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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018834
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】回路装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H02J7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154698
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022121300
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】二ノ宮 正也
(72)【発明者】
【氏名】翁 勝美
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503GA01
(57)【要約】
【課題】バッテリーを定電流充電する回路において、大電流の充電電流から低電流の充電電流まで対応可能な回路装置等を提供すること。
【解決手段】回路装置100は、電流源回路140と第1充電回路110と第2充電回路120と制御回路160とを含む。制御回路160は、電流設定値INDAが第1電流範囲であるとき、第1設定値STV1が示す電流値の第1充電電流ICH1を第1充電回路110から充電ノードNBATに供給させる。制御回路160は、電流設定値INDAが第2電流範囲であるとき、第2設定値STV2が示す電流値の第2充電電流ICH2を第2充電回路120から充電ノードNBATに供給させる。制御回路160は、電流設定値INDAに対する第1充電電流ICH1の第1変換特性を補正する第1補正、電流設定値INDAに対する第2充電電流ICH2の第2変換特性を補正する第2補正のうち少なくとも一方の補正を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源回路と、
前記電流源回路の出力電流に基づいて、定電流の第1充電電流を充電電流として充電ノードに供給する第1充電回路と、
前記電流源回路の前記出力電流に基づいて、前記第1充電電流よりも大きい定電流の第2充電電流を前記充電電流として前記充電ノードに供給する第2充電回路と、
前記充電電流の電流値を示す電流設定値に基づいて、前記第1充電電流の電流値を設定する第1設定値、及び前記第2充電電流の電流値を設定する第2設定値を出力する設定値出力処理を行う制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記電流設定値が第1電流範囲であるとき、前記第1設定値が示す電流値の前記第1充電電流を前記第1充電回路から前記充電ノードに供給させる第1電流モードの制御を行い、
前記電流設定値が前記第1電流範囲より高電流側の第2電流範囲であるとき、前記第2設定値が示す電流値の前記第2充電電流を前記第2充電回路から前記充電ノードに供給させる第2電流モードの制御を行い、
前記設定値出力処理において、前記第1設定値を補正することで、前記電流設定値に対する前記第1充電電流の第1変換特性を補正する第1補正、及び前記第2設定値を補正することで、前記電流設定値に対する前記第2充電電流の第2変換特性を補正する第2補正のうち少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された回路装置において、
前記制御回路は、
前記第1補正及び前記第2補正の少なくとも一方の補正として、前記第1設定値及び前記第2設定値の少なくとも一方のオフセット補正により前記第1変換特性と前記第2変換特性のオフセット差を低減するオフセット補正、及び前記第1設定値及び前記第2設定値の少なくとも一方の傾き補正により前記第1変換特性と前記第2変換特性の傾きを近づける傾き補正のうち少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1変換特性の補正用の第1傾き補正値及び第1オフセット補正値と、前記第2変換特性の補正用の第2傾き補正値及び第2オフセット補正値と、を記憶する記憶部を含み、
前記制御回路は、
前記第1傾き補正値、前記第1オフセット補正値及び前記電流設定値に基づいて前記第1設定値を演算する前記第1補正を行うことで、前記第1変換特性の補正を行い、
前記第2傾き補正値、前記第2オフセット補正値及び前記電流設定値に基づいて前記第2設定値を演算する前記第2補正を行うことで、前記第2変換特性の補正を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載された回路装置において、
前記電流設定値がINDAであり、前記第1傾き補正値がGA1であり、前記第1オフセット補正値がOF1であり、前記第2傾き補正値がGA2であり、前記第1オフセット補正値がOF2であるとき、
前記制御回路は、
STV1=GA1×INDA+OF1
STV2=GA2×INDA+OF2
により第1設定値STV1及び第2設定値STV2を演算することを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項3に記載された回路装置において、
前記記憶部は、
前記第1電流範囲と前記第2電流範囲の境界に対応する閾値を記憶し、
前記制御回路は、
前記電流設定値が前記閾値より小さいときには、前記第1設定値に基づいて前記第1電流モードの制御を行い、
前記電流設定値が前記閾値より大きいときには、前記第2設定値に基づいて前記第2電流モードの制御を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項3に記載された回路装置において、
前記記憶部は、
不揮発性メモリーであることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記第1電流モードにおいて、前記電流源回路は、前記第1設定値に基づいて第1電流を前記出力電流として前記第1充電回路に供給し、前記第1充電回路は、第1増幅率で前記第1電流を増幅することで前記第1充電電流を供給し、
前記第2電流モードにおいて、前記電流源回路は、前記第2設定値に基づいて第2電流を前記出力電流として前記第2充電回路に供給し、前記第2充電回路は、前記第1増幅率よりも大きい第2増幅率で前記第2電流を増幅することで前記第2充電電流を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載された回路装置において、
第1メタル抵抗と第1ポリ抵抗との比によって前記第1増幅率が設定され、
第2メタル抵抗と第2ポリ抵抗との比によって前記第2増幅率が設定されることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項7に記載された回路装置において、
前記電流源回路は、
電流値がバイナリーに重み付けされた第1~第n定電流を出力する第1~第n電流源(nは2以上の整数)と、
スイッチ回路と、
を含み、
前記第1電流モードにおいて、前記制御回路は、前記第1設定値に基づいて、前記第1~第n電流源を制御する電流源制御値の第1~第n制御ビット信号を出力し、前記スイッチ回路は、前記第1~第n電流源のうち前記第1~第n制御ビット信号に基づいて選択された電流源からの電流を前記第1電流として前記第1充電回路に供給し、
前記第2電流モードにおいて、前記制御回路は、前記第2設定値に基づいて前記第1~第n制御ビット信号を出力し、前記スイッチ回路は、前記第1~第n電流源のうち前記第1~第n制御ビット信号に基づいて選択された電流源からの電流を前記第2電流として前記第2充電回路に供給することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載された回路装置において、
前記制御回路は、
前記第2電流モードにおいて、前記第2設定値のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号(iは1以上の整数)を前記第1~第n制御ビット信号として出力し、
前記第1電流モードにおいて、前記第1設定値のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+nビット信号(kは1以上i以下の整数)を前記第1~第n制御ビット信号として出力することを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項7に記載された回路装置において、
前記電流源回路は、
電流値がバイナリーに重み付けされたm個の定電流(mは2以上の整数)を出力するm個の電流源を有する第1電流源回路と、
電流値がバイナリーに重み付けされたn個の定電流(nはm以上の整数)を出力するn個の電流源を有する第2電流源回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記第1設定値に基づいて、前記第1電流源回路の前記m個の電流源を制御するmビットの第1電流源制御値を出力し、前記第2設定値に基づいて、前記第2電流源回路の前記n個の電流源を制御するnビットの第2電流源制御値を出力し、
前記第1電流源回路は、
前記m個の電流源のうち前記第1電流源制御値に基づいて選択された電流源からの電流を前記第1電流として前記第1充電回路に供給し、
前記第2電流源回路は、
前記n個の電流源のうち前記第2電流源制御値に基づいて選択された電流源からの電流を前記第2電流として前記第2充電回路に供給することを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項11に記載された回路装置において、
前記制御回路は、
前記第2設定値のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号(iは1以上の整数)を前記nビットの前記第2電流源制御値として出力し、
前記第1設定値のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+mビット信号(kは1以上i以下の整数、mは2以上n以下の整数)を前記mビットの前記第1電流源制御値として出力することを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された回路装置と、
前記充電ノードに接続されるバッテリーと、
を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電圧の異なる2つの充電用の電源から二次電池を充電する充電装置が開示されている。一方の電源の電圧は、二次電池を充電するときの基準電圧よりも僅かに低く、他方の電源の電圧は、これより高い。充電装置は、バッテリー電圧を検出し、バッテリー電圧が2つの電源の電圧より低いとき、2つの電源によりバッテリーを充電する。充電装置は、二次電池がある程度充電され、バッテリー電圧が、電圧が低い方の電源の電圧を超えたとき、電圧が高い方の電源のみにより二次電池を充電する。この特許文献1では、二次電池が充電されるに従って充電電流が低下していき、その充電電流を検出することで充電を終了させている。そして、二次電池がある程度充電されたとき、バッテリー電圧に基づいて充電用の電源を2つから1つに切り替えることで、充電電流の検出精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-028338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリーを定電流充電する回路において、大電流の充電電流から低電流の充電電流まで対応することが困難という課題があった。例えば、設定可能な充電電流の最大値を増加させようとすると電流設定の分解能が低下したり、或いは電流源回路の規模が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、電流源回路と、前記電流源回路の出力電流に基づいて、定電流の第1充電電流を充電電流として充電ノードに供給する第1充電回路と、前記電流源回路の前記出力電流に基づいて、前記第1充電電流よりも大きい定電流の第2充電電流を前記充電電流として前記充電ノードに供給する第2充電回路と、前記充電電流の電流値を示す電流設定値に基づいて、前記第1充電電流の電流値を設定する第1設定値、及び前記第2充電電流の電流値を設定する第2設定値を出力する設定値出力処理を行う制御回路と、を含み、前記制御回路は、前記電流設定値が第1電流範囲であるとき、前記第1設定値が示す電流値の前記第1充電電流を前記第1充電回路から前記充電ノードに供給させる第1電流モードの制御を行い、前記電流設定値が前記第1電流範囲より高電流側の第2電流範囲であるとき、前記第2設定値が示す電流値の前記第2充電電流を前記第2充電回路から前記充電ノードに供給させる第2電流モードの制御を行い、前記設定値出力処理において、前記第1設定値を補正することで、前記電流設定値に対する前記第1充電電流の第1変換特性を補正する第1補正、及び前記第2設定値を補正することで、前記電流設定値に対する前記第2充電電流の第2変換特性を補正する第2補正のうち少なくとも一方の補正を行う回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記の回路装置と、前記充電ノードに接続されるバッテリーと、を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における回路装置と電子機器の構成例。
図2】補正前の第1充電電流及び第2充電電流の特性例。
図3】制御回路と記憶部の詳細構成例。
図4】第1実施形態における制御回路の動作説明図。
図5】補正手法を説明する図。
図6】オフセット補正の例。
図7】オフセット補正の例。
図8】オフセット補正の例。
図9】オフセット補正の例。
図10】傾き補正の例。
図11】傾き補正の例。
図12】傾き補正の例。
図13】傾き補正の例。
図14】閾値設定の例。
図15】第1充電回路と第2充電回路の詳細構成例。
図16】第1実施形態における電流源回路の詳細構成例。
図17】第1実施形態における電流源回路の抵抗比と動作を説明する図。
図18】第1充電回路、第2充電回路及び電流源回路のパラメーター例。
図19】第2実施形態における回路装置と電子機器の構成例。
図20】第2実施形態における制御回路の動作説明図。
図21】第1充電回路と第1電流源回路の詳細構成例。
図22】第2充電回路と第2電流源回路の詳細構成例。
図23】第1電流源回路及び第2電流源回路の抵抗比と動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態における回路装置100と、その回路装置100を含む電子機器200の構成例である。
【0010】
電子機器200は、回路装置100とバッテリー10を含む。バッテリー10は、二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、又はニッケルカドミウム蓄電池等である。電子機器200は、バッテリー10を内蔵する又は取り付け可能な機器であればよい。一例としては、電子機器200は、スマートフォン、タブレット型端末、無線イヤフォン、無線補聴器、スマートウォッチ、デジタルカメラ、又はモバイルバッテリー等である。電子機器200がスマートフォン等である場合には、電子機器200は処理装置、記憶装置、無線通信装置、表示装置、又は操作入力装置等を含んでもよい。
【0011】
回路装置100は、外部から供給される電源に基づいてバッテリー10を充電する。回路装置100は、第1充電回路110と第2充電回路120と電流源回路140と基準電圧生成回路150と制御回路160と記憶部170と逆流防止回路190と端子TBATとを含む。回路装置100は、例えば複数の回路素子が半導体基板に集積された集積回路装置である。
【0012】
逆流防止回路190は、第1充電回路110と第2充電回路120の出力ノードNCSRと、端子TBATに接続された充電ノードNBATとの間に設けられる。端子TBATにはバッテリー10の端子が接続される。制御回路160が逆流防止回路190をオンにすることで、第1充電回路110からの第1充電電流ICH1又は第2充電回路120からの第2充電電流ICH2が、充電電流IBATとして充電ノードNBATに供給される。充電電流IBATが端子TBATからバッテリー10に供給されることで、バッテリー10が充電される。
【0013】
逆流防止回路190は、P型トランジスターTS1とN型トランジスターTS2と抵抗RSとを含む。P型トランジスターTS1のソースが充電ノードNBATに接続され、ドレインが出力ノードNCSRに接続される。N型トランジスターTS2のソースがグランドノードに接続され、ドレインがP型トランジスターTS1のゲートに接続される。抵抗RSの一端が充電ノードNBATに接続され、他端がP型トランジスターTS1のゲートに接続される。制御回路160がN型トランジスターTS2をオフにすると、P型トランジスターTS1がオフになる。P型トランジスターTS1は、出力ノードNCSRから充電ノードNBATへの方向を順方向とする寄生ダイオードを有するので、P型トランジスターTS1がオフのときには、逆流防止回路190はバッテリー10から第1充電回路110及び第2充電回路120への逆流を防止する。バッテリー10への充電が行われる際には、制御回路160がN型トランジスターTS2をオンにする。これにより、P型トランジスターTS1がオンになる。以下では主に、逆流防止回路190のP型トランジスターTS1がオンであるときの充電動作を説明する。
【0014】
制御回路160は、充電電流の設定値を示す電流設定値INDAに基づいて、その電流設定値INDAが示す電流値でバッテリー10への充電が行われるように、充電を制御する。電流設定値INDAは、例えば回路装置100の外部に設けられた処理装置から入力される、或いは制御回路160が、バッテリー電圧VBATを検出する不図示の検出回路からの検出結果に基づいて電流設定値INDAを設定してもよい。
【0015】
制御回路160は、電流設定値INDAに基づいて、第1充電回路110がバッテリー10を充電する第1充電モードと、第2充電回路120がバッテリー10を充電する第2充電モードとを切り替える。具体的には、制御回路160は、電流設定値INDAが閾値未満のとき、第1イネーブル信号XONSをアクティブにして、第1電流モードの第1補正を電流設定値INDAに対して行い、その結果を電流源制御値QDAとして電流源回路140に出力する。制御回路160は、電流設定値INDAが閾値以上のとき、第2イネーブル信号XONLをアクティブにして、第2電流モードの第2補正を電流設定値INDAに対して行い、その結果を電流源制御値QDAとして電流源回路140に出力する。但し、第1補正及び第2補正のうち一方のみが行われてもよいし、両方が行われてもよい。第1補正及び第2補正の詳細については後述する。
【0016】
記憶部170は、第1補正と第2補正の補正パラメーターと電流設定値INDAの閾値とを記憶する。制御回路160は、記憶部170から読み出した補正パラメーターに基づいて、第1補正及び第2補正を行う。また制御回路160は、記憶部170から読み出した閾値に基づいて第1電流モードと第2電流モードを切り替える。記憶部170はメモリー又はレジスター等である。メモリーは、例えば不揮発性メモリー又はRAMである。また、メモリーは、不揮発メモリー及びレジスターが複合して構成してもよいし、記憶できるものであればヒューズや回路装置100の外部の回路等であってもよい。記憶部170が不揮発性メモリーであるとき、例えば回路装置100又は電子機器200の製造時において閾値及び補正パラメーターが記憶部170に書き込まれる。記憶部170がRAM又はレジスターであるとき、例えば回路装置100の外部の処理装置から不図示のインターフェース回路を介して閾値及び補正パラメーターが記憶部170に書き込まれる。
【0017】
基準電圧生成回路150は、基準電圧VREFを生成する。基準電圧生成回路150は、例えばバンドギャップリファレンス回路であるが、これに限定されない。なお、基準電圧VREFは回路装置100の外部から供給されてもよい。
【0018】
電流源回路140は、基準電圧VREFに基づいて、電流源制御値QDAにより設定される出力電流を第1充電回路110と第2充電回路120に供給する。具体的には、電流源回路140は、イネーブル信号XONSがアクティブのとき、第1電流IS1を出力電流として第1充電回路110に供給する。電流源回路140は、第2イネーブル信号XONLがアクティブのとき、電流源回路140は第2電流IS2を出力電流として第2充電回路120に供給する。
【0019】
電源ノードNINには電源電圧VINが供給される。電源電圧VINは、例えば回路装置100の外部電源から供給される。或いは、回路装置100は、外部電源からの電力を受電して電源電圧VINを出力する不図示の受電回路又は電圧変換回路等を含んでもよい。
【0020】
第1充電回路110は、イネーブル信号XONSがアクティブのとき、電源電圧VINと第1電流IS1に基づいて第1充電電流ICH1を出力ノードNCSRに出力する。具体的には、第1充電回路110は、第1電流IS1を第1増幅率で増幅し、その増幅後の電流を第1充電電流ICH1として出力する。
【0021】
第2充電回路120は、第2イネーブル信号XONLがアクティブのとき、電源電圧VINと第2電流IS2に基づいて第2充電電流ICH2を出力ノードNCSRに出力する。具体的には、第2充電回路120は、第2電流IS2を第2増幅率で増幅し、その増幅後の電流を第2充電電流ICH2として出力する。第2充電電流ICH2の電流値は、第1充電電流ICH1の電流値よりも大きい。即ち、電流設定値INDAの閾値に対応した充電電流IBATの閾値をIthとしたとき、ICH1<Ith≦ICH2となっている。
【0022】
以下、第1補正及び第2補正について説明する。まず、図2を用いて補正を行う理由を説明する。図2は、補正前の第1充電電流ICH1’及び補正前の第2充電電流ICH2’の特性例である。ここでは、電流設定値INDAの閾値を256とし、電流設定値INDAの最大値が8191であるとする。
【0023】
INDA<256において第1充電回路110がIBAT=ICH1’を出力し、256≦INDA≦8191において第2充電回路120がIBAT=ICH2’を出力する。電流設定値INDAから第1充電電流ICH1’への変換特性を第1変換特性と呼び、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2’への変換特性を第2変換特性と呼ぶこととする。このとき、第1充電回路110と第2充電回路120を切り替えて用いることによって、第1変換特性と第2変換特性との間に特性差が生じる可能性がある。特性差は、オフセット差、傾きの差、又はそれら両方である。例えば、第1充電回路110が第1電流IS1を増幅するときの第1増幅率、又は第2充電回路120が第2電流IS2を増幅するときの第2増幅率が、寄生抵抗等によって理想値からずれることによって、第1変換特性と第2変換特性との間に特性差が生じる。或いは、電流設定値INDAに対する第1電流IS1の特性と、電流設定値INDAに対する第2電流IS2の特性との間に、特性差が生じることで、第1変換特性と第2変換特性との間に特性差が生じる。
【0024】
本実施形態では、制御回路160が、電流設定値INDAに対して第1補正及び第2補正の少なくとも一方を行うことで、第1変換特性と第2変換特性との間の特性差を補正する。以下、その補正手法の詳細を説明する。
【0025】
図3は、制御回路160と記憶部170の詳細構成例である。制御回路160は、閾値判定部163と設定値出力部164とを含む。記憶部170は、電流設定値INDAの閾値THRを記憶する。また記憶部170は、第1補正の補正パラメーターである第1傾き補正値GA1と第1オフセット補正値OF1を記憶する。また記憶部170は、第2補正の補正パラメーターである第2傾き補正値GA2と第2オフセット補正値OF2を記憶する。なお、記憶部170に記憶される第1補正及び第2補正の補正パラメーターは、第1傾き補正値GA1、第1オフセット補正値OF1、第2傾き補正値GA2、及び第2オフセット補正値OF2そのものに限らない。これに変えて、これらに関連する補正パラメーターが、補正パラメーターとして記憶部170に記憶されてもよい。
【0026】
図4は、第1実施形態における制御回路160の動作説明図である。
【0027】
閾値判定部163は、電流設定値INDAと閾値THRとを比較する。閾値判定部163は、電流設定値INDAが閾値THR未満のとき、第1電流モードを示すローレベルのモード制御信号MDを出力し、電流設定値INDAが閾値THR以上のとき、第2電流モードを示すハイレベルのモード制御信号MDを出力する。なお、閾値判定部163は、電流設定値INDAが閾値THR以下のとき、第1電流モードを示すローレベルのモード制御信号MDを出力し、電流設定値INDAが閾値THRより大きいとき、第2電流モードを示すハイレベルのモード制御信号MDを出力してもよい。電流モードとモード制御信号MDの論理レベルの対応は、上記に限定されない。
【0028】
閾値判定部163は、モード制御信号MDがローレベルのとき、ローレベルの第1イネーブル信号XONSと、ハイレベルの第2イネーブル信号XONLとを出力する。なお、ここではローアクティブであるとする。モード制御信号MDがハイレベルのとき、閾値判定部163は、ハイレベルの第1イネーブル信号XONSと、ローレベルの第2イネーブル信号XONLとを出力する。
【0029】
設定値出力部164は、第1設定値STV1=GA1×INDA+OF1を求める第1補正と、第2設定値STV2=GA2×INDA+OF2を求める第2補正とを行う。第1設定値STV1は第1傾き補正値GA1と電流設定値INDAとの積に第1オフセット補正値OF1を加算したものであり、第2設定値STV2は第2傾き補正値GA2と電流設定値INDAとの積に第2オフセット補正値OF2を加算したものである。設定値出力部164は、モード制御信号MDがローレベルのとき、第1設定値STV1に基づいて電流源制御値QDAを出力する。これにより、第1充電モードにおける充電電流IBAT=ICH1は、第1補正により補正された第1設定値STV1によって制御される。設定値出力部164は、モード制御信号MDがハイレベルのとき、第2設定値STV2に基づいて電流源制御値QDAを出力する。これにより、第2充電モードにおける充電電流IBAT=ICH2は、第2補正により補正された第2設定値STV2によって制御される。
【0030】
なお、補正パラメーターは、例えば以下のようにして決定される。回路装置100の検査工程、又は回路装置100の設計時のシミュレーション処理において、図2のICH1’の傾き値とオフセット値、及びICH2’の傾き値とオフセット値を測定する。第1傾き補正値GA1は、例えば、目標の傾き値を、測定されたICH1’の傾き値で割った値である。第1オフセット補正値OF1は、目標のオフセット値から、測定されたICH1’のオフセット値を減算した値である。第2傾き補正値GA2及び第2オフセット補正値OF2の決定手法も同様である。但し、上記手法は一例であって、補正パラメーターの決定手法はこれに限定されるものでない。
【0031】
図5は、補正手法を説明する図である。図5の左図に、電流設定値INDAから第2設定値STV2への変換特性を示す。図5の右図に、電流設定値INDAから充電電流IBATへの変換特性を示す。ここでは第2補正のみ行う例を説明するが、第1補正のみ行われてもよいし、第1補正及び第2補正が行われてもよい。
【0032】
左図に示すように、第2補正が行われない場合には第2設定値がSTV2’=INDAであり、右図に示すように、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への変換特性と、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2’への変換特性との間に、特性差が生じる。本実施形態によれば、左図に示すように、第2補正が行われることで第2設定値がSTV2=GA2×INDA+OF2に補正されるので、右図に示すように、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への変換特性が補正される。これにより、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への変換特性と、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への変換特性との間の特性差が、低減される。
【0033】
図6図9は、オフセット補正の例である。図6図9においてαは正の値である。なお、実際には第1設定値STV1又は第2設定値STV2においてオフセット補正が行われるが、図6図9には、結果としての第1充電電流ICH1又は第2充電電流ICH2におけるオフセット補正を示す。
【0034】
図6に示すように、第2充電電流ICH2の変換特性が第1充電電流ICH1の変換特性に対して正のオフセットを有する場合、設定値出力部164は負の第2オフセット補正値OF2=-αで、第2充電電流ICH2の変換特性を補正する。或いは、図7に示すように、設定値出力部164は正の第1オフセット補正値OF1=+αで第1充電電流ICH1の変換特性を補正する。
【0035】
図8に示すように、第2充電電流ICH2の変換特性が第1充電電流ICH1の変換特性に対して負のオフセットを有する場合、設定値出力部164は正の第2オフセット補正値OF2=+αで、第2充電電流ICH2の変換特性を補正する。或いは、図9に示すように、設定値出力部164は負の第1オフセット補正値OF1=-αで第1充電電流ICH1の変換特性を補正する。
【0036】
図10図13は、傾き補正の例である。図10図13においてβaは正の値且つ1より小さい値であり、βbは1より大きい値である。なお、実際には第1設定値STV1又は第2設定値STV2において傾き補正が行われるが、ここでは結果としての第1充電電流ICH1又は第2充電電流ICH2における傾き補正を示す。
【0037】
図10に示すように、第2充電電流ICH2の変換特性の傾きが第1充電電流ICH1の変換特性の傾きよりも大きい場合、設定値出力部164は、1より小さい第2傾き補正値GA2=βaで、第2充電電流ICH2の変換特性を補正する。或いは、図11に示すように、設定値出力部164は1より大きい第1傾き補正値GA1=βbで第1充電電流ICH1の変換特性を補正する。
【0038】
図12に示すように、第2充電電流ICH2の変換特性の傾きが第1充電電流ICH1の変換特性の傾きよりも小さい場合、設定値出力部164は、1より大きい第2傾き補正値GA2=βbで、第2充電電流ICH2の変換特性を補正する。或いは、図13に示すように、設定値出力部164は1より小さい第1傾き補正値GA1=βaで第1充電電流ICH1の変換特性を補正する。
【0039】
なお、設定値出力部164は、図6図13で説明した補正のうち2以上の補正を組み合わせて、第1充電電流ICH1、第2充電電流ICH2、又は第1充電電流ICH1及び第2充電電流ICH2を補正してもよい。
【0040】
図14は、閾値設定の例である。例えば、閾値THRの基準を256としたとき、閾値THRは、基準を中心に電流設定値INDAの±1ビット分の範囲で、つまり128~511の範囲で可変に設定可能である。但し、閾値THRの調整範囲は任意であってよい。
【0041】
図14に示すように、例えば第2充電電流ICH2の低電流側に、電流設定値INDAに対して電流値が非線形となる領域が存在したとする。例えば、第2電流IS2が定電流となったことで第2充電回路120内のオペアンプ又はトランジスターが正常に動作しなくなったこと等によって、上記の非線形領域が生じる。このとき、第2充電電流ICH2の線形領域で充電モードが切り替わるように、閾値THRが基準の256より大きい値に設定される。なお、閾値THRは、基準の256より小さい値に設定されてもよい。例えば、第1充電電流ICH1の高電流側に、電流設定値INDAに対して電流値が非線形となる領域が存在した場合に、閾値THRが基準の256より小さい値に設定されてもよい。
【0042】
以下、第1充電回路110、第2充電回路120及び電流源回路140の詳細構成例とその動作を説明する。図15は、第1充電回路110と第2充電回路120の詳細構成例である。
【0043】
第1充電回路110は、演算増幅器OPA1とP型トランジスターTA1と抵抗RCSI1と抵抗RRSS1とを含む。
【0044】
P型トランジスターTA1のソースは電源ノードNINに接続され、ドレインはノードNCS1に接続される。電源ノードNINには電源電圧VINが供給される。抵抗RCSI1の一端がノードNCS1に接続され、他端がノードNCSI1に接続される。抵抗RRSS1の一端がノードNCS1に接続され、他端が出力ノードNCSRに接続される。演算増幅器OPA1の非反転入力端子はノードNCSI1に接続され、反転入力端子は出力ノードNCSRに接続され、出力ノードはP型トランジスターTA1のゲートに接続される。
【0045】
演算増幅器OPA1は、第1イネーブル信号XONSがアクティブのとき動作イネーブルとなる。これにより、第1充電電流ICH1=(RCSI1/RRSS1)×IS1が出力ノードNCSRに供給され、充電電流IBATとして充電ノードNBATに供給される。
【0046】
第2充電回路120は、演算増幅器OPA2とP型トランジスターTA2と抵抗RCSI2と抵抗RRSS2とを含む。
【0047】
P型トランジスターTA2のソースは電源ノードNINに接続され、ドレインはノードNCS2に接続される。抵抗RCSI2の一端がノードNCS2に接続され、他端がノードNCSI2に接続される。抵抗RRSS2の一端がノードNCS2に接続され、他端が出力ノードNCSRに接続される。演算増幅器OPA2の非反転入力端子はノードNCSI2に接続され、反転入力端子は出力ノードNCSRに接続され、出力ノードはP型トランジスターTA2のゲートに接続される。
【0048】
演算増幅器OPA2は、第2イネーブル信号XONLがアクティブのとき動作イネーブルとなる。これにより、第2充電電流ICH2=(RCSI2/RRSS2)×IS2が出力ノードNCSRに供給され、充電電流IBATとして充電ノードNBATに供給される。
【0049】
図16は、第1実施形態における電流源回路140の詳細構成例である。電流源回路140は、演算増幅器OPFとスイッチ回路145とP型トランジスターTFと抵抗RG1~RG13とN型トランジスターTG1~TG13とを含む。
【0050】
スイッチ回路145は、P型トランジスターTE1とTE2を含む。P型トランジスターTE1のソースはノードNCSI1に接続され、ドレインはノードNQに接続される。P型トランジスターTE2のソースはノードNCSI2に接続され、ドレインはノードNQに接続される。第1イネーブル信号XONSがローレベルのとき、P型トランジスターTE1はオンであり、P型トランジスターTFに流れる電流IQが第1電流IS1としてノードNCSI1に流れる。第2イネーブル信号XONLがローレベルのとき、P型トランジスターTE2はオンであり、P型トランジスターTFに流れる電流IQが第2電流IS2としてノードNCSI2に流れる。
【0051】
P型トランジスターTFのソースはノードNQに接続され、ドレインはノードNS3に接続される。演算増幅器OPFの反転入力端子に基準電圧VREFが入力される。演算増幅器OPFの非反転入力端子はノードNS3に接続され、出力ノードはP型トランジスターTFのゲートに接続される。抵抗RG1の一端はノードNS3に接続され、他端はN型トランジスターTG1のドレインに接続される。N型トランジスターTG1のソースはグランドノードに接続される。同様に、抵抗RG2~RG13の一端はノードNS3に接続され、他端はN型トランジスターTG2~TG13のドレインに接続される。N型トランジスターTG2~TG13のソースはグランドノードに接続される。以下、電流源制御値QDAのビット信号を制御ビット信号と呼ぶ。N型トランジスターTG1のゲートには、電流源制御値QDAの制御ビット信号QDA[0]が入力される。同様に、N型トランジスターTG2~TG13のゲートには、電流源制御値QDAの制御ビット信号QDA[1]~QDA[12]が入力される。
【0052】
演算増幅器OPFは、第1電流モードと第2電流モードのいずれにおいても動作イネーブルであり、ノードNS3の電圧はVS3=VREFとなる。抵抗RG1とN型トランジスターTG1を電流源回路140の第1電流源と呼ぶ。電流源制御値QDAの制御ビット信号QDA[0]が1のときN型トランジスターTG1がオンであり、第1電流源がVREF/RG1の電流を流す。同様に、抵抗RG2~RG13とN型トランジスターTG2~TG13を電流源回路140の第2~第13電流源と呼ぶ。電流源制御値QDAの制御ビット信号QDA[1]~QDA[12]が1のときN型トランジスターTG2~TG13がオンであり、第2~第13電流源がVREF/RG2~VREF/RG13の電流を流す。P型トランジスターTFに流れる電流IQは、電流源制御値QDAの制御ビット信号QDA[0]~QDA[12]のうち1である制御ビット信号に対応した電流源が流す電流の合計である。
【0053】
なお、ここでは電流源回路140に含まれる電流源の数を13としたが、電流源回路140に含まれる電流源の数はn個であればよい。nは2以上の整数である。
【0054】
図17は、第1実施形態における電流源回路140の抵抗比と動作を説明する図である。
【0055】
第1~第13電流源の電流比を決める抵抗RG1~RG13の抵抗比は、RG13:RG12:・・・:RG2:RG1=0.25:0.5:・・・:512:1024である。この逆数比が電流比となるので、第1~第13電流源が流す電流はバイナリーに重み付けされる。
【0056】
設定値出力部164は、電流設定値INDAを補正して第1設定値STV1及び第2設定値STV2を求めるが、このとき電流設定値INDAのLSBよりも高い精度で第1設定値STV1及び第2設定値STV2を演算する。例えば、電流設定値INDAが13ビットのINDA[12:0]であるとき、第1設定値STV1は、18ビットのSTV1[17:0]として演算され、第2設定値STV2は、21ビットのSTV2[20:0]として演算される。このとき、電流設定値のLSBであるINDA[0]に相当するビットは、STV1[17:0]においてSTV1[8]であり、STV2[20:0]においてSTV2[8]である。例えば、第1補正が行われなかった場合にはSTV1[17:8]=INDA[9:0]となるので、STV1[8]=INDA[0]である。第2補正が行われなかった場合にはSTV2[20:8]=INDA[12:0]となるので、STV2[8]=INDA[0]である。
【0057】
設定値出力部164は、第1電流モードつまり第1イネーブル信号XONSがローレベルのとき、STV1[17:0]の上位13ビットを電流源制御値QDAに割り当てて、QDA[12:0]=STV1[17:5]を電流源回路140に出力する。設定値出力部164は、第2電流モードつまり第2イネーブル信号XONLがローレベルのとき、STV2[20:0]の上位13ビットを電流源制御値QDAに割り当てて、QDA[12:0]=STV2[20:8]を電流源回路140に出力する。QDA[12:0]において、電流設定値のLSBであるINDA[0]に相当するビットは、第1電流モードではQDA[3]であり、第2電流モードではQDA[0]である。即ち、電流設定値INDAのLSBに対応する第1電流IS1の分解能と第2電流IS2の分解能とが異なることになる。この差は、第1充電回路110の第1増幅率と第2充電回路120の第2増幅率の違いによって吸収されるので、電流設定値INDAのLSBに対応する第1充電電流ICH1の分解能と第2充電電流ICH2の分解能は、ほぼ同等になる。この点については図18においても説明する。
【0058】
なお、ここでは電流設定値INDAに対して下位側に8ビット拡張された第1設定値STV1と第2設定値STV2が演算される例を示した。但し、演算に必要な精度が確保できる範囲で、拡張されるビット数は任意であってよい。また、ここでは第1設定値STV1から電流源制御値QDAへの割り当てと、第2設定値STV2から電流源制御値QDAへの割り当てとの間で、3ビットだけシフトされる例を示した。但し、第1増幅率と第2増幅率との関係で第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2を同分解能にできる範囲で、シフトされるビット数は任意であってよい。
【0059】
図18の左図は、第1電流モードにおける第1充電回路110と電流源回路140のパラメーター例であり、図18の右図は、第2電流モードにおける第2充電回路120と第2電流源回路142のパラメーター例である。図18右図には、左図のパラメーターとの関係も示している。なお、図18には、理想的なパラメーター例、つまり補正しなくても理想的な第1充電電流と第2充電電流の特性が得られるパラメーター例を示す。
【0060】
基準電圧をVREF=1.25Vとし、抵抗RG1~RG13のユニット抵抗を5kΩとし、電流モード切り替えの閾値を256とする。以下の記載においては、適宜に四捨五入により丸めた数値を記載する。
【0061】
左図に示すように、第1電流モードにおいて電流設定値INDAのLSBに相当する第4電流源の抵抗は、RG4=5kΩ×128である。このため、電流設定値INDAのLSBに相当する第1電流IS1の分解能はVREF/RG4=1.95uAとなる。第1電流の最大値IS1maxはIS1分解能×255=0.5mAである。RRSS1=32Ω、RCSI1=700Ωとすると、第1増幅率はRCSI1/RRSS1=21.9倍である。第1充電電流ICH1の分解能はIS1分解能×第1増幅率=42.7uAとなり、第1充電電流の最大値ICH1maxはIS1max×第1増幅率=10.9mAとなる。抵抗RCSI1の両端の最小電位差は、RCSI1×IS1分解能=1.37mVとなる。
【0062】
右図に示すように、第2電流モードにおいて電流設定値INDAのLSBに相当する第1電流源の抵抗は、RG1=5kΩ×1024である。このため、電流設定値INDAのLSBに相当する第2電流IS2の分解能はVREF/RG1=0.244uAとなる。QDA[12:0]=0 0001 0000 0000bのとき、第2電流が最小値IS2min=IS2分解能×256=62.5uAとなる。第2電流の最大値IS2maxはIS2分解能×8191=2mAである。RRSS2=1Ω、RCSI2=175Ωとすると、第2増幅率はRCSI2/RRSS2=175倍である。第2充電電流ICH2の分解能はIS2分解能×第2増幅率=42.7uAとなり、第2充電電流の最大値ICH2maxはIS2max×第2増幅率=350mAとなる。抵抗RCSI2の両端の最小電位差は、RCSI2×IS2min=10.9mVとなる。なお、左図のパラメーターとの関係は図示の通りである。
【0063】
第2充電電流ICH2の最小値は、IS2min×第2増幅率={(IS1分解能/8)×256}×(第1増幅率×8)=(IS1分解能×256)×第1増幅率=(IS1max+IS1分解能)×第1増幅率である。IS1max×第1増幅率は、第1充電電流ICH1の最大値であり、IS1分解能×第1増幅率は、ICH1分解能である。また、ICH1分解能=ICH2分解能である。即ち、ICH1の最大値からICH2分解能だけ増加したものが、ICH2の最小値となっている。即ち、ICH1とICH2の切り替え前後においても、理想的には、電流設定値INDA[12:0]に対して充電電流IBATは線形になっている。
【0064】
但し、実際に製造された回路は様々な要因で理想的な特性にならない。例えば、寄生抵抗により、第1充電回路110の抵抗RRSS1と第2充電回路120の抵抗RRSS2が共に、寄生抵抗により0.1Ω増加したとする。このとき、第1増幅率は700Ω/(32Ω+0.1Ω)=21.8となり、第2増幅率は175Ω/(1Ω+0.1Ω)=159となる。第2増幅率=7.30×第1増幅率となるので、理想的な第2増幅率=8×第1増幅率の関係からずれてしまう。充電効率の観点から第1電流IS1と第2電流IS2を小さくするために第1増幅率と第2増幅率が高くなっているため、寄生抵抗の影響を受けやすい。或いは、第1電流モードにおいて電流設定値INDAのLSBに相当する第4電流源が流す電流は、理想的には、第2電流モードにおいて電流設定値INDAのLSBに相当する第1電流源が流す電流の8倍である。しかし、寄生抵抗等の影響により実際には8倍でない場合には、IS1分解能がIS2分解能の8倍にならない。
【0065】
以上のような製造誤差等によって、第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2の間にオフセット差又は傾き差が生じる。本実施形態によれば、図2図13等で説明した第1補正及び第2補正の少なくとも一方を行うことで、第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2の特性差を低減可能である。
【0066】
また図18において、第1増幅率が第2増幅率より小さいことで、IS1分解能をIS2分解能より大きくできるので、抵抗RCSI1の最小電位差を大きくできる。IS1分解能をIS2分解能より大きくすることは、図17で説明したビット割り当てのシフトによって実現されている。図18の例において、RCSI1最小電位差は1.37mVであり、RCSI2最小電位差は10.9mVである。これらは、演算増幅器OPFがより高精度な増幅率で増幅するために、十分大きな電位差となっている。これにより、第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2をより精度が高い分解能で刻むことができる。
【0067】
なお、図18に示したパラメーターは、あくまでも一例であって、第1充電回路110、第2充電回路120及び電流源回路140のパラメーターは、図18に示すパラメーターに限定されるものでない。
【0068】
以上の本実施形態において、回路装置100は、電流源回路140と第1充電回路110と第2充電回路120と制御回路160とを含む。第1充電回路110は、電流源回路140の出力電流に基づいて、定電流の第1充電電流ICH1を充電電流IBATとして充電ノードNBATに供給する。第2充電回路120は、電流源回路140の出力電流に基づいて、第1充電電流ICH1よりも大きい定電流の第2充電電流ICH2を充電電流IBATとして充電ノードNBATに供給する。制御回路160は、充電電流IBATの電流値を示す電流設定値INDAに基づいて、第1充電電流ICH1の電流値を設定する第1設定値STV1、及び第2充電電流ICH2の電流値を設定する第2設定値STV2を出力する設定値出力処理を行う。制御回路160は、電流設定値INDAが第1電流範囲であるとき、第1設定値STV1が示す電流値の第1充電電流ICH1を第1充電回路110から充電ノードNBATに供給させる第1電流モードの制御を行う。制御回路160は、電流設定値INDAが第1電流範囲より高電流側の第2電流範囲であるとき、第2設定値STV2が示す電流値の第2充電電流ICH2を第2充電回路120から充電ノードNBATに供給させる制御を行う。制御回路160は、設定値出力処理において、第1補正及び第2補正のうち少なくとも一方の補正を行う。制御回路160は、第1補正において、第1設定値STV1を補正することで、電流設定値INDAに対する第1充電電流ICH1の第1変換特性を補正する。制御回路160は、第2補正において、第2設定値STV2を補正することで、電流設定値INDAに対する第2充電電流ICH2の第2変換特性を補正する。
【0069】
本実施形態によれば、電流設定値INDAが第2電流範囲であるとき、第2充電回路120に切り替えられ、第1充電電流ICH1よりも大きい第2充電電流ICH2で充電が行われる。これにより、高充電電流化が実現される。そして、充電電流IBATの電流設定値INDAに応じて第1充電回路110と第2充電回路120を切り替えることで、充電電流IBATの電流値に応じて最適な定電流充電回路の設計が可能となる。これにより、高充電電流化を実現しつつ、回路規模の増加、充電電流の分解能低下、又は電力効率の低下を抑制することが可能になる。
【0070】
また本実施形態によれば、第1設定値STV1に対する第1補正、及び第2設定値STV2に対する第2補正の少なくとも一方が行われることで、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への第1変換特性、及び電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への第2変換特性の少なくとも一方が補正される。これにより、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への第1変換特性と、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への第2変換特性との間の特性差が、低減される。
【0071】
また本実施形態では、制御回路160は、第1補正及び第2補正の少なくとも一方の補正として、オフセット補正及び傾き補正の少なくとも一方の補正を行う。制御回路160は、オフセット補正において、第1設定値STV1及び第2設定値STV2の少なくとも一方のオフセット補正により第1変換特性と第2変換特性のオフセット差を低減する。制御回路160は、傾き補正において、第1設定値STV1及び第2設定値STV2の少なくとも一方の傾き補正により第1変換特性と第2変換特性の傾きを近づける。
【0072】
本実施形態によれば、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への第1変換特性と、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への第2変換特性との間のオフセット差及び傾き差の少なくとも一方が、低減される。これにより、第1変換特性と第2変換特性との間の特性差が低減される。
【0073】
また本実施形態では、回路装置100は記憶部170を含む。記憶部170は、第1変換特性の補正用の第1傾き補正値GA1及び第1オフセット補正値OF1と、第2変換特性の補正用の第2傾き補正値GA2及び第2オフセット補正値OF2と、を記憶する。制御回路160は、第1傾き補正値GA1、第1オフセット補正値OF1及び電流設定値INDAに基づいて第1設定値STV1を演算する第1補正を行うことで、第1変換特性の補正を行う。制御回路160は、第2傾き補正値GA2、第2オフセット補正値OF2及び電流設定値INDAに基づいて第2設定値STV2を演算する第2補正を行うことで、第2変換特性の補正を行う。
【0074】
本実施形態によれば、第1傾き補正値GA1及び第1オフセット補正値OF1によって補正された第1設定値STV1に基づいて、第1充電電流ICH1の電流値が制御される。これにより、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への第1変換特性が補正される。また、第2傾き補正値GA2及び第2オフセット補正値OF2によって補正された第2設定値STV2に基づいて、第2充電電流ICH2の電流値が制御される。これにより、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への第2変換特性が補正される。
【0075】
また本実施形態では、制御回路160は、STV1=GA1×INDA+OF1により第1設定値STV1を演算し、STV2=GA2×INDA+OF2により第2設定値STV2を演算する。
【0076】
本実施形態によれば、第1傾き補正値GA1により第1設定値STV1の傾きが補正され、第1オフセット補正値OF1により第1設定値STV1のオフセットが補正される。また、第2傾き補正値GA2により第2設定値STV2の傾きが補正され、第2オフセット補正値OF2により第2設定値STV2のオフセットが補正される。これにより、電流設定値INDAから第1充電電流ICH1への第1変換特性と、電流設定値INDAから第2充電電流ICH2への第2変換特性との間のオフセット差及び傾き差が、低減される。
【0077】
また本実施形態では、記憶部170は、第1電流範囲と第2電流範囲の境界に対応する閾値THRを記憶する。制御回路160は、電流設定値INDAが閾値THRより小さいときには、第1設定値STV1に基づいて第1電流モードの制御を行う。制御回路160は、電流設定値INDAが閾値THRより大きいときには、第2設定値STV2に基づいて第2電流モードの制御を行う。
【0078】
本実施形態によれば、所望の閾値THRを記憶部170に記憶させることで、第1電流範囲と第2電流範囲の境界に対応する閾値THRを変更できる。これにより、第1充電モードと第2充電モードを最適な閾値THRで切り替え可能となる。例えば、図14で説明したように、第1充電電流ICH1の特性又は第2充電電流ICH2の特性に非線形領域がある場合には、その非線形領域を避けて、第1充電モードと第2充電モードを最適な閾値THRで切り替え可能である。
【0079】
また本実施形態では、記憶部170は、不揮発性メモリーであってもよい。
【0080】
本実施形態によれば、回路装置100又は電子機器200の製造時において閾値及び補正パラメーターが記憶部170に書き込まれる。これにより、事前に計測された又は事前にシミュレーション処理により最適な閾値及び補正パラメーターを取得しておき、その閾値及び補正パラメーターを不揮発性メモリーに書き込むことが可能となる。
【0081】
また本実施形態では、第1電流モードにおいて、電流源回路140は、第1設定値STV1に基づいて第1電流IS1を出力電流として第1充電回路110に供給する。また、第1充電回路110は、第1増幅率で第1電流IS1を増幅することで第1充電電流ICH1を供給する。第2電流モードにおいて、電流源回路140は、第2設定値STV2に基づいて第2電流IS2を出力電流として第2充電回路120に供給する。また、第2充電回路120は、第1増幅率よりも大きい第2増幅率で第2電流IS2を増幅することで第2充電電流ICH2を供給する。
【0082】
本実施形態によれば、第2電流モードにおける第2増幅率が第1電流モードにおける第1増幅率より大きいことで、第2電流モードにおいて、第1充電電流より大きい第2充電電流を生成できる。また、図18で説明したように、ICH1分解能=ICH2分解能であり、ICH1分解能=IS1分解能×第1増幅率であり、RCSI1最小電位差=RCSI1×IS1分解能である。第1増幅率が第2増幅率より小さいことで、IS1分解能を大きくできるので、RCSI1最小電位差を大きくできる。これにより、第1充電電流ICH1の分解能をより精度よく刻むことが可能になる。また、IS2分解能はIS1分解能より小さくなるが、第1充電回路110と第2充電回路120を分けたことでRCSI2最小電位差=RCSI2×IS2minとなっている。これにより、第2充電電流ICH2の分解能の値は第1充電電流ICH1の分解能と同じになり、第1充電電流ICH1と同様、第2充電電流ICH2の分解能をより精度よく刻むことが可能になる。
【0083】
また本実施形態では、一例として第1メタル抵抗と第1ポリ抵抗との比によって第1増幅率が設定され、第2メタル抵抗と第2ポリ抵抗との比によって第2増幅率が設定されてもよい。具体的には、第1充電回路110の抵抗RRSS1が第1メタル抵抗であり、抵抗RCSI1が第1ポリ抵抗である。また、第2充電回路120の抵抗RRSS2が第2メタル抵抗であり、抵抗RCSI2が第2ポリ抵抗である。但し、各抵抗の種類は上記に限定されるものでない。
【0084】
本実施形態によれば、増幅率の分母となる抵抗をメタル抵抗としたことで、その抵抗を小さい抵抗値に設定できる。これにより、増幅率を大きな値にできる。このとき、増幅率が寄生抵抗の影響を受けやすくなることで、第1変換特性と第2変換特性の特性差が生じやすくなる。本実施形態によれば、第1補正及び第2補正の少なくとも一方が行われることで、第1変換特性と第2変換特性の特性差が低減される。
【0085】
また本実施形態では、電流源回路140は、電流値がバイナリーに重み付けされた第1~第n定電流を出力する第1~第n電流源と、スイッチ回路145と、を含む。第1電流モードにおいて、制御回路160は、第1設定値STV1に基づいて、第1~第n電流源を制御する電流源制御値QDAの第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]を出力する。スイッチ回路145は、第1~第n電流源のうち第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]に基づいて選択された電流源からの電流を第1電流IS1として第1充電回路110に供給する。第2電流モードにおいて、制御回路160は、第2設定値STV2に基づいて第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]を出力する。スイッチ回路145は、第1~第n電流源のうち第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]に基づいて選択された電流源からの電流を第2電流IS2として第2充電回路120に供給する。
【0086】
なお、図16図18の例では、n=13であるが、nは2以上の整数であればよい。
【0087】
本実施形態によれば、第1電流モードにおいて、第1補正により補正された第1設定値STV1に基づいて第1電流IS1の電流値が設定されることで、第1充電電流ICH1の電流値が設定される。第2電流モードにおいて、第2補正により補正された第2設定値STV2に基づいて第2電流IS2の電流値が設定されることで、第2充電電流ICH2の電流値が設定される。
【0088】
また本実施形態では、制御回路160は、第2電流モードにおいて、第2設定値STV2のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号STV2[i]~STV2[i+n-1]を第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]として出力する。制御回路160は、第1電流モードにおいて、第1設定値STV1のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+nビット信号STV1[i-k]~STV1[i-k+n-1]を第1~第n制御ビット信号QDA[0]~QDA[n-1]として出力する。
【0089】
なお、図16図18の例では、n=13、i=8、k=3であるが、nは2以上の整数であればよく、iは1以上の整数であればよく、kは1以上i以下の整数であればよい。電流源回路140は、電流値がバイナリーに重み付けされたn個の電流源を有している。そして、このうち重みの高いほうから(n-k)個の電流源は、第1電流モードにおいて電流源制御値QDA[n―1:k]に対応する。図17では、例えば、QDA[12:3]に対応した電流源は10個である。これは、電流設定値のLSBであるINDA[0]に相当するビットはQDA[3]だからである。電流設定値のLSBより下位ビットのQDA[k-1:0]に対応した電流源は動作しないように電流源をビットによらずに非アクティブにしてもよいし、ビットによらずにアクティブにしてもよい。また、電流設定値のLSBより下位ビットの電流源にQDA[k-1:0]を供給して制御してもよい。図17においてQDA[k-1:0]はQDA[2:0]である。
【0090】
本実施形態によれば、図17図18で説明したように、電流設定値INDAのLSBに対応する第1電流IS1の分解能と第2電流IS2の分解能とが異なる。本実施形態では、この分解能の差を、第1充電回路110の第1増幅率と第2充電回路120の第2増幅率の違いによって吸収できるので、電流設定値INDAのLSBに対応する第1充電電流ICH1の分解能と第2充電電流ICH2の分解能を、ほぼ同等にできる。
【0091】
また、本実施形態によれば、図18で説明したように、第1増幅率が第2増幅率より小さいことで、第1電流IS1の分解能を第2電流IS2の分解能より大きくできる。この分解能の違いは、第2設定値STV2から電流源制御値QDAへのビット割り当てと、第1設定値STV1から電流源制御値QDAへのビット割り当てとが、kビットだけ異なることで、実現されている。第1電流IS1の分解能を大きくできることで、第1増幅率に関係する抵抗RCSI1の最小電位差を大きくできるので、演算増幅器OPFがより高精度な増幅率で増幅するための十分大きな電位差を確保できる。これにより、第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2をより精度が高い分解能で刻むことができる。
【0092】
2.第2実施形態
図19は、第2実施形態における回路装置100と、その回路装置100を含む電子機器200の構成例である。第2実施形態は、第1実施形態に対して電流源回路140の構成が異なる。第1補正、第2補正及び閾値設定の手法は、第1実施形態と同様である。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
【0093】
制御回路160は、電流設定値INDAに第1補正を行い、その結果を第1電流源制御値QDA1として電流源回路140に出力する。また、制御回路160は、電流設定値INDAに第2補正を行い、その結果を第2電流源制御値QDA2として電流源回路140に出力する。但し、第1補正及び第2補正のうち一方のみが行われてもよいし、両方が行われてもよい。
【0094】
電流源回路140は、第1電流源回路141と第2電流源回路142とを含む。第1電流源回路141は、第1電流源制御値QDA1により設定される電流値の第1電流IS1を生成し、その第1電流IS1を第1充電回路110に供給する。第2電流源回路142は、第2電流源制御値QDA2により設定される電流値の第2電流IS2を生成し、その第2電流IS2を第2充電回路120に供給する。
【0095】
図20は、第2実施形態における制御回路160の動作説明図である。以下、制御回路160が含む閾値判定部163及び設定値出力部164の動作として説明する。閾値判定部163の動作については第1実施形態と同様である。
【0096】
設定値出力部164は、モード制御信号MDがローレベルのとき、第1設定値STV1に基づいて第1電流源制御値QDA1を出力すると共に、第2電流源制御値QDA2をゼロに設定する。設定値出力部164は図3において電流源制御値QDAを電流源回路140に出力していたが、本実施形態では第1電流源制御値QDA1及び第2電流源制御値QDA2を電流源回路140に出力する。これにより、第1充電モードにおける充電電流IBAT=ICH1は、第1補正により補正された第1設定値STV1によって制御される。設定値出力部164は、モード制御信号MDがハイレベルのとき、第2設定値STV2に基づいて第2電流源制御値QDA2を出力すると共に、第1電流源制御値QDA1をゼロに設定する。これにより、第2充電モードにおける充電電流IBAT=ICH2は、第2補正により補正された第2設定値STV2によって制御される。
【0097】
図21は、第1充電回路110と第1電流源回路141の詳細構成例である。第1充電回路110の構成は、第1実施形態と同様である。
【0098】
第1電流源回路141は、演算増幅器OPB1とP型トランジスターTB1と抵抗RC1~RC13とN型トランジスターTC1~TC13とを含む。
【0099】
P型トランジスターTB1のソースはノードNCSI1に接続され、ドレインはノードNS1に接続される。演算増幅器OPB1の反転入力端子に基準電圧VREFが入力される。演算増幅器OPB1の非反転入力端子はノードNS1に接続され、出力ノードはP型トランジスターTB1のゲートに接続される。抵抗RC1の一端はノードNS1に接続され、他端はN型トランジスターTC1のドレインに接続される。N型トランジスターTC1のソースはグランドノードに接続される。同様に、抵抗RC2~RC13の一端はノードNS1に接続され、他端はN型トランジスターTC2~TC13のドレインに接続される。N型トランジスターTC2~TC13のソースはグランドノードに接続される。N型トランジスターTC1のゲートには、第1電流源制御値QDA1の制御ビット信号QDA1[0]が入力される。同様に、N型トランジスターTC2~TC13のゲートには、第1電流源制御値QDA1の制御ビット信号QDA1[1]~QDA1[12]が入力される。
【0100】
演算増幅器OPB1は、第1イネーブル信号XONSがアクティブのとき動作イネーブルとなる。これにより、ノードNS1の電圧がVS1=VREFとなる。抵抗RC1とN型トランジスターTC1を第1電流源回路141の第1電流源と呼ぶ。第1電流源制御値QDA1の制御ビット信号QDA[0]が1のときN型トランジスターTC1がオンであり、第1電流源がVREF/RC1の電流を流す。同様に、抵抗RC2~RC13とN型トランジスターTC2~TC13を第1電流源回路141の第2~第13電流源と呼ぶ。第1電流源制御値QDA1の制御ビット信号QDA1[1]~QDA1[12]が1のときN型トランジスターTC2~TC13がオンであり、第2~第13電流源がVREF/RC2~VREF/RC13の電流を流す。P型トランジスターTB1に流れる第1電流IS1は、第1電流源制御値QDA1の制御ビット信号QDA1[0]~QDA1[12]のうち1である制御ビット信号に対応した電流源が流す電流の合計である。なお、第1電流源回路141に含まれる電流源の数は13に限定されず、m個であればよい。mは2以上n以下の整数である。
【0101】
第1イネーブル信号XONSが非アクティブのときには、演算増幅器OPA1とOPB1は動作ディセーブルになる。このときP型トランジスターTA1とTB1がオフになり、第1電流IS1と第1充電電流ICH1は流れない。
【0102】
図22は、第2充電回路120と第2電流源回路142の詳細構成例である。第2充電回路120の構成は、第1実施形態と同様である。
【0103】
第2電流源回路142は、演算増幅器OPB2とP型トランジスターTB2と抵抗RD1~RD13とN型トランジスターTD1~TD13とを含む。
【0104】
P型トランジスターTB2のソースはノードNCSI2に接続され、ドレインはノードNS2に接続される。演算増幅器OPB2の反転入力端子に基準電圧VREFが入力される。演算増幅器OPB2の非反転入力端子はノードNS2に接続され、出力ノードはP型トランジスターTB2のゲートに接続される。抵抗RD1の一端はノードNS2に接続され、他端はN型トランジスターTD1のドレインに接続される。N型トランジスターTD1のソースはグランドノードに接続される。同様に、抵抗RD2~RD13の一端はノードNS2に接続され、他端はN型トランジスターTD2~TD13のドレインに接続される。N型トランジスターTD2~TD13のソースはグランドノードに接続される。N型トランジスターTD1のゲートには、第2電流源制御値QDA2の制御ビット信号QDA2[0]が入力される。同様に、N型トランジスターTD2~TD13のゲートには、第2電流源制御値QDA2の制御ビット信号QDA2[1]~QDA2[12]が入力される。
【0105】
演算増幅器OPB2は、第2イネーブル信号XONLがアクティブのとき動作イネーブルとなる。これにより、ノードNS2の電圧がVS2=VREFとなる。抵抗RD1とN型トランジスターTD1を第2電流源回路142の第1電流源と呼ぶ。第2電流源制御値QDA2の制御ビット信号QDA2[0]が1のときN型トランジスターTD1がオンであり、第1電流源がVREF/RD1の電流を流す。同様に、抵抗RD2~RD13とN型トランジスターTD2~TD13を第2電流源回路142の第2~第13電流源と呼ぶ。第2電流源制御値QDA2の制御ビット信号QDA2[1]~QDA2[12]が1のときN型トランジスターTD2~TD13がオンであり、第2~第13電流源がVREF/RD2~VREF/RD13の電流を流す。P型トランジスターTB2に流れる第2電流IS2は、第2電流源制御値QDA2の制御ビット信号QDA2[0]~QDA2[12]のうち1である制御ビット信号に対応した電流源が流す電流の合計である。なお、第2電流源回路142に含まれる電流源の数は13に限定されず、n個であればよい。
【0106】
第2イネーブル信号XONLが非アクティブのときには、演算増幅器OPA2とOPB2は動作ディセーブルになる。このときP型トランジスターTA2とTB2がオフになり、第2電流IS2と第2充電電流ICH2は流れない。
【0107】
図23は、第1電流源回路141及び第2電流源回路142の抵抗比と動作を説明する図である。
【0108】
第1電流源回路141において第1~第13電流源の電流比を決める抵抗RC1~RC13の抵抗比は、RC13:RC12:・・・:RC2:RC1=0.25:0.5:・・・:512:1024である。この逆数比が電流比となるので、第1~第13電流源が流す電流はバイナリーに重み付けされる。設定値出力部164は、第1電流モードつまり第1イネーブル信号XONSがローレベルのとき、STV1[17:0]の上位13ビットを第1電流源制御値QDA1に割り当てて、QDA1[12:0]=STV1[17:5]を第1電流源回路141に出力する。
【0109】
第2電流源回路142において第1~第13電流源の電流比を決める抵抗RD1~RD13の抵抗比は、RD13:RD12:・・・:RD2:RD1=0.25:0.5:・・・:512:1024である。この逆数比が電流比となるので、第1~第13電流源が流す電流はバイナリーに重み付けされる。設定値出力部164は、第2電流モードつまり第2イネーブル信号XONLがローレベルのとき、STV2[20:0]の上位13ビットを第2電流源制御値QDA2に割り当てて、QDA2[12:0]=STV2[20:8]を第2電流源回路142に出力する。
【0110】
第2実施形態の図23と第1実施形態の図17とを比較すると、実質的に第2実施形態において第1実施形態と同じ動作が実現されていることが分かる。
【0111】
以上の本実施形態では、電流源回路140は、第1電流源回路141と第2電流源回路142とを含む。第1電流源回路141は、電流値がバイナリーに重み付けされたm個の定電流を出力するm個の電流源を有する。第2電流源回路142は、電流値がバイナリーに重み付けされたn個の定電流を出力するn個の電流源を有する。制御回路160は、第1設定値STV1に基づいて、第1電流源回路141のm個の電流源を制御するmビットの第1電流源制御信号QDA1を出力し、第2設定値STV2に基づいて、第2電流源回路142のn個の電流源を制御するnビットの第2電流源制御信号QDA2を出力する。第1電流源回路141は、m個の電流源のうち第1電流源制御信号QDA1に基づいて選択された電流源からの電流を第1電流IS1として第1充電回路110に供給する。第2電流源回路142は、n個の電流源のうち第2電流源制御信号QDA2に基づいて選択された電流源からの電流を第2電流IS2として第2充電回路120に供給する。
【0112】
なお、図21図23の例において、m=n=13であるが、mは2以上の整数であればよく、nはm以上の整数であればよく、n≠mであってもよい。
【0113】
本実施形態によれば、第1電流モードにおいて、第1補正により補正された第1設定値STV1に基づいて第1電流IS1の電流値が設定されることで、第1充電電流ICH1の電流値が設定される。第2電流モードにおいて、第2補正により補正された第2設定値STV2に基づいて第2電流IS2の電流値が設定されることで、第2充電電流ICH2の電流値が設定される。
【0114】
また本実施形態では、制御回路160は、第2設定値STV2のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号STV2[i]~STV2[i+n-1]をnビットの第2電流源制御値QDA2[n-1:0]として出力する。制御回路160は、第1設定値STV1のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+mビット信号STV1[i-k]~STV1[i-k+m-1]をmビットの第1電流源制御値QDA1[m-1:0]として出力する。
【0115】
なお、図21図23の例では、m=n=13、i=8、k=3であるが、mは2以上の整数であればよく、nはm以上の整数であればよく、n≠mであってもよく、iは1以上の整数であればよく、kは1以上i以下の整数であればよい。
【0116】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、電流設定値INDAのLSBに対応する第1電流IS1の分解能と第2電流IS2の分解能とが異なる。本実施形態では、この分解能の差を、第1充電回路110の第1増幅率と第2充電回路120の第2増幅率の違いによって吸収できるので、電流設定値INDAのLSBに対応する第1充電電流ICH1の分解能と第2充電電流ICH2の分解能を、ほぼ同等にできる。
【0117】
また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1増幅率が第2増幅率より小さいことで、第1電流IS1の分解能を第2電流IS2の分解能より大きくできる。この分解能の違いは、第2設定値STV2から第2電流源制御値QDA2へのビット割り当てと、第1設定値STV1から第1電流源制御値QDA1へのビット割り当てとが、kビットだけ異なることで、実現されている。第1電流IS1の分解能を大きくできることで、第1増幅率に関係する抵抗RCSI1の最小電位差を大きくできるので、演算増幅器OPFがより高精度な増幅率で増幅するための十分大きな電位差を確保できる。これにより、第1充電電流ICH1と第2充電電流ICH2をより精度が高い分解能で刻むことができる。
【0118】
以上に説明した本実施形態の回路装置は、電流源回路と第1充電回路と第2充電回路と制御回路とを含む。第1充電回路は、電流源回路の出力電流に基づいて、定電流の第1充電電流を充電電流として充電ノードに供給する。第2充電回路は、電流源回路の出力電流に基づいて、第1充電電流よりも大きい定電流の第2充電電流を充電電流として充電ノードに供給する。制御回路は、充電電流の電流値を示す電流設定値に基づいて、第1充電電流の電流値を設定する第1設定値、及び第2充電電流の電流値を設定する第2設定値を出力する設定値出力処理を行う。制御回路は、電流設定値が第1電流範囲であるとき、第1設定値が示す電流値の第1充電電流を第1充電回路から充電ノードに供給させる第1電流モードの制御を行う。制御回路は、電流設定値が第1電流範囲より高電流側の第2電流範囲であるとき、第2設定値が示す電流値の第2充電電流を第2充電回路から充電ノードに供給させる第2電流モードの制御を行う。制御回路は、設定値出力処理において、第1設定値を補正することで、電流設定値に対する第1充電電流の第1変換特性を補正する第1補正、及び第2設定値を補正することで、電流設定値に対する第2充電電流の第2変換特性を補正する第2補正のうち少なくとも一方の補正を行う。
【0119】
本実施形態によれば、充電電流の電流設定値に応じて第1充電回路と第2充電回路を切り替えることで、充電電流の電流値に応じて最適な定電流充電回路の設計が可能となる。これにより、高充電電流化を実現しつつ、回路規模の増加、充電電流の分解能低下、又は電力効率の低下を抑制することが可能になる。また本実施形態によれば、第1設定値に対する第1補正、及び第2設定値に対する第2補正の少なくとも一方が行われることで、電流設定値から第1充電電流への第1変換特性、及び電流設定値から第2充電電流への第2変換特性の少なくとも一方が補正される。これにより、第1変換特性と第2変換特性との間の特性差が低減される。
【0120】
また本実施形態では、制御回路は、第1補正及び第2補正の少なくとも一方の補正として、オフセット補正及び傾き補正のうち少なくとも一方の補正を行ってもよい。制御回路は、オフセット補正において、第1設定値及び第2設定値の少なくとも一方のオフセット補正により第1変換特性と第2変換特性のオフセット差を低減してもよい。制御回路は、傾き補正において、第1設定値及び第2設定値の少なくとも一方の傾き補正により第1変換特性と第2変換特性の傾きを近づけてもよい。
【0121】
本実施形態によれば、電流設定値から第1充電電流への第1変換特性と、電流設定値から第2充電電流への第2変換特性との間のオフセット差及び傾き差の少なくとも一方が、低減される。これにより、第1変換特性と第2変換特性との間の特性差が低減される。
【0122】
また本実施形態では、回路装置は記憶部を含んでもよい。記憶部は、第1変換特性の補正用の第1傾き補正値及び第1オフセット補正値と、第2変換特性の補正用の第2傾き補正値及び第2オフセット補正値と、を記憶してもよい。制御回路は、第1傾き補正値、第1オフセット補正値及び電流設定値に基づいて第1設定値を演算する第1補正を行うことで、第1変換特性の補正を行ってもよい。制御回路は、第2傾き補正値、第2オフセット補正値及び電流設定値に基づいて第2設定値を演算する第2補正を行うことで、第2変換特性の補正を行ってもよい。
【0123】
本実施形態によれば、第1傾き補正値及び第1オフセット補正値によって補正された第1設定値に基づいて、第1充電電流の電流値が制御される。これにより、電流設定値から第1充電電流への第1変換特性が補正される。また、第2傾き補正値及び第2オフセット補正値によって補正された第2設定値に基づいて、第2充電電流の電流値が制御される。これにより、電流設定値から第2充電電流への第2変換特性が補正される。
【0124】
また本実施形態では、電流設定値がINDAであり、第1傾き補正値がGA1であり、第1オフセット補正値がOF1であり、第2傾き補正値がGA2であり、第1オフセット補正値がOF2であってもよい。このとき、制御回路は、STV1=GA1×INDA+OF1、STV2=GA2×INDA+OF2により第1設定値STV1及び第2設定値STV2を演算してもよい。
【0125】
本実施形態によれば、第1傾き補正値により第1設定値の傾きが補正され、第1オフセット補正値により第1設定値のオフセットが補正される。また、第2傾き補正値により第2設定値の傾きが補正され、第2オフセット補正値により第2設定値のオフセットが補正される。これにより、電流設定値から第1充電電流への第1変換特性と、電流設定値から第2充電電流への第2変換特性との間のオフセット差及び傾き差が、低減される。
【0126】
また本実施形態では、記憶部は、第1電流範囲と第2電流範囲の境界に対応する閾値を記憶してもよい。制御回路は、電流設定値が閾値より小さいときには、第1設定値に基づいて第1電流モードの制御を行ってもよい。制御回路は、電流設定値が閾値より大きいときには、第2設定値に基づいて第2電流モードの制御を行ってもよい。
【0127】
本実施形態によれば、所望の閾値を記憶部に記憶させることで、第1電流範囲と第2電流範囲の境界に対応する閾値を変更できる。これにより、第1充電モードと第2充電モードを最適な閾値で切り替え可能となる。例えば、第1充電電流の特性又は第2充電電流の特性に非線形領域がある場合には、その非線形領域を避けて、第1充電モードと第2充電モードを最適な閾値で切り替え可能である。
【0128】
また本実施形態では、記憶部は、不揮発性メモリーであってもよい。
【0129】
本実施形態によれば、回路装置、又は回路装置を含む電子機器の製造時において閾値及び補正パラメーターが記憶部に書き込まれる。これにより、事前に計測された又は事前にシミュレーション処理により最適な閾値及び補正パラメーターを取得しておき、その閾値及び補正パラメーターを不揮発性メモリーに書き込むことが可能となる。
【0130】
また本実施形態では、第1電流モードにおいて、電流源回路は、第1設定値に基づいて第1電流を出力電流として第1充電回路に供給し、第1充電回路は、第1増幅率で第1電流を増幅することで第1充電電流を供給してもよい。第2電流モードにおいて、電流源回路は、第2設定値に基づいて第2電流を出力電流として第2充電回路に供給し、第2充電回路は、第1増幅率よりも大きい第2増幅率で第2電流を増幅することで第2充電電流を供給してもよい。
【0131】
本実施形態によれば、第2電流モードにおける第2増幅率が第1電流モードにおける第1増幅率より大きいことで、第2電流モードにおいて、第1充電電流より大きい第2充電電流を生成できる。また、第1増幅率が第2増幅率より小さいことで、第1電流の分解能を大きくできる。これにより、第1充電電流の分解能をより精度よく刻むことが可能になる。また、第2電流の分解能は第1電流の分解能より小さくなるが、第1充電回路と第2充電回路を分けたことで、第2充電電流の分解能をより精度よく刻むことが可能になる。
【0132】
また本実施形態では、第1メタル抵抗と第1ポリ抵抗との比によって第1増幅率が設定されてもよい。第2メタル抵抗と第2ポリ抵抗との比によって第2増幅率が設定されてもよい。
【0133】
本実施形態によれば、増幅率の分母となる抵抗をメタル抵抗としたことで、その抵抗を小さい抵抗値に設定できる。これにより、増幅率を大きな値にできる。このとき、増幅率が寄生抵抗の影響を受けやすくなることで、第1変換特性と第2変換特性の特性差が生じやすくなる。本実施形態によれば、第1補正及び第2補正の少なくとも一方が行われることで、第1変換特性と第2変換特性の特性差が低減される。
【0134】
また本実施形態では、電流源回路は、電流値がバイナリーに重み付けされた第1~第n定電流を出力する第1~第n電流源と、スイッチ回路と、を含んでもよい。nは2以上の整数である。第1電流モードにおいて、制御回路は、第1設定値に基づいて、第1~第n電流源を制御する電流源制御値の第1~第n制御ビット信号を出力してもよい。スイッチ回路は、第1~第n電流源のうち第1~第n制御ビット信号に基づいて選択された電流源からの電流を第1電流として第1充電回路に供給してもよい。第2電流モードにおいて、制御回路は、第2設定値に基づいて第1~第n制御ビット信号を出力してもよい。スイッチ回路は、第1~第n電流源のうち第1~第n制御ビット信号に基づいて選択された電流源からの電流を第2電流として第2充電回路に供給してもよい。
【0135】
本実施形態によれば、第1電流モードにおいて、第1補正により補正された第1設定値に基づいて第1電流の電流値が設定されることで、第1充電電流の電流値が設定される。第2電流モードにおいて、第2補正により補正された第2設定値に基づいて第2電流の電流値が設定されることで、第2充電電流の電流値が設定される。
【0136】
また本実施形態では、制御回路は、第2電流モードにおいて、第2設定値のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号を第1~第n制御ビット信号として出力してもよい。iは1以上の整数である。制御回路は、第1電流モードにおいて、第1設定値のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+nビット信号を第1~第n制御ビット信号として出力してもよい。kは1以上i以下の整数である。
【0137】
本実施形態によれば、電流設定値のLSBに対応する第1電流の分解能と第2電流の分解能とが異なる。本実施形態では、この分解能の差を、第1充電回路の第1増幅率と第2充電回路の第2増幅率の違いによって吸収できるので、電流設定値のLSBに対応する第1充電電流の分解能と第2充電電流の分解能を、ほぼ同等にできる。
【0138】
また本実施形態では、電流源回路は、電流値がバイナリーに重み付けされたm個の定電流を出力するm個の電流源を有する第1電流源回路と、電流値がバイナリーに重み付けされたn個の定電流を出力するn個の電流源を有する第2電流源回路と、を含んでもよい。mは2以上の整数である。nはm以上の整数である。制御回路は、第1設定値に基づいて、第1電流源回路のm個の電流源を制御するmビットの第1電流源制御値を出力し、第2設定値に基づいて、第2電流源回路のn個の電流源を制御するnビットの第2電流源制御値を出力してもよい。第1電流源回路は、m個の電流源のうち第1電流源制御値に基づいて選択された電流源からの電流を第1電流として第1充電回路に供給してもよい。第2電流源回路は、n個の電流源のうち第2電流源制御値に基づいて選択された電流源からの電流を第2電流として第2充電回路に供給してもよい。
【0139】
本実施形態によれば、第1電流モードにおいて、第1補正により補正された第1設定値に基づいて第1電流の電流値が設定されることで、第1充電電流の電流値が設定される。第2電流モードにおいて、第2補正により補正された第2設定値に基づいて第2電流の電流値が設定されることで、第2充電電流の電流値が設定される。
【0140】
また本実施形態では、制御回路は、第2設定値のビット信号のうち第i+1~第i+nビット信号をnビットの第2電流源制御値として出力してもよい。iは1以上の整数である。制御回路は、第1設定値のビット信号のうち第i+1-k~第i-k+mビット信号をmビットの第1電流源制御値として出力してもよい。kは1以上i以下の整数である。mは2以上n以下の整数である。
【0141】
本実施形態によれば、電流設定値のLSBに対応する第1電流の分解能と第2電流の分解能とが異なる。本実施形態では、この分解能の差を、第1充電回路の第1増幅率と第2充電回路の第2増幅率の違いによって吸収できるので、電流設定値のLSBに対応する第1充電電流の分解能と第2充電電流の分解能を、ほぼ同等にできる。
【0142】
また本実施形態の電子器機は、上記のいずれかの回路装置と、充電ノードに接続されるバッテリーと、を含む。
【0143】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、バッテリー及び電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0144】
10…バッテリー、100…回路装置、110…第1充電回路、120…第2充電回路、140…電流源回路、141…第1電流源回路、142…第2電流源回路、145…スイッチ回路、150…基準電圧生成回路、160…制御回路、163…閾値判定部、164…設定値出力部、170…記憶部、190…逆流防止回路、200…電子機器、GA1…第1傾き補正値、GA2…第2傾き補正値、IBAT…充電電流、ICH1…第1充電電流、ICH2…第2充電電流、INDA…電流設定値、IS1…第1電流、IS2…第2電流、NBAT…充電ノード、OF1…第1オフセット補正値、OF2…第2オフセット補正値、QDA…電流源制御値、QDA1…第1電流源制御値、QDA2…第2電流源制御値、STV1…第1設定値、STV2…第2設定値、THR…閾値、VBAT…バッテリー電圧、VIN…電源電圧、VREF…基準電圧、XONL…第2イネーブル信号、XONS…第1イネーブル信号
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