形状の車体側フック12と、車体側フック12の下方で上下方向に延びる操作レバー13と、操作レバー13の上下中間部に連結される係止部14と、を備えている。
【0030】
車体側フック12は、車体部品8から左右外側に突出した後に上方に屈曲して延びている。操作レバー13は、上端部が前後方向に沿う回動軸C3を介して車体部品8に回動可能に支持されている。係止部14は、基端部が操作レバー13の上下中間部に回動軸C3と平行な連結軸C4を介して回動可能に支持されている。係止部14は、先端側が車体側フック12に引っ掛け可能なループ状をなしている。
【0031】
図3を参照し、係止部14は、先端側を車体側フック12に上方から引っ掛けることで、車体側フック12への係止状態となる。係止部14とレバー部との間には、バネ構造が構成されている。係止部14が車体側フック12への係止状態にあるとき、操作レバー13を下方に回動させることで、係止部14が前記バネ構造の付勢力で下方に引き込まれ、係止部14が係止状態に保持される。このとき、上向き状態の側アオリ5aのアオリ側フック15が、係止部14と車体側フック12との間に挟み込まれることで、上向き状態の側アオリ5aの回動がロックされる。
【0032】
上記のように側アオリ5aの回動がロックされた状態から、操作レバー13を上方に回動させることで、側アオリ5aの回動ロックが解除される。すなわち、係止部14の下方への引き込みが解除される。その後、係止部14を車体側フック12への係止位置から退避させることで、アオリ側フック15が車体側フック12から退避可能となり、上向き状態の側アオリ5aを下方に向けて回動可能となる。
【0033】
アオリ側フック15は、例えば側アオリ5aと平行な板部材からなり、平面視でU字状の切り欠きを形成したフック状をなしている。アオリ側フック15は、側アオリ5aと一体をなし、側アオリ5aの前後端部から前方又は後方に突出している。アオリ側フック15は、側アオリ5aを立てた上向き状態において、前記切り欠き内に車体側フック12を入り込ませるように配置されている。側アオリ5aの上向き状態において、アオリ側フック15における上方に開放する前記切り欠き内に車体側フック12が配置される。このとき、車体側フック12は、アオリ側フック15よりも左右外側に突出し、係止部14を引っ掛けることが可能である。
実施形態のアオリロック金具11およびアオリ側フック15は、トラック等で一般に用いられる既存品を使用することが可能であり、本発明の適用を容易にしている。
【0034】
<アオリ水平保持器具>
図2に示すように、実施形態のアオリ水平保持器具10は、車体部品8と側アオリ5aとの間に架け渡され、側アオリ5aを水平状態に保持する。アオリ水平保持器具10は、車体部品8の係止部(車体側フック12)と水平状態の側アオリ5aの係止部(アオリ側フック15)との間に渡って、前後方向から見て斜めに延びるように架け渡される。このとき、アオリ水平保持器具10は、左右方向外側ほど下方に位置するように傾斜して延びる。以下、特に記載がなければ、アオリ水平保持器具10を延ばした状態(車体部品8および側アオリ5aに架け渡した状態)を想定して説明する。アオリ水平保持器具10を延ばした状態の長さ方向を「器具長さ方向」という。また、前後方向から見て器具長さ方向と直交する上下方向を「架設時上下方向」(図中矢印F1参照)という。
【0035】
ここで、実施形態の「水平状態」とは、重力方向(鉛直方向)に垂直な水平状態に限らず、荷台3の床面4と平行な状態であればよい。したがって、地面の傾斜等によって車両1が傾斜している場合には、アオリ5が重力方向に垂直な状態でなくても「水平状態」という。
【0036】
アオリ水平保持器具10は、一対の繊維スリング20と、中間連結構造30と、一対の端部係止構造40と、を備えている。
アオリ水平保持器具10は、一対の繊維スリング20として、車両1への架設時に器具長さ方向で車体側に位置する車体側スリング21と、車両1への架設時に器具長さ方向でアオリ5側に位置するアオリ側スリング25と、を備えている。アオリ水平保持器具10は、器具長さ方向で車体側スリング21とアオリ側スリング25とに分割されている。実施形態において、車体側スリング21とアオリ側スリング25とは、後述する第二アイ部24,28を除き、互いに同一構成であり、部品の製造を容易にしている。車体側スリング21とアオリ側スリング25とは、互いに同一の構成に限らず、互いに長さが異なる等、必要に応じて互いに異なる構成としてもよい。
【0037】
実施形態のアオリ水平保持器具10は、金属製の鎖やワイヤーに比べて、軽量でかつ相手の傷つきを抑えた繊維スリング20で構成されている。したがって、アオリ水平保持器具10は、アオリ5を吊り下げる際の作業性がよく、かつ取り扱いもしやすい。以下、器具長さ方向で車体側スリング21が位置する側を一側、アオリ側スリング25が位置する側を他側、という。
【0038】
<車体側スリング>
車体側スリング21は、器具長さ方向に沿って延びている。車体側スリング21は、例えばナイロン製、ポリエステル製の繊維ベルトで構成されている。車体側スリング21は、器具長さ方向に延びるベルト状の本体部22と、本体部22の器具長さ方向両端部にそれぞれ設けられるループ状のアイ部23,24と、を備えている。車体側スリング21の両端部のアイ部23,24の内、器具長さ方向で車体側に位置するものを第一アイ部23、器具長さ方向でアオリ5側に位置するものを第二アイ部24という。
【0039】
第一アイ部23および第二アイ部24の各々は、例えば繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すのみで形成され、車体側スリング21の製造を容易にしている。第一アイ部23および第二アイ部24の少なくとも一方は、繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すとともにベルト幅方向でも折り返して二重の厚さに形成されてもよく、さらに保護布が装着されてもよい(アオリ側スリング25のアオリ5側の第二アイ部28を参照)。
【0040】
車体側スリング21の両端部のアイ部23,24は、本体部22に捩れがない状態で、それぞれ開口方向をベルト幅方向(図2では矢印F1方向に相当)に向けている。
アイ部において繊維ベルトをベルト幅方向で折り返すか否かは、繋ぐあるいは掛ける相手の形状に応じて決定してもよい。例えば、アイ部を後述する環部材31,32等に繋ぐ場合、環部材の内径がベルト幅の1.5倍を超えるほど大きければ、繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すのみとし、アイ部をベルト幅方向で狭めることをしない。環部材の内径が小さければ、繊維ベルトをベルト幅方向で折り返し、アイ部をベルト幅方向で狭める。
【0041】
車体側スリング21の器具長さ方向一側(車体側)の端部には、車体側フック12に掛けられる車体側係止部が設けられている。車体側係止部は、後述する車体側係止構造41で構成されている。換言すれば、車体側係止部は、車体側スリング21の器具長さ方向一側の端部に間接的に設けられている。
なお、車体側係止部が車体側スリング21の器具長さ方向一側の端部に直接的に設けられる構成(例えば第一アイ部23が車体側フック12に直接掛けられる構成、図5(b)参照)もあり得る。
【0042】
<アオリ側スリング>
アオリ側スリング25は、器具長さ方向に沿って延びている。アオリ側スリング25は、例えばナイロン製、ポリエステル製の繊維ベルトで構成されている。アオリ側スリング25は、器具長さ方向に延びるベルト状の本体部26と、本体部26の器具長さ方向両端部にそれぞれ設けられるループ状のアイ部27,28と、を備えている。アオリ側スリング25の両端部のアイ部27,28の内、器具長さ方向で車体側に位置するものを第一アイ部27、器具長さ方向でアオリ5側に位置するものを第二アイ部28という。
【0043】
第一アイ部27は、例えば繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すのみで形成されている。第二アイ部28は、例えば繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すとともにベルト幅方向でも折り返して二重の厚さに形成され、さらに保護布が装着されている。
アオリ側スリング25の両端部のアイ部27,28は、本体部26に捩れがない状態で、それぞれ開口方向をベルト幅方向(図2では矢印F2方向に相当)に向けている。
【0044】
アオリ側スリング25の器具長さ方向他側(アオリ5側)の端部には、アオリ側フック15に掛けられるアオリ側係止部が設けられている。アオリ側係止部は、第二アイ部28で構成されている。換言すれば、アオリ側係止部は、アオリ側スリング25の器具長さ方向他側の端部に直接的に設けられている。
なお、アオリ側係止部がアオリ側スリング25の器具長さ方向他側の端部に間接的に設けられる構成(例えば環部材等を介してアオリ側フック15に掛けられる構成、図6(a)、図6(b)参照)もあり得る。この場合、第二アイ部28を第一アイ部27と同様に、繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すのみで形成されるものとしてもよい。
【0045】
<中間連結構造>
中間連結構造30は、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向の中間部(例えば中央部)に位置している。中間連結構造30は、車体側スリング21とアオリ側スリング25との間に設けられている。中間連結構造30は、車体側スリング21とアオリ側スリング25とを相互に連結している。
【0046】
中間連結構造30は、一対の環部材31,32を備えている。中間連結構造30は、一対の環部材31,32として、器具長さ方向で車体側に位置する第一環部材31と、器具長さ方向でアオリ5側に位置する第二環部材32と、を備えている。第一環部材31および第二環部材32の各々は、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属製の部材である。第一環部材31および第二環部材32の各々は、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが、繊維スリング20よりも重い部材である。
【0047】
第一環部材31および第二環部材32は、互いに同一構成として部品の共用化を図ることができる。第一環部材31は、車体側スリング21における器具長さ方向他側の端部に連結されている。第二環部材32は、アオリ側スリング25における器具長さ方向一側の端部に連結されている。第一環部材31と第二環部材32とは、互いに鎖状に繋がれている。第一環部材31の軸方向(開口方向、図2では矢印F1方向に相当)と第二環部材32の軸方向(開口方向、図2では矢印F2方向に相当)とは、互いに直交する配置である。第一環部材31と第二環部材32とは、器具長さ方向に延びる鎖体を構成している。第一環部材31と第二環部材32とは、車体側スリング21とアオリ側スリング25とを互いに揺動自在に連結している。
【0048】
第一環部材31および第二環部材32の各々は、例えば、SUS430等の錆に強くかつ安価な金属材料で形成されている。第一環部材31および第二環部材32の各々は、密度(重量)および強度の要件を満たせば他の材料で形成されてもよい。第一環部材31および第二環部材32の各々は、平滑な表面を有し、繊維スリング20との摩擦や環部材同士の摩擦を抑えている。第一環部材31および第二環部材32の各々は、例えば真円の環形状をなし、楕円形等よりも強度を確保しやすく、かつ絡まりの発生を抑えている。
【0049】
<端部係止構造>
一対の端部係止構造40は、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向一側の端部に設けられて車体部品8の係止部(車体側フック12)に掛けられる車体側係止構造41と、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向他側の端部に設けられて側アオリ5aの係止部(アオリ側フック15)に掛けられるアオリ側係止構造45と、を備えている。
【0050】
<車体側係止構造>
実施形態の車体側係止構造41は、一対の端部環部材42,43を備えている。車体側係止構造41は、一対の端部環部材42,43として、器具長さ方向で車体側に位置する第一端部環部材42と、器具長さ方向でスリング側に位置する第二端部環部材43と、を備えている。第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属製の部材である。第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが、繊維スリング20よりも重い部材である。
【0051】
第一端部環部材42および第二端部環部材43は、互いに同一構成として部品の共用化を図ることができる。さらに、第一端部環部材42および第二端部環部材43は、中間連結構造30の第一環部材31および第二環部材32と同一構成として部品の共用化を図ることができる。第一端部環部材42と第二端部環部材43とは、互いに鎖状に繋がれている。第一端部環部材42の軸方向(開口方向、図2では矢印F1方向に相当)と第二端部環部材43の軸方向(開口方向、図2では矢印F2方向に相当)とは、互いに直交する配置である。第一端部環部材42と第二端部環部材43とは、器具長さ方向に延びる鎖体を構成している。第一端部環部材42と第二端部環部材43とは、車体側フック12に対して車体側スリング21ひいてはアオリ水平保持器具10の上端部を揺動自在に係止している。
【0052】
第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、例えば、SUS430等の錆に強くかつ安価な金属材料で形成されている。第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、密度(重量)および強度の要件を満たせば他の材料で形成されてもよい。第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、平滑な表面を有し、繊維スリング20との摩擦や環部材同士の摩擦を抑えている。第一端部環部材42および第二端部環部材43の各々は、例えば真円の環形状をなし、楕円形等よりも強度を確保しやすく、かつ絡まりの発生を抑えている。
【0053】
アオリ水平保持器具10を軽量な繊維ベルトで構成すると、チェーンやワイヤーで構成する場合に比べて風の影響を受けやすくなる。例えば、水平状態の側アオリ5a上に作業者がいない状態で、側アオリ5aが風を受けると、以下の事象が生じる。すなわち、側アオリ5aが風で持ち上げられてアオリ水平保持器具10の張力を減少させるとともに、ベルト状のアオリ水平保持器具10自体が風を受ける。その結果、アオリ水平保持器具10がバタつきやすく、特に上端部が車体側フック12から外れる虞がある。
【0054】
実施形態のアオリ水平保持器具10は、中間連結構造30が錘となってアオリ水平保持器具10のバタつき自体を抑える。また、中間連結構造30の二連リングが相対揺動自在なので、アオリ水平保持器具10の下部(アオリ側スリング25)のバタつきが上部(車体側スリング21)に伝わり難い。
【0055】
実施形態のアオリ水平保持器具10は、上端部(車体側係止構造41)に自重が作用することで、上方を向く車体側フック12への係止状態を維持しやすい。また、車体側係止構造41の二連リングが相対揺動自在なので、繊維スリング20側のバタつきが車体側の第一端部環部材42に伝わり難い。すなわち、車体側フック12に重量のある端部環部材42,43を掛けることで、アオリ水平保持器具10の上端部(車体側の端部)が車体側フック12から外れることが抑制される。
【0056】
以上の構成から、実施形態のアオリ水平保持器具10は、上端部が車体側フック12から外れ難くされている。金属製の端部環部材42,43によって、アオリ水平保持器具10の端部(係止構造)における摩擦を抑えて耐久性を高め、かつ相手側のフックに取り付けやすくすることができる。
【0057】
<アオリ側係止構造>
実施形態のアオリ側係止構造45は、アオリ側スリング25の器具長さ方向他側の端部(第二アイ部28)で構成されている。すなわち、アオリ側係止構造45としての第二アイ部28は、繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すとともにベルト幅方向でも折り返して二重の厚さに形成し、さらに保護布を装着して構成されている。
【0058】
アオリ水平保持器具10の器具長さ方向一端部(車体側係止構造41の第一端部環部材42)は、上方を向く車体側フック12に上方から掛けられる。このとき、第一端部環部材42は開口方向を架設時上下方向(矢印F1方向、以下、架設時上下方向F1という。)に向け、第二端部環部材43は開口方向を前後方向(矢印方向F2、以下、前後方向F2という。)に向ける。
【0059】
このとき、車体側スリング21に捩じれが無ければ、車体側スリング21の器具長さ方向両端部の第一アイ部23および第二アイ部24は、ともに開口方向を架設時上下方向F1に向ける。また、本体部22(ベルト部)は厚さ方向を前後方向F2に向ける。
【0060】
またこのとき、中間連結構造30では、第一環部材31は開口方向を前後方向F2に向け、第二環部材32は開口方向を架設時上下方向F1に向ける。
また、アオリ側スリング25に捩じれが無ければ、アオリ側スリング25の器具長さ方向両端部の第一アイ部27および第二アイ部28は、ともに開口方向を前後方向F2に向ける。また、本体部26(ベルト部)は厚さ方向を架設時上下方向F1に向ける。
【0061】
このように、アオリ水平保持器具10の上端部を車体側フック12に上方から係止し、かつ車体側スリング21の本体部22およびアオリ側スリング25の本体部26のそれぞれに捩れが生じないようにアオリ水平保持器具10を架設すれば、アオリ水平保持器具10の下端部はアオリ側フック15に水平方向から自然に係止可能となる。これにより、車体側スリング21の本体部22およびアオリ側スリング25の捩れによるストレス(負荷)を軽減した上で、側アオリ5aを水平状態に吊り下げることができる。
【0062】
<変形例>
以下、アオリ水平保持器具10の変形例について説明する。
図4は、中間連結構造30の変形例を示す。この変形例の中間連結構造30は、単一の環部材34を備えている。環部材34は、第一環部材31および第二環部材32と同様、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属材料(例えばSUS430等)からなる部材であり、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが繊維スリング20よりも重い部材である。
【0063】
環部材34は、車体側スリング21の器具長さ方向他端部およびアオリ側スリング25の器具長さ方向一端部の両方に連結されている。この場合、車体側スリング21の器具長さ方向他端部の第二アイ部24、およびアオリ側スリング25の器具長さ方向一端部の第一アイ部27は、各々の開口方向を互いに同一方向に向ける。また、環部材34は、開口方向を車体側スリング21の第二アイ部24およびアオリ側スリング25の第一アイ部27の開口方向と直交させるように配置される。
【0064】
この変形例では、中間連結構造30が複数(三つ以上を含む)の環部材を備える場合に比べて、部品点数を抑えることができる。一方、車体側スリング21およびアオリ側スリング25の厚さ方向が互いに同一方向になることで、アオリ水平保持器具10全体が一方向からの風を受けやすくなる。また、中間連結構造30の重さも低下し、かつ中間連結構造30が鎖体を構成する場合に比べて揺動自由度も低下することから、アオリ水平保持器具10のバタつきを抑える効果が低くなる。このため、環部材の数は最小の偶数個すなわち二個であることが好ましい。
【0065】
図5は、車体側係止構造41の変形例を示す。図5(a)の変形例は、車体側係止構造41が単一の端部環部材35を備えている。端部環部材35は、第一環部材31および第二環部材32と同様、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属材料(例えばSUS430等)からなる部材であり、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが繊維スリング20よりも重い部材である。
端部環部材35は、車体側スリング21の器具長さ方向一端部に連結されている。この場合、車体側スリング21の器具長さ方向一端部の第一アイ部23は、開口方向を前後方向F2に向ける。また、端部環部材35は開口方向を架設時上下方向F1に向ける。
【0066】
図5(b)の変形例は、車体側係止構造41が車体側スリング21の器具長さ方向一端部の第一アイ部23で構成されている。この第一アイ部23は、アオリ側スリング25の器具長さ方向他側の第二アイ部28と同様、繊維ベルトをベルト長さ方向で折り返すとともにベルト幅方向でも折り返して二重の厚さに形成し、さらに保護布を装着して構成されている。
この場合、車体側スリング21の器具長さ方向一端部の第一アイ部23は、開口方向を架設時上下方向F1に向ける。
【0067】
これらの変形例では、車体側係止構造41の端部環部材が複数(三つ以上を含む)の場合に比べて、部品点数を抑えることができる。一方、車体側係止構造41の重さが低下し、かつ車体側係止構造41が鎖体を構成する場合に比べて揺動自由度も低下することから、車体側フック12からの外れを抑制する効果が低くなる。このため、端部環部材の数は最小の複数個すなわち二個であることが好ましい。
【0068】
図6は、アオリ側係止構造45の変形例を示す。図6(a)の変形例は、単一の端部環部材36を備えている。端部環部材36は、第一環部材31および第二環部材32と同様、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属材料(例えばSUS430等)からなる部材であり、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが繊維スリング20よりも重い部材である。
端部環部材36は、アオリ側スリング25の器具長さ方向他端部に連結されている。この場合、アオリ側スリング25の器具長さ方向他端部の第二アイ部28は、開口方向を架設時上下方向F1に向ける。また、端部環部材36は開口方向を前後方向F2に向ける。
【0069】
図6(b)の変形例は、中間連結構造30と同様、一対の端部環部材37,38を備えている。アオリ側係止構造45は、一対の端部環部材37,38として、器具長さ方向でスリング側に位置する第一端部環部材37と、器具長さ方向でアオリ5側に位置する第二端部環部材38と、を備えている。第一端部環部材37および第二端部環部材38の各々は、繊維スリング20を構成する繊維ベルトよりも密度の大きい金属材料(例えばSUS430等)からなる部材であり、器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが繊維スリング20よりも重い部材である。
この場合、アオリ側スリング25の器具長さ方向他端部の第二アイ部28は、開口方向を前後方向F2に向ける。また、第一端部環部材37は開口方向を架設時上下方向F1に向け、第二端部環部材38は開口方向を前後方向F2に向ける。
【0070】
アオリ側フック15がアオリ5から水平方向(前後方向F2)に突出する構成では、水平状態のアオリ5が上方へ持ち上がってもアオリ水平保持器具10の下端部(第二アイ部28)がアオリ側フック15から外れ難い。しかし、アオリ側フック15の構成によっては、図6の変形例のようにアオリ側フック15に重量のある端部環部材36,37,38を掛けることで、アオリ水平保持器具10の下端部がアオリ側フック15から外れ難くする効果を得る。金属製の端部環部材36,37,38によって、アオリ水平保持器具10の端部(係止構造)における摩擦を抑えて耐久性を高め、かつ相手側のフックに取り付けやすくすることができる。端部環部材が不要であれば、図2のようにアオリ水平保持器具10の下端部(第二アイ部28)を直接アオリ側フック15に掛けることで、部品点数を抑えることができる。
【0071】
以上説明したように、上記実施形態におけるアオリ水平保持器具10は、荷台3のアオリ5と車体部品8との間に架け渡されてアオリ5を水平状態に保持するものであって、繊維ベルトで形成され、器具長さ方向で順に連結される複数の繊維スリング20(車体側スリング21およびアオリ側スリング25)と、器具長さ方向で隣り合う車体側スリング21およびアオリ側スリング25とを互いに連結する中間連結構造30と、を備え、中間連結構造30は、前記繊維ベルトよりも器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い第一環部材31および第二環部材32を備え、第一環部材31および第二環部材32を介して、車体側スリング21とアオリ側スリング25とが互いに連結されている。
【0072】
この構成によれば、車体部品8とアオリ5との間に架け渡されるアオリ水平保持器具10が、複数の繊維スリング20を備えて構成されることで、繊維スリング20の端部をアオリロック金具11等のフックに直接または間接的に掛けるのみで、車体部品8とアオリ5との間にアオリ水平保持器具10を架け渡すことができる。したがって、車両側の加工を不要として汎用性を高めることができる。また、アオリ水平保持器具10の全体が金属製のチェーンやワイヤーで構成される場合と比べて、アオリ水平保持器具10の軽量化を図るとともに周辺への傷つきを抑え、作業性がよく扱いやすいアオリ水平保持器具10を提供することができる。
【0073】
一方、複数の繊維スリング20間を連結する中間連結構造30に重量のある第一環部材31および第二環部材32を備えることで、第一環部材31および第二環部材32が錘となって強風等によるアオリ水平保持器具10のバタつきを抑え、アオリ5を安定して水平状態に保持することができる。また、複数の繊維スリング20間を連結する第一環部材31および第二環部材32を錘とすることで、別途の錘を設置する場合に比べて、複数の繊維スリング20の少なくとも一つの長さを抑えつつ、アオリ水平保持器具10のバタつきを効率よく抑えることができる。また、複数の繊維スリング20間を例えば金属製の第一環部材31および第二環部材32を介して連結することで、繊維スリング20同士を直接連結する場合に比べて、中間連結構造30における摩擦を抑え、複数の繊維スリング20の相対揺動をしやすくし、アオリ水平保持器具10のバタつきを効率よく抑えるとともに折り畳みを容易にすることができる。
【0074】
上記アオリ水平保持器具10において、中間連結構造30は、複数の環部材(第一環部材31および第二環部材32)を備え、複数の環部材31,32が器具長さ方向で鎖状に繋がれている。
【0075】
この構成によれば、複数の環部材31,32同士が鎖状に繋がって自在に揺動することで、複数の繊維スリング20の相対揺動をより一層しやすくし、アオリ水平保持器具10のバタつきを効率よく抑えることができる。
また、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向の中間部(中央部に限らない)が揺動自在となるので、強風等によるアオリ水平保持器具10のバタつきが器具長さ方向で伝わり難くなり、アオリ水平保持器具10の端部の外れを抑制することができる。また、複数の環部材31,32によって中間連結構造30が十分な錘となり、アオリ水平保持器具10のバタつきを効果的に抑制することができる。
【0076】
上記アオリ水平保持器具10において、中間連結構造30は、一対の環部材(第一環部材31および第二環部材32)で構成されている。
【0077】
この構成によれば、中間連結構造30の環部材が単一である場合に比べて、錘としての重量を確保するとともに中間連結構造30を揺動自在とすることができる。また、中間連結構造30の環部材が三つ以上である場合に比べて、部品点数および重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0078】
上記アオリ水平保持器具10において、複数の繊維スリング20は、一対の車体側スリング21およびアオリ側スリング25で構成されている。
【0079】
この構成によれば、複数の繊維スリング20として一対の車体側スリング21およびアオリ側スリング25を備えることで、部品点数の増加を抑えるとともに、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向の中央近傍に中間連結構造30を配置可能となり、アオリ水平保持器具10のバタつきを効果的に抑えることができる。
また、車体側スリング21およびアオリ側スリング25が二連リングで連結されることで、車体側スリング21およびアオリ側スリング25がそれぞれの本体部22,26(ベルト部)の厚さ方向を互いに直交させるように配置される。これにより、アオリ水平保持器具10全体が一方向からの風を受けたときに、車体側スリング21およびアオリ側スリング25が同時にベルト幅全体で風を受けることがなく、アオリ水平保持器具10全体のバタつきを抑えることができる。
【0080】
上記アオリ水平保持器具10において、車体側スリング21は、器具長さ方向両端部の第一アイ部23および第二アイ部24が互いに同一方向に開口し、アオリ側スリング25は、第一アイ部27および第二アイ部28が互いに同一方向に開口している。
【0081】
この構成によれば、各繊維スリング20において、器具長さ方向両端部のアイ部が互いに同一方向に開口することで、中間連結構造30が二連リングで構成されることと相まって、各繊維スリング20の捩れを抑えることができる。
【0082】
すなわち、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向一端部(車体側の端部)は、一般に上方に屈曲する車体側フック12に掛けられる。このため、車体側スリング21の器具長さ方向一端部(アイ部)は開口を架設時上下方向F1に向ける。このとき、車体側スリング21に捩れがなければ、車体側スリング21の器具長さ方向他端部(アイ部)も開口を架設時上下方向F1に向ける。
車体側スリング21の器具長さ方向他端部に二連リングを介してアオリ側スリング25の器具長さ方向一端部を連結すると、アオリ側スリング25の器具長さ方向一端部(アイ部)は開口を前後方向F2(水平方向)に向ける。このとき、アオリ側スリング25に捩れがなければ、アオリ側スリング25の器具長さ方向他端部(アイ部)も開口を前後方向F2(水平方向)に向ける。
【0083】
アオリ側フック15は、一般にアオリ5の端部から回動軸方向(水平方向)に突出しており、このアオリ側フック15に、アオリ側スリング25を捩ることなく器具長さ方向他端部を直接掛けることが可能となる。このため、各繊維スリング20に捩れを生じさせることなく、アオリ水平保持器具10の器具長さ方向両端部を車体部品8およびアオリ5にそれぞれ係止することができる。これにより、各繊維スリング20の捩れによるストレス(負荷)を軽減した上で、アオリ5を水平状態に吊り下げることができる。
【0084】
上記アオリ水平保持器具10において、器具長さ方向の両端部の少なくとも一方(特に車体側の端部)に、前記繊維ベルトよりも前記器具長さ方向の単位長さ当たりの重さが重い端部環部材(例えば第一環部材42および第二環部材43)を備え、端部環部材42,43は、車体部品8に備える車体側フック12またはアオリ5に備えるアオリ側フック15に掛けられる。
【0085】
この構成によれば、アオリ水平保持器具10の端部に備えられて重量のある端部環部材42,43が、車体側フック12およびアオリ側フック15の内の対応するものに掛けられることで、端部環部材42,43を錘として利用し、アオリ水平保持器具10の外れを抑制することができる。
特に、アオリ水平保持器具10の上端部(車体側の端部)に端部環部材42,43を設け、この内の端部環部材42を上方に屈曲する車体側フック12に掛けることで、端部環部材42,43を錘として利用し、アオリ水平保持器具10の上端部が車体側フック12から外れることを抑制することができる。
【0086】
すなわち、風により水平状態のアオリ5が上方へ持ち上がると、アオリ水平保持器具10の張力が減少し、アオリ水平保持器具10の上端部が車体側フック12から外れる虞がある。これに対し、車体側フック12に重量のある端部環部材42,43を掛けることで、アオリ水平保持器具10の上端部が車体側フック12から外れることを抑制することができる。
アオリ水平保持器具10の下端部(アオリ5側の端部)は、アオリ5から水平方向に突出するアオリ側フック15に掛けた場合、水平状態のアオリ5が上方へ持ち上がってもアオリ側フック15から外れ難い。このため、例えばアオリ水平保持器具10の下端部には端部環部材を設けず、部品点数削減を図ることができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、アオリ水平保持器具は、一対の繊維スリングで構成されるものに限らず、三つ以上の繊維スリングで構成されてもよい。連結構造等に備える環部材は、重量の条件を満たせば金属製に限らない。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
3 荷台
5 アオリ
8 車体部品
10 アオリ水平保持器具
12 車体側フック
15 アオリ側フック
20 繊維スリング
31 第一環部材(環部材)
32 第二環部材(環部材)
42 第一端部環部材(端部環部材)
43 第二端部環部材(端部環部材)
34 変形例の環部材
35,36,37,38 変形例の端部環部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6