(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018836
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】スロットアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/22 20060101AFI20240201BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20240201BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01Q13/22
H01Q13/02
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161699
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】22187821.8
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮川 哲也
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA13
5J045AA26
5J045CA03
5J045DA04
5J045FA01
5J045HA01
5J045JA02
5J045LA01
5J045NA07
(57)【要約】
【課題】サイドローブを抑制可能なスロットアレイアンテナを提供する。
【解決手段】
本発明は、導波管2とホーン3とを含むスロットアレイアンテナ1を提供する。導波管2は、電波を放射するスロット22を第1面21に有する。ホーン3は、第1面21側に電波を放射する向きで導波管2に固定され、第1面21の短辺方向に上部と下部32、33が内側に曲がって形成した第1狭開口31を有する。そして、第1狭開口31の開口幅は、第1面21の短辺方向の幅より短い。ホーンは、第1狭開口31よりも放射方向側の上部と下部32、33が、さらに内側に曲がって形成した第2狭開口34を有する。第2狭開口34の開口幅は、電波の波長の2/5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射するスロットを第1面に有する導波管と、
前記第1面側に電波を放射する向きで前記導波管に固定され、前記第1面の短辺方向に上部と下部が内側に曲がって形成した第1狭開口を有するホーンと、
を備え、
前記第1狭開口の開口幅は、前記第1面の短辺方向の幅より短く、
前記ホーンは、前記第1狭開口よりも放射方向側の前記上部と前記下部が、さらに内側に曲がって形成した第2狭開口を有し、
前記第2狭開口の開口幅は、前記電波の波長の2/5以下である、
スロットアレイアンテナ。
【請求項2】
前記第2狭開口の開口幅は、前記電波の波長の1/5以下である、請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項3】
前記上部と前記下部は、前記第2狭開口の端部の放射方向側でホーン状を形成する、請求項2に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項4】
前記上部と前記下部は、前記第1面の縁に沿って内側に曲がった第1屈曲部と、放射方向に曲がった第2屈曲部と、
を備え、
前記第1狭開口は、前記第2屈曲部から放射方向側で前記上部と前記下部が対向して形成した開口である、
請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項5】
前記上部と下部は、前記第2屈曲部の放射方向側で第1面の幅方向の内側に曲がった第3屈曲部と、第3屈曲部の放射方向側で放射方向に曲がった第4屈曲部を備え、
前記第2狭開口は、前記第4屈曲部から放射方向側で前記上部と前記下部が対向して形成した開口である、
請求項4に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項6】
前記ホーンの前記上部と前記下部の一部が、前記第1屈曲部付近で前記導波管の第1面の一部と重なり、ホーンが放射方向に固定される、
請求項6に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項7】
前記導波管は、細長い中空構造である、
請求項6に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項8】
前記中空構造は、矩形である、
請求項7に記載のスロットアレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に船舶航行用の船舶用レーダに関し、より具体的には、船舶用レーダのスロットアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
導波管を備えるスロットアレイアンテナは、船舶用アンテナに使用される主流のアンテナである。そして、スロットアレイアンテナは、指向性を向上させるためにホーンと複数のスロットを備えた矩形導波管を使用している。さらに、船舶用のスロットアレイアンテナでは、エッジシャントシステム(水平偏波)が主に用いられる。
【0003】
エッジシャント式のスロットアレイアンテナでは、一般的に交差偏波である垂直偏波のサイドローブを抑制するために格子(グレーティング)が設けられる。
【0004】
一方、スロットの向きが異なるロンジテューディナルシャント式のスロットアレイアンテナが用いられる場合、水平偏波のサイドローブが生じるが、これを抑制する格子を作ることは容易ではない。そのため、ロンジテューディナルシャント式において、簡易な構成で効率的に交差偏波(水平偏波)のサイドローブを抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
特許文献1では、ロンジテューディナルシャント式のアンテナのスロットそれぞれを金属で囲むことでサイドローブを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、サイドローブを抑制し、創作が容易なロンジテューディナルシャント式のスロットアレイアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、導波管とホーンとを含むスロットアレイアンテナを提供する。導波管は、電波を放射するスロットを第1面に有する。ホーンは、第1面側に電波を放射する向きで導波管に固定され、第1面の短辺方向に上部と下部が内側に曲がって形成した第1狭開口を有する。そして、第1狭開口の開口幅は、第1面の短辺方向の幅より短い。ホーンは、第1狭開口よりも放射方向側の上部と下部が、さらに内側に曲がって形成した第2狭開口を有する。第2狭開口の開口幅は、電波の波長の2/5以下である。上記の構成により、簡易な構成で交差偏波抑制の格子を使用することなく、水平偏波に起因して発生するサイドローブを抑制する。
【0009】
さらに、第2狭開口の開口幅は、電波の波長の1/5以下であってもよい。上記構成により、より狭い開口を持つ第2狭開口によって水平偏波がアンテナ内部に伝搬することがさらに抑制され、サイドローブが抑制される。
【0010】
さらに、上部と下部は、第2狭開口の端部の放射方向側でホーン状を形成してもよい。
【0011】
さらに、上部と下部は、第1面の縁に沿って内側に曲がった第1屈曲部と、放射方向に曲がった第2屈曲部とを備え、第1狭開口は、第2屈曲部から放射方向側で上部と下部が対向して形成した開口であってもよい。
【0012】
さらに、上部と下部は、第2屈曲部の放射方向側で第1面の幅方向の内側に曲がった第3屈曲部と、さらに、第3屈曲部の放射方向側で放射方向に曲がった第4屈曲部を備えてもよく、 第2狭開口は、第4屈曲部から放射方向側で上部と下部が対向して形成した開口であってもよい。
【0013】
さらに、ホーンの上部と下部の一部が、第1屈曲部付近で導波管の第1面の一部と重なり、ホーンが放射方向に固定されてもよい。
【0014】
さらに、導波管は、細長い中空構造であってもよい。
【0015】
さらに、中空構造は、矩形であってもよい。
【0016】
別の態様では、スロットアレイアンテナを組み立てる方法が提供される。電波を放射するスロットを第1面に有する導波管を形成するステップと、第1面側に電波を放射する向きで前記導波管に固定され、前記第1面の短辺方向に上部と下部が内側に曲がって形成した第1狭開口を有するホーンを形成するステップとを含む。さらに、第1狭開口の開口幅は、前記第1面の短辺方向の幅より短い。スロット近傍のホーンの上下間の距離を短くすることにより、水平偏波が伝搬できず、水平偏波によるサイドローブが抑制される。さらには、ロット近傍のホーンの上下間の距離を2λ/5以下とすることにより、さらに水平偏波を抑制できる。従って、交差偏波抑制の格子を使用することなく、低サイドローブの垂直偏波スロットアンテナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面は実施形態の理解を容易にするものであり、開示の構成や結果に限定することを意図しない。
【
図1】
図1は、スロットアレイアンテナの側面図である。
【
図2】
図2は、スロットアレイアンテナの斜視図である。
【
図3】
図3は、スロットアレイアンテナの放射パターンを示すグラフである。
【
図4】
図4は、スロットアレイアンテナの複数のスロットに関するスロットオフセットエラーである。
【
図5】
図5は、スロットアレイアンテナの放射パターンを示すグラフである。
【
図6】
図6はサイドローブの強度と異なるスロットオフセット誤差の波長との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、スロットアレイアンテナの組立方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、他の例示的なした実施形態または特徴に限定されず、本明細書に提示する技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。以下の詳細な説明では、一部で添付図面を参照する。
【0019】
本発明は、本明細書に記載および図面に示されている範囲において、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計することができる。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態によるスロットアレイアンテナ1の側面図を示す。
図2は、本開示の一実施形態によるスロットアレイアンテナ1の斜視図を示す。スロットアレイアンテナ1は、金属材料から成る導波管2とホーン3とを含み、これらは組み立てられるとスロットアレイアンテナ1を形成する。
【0021】
導波管2は、長方形の細長い中空構造部である。導波管2は、複数の電波を放射するために所定の間隔で配置された複数のスロット22を含む第1表面21を有する。複数のスロットは、長手方向であり、第1面21の長さに対して平行に第1面21上に配置される。第1面21の幅は、電波の波長(λ)の1/4より大きい。スロットアレイアンテナ1はさらに、第1から第4の面21および23―25が導波路2の壁を形成するように、第2、第3および第4の面23、24、25を有する。ここで、波長は自由空間の波長を前提としているが、アンテナの構造によって電気長とした場合の効果が高い場合は、電気長を用いる。
【0022】
なお、所定の間隔は、必ずしも等間隔でなくてもよく、電波を効率的に放射するために周知技術の設計を含む。例えば、各々のスリットから放射波面が同位相になるよう設計された形状がある。
【0023】
第1表面21の幅は電波がスリットから放出されるために適した幅であり、好ましくは波長の1/4より大きい。第1表面21の幅は、本開示の範囲から逸脱することなく、波長に関して任意の適切な幅とすることができる。
【0024】
上部と下部が複数の電波の放射方向に開いて導波管2に固着されていることでホーン3を形成する。ホーン3は、第1面21の幅に対して内側に屈曲して第1狭開口31を形成している。第1狭開口31の開口幅は、スロットに干渉せず第1面の短辺よりも短い幅である。これにより、第1狭開口部31により水平偏波が伝搬できなくなり、複数の電波の水平偏波により発生するサイドローブが抑制される。さらに、ホーンが放射方向の導波管側に固定され、位置決めと固定が容易となる。
【0025】
第1狭開口31の開口幅は、本開示の範囲から逸脱することなく、波長に関して任意の適切な幅とすることができる。
【0026】
ホーン3は、第1面21の幅に沿って内側に二度曲げられて第1狭開口部31及び第2狭開口部34を形成する上部32及び下部33を形成する。第2狭開口部34の開口幅は、波長の2/5以下である。上下部32、33は、第2狭開口34以降の放射方向に沿ったホーン形状を形成している。上部および下部32、33の各々は、第1表面21の端部において、第1表面21の幅に沿って内側に向かう第1屈曲部35aまたは35bと、放射方向に沿った第2屈曲部(36aまたは36b)とを有し、したがって、第1狭開口部31を形成する。
【0027】
本実施形態では、第2狭開口34の開口幅は波長の2/5以下であるが、これに限定されない。第2狭開口34の開口幅は、本開示の範囲から逸脱することなく、波長に対して任意の適切な幅とすることができる。
【0028】
上下部32、33は、第1面21の幅に沿って第3曲げ(37aまたは37b)が内側に、放射方向に沿って第4曲げ(38aまたは38b)が内側になるように、第2曲げ(36aまたは36b)から所定の距離だけ第3曲げ37a、37bを有し、これにより第2狭開口34を形成している。ホーン3の上部および下部32、33は、導波路2の第1表面21と部分的に重なる。ホーン3の上部および下部32、33は、それぞれ、導波管2の第2および第3の表面23、24とさらに重なる。最初から4番目の曲げは90度の曲げとなる。
【0029】
導波管2およびホーン3は、それぞれのプレートの所望のデザインを形成するために曲げられかつパンチされた形状の金属シートである。導波路2およびホーン3は同じ金属で作られる。別の実施形態では、導波路2およびホーン3は、異なる金属で作られる。導波路2とホーン3は同じ厚さを有する。
【0030】
スロットアレイアンテナ1を第1狭開口部31で複数の電波の放射に利用する場合、加工誤差が発生した場合にサイドローブ抑制効果が不十分であったため、第2狭開口部34を含めて、第2狭開口部34におけるホーン間の隙間が波長の1/5以下となるように放射方向への二段折り返し形状を形成する。上部と下部がそれぞれ一度だけ放射方向に曲がった形態では、第1屈曲部と第2屈曲部の間の板が、第1表面に接触してスロット22と干渉するため、ホーン3の上下部32、33間の第1狭開口31の開口幅を狭くすることができない。一方、2ステップベンドはスロットアレイアンテナ1に含まれる。
【0031】
図3は、スロットアレイアンテナ1の放射パターンを示すグラフ300である。グラフ300は、従来のスロットアレイアンテナ及びスロットアレイアンテナ1の方位に対する垂直偏波及び水平偏波の電波強度を示している。複数のスロット22近傍のホーン3の第2狭開口34の開口幅を波長の1/5以下とすることにより、水平偏波が伝搬できず、サイドローブが抑制される。これより、
図3に示すような交差偏波抑制用のお格子を用いることなく、低サイドローブの垂直偏波スロットアレイアンテナ1を実現できる。
【0032】
図4は、スロットアレイアンテナ1の複数のスロット22に対するスロットオフセット誤差を示す。複数のスロット22は、第1―第3スロット41―43を含む。第2スロット42は、
図4で示されるように、第1および第3スロット41、43に対してスロットオフセット誤差を有する。第2スロット42は、位置決め間の差がスロットオフセット誤差となるため、第1および第3スロット41、43に対して上方に位置決めされる。
【0033】
図4に示すように、複数のスロット22にスロットオフセット誤差がある場合、
図5に示すようにサイドローブが悪化する。
図5は、スロットアレイアンテナ1の放射パターンを示すグラフ500である。グラフ500は、方位角に対するスロットアレイアンテナ1の様々なスロットオフセットエラーに関連する電波の強度を示す。
【0034】
ホーン3の上下32、33間の開口幅、すなわち第2狭開口の開口幅を、
図6に示すように、波長の2/5以下(0.4λ)、好ましくは波長の1/5以下(0.2λ)とすることにより、サイドローブを抑制する。
図6は、サイドローブの強度と、異なるスロットオフセット誤差に対する波長との関係を示すグラフ600である。
【0035】
図7は、スロットアレイアンテナ1を組み立てる方法7を示すフローチャートである。
【0036】
ステップ71では、複数の電波を放射するために所定の間隔で配置された複数のスロット22を含む第1表面21を有する導波路2が形成される。ステップ72において、ホーン3は、第1狭開口部31を形成するために、第1表面21の幅に対して内側に曲げられて形成される。
【0037】
ステップ73では、ホーン3が複数の電波の放射方向に開くように導波管2に固定的に取り付けられ、スロットアレイアンテナ1が形成される。第1表面21の幅は、複数の電波の波長の1/4より大きい。第1狭開口31の開口幅は、複数の電波の波長の半分以下であり、複数の電波の水平偏波に起因して発生するサイドローブを抑制する。
【符号の説明】
【0038】
1 スロットアレイアンテナ
2 導波管
22 スロット
3 ホーン
31 第1狭開口部
32、33 ホーンの上部と下部
34 第2狭開口部