IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本オクラロ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018832
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】半導体光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/028 20060101AFI20240201BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01S5/028
H01L31/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152803
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022120789
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 修平
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇之
【テーマコード(参考)】
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
5F149BB01
5F149CB07
5F149CB14
5F149DA06
5F149FA05
5F149HA03
5F149HA12
5F149HA13
5F173AA01
5F173AL03
5F173AL13
5F173AL16
5F173AL21
5F173AP76
5F173AP78
5F173AR93
5F849BB01
5F849CB07
5F849CB14
5F849DA06
5F849FA05
5F849HA03
5F849HA12
5F849HA13
(57)【要約】
【課題】半導体光素子の向きを見分けることを目的とする。
【解決手段】半導体光素子は、相互に反対の第1側面20および第2側面22を有し、第1側面20は平坦であり、第2側面22は上方側面22Uおよび下方側面22Lを含み、下方側面22Lが上方側面22Uから突出して段を構成する基板16と、基板16の上面に位置し、相互に反対の第1端面26および第2端面28を有し、第1端面26は第1側面20と平らに揃い、第2端面28は第2側面22の上方側面22Uと平らに揃う光機能層24と、第1端面26および第1側面20を連続的に覆う第1膜42と、第1膜42とは反射率において異なり、第2端面28および第2側面22の上方側面22Uを連続的に覆う第2膜44と、光機能層24の上面に電気的に接続する第1電極38と、光機能層24の下面に電気的に接続する第2電極40と、を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に反対の第1側面および第2側面を有し、前記第1側面は平坦であり、前記第2側面は上方側面および下方側面を含み、前記下方側面が前記上方側面から突出して段を構成する基板と、
前記基板の上面に位置し、相互に反対の第1端面および第2端面を有し、前記第1端面は前記第1側面と平らに揃い、前記第2端面は前記第2側面の前記上方側面と平らに揃う光機能層と、
前記第1端面および前記第1側面を連続的に覆う第1膜と、
前記第1膜とは反射率において異なり、前記第2端面および前記第2側面の前記上方側面を連続的に覆う第2膜と、
前記光機能層の上面に電気的に接続する第1電極と、
前記光機能層の下面に電気的に接続する第2電極と、
を有する半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第1膜は、前記第1電極が載る下地面との重複を避けている半導体光素子。
【請求項3】
請求項2に記載された半導体光素子であって、
前記第2膜は、前記下地面に至るように延びている半導体光素子。
【請求項4】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第2側面の前記下方側面に付着した保護膜をさらに有する半導体光素子。
【請求項5】
請求項4に記載された半導体光素子であって、
前記第1膜は、前記第2側面の前記下方側面に至るように連続的に延び、
前記保護膜は、前記第1膜の一部である半導体光素子。
【請求項6】
請求項4に記載された半導体光素子であって、
前記保護膜は、前記第1膜とは分離されているが、前記第1膜と同じ材料からなる半導体光素子。
【請求項7】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記光機能層の前記上面にある半導体層をさらに有し、
前記半導体層は、前記第1端面に平らに揃う第1先端面と、前記第2端面に平らに揃う第2先端面と、を有し、
前記第1膜は、前記第1先端面に至るように連続的に延び、
前記第2膜は、前記第2先端面に至るように連続的に延びる半導体光素子。
【請求項8】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第1電極および前記第2電極は、前記光機能層の上方にある半導体光素子。
【請求項9】
請求項8に記載された半導体光素子であって、
前記基板は、前記上面に凹部を有し、
前記光機能層は、前記凹部の内側を避けており、
前記第2電極は、前記凹部の内側に至るように延びる半導体光素子。
【請求項10】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第1電極は、前記光機能層の上方にあり、
前記第2電極は、前記光機能層の下方にある半導体光素子。
【請求項11】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第2膜は、前記第1電極の端部の下に重なるように、前記第2端面から連続的に延びている半導体光素子。
【請求項12】
請求項11に記載された半導体光素子であって、
前記第1電極の他の端部の下に重なる絶縁膜をさらに有し、
前記絶縁膜は、前記第2膜と同じ材料からなる半導体光素子。
【請求項13】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第2膜の端部は、前記第1電極の端部の隣に間隔をあけて位置し、
前記第2膜の前記端部の下および前記第1電極の前記端部の下に連続的に重なる絶縁膜をさらに有し、
前記絶縁膜は、前記第2膜とは異なる材料からなる半導体光素子。
【請求項14】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第1膜は、前記反射率において、前記第2膜よりも低い半導体光素子。
【請求項15】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第2膜は、絶縁体からなる半導体光素子。
【請求項16】
請求項1に記載された半導体光素子であって、
前記第2膜は、第1電極と同じ材料からなる半導体光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる半導体光素子は、発光層または吸収層として機能する光機能層を含んでいる。半導体レーザの一例として、光を出射する前方端面に低反射膜があり、反対側の後方端面に高反射膜がある(特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1には、エッチングによって溝をウエハに形成し、溝の内面に成膜工程を実施し、溝の底面を切断することが開示されている。これによれば、溝の内面が製品の端面となり、その上に保護膜(誘電体膜、金属膜)が形成される。ウエハの状態で保護膜を形成することができるために、作業の効率化とコストの削減が可能になる。また、両端面にそれぞれ非対称な反射率を持つ保護膜を形成する場合には、一方の端面または先に形成した保護膜をレジストで覆って、他の端面に保護膜を形成する。
【0004】
特許文献2には、一方の端面が露出して他方の端面が連結された複数の製品に対して成膜工程を実施し、これらを劈開して、再び成膜工程を実施することが開示されている。これによれば、レジストなしで、両端面にそれぞれ非対称な反射率を持つ保護膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-302586号公報
【特許文献2】特開平10-178231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体光素子の実装時に半導体光素子の向きを見分ける必要がある。しかし、低反射膜および高反射膜の反射率の差は目視で判断できないため、半導体光素子の向きを見分けることが難しかった。
【0007】
本発明は、半導体光素子の向きを見分けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体光素子は、相互に反対の第1側面および第2側面を有し、前記第1側面は平坦であり、前記第2側面は上方側面および下方側面を含み、前記下方側面が前記上方側面から突出して段を構成する基板と、前記基板の上面に位置し、相互に反対の第1端面および第2端面を有し、前記第1端面は前記第1側面と平らに揃い、前記第2端面は前記第2側面の前記上方側面と平らに揃う光機能層と、前記第1端面および前記第1側面を連続的に覆う第1膜と、前記第1膜とは反射率において異なり、前記第2端面および前記第2側面の前記上方側面を連続的に覆う第2膜と、前記光機能層の上面に電気的に接続する第1電極と、前記光機能層の下面に電気的に接続する第2電極と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図2図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。
図3図1に示す半導体光素子のIII-III線断面図である。
図4A】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4B】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4C】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4D】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4E】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4F】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4G】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図4H】第1の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図5】成膜装置の概略図である。
図6】第2の実施形態に係る半導体光素子の断面図である。
図7A】第2の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図7B】第2の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図7C】第2の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図7D】第2の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図8】第3の実施形態に係る半導体光素子の断面図である。
図9A】第3の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図9B】第3の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図9C】第3の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図9D】第3の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の図である。
図10】第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図11図10に示す半導体光素子のXI-XI線断面図である。
図12図10に示す半導体光素子のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図2は、図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。図3は、図1に示す半導体光素子のIII-III線断面図である。
【0012】
半導体光素子は、端面出射型または端面入射型であり、半導体レーザ、変調器または受光器である。半導体光素子は、相互に反対の前方端面10および後方端面12を有する。前方端面10は、光通信の信号として使用される光L(図3)の出射面または入射面である。半導体光素子はメサ構造14(図2)を有している。後方端面12は、下部が上部から突出した形状になっている(図3)。上部の高さは、半導体光素子の全体厚さの1/10以下が好ましい。
【0013】
[基板]
半導体光素子は、基板16を有する。基板16の少なくとも最上面(例えば全体)は、第1導電型の半導体からなる。基板16は、絶縁層およびその上の半導体層を含む構造であってもよい。図2に示すように、基板16は、上面に凹部18を有する。凹部18は、メサ構造14の隣で、メサ構造14に沿って延びる。
【0014】
図3に示すように、基板16は、相互に反対の第1側面20および第2側面22を有する。第1側面20は平坦である。第2側面22は、上方側面22Uおよび下方側面22Lを含む。下方側面22Lが、上方側面22Uから突出して段を構成している。
【0015】
[光機能層]
半導体光素子は、光機能層24を有する。半導体レーザでは、光機能層24は活性層(多重量子井戸層)であり、注入された電流に応じて光Lを発振する。光機能層24で生成された光Lは前方端面10から出射される。変調器または受光器では、光機能層24は吸収層であり、前方端面10から入射した光Lを吸収する。
【0016】
光機能層24は、メサ構造14の下方にあって、メサ構造14に隣接する領域の下方にも延びる。光機能層24は、基板16の上面に位置する。光機能層24は、基板16の凹部18の内側を避けている。あるいは、光機能層24は、凹部18によって分離されている。基板16と光機能層24の間に他の層(光閉じ込め層や回折格子層)が設けられてもよい。
【0017】
図3に示すように、光機能層24は、相互に反対の第1端面26および第2端面28を有する。光機能層24は、第1端面26および第2端面28の間に延びている。第1端面26および第2端面28は、それぞれ、前方端面10および後方端面12の一部である。光機能層24は、前方端面10および後方端面12の間にある。第1端面26は、第1側面20と平らに揃っている。第2端面28は、第2側面22の上方側面22Uと平らに揃っている。
【0018】
[半導体層]
半導体光素子は、半導体層30を有する。半導体層30は、第2導電型である。半導体層30は、光機能層24の上面にある。光機能層24と半導体層30の間に他の層(光閉じ込め層や回折格子層)が設けられてもよい。図2に示すように、メサ構造14の下端部は、半導体層30の一部である。図3に示すように、半導体層30は、第1端面26に平らに揃う第1先端面32を有する。半導体層30は、第2端面28に平らに揃う第2先端面34を有する。半導体層30の上には、コンタクト層36がある。コンタクト層36は、第2導電型の半導体からなる。なお、ここでは第1導電型はn型、第2導電型はp型とした。
【0019】
[第1電極/第2電極]
半導体光素子は、第1電極38を有する。図2に示すように、第1電極38は、メサ構造14の上面(コンタクト層36)に接触している。第1電極38は、半導体層30を介して、光機能層24の上面に電気的に接続する。
【0020】
半導体光素子は、第2電極40を有する。図2に示すように、第2電極40は、基板16の凹部18の内側に至るように延び、凹部18の底で基板16に接している。第2電極40は、基板16を介して、光機能層24の下面に電気的に接続する。あるいは、絶縁層の上に第1導電型半導体層を配置し、この第1導電型半導体層と第2電極40が接しても構わない。図1に示すように、第1電極38および第2電極40は、光機能層24の上方にあり、金属からなる。
【0021】
[第1膜]
半導体光素子は、第1膜42を有する。図3に示すように、第1膜42は、第1端面26および第1側面20を連続的に覆う。第1膜42は、半導体層30の第1先端面32に至るように連続的に延びる。第1膜42は、第1電極38が載る下地面(コンタクト層36)との重複を避けている。第1膜42は、基板16の裏面にも設けられている。第1膜42は、第2側面22の下方側面22Lに至るように連続的に延びる。第1膜42の、第2側面22の下方側面22Lに付着する部分は、反射膜というよりも、保護膜である。
【0022】
第1膜42は絶縁膜であり、半導体レーザの場合は光機能層24で生成される光の波長に対して、あるいは変調器や受光器の場合は光機能層24が吸収する光の波長に対して低い反射率を有している低反射保護膜(例えば、酸化シリコン膜、シリコン膜、アルミナ膜などの複数層)である。反射率は1%未満である。
【0023】
[第2膜]
半導体光素子は、第2膜44を有する。第2膜44は、第2端面28および第2側面22の上方側面22Uを連続的に覆う。第2膜44は、半導体層30の第2先端面34に至るように連続的に延びる。第2膜44は、第2端面28から連続的に延びている。第2膜44は、第1電極38が載る下地面(コンタクト層36)に至るように延びている。第2膜44は、第1電極38の端部(第2膜44に近い端部)の下に重なるが、メサ構造14の上面全体は覆わない。
【0024】
第2膜44は、第1膜42とは反射率において異なる。第1膜42は、反射率において、第2膜44よりも低い。第2膜44は、絶縁体からなる。第2膜44は、光機能層24で生成または吸収される光の波長に対して高い反射率を有している高反射保護膜である。反射率は90%以上である。第1膜42は第2膜44より厚みが薄い。変形例として、第1膜42を高反射膜、第2膜44を低反射膜としてもよい。
【0025】
第1膜42および第2膜44は、光Lの入出射面の劣化や破壊を防いで信頼性を担保するほか、光機能層24を伝達する光を反射させることで、半導体光素子の特性を向上させる。
【0026】
半導体光素子は、絶縁膜46を有する。絶縁膜46は、第1電極38の他の端部(第1膜42に近い端部)の下に重なる。絶縁膜46は、第2膜44と同じ材料からなり、第2膜44の分離された一部ということもできる。
【0027】
[効果]
本実施形態によれば、前方端面10(段なし)と後方端面12(段あり)の形状が異なっているので、前方および後方の判断が付きやすい。特に、図3に示すように横側から見ると、形状の違いが分かりやすい。
【0028】
電極形状から判断する場合は、第1電極38を基準に判断することになる。例えば、メサ構造14の上面からの引出線が右側に延びるように半導体光素子を置いて、上側を前方と判断することはできる。ただし、例えば低倍率の顕微鏡もしくは顕微鏡を用いないで確認する場合、第1電極38および第2電極40の形状の違いは小さく、前方端面と後方端面を判断することが難しい場合がある。一方、端面の形状の違いは低倍率の顕微鏡や顕微鏡を用いなくても判断することができ、素子方向の確認作業を素早くかつ間違いなく判断することができる。
【0029】
[製造方法]
図4Aに示すように、基板16の上に、光機能層24、半導体層30およびコンタクト層36を形成する。基板16は、複数の半導体光素子の集合体であってもよいし、ウエハであってもよい。基板16に連続して、光機能層24、半導体層30およびコンタクト層36を形成する。
【0030】
図4Bに示すように、溝48を形成する。その形成はエッチングにより行うことができる。溝48は、壁面が垂直になるように形成する。溝48は、光機能層24よりも深く形成する。溝48の深さは、後方端面12の上部の高さ(図3)に相当する。壁面は、基板16の第2側面22の上方側面22U、光機能層24の第2端面28、および半導体層30の第2先端面34になる。溝48の幅(溝48が延びる方向に直交する幅)は20μm以上が好ましい。
【0031】
図4Cに示すように、第2膜44を形成する。第2膜44は、半導体層30を覆い、コンタクト層36を覆い、溝48の壁面および底面を覆うように形成する。第2膜44は、高反射率層として機能する層構造(例えば、酸化シリコン膜、シリコン膜、アルミナ膜などの複数層)を有する。
【0032】
図4Dに示すように、第2膜44をパターニングする。例えば、第1電極38と光機能層24との電気的接続に必要な領域にある部分で、第2膜44をエッチングにより除去する。これにより、第2膜44にはスルーホールが形成される。エッチング前に、第2膜44の一部(例えば溝48の内側の部分)を図示しないレジストで覆う。第2膜44の、レジストで覆われた部分が除去されずに残される。レジストは、その後に除去されるが、残された第2膜44に対して若干のダメージを与える。溝48の外側にある第2膜44は、その下地(コンタクト層36)を外部環境から保護するパッシベーション膜として機能する。
【0033】
なお、他の形成方法としてリフトオフがある。リフトオフでは、第2膜44を形成しない領域にレジストを形成し、その上に第2膜44を形成する。第2膜44は、レジストの上にも形成されるので、レジストを除去すると、その上に堆積した第2膜44が除去される。
【0034】
図4Eに示すように、第1電極38および第2電極40(図2)を形成する。形成方法は、蒸着などの成膜工程を含む。全面に金属膜を形成した後、その一部を除去して、第1電極38および第2電極40を形成する。このプロセスで、第2膜44は、金属膜の付着およびその除去という工程にさらされるため、表面にダメージが入り、膜厚の変化があり得る。
【0035】
なお、他の形成方法としてリフトオフがある。リフトオフでは、金属膜を形成しない領域にはレジストを形成し、その上に金属膜を形成する。金属膜は、レジストの上にも形成されるので、レジストを除去すると、その上に堆積した金属膜が除去される。このプロセスでは、第2膜44は、レジストの付着およびその除去という工程にさらされるため、表面にダメージが入り、膜厚の変化があり得る。つまり、製造方法に関わらず、第2膜44はなんらかのプロセス工程にさらされる。そのため、第2膜44の成膜直後の状態を維持することは難しい。
【0036】
図4Fに示すように、基板16(ウエハ)を薄くする。これは研磨によって行う。そして、第1ラインL1および第2ラインL2で基板16を劈開して、複数のバーBにする。劈開面が、バーBの前面および後面である。それぞれのバーBは、一群の半導体光素子の製造中間体が一列に並んだ集合体である。
【0037】
第1ラインL1および第2ラインL2は、第1電極38および第2電極40を避けている。第1ラインL1は、さらに溝48を避けている。第1ラインL1で劈開された面は、基板16の第1側面20、光機能層24の第1端面26、および半導体層30の第1先端面32を含む。第2ラインL2は、溝48の底面にある。第2ラインL2で劈開された面は、基板16の第2側面22の下方側面22Lを含む。
【0038】
図4Gに示すように、複数のバーBを並べる。隣同士の劈開面の間には、間隔をあける。また、第1電極38および第2電極40(図2)を下に向ける。複数のバーBは、ステージ52またはトレイの上に並べる。
【0039】
図4Hに示すように、第1膜42を形成する。第1膜42は、スパッタリングによって形成する。成膜装置が使用される。第1膜42は、バーBの上面および側面に形成される。
【0040】
図5は、成膜装置の概略図である。成膜装置の一例は、マグネトロンスパッタ装置である。チャンバー内では、ステージ52に成膜対象(複数のバーB)が並べられ、その上方に成膜原料(Si,SiO,Al)が配置される。チャンバー内を真空とし、そこにArガスを供給する。成膜原料および成膜対象の間に高周波信号を印加するとプラズマPが生成される。プラズマPが成膜原料Mにぶつかり、スパッタリング現象が発生して、粒子が弾き飛ばされる。粒子は、下方に落ちて行き、バーBに付着する。落ちて行く粒子は、残留ガスやイオンにぶつかり、方向を変え、バーBの側面にも付着する。
【0041】
図4Hに示すように、第1膜42は、基板16の裏面(図4Hでは上面)、第1側面20、および第2側面22の凸部の先端面(下方側面22L)に形成される。一方、凸部の下の面(上方側面22U)には、凸部が庇となって成膜原料Mの粒子が付着しないので、第1膜42は形成されない。
【0042】
以上の工程のあと、バーBを個片化することで、半導体光素子が得られる。本実施形態によれば、第1膜42の形成後に、第1膜42にダメージを与えるプロセスがない。そのため、第1膜42の、形成直後の状態を保つことができ、安定した特性を維持することができる。
【0043】
低反射膜は、高反射膜と比較して膜厚が薄いので、膜厚の変化に敏感であり、形成後に膜厚が変化した場合は所望の特性を得ることができない。したがって、第1膜42が低反射膜である場合に、本実施形態は効果的である。
【0044】
また、端面への保護膜(反射膜)の形成にあたって、複数のバーBを、端面を同一方向に並べてホルダーに設置する作業が不要であり、コスト面で優れる。
【0045】
さらに、第1膜42と第2膜44を別の工程で形成するため、各々を個別の層構造で形成することが可能であり、設計の自由度が高く、反射率が異なる保護膜を備えた半導体光素子を低コストで得ることができる。
【0046】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る半導体光素子の断面図である。半導体光素子は、絶縁膜246(パッシベーション膜)を有する。絶縁膜246は、第2膜244とは異なる材料(例えば酸化シリコンやシリコン)からなり、第2膜244とは異なる厚さである。第2膜244の端部は、第1電極238の端部の隣に間隔をあけて位置する。絶縁膜246は、第2膜244の端部の下および第1電極238の端部の下に連続的に重なる。製造方法は以下の通りである。
【0047】
図7Aに示すように、絶縁膜246を形成する。詳しくは、コンタクト層236の上面に絶縁膜246を全面に形成し、その一部(コンタクト層236の、第1電極238との接続領域)を除去する。コンタクト層236およびその下の構造には、第1の実施形態で説明した内容が適用可能である。
【0048】
図7Bに示すように、第1電極238および第2電極を形成する。具体的には、金属膜を全面に形成した後に、その一部を除去する。
【0049】
図7Cに示すように、溝248を形成する。溝248は、コンタクト層236の、絶縁膜246、第1電極238および第2電極からの露出領域に形成する。溝248の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0050】
図7Dに示すように、第2膜244を形成する。詳しくは、第2膜244を全面に形成した後に、少なくとも第1電極238および第2電極の上から第2膜244を除去する。第2膜244は、溝248の内側にも形成する。その後、第1の実施形態で説明した工程を行う。なお、上記手順は一例であり、他の手順であっても構わない。本実施形態でも、第1の実施形態で説明した効果が得られる。
【0051】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る半導体光素子の断面図である。第2膜344は、第1電極338と同じ材料(例えば金属)からなり、同じ層構造(例えば複数層)であってもよい。第2膜344の端部は、第1電極338の端部の隣に間隔をあけて位置する。したがって、第2膜344は、第1電極338とは絶縁されており、さらに第2電極とも絶縁されている。半導体光素子は、絶縁膜346を有する。絶縁膜346は、第2膜344の端部の下および第1電極338の端部の下に連続的に重なる。絶縁膜346は、第2膜344とは異なる材料からなる。製造方法は以下の通りである。
【0052】
図9Aに示すように絶縁膜346を形成する。図9Bに示すように溝348を形成する。図9Cに示すように、金属膜354を全面に形成する。コンタクト層336およびその下の構造には、第1の実施形態で説明した内容が適用可能である。
【0053】
溝348の壁面は垂直面であるため、壁面の上では金属膜354は薄くなっている。また、溝348の底面は、狭い領域であるため、金属膜354が薄くなっている。コンタクト層336と絶縁膜346で段差が形成されるが、金属膜354が十分に厚いため、これらの上で金属膜354は平坦になっている。
【0054】
図9Dに示すように、金属膜354を分離する。金属膜354の一部を除去する。これにより、第2膜344と第1電極338を分断(電気的にアイソレーション)する。また、第2電極を形成する。その後、第1の実施形態で説明した工程を行う。本実施形態では、第1電極338および第2電極と同時に、第2膜344を形成するので、製造コストを削減することが可能である。本実施形態でも、第1の実施形態で説明した効果が得られる。
【0055】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図11は、図10に示す半導体光素子のXI-XI線断面図である。図12は、図10に示す半導体光素子のXII-XII線断面図である。
【0056】
半導体光素子は、第2側面422の下方側面422Lに付着した保護膜450を有する。保護膜450は、第1膜442とは分離されているが、第1膜442と同じ材料からなる。保護膜450は、第1膜442の分離された一部ということもできる。
【0057】
本実施形態では、第1電極438は光機能層424の上方にあるが、第2電極440は光機能層424の下方にある。第2電極440の形成プロセスでは、基板416(ウエハ)を薄くした後に、その裏面に形成される。その後、第1の実施形態で説明したように劈開を行い、バーをステージまたはトレイの上に並べた後、基板416(ウエハ)の裏面および第2電極440の表面、第1側面420、および第2側面422の下方側面422Lに第1膜442を形成する。そして、基板416(ウエハ)の裏面および第2電極440の表面の上から、第1膜442を除去する。こうして、半導体光素子が得られる。本実施形態は、第1から第3の実施形態に適用してもよい。
【0058】
[実施形態の概要]
(1)半導体光素子は、相互に反対の第1側面20および第2側面22を有し、前記第1側面20は平坦であり、前記第2側面22は上方側面22Uおよび下方側面22Lを含み、前記下方側面22Lが前記上方側面22Uから突出して段を構成する基板16と、前記基板16の上面に位置し、相互に反対の第1端面26および第2端面28を有し、前記第1端面26は前記第1側面20と平らに揃い、前記第2端面28は前記第2側面22の前記上方側面22Uと平らに揃う光機能層24と、前記第1端面26および前記第1側面20を連続的に覆う第1膜42と、前記第1膜42とは反射率において異なり、前記第2端面28および前記第2側面22の前記上方側面22Uを連続的に覆う第2膜44と、前記光機能層24の上面に電気的に接続する第1電極38と、前記光機能層24の下面に電気的に接続する第2電極40と、を有する。
第1側面20が平坦である一方で、第2側面22では段が構成されるので、半導体光素子の前後を簡単に見分けることができる。
(2)(1)に記載された半導体光素子であって、前記第1膜42は、前記第1電極38が載る下地面との重複を避けている半導体光素子。
(3)(2)に記載された半導体光素子であって、前記第2膜44は、前記下地面に至るように延びている半導体光素子。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第2側面22の前記下方側面22Lに付着した保護膜をさらに有する半導体光素子。
(5)(4)に記載された半導体光素子であって、前記第1膜42は、前記第2側面22の前記下方側面22Lに至るように連続的に延び、前記保護膜は、前記第1膜42の一部である半導体光素子。
(6)(4)に記載された半導体光素子であって、前記保護膜450は、前記第1膜442とは分離されているが、前記第1膜442と同じ材料からなる半導体光素子。
(7)(1)から(6)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記光機能層24の前記上面にある半導体層30をさらに有し、前記半導体層30は、前記第1端面26に平らに揃う第1先端面32と、前記第2端面28に平らに揃う第2先端面34と、を有し、前記第1膜42は、前記第1先端面32に至るように連続的に延び、前記第2膜44は、前記第2先端面34に至るように連続的に延びる半導体光素子。
(8)(1)から(7)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第1電極38および前記第2電極40は、前記光機能層24の上方にある半導体光素子。
(9)(8)に記載された半導体光素子であって、前記基板16は、前記上面に凹部18を有し、前記光機能層24は、前記凹部18の内側を避けており、前記第2電極40は、前記凹部18の内側に至るように延びる半導体光素子。
(10)(1)から(7)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第1電極438は、前記光機能層424の上方にあり、前記第2電極440は、前記光機能層424の下方にある半導体光素子。
(11)(1)から(10)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第2膜44は、前記第1電極38の端部の下に重なるように、前記第2端面28から連続的に延びている半導体光素子。
(12)(11)に記載された半導体光素子であって、前記第1電極38の他の端部の下に重なる絶縁膜46をさらに有し、前記絶縁膜46は、前記第2膜44と同じ材料からなる半導体光素子。
(13)(1)から(10)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第2膜244の端部は、前記第1電極238の端部の隣に間隔をあけて位置し、前記第2膜244の前記端部の下および前記第1電極238の前記端部の下に連続的に重なる絶縁膜246をさらに有し、前記絶縁膜246は、前記第2膜244とは異なる材料からなる半導体光素子。
(14)(1)から(13)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第1膜42は、前記反射率において、前記第2膜44よりも低い半導体光素子。
(15)(1)から(14)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第2膜44は、絶縁体からなる半導体光素子。
(16)(1)から(14)のいずれか1つに記載された半導体光素子であって、前記第2膜344は、第1電極338と同じ材料からなる半導体光素子。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 前方端面、12 後方端面、14 メサ構造、16 基板、18 凹部、20 第1側面、22 第2側面、22L 下方側面、22U 上方側面、24 光機能層、26 第1端面、28 第2端面、30 半導体層、32 第1先端面、34 第2先端面、36 コンタクト層、38 第1電極、40 第2電極、42 第1膜、44 第2膜、46 絶縁膜、48 溝、52 ステージ、236 コンタクト層、238 第1電極、242 第1膜、244 第2膜、246 絶縁膜、248 溝、336 コンタクト層、338 第1電極、344 第2膜、346 絶縁膜、348 溝、354 金属膜、416 基板、420 第1側面、422 第2側面、422L 下方側面、424 光機能層、438 第1電極、440 第2電極、442 第1膜、450 保護膜、B バー、L 光、L1 第1ライン、L2 第2ライン、M 成膜材料、P プラズマ。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12