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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018814
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】飛行体落下補助装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 17/80 20060101AFI20240201BHJP
   B64D 17/76 20060101ALI20240201BHJP
   B64D 17/70 20060101ALN20240201BHJP
   B64D 17/68 20060101ALN20240201BHJP
   B64C 39/02 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
B64D17/80
B64D17/76
B64D17/70
B64D17/68
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022129770
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】521461546
【氏名又は名称】合同会社アドエア
(72)【発明者】
【氏名】賀家 慎司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドローンの緊急落下時(緊急事態で)操縦および飛行の継続が困難となった場合等においては、パラシュートを迅速かつ確実に開傘させることを可能とする補助装置を提供する。
【解決手段】本発明は、飛行体に搭載される筒状収納部内に、パラシュート射出部10と折り目に沿って棒状硬質部材であるプッシュロッド9を挿入したパラシュート24とサスペンションライン6が折り畳まれて梱包され、射出部は一例として圧縮コイルと前記コイルの施錠及び開錠機構を有し、コイルバネの圧縮施錠状態で収納部内に装着されたプッシュロッド9とパラシュート24を、開錠で生じるコイルバネの開放力にて射出させ、サスペンションライン6を伸長させて梱包を開放する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載される筒状収納部内に、パラシュート射出部と前記パラシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されるとともに硬質部材が装着された封入部とを備え、前記射出部は前記パラシュート射出用エネルギー蓄積機構と前記エネルギー開放制御機構を有し、前記封入部内に装着された前記硬質部材に、前記開放制御で生じる前記蓄積機構のエネルギーの開放力をに伝達して前記収納部を射出させ、前記サスペンションラインを伸長させて前記梱包を開放して前記パラシュートを展開することを特徴とする飛行体の落下補助装置。
【請求項2】
サスペンションラインに硬質部材が挿入されてなる請求項1の飛行体の落下補助装置。
【請求項3】
パラシュートの折り目が縦方向に梱包され、前記折り目に沿って硬質部材が挿入されてなる請求項1記載の飛行体の落下補助装置。
【請求項4】
パラシュートがインナーシートに収納されてなる請求項1記載の飛行体の落下補助装置。
【請求項5】
硬質部材が、硬質樹脂シートからなる筒状のインナーカプセルを有し、このカプセル内にパラシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されてなる請求項1記載の飛行体の落下補助装置。
【請求項6】
飛行体にメインパラシュートを収納したコンテナと筒状収納部が搭載され、前記筒状収納部内に、パイロットシュート射出部と前記パイロットシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されるとともに硬質部材が装着された封入部とを備え、前記射出部は前記パイロットシュート射出用エネルギー蓄積機構と前記エネルギー開放制御機構を有し、前記封入部内に装着された前記棒状部材に、前記開放制御で生じる前記蓄積機構のエネルギーの開放力を伝達して前記収納部を射出させ、前記サスペンションラインを伸長させて前記梱包を開放して前記パイロットシュートを展開させ、前記サスペンションラインの張力にて前記メインパラシュートを前記コンテナから放出させることを特徴とする飛行体の落下補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に搭載される落下時に使用されるパラシュートを用いる落下補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる複数の回転翼を備えた飛行体を、撮影、配送等の分野へ利用することが推進され、今後更なる普及が見込まれている。そしてドローンの実用化に際して大事な、緊急落下時の安全装置としてパラシュートの利用を考慮した技術が提案されている。
【0003】
パラシュートの収納、射出、開傘機構を工夫したものとしてたとえば下記先行文献に開示されている技術がある。特許文献1には、キャノピーファースト方式の予備パラシュートにおいて、パイロッシュートのブライダルラインが破損したパラシュートのラインに絡む恐れがない予備シュートを提供すべく、パイロットシュートを収納したシュートカバーとスプリングをコンテナに収納し、スプリングの作用により、シュートカバーとパイロットシュートを放りだす機構が示されている。この文献1に示された技術では、パイロットシュートの上部に配置するカバーごと上部へ射出され、その後重力の作用によりカバーが折り畳んだパイロットシュートの傘頂部分に向かって下降する可能性が残り、折り畳んだパイロットシュートが展開することに不具合を生じる。また、カバーは伸縮性があり圧縮されたスプリングの開放力を吸収するため、その開放力の速度を減速または一部を無効化させながら残りの速度によって射出され、上部カバーの離脱に不安を残す。
【0004】
特許文献2には、パラシュートの収納部下にバネを配置し、収納部上をカバーで閉じ、圧縮されたバネの開放力にて収納されたパラシュートを押し上げ、カバーが開いてパラシュートが射出する技術が開示されているが、カバーの存在による不安がある。特許文献3には、有底筒状部材内のハット状押し上げ部材に折り畳んだパラシュートを収容し、有底筒状部材の上方に蓋部材を結合させた状態で、ピストン部材にて筒状部材を押し上げてパラシュートを射出させる技術が記載されている。特許文献4には、収容器内のパラシュート等の射出物をガス又はバネ等にて射出する技術が開示され、段落番号0055,0059には、収容器がない場合、射出物の外周囲を紐状部材等で縛ってくくりつけておき、作動時に紐状部材を切断することにより、射出物が展開できるように構成してもよいことが記載されている。[特許文献3][特許文献4]に示されるキャノピーを強制的に展開させることで知られるキャノピーファースト方式の開傘方法では、先にキャノピー(傘部分)が開くが必ず飛行体よりも上空方向にて開傘するとは限らない不安がある。飛行体が回転を伴った落下状態であれば展開したキャノピーに飛行体本体が包まれる、また側面で開傘した場合にはサスペンションラインが飛行体の突起部に絡まる可能性のおそれも大きくなる。
【0005】
ドローンの緊急落下時(緊急事態で)操縦および飛行の継続が困難となった場合)等においては、パラシュートを迅速かつ異常状態にあるドローンの機体部分に接触させることなく、更に開傘することなくドローンから遠ざけるように放出し、ドローンから十分離れた空中で開傘させることが必要であり、特許文献1~4に記載の技術では不安が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4884088号公報
【特許文献2】特許第6446491号公報
【特許文献3】特開2021―70426号公報
【特許文献4】特開2020―125012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、0005で述べた必要性に鑑み、収納されたパラシュートの迅速かつ勢いよく確実に空中へ放出・展開し、飛行体から十分離れた空中でパラシュートを支障なく確実に開傘させることを可能とする補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飛行体に搭載される筒状収納部内に、飛行体に搭載される筒状収納部内に、パラシュート射出部と前記パラシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されるとともに硬質部材が装着された封入部とを備え、前記射出部は前記パラシュート射出用エネルギー蓄積機構と前記エネルギー開放制御機構を有し、前記封入部内に装着された前記硬質部材に、前記開放制御で生じる前記蓄積機構のエネルギーの開放力を伝達して前記収納部を射出させ、前記サスペンションラインを伸長させて前記梱包を開放して前記パラシュートを展開することを特徴とする飛行体の落下補助装置を提供する。
【0009】
更に本発明は、望ましくはパラシュートの折り目が縦方向に収納され、前記折り目に沿って硬質部材が挿入されてなる構成、サスペンションラインに棒状硬質部材が挿入されてなる構成、パラシュートがインナーシートに収納されてなる構成、硬質部材が、硬質樹脂シートからなる筒状のインナーカプセルを有し、このカプセル内にパラシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されてなる構成を提供する。
【0010】
また本発明は、[0008]のパラシュートを、パイロットシュートとして用いた落下装置として飛行体にメインパラシュートを収納したコンテナと筒状収納部が搭載され、前記筒状収納部内に、パイロットシュート射出部と前記パイロットシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包されるとともに硬質部材が装着された封入部とを備え、前記射出部は前記パイロットシュート射出用エネルギー蓄積機構と前記エネルギー開放制御機構を有し、前記封入部内に装着された前記硬質部材に、前記開放制御で生じる前記蓄積機構のエネルギーの開放力を伝達して前記収納部を射出させ、前記サスペンションラインを伸長させて前記梱包を開放して前記パイロットシュートを展開させ、前記サスペンションラインの張力にて前記メインパラシュートを前記コンテナから放出させることを特徴とする飛行体の落下補助装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、パラシュートとサスペンションラインが折り畳まれて梱包された封入部に装着された硬質部材にエネルギー蓄積機構のエネルギーの開放力を伝達して収納部を射出させるため、開放される勢いの運動エネルギーを硬質部材にて効率よく受け止めて射出の勢いを増し、射出速度の高速化と飛距離を伸ばすことに成功している。このことから、本発明は、パラシュートの正確な形状での展開および開傘を得ることが可能となり、そのあとに続くパラシュートによる自然降下時の直進安定性を実現する機能が確実に発揮される。本発明のインナーシートの使用より、パラシュートの圧縮梱包が容易となり、硬質樹脂シートからなる筒状のインナーカプセルとの併用使用により、更なる射出速度の高速化、飛距離伸長効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[図1](a)は本発明の一例に係る落下補助装置のドローンへの装着、同(b)は同装置の射出状況を示す図である。
図2】[図2](a)は図1の補助装置の射出機の組み立て状況示す図、同(b)は同射出機のコイル圧縮状況を示す図、同(c)は同圧縮状況の正面模式図、同(d)は同射出機構のコイル圧縮開放によるカプセル射出状況を示す図である。
図3】[図3](a)、(b)は図2の射出器に用いられるコイルバネの施錠・開錠機構の動作説明図である。
図4】[図4](a)は図2の射出機内に装着される折り畳まれたパイロットシュートの周囲を梱包するインナーシートの外観図、同(b)は同(a)のインナーシートで梱包したパイロットシュートの折り畳んだ折り目に硬質部材を挿入した状態の内部透過図、同(c)は同(a)のインナーシートでパイロットシュートを梱包した状態の外観図、同(d)は同(c)のインナーシート梱包体をインナーカプセルで梱包する前の状態を示す外観図、同(e)は同(d)の梱包後の状態を示す外観図、同(f)は同(e)の梱包体における要部内部透過図である。
図5】[図5]は図1のドローン落下補助装置の動作状況を示し、(a)はインナーカプセル射出直後状況、同(b)はインナーカプセルの分解・パイロットシュート展開開始状況、同(c)はパイロットシュート開傘状況、同(d)はメインパラシュート展開開始状況、同(e)はメインパラシュート開傘状況を示す図である。
図6】[図6](a)~(e)は図4に示す折り畳まれたパイロットシュート24が図5(a)(b)(c)におい出後に展開開傘する様子とプッシュロッド(硬質棒状部材)9の配置を示す図である。
図7】[図7](a)、(b)は施錠部材のたの例の構造、動作説明図である。
図8】[図8](a)~(c)はパラシュート射出用エネルギー蓄積機構と開放制御機構の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a)に示すように、撮影・運搬等の様々な用途に使用される飛行体であるドローン1の本体部2には複数のプロペラ3が取付けられ(この例では6個)、本体2の下部には脚4、上部にはコンテナ5が取り付けられ、このコンテナ5内にはメインパラシュートが折り畳み収納されている。本体2には筒状の射出機(図2,4,5に示すパイロットシュートが梱包された硬質部材からなるインナーカプセルを収納している)10が取付られ、コンテナ5と射出機10は本発明のドローン落下補助装置の主要部分を構成する。7はブライダルコードであり、パイロットシュートとメインパラシュートを接続している。なお、インナーカプセル内には、パイロットシュートに繋がるサスペンションライン、硬質部材からなるブッシュロッドが内装されている。
【0014】
図1(a)のドローンに異常が発生し緊急落下時において、本発明の落下補助装置は図1(b)、図2に示すように、射出機10内に圧縮収納された金属コイルバネ11の開放力にて硬質のバレット12が上昇し、これに当接した硬質部材からなるブッシュロッド9および硬質部材からなるインナーカプセル20が勢い良く放出され、落下補助機構の動作が開始される。バネ11の施錠・開錠を制御していた固定リング13を有する引き込みコード14も放出される。硬質部材からなるブッシュロッド9とインナーカプセル20が勢い良く放出される本発明で発揮されるこの特長は、パイロットシュートの折り目に挿入してあるブッシュロッド9とインナーカプセル20およびパイロットシュートが素早く高速でドローン本体から離れ、この離れた位置でパラシュートの開放・開傘を確実に行い、支障(開傘不良)の恐れなく落下補助機能が発揮される。ブッシュロッド9を折り目に挿入したパイロットシュートおよびインナびーカプセル20の梱包構成例は図4で詳細を説明する。
【0015】
図2は、射出機10内へインナーカプセル20の組み立て・収納構造、カプセルの射出の様子示す。同(a)に示すように、射出機10内に、コイルバネ11の上部に固定された引き込みコード14を下方に引き込み、先端の固定リング13を射出機10の下部に設置された施錠部材15(止ピン)に係止させてコイルバネ11を圧縮保持する。金属又は硬質樹脂製のバレット12上にブッシュロッド9、パイロットシュートが内装されたインナーカプセル20を矢印17に示すように挿入し、同(b)、(c)に示す収納構造を得て、インナーカプセル20の放出準備を完了する。緊急落下時には、同(d)に示すように、施錠部材15が矢印18の方向に移動して固定リング13の係止が解除され、コイルバネ11の圧縮が解除されてバレット12が上方に伸びてインナーカプセル20を矢印19方行に押し出す。施錠及び開錠機構16は電動サーボにより施錠部材15を移動させて開錠を行う。この時、コイルバネ11の開放力は、吸収されることなく硬質のバレット12および硬質部材からなるインナーカプセル20、ブッシュロッド9にほぼそのままの勢いで伝わり、バレット12の上昇にてカプセル20は勢い良く放出され、本発明の特長的な機能(ドローン本体からの早期の離脱、パラシュートの迅速な展開等)が発揮される事になる。
【0016】
図3の具体例に示すように、施錠部材15は電動サーボモーターを有する機構16の回転力を伝達する回転アーム23にて動作し、矢印18の方向に移動して固定リング13の係止が解除される。
【0017】
図4にて、射出機10内に収納されるブッシュロッド9を縦方向の折り目に挿入したパイロットシュート24とインナーカプセル20の組み立て、構造を説明する。なお、ブッシュロッド9は棒状体(たとえば木材、樹脂、金属等の硬質部材)をパイロットシュート梱包後にカプセル20内に挿入するか、図6に示すようにサスペンションラインを挿通した硬質部材からなる筒状体も使用可能である。同(a)に示す、薄い樹脂からなり両端部に締め込み部22が形成されている湾曲上のインナーシート21内に、折り畳まれたパイロットシュート24を収納し、シート21をパイロットシュート24の周囲に密着させて梱包する(b)。6はサスペンションラインで一端がパイロットシュート24に他端がブライダルコード7に繋がり、ブライダルコード7はメインパラシュートに繋がっている。パイロットシュート締め付け部22を利用して、インナーシート21内に圧縮梱包したパイロットシュート24をさらに締め付け、ブッシュロッド9とパイロットシュート24をインナーカプセル内部に収納可能とすべく圧縮固定する。(c)に示すように、パイロットシュート24の縦方向の折り目にはブッシュロッド9が挿入されている。棒状体ブッシュロッド9の場合は、折り畳んだパイロットシュート24の折り目下面側から差し込むことで容易に装着できる。
【0018】
図4(d)は同(b)の圧縮されたインナーシート21を外装するインナーカプセル20の組み立て構造例を示す。カプセル20は厚め(約0.2mm)の硬質樹脂製(例としてポリエチレンテフタレート)のカプセルシート31,32,33の湾曲構造体よりなる。この中に同(d)に示すように、同(b)の梱包体シート21が取り囲まれて収納される。シート31,33には穴30がそれぞれ4個、シート32には穴30が2個形成され、ゴム紐34,35が同(d)のように取り付けられる状態でゴム紐34,35の端部のリング部34-1、35-1にサスペンションライン6の一部を挿入し、ゴム紐34,35を締め付けて施錠し、同(e)に示す梱包状態のカプセルが作成される。梱包後のパイロットシュート24の取り扱いにより乱れがあった場合はインナーカプセル20を施錠したままパイロットシュートの容積を再圧縮、調整してもよい。同(f)に透過的に示すように、同(e)の梱包状態のカプセル内部にはブッシュロッド9を縦方向折り目に挿入したパイロットシュート24、サスペンションライン6,ブライダルコード7が収納されている。
【0019】
前述したように、プッシュロッド(硬質棒状又は筒状部材)9は、コイルバネ11が圧縮状態から開放されることでバレット12がコイルバネ11の伸長方向に押し出される力が加わった時にバレット12と接触し、コイルバネ11のもたらす伸長エネルギーを直接受け止めることが可能であり、プッシュロッド9はその伸長エネルギーを折り畳まれた状態のパイロットシュート24に直接伝えることができる。このときパイロットシュート24は折り畳まれた状態を維持するために外側から内側へ向かっての締め付けの拘束力が掛かっていることが望ましく、インナーシート21またはインナーカプセル20またはその両方によって締め付けられていることでその効果を発揮する。
【0020】
この図4に示すカプセル構造の特徴は、パイロットシュート24、プッシュロッド9がコンパクトに収納され、緊急使用における放出時、サスペンションライン6の伸張にてサスペンションライン6の一部がリング部34-1、35-1からは引き抜かれて施錠が解除され、ゴム紐34,35もシート31,32,33の穴から引き抜かれ、シート31,32,33が解体され、シート21も容易に開放され、パイロットシュート24の周囲の梱包物がすべて離脱開放される。これらの動作は、カプセル20が射出後、空中で速やかに進行する。カバーの役目を果たすカプセルシート31,32,33は硬質樹脂であり、湾曲構造にてコンパクトな収納を可能とし、かつカプセル20の3個のカプセルシート上部が開放されており、射出、パイロットシュートの開放にも適している。また、3個のカプセルシートは、サスペンションライン(吊り索)の伸長によるゴム紐34,35の施錠解除により、容易に湾曲構造が分解してパイロットシュートの側面の左右側へ離脱し、カバーの解体がなされる。なお、カプセルシートの個数は3個に限らず、2個、4個の使用で構成することも考えられる。また、上記図4の例では、硬質部材としてインナーカプセル20とブッシュロッド9を併用しているが、インナーカプセル20とブッシュロッド9のどちらか一方を用いても、本発明の特長とする勢い良い飛び出し効果の発揮は可能である。
【0021】
前述したように、棒状体ブッシュロッド9の場合は、折り畳んだパイロットシュート24の折り目下面側から差し込むことで容易に装着可能であり、ブッシュロッド9として、硬質樹脂製の筒状体を用い、これに[図6]で示すようにサスペンションライン6のうちセンターの1本または任意の本数を筒状体内部に通して使用することも可能である。筒状ブッシュロッド9に通されたサスペンションライン6を折り畳み収納するとパイロットシュート24との梱包作業も容易となる。棒状体又は筒状体のブッシュロッド9は、パレットからの放出力の効果的な受け止めのため、縦方向に収納されることが望ましい。
【0022】
図5にて、ドローン落下補助装置の動作すなわちパイロットシュートおよびメインパラシュートの展開・開傘の動作状況を示す。図5に示すように(a)の状態で収納されたパイロットシュート24、サスペンションライン6、ブライダルコード7は、カプセル20が射出直後にサスペンションライン6が引き出され(b)、サスペンションライン6の一部がゴム紐(図2)から離脱し、パイロットシュート24を引っ張り出す構造となる(c)。すなわち、飛行中のドローンの異常状態が検知され、ドローン本体2が矢印40の方向に落下を検知すると、図2、3に示した錠部材15の固定リング13の係止解除により、カプセル20が(a)に示すようにコイルバネ11の開放力にて射出機10から空中に放出される。次に、(b)に示すように、カプセル20内のパイロットシュートとコンテナ5内のメインパラシュートを繋ぐサスペンションライン6とブライダルコード7が矢印41のごとく引っ張られ、カプセル20が解体されて樹脂シート31,32,33,インナーシート21の梱包が解かれ、空中で分離飛散する。パイロットシュートと24も梱包を解かれ、展開開始状態となる。その後、速やかにパイロットシュートと24が開傘し、ブライダルコード7がインナーコンテナ51とこの内に収納されていたメインパラシュートを引っ張り出す状態となる(c)。(d)に、パイロットシュート24がメインパラシュート50を引っ張り出し展開させる状態を示す。この後、メインパラシュート50が開傘する(e)、60はメインパラシュートのサスペンションライン、61はサスペンションライン60とドローン本体部2をつなぐブライダルラインである。この状態で落下補助機能が発揮され、ドローン本体2の緩やかな安定した落下動作が開始され、ドローンが軽減された適切な降下速度で着地する。なお、図5では、プッシュロッド9の図示は省略している。
【0023】
以上説明した例は、パイロットシュートとメインパラシュートを使用しているが、パイロットシュートを使用せず、メインパラシュートを図4のカプセルにて梱包し、メインパラシュートのみでの落下補助装置も可能である。
【0024】
図6にて、図4に示す折り畳まれたパイロットシュート24が図5(b)(c)において射出後に展開開傘する様子とプッシュロッド9の配置位置関係の様子を説明する。この図6の例では、筒状プッシュロッド9はサスペンションライン6を挿通した状態で装着されている。カプセル20の放出直後、パイロットシュート24は梱包するインナーカプセル20、インナーシート21の拘束は解かれるがまだ折り畳まれたままの状態であり、(a)は、この様子を示す。射出後にはサスペンションライン6全長が緊張し、この時プッシュロッド9は主たる役目(勢いの良い飛び出し)を終えている状態である。(b)は折り畳まれたパイロットシュート24が緊張したサスペンションライン6の延長方向に全高方向が緊張を終了した様子を示す)。同(c)は、同(b)のパイロットシュート24がドローン本体2の自然落下によって地面側(下)から上(空)方向へ向かって発生する風圧によってセンターを中心として谷折りした状態から左右にグループ形成された傘体部分がそれぞれ左右に分離して展開開傘が開始された状態を示す。その後、パイロットシュート24は、(d)に示すように、両端をそれぞれセンターに合わせて内側へ織り込んだ状態から、二段階目の左右分離展開となり完全平面に伸ばされた状態となる。そして、同(d)の状態からパイロットシュート24内部に向かって風圧を受けて広がり、パイロットシュート24は開傘動作終了状態となる(e)。プッシュロッド9はパイロットシュート24のサスペンションライン6のグループのうち、センターに繋がる1本のパイロットシュート24の傘体側に最も近い位置に固定されて存在している。
【0025】
図3の施錠・開錠機構の動作とは異なる開錠機構の例を図7に示す。これは、(a)に示す引き込みコード14に接続された固定リング13を施錠する金属棒62に、左右の電極63から通電することによる金属棒62の発熱によって固定リング13に熱溶解を起こし、固定リング13が金属棒62から離脱し、(b)のごとく開錠する機構である。この機構は、金属棒とコードという簡易な構造にて開錠動作が可能となる。リング13の素材としては、熱溶断するナイロンまたはポリエステル系素材等を用いる。なお、図7のごとく、通電方式ではなく、ガス等の火炎にてリング13を焼き切る方式も使用可能である。
【0026】
パラシュート射出用エネルギー蓄積機構と開放制御機構の他の例、たとえば、ガス放出の圧力機構、火薬発火の爆発風圧機構、緊張させたゴムロープの伸縮力のエネルギー機構を用いる例がある。図8(a)に示す炭酸ガスカートリッジ64を開放エネルギーとして使用する例は膨張式ライフジャケットに使用される開放部への打撃による開始機構を採用し、この打撃は電動サーボモーターによる起動とし、ガスの放出エネルギーをパラシュートの射出に利用する。図8(b)に示す火薬カートリッジ65を開放エネルギーとして使用する例は電気信号による着火で火薬の爆発力をパラシュートの射出に利用する。図8(c)に示すゴムロープ66を開放エネルギーとして使用する場合は図3の具体例に示すように、施錠部材15は、電動サーボモーターを有する機構15の回転力を伝達する回転アーム23にて動作し、矢印18の方向に移動して固定リング13の係止が解除される。また、図8(c)の場合、前述した熱線金属棒63と固定リング13を施錠部材として使用し、固定リング13を熱溶断することで係止が解除される開錠方法を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、硬質部材を用いたことで開放される勢いある運動エネルギーを効率よく受け止めて、パラシュートを勢いよく射出し、射出速度の高速化と飛距離を伸ばすことに成功している。このことから本発明は、飛行体から離れた空中でパラシュートの正確な形状での展開および開傘を得ることが可能となり、そのあとに続くパラシュートによる自然降下時の直進安定性を実現する機能が確実に発揮され、ドローン等の飛行体の緊急落下にすぐれた効果が発揮される。
【符号の説明】
【0028】
2 ドローン本体部
5 コンテナ
6 サスペンションライン
7 ブライダルコード
9 プッシュロッド(硬質棒状部材)
10 射出機
11 コイルバネ
12 バレット
13 固定リング
14 引き込みコード
15 施錠部材
20 インナーカプセル
21 インナーシート
22 締め込み部
24 パイロットシュート
31,32,33 カプセルシート
50 メインパラシュート
51 インナーコンテナ
60 サスペンションライン
61 ブライダルコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8