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特開2024-18802建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018802
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240201BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
G06T19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122352
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】522305221
【氏名又は名称】株式会社ARKLET
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100165593
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 淳也
(72)【発明者】
【氏名】山下 青夏
(72)【発明者】
【氏名】平野 学宜
(72)【発明者】
【氏名】塚上 賢太
(72)【発明者】
【氏名】浅野 誉子
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA10
5B050BA09
5B050DA04
5B050EA09
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA05
5B050FA13
(57)【要約】
【課題】三次元データで表現された建築物内の状態を適切にユーザに把握させることが可能な建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システムを提供する。
【解決手段】三次元CADソフトウェアによって出力されたメッシュデータを含む建築物データが、ネットワークを介して建築物仮想表示制御装置によって取得される。制御部は、建築物を仮想空間上に展開する。制御部は、仮想建築物の表面と仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、メッシュデータと仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、仮想移動体を仮想建築物内で移動させる。制御部は、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像である視点画像を表示させる。制御部は、建築物のメッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当する扉メッシュデータを、当たり判定による仮想移動体の接触対象から除外する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示部に表示させるために、建築物仮想表示システムによって実行される建築物仮想表示プログラムであって、
前記建築物仮想表示システムは、
情報処理装置である建築物仮想表示制御装置と、
前記建築物仮想表示制御装置とネットワークを介して接続可能なユーザ装置と、
を備え、
前記建築物仮想表示プログラムが前記建築物仮想表示システムの制御部によって実行されることで、
三次元CADソフトウェアによって出力された、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々の表面を表すメッシュデータを含む建築物データを、前記建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して取得する建築物データ取得ステップと、
前記建築物データによって表される前記建築物を前記仮想空間上に展開する仮想建築物展開ステップと、
前記仮想空間上に展開された前記建築物である仮想建築物の表面と、前記仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、前記建築物の前記メッシュデータと前記仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、前記当たり判定の結果に基づいて前記仮想移動体を前記仮想建築物内で移動させる移動ステップと、
前記ユーザ装置が、前記移動ステップにおいて移動される前記仮想移動体の視点による前記仮想建築物の画像である視点画像を表示部に表示させる視点画像表示ステップと、
前記建築物の前記メッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当するメッシュデータである扉メッシュデータを、前記当たり判定による前記仮想移動体の接触対象から除外する扉メッシュデータ除外ステップと、
を前記建築物仮想表示システムに実行させることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記仮想建築物を構成する複数のパーツのうち、扉のパーツを指定する指示を前記ユーザ装置が受け付ける扉指定指示受付ステップ、
をさらに前記建築物仮想表示システムに実行させ、
前記扉メッシュデータ除外ステップでは、前記扉指定指示受付ステップにおいて受け付けられた指示で指定されたパーツのメッシュデータが、前記扉メッシュデータとして前記当たり判定による対象から除外されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項3】
請求項2に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記建築物データ取得ステップにおいて取得される前記メッシュデータでは、前記複数のパーツのうち、各々の扉を構成する1つまたは複数のパーツが、同一の扉のカテゴリに予め分類されており、
前記扉指定指示受付ステップでは、扉のカテゴリの指定指示が受け付けられることで、指定された前記扉のカテゴリに属する1つまたは複数のパーツが、前記扉のパーツとして指定されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項4】
請求項2に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記建築物データ取得ステップにおいて取得される前記メッシュデータでは、前記複数のパーツのうち、少なくとも各々の扉を構成する複数のパーツが、外形が大きい扉のパーツを上位の階層とし、上記の階層のパーツ内に含まれる扉のパーツを下位の階層として複数段階に階層分けされており、
前記扉指定指示受付ステップでは、扉のパーツの指定指示が受け付けられた場合に、指定されたパーツに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツも、纏めて前記扉のパーツとして指定されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記扉指定指示受付ステップでは、
現時点で選択されているパーツよりも上位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示と、現時点で選択されているパーツよりも下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示が受け付けられると共に、受け付けられた変更指示に応じて、選択されるパーツの階層が変更され、
現時点で選択されているパーツを扉のパーツとして指定する指示が受け付けられた場合に、指定されたパーツに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツも、纏めて前記扉のパーツとして指定されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記扉指定指示受付ステップでは、
扉のパーツよりも上位の階層の扉以外のパーツに選択パーツが変更された後、下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示が受け付けられた場合に、上位の階層に変更される前に選択されていた前記扉のパーツに選択パーツが戻されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項7】
請求項2に記載の建築物仮想表示プログラムであって、
前記扉指定指示受付ステップでは、
前記建築物内の互いに隣接する2つの部屋の間を移動するための同一の扉について、一方の部屋の扉のパーツのデータと、他方の部屋の扉のパーツのデータが重複している場合に、前記2つの部屋の一方の扉のパーツを指定する指示が受け付けられると、指定された扉のパーツと重複しているパーツも、纏めて前記扉のパーツとして指定されることを特徴とする建築物仮想表示プログラム。
【請求項8】
三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示部に表示させるための制御を行う建築物仮想表示システムであって、
前記建築物仮想表示システムは、
情報処理装置である建築物仮想表示制御装置と、
前記建築物仮想表示制御装置とネットワークを介して接続可能なユーザ装置と、
を備え、
前記建築物仮想表示システムの制御部は、
三次元CADソフトウェアによって出力された、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々の表面を表すメッシュデータを含む建築物データを、前記建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して取得する建築物データ取得ステップと、
前記建築物データによって表される前記建築物を前記仮想空間上に展開する仮想建築物展開ステップと、
前記仮想空間上に展開された前記建築物である仮想建築物の表面と、前記仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、前記建築物の前記メッシュデータと前記仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、前記当たり判定の結果に基づいて前記仮想移動体を前記仮想建築物内で移動させる移動ステップと、
前記ユーザ装置が、前記移動ステップにおいて移動される前記仮想移動体の視点による前記仮想建築物の画像である視点画像を表示部に表示させる視点画像表示ステップと、
前記建築物の前記メッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当するメッシュデータである扉メッシュデータを、前記当たり判定による前記仮想移動体の接触対象から除外する扉メッシュデータ除外ステップと、
を実行することを特徴とする建築物仮想表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示させるための建築物仮想表示プログラム、および建築物仮想表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物を仮想空間上に展開して表示させるための技術が知られている。例えば、特許文献1に記載のレビュー装置は、CADデータを、複数の面データを含むメッシュデータに変換し、メッシュデータと同スケールの座標系にアバターを配置する。次いで、レビュー装置は、アバターの視点位置に対応して、メッシュデータを仮想空間として描画する。また、レビュー装置は、アバターの移動中に、アバターと、仮想空間内の略水平面以外の面との接触を判定する。特許文献1に記載のレビュー装置は、実際に設計されたプラントの整備性等を評価(レビュー)するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-157696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮想空間上に展開された仮想建築物内で仮想移動体を移動させつつ、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像を表示させることができれば、例えば、設計段階の建築物内の状態を建築前にユーザ(例えばクライアント等)に把握させたい場合等に非常に有用である。この場合、仮想移動体を仮想建築物内で移動させる際に、仮想移動体と仮想建築物が接触するか否かの判定(「当たり判定」という)の結果を利用することも考えられる。しかし、三次元CADソフトウェアによって生成された建築物のCADデータをそのまま利用して仮想建築物を展開しても、仮想移動体を仮想建築物内で適切に移動させることができなければ、有用な画像を表示させることは困難である。また、三次元CADソフトウェアの種類によって、生成されるCADデータの構成が異なるので、三次元CADソフトウェアによって生成された建築物のCADデータをそのまま利用すると汎用性が低下するという問題もある。従って、三次元データで表現された建築物内の状態を適切にユーザに把握させることは、従来の技術では困難であった。
【0005】
本開示の典型的な目的は、三次元データで表現された建築物内の状態を適切にユーザに把握させることが可能な建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する建築物仮想表示プログラムは、三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示部に表示させるために、建築物仮想表示システムによって実行される建築物仮想表示プログラムであって、前記建築物仮想表示システムは、情報処理装置である建築物仮想表示制御装置と、前記建築物仮想表示制御装置とネットワークを介して接続可能なユーザ装置と、を備え、前記建築物仮想表示プログラムが前記建築物仮想表示システムの制御部によって実行されることで、三次元CADソフトウェアによって表示された、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々の表面を表すメッシュデータを含む建築物データを、前記建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して取得する建築物データ取得ステップと、前記建築物データによって表される前記建築物を前記仮想空間上に展開する仮想建築物展開ステップと、前記仮想空間上に展開された前記建築物である仮想建築物の表面と、前記仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、前記建築物の前記メッシュデータと前記仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、前記当たり判定の結果に基づいて前記仮想移動体を前記仮想建築物内で移動させる移動ステップと、前記ユーザ装置が、前記移動ステップにおいて移動される前記仮想移動体の視点による前記仮想建築物の画像である視点画像を表示部に表示させる視点画像表示ステップと、前記建築物の前記メッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当するメッシュデータである扉メッシュデータを、前記当たり判定による前記仮想移動体の接触対象から除外する扉メッシュデータ除外ステップと、
を前記建築物仮想表示システムに実行させる。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する建築物仮想表示システムは、三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示部に表示させるための制御を行う建築物仮想表示システムであって、前記建築物仮想表示システムは、情報処理装置である建築物仮想表示制御装置と、前記建築物仮想表示制御装置とネットワークを介して接続可能なユーザ装置と、を備え、前記建築物仮想表示システムの制御部は、三次元CADソフトウェアによって出力された、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々の表面を表すメッシュデータを含む建築物データを、前記建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して取得する建築物データ取得ステップと、前記建築物データによって表される前記建築物を前記仮想空間上に展開する仮想建築物展開ステップと、前記仮想空間上に展開された前記建築物である仮想建築物の表面と、前記仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、前記建築物の前記メッシュデータと前記仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、前記当たり判定の結果に基づいて前記仮想移動体を前記仮想建築物内で移動させる移動ステップと、前記ユーザ装置が、前記移動ステップにおいて移動される前記仮想移動体の視点による前記仮想建築物の画像である視点画像を表示部に表示させる視点画像表示ステップと、前記建築物の前記メッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当するメッシュデータである扉メッシュデータを、前記当たり判定による前記仮想移動体の接触対象から除外する扉メッシュデータ除外ステップと、を実行する。
【0008】
本開示に係る建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システムによると、三次元データで表現された建築物内の状態が適切にユーザによって把握される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】建築物仮想表示システム1の概略構成を示すブロック図である。
図2】建築物の一部のパーツの例を示す図である。
図3図2に例示するパーツのメッシュデータのデータ構成を説明するための説明図である。
図4】建築物仮想表示システム1が実行する仮想表示データ制御処理のフローチャートである。
図5】扉除外用インターフェースの表示画面70の一例を示す図である。
図6】仮想表示データ制御処理中に実行される視点画像表示制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する建築物仮想表示プログラムは、三次元データで表現された建築物を仮想空間上に展開して表示部に表示させるために、建築物仮想表示システムによって実行される。建築物仮想表示システムは、情報処理装置である建築物仮想表示制御装置(例えばサーバ等)と、建築物仮想表示制御装置とネットワークを介して接続可能なユーザ装置と、を備える。建築物仮想表示プログラムが建築物仮想表示システムの制御部によって実行されることで、建築物データ取得ステップ、仮想建築物展開ステップ、移動ステップ、視点画像出力ステップ、および、扉メッシュデータ除外ステップが、建築物仮想表示システムによって実行される。建築物データ取得ステップでは、三次元CADソフトウェアによって出力された、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々の表面を表すメッシュデータを含む建築物データを、建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して取得する。仮想建築物展開ステップでは、制御部は、建築物データによって表される建築物を仮想空間上に展開する。移動ステップでは、制御部は、仮想空間上に展開された建築物である仮想建築物の表面と、仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、建築物のメッシュデータと仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、当たり判定の結果に基づいて仮想移動体を仮想建築物内で移動させる。視点画像表示ステップでは、ユーザ装置の制御部は、移動ステップにおいて移動される仮想移動体の視点による仮想建築物の画像である視点画像を表示部に表示させる。扉メッシュデータ除外ステップでは、制御部は、建築物のメッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当するメッシュデータである扉メッシュデータを、当たり判定による仮想移動体の接触対象から除外する。
【0011】
本開示の建築物仮想表示プログラムおよび建築物仮想表示システムによると、まず、三次元CADソフトウェアによって出力されたメッシュデータを含む建築物データが、ネットワークを介して建築物仮想表示制御装置によって取得される。三次元CADソフトウェアには複数の種類があるが、多くの三次元CADソフトウェアがメッシュデータを出力することができる。従って、利用できる三次元CADソフトウェアの種類が制限され難いので、汎用性が高まる。
【0012】
また、建築物仮想表示制御装置がネットワークを介して建築物データを取得し、取得したデータを用いて各種処理を実行する。よって、ユーザ(クライアント)が使用する情報処理装置であるユーザ装置(例えば、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)、または携帯端末等)は、建築物仮想表示制御装置から対象の建築物に関するデータ・プログラム等を呼び出し、仮想建築物を認識・表示させることで、三次元データで表現された建築物内の状態を適切にユーザに把握させることが可能である。
【0013】
さらに、建築物の前記メッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当する扉メッシュデータが、当たり判定による仮想移動体の接触対象から除外される。従って、扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外されたメッシュデータ(以下、「扉除外データ」という)が用いられることで、制御部は、仮想建築物内で仮想移動体を移動させる際に扉を通過させつつ、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像を表示させることができる。よって、三次元データで表現された建築物内の状態が、ユーザによって適切に把握され易くなる。
【0014】
なお、本開示における「扉」は、仮想移動体(例えば仮想的な人間等)が通過するために開閉可能な種々の扉(例えば、開き戸、引き戸、吊り戸、および折れ戸等)であってもよい。また、扉メッシュデータを当たり判定の対象から除外するための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、複数のパーツの各々を識別するIDが付与されている場合、制御部(例えばユーザ装置の制御部)は、当たり判定の対象から除外するパーツのリストに、扉として特定されたパーツのIDを加えることで、リストに加えられたパーツのメッシュデータを当たり判定の対象から除外してもよい。この場合、リストのデータは建築物データに紐づけて記憶されてもよい。リストのデータは、当たり判定の際に参照されてもよい。
【0015】
本開示では、仮想建築物展開ステップ、移動ステップ、および扉メッシュデータ除外ステップが、建築物仮想表示システム内のユーザ装置の制御部によって実行される場合を例示する。しかし、仮想建築物展開ステップ、移動ステップ、および扉メッシュデータ除外ステップの少なくともいずれかは、仮想建築物表示制御装置の制御部によって実行されてもよいし、仮想建築物表示制御装置の制御部とユーザ装置の制御部が協働することで実行されてもよい。
【0016】
移動ステップおよび視点画像表示ステップを実行するタイミングは適宜選択できる。例えば、制御部は、扉メッシュデータ除外ステップの実行中に、移動ステップおよび視点画像表示ステップを実行してもよい。この場合、ユーザは、仮想移動体の視点画像に基づいて、メッシュデータを当たり判定の対象から除外する必要がある扉のパーツを適切に把握することができる。また、建築物仮想表示システムの制御部は、扉メッシュデータ除外ステップが実行された後に、扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外された扉除外データに基づいて、移動ステップおよび視点画像表示ステップを実行してもよい。この場合、制御部は、仮想建築物内で仮想移動体を移動させる際に扉を通過させつつ、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像を表示させることができる。
【0017】
建築物仮想表示制御装置には、種々の情報処理装置を使用できる。例えば、建築物仮想表示制御装置は、ネットワーク(例えばインターネット等)を介して接続されるデバイス(例えば、ユーザが使用するユーザ装置等)に各種データ等を提供すると共に、種々の情報を処理するサーバであってもよい。この場合、建築物仮想表示制御装置は、クラウドサービスを提供するメーカーのサーバ(所謂クラウドサーバ)であってもよい。また、本開示で例示するサービスを提供するサービス提供者のPC等が、建築物仮想表示制御装置として使用されてもよい。
【0018】
建築物仮想表示制御装置の制御部は、扉メッシュデータ除外ステップにおいて扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外された状態の建築物データ(扉除外データ)を記憶装置に記憶させる扉除外データ記憶ステップをさらに実行してもよい。この場合、建築物仮想表示システムの制御部は、記憶された扉除外データに基づいて、移動ステップおよび視点画像表示ステップを実行することで、扉メッシュデータ除外ステップの実行後であればいつでも建築物内の状態をユーザに把握させることができる。
【0019】
仮想建築物を構成する複数のパーツのうち、扉のパーツを指定する指示をユーザ装置が受け付ける扉指定指示受付ステップをさらに実行してもよい。扉メッシュデータ除外ステップでは、建築物仮想表示システムの制御部は、扉指定指示受付ステップにおいて受け付けられた指示で指定されたパーツのメッシュデータを、扉メッシュデータとして当たり判定による対象から除外してもよい。この場合、ユーザは、扉のパーツを指定する指示をユーザ装置に入力することで、建築物のメッシュデータから、扉にパーツに該当する扉メッシュデータを適切に当たり判定の対象から除外させることができる。よって、ユーザは、扉を通過可能な仮想建築物を把握させるためのデータを、建築物仮想表示システムに適切に生成させることができる。
【0020】
建築物データ取得ステップにおいて取得されるメッシュデータでは、複数のパーツのうち、各々の扉を構成する1つまたは複数のパーツが、同一の扉のカテゴリに予め分類されていてもよい。扉指定指示受付ステップでは、扉のカテゴリの指定指示が受け付けられることで、指定された扉のカテゴリに属する1つまたは複数のパーツが、扉のパーツとして指定されてもよい。多くの三次元CADソフトウェアは、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々のメッシュデータを、複数のカテゴリ(例えば、扉、壁、階段、窓、床、天井等の少なくともいずれかのカテゴリ)に分類して出力することが可能である。従って、扉のカテゴリの指定指示が受け付けられた場合に、指定された扉のカテゴリに属する1つまたは複数のパーツが纏めて扉のパーツとして指定されることで、扉のパーツを指定するためのユーザの工数が減少すると共に、記憶されるデータのデータ量も削減され易くなる。
【0021】
建築物データ取得ステップにおいて取得されるメッシュデータでは、複数のパーツのうち、各々の扉を構成する複数のパーツが、外形が大きい扉のパーツを上位の階層とし、上記の階層のパーツ内に含まれる扉のパーツを下位の階層として複数段階に階層分けされていてもよい。扉指定指示受付ステップでは、扉のパーツの指定指示が受け付けられた場合に、指定されたパーツに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツも、纏めて扉のパーツとして指定されてもよい。多くの三次元CADソフトウェアは、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々のメッシュデータを、外形が大きいパーツを上位の階層とし、上記の階層のパーツ内に含まれるパーツを下位の階層として複数段階に階層分けして出力することが可能である。従って、扉のパーツとして指定されたパーツに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツも纏めて扉のパーツとして指定されることで、扉のパーツを指定するためのユーザの工数が減少すると共に、記憶されるデータのデータ量も削減され易くなる。
【0022】
扉指定指示受付ステップでは、制御部は、現時点で選択されているパーツよりも上位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示と、現時点で選択されているパーツよりも下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示を受け付けてもよい。制御部は、受け付けられた変更指示に応じて、選択されるパーツの階層を変更してもよい。制御部は、現時点で選択されているパーツを扉のパーツとして指定する指示が受け付けられた場合に、指定されたパーツに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツも、纏めて扉のパーツとして指定してもよい。この場合、ユーザは、どこまでの階層のパーツを扉のパーツに含めるかを、階層を変更することで容易に指定することができる。よって、扉のパーツを指定するためのユーザの工数がさらに減少する。
【0023】
扉指定指示受付ステップでは、制御部は、扉のパーツよりも上位の階層の扉以外のパーツに選択パーツが変更された後、下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示が受け付けられた場合に、上位の階層に変更される前に選択されていた扉のパーツに選択パーツを戻してもよい。この場合、ユーザは、扉のパーツよりも上位の階層の扉以外のパーツ(例えば、扉を含む壁全体のパーツ等)に誤って階層を上げてしまった場合でも、階層を下げる指示を入力するだけで、元々選択していた扉の最上位の階層のパーツを再度選択することができる。よって、扉のパーツを指定するためのユーザの工数がさらに減少する。
【0024】
扉指定指示受付ステップでは、建築物内の互いに隣接する2つの部屋の間を移動するための同一の扉について、一方の部屋の扉のパーツのデータと、他方の部屋の扉のパーツのデータが重複している場合に、隣接する2つの部屋の一方の扉のパーツを指定する指示が受け付けられると、指定された扉のパーツと重複しているパーツも、纏めて扉のパーツとして指定されてもよい。部屋ごとに扉のパーツのデータが生成されていると、隣接する2つの部屋のうち、一方の部屋の扉のパーツのデータと、他方の部屋の扉のパーツのデータが重複する場合がある。しかし、指定された扉のパーツと重複しているパーツも纏めて扉のパーツとして指定されることで、重複している2つの扉のパーツを別々に指定する場合に比べて、扉のパーツを指定するためのユーザの工数がさらに減少する。
【0025】
なお、本開示の扉指定指示受付ステップでは、パーツのカテゴリ、階層、重複が利用されることで、複数の扉のパーツが纏めて指定される場合を例示する。しかし、パーツのカテゴリ、階層、重複が利用されることなく、扉を構成する複数のパーツが個別に指定されてもよい。この場合でも、制御部は、生成された扉除外データを用いることで、仮想建築物内で仮想移動体を移動させる際に扉を通過させつつ、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像を表示させることができる。
【0026】
また、建築物仮想表示システムの制御部は、扉メッシュデータ除外ステップにおいて、扉メッシュデータを当たり判定の接触対象から自動的に除外してもよい。扉メッシュデータを自動的に当たり判定の対象から除外するための具体的な方法は適宜選択できる。例えば、各々の扉を構成する1つまたは複数のパーツが、同一の扉のカテゴリに予め分類されている場合、制御部は、扉のカテゴリに分類されているパーツのメッシュデータを扉メッシュデータとして特定し、特定した扉メッシュデータを自動的に当たり判定の対象から除外してもよい。また、制御部は、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに建築物データ(例えばメッシュデータ等)を入力し、数学モデルが出力した扉(扉メッシュデータでもよい)の自動判定結果に基づいて扉メッシュデータを特定してもよい。制御部は、自動判定結果に基づいて特定された扉メッシュデータを自動的に当たり判定の対象から除外してもよい。
【0027】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態における建築物仮想表示システム1のシステム構成の一例について概略的に説明する。本実施形態の建築物仮想表示システム1は、建築物仮想表示制御装置10と、ユーザ(例えばクライアント等)によって使用される複数のユーザ装置20を備える。図1では、2つのユーザ装置20A,20Bを例示している。
【0028】
建築物仮想表示制御装置10は、接続されるデバイス(本実施形態ではユーザ装置20)に対して各種データ等を提供すると共に、種々の情報を処理する情報処理装置ある。本実施形態では、建築物仮想表示制御装置10としてサーバが用いられている。詳細には、本実施形態では、クラウドサービスを提供するメーカーのサーバ(所謂クラウドサーバ)が、建築物仮想表示制御装置10として用いられている。しかし、建築物仮想表示制御装置10として、クラウドサーバ以外のサーバが用いられてもよい。また、本開示で例示するサービスを提供するサービス提供者のPC等が、建築物仮想表示制御装置10として使用されてもよい。建築物仮想表示制御装置10は、各種処理制御を行う制御ユニット11と、通信I/F14を備える。制御ユニット11は、制御を司るコントローラであるCPU12と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置13を備える。記憶装置13には、後述する仮想表示データ制御処理(図4参照)を実行するための建築物仮想表示プログラムが記憶されている。また、記憶装置13には、各種OS(Operating System)、および、三次元グラフィック表示用ミドルウェア(例えば、Unity(登録商標)等)も記憶されていてもよい。また、通信I/F14は、ネットワーク5(例えばインターネット等)を介して、建築物仮想表示制御装置10を外部機器(例えばユーザ装置20)と接続する。
【0029】
ユーザ装置20は、建築物仮想表示システム1によって提供されるサービスを利用するユーザによって使用される。本実施形態のユーザ装置20はパーソナルコンピュータであるが、スマートフォンまたはタブレット端末等の携帯端末等であってもよい。ユーザ装置20は、各種制御処理を行う制御ユニット21と、通信I/F24を備える。制御ユニット21は、制御を司るコントローラであるCPU22と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置23を備える。また、通信I/F24は、ネットワーク5を介して、ユーザ装置20を外部機器(例えば建築物仮想表示制御装置10等)と接続する。
【0030】
ユーザ装置20は、操作部25および表示部26に接続されている。操作部25は、ユーザが各種指示をユーザ装置20に入力するために、ユーザによって操作される。操作部25には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部25と共に、または操作部25に代えて、各種指示を入力するためのマイク等が使用されてもよい。表示部26は、各種画像を表示する。表示部26には、画像を表示する種々のデバイス(例えば、モニタ、プロジェクタ、およびヘッドマウントディスプレイ等の少なくともいずれか)を採用できる。なお、ユーザ装置20に外部接続される操作部25および表示部26の代わりに、ユーザ装置20が備える操作部および表示部が用いられてもよいことは言うまでもない。
【0031】
図2および図3を参照して、本実施形態の建築物仮想表示システム1において利用される建築物のメッシュデータについて説明する。メッシュデータとは、三次元の建築物を構成する複数のパーツ(オブジェクト)の各々の表面を表すデータ(面データ)である。メッシュデータは、例えば、複数のポリゴン(多角形および面の少なくともいずれか)の頂点、面、色、およびテクスチャー等のデータを含んでいてもよい。既存の三次元CADソフトウェアには複数の種類があるが、多くの三次元CADソフトウェアがメッシュデータを出力することができる。本実施形態で用いられるメッシュデータは、三次元CADソフトウェアによって出力されるデータである。
【0032】
図2は、建築物の一部のパーツの例を示す図である。図2に示す例では、部屋の一面30のパーツが表れている。部屋の一面30のパーツ内には、壁40、扉50、および窓60のパーツが含まれている。さらに扉50のパーツ内には、扉枠51のパーツが含まれている。扉枠51のパーツ内(詳細には、扉枠51の外形の領域内)には、扉本体52のパーツが含まれている。扉本体52のパーツ内には、小窓53とドアノブ54のパーツが含まれている。なお、詳細な説明は省略するが、窓60のパーツ内にも、窓60を構成する窓枠61等の複数のパーツが含まれている。
【0033】
図3は、図2に例示するパーツに関するメッシュデータのデータ構成を説明するための説明図である。図3に示すように、本実施形態で利用されるメッシュデータでは、複数のパーツのうち、各々の扉(図2および図3に示す例では、1つの扉50)を構成する複数のパーツ(図2および図3に示す例では、扉枠51、扉本体52、小窓53、およびドアノブ54)が、同一の扉(扉50)のカテゴリに予め分類されている。詳細は後述するが、建築物仮想表示制御装置10は、扉50のカテゴリの指定指示が受け付けられると、指定された扉50のカテゴリに属する複数のパーツ(扉枠51、扉本体52、小窓53、およびドアノブ54)のメッシュデータを纏めて処理することが可能である。
【0034】
また、本実施形態で利用されるメッシュデータでは、複数のパーツのうち、少なくとも各々の扉(図2および図3に示す例では、1つの扉50)を構成する複数のパーツ(図2および図3に示す例では、扉枠51、扉本体52、小窓53、およびドアノブ54)が、複数段階に階層分けされている。詳細には、本実施形態で利用されるメッシュデータでは、外形が大きい扉のパーツを上位の階層とし、上位の階層のパーツ内(詳細には、上記の階層のパーツの外形領域内)に含まれる扉のパーツを下位の階層として、扉を構成する複数のパーツが階層分けされている。図3に示す例では、扉50のパーツのうち、最も外形が大きい扉枠51のパーツの階層が、扉50の中で最も階層が上位の階層「3」とされている。階層「3」の扉枠51に含まれる扉本体52のパーツの階層が、階層「2」とされている。階層「2」の扉本体52に含まれる小窓53およびドアノブ54のパーツの階層が、扉50の中で最も階層が下位の階層「1」とされている。なお、外形が扉50の外形(つまり、扉枠51の外形)よりも大きいパーツの階層は、扉枠51のパーツの階層よりも上記の階層「4」とされている。なお、小窓53およびドアノブ54の各々を構成するパーツの階層が、階層「1」よりも低い階層とされていてもよい。また、壁40および窓60のパーツも同様に階層分けされていてもよい。詳細は後述するが、建築物仮想表示制御装置10は、扉のパーツとして指定されたパーツのメッシュデータに加えて、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツのメッシュデータも、纏めて処理することも可能である。
【0035】
図4から図6を参照して、建築物仮想表示システム1が実行する仮想表示データ制御処理について説明する。仮想表示データ制御処理では、三次元の建築物のメッシュデータから、扉のパーツに該当するメッシュデータ(扉メッシュデータ)を当たり判定の対象から除外する処理が実行される。また、扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外されたメッシュデータである扉除外データに基づいて、仮想移動体の視点による視点画像の表示制御処理が実行される。建築物仮想表示システム1の制御部(本実施形態では、建築物仮想表示制御装置10のCPU12、および、ユーザ装置20のCPU22)は、記憶装置13,23に記憶された建築物仮想表示プログラムに従って、図4に例示する仮想表示データ制御処理を実行する。
【0036】
まず、建築物仮想表示制御装置10のCPU12は、三次元CADソフトウェアによって出力されたメッシュデータを含む建築物データを、いずれかのユーザ装置20からネットワーク5を介して取得する(S1)。前述のように、S1で取得されるメッシュデータは、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々を表す。三次元CADソフトウェアには複数の種類があるが、多くの三次元CADソフトウェアがメッシュデータを出力することができる。従って、利用できる三次元CADソフトウェアの種類が制限され難いので、汎用性が高まる。
【0037】
建築物仮想表示制御装置10のCPU12は、S1で取得した建築物データを、関連情報(例えば、建築物仮想表示システム1に建築物データを提供したユーザの情報等)と紐づけて記憶装置13に記憶させる。
【0038】
次いで、ユーザ装置20(本実施形態では、建築物データを提供したユーザ装置20)のCPU22は、S1で建築物仮想表示制御装置10によって取得された建築物データで表される建築物(仮想建築物)を仮想空間上に展開し、表示部26におけるインターフェース上に仮想建築物を表示させる(S3)。
【0039】
ユーザ装置20のユーザは、インターフェース上に表示された仮想建築物を確認しながら操作部25を操作することで、仮想建築物の位置、大きさ、および向きの少なくともいずれかを編集するための指示をユーザ装置20に入力する。ユーザ装置20のCPU22は、入力された指示に応じて、仮想建築物の位置、大きさ、および向きの少なくともいずれかを編集する(S4)。その結果、仮想建築物の位置、大きさ、および向きのいずれかが、ユーザが所望するように編集される。なお、編集結果が反映されたデータ等は、ネットワーク5を介して建築物仮想表示制御装置10に出力(送信)され、建築物仮想表示制御装置10の記憶装置13に記憶される。
【0040】
次いで、ユーザ装置20のCPU22は、S1で取得された建築物のメッシュデータのうち、出入口を開閉可能な扉のパーツに該当する扉メッシュデータを、当たり判定による接触対象から除外する処理(扉メッシュデータ除外処理)を実行する(S6~S16)。その結果、後述する視点画像表示制御処理(S18、図6参照)では、扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外された建築物のメッシュデータ(扉除外データ)に基づいて仮想建築物内で仮想移動体が移動されることで、仮想移動体が扉を通過しつつ、仮想移動体の視点による仮想建築物の画像が、表示部26に表示される。よって、三次元データで表現された建築物内の状態が、ユーザによって適切に把握され易くなる。
【0041】
なお、本実施形態の扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)は、後述する視点画像表示制御処理(図6参照)と並行して実行される。つまり、CPU22は、S1で取得されたメッシュデータに基づいて仮想空間上に仮想建築物を展開する(S20)。CPU22は、仮想建築物の表面と、仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、建築物のメッシュデータ(少なくとも一部の扉メッシュデータの除外が完了している場合には、その時点の扉除外データ)と仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、当たり判定の結果に基づいて仮想移動体を仮想建築物内で移動させる(S21)。CPU22は、仮想移動体の視点による視点画像を表示部26に表示させつつ(S22)、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)を実行する。従って、ユーザは、仮想移動体の視点画像に基づいて、メッシュデータを当たり判定の対象から除外する必要がある扉のパーツを適切に指定することができる。ただし、視点画像が表示部26に表示されない状態で、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)が実行されてもよい。例えば、CPU22は、仮想建築物を上方から俯瞰した俯瞰画像を表示部26に表示させた状態で、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)を実行してもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、三次元の建築物を構成する複数のパーツの各々に、パーツを識別するためのID(番号等)が付与されている。本実施形態の建築物仮想表示システム1では、当たり判定の対象から除外するパーツのリストに、扉として特定(本実施形態では、ユーザによって指定)されたパーツのIDを加えることで、リストに加えられたパーツのメッシュデータが、当たり判定の際に接触対象から除外される。なお、作成されたリストのデータは、建築物データに紐づけて、建築物仮想表示制御装置10の記憶装置13に記憶される。以下、扉メッシュデータ除外処理について詳細に説明する。
【0043】
CPU22は、扉のカテゴリの指定指示が、操作部25を介して受け付けられたか否かを判断する(S6)。前述したように、本実施形態では、仮想建築物を構成する複数のパーツのうち、各々の扉を構成する複数のパーツが、同一の扉のカテゴリに予め分類されている(図3参照)。ユーザは、操作部25を操作することで、扉のカテゴリの指定指示をユーザ装置20に入力することができる。ユーザ装置20のCPU22は、扉のカテゴリの指定指示がユーザによって入力されると(S6:YES)、指定された扉のカテゴリに属する1つまたは複数のパーツを、扉のパーツとして特定する(S7)。その後、処理はS12へ移行する。
【0044】
扉のカテゴリの指定指示が受け付けられていなければ(S6:NO)、CPU22は、階層による扉のパーツの指定指示が、操作部25を介して受け付けられたか否かを判断する(S9)。階層による扉のパーツの指定指示が受け付けられていなければ(S9:NO)、処理はそのままS16の判断へ移行する。前述したように、本実施形態では、複数のパーツのうち、少なくとも各々の扉を構成する複数のパーツが、複数段階に階層分けされている(図3参照)。ユーザは、操作部25を操作することで、階層による扉のパーツの指定指示をユーザ装置20に入力することができる。ユーザ装置20のCPU22は、扉のパーツの指定指示がユーザによって入力されると(S9:YES)、指定されたパーツの階層以下のパーツ(つまり、指定されたパーツと、指定されたパーツよりも下位の階層のパーツ)を、扉のパーツとして特定する(S7)。その後、処理はS12へ移行する。
【0045】
図5を参照して、階層による扉のパーツの指定指示を受け付けるための具体的な方法の一例について説明する。図5に示すように、ユーザ装置20のCPU22は、扉除外用インターフェース表示画面70を表示させるためのデータを、ネットワーク5を介して建築物仮想表示制御装置10から取得する。扉除外用インターフェース表示画面70は、ユーザ装置20側の表示部26のブラウザ上に表示される。本実施形態の扉除外用インターフェース表示画面70には、視点画像71、除外済み扉リスト72、上位階層への変更ボタン75、下位階層への変更ボタン76、確定ボタン77、および編集完了ボタン78が表示される。
【0046】
視点画像71は、仮想建築物の表示画像の一例である。本実施形態では、仮想移動体の視点による視点画像71をユーザ装置20側の表示部26に表示させた状態で、階層による扉のパーツの指定指示が受け付けられる。除外済み扉リスト72には、当たり判定による接触対象から既に除外された扉メッシュデータのリストが表示される。従って、ユーザは、当たり判定による接触対象から既に除外された扉を容易に把握することができる。
【0047】
上位階層への変更ボタン75は、現時点で選択されているパーツよりも上位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示を入力するために、ユーザによって操作(指定)される。例えば、図3に示す例では、CPU22は、現時点で階層「2」の扉本体52が選択されている状態で、上位階層への変更ボタン75が操作されると、階層「2」よりも上位の階層「3」の扉枠51に、選択パーツを変更する。また、下位階層への変更ボタン76は、現時点で選択されているパーツよりも下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示を入力するために、ユーザによって操作(指定)される。例えば、図3に示す例では、CPU22は、現時点で階層「2」の扉本体52が選択されている状態で、下位階層への変更ボタン76が操作されると、階層「2」よりも下位の階層「1」の小窓53およびドアノブ54に、選択パーツを変更する。確定ボタン77は、現時点で選択されている階層のパーツを扉のパーツとして指定することを確定させる際に、ユーザによって操作(指定)される。編集完了ボタン78は、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)を完了させるために、ユーザによって操作(指定)される。
【0048】
なお、本実施形態では、上位階層への変更ボタン75の操作によって、扉のパーツよりも上位の階層の扉以外のパーツに選択パーツが変更された後、下位階層への変更ボタン76の操作によって、下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示が受け付けられると、選択パーツが上位の階層に変更される前に選択されていた扉のパーツに、選択パーツが戻される。例えば、図3に示す例では、CPU22は、階層「3」の扉枠51よりも上位の階層「4」のパーツに選択パーツが変更された後、下位の階層のパーツに選択パーツを変更する指示が受け付けられると、階層「3」のパーツ(扉枠51、壁40、および窓枠61)のうち、上位の階層「4」に変更される前に選択されていた扉枠51のパーツに、選択パーツが戻される。従って、ユーザは、扉のパーツよりも上位の階層の扉以外のパーツ(例えば、扉を含む壁全体のパーツ等)に誤って階層を上げてしまった場合でも、階層を下げる指示を入力するだけで、元々選択していた扉の最上位の階層のパーツ(図3の例では扉枠51のパーツ)を、再度選択することができる。
【0049】
なお、S6~S16において、扉のパーツの指定指示をユーザ装置20側で受け付けるための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、ユーザが操作部25を操作し、仮想建築物が表示された画面上でポインタを移動させて、扉のパーツに合わせることで、扉のパーツの指定指示が受け付けられてもよい。また、仮想空間物が表示された画面上に写るパーツのうち、表示画面の中心が含まれるパーツが、扉のパーツとして指定されてもよい。
【0050】
図4の説明に戻る。CPU22は、ユーザによって指定された扉のパーツを特定すると(S7およびS10)、ユーザによって指定された扉のパーツに重複している扉のパーツがあるか否かを判断する(S12)。本実施形態では、建築物内の互いに隣接する2つの部屋の間を移動するための同一の扉について、一方の部屋の扉のパーツのデータと、他方の部屋の扉のパーツのデータが重複している場合がある。ユーザによって指定された扉のパーツ(つまり、S7またはS10で特定された扉のパーツ)に重複している扉のパーツがある場合には(S12:YES)、CPU22は、ユーザによって指定された扉のパーツに重複するパーツも、纏めて扉のパーツとして特定する(S13)。その結果、S14において、重複する2つの部屋の各々の扉のパーツのメッシュデータが、当たり判定の対象から纏めて除外される。一方で、ユーザによって指定された扉のパーツ(つまり、S7またはS10で特定された扉のパーツ)に重複している扉のパーツが無ければ(S12:NO)、S14では、S7またはS10で特定された扉のパーツのメッシュデータのみが、当たり判定の対象から除外される。その後、処理はS16の判断へ移行する。
【0051】
S16では、扉メッシュデータ除外処理を完了するか否かが判断される。処理を完了しない場合(S16:NO)、処理はS6へ戻り、S6~S16の処理が繰り返される。例えば、編集完了ボタン77(図5参照)が操作されて、扉メッシュデータ除外処理の完了指示が入力されると(S16:YES)、CPU22は、扉メッシュデータが当たり判定の対象から除外された状態の建築物データである扉除外データ(本実施形態では、当たり判定の対象から除外するパーツのリストを含む建築物データ)を、記憶装置13に記憶させる(S17)。次いで、視点画像表示制御処理が実行されて(S18)、仮想表示データ制御処理は終了する。
【0052】
図6を参照して、仮想表示データ制御処理(S18)について詳細に説明する。仮想表示データ制御処理では、仮想移動体の視点による視点画像を、ユーザ装置20側の表示部26に表示させるための処理が行われる。なお、図6に示す仮想表示データ表示制御処理は、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)の完了後以外のタイミングでも実行される。例えば、記憶装置13に記憶されている複数の扉除外データの1つの視点画像表示指示がユーザによって入力された場合にも、仮想表示データ表示制御処理が実行される。また、前述したように、本実施形態では、扉メッシュデータ除外処理(S6~S16)の実行中にも仮想表示データ表示制御処理が実行される。
【0053】
まず、CPU22は、メッシュデータ(S1で取得されたメッシュデータ、または、S17で記憶装置13に記憶された扉除外データ)に基づいて、仮想空間上に仮想建築物を展開する(S20)。CPU22は、仮想建築物の表面と、仮想建築物内を移動する仮想移動体とが接触するか否かの当たり判定を、建築物のメッシュデータと仮想移動体の位置情報に基づいて実行しつつ、当たり判定の結果に基づいて仮想移動体を仮想建築物内で移動させる(S21)。S21の処理の具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、CPU22は、ユーザが操作部25を操作することで入力された仮想移動体の移動指示に応じて、仮想移動体を移動させてもよい。ここで、CPU22は、当たり判定によって仮想移動体と仮想建築物の表面が接触すると判定された場合には、指示された方向への仮想移動体の移動を禁止してもよい。なお、S21では、メッシュデータの中に、当たり判定の対象から除外された扉メッシュデータが含まれている場合、扉メッシュデータに対する当たり判定を行わずに、仮想移動体に扉を通過させる。また、仮想移動体には、重力が加わる方向である下方向に常に仮想移動体の移動指示が入力されてもよい。CPU22は、当たり判定によって、仮想移動体と、仮想移動体の下方の仮想建築物(例えば、床および階段等)の表面が接触すると判定された場合には、仮想移動体の下方への移動を禁止してもよい。CPU22は、仮想移動体の視点による視点画像を表示部26に表示させる(S22)。その結果、三次元データで表現された建築物内の状態が、ユーザによって適切に把握される。
【0054】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態で例示された技術の一部のみを実行することも可能である。例えば、扉のカテゴリに応じて扉のパーツを纏めて指定する処理、および、パーツの階層を利用して扉のパーツを指定する処理の少なくとも一方を省略することも可能である。パーツのカテゴリ、階層、重複が利用されることなく、扉を構成する複数のパーツが個別に指定されてもよい。また、建築物仮想表示システムは、扉メッシュデータ除外処理において、扉メッシュデータを当たり判定の接触対象から自動的に除外してもよい。また、本実施形態のS3~S16、S18、S20~S22の処理は、建築物仮想表示システム1内のユーザ装置20のCPU22によって実行される。しかし、S3~S16、S18、S20~S22の処理の少なくとも一部は、建築物仮想表示制御装置10のCPU12によって実行されてもよいし、建築物仮想表示制御装置10のCPU12とユーザ装置20のCPU22が協働することで実行されてもよい。
【0055】
なお、図4のS1で建築物データを取得する処理は、「建築物データ取得ステップ」の一例である。図6のS20で建築物を仮想空間上に展開する処理は、「展開ステップ」の一例である。図6のS21で仮想移動体を仮想建築物内で移動させる処理は、「移動ステップ」の一例である。図6のS22で視点画像を表示させる処理は、「視点画像表示ステップ」の一例である。図4のS6~S16で扉メッシュデータを当たり判定の対象から除外する処理は、「扉メッシュデータ除外ステップ」の一例である。図4のS17で扉除外データを記憶装置に記憶させる処理は、「扉除外データ記憶ステップ」の一例である。図4のS6,S7,S9,S10,S12,S13で扉の指定指示を受け付ける処理は、「扉指定指示受付ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0056】
1 建築物仮想表示システム
5 ネットワーク
10 建築物仮想表示制御装置
12 CPU
13 記憶装置
20 ユーザ装置
26 表示部
50 扉
71 視点画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6