(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001879
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電線
(51)【国際特許分類】
H01B 7/36 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01B7/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101923
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2022100593
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 泰斗
【テーマコード(参考)】
5G315
【Fターム(参考)】
5G315JA02
5G315JB02
5G315JC02
(57)【要約】
【課題】共用性・汎用性に優れた電線を提供すること。
【解決手段】電線1は、導体21と、導体21の外周を取り囲む第1絶縁層22と、第1絶縁層22の外周を取り囲む第2絶縁層23と、を有する絶縁線心20aを備える。第1絶縁層22と第2絶縁層23とは、異なる色に着色されており、第2絶縁層23は絶縁線心20aの最外層であり、且つ、第2絶縁層23を剥離することによって第1絶縁層22が絶縁線心20aの最外層として露出する、ように構成される。第1絶縁層22を構成する材料の融点は、第2絶縁層23を構成する材料の融点よりも高い。第1絶縁層22及び第2絶縁層23の少なくとも一方は、ビニル樹脂から構成される。第1絶縁層22と第2絶縁層23とが剥離剤を挟んで積層される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体の外周を取り囲む第1絶縁層と、前記第1絶縁層の外周を取り囲む第2絶縁層と、を有する絶縁線心を備える、電線であって、
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とは、異なる色に着色されており、
前記第2絶縁層は前記絶縁線心の最外層であり、且つ、前記第2絶縁層を剥離することによって前記第1絶縁層が前記絶縁線心の最外層として露出する、ように構成される、
電線。
【請求項2】
請求項1に記載の電線において、
前記第1絶縁層を構成する材料の融点は、前記第2絶縁層を構成する材料の融点よりも高い、
電線。
【請求項3】
請求項1に記載の電線において、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の少なくとも一方は、ビニル樹脂から構成される、
電線。
【請求項4】
請求項1に記載の電線において
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが剥離剤を挟んで積層される、
電線。
【請求項5】
請求項1に記載の電線であって、
他の導体と、前記他の導体の外周を取り囲む第3絶縁層と、を有する他の絶縁線心を、更に備え、
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層と前記第3絶縁層とは、異なる色に着色されている、
電線。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の電線において、
前記第1絶縁層は、架橋ポリエチレンから構成され、
前記第2絶縁層は、ポリ塩化ビニルから構成され、且つ、当該第2絶縁層の周方向における少なくとも一箇所に当該絶縁線心の軸線方向に沿って延びる線状の薄肉部を有する、
電線。
【請求項7】
請求項6に記載の電線において、
前記第2絶縁層は、複数の箇所に前記薄肉部を有し、
前記軸線方向に直交する断面において、一の前記薄肉部と、前記一の前記薄肉部に周方向において隣り合う他の前記薄肉部と、が前記絶縁線心の中心に対してなす中心角が、90度以上180度以下である、
電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体と、導体の外周を取り囲む複数の絶縁層と、を有する絶縁線心を備える電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導体を絶縁層で被覆した絶縁線心を用いた電線が提案されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-216118号公報
【特許文献2】特開2003-223820号公報
【特許文献3】特開2010-027416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成を有する電線は、例えば、電力供給用の電線(いわゆる電力用ケーブル)として用いられる場合がある。一般に、家屋等の建造物では、外部電源(例えば、電柱に設けられる柱上変圧器)から、建造物に設けられた分電盤、及び、建造物内に配索された電力供給用の電線(電力用ケーブル)を介して、電気製品等の負荷への配電が行われるようになっている。この種の電線として、通常、複数本の絶縁線心がシース等で束ねられた多芯型の電線が用いられる。ここで、電線への印加電圧の大小や個々の絶縁線心の用途等を識別する目的で、通常、複数本の絶縁線心の各々には異なる色の絶縁層が設けられる。
【0005】
例えば、1本のアース線と2本の電圧線とが束ねられた単相3線式の電線の場合、3本の絶縁線心の識別と、電線への印加電圧の大小(例えば、100V又は200V)の識別と、を目的として、各々の絶縁層の配色が異なる。具体的には、一般に、100V用の電線には、アース線(緑色)、電圧線の一つである中性線(即ち、印加電圧が0Vである絶縁線心。白色)、及び、電圧線の一つであるライブ線(即ち、印加電圧が+100Vである絶縁線心。黒色)が含まれている。一方、200V用の電線には、アース線(緑色)、電圧線の一つであるライブ線(即ち、印加電圧が-100Vである絶縁線心。赤色)、及び、電圧線の一つであるライブ線(即ち、印加電圧が+100Vである絶縁線心。黒色)が含まれている。両者は、中性線(白色)とライブ線(赤色)との配色が異なることで、外見上で識別が可能となっている。
【0006】
ところが、中性線(白色)及びライブ線(赤色)には、一般に同じ導体が用いられるため、これら2つの絶縁線心は、絶縁層の色が異なる点を除いて電気的特性に相違はない。即ち、上述した100V用の電線と200V用の電線とは、外見上は相違するものの、電気的特性は相違しない。このように、電気的特性が相違しないにもかかわらず複数種類の電線を製造することは、電線の生産性や在庫管理等の点で好ましくない。そこで、出来る限り電線の共用化・汎用化を図ることが望まれている。なお、上記説明から理解されるように、単相3線式の電線に限らず、他の種類の電線においても、上記同様に共用化・汎用化を図ることが望ましい。
【0007】
本発明の目的の一つは、共用性・汎用性に優れた電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線は、以下を特徴としている。
【0009】
導体と、前記導体の外周を取り囲む第1絶縁層と、前記第1絶縁層の外周を取り囲む第2絶縁層と、を有する絶縁線心を備える電線であって、
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とは、異なる色に着色されており、
前記第2絶縁層は前記絶縁線心の最外層であり、且つ、前記第2絶縁層を剥離することによって前記第1絶縁層が前記絶縁線心の最外層として露出する、ように構成される、
電線であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線が有する絶縁線心が、導体と、互いに色の異なる第1絶縁層及び第2絶縁層と、を有する。そのため、絶縁線心をそのまま用いて第2絶縁層が最外層にある状態、及び、第2絶縁層の少なくとも一部を剥離した(即ち、いわゆる皮剥き処理を施した)絶縁線心を用いて第1絶縁層が最外層として露出する状態の何れか一方を、電線の用途に応じて選択することができる。即ち、単一種類の電線を用いながら、用途に合わせて絶縁線心(ひいては、電線)の外見を異ならせることができる。したがって、本構成の電線は、共用性・汎用性に優れている。
【0011】
例えば、本発明の絶縁線心を単相3線式の電線に用いる場合、第1絶縁層を赤色に着色し且つ第2絶縁層を白色に着色すれば、100V用の電線を、本発明の絶縁線心をそのまま用いて第2絶縁層が最外層にある絶縁線心(白色)、アース線(緑色)及びライブ線(黒色)で構成し、200V用の電線を、第2絶縁層を剥離して第1絶縁層が最外層として露出した絶縁線心(赤色)、アース線(緑色)及びライブ線(黒色)で構成することができる。
【0012】
なお、上記「異なる色」とは、例えば、典型的なRGB色空間(但し、R、G及びBの各々の度合いを0~255の値で表現する。)を用いると、「R、G及びBの少なくとも一つにおいて、第1絶縁層の値と第2絶縁層の値との差の絶対値が200以上である」と、定義し得る。一例として、白色(R:G:B=255:255:255)と赤色(R:G:B=255:0:0)は、G及びBにおいて、値の差の絶対値が200以上である。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電線の端部を、内部構造の理解容易化のために各構成部材の一部を適宜取り除いて示す斜視図である。
【
図3】
図3は、白色の第2絶縁層が剥離されずに最外層として露出する状態にある絶縁線心の端部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、白色の第2絶縁層の一部が剥離されて赤色の第1絶縁層が最外層として露出する状態にある絶縁線心の端部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電線が有する絶縁線心の端部を示す、
図3に対応する斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5におけるA部を電線の軸線方向から見たときの拡大図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す絶縁線心から第2絶縁層が剥離される様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す絶縁線心から第2絶縁層が剥離される様子を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図5に示す絶縁線心から第2絶縁層が剥離される様子を示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図5に示す絶縁線心から第2絶縁層が適正に剥離されない場合を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電線1について説明する。電線1は、単相3線式の電力供給用の電線(いわゆる電力用ケーブル)である。なお、以下では、単相3線式の電線1を例に挙げて本発明の第1実施形態を説明するが、後述するように、本発明の「電線」は単相3線式の電線1に限定されない。後述する第2実施形態においても、同様である。
【0016】
[ケーブルの構成]
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る電線1は、線心束10と、線心束10の外周に直接接触するように巻き付けられる帯状の保持テープ40と、保持テープ40を覆うように設けられる管形状のシース50と、を備える。線心束10は、3本の絶縁線心20と、介在物30と、を含んでいる。3本の絶縁線心20の構成の詳細については後述する。
【0017】
線心束10は、3本の絶縁線心20と、介在物30と、を撚り合わせずに束ねて形成されている。なお、3本の絶縁線心20は、撚り合わせられて形成されていてもよい。ここで、撚りの形態は、特に制限されないが、S撚り、Z撚り、及び、SZ撚り(交互撚り)の何れであってもよい。
【0018】
保持テープ40は、
図1に示すように、線心束10の外周に直接接触するように巻き付けられている。なお、電線1は、保持テープ40を有さなくてもよい。保持テープ40を用いる場合、シース50を形成(具体的には、押出成形)する際の熱によって溶融した際にシース50に融着することが可能なオレフィン系の樹脂材料で、保持テープ40を形成してもよい。これにより、電線1の使用時(具体的には、屋内等への配索時に皮剥きを行う際)に保持テープ40及びシース50を一括して切断して一纏めに除去するとき、保持テープ40とシース50とを分別して廃棄する必要がなくなる。
【0019】
管状のシース50は、保持テープ40が巻かれた線心束10の外周を覆っている。シース50は、オレフィン系の樹脂材料から形成されている。シース50は、外周に保持テープ40が巻かれた線心束10の外周に、加熱溶融された樹脂材料を管形状を有するように押出成形することにより形成されている。これにより、線心束10及び保持テープ40がシース50によって保護される。
【0020】
[3本の絶縁線心の構成の詳細]
次いで、電線1が備える3本の絶縁線心20の構成の詳細について説明する。3本の絶縁線心20は、具体的には、
図1及び
図2に示すように、絶縁線心20aと、絶縁線心20bと、絶縁線心20cと、で構成されている。
【0021】
絶縁線心20aは、
図2に示すように、線状の導体21と、導体21の外周を取り囲む第1絶縁層22と、第1絶縁層22の外周を取り囲む第2絶縁層23と、から構成されている。第2絶縁層23は、絶縁線心20aの最外層として露出している。第1実施形態では、第1絶縁層22は、赤色に着色された樹脂材料で構成されており、第2絶縁層23は、白色に着色された樹脂材料で構成されている。第1絶縁層22及び第2絶縁層23を構成する樹脂材料の好ましい例については、後述する。
【0022】
よって、絶縁線心20aは、そのまま用いられる場合、
図3に示すように、白色の第2絶縁層23が最外層として露出した状態となる。この場合、絶縁線心20aは、外見上、白色の絶縁線心として視認されることになる。そこで、この場合、絶縁線心20aは、例えば、100V用の単相3線式の電線における白色の中性線(即ち、印加電圧が0Vである絶縁線心)として使用可能である。
【0023】
一方、絶縁線心20aは、白色の第2絶縁層23を剥離して用いられる場合、
図4に示すように、赤色の第1絶縁層22が最外層として露出した状態となる。この場合、絶縁線心20aは、外見上、赤色の絶縁線心として視認されることになる。そこで、この場合、絶縁線心20aは、200V用の単相3線式の電線における赤色のライブ線(即ち、印加電圧が-100Vである絶縁線心)として使用可能である。
【0024】
より具体的には、例えば、家屋等の建造物に電線1を配索する際、電線1を100V用の電線として用いるときには、電線1の配索を行う作業者が、電線1をそのまま用いて配索を行えばよい。これにより、電線1が配索された後に、別の作業者がより具体的な施工作業を行う際、別の作業者は、絶縁線心20aの外観(白色)に基づいて電線1を100V用の電線として認識できることになる。これに対し、電線1を200V用の電線として用いるときには、電線1の配索を行う作業者が、電線1の端末部において、絶縁線心20aの第2絶縁層23をカッター等で剥離して(即ち、いわゆる皮剥き処理を施して)第1絶縁層22を露出させた上で、配索を行えばよい。これにより、電線1が配索された後に、別の作業者は、絶縁線心20aの外観(赤色)に基づいて電線1を200V用の電線として認識できることになる。なお、このような用途においては、第2絶縁層23は、配索後に別の作業者が見ることになる程度の範囲(例えば、電線1の端末部から絶縁線心20aが露出している範囲)において剥離されれば十分である。
【0025】
絶縁線心20bは、
図2に示すように、線状の導体21と、導体21の外周を取り囲む第3絶縁層24とで構成されている。第3絶縁層24は最外層として露出している。第1実施形態では、第3絶縁層24は黒色に着色された樹脂材料で構成されている。よって、絶縁線心20bは、100V用の単相3線式の電線、及び、200V用の単相3線式の電線の何れにおいても、黒色のライブ線(即ち、印加電圧が+100Vである絶縁線心)として使用可能である。
【0026】
絶縁線心20cは、
図2に示すように、線状の導体21と、導体21の外周を取り囲む第4絶縁層25とで構成されている。第4絶縁層25は最外層として露出している。第1実施形態では、第4絶縁層25は緑色に着色された樹脂材料で構成されている。よって、絶縁線心20cは、100V用の単相3線式の電線、及び、200V用の単相3線式の電線の何れにおいても、緑色のアース線として使用可能である。
【0027】
以上より、絶縁線心20aがそのまま(第2絶縁層23が剥離されずに)用いられる場合(
図3参照)、電線1は、白色の中性線としての絶縁線心20a、黒色のライブ線としての絶縁線心20b及び緑色のアース線としての絶縁線心20cを備えるように、視認される。即ち、電線1を100V用の単相3線式の電線として使用可能となる。一方、絶縁線心20aが第2絶縁層23を剥離して用いられる場合(
図4参照)、電線1は、赤色のライブ線としての絶縁線心20a、黒色のライブ線としての絶縁線心20b及び緑色のアース線としての絶縁線心20cを備えるように、視認される。即ち、電線1を200V用の単相3線式の電線として使用可能となる。このように、単一種類の電線1を用いながら、電線1の用途に合わせて電線1の外見を異ならせることができる。
【0028】
絶縁線心20bでは、導体21の外周を取り囲む第3絶縁層24が、十分な絶縁特性を発揮し得る程度の厚さを有し、絶縁線心20cでは、導体21の外周を取り囲む第4絶縁層25が、十分な絶縁特性を発揮し得る程度の厚さを有している。
【0029】
絶縁線心20aでは、第1絶縁層22は、第2絶縁層23が剥離された状態(即ち、導体21の外周を第1絶縁層22のみが取り囲む状態)において十分な絶縁特性を発揮し得る程度の厚さ(即ち、第3絶縁層24及び第4絶縁層25と同等の厚さ)を有している。これにより、第2絶縁層23が剥離された状態においても、絶縁線心20aは、十分な絶縁特性を維持し得る。
【0030】
更に、絶縁線心20aでは、第2絶縁層23は、第2絶縁層23が剥離されていない状態において第1絶縁層22が透けて見えない程度の厚さを有している。これにより、作業者が絶縁線心20aの色を誤って視認することを避けられる。
【0031】
絶縁線心20aの第1絶縁層22及び第2絶縁層23を構成する樹脂材料の好ましい例について、以下に述べる。第一の例として、第1絶縁層22に架橋ポリエチレンが用いられ、第2絶縁層23に耐熱ポリエチレン又はポリエチレンが用いられることが好ましい。耐熱ポリエチレンやポリエチレンに比べて架橋ポリエチレンは絶縁性に優れるため、第1実施形態では、第2絶縁層23に比べて導体21に近い位置にある第1絶縁層22に、架橋ポリエチレンが用いられている。第1実施形態では、ビニル樹脂が用いられていないことから、環境負荷を小さくできる点でメリットがある。第1実施形態では、第2絶縁層23を第1絶縁層22から剥離し易くするため、第1絶縁層22と第2絶縁層23との間に剥離剤を設けることが好ましい。
【0032】
第二の例として、第1絶縁層22に架橋ポリエチレンが用いられ、第2絶縁層23にビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル。即ち、PVC)が用いられることが好ましい。更に、第三の例として、第1絶縁層22及び第2絶縁層23の双方にビニル樹脂が用いられることが好ましい。第二の例及び第三の例で用いられるビニル樹脂は、一般に剥離性に優れるため、上述した第一の例とは異なり、第1絶縁層22と第2絶縁層23との間に剥離剤を設けなくてもよい点でメリットがある。
【0033】
更に、第1絶縁層22及び第2絶縁層23を構成する樹脂材料の好ましい特性や材質について、以下に述べる。絶縁線心20aでは、電線1の用途に合わせて絶縁線心20aの外見を異ならせるための作業である第1絶縁層22から第2絶縁層23を剥離する作業が、容易であることが好ましい。このため、第1絶縁層22を構成する材料の融点が、第2絶縁層23を構成する材料の融点よりも高いことが好適である。これによれば、第1絶縁層22及び第2絶縁層23をこの順に押出成形する場合、成形済みの第1絶縁層22が第2絶縁層23の熱で溶融して、第1絶縁層22と第2絶縁層23とが過度に密着することを抑制できる。その結果、第1絶縁層22から第2絶縁層23を剥離する作業が容易になる。
【0034】
更に、上述した第二の例のように、第1絶縁層22及び第2絶縁層23の少なくとも一方が、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル。即ち、PVC。)から構成されることが好適である。例えば、第1絶縁層22及び第2絶縁層23の一方をPVCで構成し、他方をPE(ポリエチレン)で構成することが好適である。これによれば、ビニル樹脂は一般に剥離性に優れるため、第1絶縁層22から第2絶縁層23を剥離する作業が容易になる。なお、上述した第三の例のように、第1絶縁層22及び第2絶縁層23の双方をビニル樹脂で構成してもよい。
【0035】
更に、上述した第一の例のように、第1絶縁層22と第2絶縁層23とが剥離剤を挟んで積層されることが好適である。これによれば、第1絶縁層22から第2絶縁層23を剥離する作業が容易になる。
【0036】
<第2実施形態>
以下、
図5~
図11を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る電線(図示省略)に用いられる絶縁線心20dについて、説明する。
【0037】
第2実施形態に係る電線(図示省略)は、第1実施形態に係る電線1(例えば、
図1を参照)に用いられている絶縁線心20aに代えて、
図5~
図9に示す絶縁線心20dが用いられる点においてのみ、第1実施形態に係る電線1と相違している。そこで、説明の便宜上、
図5~
図9では、第1実施形態で説明した各部材と実質的に同一の構造・機能を有する部材に、第1実施形態にてそのような部材に付された符号と同一の符号が付されている。また、そのような部材についての詳細な説明を、適宜省略する。後述する第2実施形態の変形例等(
図10,11を参照)においても、同様である。
【0038】
絶縁線心20dは、
図5に示すように、線状の導体21と、導体21の外周を取り囲む第1絶縁層22と、第1絶縁層22の外周を取り囲む第2絶縁層23と、から構成されている。第2実施形態では、第1絶縁層22は、架橋ポリエチレンから構成され、第2絶縁層23は、ポリ塩化ビニル(PVC)から構成されている。第2絶縁層23は、絶縁線心20dの最外層として露出している。第2絶縁層23には、その周方向(以下、単に「周方向」という。)における一箇所に、絶縁線心20dの軸線方向(換言すると、電線の軸線方向。以下、単に「軸線方向」という。)に延びる凹条部26が、設けられている。なお、詳細は後述するように、絶縁線心20dの径方向(以下、単に「径方向」という。)における凹条部26での第2絶縁層23の厚さは、凹条部26とは異なる箇所での径方向における第2絶縁層23の厚さよりも薄い。凹条部26は、本発明における「薄肉部」に相当する。
【0039】
図6に示すように、凹条部26は、径方向において外側から内側に向かうにつれて周方向における溝幅が徐々に狭くなる断面形状(いわゆるV字溝状の形状)を有する。第2実施形態では、凹条部26の外周面における溝幅Pは、第2絶縁層23の外周面の全体の周長さの1%である。第2絶縁層23を剥離する際に後述するように凹条部26に沿って第2絶縁層23が適正に分断される点から、溝幅Pは、第2絶縁層23の外周面の全体の周長さの1%以下であることが好ましい。更に、凹条部26の最奥箇所における第2絶縁層23の径方向での厚さQは、0.10mmである。作業者の手や指によって第2絶縁層23が容易に分断される点から、厚さQは、0.10mm以上0.15mm以下であることが好ましい。加えて、凹条部26とは異なる箇所における第2絶縁層23の径方向での厚さは、0.20mmである。第2絶縁層23が剥離されていない状態において第1絶縁層22が透けて見えることを避ける点から、この厚さは、0.20mm以上であることが好ましい。
【0040】
なお、凹条部26は、径方向において外側から内側に向かうにつれて周方向における溝幅が一定である断面形状(いわゆるU字溝状の形状)を有してもよいし、溝幅Pが実質的にゼロであるような切込み状の形状を有してもよい。更に、第2絶縁層23に凹条部26を設けることに代えて、第1絶縁層22にその外周面から径方向外側に突出する凸条部を設けてもよい。
【0041】
第2実施形態では、第1絶縁層22は、赤色に着色された架橋ポリエチレンで構成されており、第2絶縁層23は、白色に着色されたポリ塩化ビニル(PVC)で構成されている。但し、架橋ポリエチレン及びポリ塩化ビニルに代えて、第1実施形態の絶縁線心20aの第1絶縁層22及び第2絶縁層23を構成する樹脂材料として上述された各種の樹脂材料が、第2実施形態の絶縁線心20bの第1絶縁層22及び第2絶縁層23を構成するために用いられてもよい。
【0042】
第1実施形態での絶縁線心20aと同様、絶縁線心20dは、そのまま用いられる場合、白色の第2絶縁層23が最外層として露出した状態となる。この場合、絶縁線心20dは、外見上、白色の絶縁線心として視認されることになる。一方、絶縁線心20dは、白色の第2絶縁層23を剥離して用いられる場合、赤色の第1絶縁層22が最外層として露出した状態となる。この場合、絶縁線心20dは、外見上、赤色の絶縁線心として視認されることになる。このように、絶縁線心20dは、第1実施形態での絶縁線心20aと同様、100V用の単相3線式の電線における白色の中性線(即ち、印加電圧が0Vである絶縁線心)としても使用可能であるし、200V用の単相3線式の電線における赤色のライブ線(即ち、印加電圧が-100Vである絶縁線心)としても使用可能である。
【0043】
次いで、
図7~
図9を参照しながら、第2絶縁層23を剥離する手順について、説明する。第2実施形態では、第2絶縁層23に凹条部26が設けられているため、後述するように、カッター等の工具を用いることなく、作業者の手や指によって第2絶縁層23を第1絶縁層22から容易に剥離させることができる。
【0044】
具体的には、
図7に示すように、まず、作業者は、凹条部26の周方向の一方側の縁23aと他方側の縁23bを周方向に離れさせるように、作業者の手や指で第2絶縁層23に外力を及ぼすことで、凹条部26を起点として第2絶縁層23を分断して切り広げながら、第2絶縁層23を第1絶縁層22から剥離させる。次いで、
図8に示すように、作業者は、凹条部26の一方側の縁23aと他方側の縁23bとを更に周方向に移動させて、一方側の縁23aと他方側の縁23bとが重ね合わされるように、第2絶縁層23を第1絶縁層22から剥離させる。そして、
図9に示すように、凹条部26の一方側の縁23aと他方側の縁23bとを重ね合わせた状態で、第2絶縁層23を、絶縁線心20dの軸線方向にほぼ直交して第1絶縁層22から離れる向きに引きながら、徐々に絶縁線心20dの基端側(
図9における下方)に移動させることで、第2絶縁層23を第1絶縁層22から連続的に剥離させる。その後、第1絶縁層22を所望の長さだけ露出させた後、作業者は、剥離させた第2絶縁層23を手や指で切断する。以上の工程を経て、作業者の手や指により、第2絶縁層23が第1絶縁層22から剥離される。なお、剥離させた第2絶縁層23の切断には、ハサミやカッター等を用いてもよい。
【0045】
<第2実施形態の変形例>
上述した第2実施形態では、第2絶縁層23の周方向における一箇所に、凹条部26が設けられている。これに対し、
図10に示す変形例のように、第2絶縁層23の周方向における複数の箇所(この変形例では、二箇所)に凹条部26が設けられてもよい。複数の凹条部26を設ける場合、
図10に示すように、軸線方向に直交する断面において、一の凹条部26(厳密には、凹条部26の最奥箇所)と、凹条部26に周方向において隣り合う他の凹条部27(厳密には、凹条部27の最奥箇所)と、が絶縁線心20dの中心Rに対してなす中心角θが、90度以上180度以下であることが好ましい。
【0046】
第2実施形態のように、架橋ポリエチレンで第1絶縁層22を構成してポリ塩化ビニル(PVC)で第2絶縁層23を構成する場合、作業者の手や指での第2絶縁層23の剥離性に優れるものの、
図9において作業者が第2絶縁層23を引く向きによっては、
図11に示すように第2絶縁層23が裏返ることで、第2絶縁層23の剥離が妨げられること(いわゆる、めくれ上がり)が生じる場合がある。
【0047】
ここで、変形例のように複数の凹条部26,27が第2絶縁層23に設けられていれば、第2絶縁層23のうちの周方向において隣り合う凹条部26,27に挟まれる各々の部分23c,23dを、別々に剥離することで、第2絶縁層23のめくれ上がりを抑制しながら、第2絶縁層23を作業者の手や指で適正に剥離することができる。なお、上述した中心角θが90度以上180度以下であることで、各々の部分23c,23dの周方向の幅が過度に小さくなって剥離中に意図せず部分23c,23dが切断されてしまうことや、各々の部分23c,23dの周方向の幅が過度に大きくなって剥離が困難になることを、避けることができる。
【0048】
<作用・効果>
以上説明したように、第1実施形態及び第2実施形態に係る電線1によれば、電線1が有する絶縁線心20aが、導体21と、互いに色の異なる第1絶縁層22と第2絶縁層23とを有する。そのため、絶縁線心20aをそのまま用いて第2絶縁層23が最外層にある状態、及び、第2絶縁層23の少なくとも一部を剥離した(即ち、いわゆる皮剥き処理を施した)絶縁線心20aを用いて第1絶縁層22が最外層にある状態の何れかを、電線1の用途に応じて選択することができる。即ち、単一種類の電線1を用いながら、電線1の用途に合わせて電線1の外見を異ならせることができる。したがって、第1実施形態及び第2実施形態に係る電線1は、共用性・汎用性に優れる。
【0049】
より具体的には、第1実施形態及び第2実施形態では、電線1が、絶縁線心20aと絶縁線心20bと絶縁線心20cとを有し、絶縁線心20aに含まれる第1絶縁層22と第2絶縁層23と、絶縁線心20bに含まれる第3絶縁層24と、絶縁線心20cに含まれる第4絶縁層25とが、異なる色に着色されている。即ち、互いに色の異なる第1絶縁層22と第2絶縁層23とを有する絶縁線心20aを多芯型の電線1に適用することで、電線1の用途に合わせて、電線1の外見を異ならせることが可能になっている。
【0050】
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、第1絶縁層22及び第2絶縁層23を有する絶縁線心20aを有する電線1が単相3線式の電線である場合を例に挙げて、電線1の構成や用途等を説明している。しかし、上記説明から理解されるように、絶縁線心20aを、他の構造の電線(例えば、単相2線式の電線、3相3線式の電線、及び、絶縁線心20aのみを有する単芯型の電線等)に用いても、上記同様の作用・効果が発揮されることになる。即ち、本発明の「電線」は、単相3線式の電線1に限定されない。
【0051】
更に、第1実施形態及び第2実施形態では、第1絶縁層22が赤色に着色され、第2絶縁層23が白色に着色される場合を例に挙げて、電線1の構成や用途等を説明した。しかし、上記説明から理解されるように、第1絶縁層22及び第2絶縁層23の色は、作業者が目視したときに異なる色であると識別できる限り、任意に選択され得る。この観点から、「異なる色」とは、例えば、典型的なRGB色空間(但し、R、G及びBの各々の度合いを0~255の値で表現する)を用いると、「R、G及びBの少なくとも一つにおいて、第1絶縁層22の値と第2絶縁層23の値との差の絶対値が200以上である」と、定義し得る。
【0052】
更に、第2実施形態では、第2絶縁層23の周方向の所定の箇所に、軸線方向に延びる線状の凹条部26が設けられる。これにより、凹条部26を起点として第2絶縁層23を切り開いて分断するように変形させることで、第1絶縁層22から第2絶縁層23を容易に剥離することができるため、第2絶縁層23を剥離するための専用のカッター等を用いることなく、作業者の手や指で、第2絶縁層23を適正に剥離することができる。よって、第1絶縁層22から第2絶縁層23を剥離する作業の作業性を向上できる。
【0053】
更に、第2絶縁層23に複数の凹条部26,27を設けることで、第2絶縁層23を剥離する際に第2絶縁層23にめくれ上がりが生じることを抑制しながら、第2絶縁層23を作業者の手や指で適正に剥離することができる。
【0054】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
ここで、上述した本発明に係る電線1の特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
【0056】
[1]
導体(21)と、前記導体(21)の外周を取り囲む第1絶縁層(22)と、前記第1絶縁層(22)の外周を取り囲む第2絶縁層(23)と、を有する絶縁線心(20a)を備える電線(1)であって、
前記第1絶縁層(22)と前記第2絶縁層(23)とは、異なる色に着色されており、
前記第2絶縁層(23)は前記絶縁線心(20a)の最外層であり、且つ、前記第2絶縁層(23)を剥離することによって前記第1絶縁層(22)が前記絶縁線心(20a)の最外層として露出する、ように構成される、
電線(1)。
【0057】
上記[1]の構成の電線によれば、電線が有する絶縁線心が、導体と、互いに色の異なる第1絶縁層及び第2絶縁層と、を有する。そのため、絶縁線心をそのまま用いて第2絶縁層が最外層にある状態、及び、第2絶縁層の少なくとも一部を剥離した(即ち、いわゆる皮剥き処理を施した)絶縁線心を用いて第1絶縁層が最外層として露出する状態の何れか一方を、電線の用途に応じて選択することができる。即ち、単一種類の電線を用いながら、用途に合わせて絶縁線心(ひいては、電線)の外見を異ならせることができる。したがって、本構成の電線は、共用性・汎用性に優れている。
【0058】
[2]
上記[1]に記載の電線(1)において、
前記第1絶縁層(22)を構成する材料の融点は、前記第2絶縁層(23)を構成する材料の融点よりも高い、
電線(1)。
【0059】
上記[2]の構成の電線によれば、第1絶縁層を構成する材料の融点が、第2絶縁層を構成する材料の融点よりも高い。そのため、絶縁線心を製造するにあたり、例えば、第1絶縁層を成形した後に成形済みの第1絶縁層の上に第2絶縁層を成形したとしても、第1絶縁層が第2絶縁層の熱で再溶融して第1絶縁層と第2絶縁層とが過度に密着することを抑制できる。その結果、第1絶縁層から第2絶縁層を剥離する作業が容易になり、電線を使用する際の作業性を向上できる。
【0060】
[3]
上記[1]に記載の電線(1)において、
前記第1絶縁層(22)及び前記第2絶縁層(23)の少なくとも一方は、ビニル樹脂から構成される、
電線(1)。
【0061】
上記[3]の構成の電線によれば、第1絶縁層及び第2絶縁層の少なくとも一方が、ビニル樹脂(例えば、PVC)から構成される。ビニル樹脂は一般に剥離性に優れるため、第1絶縁層から第2絶縁層を剥離する作業が容易になり、電線を使用する際の作業性を向上できる。
【0062】
[4]
上記[1]に記載の電線(1)において
前記第1絶縁層(22)と前記第2絶縁層(23)とが剥離剤を挟んで積層される、
電線(1)。
【0063】
上記[4]の構成の電線によれば、第1絶縁層と第2絶縁層とが剥離剤を挟んで積層される。これにより、第1絶縁層から第2絶縁層を剥離する作業が容易になり、電線を使用する際の作業性を向上できる。
【0064】
[5]
上記[1]に記載の電線(1)であって、
他の導体(21)と、前記他の導体(21)の外周を取り囲む第3絶縁層(24)と、を有する他の絶縁線心(20b)を、更に備え、
前記第1絶縁層(22)と前記第2絶縁層(23)と前記第3絶縁層(24)とは、異なる色に着色されている、
電線(1)。
【0065】
上記[5]の構成の電線によれば、電線が、複数の絶縁線心(即ち、上記構成の絶縁線心、及び、他の絶縁線心)を有し、一の絶縁線心に含まれる第1絶縁層と第2絶縁層と、他の絶縁線心に含まれる第3絶縁層とが、それぞれ異なる色に着色されている。よって、多芯型の電線(例えば、上述した単相3線式の電線)に上記構成の絶縁線心を適用することで、電線の用途に合わせて電線の外見を異ならせることができる。したがって、共用性・汎用性に優れた多芯型の電線を提供できる。
【0066】
[6]
上記[1]~上記[5]の何れか一つに記載の電線において、
前記第1絶縁層(22)は、架橋ポリエチレンから構成され、
前記第2絶縁層(23)は、ポリ塩化ビニルから構成され、且つ、当該第2絶縁層(23)の周方向における少なくとも一箇所に当該絶縁線心(20d)の軸線方向に沿って延びる線状の薄肉部(26)を有する、
電線(1)。
【0067】
上記[6]の構成の電線によれば、第2絶縁層の周方向の少なくとも一箇所に、軸線方向に延びる線状の薄肉部が設けられる。更に、第1絶縁層が架橋ポリエチレンで構成され、第2絶縁層がポリ塩化ビニルで構成される。これにより、薄肉部を起点として第2絶縁層を切り開いて分断するように変形させることで、第1絶縁層から第2絶縁層を容易に剥離させることができるため、第2絶縁層を剥離させるための専用のカッター等を用いることなく、作業者の手や指で、第2絶縁層を適正に剥離させることができる。よって、第1絶縁層から第2絶縁層を剥離する作業の作業性を向上できる。
【0068】
[7]
上記[6]に記載の電線において、
前記第2絶縁層(23)は、複数の箇所に前記薄肉部(26,27)を有し、
前記軸線方向に直交する断面において、一の前記薄肉部(26)と、前記一の前記薄肉部(26)に周方向において隣り合う他の前記薄肉部(27)と、が前記絶縁線心(20a)の中心に対してなす中心角(θ)が、90度以上180度以下である、
電線(1)。
【0069】
上記[7]の構成の電線によれば、第2絶縁層に複数の薄肉部を設けることで、第2絶縁層を剥離させる際に第2絶縁層が裏返ることで、第2絶縁層の剥離が妨げられること(いわゆる、めくれ上がり)を抑制しながら、第2絶縁層を作業者の手や指で適正に剥離することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 電線
20a 絶縁線心
21 導体
22 第1絶縁層
23 第2絶縁層
24 第3絶縁層
26 凹条部(薄肉部)
27 凹条部(薄肉部)