(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018747
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】レール締結装置
(51)【国際特許分類】
E01B 9/66 20060101AFI20240201BHJP
E01B 9/38 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E01B9/66
E01B9/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122277
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】511080638
【氏名又は名称】株式会社日本コンポジット工業
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】島内 勝則
(72)【発明者】
【氏名】枡田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】弟子丸 将
(57)【要約】
【課題】レールと支承体間の絶縁性をより確保可能なレール締結装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るレール締結装置は、レールが配置されるレール受け部と、前記レールの長手方向である第1方向に直交する第2方向において前記レール受け部の両側に位置する一対のサイド部とを有するプレート本体を備え、プレート本体の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、プレート本体は、第1繊維強化プラスチック領域を有し、第1繊維強化プラスチック領域の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、第1繊維強化プラスチック領域は、第1方向に配向した複数の繊維補強材と、第2方向に配向した複数の繊維補強材と、マトリックス樹脂とを含む第1繊維強化プラスチック領域とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールが配置されるレール受け部と、前記レールの長手方向である第1方向に直交する第2方向において前記レール受け部の両側に位置する一対のサイド部とを有するプレート本体を備え、
前記プレート本体の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、
前記プレート本体は、第1繊維強化プラスチック領域を有し、
前記第1繊維強化プラスチック領域の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、
前記第1繊維強化プラスチック領域は、前記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、前記第2方向に配向した複数の繊維補強材と、マトリックス樹脂とを含む第1繊維強化プラスチック領域とを有する、
レール締結装置。
【請求項2】
前記繊維強化プラスチックの体積抵抗率は、108Ω・m以上である、
請求項1に記載のレール締結装置。
【請求項3】
前記プレート本体は、第2繊維強化プラスチック領域を更に有し、
前記第2繊維強化プラスチック領域の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、
前記第2繊維強化プラスチック領域は、前記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に配向した複数の繊維補強材と、マトリックス樹脂とを含む第2繊維強化プラスチック領域と、
を有する、
請求項1に記載のレール締結装置。
【請求項4】
前記レール受け部は、
底部と、
前記底部において前記第2方向の両側に位置しており前記底部から前記第3方向に立ち上がっている一対の壁部と、
を有し、
前記底部は、前記第1繊維強化プラスチック領域を有し、
前記一対の壁部それぞれは、前記第2繊維強化プラスチック領域を有する、
請求項3に記載のレール締結装置。
【請求項5】
前記レールの下部に設けられており前記第2方向に張り出した一対のフランジ部を押さえる一対の締結バネを前記プレート本体に取り付けるための一対の締結ボルトを更に有し、
前記一対の締結ボルトは、前記一対の締結ボルトの一部が、前記プレート本体の上方に突出するように前記第3方向に沿って前記プレート本体に挿入され且つ固定されており、
前記プレート本体において、前記一対の締結ボルトが配置される部分は、前記第1繊維強化プラスチック領域を有する、
請求項3に記載のレール締結装置。
【請求項6】
前記一対のサイド部は、前記プレート本体を支承体に固定するためのボルトを通すボルト孔部が形成されたボルト配置部を有し、
前記ボルト配置部は、前記第1繊維強化プラスチック領域を有する、
請求項3~5の何れか一項に記載のレール締結装置。
【請求項7】
前記プレート本体は、前記プレート本体において底面と反対側に位置するアッパープレートを有し、
前記レール受け部は、
底部と、
前記底部において前記第2方向の両側に位置しており前記底部から前記第3方向に立ち上がっている一対の壁部と、
を有し、
前記アッパープレートの材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、
前記アッパープレートは、
前記底部に含まれる底部領域と、
前記一対の壁部それぞれに含まれており前記底部領域から前記第3方向に連続的に立ち上がっている壁部領域と、
前記壁部領域において前記底部領域と反対側から連続的に前記第2方向に曲がっている上部領域と、
を有し、
前記底部領域および前記上部領域は前記第1繊維強化プラスチック領域であり、
前記壁部領域は、前記第2繊維強化プラスチック領域である、
請求項3に記載のレール締結装置。
【請求項8】
前記レールの下部に設けられており前記第2方向に張り出した一対のフランジ部を押さえる一対の締結バネを前記プレート本体に取り付けるための一対の締結ボルトを更に有し、
前記一対の締結ボルトは、前記一対の締結ボルトの一部が、前記プレート本体の上方に突出するように前記第3方向に沿って前記プレート本体に挿入され且つ固定されており、
前記一対の締結ボルトは、前記上部領域を通っている、
請求項7に記載のレール締結装置。
【請求項9】
前記プレート本体は、一対のサイドプレートを有し、
前記一対のサイドプレートは、
前記一対のサイド部それぞれに配置される第1領域と、
前記一対の壁部のうち対応する壁部に含まれており、前記第1領域から第3方向に連続的に立ち上がっている第2領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記第1繊維強化プラスチック領域であり、
前記第2領域は、前記第2繊維強化プラスチック領域であり、
前記第1領域には、前記プレート本体を支承体に固定するためのボルトを通すボルト孔部が形成されている、
請求項7または8に記載のレール締結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道設備には、車両(列車)の衝突や脱線などを防ぎ車両を安全かつ効率的に運転するために、2本(左右)のレールを車両の車軸(車輪と車軸)で電気的に短絡することを利用して車両を検知する軌道回路が構成されている。そのために、レール締結装置には、レールと支承体の間を電気的に絶縁することが要求される。このため、レール締結装置の下部には、絶縁板が敷かれレールと支承体の間は電気的に絶縁されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レールと支承体の間の絶縁性能は、この絶縁板の表面の塵埃および環境による劣化により絶縁性能が低下して、車両がいなくても2本のレール間が短絡状態となり、輸送障害を招くことがある。
【0005】
そこで、本発明は、レールと支承体間の絶縁性をより確実に確保可能なレール締結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の一側面に係るレール締結装置は、レールが配置されるレール受け部と、上記レールの長手方向である第1方向に直交する第2方向において上記レール受け部の両側に位置する一対のサイド部とを有するプレート本体を備え、上記プレート本体の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、上記プレート本体は、第1繊維強化プラスチック領域を有し、上記第1繊維強化プラスチック領域の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、上記第1繊維強化プラスチック領域は、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材と、マトリックス樹脂とを含む第1繊維強化プラスチック領域とを有する。
【0007】
このレール締結装置において、プレート本体の材料が、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであることから、プレート本体自体が絶縁性を有する。そのため、上記レール受け部でレールを受けた状態でプレート本体を支承体に固定した場合、レールと支承体の絶縁距離がより長くなる。その結果、レールと支承体間の絶縁性をより確保できる。プレート本体の材料が繊維強化プラスチックであることから、車両走行時にプレート本体に作用する力に対して機械的な耐性(強度など)を確保できる。繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックに含まれる繊維補強材が配向している方向においてより優れた機械的特性を有している。上記(1)のレール締結装置は、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材とを含む第1繊維強化プラスチック領域を有する。そのため、車両走行時等に生じる第1方向および第2方向に作用する力に対する機械的な耐性(強度など)を更に確保できる。
【0008】
(2) 上記(1)のレール締結装置において、上記繊維強化プラスチックの体積抵抗率は、108Ω・m以上であってもよい。これにより、レールと支承体間の絶縁性をより確保できる。
【0009】
(3) 上記(1)または(2)のレール締結装置において、上記プレート本体は、第2繊維強化プラスチック領域を更に有し、上記第2繊維強化プラスチック領域の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、上記第2繊維強化プラスチック領域は、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向に配向した複数の繊維補強材と、マトリックス樹脂とを含む第2繊維強化プラスチック領域と、を有してもよい。
【0010】
上記(3)のレール締結装置は、上述した第1繊維強化プラスチック領域とともに、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第3方向に配向した複数の繊維補強材とを含む第2繊維強化プラスチック領域を有する。そのため、車両走行時等に生じる第1方向、第2方向および第3方向に作用する力に対する機械的な耐性(強度など)を更に確保し易い。
【0011】
(4) 上記(3)のレール締結装置において、上記レール受け部は、底部と、上記底部において上記第2方向の両側に位置しており上記底部から上記第3方向に立ち上がっている一対の壁部と、を有し、上記底部は、上記第1繊維強化プラスチック領域を有し、上記一対の壁部それぞれは、上記第2繊維強化プラスチック領域を有してもよい。
【0012】
車両走行時において、上記底部には輪重が作用し、上記一対の壁部には横圧が作用するとともに、車両の振動などの影響で第3方向に対する力が作用する。上記一対の壁部に対する横圧の影響で一対の壁部は外側に押されるので、底部には第2方向に力が作用する。更に、車両がレールの長手方向の走行することから、底部および一対の壁部には、第1方向に力が作用する。底部に作用する輪重は、底部を圧縮する。同様に、壁部に対する横圧は壁部を圧縮する。繊維強化プラスチックは圧縮力に対して、優れた機械的特性を確保可能である。そのため、底部が上記第1繊維強化プラスチック領域を有し、一対の壁部それぞれが上記第2繊維強化プラスチック領域を有する場合、底部および一対の壁部は、それらに対する圧縮力により耐えられる。更に、底部が、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材を含む第1繊維強化プラスチック領域を有することから、底部は、第1方向および第2方向に作用する力に対してより耐えられる。同様に、一対の壁部それぞれが、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第3方向に配向した複数の繊維補強材を含む第2繊維強化プラスチック領域を有することから、一対の壁部は、第1方向および第3方向に作用する力により耐えられる。そのため、上記(3)のレール締結装置では、プレート本体の材料が繊維強化プラスチックである場合において、レール締結装置としての機械的な耐性(強度など)を一層確保可能である。
【0013】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかのレール締結装置は、上記レールの下部に設けられており上記第2方向に張り出した一対のフランジ部を押さえる一対の締結バネを上記プレート本体に取り付けるための一対の締結ボルトを更に有し、上記一対の締結ボルトは、上記一対の締結ボルトの一部が、上記プレート本体の上方に突出するように上記第1方向および第2方向に直交する第3方向に沿って上記プレート本体に挿入され且つ固定されており、上記プレート本体において、上記一対の締結ボルトが配置される部分は、上記第1繊維強化プラスチック領域を有してもよい。
【0014】
締結ボルトは、上記のように、第3方向に沿ってプレート本体に挿入されていることから、車両走行時の振動などでプレート本体には締結ボルトを介して第3方向に引き抜き力が作用する。締結ボルトが配置される部分が、上記第1繊維強化プラスチック領域を有する場合、上記引き抜き力は第1繊維強化プラスチック領域に対し、圧縮力として作用する。そのため、上記締結ボルトが配置される部分は、上記引き抜き力に対し、機械的な耐性を更に有している。
【0015】
(6) 上記(1)~(5)の何れかのレール締結装置において、上記一対のサイド部は、上記プレート本体を支承体に固定するためのボルトを通すボルト孔部が形成されたボルト配置部を有し、上記ボルト配置部は、上記第1繊維強化プラスチック領域を有してもよい。
【0016】
上記ボルト孔部に通されるボルトを利用してボルト配置部が支承体に固定される。このようにボルト配置部が固定されていることによって、車両走行時にレール受け部に作用する第1方向および第2方向の力は、ボルト配置部にも作用する。上記(6)のレール締結装置では、上記ボルト配置部が、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材を含む上記第1繊維強化プラスチック領域を有する。そのため、ボルト配置部は、上記第1方向および第2方向に作用する力により耐えられる。
【0017】
(7) 上記(3)のレール締結装置において、上記プレート本体は、上記プレート本体において底面と反対側に位置するアッパープレートを有し、上記レール受け部は、底部と、 上記底部において上記第2方向の両側に位置しており上記底部から上記第3方向に立ち上がっている一対の壁部と、を有し、上記アッパープレートの材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックであり、上記アッパープレートは、上記底部に含まれる底部領域と、 上記一対の壁部それぞれに含まれており上記底部領域から上記第3方向に連続的に立ち上がっている壁部領域と、上記壁部領域において上記底部領域と反対側から連続的に上記第2方向に曲がっている上部領域と、を有し、上記底部領域および上記上部領域は上記第1繊維強化プラスチック領域であり、上記壁部領域は、上記第2繊維強化プラスチック領域であってもよい。
【0018】
上記アッパープレートの底部領域が上記第1繊維強化プラスチック領域であり、壁部領域が上記第2繊維強化プラスチック領域である場合、底部および壁部は、それらに対する圧縮力により耐えられる。更に、底部領域が、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材を含む第1繊維強化プラスチック領域であることから、底部は、第1方向および第2方向に作用する力に対してより耐えられる。同様に、壁部領域が、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第3方向に配向した複数の繊維補強材を含む第2繊維強化プラスチック領域であることから、一対の壁部は、第1方向および第3方向に作用する力により耐えられる。アッパープレートの上部領域には、たとえば、レールを押さえるための締結バネの一部が接する場合がある。レールの振動によって締結バネが弾性変形した場合、締結バネは第2方向に広がったり狭まったりすることから上部領域は第2方向に力を受ける。更に、上部領域は、底部および壁部領域に連続的に繋がっているので、上部領域には第1方向の力も作用する。上記(7)のレール締結装置では、上部領域は、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材を含む第1繊維強化プラスチック領域であることから、上部領域も、第1方向および第2方向に作用する力に対してより耐えられる。そのため、上記(7)のレール締結装置では、プレート本体の材料が繊維強化プラスチックである場合において、レール締結装置としての機械的な耐性(強度など)を一層確保可能である。
【0019】
(8) 上記(7)のレール締結装置は、上記レールの下部に設けられており上記第2方向に張り出した一対のフランジ部を押さえる一対の締結バネを上記プレート本体に取り付けるための一対の締結ボルトを更に有し、上記一対の締結ボルトは、上記一対の締結ボルトの一部が、上記プレート本体の上方に突出するように上記第3方向に沿って上記プレート本体に挿入され且つ固定されており、上記一対の締結ボルトは、上記上部領域を通っていてもよい。
【0020】
締結ボルトは、上記のように、第3方向に沿ってプレート本体に挿入されていることから、車両走行時の振動などでプレート本体には締結ボルトを介して第3方向に引き抜き力が作用する。締結ボルトが配置される部分が、上記第1繊維強化プラスチック領域を有する場合、上記引き抜き力は第1繊維強化プラスチック領域に対し、圧縮力として作用する。そのため、上記締結ボルトが配置される部分は、上記引き抜き力に対し、機械的な耐性を更に有している。
【0021】
(9) 上記(7)または(8)のレール締結装置において、上記プレート本体は、一対のサイドプレートを有し、上記一対のサイドプレートは、上記一対のサイド部それぞれに配置される第1領域と、上記一対の壁部のうち対応する壁部に含まれており、上記第1領域から第3方向に連続的に立ち上がっている第2領域と、を有し、上記第1領域は、上記第1繊維強化プラスチック領域であり、上記第2領域は、上記第2繊維強化プラスチック領域であり、上記第1領域には、上記プレート本体を支承体に固定するためのボルトを通すボルト孔部が形成されていてもよい。
【0022】
上記ボルト孔部に通されるボルトを利用してボルト配置部が支承体に固定される。このように第1領域が固定されていることによって、車両走行時にレール受け部に作用する第1方向および第2方向の力は、第1領域にも作用する。上記(9)のレール締結装置は、上記第1領域が、上記第1方向に配向した複数の繊維補強材と、上記第2方向に配向した複数の繊維補強材を含む上記第1繊維強化プラスチック領域であることから、第1領域は、上記第1方向および第2方向に作用する力により耐えられる。更に、第2領域は、壁部領域と同様に、上記第2繊維強化プラスチック領域であり、壁部に含まれる。すなわち、壁部は、壁部領域としての第2繊維強化プラスチック領域と、第2領域としての第2繊維強化プラスチック領域とを有する。そのため、上記(9)のレール締結装置では、壁部において、第1方向および第2方向に対する力に対する機械的な耐性(強度など)が一層向上している。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レールと支承体間の絶縁性をより確保可能なレール締結装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るレール締結装置にレールが取り付けられた状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したレール締結装置をレールの長手方向からみた場合の模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したレール締結装置が有するプレート本体の平面図である。
【
図5】
図5(a)は、プレート本体が有する第1繊維強化プラスチック領域を説明するための模式図であり、
図5(b)は、プレート本体が有する第1繊維強化プラスチック領域を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面構成の模式図である。
【
図7】
図7は、
図4のVIIa-VIIa線(またはVIIb―VIIb線)に沿った断面構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0026】
図1は、本実施形態に係るレール締結装置1にレール2が取り付けられた状態を示す模式図である。
図2は、
図1のレール締結装置1をレール2の長手方向からみた場合の模式図である。
図1および
図2では、2本のレールのうち1本のレール2を図示している。
図1および
図2において、図中左側が、軌間内側であり、図中右側が軌間外側である。
図1および
図2に示したように、レール2の長手方向をY方向(第1方向)と称し、レール2側からレール締結装置1を見た場合においてY方向と直交する方向をX方向(第2方向)と称し、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向(第3方向)と称す。
【0027】
本実施形態に係るレール締結装置1は、レール2を支承体3に締結し、軌間を保持する装置である。レール締結装置1は、たとえばスラブ軌道用の締結装置である。レール2は、鉄道車両の車輪を支持し且つ案内する軌道部材である。
【0028】
レール2は、車輪と接触するレール頭部2aと、レール締結装置1に取り付けられるレール下部2bと、レール頭部2aとレール下部2bとを繋ぐレール腹部2cとを有する。レール下部2bは、平面視(Z方向からみた場合)において、レール腹部2cの両側に張り出した一対のフランジ部2d,2dを有する。
【0029】
図3および
図4を更に利用して、レール締結装置1を説明する。
図3は、
図1に示したレール締結装置1の斜視図である。
図4は、
図1に示したレール締結装置1が有するプレート本体10の平面図(Z方向から見た場合の図)である。
【0030】
レール締結装置1は、プレート本体10を有する。レール締結装置1は、一対の締結ボルト20,20を有してもよい。本実施形態では、レール締結装置1が、一対の締結ボルト20,20を有する形態を説明する。
【0031】
プレート本体10は、レール受け部11と、一対のサイド部12,12とを有する。プレート本体10の平面視形状(Z方向からみた形状)は、四角形状である。本実施形態では、プレート本体10の平面視形状は矩形であり、プレート本体10の長辺方向はX方向である。
【0032】
レール受け部11は、レール下部2bが配置される部分であり、凹状を呈する。具体的には、レール受け部11は、底部11aと、一対の壁部11b,11bを有する。底部11aの厚さ(鉛直方向の長さ)の例は、21.2mm以上且つ24.8mm以下である。一実施形態において、底部11aの厚さは、レール2を傾けてレール締結装置1に取り付けるために、軌道外側に向けて僅かに厚くなっている。一対の壁部11b,11bは、底部11aにおいて、X方向の両縁部から連続的にZ方向に立ち上がっている。一対の壁部11b,11bの間の長さ(X方向の長さ)は、レール下部2bのX方向の長さに実質的に等しい。壁部11bの厚さの例は、26.5mm以上且つ106.5mm以下である。壁部11bの高さ(レール受け部11の深さ)の例は、35.2mm以上且つ38.8mm以下である。壁部11bは肩部と称される部分でもある。
【0033】
一対のサイド部12,12は、X方向においてレール受け部11の両側に位置する。プレート本体10を平面視した場合、一対のサイド部12,12は、一対の壁部11b,11bから外側(レール受け部11と反対側)に連続的に張り出している。一対のサイド部12,12それぞれは、第1サイド部12aと、第2サイド部(ボルト配置部)12bとを有する。
【0034】
第1サイド部12aと第2サイド部12bは、Y方向において隣接している。一対のサイド部12のうち一方のサイド部12の第1サイド部12aと他方のサイド部12の第1サイド部12aは、対角上に位置している。換言すれば、プレート本体10におけるX方向に延びる一対の縁部のうち一方を基準縁部とした場合、一対のサイド部12,12のうちの一方のサイド部12における第1サイド部12aおよび第2サイド部12bは、基準縁部に対して、Y方向に沿って第1サイド部12aおよび第2サイド部12bの順に配置されており、他方のサイド部12における第1サイド部12aおよび第2サイド部12bは、基準縁部に対して、Y方向に沿って第2サイド部12bおよび第1サイド部12aの順に配置されている。
【0035】
第1サイド部12aは、締結ボルト20に取り付けられる締結バネ4が配置される部分である。本実施形態において、第1サイド部12aの厚さは、第2サイド部12bの厚さより厚い。第1サイド部12aの厚さの例は、58.5mm以上且つ61.5mm以下である。上記のように第1サイド部12aは、壁部11bに連続的に繋がっているが、
図4では、壁部11bと第1サイド部12aとの境界を便宜的に破線で示している。各第1サイド部12aにおいてレール受け部11と反対側には、鉛直上方に隆起した隆起部(或いは肉厚部)12cが形成されている。
【0036】
第2サイド部12bは、プレート本体10を支承体3に固定するためのアンカーボルト5が配置される部分である。第2サイド部12bの厚さの例は、26.2mm以上且つ29.2mm以下である。第2サイド部12bには、アンカーボルト5が通されるボルト孔部13が形成されている。
【0037】
図2および
図3に示したように、一対の締結ボルト20,20は、プレート本体10をZ方向に貫通している。一対の締結ボルト20,20は、Y方向において、第1サイド部12a側に設けられている。本実施形態では、締結ボルト20は、壁部11bと第1サイド部12aとの境界部分に配置されている。締結ボルト20の一部は、プレート本体10から上方に突出している。すなわち、締結ボルト20のZ方向の長さは、プレート本体10のZ方向の長さより長い。
【0038】
図2に示した形態に基づいて本実施形態の締結ボルト20を具体的に説明する。本実施形態の締結ボルト20は、ボルト本体21と、端板22とを有する。ボルト本体21は、円柱状を呈し、外周にネジ部が形成されている。端板22は、ボルト本体21の一端部に接続されており、締結ボルト20の頭部として機能する。端板22は、ボルト本体21と同心でボルト本体21に固定されている。端板22は例えば鋼板である。本実施形態において、Z方向からみた場合の端板22の形状は円形である。Z方向から見た場合、端板22の大きさはボルト本体21より大きい。換言すれば、端板22の直径は、ボルト本体21の直径より大きい。Z方向からみた場合の端板22の形状は、円形に限定されず、たとえば、多角形(たとえば、六角形)などでもよい。
【0039】
図2に示したように、締結ボルト20は、ボルト本体21において、端板22と反対側がプレート本体10の上側に突出するようにプレート本体10に設けられている。プレート本体10には、締結ボルト20を通す貫通孔14が形成されている。
【0040】
図1及び
図2に示したように、レール締結装置1は、一対のアンカーボルト5,5によって支承体3に固定される。アンカーボルト5は対応するボルト孔部13を介して、支承体3が有するボルト受け部(不図示)に螺合される。アンカーボルト5とボルト孔部13との間には、少なくとも1つの座金6aが設けられてもよい。
【0041】
レール2は、レール下部2bがレール受け部11内に配置され、レール下部2bの一対のフランジ部2d,2dが一対の締結バネ4,4によって押さえられた状態でレール締結装置1に取り付けられている。レール下部2bと底部11aとの間には、底部11a側から調整シム8および軌道パッド9が配置されてもよい。レール下部2bと、締結バネ4は、Z方向からみた場合においてX方向の一方の端部がレール下部2bのフランジ部2dに接し、他方の端部が第1サイド部12aの隆起部12c側に接する大きさを有する。
図2では、Z方向に湾曲した板状の締結バネ4を例示している。締結バネ4の材料は、たとえば、繊維強化プラスチックである。繊維強化プラスチックの材料の例は、後述するプレート本体10の材料と同じである。締結バネ4は、締結ボルト20に通された状態で、ナット7によって固定されている。ナット7と締結バネ4との間には少なくとも1つの座金6bが配置されてもよい。
【0042】
一実施形態に係るプレート本体10を更に説明する。
【0043】
プレート本体10は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックによって構成されている。すなわち、プレート本体10の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックである。上記繊維強化プラスチックの体積抵抗率は、たとえば、108Ω・m(1010Ω・cm)以上である。繊維強化プラスチックの体積抵抗率の上限は、限定されないが、たとえば1016Ω・m(1018Ω・cm)である。
【0044】
繊維強化プラスチックが有する繊維補強材(或いは強化繊維若しくは強化材)は、ガラス繊維、アラミド繊維などの非導電性の繊維である。上記繊維補強材は、繊維補強材を用い繊維強化プラスチック(複合材)内に連続して存在する連続繊維でもよいし、不連続に存在する短繊維でもよい。連続繊維は、上記繊維強化プラスチックによって形成される部材(後述するアッパープレートなど)の一端と他端との間に連続的に延在する部分を有する繊維である。繊維補強材が連続繊維である場合、例えば、複数の繊維補強材は織布状に織られてもよい。織り方は、平織、朱子織等でよい。説明の便宜ため、繊維長が、1mm~3mm程度の短繊維を「第1短繊維」と称し、繊維長が、10mm~80mm程度の短繊維を「第2短繊維」と称す場合もある。第2短繊維の繊維長は、10mm~50mm程度でもよい。
【0045】
繊維強化プラスチックが有するマトリックス樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0046】
繊維強化プラスチックの製造方法も限定されず、たとえば、ハンドレイアップ成形、スプレーアップ法、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)、トランスファー成形、RTM(レジン・トランスファー・モールディング)などの様々な方法を用いることができる。
【0047】
繊維強化プラスチックにおける繊維補強材の種類、密度等は、プレート本体10が、レール締結装置1としての機械的特性および絶縁性を満たすように設計される。たとえば、以下の仕様を満たす繊維強化プラスチックを採用できる。
マトリックス樹脂:不飽和ポリエステル
繊維:ガラス繊維
繊維構成:織布(平織)
繊維目付量:200g/m2
繊維含有量:30~35%
製法:ハンドレイアップ
成形温度:常温
【0048】
一実施形態において、プレート本体10は、少なくとも1つの第1繊維強化プラスチック領域100Aを有する。プレート本体10は、少なくとも1つの第2繊維強化プラスチック領域100Bを有してもよい。断らない限り、プレート本体10が少なくとも1つの第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する形態を説明する。
【0049】
図5(a)は、第1繊維強化プラスチック領域100Aを説明するための模式図である。
図5(b)は、第2繊維強化プラスチック領域100Bを説明するための模式図である。
図5(a)に示したように、第1繊維強化プラスチック領域100Aは、X方向に配向した複数の繊維補強材100aと、Y方向に配向した複数の繊維補強材100bと、マトリックス樹脂100cを有する。
図5(a)において、繊維補強材100aおよび繊維補強材100bは、連続繊維であり、織布として第1繊維強化プラスチック領域100Aに含まれている。繊維補強材100aおよび繊維補強材100bは、マトリックス樹脂100c内に少なくとも一部は埋設しているが、
図5(a)では、繊維補強材100aおよび繊維補強材100bを明示するため、それらを実線で示している。
【0050】
図5(b)に示したように、第2繊維強化プラスチック領域100Bは、Y方向に配向した複数の繊維補強材100bと、Z方向に配向した繊維補強材100dと、マトリックス樹脂100cを有する。
図5(b)において、繊維補強材100bおよび繊維補強材100dは、連続繊維であり、織布として第1繊維強化プラスチック領域100Aに含まれている。繊維補強材100bおよび繊維補強材100dは、マトリックス樹脂100c内に少なくとも一部は埋設しているが、
図5(a)の場合と同様に、
図5(b)では、繊維補強材100bおよび繊維補強材100dを実線で示している。
【0051】
図5(a)および
図5(b)では、説明の便宜ため、第1繊維強化プラスチック領域100Aおよび第2繊維強化プラスチック領域100Bが有する繊維補強材を、繊維補強材100a,100b,100dとして示している。繊維補強材100a,100b,100dは同じ繊維補強材でもよいし、異なる繊維補強材でもよい。同様に、第1繊維強化プラスチック領域100Aが有するマトリックス樹脂100cと、第2繊維強化プラスチック領域100Bが有するマトリックス樹脂100cは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
一実施形態において、レール受け部11が有する底部11aが第1繊維強化プラスチック領域100Aを有し、一つの壁部11bが第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する。第1サイド部12aにおいて締結バネ4が配置される部分が第1繊維強化プラスチック領域100Aでもよい。アンカーボルト5が配置される第2サイド部12bが、第1繊維強化プラスチック領域100Aを有してもよい。
【0053】
図6および
図7を利用して、プレート本体10の一例を更に具体的に説明する。
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面構成の模式図である。
図7は、
図4のVIIa-VIIa線に沿った断面構成の模式図である。
図4の形態では、
図4のVIIb―VIIb線に沿った断面構成も
図7と同じであることから、
図7は、
図4のVIIb―VIIb線に沿った断面構成の模式図にも対応する。
【0054】
一実施形態に係るプレート本体10は、アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104を含む。アンダープレート101、アッパープレート102および一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104の材料は、上述した絶縁性を有する繊維強化プラスチックである。
【0055】
以下、断らない限り、繊維補強材は、連続繊維であり、繊維強化プラスチックが、複数の連続繊維によって織られた織布を含む形態を説明する。
【0056】
アンダープレート101は、プレート本体10の底面を構成する。アンダープレート101は、平面視において、プレート本体10と同じ形状を有する。本実施形態のアンダープレート101は、一対の壁部11b,11bの下部において、鉛直上方に向けて山型に隆起した部分を有する。この場合、プレート本体10の底面は、一対の壁部11b,11bに対応する部分において鉛直上方に向けて凹んでいる。上記隆起した部分(換言すれば、プレート本体10の底面における凹み部分)は、Y方向に延在している。アンダープレート101の厚さの例は、9.8mm以上且つ12.7mm以下である。本実施形態において、アンダープレート101における底部11aに対応する部分では、軌道外側の厚さが厚くなっている。
【0057】
アンダープレート101は、上述した繊維強化プラスチックによって形成される層を1層以上有する。アンダープレート101を構成する複数の繊維補強材は同じである(たとえば、ガラス繊維)。本実施形態において、アンダープレート101は、第1繊維強化プラスチック領域100Aである。
【0058】
アッパープレート102は、プレート本体10の底面と反対側に配置されている。アッパープレート102は、レール受け部11、一対の第1サイド部12a,12aの外面を構成している。換言すれば、アッパープレート102は、レール受け部11、一対の第1サイド部12a,12aの外面を構成するように、適宜曲がっている。アッパープレート102の厚さの例は、8.5mm以上且つ11.5mm以下である。
【0059】
アッパープレート102は、底部11aに対応する底部領域102aと、一対の壁部11bそれぞれに対応しており底部領域102aから鉛直上方に連続的に立ち上がった壁部領域102bと、壁部領域102bにおいて、底部領域102aと反対側の端部(壁部11bの角部)からX方向においてレール受け部11と反対に向けて連続的に曲がった上部領域102cを有する。上部領域102cにおいてレール受け部11と反対側の端部近傍は、隆起部12cの外面を構成するように曲げられている。
【0060】
アッパープレート102は、上述した繊維強化プラスチックによって形成される層を1層以上有する。アッパープレート102を構成する複数の繊維補強材は同じである(たとえば、ガラス繊維)。アッパープレート102において、底部領域102aおよび上部領域102cは、第1繊維強化プラスチック領域100Aであり、壁部領域102bは、第2繊維強化プラスチック領域100Bである。底部領域102a、壁部領域102bおよび上部領域102cは連続しているため、
図5(a)および
図5(b)に示した繊維補強材100aと繊維補強材100dは連続した繊維補強材(換言すれば、繋がった一つの繊維補強材)である。すなわち、繊維補強材100aを基準としてみた場合、繊維補強材100aが、アッパープレート102の形状に応じて曲げられている。したがって、壁部領域102bの部分では、繊維補強材100aがZ方向に曲がり、Z方向に配向した繊維補強材100dとして機能し、上部領域102cにおいて、再度、X方向に配向した繊維補強材100aとして機能する。
【0061】
一対のサイドプレート103は、アンダープレート101とアッパープレート102との間に配置されている。一対のサイドプレート103は、アッパープレート102における底部領域102aと一対の壁部領域102bとで形成される凹部の両側に配置されている。一対のサイドプレート103のY方向の長さは、プレート本体10のY方向の長さと同じである。一対のサイドプレート103は、Y方向から見て略L字状を呈する。
【0062】
サイドプレート103は、サイド部12に対応する部分である第1領域103aと、第1領域103aにおいてレール受け部11側の端部から鉛直上方に立ち上がった第2領域103bを有する。第1領域103aは、アンダープレート101に接している。第1領域103aにおいて第2サイド部12bに対応する部分は、第2サイド部12bの外面を構成している。
図6に示したように、第2領域103bの内面(レール受け部11側の面)は、壁部領域102bに接している。第2領域103bの上端面(アンダープレート101と反対側の端面)は、上部領域102cに接している。第2領域103bは、壁部11bの一部を構成している。
【0063】
サイドプレート103は、上述した繊維強化プラスチックによって形成される層を1層以上有する。サイドプレート103を構成する複数の繊維補強材は同じである(たとえば、ガラス繊維)。サイドプレート103において、第1領域103aは、第1繊維強化プラスチック領域100Aであり、第2領域103bは、第2繊維強化プラスチック領域100Bである。第1領域103aおよび第2領域103bは連続しているため、。
図5(a)および
図5(b)に示した繊維補強材100aと繊維補強材100dは連続した繊維補強材((換言すれば、繋がった一つの繊維補強材)である。すなわち、繊維補強材100aを基準とした場合、繊維補強材100aが、サイドプレート103の形状に応じて曲げられており、第2領域103bにおいてはZ方向に配向した繊維補強材100dとして機能する。
【0064】
一対のサイドブロック104は、一対の第1サイド部12aにおいて、アッパープレート102と、サイドプレート103(具体的には、第1領域103a)との間のスペースを埋めるブロック状の部材である。一対のサイドブロック104それぞれを構成する繊維強化プラスチックが有する繊維補強材は、繊維長が1~3mm程度の第1短繊維である。一対のサイドブロック104それぞれを構成する繊維強化プラスチックは、たとえば、マトリックス樹脂内に複数の第1短繊維(たとえばガラス短繊維)が埋設されることによって形成されている。一対のサイドブロック104が有する繊維補強材は、第2短繊維であってもよい。
【0065】
プレート本体10には、前述したように、貫通孔14が形成されている。本実施形態に係る貫通孔14は、
図6および
図7に示したように、ボルト本体21が配置される第1部分14aと、端板22が配置される第2部分14bと、第2部分14bから底面側に向けて広がっている第3部分14cとを有する。アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104それぞれには貫通孔14の一部(孔または切欠き)が形成されている。
【0066】
プレート本体10には、前述したように、第2サイド部12bにボルト孔部13が形成されている。具体的には、
図7に示したように、サイドプレート103における第1領域103aおよびアンダープレート101における第2サイド部12bに対応する部分にボルト孔部13に対応する孔部が形成されている。
【0067】
アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104の材料は絶縁性を有する繊維強化プラスチックである。アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104における繊維補強材の種類、密度等は、プレート本体10が、レール締結装置1としての機械的特性を満たすように設計される。アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103,103および一対のサイドブロック104,104が有するマトリックス樹脂には、たとえば、同じマトリックス樹脂を採用できる。
【0068】
本実施形態に係るレール締結装置1はたとえば次のようにして製造される。上述したプレート本体10が有するアンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103、一対のサイドブロック104および一対の締結ボルトを準備する。この際、アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103、一対のサイドブロック104には、それらを組合わせてプレート本体10を組み立てた場合に、貫通孔14およびボルト孔部13を形成するように、貫通孔14およびボルト孔部13の一部が形成されている。その後、アンダープレート101、アッパープレート102、一対のサイドプレート103および一対のサイドブロック104を上述した位置に配置(すなわち、プレート本体10を構成するように配置)した状態で且つ一対の締結ボルト20を貫通孔14に通した状態で、それらを熱溶着する。これによって、レール締結装置1が得られる。一対の締結ボルト20を配置した状態で熱溶着するため、一対の締結ボルト20もプレート本体10に一体的に固定される。この際、ボルト本体21のネジ部の隙間ども樹脂で埋められる。
【0069】
レール締結装置1が有するプレート本体10の材料は、絶縁性を有する繊維強化プラスチックである。この場合、レール2と支承体3との間に絶縁性を有するプレート本体10が介在する。そのため、金属製プレート本体と支承体3との間に絶縁板を配置することによってレール2と支承体3とを絶縁する場合より、レール2と支承体3との間の絶縁距離を長くできる。その結果、レール締結装置1では、絶縁性をより確実に確保できる。
【0070】
レール締結装置1では、前述したように、レール2と支承体3の間の絶縁距離をより長く確保できる。そのため、プレート本体10の表面に塵埃に付着したとしても、絶縁性能の低減が抑制されるので、輸送障害を低減できる。
【0071】
プレート本体10の材料が絶縁性を有する繊維強化プラスチックであることから、レール締結装置1およびレール2等の金属材料の構成部品の湿潤状態での腐食、電食等の発生を抑えることができる。
【0072】
車両走行時においてプレート本体10にはレール2によって、輪重、横圧、ふく進、レールの小返りなどによって、X方向、Y方向およびZ方向に力が作用する。プレート本体10の材料が繊維強化プラスチックであることから、レール締結装置1は、上記X方向、Y方向およびZ方向に力に対する機械的な耐性(強度など)を確保できる。
【0073】
繊維強化プラスチックでは、繊維補強材の配向方向においてより優れた機械的特性を有している。
【0074】
第1繊維強化プラスチック領域100Aは、
図5(a)に例示したように、X方向に配向した複数の繊維補強材100aと、Y方向に配向した複数の繊維補強材100bと、マトリックス樹脂100cとを含む。そのため、第1繊維強化プラスチック領域100AはX方向およびY方向において、より優れた機械的特性を有している。その結果、プレート本体10が、上記第1繊維強化プラスチック領域100Aを有する形態では、レール締結装置1は、レール締結装置として必要な機械的特性を確保し易い。
【0075】
上記第2繊維強化プラスチック領域100Bは、
図5(b)に示したように、Y方向に配向した複数の繊維補強材100bと、Z方向に配向した複数の繊維補強材100dと、マトリックス樹脂100cとを含む。そのため、第2繊維強化プラスチック領域100Bは、Y方向およびZ方向において、より優れた機械的特性を有している。したがって、プレート本体10が、上記第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する形態では、レール締結装置1は、レール締結装置として必要な機械的特性を確保し易い。
【0076】
上記のように、第1繊維強化プラスチック領域100AはX方向およびY方向において、優れた機械的特性を確保可能であり、第2繊維強化プラスチック領域100BはY方向およびZ方向において、優れた機械的特性を確保可能である。そのため、プレート本体10が、上記第1繊維強化プラスチック領域100Aと第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する形態では、レール締結装置1は、レール締結装置として必要な機械的特性を一層確保し易い。
【0077】
レール受け部11の底部11aには、車両走行時において輪重が作用し、上記一対の壁部11b,11bには横圧が作用するとともに、車両の振動などの影響でZ方向に対する力が作用する。上記一対の壁部11b、11bに対する横圧の影響で一対の壁部11b,11bは外側に押されるので、底部11aにはX方向に対する力が更に作用する。車両がレール2の長手方向を走行することから、底部11aおよび一対の壁部11b,11bには、Y方向にも力が作用する。
【0078】
底部11aに作用する輪重は、底部11aを圧縮する。同様に、壁部11bに対する横圧は壁部11bを圧縮する。繊維強化プラスチックは圧縮力に対して耐性を有する。そのため、底部11aが上記第1繊維強化プラスチック領域100Aを有し、一対の壁部11b,11bそれぞれが上記第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する場合、底部11aおよび一対の壁部11b,11bは、それらに対する圧縮力に十分耐えられる。更に、底部11aが、第1繊維強化プラスチック領域100Aを有することから、底部11aは、X方向およびY方向に作用する力に対して、より高い耐性を有する。同様に、一対の壁部11b,l1bそれぞれが、第2繊維強化プラスチック領域100Bを有することから、一対の壁部11b,l1bは、Y方向およびZ方向に作用する力にも、より高い耐性を有する。そのため、底部11aが第1繊維強化プラスチック領域100Aを有し、一対の壁部11b,11bが第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する形態では、レール締結装置1は、レール締結装置としての機械的な耐性を一層確保可能である。
【0079】
図6および
図7に示した形態では、アッパープレート102の底部領域102aが第1繊維強化プラスチック領域100Aであり、壁部領域102bが第2繊維強化プラスチック領域100Bである。そのため、底部11aが第1繊維強化プラスチック領域100Aを有し、壁部11bが第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する。したがって、
図6および
図7に示した形態においても、レール締結装置1は、レール締結装置としての機械的強度を一層確保可能である。
図6および
図7に示した形態では、アンダープレート101も第1繊維強化プラスチック領域100Aに相当する。したがって、底部11aは、上記底部領域102aとしての第1繊維強化プラスチック領域100Aとともに、アンダープレート101の底部11aに相当する領域としての第1繊維強化プラスチック領域100Aを有する。そのため、底部11aの機械的特性の向上が図られている。
【0080】
同様に、
図6および
図7に示した形態では、サイドプレート103の第2領域103bが壁部11bの一部を構成しており、上記第2領域103bは第2繊維強化プラスチック領域100Bである。したがって、壁部11bは、上記壁部領域102bとしての第2繊維強化プラスチック領域100Bとともに、サイドプレート103の第2領域103bとしての第2繊維強化プラスチック領域100Bを有する。そのため、壁部11bの機械的特性の向上が図られている。
【0081】
レール締結装置1が、
図1~
図3に示したように、一対の締結ボルト20を有する形態では、締結ボルト20は、Z方向に沿ってプレート本体10に挿入されている。この場合、車両走行時の振動などでプレート本体10には締結ボルト20を介してZ方向に引き抜き力が作用する。締結ボルト20が配置される部分が、上記第1繊維強化プラスチック領域100Aを有する場合、上記引き抜き力は第1繊維強化プラスチック領域100Aに対し、圧縮力として作用する。そのため、上記締結ボルト20が配置される部分は、上記引き抜き力に対し、機械的な耐性を更に有している。
【0082】
たとえば、
図6および
図7に示した形態では、締結ボルト20は、たとえば上部領域102cを貫通している。上部領域102cは、上記第1繊維強化プラスチック領域100Aである。そのため、
図6および
図7に示した形態では、締結ボルト20が配置される部分に、第1繊維強化プラスチック領域100Aが配置されている形態に相当する。
【0083】
図6および
図7に示した形態では、締結ボルト20は、サイドプレート103の第2領域103bの一部を貫通している。締結ボルト20によって生じる上記引き抜き力は、第2領域103bに対しては、Z方向に作用する力である。第2領域103bは、第2繊維強化プラスチック領域100Bであることから、上記Z方向に作用する力に対して十分な耐性を有する。したがって、
図6および
図7に示した形態のプレート本体10を有するレール締結装置1は、上記引き抜き力に対してより有効な構成である。
【0084】
レール2を支承体3に締結する場合、締結ボルト20には、締結バネ4が取り付けられる。締結バネ4の一端は、第1サイド部12aの上部(特に隆起部12c)に接する。レール2の振動によって締結バネ4が弾性変形した場合、締結バネ4はX方向に広がったり狭まったりすることから第1サイド部12aはX方向に力を受ける。
図6および
図7に示した形態では、第1サイド部12aの上部は、上部領域102cによって構成されている。第1サイド部12aは、レール受け部11に連続的に繋がっているため、車両走行時にY方向にも力を受ける。上部領域102cは、第1繊維強化プラスチック領域100Aであることから、上部領域102cも、X方向およびY方向に作用する力に対し、より高い耐性を有する。そのため、
図6および
図7に示した形態のプレート本体10を有するレール締結装置1では、機械的特性を一層確保可能である。
【0085】
一対のサイド部12,12がそれぞれ第2サイド部12bを有する形態では、第2サイド部12bに形成されたボルト孔部13に通されるアンカーボルト5を介してプレート本体10が支承体3に固定される。
図1に示したようにプレート本体10が有する2つの第2サイド部12bは、対角上に配置されている。第2サイド部12bがアンカーボルト5によって支承体3に固定されていることによって、車両走行時にレール受け部11に作用するX方向およびY方向の力は、第2サイド部12bにも作用する。第2サイド部12bが、第1繊維強化プラスチック領域100Aを有する場合、第2サイド部12bは、上記X方向およびY方向に作用する力に対して耐性をより有している。そのため、第1繊維強化プラスチック領域100Aを含む第2サイド部12bを有する形態は、レール締結装置1の機械的特性の向上に寄与する。
【0086】
図6および
図7に示した形態では、サイドプレート103の第1領域103aの一部が第2サイド部12bに含まれる。第1領域103aは、上記第1繊維強化プラスチック領域100Aである。そのため、
図6および
図7に示した形態では、第2サイド部12bに、第1繊維強化プラスチック領域100Aが配置されている形態に相当する。
図6および
図7に示した形態では、第1繊維強化プラスチック領域100Aに相当するアンダープレート101の一部が第2サイド部12bに含まれる。したがって、
図6および
図7に示した形態では、第2サイド部12bは、第1領域103aとしての上記第1繊維強化プラスチック領域100Aと、アンダープレート101としての第1繊維強化プラスチック領域100Aとを有する。そのため、
図6および
図7に示した形態では、機械的特性の向上により有効である。
【0087】
本発明は、上記実施形態及び実験例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれること、および、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0088】
第1繊維強化プラスチック領域および第2繊維強化プラスチック領域が繊維補強材として連続繊維を有する場合を説明したが、第1繊維強化プラスチック領域および第2繊維強化プラスチック領域が有する繊維補強材は短繊維(第1短繊維または第2短繊維)でもよい。この場合、第1繊維強化プラスチック領域では、X方向に配向された複数の短繊維を有するともに、Y方向に配向された複数の短繊維を有する。同様に、第2繊維強化プラスチック領域では、Y方向に配向された複数の短繊維を有するともに、Z方向に配向された複数の短繊維を有する。連続繊維の代わりに短繊維を使用してもよい点は、
図6および
図7を用いて説明したアンダープレート、アッパープレートおよび一対のサイドプレートにおいても同様である。上記のように短繊維を用いても、短繊維の繊維長、密度などの諸条件を適宜調整することによって、レール締結装置に要求される機械的特性を確保している。
【0089】
たとえば、繊維長が10mm以上である繊維補強材を含む繊維強化プラスチックを用いてアンダープレート、アッパープレートおよび一対のサイドプレートを構成してもよい。一実施形態において、アッパープレートおよび一対のサイドプレートを、連続繊維を含む繊維強化プラスチックで構成し、アンダープレートを、第2短繊維(たとえば、繊維長が10mm~50mm程度の繊維)を含む繊維強化プラスチックで構成してもよい。第2短繊維を含む繊維強化プラスチックは、SMC成形によって製造される。この場合、アンダープレートを量産し易く、結果として、第2短繊維を含む繊維強化プラスチックを用いてアンダープレートを構成する形態は、レール締結装置の量産に資する。したがって、第2短繊維を含む繊維強化プラスチックで構成されたアンダープレートを含むレール締結装置の形態は、機械的特性を確保しながら量産に資する形態である。
【0090】
プレート本体の絶縁性が確保できれば、繊維補強材は、炭素繊維でもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…レール締結装置、2…レール、3…支承体、4…締結バネ、5…アンカーボルト(ボルト)、10…プレート本体、11…レール受け部、11a…底部、11b…壁部、12…サイド部、12b…第2サイド部(ボルト配置部)、13…ボルト孔部、100A…第1繊維強化プラスチック領域、100B…第2繊維強化プラスチック領域、100a…繊維補強材、100b…繊維補強材、100c…マトリックス樹脂、100d…繊維補強材、102…アッパープレート、102a…底部領域、102b…壁部領域、102c…上部領域、103…サイドプレート、103a…第1領域、103b…第2領域。