(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018786
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】駐車ブレーキ構造を有する車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20240201BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61G5/10 718
A61G5/02 701
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122324
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓
(57)【要約】
【課題】介助者が操作しやすい、駐車ブレーキ構造を有する車椅子を提供を提供する。
【解決手段】主車輪5を備えた車椅子1の所定取付け位置に駐車ブレーキ構造2を取り付ける取付け部材と、基端部が枢支され、主車輪5のタイヤ面13の主軸14の延びる方向に対して交差する方向に回動自在に構成された圧接レバー部と、圧接レバー部をタイヤ面13に圧接した状態を維持するための圧接状態維持手段と、を有する駐車ブレーキ構造2を有する車椅子1であって、圧接レバー部が、タイヤ面13から離れた位置にあるロック解除状態と、圧接レバー部が、タイヤ面13に圧接した回動位置において固定されるロック状態と、を取り得る構成となっており、所定取付け位置が、車椅子1を押す介助者が立った状態で圧接レバー部を操作できる車椅子1の上方側取付け位置に設定されている、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主車輪を備えた車椅子の所定取付け位置に駐車ブレーキ構造を取り付ける取付け部材と、
基端部が枢支され、前記主車輪のタイヤ面の主軸の延びる方向に対して交差する方向に回動自在に構成された圧接レバー部と、
前記圧接レバー部を前記主車輪の前記タイヤ面に圧接した状態を維持するための圧接状態維持手段と、を有する駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、
前記圧接レバー部が、前記タイヤ面から離れた位置にあるロック解除状態と、
前記圧接レバー部が、前記主車輪の前記タイヤ面に圧接した回動位置において固定されるロック状態と、
を取り得る構成となっており、
前記所定取付け位置が、前記車椅子を押す介助者が立った状態で前記圧接レバー部を操作できる前記車椅子の上方側取付け位置に設定されていることを特徴とする、駐車ブレーキ構造を有する車椅子。
【請求項2】
前記上方側取付け位置が、前記車椅子の背もたれ部を支える背柱フレームの後方位置であることを特徴とする請求項1に記載の、駐車ブレーキ構造を有する車椅子。
【請求項3】
前記タイヤ面の主軸の延びる方向に対して前記圧接レバー部が交差する角度が直角であることを特徴とする請求項1に記載の、駐車ブレーキ構造を有する車椅子。
【請求項4】
前記所定取付け位置を前記車椅子の前記上方側取付け位置に設けることに加え、前記所定取付け位置が、前記車椅子の前方側で前記主車輪の上下方向下半部位置にも設けられていることを特徴とする請求項1に記載の、駐車ブレーキ構造を有する車椅子。
【請求項5】
前記所定取付け位置において、前記取付け部材に対する前記圧接レバー部の前記基端部の取付け位置を上下方向に調整する調整手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の、駐車ブレーキ構造を有する車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車ブレーキ構造を有する車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、使用者が車椅子に乗降する場合などに車椅子が動かないように固定する駐車ブレーキが設けられている。一般に、そのような駐車ブレーキは、車椅子の使用者が操作しやすいように、車椅子のサイドフレームに取り付けられていることが普通である。
【0003】
また、この種の駐車ブレーキは、サイドフレームへの取付け部材を設けるとともに、その取付け部材に、使用者が操作する操作レバー部と、先端に車椅子の主車輪を押圧する圧接面を有するブレーキ部材と、操作レバー部とブレーキ部材との間を接続するリンク部材と、を設けることで構成されている場合が多い。そして、車椅子の座面に座った使用者が、操作レバー部を操作して、駐車ブレーキが必要な時に、車椅子の主車輪の回転を防止するように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車椅子の駐車ブレーキを操作するのは、車椅子に座っている使用者のみならず、車椅子を押す介助者が操作したい時も多い。その場合は、介助者はサイドフレームに固定された駐車ブレーキの操作レバー部にまで手を伸ばして操作することになり、かなり前かがみになって操作しづらく、負担になっていた。
【0006】
本発明の目的は、介助者が操作しやすい、駐車ブレーキ構造を有する車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る駐車ブレーキ構造を有する車椅子は、
主車輪を備えた車椅子の所定取付け位置に駐車ブレーキ構造を取り付ける取付け部材と、
基端部が枢支され、前記主車輪のタイヤ面の主軸の延びる方向に対して交差する方向に回動自在に構成された圧接レバー部と、
前記圧接レバー部を前記主車輪の前記タイヤ面に圧接した状態を維持するための圧接状態維持手段と、を有する駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、
前記圧接レバー部が、前記タイヤ面から離れた位置にあるロック解除状態と、
前記圧接レバー部が、前記主車輪の前記タイヤ面に圧接した回動位置において固定されるロック状態と、
を取り得る構成となっており、
前記所定取付け位置が、前記車椅子を押す介助者が立った状態で前記圧接レバー部を操作できる前記車椅子の上方側取付け位置に設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様は、前記第1態様に記載の駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、前記上方側取付け位置が、前記車椅子の背もたれ部を支える背柱フレームの後方位置であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3態様は、前記第1態様に記載の駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、前記タイヤ面の主軸の延びる方向に対して前記圧接レバー部が交差する角度が直角であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4態様は、前記第1態様に記載の駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、前記所定取付け位置を前記車椅子の前記上方側取付け位置に設けることに加え、前記所定取付け位置が、前記車椅子の前方側で前記主車輪の上下方向下半部位置にも設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5態様は、前記第1態様に記載の駐車ブレーキ構造を有する車椅子であって、前記所定取付け位置において、前記取付け部材に対する前記圧接レバー部の前記基端部の取付け位置を上下方向に調整する調整手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、介助者が操作しやすい、駐車ブレーキ構造を有する車椅子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の本実施形態において、駐車ブレーキ構造を取り付ける場所を説明するための図であり、車椅子の横方向から見た斜視図である。
【
図2】本発明の本実施形態において、駐車ブレーキ構造を取り付ける場所を説明するための図であり、車椅子を後方向から見た斜視図である。
【
図3】第1駐車ブレーキ構造の固定前の様子を示す右側後部の主車輪付近の斜視図である。
【
図4】第1駐車ブレーキ構造の固定後の様子を示す右側後部の主車輪付近の斜視図である。
【
図5】(a)(b)はそれぞれ駐車ブレーキ構造の固定度合いの調整構造を説明するための図であり、後方から見た図である。
【
図6】第1駐車ブレーキ構造を後方から見た部分図である。
【
図7】第1駐車ブレーキ構造の一例を示す図であり、ロック解除状態を示す図である。
【
図8】第1駐車ブレーキ構造の一例を示す図であり、ロック状態を示す図である。
【
図9】駐車ブレーキ構造を背柱フレームの後方位置と、主車輪の前方側寄り位置との2箇所に設けた車椅子の斜視図である。
【
図10】第1駐車ブレーキ構造変形例の固定前の様子を示す右側後部の主車輪付近の斜視図である。
【
図11】第1駐車ブレーキ構造変形例の回動操作中の様子を示す右側後部の主車輪付近の斜視図である。
【
図12】第1駐車ブレーキ構造変形例の固定後の様子を示す右側後部の主車輪付近の斜視図である。
【
図13】第1駐車ブレーキ構造変形例を主車輪の前方下側寄り位置において固定できるようにサイドフレーム等に固定した様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る一実施形態である、駐車ブレーキ構造を有する車椅子(以下、適宜、単に車椅子と略称する)について詳細に説明する。
図1は車椅子の略横方向から見た外観を示す斜視図であり、
図2は車椅子の後方向から見た外観を示す斜視図である。
【0015】
なお、本明細書に係る車椅子1や駐車ブレーキ構造2の説明において、前後方向とは、車椅子1が進行する方向を前方向、その反対を後方向と称し、
図1及び
図2中矢印Xで示す方向である。横方向とは前後方向と直交する方向であって、車椅子の幅方向であり、
図1及び
図2中矢印Yで示す方向である。なお、
図2に示すように、横方向の右方向、左方向は車椅子を押す介助者から見た方向である。上下方向(高さ方向)は、前後方向及び横方向に対してそれぞれ直交する方向であり、
図1及び
図2中矢印Zで示す方向である。
【0016】
(車椅子の全体構成)
図1に示すように、この車椅子1は、一対の略L字形のメインフレーム4,4の後方側折曲位置近くに、後輪となる一対の主車輪5,5を設けるとともに、メインフレーム4,4の先端側に一対の前輪6,6を設けている。メインフレーム4,4の地面に対して略平行なフレーム部分は、サイドフレーム7,7として構成され、そのサイドフレーム7,7に座面部8を架け渡すように設けている。
【0017】
メインフレーム4,4の後方側は折曲位置から後方側斜め上方に延出され、背もたれ部12を保持する一対の背柱フレーム9,9を構成している。背柱フレーム9,9の先端側は後方側に折り曲げられ、一対のグリップハンドル10,10が形成してある。図示してはいないが、グリップハンドル10,10の下方位置にはブレーキレバーが設けられている。
また、主車輪5,5の高さ位置よりも少しだけ高い位置に前方に延びるように一対のアームレスト11,11が背柱フレーム9,9にそれぞれ設けられている。
【0018】
図1において、主車輪5,5のタイヤ面13,13から背柱フレーム9,9が上方に向けて突き抜けるように見える位置は、主車輪5,5の前後方向の中央位置(主車輪5,5の回転中心)とほぼ一致させている。したがって、後述する駐車ブレーキ構造2a,2bを背柱フレーム9,9の後方側に取付けたときに、後述する下側圧接レバー22(
図7及び
図8参照)は主車輪5,5の最も高い位置を含む上側高位置領域に当接することになる。
【0019】
下側圧接レバー22は、主車輪5のタイヤ面13の主軸14の延びる方向に対して交差する方向に回動自在に構成されている。
ここで、「主車輪5のタイヤ面13の主軸14」とは、
図3に示すように、車椅子1のタイヤ面13を上方から見た場合に、タイヤ面13は、前後方向に延びる帯形面として認識されるが、その帯形面の延びる方向を前記した主軸14としている。
【0020】
交差する方向としては、30°、60°、90°などの各種の交差角度が例示できる。但し、一般的に言えば、90°、即ち直角に近い角度ほど、タイヤ面に対する圧接力が直接的に伝わりやすいと言える。なお、交差する角度が90°よりも小さい角度であってもタイヤ面との圧接面積を増やして駐車ブレーキとしての機能を達成する構成も考えられる。
前記した特許請求の範囲に対応する記載の「直角」とはタイヤ面に対する圧接力が直接的に伝わりやすく、駐車ブレーキの実効性を確保できる90°前後の角度範囲を含む意味で用いている。
【0021】
(駐車ブレーキ構造)
駐車ブレーキ構造2は、所定取付け位置に少なくとも1つ取付けられる駐車ブレーキである。所定取付け位置は、車椅子1のフレーム等の構成要素に設けられる。
本実施形態に係る車椅子1は、少なくとも一つの上方側取付け位置を有している。上方側取付け位置は、介助者が立った状態で駐車ブレーキ構造の圧接レバー部を操作できる車椅子1の所定位置に設けられる。
【0022】
図1~
図4に示すように、この第1実施形態に係る構成では、上方側取付け位置が、背もたれ部12を支える背柱フレーム9,9の後方位置である場合が示してある。
通常、駐車ブレーキ構造2は通常、左右一対設けられ、左右の主車輪5,5を固定するように構成される。
【0023】
(第1駐車ブレーキ構造の構成例)
以下、本第1実施形態に係る第1駐車ブレーキ構造について、図面に基づいて説明する。
図3~
図5に示すように、「取付け部材」は取付け金具25などによって構成され、車椅子の部材の各種の取付け対象に対して良好な状態で取り付ける取付面を備えている。例えば、所定取付け位置が、前記車椅子の背もたれ部を支える背柱フレーム9である場合は、背柱フレーム9の外側円筒面に対応する円筒形状を有していてもよい。また、取付け対象に対して取り付ける手段は、取付ネジ、接着剤等の各種の手段が例示できる。なお、取付け対象は、圧接レバー部の圧接部が届く範囲の部材から選択される。
【0024】
取付け部材に圧接レバー部が枢支される構成は、回動動作の支軸が取付け部材自体に立設されている場合と、取付け部材に取付けられるその他の部材に支軸が立設されている場合とがある。
【0025】
図5(a)(b)はそれぞれ取付け部材にスライド基体を取付けた構成の一例を示す図である。
図5(a)(b)に示す構成では、背柱フレーム9に取付け金具25を取付け、その取付け金具25によって、リンク機構37(
図7及び
図8参照)の設置位置を上下方向にスライド可能なように構成してある。具体的には、スライド基体26の所定箇所に上下方向に上側長孔27a,下側長孔27bを設け、上側長孔27a,下側長孔27bの固定する位置をそれぞれネジ部材28a,28bによって調整して取り付ける。
【0026】
ネジ部材28a,28bに対する上側長孔27a,下側長孔27bのそれぞれの固定する位置を
図5(a)に示すようにスライド基体26を上方にずらした位置にすると、圧接レバー部の圧接面の位置が上方位置にずれるので、タイヤ面に対する圧接の程度が小さくなり、ブレーキの効く程度が緩くなる。これに対して、
図5(b)に示すようにスライド基体26を下方にずらすと、圧接レバー部の圧接面の位置が下方位置にずれるので、タイヤ面に対する圧接の程度が大きくなり、ブレーキの効く程度がきつくできる。
前記スライド基体26は前記調整手段の一例である。
【0027】
図7はロック解除状態におけるリンク機構の様子を示す図、
図8はそのロック状態におけるリンク機構の様子を示す図である。
以下、第1駐車ブレーキ構造2aのリンク機構37について説明する。
なお、
図1~
図4に示す回動レバー部材23は、
図7及び
図8に示す上側操作レバー21,下側圧接レバー22をまとめて簡略化して描いたものである。したがって、
図1~
図4に示す回動レバー部材23は、
図7及び
図8に示すような上側操作レバー21,下側圧接レバー22をそれぞれ有した構成になっている。
スライド基体26には、左右両側の主車輪から見て横方向内側の上側位置に第1支軸16を立設し、横方向外側の下側位置に第2支軸17を立設してある。そして、短いリンク杆である第1リンク18の基端部を第1支軸16に回動自在に支持してある。また、第1リンク18の他端部は第1回動接続部19によって、上側操作レバー21と回動自在に接続してある。
【0028】
一方、第2支軸17には下側圧接レバー22の基端側が回動自在に支持されている。
図8に示す状態において、上側操作レバー21は、基端部側が略45°の角度で内側斜め上側に傾いた上向き部31を備えた棒形部材であり、上向き部31から外側に延びる操作杆部41を有している。
【0029】
また、同様に
図8に示す状態において、下側圧接レバー22は、基端部側が略30°の角度で内側斜め下側に傾いた下向き部32を備えた棒形部材であり、下向き部32から外側に延びる圧接杆部42を有している。
なお、下側圧接レバー22は、前記した圧接レバー部の一例である。
【0030】
下向き部32と圧接杆部42の接続位置域には第2回動接続部20が設けられている。
第2回動接続部20は、上側操作レバー21と下側圧接レバー22との間の回動動作を良好に行えるように中央部よりも基端部側に設けられている。
第2支軸17から第2回動接続部20までの長さは、第1リンク18の長さとほぼ同等に形成されている。
図7及び
図8に示す態様では、上側操作レバー21と下側圧接レバー22は操作杆部41と圧接杆部42がほぼ平行となった状態が示されている。なお、上側操作レバー21,下側圧接レバー22は第2回動接続部20においてそれぞれ独立して回動自在に構成されている。
この構成では、第1支軸16と第2支軸17を固定軸として、第1回動接続部19と第2回動接続部20とがリンク状に移動できる構成になる。
つまり、
図7及び
図8に示すように、第1回動接続部19及び第2回動接続部20は、第1リンク18、上側操作レバー21、及び下側圧接レバー22間において移動可能な回動接続部として機能することができる。
【0031】
また、第2支軸17の外周部にはねじりコイルバネ33が設けられ、
図8の矢印44に示す方向に回動レバー部材23を上方に付勢するように設けられているので、ねじりコイルバネ33の付勢力に逆らって、
図7の矢印45で示すように下方に回動レバー部材23を下方に回動させると、
図8に示すように、第1リンク18と上向き部31を回動接続する第1回動接続部19は、傾斜した山形の頂点位置にあって、固定点となり、リンク機構37において、回転がロックされた状態となるように設定してある。
【0032】
この固定点の状態では、
図4に示すように、回動レバー部材23の下面は強くタイヤ面13を圧接する状態に設定できるので、駐車ブレーキ構造として機能させることができる。また、この圧接状態の強度を設定するスライド基体26を有しているので、適宜、良好な状態で駐車ブレーキ機能を発揮させることができる。
この実施形態では、前記した「圧接状態維持手段」は、ねじりコイルバネ33のような付勢手段34を含む上記リンク機構37によって構成されていることになる。なお、
図4及び
図5において符号24は回動レバー部材23の基端部域を覆うカバー部材である。
【0033】
なお、前記
図7及び
図8を用いて説明した、本実施形態に係る第1駐車ブレーキ構造2aはリンク機構37の一構成例にすぎない。他の圧接状態維持手段を備えた構成を採用し、圧接レバー部が、タイヤ面から離れた位置にあるロック解除状態と、圧接レバー部が、タイヤ面に圧接した回動位置において固定されるロック状態と、を取り得る駐車ブレーキ構造は各種提案できるものである。
【0034】
例えば、ねじりコイルバネ33に代えて、各種スプリング、板バネ等の弾性手段で構成される付勢手段34を採用する場合がある。また、付勢手段に対して逆らうように、圧接レバー部を移動させたときに、圧接状態維持のために、各種の係合手段を設けることで、圧接状態を維持する構成など、各種の構成が採用できる。
他には、固定状態を維持する止め具などの機構を流用する構成も考えられる。
【0035】
以下、本実施形態における構成の利点を説明する。
介助者は、通常、車椅子を押す場合、グリップハンドル10,10を両手で持って車椅子を押すことになる。この場合、グリップハンドル10,10のブレーキを作動させた状態で、駐車ブレーキをオンにしたい場合があるが、従来の車椅子では、サイドフレームに駐車ブレーキが設けられ、使用者による駐車ブレーキを前提とする場合が多いので、介助者の判断で駐車ブレーキをオン、オフを実行することが難しい場合があった。
【0036】
これに対して、本実施形態の構成であれば、グリップハンドル10,10の近くで、駐車ブレーキの操作を行うことができるので、介助者だけの判断で的確に駐車ブレーキのオン、オフを実行できる利点がある。
【0037】
なお、従来の車椅子1のサイドフレーム7に駐車ブレーキを設けた構成であると、介助者は、立った状態から、車椅子1の右側、左側に移動し、上体をかがめて駐車ブレーキの操作レバー部を操作する作業を行わなければならず、介助者の負担が大きかったが、本実施例では介助者の負担を低減することができる。
【0038】
所定取付け位置を、車椅子1の背もたれ部12を支える背柱フレーム9の後方位置に設けることで、駐車ブレーキ構造を取り付けるための取付け用フレームを設ける必要がなく、低コストで実施できる。また、背もたれ部12を支える背柱フレーム9は使用者の上体の重量を支えるフレームであるから、強度的にも十分である。
【0039】
また、一般的な車椅子において、背柱フレームと主車輪の最上部域のタイヤ面とは、近接していることが多いので、圧接レバー部の回動部の長さを短くできる利点もある。
実施形態に示される第1駐車ブレーキ構造2a、第1駐車ブレーキ構造変形例2bは前記したような、従来のブレーキ部材、操作レバー部、リンク部材などを使用する構成に比べて、小型化が可能である利点がある。
【0040】
また、
図1~
図8に示される第1駐車ブレーキ構造2aであれば、介助者が操作する操作レバー部と圧接レバー部が近接した位置に上下方向に並んで設けられているので、介助者は、操作レバー部である上側操作レバー21を操作するだけで、圧接レバー部である下側圧接レバー22も自動的に操作することができるので、初めて本実施形態に係る車椅子を操作する介助者であっても、直感的に操作が分かりやすい利点がある。
【0041】
[第2実施形態]
この実施形態は、所定取付け位置を車椅子1に2箇所設けたことを特徴としている。
即ち、
図9に示すように、第1の所定取付け位置として、車椅子1の上方側取付け位置に、第1駐車ブレーキ構造2aを設けるとともに、第2の所定取付け位置として、車椅子1の前方側で主車輪5の前側位置を選ぶとともに、その前側位置に駐車ブレーキ構造36を設ける構成である。なお、前側位置を上下方向下半部又はその周辺域に設けることも可能である。
【0042】
この実施形態のパターンは2通りが考えられる。
1つ目は、
図9に示すように、第2の所定取付け位置に設けられる駐車ブレーキ構造36は、座面に座る使用者が操作しやすいように、垂直方向に操作レバー48を有する駐車ブレーキ構造を採用する構成である。この場合には、第1の所定取付け位置に取付けられる駐車ブレーキ構造と、第2の所定取付け位置に取付けられる駐車ブレーキ構造とは異なる構成になる。
【0043】
2つ目としては、
図10~
図12の構成と
図13の構成に一例として示すように、介助者が操作する場合の操作の統一性の観点や、小型化の利点から、第1の所定取付け位置に設けられた駐車ブレーキ構造2a,2bと同じ構成の駐車ブレーキ構造を第2の所定取付け位置にも設ける構成である。
【0044】
上記2つの構成の違いは、どちらが好ましいということではなく、車椅子が使用される目的、使用者の好み、車椅子を購入又は貸与される場合に、購入者又は使用者が選択できるオプションとして用意されることが好ましい。
【0045】
[第3実施形態]
図10~
図13に示される第3実施形態は、第1駐車ブレーキ構造変形例2bを簡単に説明するための実施形態である。
この第1駐車ブレーキ構造変形例2bにおいても、
図10のロック解除位置から
図11の回動操作状態を経て、
図12に示すロック状態になる。
図13はサイドフレーム7(
図1参照)自体、又はサイドフレーム7などに付設された固定フレーム38等に第1駐車ブレーキ構造変形例2bを取付けた様子を示す斜視図である。
この構成でも、車椅子1の前方側で主車輪5の上下方向下半部又は上下方向下半部の上側の周辺域位置に第1駐車ブレーキ構造変形例2bを設けている。
【0046】
第1駐車ブレーキ構造2aと第1駐車ブレーキ構造変形例2bとの構成の違いは、取付け金具のような取付け部材に直接に第1支軸16と第2支軸17を立設した点と、上側操作レバー21に指が係止しやすい指係止部47を設けた点にある。なお、下側圧接レバー22が上側操作レバー21に押されるように回動し、
図12に示すように、ロック状態に固定される構成になっている。このようなリンク機構39は、
図7及び
図8で説明したリンク機構37とほぼ同じ構成で実施できる。
また、前記したように各実施形態において、別の構成のリンク機構を採用することを除外するものではない。
【0047】
なお、本発明における「車椅子」には、使用者の歩行を補助する各種走行車も含めることができる場合がある。
これは、走行車の種類によっては、利用者が座ることができる座面を有し、介助者が後方から押す構成のものがあるからである。
【0048】
以上、実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の構成には限定されない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて判断されるべきであり、その範囲内であれば、多様な変形や構成の追加、又は改良が行えることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1:車椅子
2:駐車ブレーキ構造
2a:第1駐車ブレーキ構造
2b:第1駐車ブレーキ構造変形例
5:主車輪
9:背柱フレーム
12:背もたれ部
13:タイヤ面
14:タイヤ面の主軸
21:上側操作レバー(操作レバー部の一例)
22:下側圧接レバー(圧接レバー部の一例)
25:取付け金具(取付け部材の一例)
26:スライド基体(調整手段の一例)
27a:上側長孔
27b:下側長孔
28a,b:固定ネジ
33:ねじりコイルバネ(付勢手段の一例)