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特開2024-18865ガスバリアフィルム、積層体、および包装容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018865
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ガスバリアフィルム、積層体、および包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240201BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240201BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B9/00 A
B32B27/34
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005720
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2022121355の分割
【原出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 信之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敦史
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AC07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
4F100AA01B
4F100AA19
4F100AA19B
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AA33
4F100AA33B
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK25
4F100AK25D
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK42C
4F100AK48C
4F100AK51
4F100AK51E
4F100AL06
4F100AL06D
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00E
4F100CB03E
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ37C
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100GB15
4F100JA03
4F100JA04
4F100JA06
4F100JA07A
4F100JA11
4F100JD03
4F100JD04
4F100JK02
4F100JK05
4F100JK06
4F100JL10
4F100JL10A
4F100JL11E
4F100JL12
4F100JL12E
4F100JL16
4F100JL16A
4F100JM01
4F100YY00A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境負荷を軽減することができ、しかも、黄色味を低減することができ、そのうえ、ガスバリア性を高めることもでき(具体的には、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減することができ)、加えて、製造過程の延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することが可能なガスバリアフィルムを提供することを目的とする。ガスバリアフィルムを含む積層体や、積層体を含む包装容器を提供することも目的とする。
【解決手段】ガスバリアフィルム7は、二軸配向ポリエステルフィルム8と、無機薄膜層31とを含み、二軸配向ポリエステルフィルム8がケミカルリサイクルポリエステルを含み、二軸配向ポリエステルフィルム8のゲル浸透クロマトグラフィーで得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.9%以上5.5%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向ポリエステルフィルムと、
無機薄膜層と、
ポリエチレンテレフタレート、延伸ナイロン、およびポリエチレンフィルムからなる群より選ばれた少なくとも1種の支持体層とを含み、
前記二軸配向ポリエステルフィルムがケミカルリサイクルポリエステルを含み、
前記二軸配向ポリエステルフィルムのゲル浸透クロマトグラフィーで得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.9%以上4.5%以下である、
積層体。
【請求項2】
前記二軸配向ポリエステルフィルムは、厚み1μm当たりのカラーb値が0.067以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記二軸配向ポリエステルフィルムにおける前記ケミカルリサイクルポリエステルの含有量が20質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記二軸配向ポリエステルフィルムと前記無機薄膜層との間に被覆層を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記被覆層が、オキサゾリン基を含む樹脂を含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記無機薄膜層上に設けられた保護層をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記保護層がウレタン樹脂を含む、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
シーラント層および粘着層の少なくとも一方をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の積層体を含む、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルム、積層体、および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性や機械物性に優れた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルは、プラスチックフィルム、エレクトロニクス、エネルギー、包装材料、自動車などの非常に多岐な分野で利用されている。なかでも、二軸配向ポリエステルフィルムは、機械特性強度(すなわち機械的性質)、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、光学特性などとコストとのバランスに優れることから、工業用や包装用分野において幅広く用いられている。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもリサイクル原料の利用が進められている。ポリエステルにおいても、使用済みのペットボトルのリサイクルがおこなわれている。リサイクルされたポリエステルを用いることによりCO削減につながると言われている。そのような事情から、リサイクルされたポリエステルの使用比率を少しで高めることが望ましい。
【0004】
たとえば、特許文献1には、ペットボトルをメカニカルリサイクルして得られたポリエステル、すなわちメカニカルリサイクルポリエステルを用いて作製した二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
【0005】
しかしながら、使用済みペットボトルのような使用済みポリエステル製品は、そこに充填されていた内容品や保管環境などにより、その汚染の程度にバラツキがあるところ、メカニカルリサイクルでは、汚染物質を高度に除去することは難しい。
【0006】
これに加えて、メカニカルリサイクルポリエステルは、低分子量成分を比較的多く含むため、メカニカルリサイクルポリエステルを用いて作製した製品は黄色味を呈することがあった。
【0007】
ところで、メカニカルリサイクルとは異なる手法でリサイクルされたポリエステルとして、使用済みポリエステル製品に含まれるポリエステルをモノマーレベルまで分解したうえで、再度重合して得られるポリエステル、すなわちケミカルリサイクルポリエステルが知られている(特許文献3および4参照)。
【0008】
たとえば、特許文献2には、ケミカルリサイクルポリエステルを用いて作製したポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6036099号公報
【特許文献2】特許第6984718号公報
【特許文献3】特開2000-169623号公報
【特許文献4】特開2000-302707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ケミカルリサイクルポリエステルは、ペットボトルに成形しやすいように固相重合によって高分子量化されることが多く、しかも、その過程で低分子量成分が低減されるため、ケミカルリサイクルポリエステルの固有粘度は、一般的な二軸配向ポリエステルフィルム用のポリエステルの固有粘度に比べて高いことが多い。
【0011】
本発明者は、ケミカルリサイクルポリエステルをペットボトルではなく、ガスバリアフィルムを構成する二軸配向ポリエステルフィルム製造のために使用することを検討する過程で、ケミカルリサイクルポリエステルを用いたフィルムは延伸時に破断しやすく、したがって製膜速度を過度に落とさざるを得ないことがある、という知見を得た。
【0012】
これを受けて、本発明者は、延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減でき、しかも、二軸配向ポリエステルフィルムが呈し得る黄色味を低減することが可能であり、そのうえ、ガスバリア性を高めることが可能な低分子量成分の量を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、環境負荷を軽減することができ、しかも、黄色味を低減することができ、そのうえ、ガスバリア性を高めることもでき(具体的には、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減することができ)、加えて、製造過程の延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することが可能なガスバリアフィルムを提供することを目的とする。本発明は、ガスバリアフィルムを含む積層体や、積層体を含む包装容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために、本発明は、下記[1]の構成を備える。
[1]
二軸配向ポリエステルフィルムと、
無機薄膜層とを含み、
前記二軸配向ポリエステルフィルムがケミカルリサイクルポリエステルを含み、
前記二軸配向ポリエステルフィルムのゲル浸透クロマトグラフィーで得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.9%以上5.5%以下である、
ガスバリアフィルム。
ここで、「ケミカルリサイクルポリエステル」とは、使用済みポリエステル製品に含まれるポリエステルをモノマーレベルまで分解したうえで、再度重合して得られるポリエステルである。
【0015】
[1]では、二軸配向ポリエステルフィルムがケミカルリサイクルポリエステルを含む。ここで、「二軸配向ポリエステルフィルムがケミカルリサイクルポリエステルを含む」とは、二軸配向ポリエステルフィルムが複数の層を含む場合には、複数の層のうち、少なくとも一つの層が、ケミカルリサイクルポリエステルを含むことを意味する。
【0016】
[1]によれば、ガスバリアフィルムを構成する二軸配向ポリエステルフィルムがケミカルリサイクルポリエステルを含むため、環境負荷を軽減することができる。
【0017】
しかも、二軸配向ポリエステルフィルムにおいて分子量1000以下の領域の面積割合が5.5%以下であることによって、すなわち、分子量1,000以下の成分(以下、「低分子量成分」と言うことがある。)の含有量の上限が設けられることによって、二軸配向ポリエステルフィルムが呈し得る黄色味を低減することができる。
【0018】
二軸配向ポリエステルフィルムにおいて分子量1000以下の領域の面積割合が5.5%以下であることによって、ガスバリアフィルムのガスバリア性を高めることもできる。具体的には、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減できる。これは、低分子量成分が原因となり得る無機薄膜層での欠点の発生を、低減または抑制できるためである、と考えられる。
【0019】
二軸配向ポリエステルフィルムにおいて分子量1000以下の領域の面積割合が5.5%以下であることによって、ガスバリアフィルムにシーラント層を形成した場合、ガスバリアフィルムとシーラント層とのはく離強度を向上することもできる。これは、塑性成分として作用し得る低分子量成分によるはく離強度の低下を抑制できるためである、と考えられる。
【0020】
そのうえ、分子量1000以下の領域の面積割合が1.9%以上であることによって、すなわち、低分子量成分の含有量の下限が設けられることによって、可塑剤のように働くことが可能な低分子量成分の含有量を確保することができる。
【0021】
さらに、分子量1000以下の領域の面積割合が1.9%以上であることによって、二軸配向ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの分子量をある程度以下に制限することもできる。これについて説明する。低分子量成分は、重合過程でポリエステルに取り込まれるため、ポリエステルの分子量が大きいほど低分子量成分が少なく、ポリエステルの分子量が小さいほど低分子量成分が多くなる傾向がある。[1]によれば、分子量1000以下の領域の面積割合が1.9%以上であるため、つまり、低分子量成分がある程度以上存在するため、二軸配向ポリエステルフィルムに含まれるポリエステルの分子量をある程度以下に制限することができる。
【0022】
したがって、二軸配向ポリエステルフィルム製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることを防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することができる。
【0023】
本発明は、下記[2]以降の構成をさらに備えることが好ましい。
【0024】
[2]
前記二軸配向ポリエステルフィルムは、厚み1μm当たりのカラーb*値が0.067以下である、[1]に記載のガスバリアフィルム。
【0025】
[2]によれば、二軸配向ポリエステルフィルムが呈し得る黄色味を制限することができる。したがって、たとえば、ガスバリアフィルムに印刷層を形成した場合、二軸配向ポリエステルフィルムの色合いが、印刷層の見た目(つまり外観)に与える影響を低減することができる。また、たとえば、ガスバリアフィルムを用いて包装容器を作製した場合には、二軸配向ポリエステルフィルムの色合いが、内容品の見た目に与える影響を低減することができる。
【0026】
[3]
前記二軸配向ポリエステルフィルムにおける前記ケミカルリサイクルポリエステルの含有量が20質量%以上である、[1]または[2]に記載のガスバリアフィルム。
【0027】
[3]によれば、環境負荷をいっそう軽減することができる。
【0028】
[4]
前記二軸配向ポリエステルフィルムと前記無機薄膜層との間に被覆層を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【0029】
[4]によれば、二軸配向ポリエステルフィルムと被覆層との密着力や、被覆層と無機薄膜層との密着力を、被覆層によって調整することができる。
【0030】
[5]
前記被覆層が、オキサゾリン基を含む樹脂を含む、[4]に記載のガスバリアフィルム。
【0031】
[5]によれば、被覆層と無機薄膜層との密着力を高めることができる。これは、オキサゾリン基が、無機薄膜層との親和性に優れ、しかも無機薄膜層形成時に発生し得る無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物と反応することができるためである。
【0032】
[6]
前記無機薄膜層上に設けられた保護層をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
ここで、「保護層」とは、無機薄膜層のガスバリア性を補強することができる層を意味する。
【0033】
[6]によれば、酸素ガスや水蒸気の透過を、いっそう抑制または低減できる。
【0034】
[7]
前記保護層がウレタン樹脂を含む、[6]に記載のガスバリアフィルム。
【0035】
[7]によれば、保護層と無機薄膜層との密着力を高めることができる。これは、ウレタン樹脂中のウレタン結合が極性を有し、ウレタン結合が無機薄膜層と相互作用するためである。これに加えて、ガスバリアフィルムに屈曲負荷がかかった際に無機薄膜層が受け得るダメージの程度を低減できる。これは、ウレタン樹脂中の非晶部分が柔軟性を有するためである。
【0036】
[8]
前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【0037】
[8]によれば、無機薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる。
【0038】
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のガスバリアフィルムと、
シーラント層および粘着層の少なくとも一方とを含む、
積層体。
【0039】
[9]によれば、積層体がシーラント層を含む場合、積層体を含む製品(たとえば包装容器)をヒートシールによって製造することができる。積層体が粘着層を含む場合、積層体を含む製品(たとえば包装容器)を加圧によって製造することができる。
【0040】
[10]
[9]に記載の積層体を含む、包装容器。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、環境負荷を軽減することができ、しかも、黄色味を低減することができ、そのうえ、ガスバリア性を高めることもでき(具体的には、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減することができ)、加えて、製造過程の延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することが可能なガスバリアフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】一実施形態におけるガスバリアフィルムの概略断面図である。
図2】一実施形態におけるガスバリアフィルムの概略断面図である。
図3】一実施形態におけるガスバリアフィルムの概略断面図である。
図4】一実施形態におけるガスバリアフィルムの概略断面図である。
図5】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図6A】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図6B】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図7A】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図7B】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図8】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図9】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図10】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図11A】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図11B】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図12A】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図12B】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図13】一実施形態における積層体の概略断面図である。
図14】一実施形態における積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<1.はじめに>
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下では、ポリエチレンテレフタレートをペットやPETと言うことがある。すなわち、これらを同義語として用いる。
Machine Direction(以下、「MD」と言う。)を長手方向と言うことがある。すなわち、MDと長手方向とを同義語として用いる。
Transverse Direction(以下、「TD」と言う。)を幅方向と言うことがある。すなわち、TDと幅方向とを同義語として用いる。
本発明の実施形態を説明するに当たり、「第一層81、第二層82、第三層83は、二軸配向ポリエステルフィルム8の厚み方向でこの順に並んでいる」といった表現をすることがある。この表現は、第一層81および第二層82の間や、第二層82および第三層83の間に、他の層が存在することを許容する。複数の層が「この順に並んでいる」という記載を含む他の表現(つまり類似の表現)も、同様である。
【0044】
<2.ガスバリアフィルム>
図1に示すように、一実施形態において、ガスバリアフィルム7は、二軸配向ポリエステルフィルム8と無機薄膜層31とを含む。ガスバリアフィルム7が無機薄膜層31を含むため、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減できる。
【0045】
図2に示すように、ガスバリアフィルム7は被覆層32をさらに含んでいてもよい。具体的には、ガスバリアフィルム7は、二軸配向ポリエステルフィルム8と無機薄膜層31との間に被覆層32を含んでいてもよい。これによれば、二軸配向ポリエステルフィルム8と被覆層32との密着力や、被覆層32と無機薄膜層31との密着力を被覆層32によって調整することができる。ガスバリアフィルム7の少なくとも一部において、二軸配向ポリエステルフィルム8、被覆層32、無機薄膜層31が、ガスバリアフィルム7の厚み方向でこの順に並んでいることができる。被覆層32は、二軸配向ポリエステルフィルム8と無機薄膜層31とを接続することができる。
【0046】
図3に示すように、ガスバリアフィルム7は、無機薄膜層31上に設けられた保護層33をさらに含んでいてもよい。すなわち、ガスバリアフィルム7は、無機薄膜層31に隣接する保護層33をさらに含んでいてもよい。たとえば、ガスバリアフィルム7は、二軸配向ポリエステルフィルム8と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33とを含んでいてもよい。ガスバリアフィルム7の少なくとも一部において、二軸配向ポリエステルフィルム8、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33が、ガスバリアフィルム7の厚み方向でこの順に並んでいることができる。保護層33によって、酸素ガスや水蒸気の透過を、いっそう抑制または低減できる。
【0047】
なお、ガスバリアフィルム7は、必要に応じて、印刷などが施されていてもよい。
【0048】
<2.1.二軸配向ポリエステルフィルム>
二軸配向ポリエステルフィルム8はケミカルリサイクルポリエステルを含む。このため、環境負荷を軽減することができる。
【0049】
ケミカルリサイクルポリエステルは、使用済みポリエステル製品に含まれるポリエステルをモノマーレベルまで分解したうえで、再度重合して得られるポリエステルである。ケミカルリサイクルポリエステルは、使用済みポリエステル製品に含まれるポリエステルを原料として製造されるため、環境負荷を軽減できる。しかも、ケミカルリサイクルポリエステルは、リサイクルの過程で異物(たとえば触媒、着色成分、異種プラスチック、金属)が除去されるため、メカニカルリサイクルポリエステルに比べて衛生面に優れる。
【0050】
モノマーレベルまで分解されるポリエステルとして、使用済みポリエステル製品を挙げることができる。使用済みポリエステル製品は、たとえば、ベール状であってもよく、フレーク状であってもよく、ペレット状であってもい。使用済みポリエステル製品としては使用済みペットボトルが好ましい。
【0051】
ポリエステルをモノマーレベルまで分解する方法として、たとえば、ペットボトルベールを粉砕、洗浄したうえで、これ(すなわちフレーク)に、少なくともエチレングリコール(EG)および触媒を加えて加熱し、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)まで分解する方法(以下、「BHET法」と言うことがある。)を挙げることができる(特許文献3、すなわち特開2000-169623号公報参照)。ポリエステルをモノマーレベルまで分解する他の方法として、たとえば、特許文献4(特開2000-302707号公報)に記載された方法を挙げることができる。もちろん、ここに例示した方法以外で、ポリエステルをモノマーレベルまで分解してもよい。
【0052】
BHET法について、使用済みペットボトルを構成するポリエチレンテレフタレートを分解して、BHETを得るまでの手順の一例をここで説明する。
ペットボトルベールを粉砕機に投入し、湿式粉砕する。湿式粉砕では、洗浄水(たとえば、必要に応じて洗剤が添加された水道水や地下水)中のペットボトルベールを粉砕することができる。なお、洗浄水は常温であってもよく、温められていてもよい。
ペットボトルのフレークとともに洗浄水を粉砕機から排出し、比重分離おこなって、異物(たとえば、金属、石、ガラス、砂)を除去する。
次いで、フレークをイオン交換水ですすぎ、必要に応じて遠心脱水をおこなう。
フレークを溶融させたうえで、触媒や、過剰のエチレングリコールを加え、加熱する(つまり解重合をおこなう)。これによって、フレークを構成するポリエチレンテレフタレートを解重合することができ、その結果、エチレングリコールにBHETが溶解した解重合液を得ることができる。なお、フレークは、水分を含む状態(たとえば、遠心脱水後の水分を含む状態)で溶融させることが好ましい。
解重合液に浮遊したり沈殿する異物(たとえば異種プラスチック、金属、ガラス)を除去する。なお、解重合液中の環状オリゴマーの融点はポリエチレンテレフタレートよりも高いため、ろ過によって環状オリゴマーのような低分子量成分を除去することもできる。
解重合液を活性炭に通し(すなわち通液し)、さらにイオン交換樹脂に通す。解重合液を活性炭に通すことによって、着色成分(たとえば、顔料、染料、有機物が熱劣化することによって生成した化合物)を除去することができる。解重合液をイオン交換樹脂に通すことによって、触媒(たとえば、重合触媒、解重合触媒)や、金属イオンを除去することができる。
次いで、解重合液を冷却し、BHETを析出させたうえで、BHETとエチレングリコールとを固液分離する。
BHETに残存するエチレングリコールを除去するために(つまりBHETを濃縮するために)、真空蒸発をおこなう。
濃縮されたBHETについて分子蒸留をおこなう。
このような手順で、高純度のBHETを得ることができる。なお、ここでは、BHETとエチレングリコールとを固液分離したうえで真空蒸発をおこなう、という操作を説明したものの、この操作に代えて、解重合液からエチレングリコールを留出してもよい。
【0053】
ケミカルリサイクルポリエステルとして、たとえば、ケミカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(以下、「ケミカルリサイクルPET」と言うことがある。)、ケミカルリサイクルポリブチレンテレフタレート、ケミカルリサイクルポリエチレン-2,6-ナフタレートを挙げることができる。もちろん、これらは、共重合成分を含んでいてもよい。
入手が容易であり、しかも、機械的性質や耐熱性に優れるといった理由でケミカルリサイクルPETが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0054】
ケミカルリサイクルポリエステルは、他の成分が共重合されていてもよい。共重合成分としてのジカルボン酸成分として、たとえば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、それらのエステル形成性誘導体を挙げることができる。いっぽう、共重合成分としてのジオール成分として、たとえば、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。同様に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールを挙げることもできる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。なお、ペットボトルを構成するPETは、ボトルへの成形性を向上するために、一般的にイソフタル酸が共重合されていることを踏まえると、ケミカルリサイクルPETは、共重合成分として少なくともイソフタル酸成分を含むことが好ましい。
【0055】
ケミカルリサイクルポリエステル中の全ジカルボン酸成分のモル数を100モル%としたとき、共重合成分のモル数は、10モル%以下が好ましく、8モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、3モル%以下がさらに好ましい。共重合成分のモル数は、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましい。なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適な共重合成分モル数を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0056】
ケミカルリサイクルポリエステルがケミカルリサイクルPETである場合、ケミカルリサイクルPET中の全ジカルボン酸成分のモル数を100モル%としたとき、イソフタル酸成分のモル数は、10モル%以下が好ましく、8モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、3モル%以下がさらに好ましい。イソフタル酸成分のモル数は、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましい。なお、ケミカルリサイクルPETは、このような好適なイソフタル酸成分モル数を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0057】
ケミカルリサイクルポリエステルの固有粘度は、0.50dl/g以上が好ましく、0.55dl/g以上がより好ましく、0.57dl/g以上がさらに好ましい。0.50dl/g以上であると、ケミカルリサイクルポリエステル中の低分子量成分の量をある程度以下に制限することができるため、二軸配向ポリエステルフィルム8が呈し得る黄色味をいっそう低減することができる。いっぽう、ケミカルリサイクルポリエステルの固有粘度は、0.90dl/g以下が好ましく、0.85dl/g以下がより好ましく、0.80dl/g以下がさらに好ましく、0.75dl/g以下がさらに好ましく、0.69dl/g以下がさらに好ましい。0.90dl/g以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の固有粘度をある程度以下に制限することができるため、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断を、いっそう抑制または低減することができる。なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適な固有粘度を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0058】
ケミカルリサイクルポリエステルのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合は、全ピーク面積の3.5%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、2.5%以下であってもよく、2.2%以下であってもよく、2.0%以下であってもよい。いっぽう、この面積割合は、0.8%以上であってもよく、1.0%以上であってもよく、1.2%以上であってもよい。
【0059】
ケミカルリサイクルポリエステルにおける285℃の溶融比抵抗は、たとえば30.0×10Ω・cm以下であってもよく、25.0×10Ω・cm以下であってもよく、20.0×10Ω・cm以下であってもよく、15.0×10Ω・cm以下であってもよい。ケミカルリサイクルポリエステルにおける285℃の溶融比抵抗は、たとえば0.5×10Ω・cm以上であってもよく、1.5×10Ω・cm以上であってもよく、3.0×10Ω・cm以上であってもよく、5.0×10Ω・cm以上であってもよい。なお、ケミカルリサイクルポリエステルの溶融比抵抗は、後述する化石燃料由来ポリエステルやメカニカルリサイクルポリエステルに比べて高いことが好ましい。なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適な溶融比抵抗を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0060】
ケミカルリサイクルポリエステルは、アルカリ土類金属化合物を含んでいてもよいものの、実質的に含まないことが好ましい。ケミカルリサイクルポリエステルは、リサイクルの過程で触媒や金属イオンが除去されるので、アルカリ土類金属化合物以外の触媒(たとえば、ゲルマニウム系触媒やアンチモン系触媒)で重合されることで、アルカリ土類金属化合物をまったく、またはほとんど含まないことができる。
【0061】
ケミカルリサイクルポリエステル中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で(すなわちアルカリ土類金属原子換算で)、たとえば30ppm未満であってもよく、20ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよく、3ppm以下であってもよく、0ppmであってもよい。
ここで、アルカリ土類金属化合物の含有量は、ケミカルリサイクルポリエステルの質量に対する、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量(つまり、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量/ケミカルリサイクルポリエステルの質量)である。
なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適なアルカリ土類金属化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0062】
ケミカルリサイクルポリエステル中のマグネシウム化合物の含有量は、マグネシウム原子基準で(すなわちマグネシウム原子換算で)、たとえば30ppm未満であってもよく、20ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよく、3ppm以下であってもよく、0ppmであってもよい。なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適なマグネシウム化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0063】
ケミカルリサイクルポリエステル中のリン化合物の含有量は、リン原子基準で(すなわちリン原子換算で)、10ppm以上であってもよく、15ppm以上であってもよく、20ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよい。いっぽう、リン化合物の含有量は、リン原子基準で、300ppm以下であってもよく、200ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよい。
ここで、リン化合物の含有量は、ケミカルリサイクルポリエステルの質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量(つまり、リン原子基準でのリン化合物の質量/ケミカルリサイクルポリエステルの質量)である。
なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、このような好適なリン化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0064】
ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。10質量%以上であると、環境負荷をいっそう軽減することができる。いっぽう、ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、化石燃料由来ポリエステル、すなわちバージンポリエステルを含むことが好ましい。化石燃料由来ポリエステルは、化石燃料由来のジオール化合物と、化石燃料由来のジカルボン酸化合物とを縮合重合して得られるポリエステルである。化石燃料由来ポリエステルは、一般にケミカルリサイクルポリエステルに比べて選択の幅が広いところ、化石燃料由来ポリエステルを使用することによって、二軸配向ポリエステルフィルム8の物性を調整可能な幅を広げることができる。
【0066】
化石燃料由来ポリエステルとして、たとえば、化石燃料由来ポリエチレンテレフタレート(以下、「化石燃料由来PET」と言うことがある。)、化石燃料由来ポリブチレンテレフタレート、化石燃料由来ポリエチレン-2,6-ナフタレートを挙げることができる。もちろん、これらは、共重合成分を含んでいてもよい。コストを抑制でき、しかも、機械的性質や耐熱性に優れるといった理由で化石燃料由来PETが好ましく、化石燃料由来ホモPETがより好ましい。なお、ホモPETは、不可避的に含有されるジエチレングリコール成分を含んでいてもよい。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0067】
化石燃料由来ポリエステルの固有粘度は、0.50dl/g以上が好ましく、0.55dl/g以上がより好ましく、0.57dl/g以上がさらに好ましい。0.50dl/g以上であると、化石燃料由来ポリエステル中の低分子量成分の量をある程度以下に制限することができるため、二軸配向ポリエステルフィルム8が呈し得る黄色味をいっそう低減することができる。いっぽう、化石燃料由来ポリエステルの固有粘度は、0.75dl/g以下が好ましく、0.70dl/g以下がより好ましく、0.68dl/g以下がさらに好ましく、0.66dl/g以下がさらに好ましく、0.65dl/g以下がさらに好ましい。0.75dl/g以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断を、いっそう抑制または低減することができる。なお、化石燃料由来ポリエステルは、このような好適な固有粘度を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0068】
石燃料由来ポリエステルのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合は、全ピーク面積の3.5%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、2.8%以下であってもよい。いっぽう、この面積割合は、1.0%以上であってもよく、1.5%以上であってもよく、1.8%以上であってもよく、2.0%以上であってもよい。
【0069】
化石燃料由来ポリエステルにおける285℃の溶融比抵抗は、たとえば2.0×10Ω・cm以下であってもよく、1.5×10Ω・cm以下であってもよく、1.0×10Ω・cm以下であってもよく、0.5×10Ω・cm以下であってもよく、0.4×10Ω・cm以下であってもよい。化石燃料由来ポリエステルにおける285℃の溶融比抵抗は、たとえば0.05×10Ω・cm以上であってもよく、0.1×10Ω・cm以上であってもよい。なお、化石燃料由来ポリエステルは、このような好適な溶融比抵抗を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0070】
化石燃料由来ポリエステルは、アルカリ土類金属化合物を含むことが好ましい。なお、アルカリ土類金属化合物は、たとえば、化石燃料由来ポリエステルを製造するための重合触媒として化石燃料由来ポリエステルに添加されていてもよく、二軸配向ポリエステルフィルム8の溶融比抵抗を下げるために添加されていてもよい。
【0071】
化石燃料由来ポリエステル中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で(すなわちアルカリ土類金属原子換算で)、たとえば30ppm以上が好ましく、35ppm以上が好ましく、40ppm以上が好ましく、45ppm以上が好ましい。
ここで、アルカリ土類金属化合物の含有量は、化石燃料由来ポリエステルの質量に対する、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量(つまり、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量/化石燃料由来ポリエステルの質量)である。
なお、化石燃料由来ポリエステルは、このような好適なアルカリ土類金属化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0072】
化石燃料由来ポリエステル中のマグネシウム化合物の含有量は、マグネシウム原子基準で(すなわちマグネシウム原子換算で)、たとえば30ppm以上が好ましく、35ppm以上が好ましく、40ppm以上が好ましく、45ppm以上が好ましい。なお、化石燃料由来ポリエステルは、このような好適なマグネシウム化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0073】
化石燃料由来ポリエステル中のリン化合物の含有量は、リン原子基準で(すなわちリン原子換算で)、10ppm以上であってもよく、15ppm以上であってもよく、20ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよい。いっぽう、リン化合物の含有量は、リン原子基準で、300ppm以下であってもよく、200ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよい。
ここで、リン化合物の含有量は、化石燃料由来ポリエステルの質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量(つまり、リン原子基準でのリン化合物の質量/化石燃料由来ポリエステルの質量)である。
なお、化石燃料由来ポリエステルは、このような好適なリン化合物含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0074】
化石燃料由来ポリエステルの含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。5質量%以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の物性を調整可能な幅をいっそう広げることができる。いっぽう、化石燃料由来ポリエステルの含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0075】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、メカニカルリサイクルポリエステルを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。メカニカルリサイクルポリエステルは、使用済みポリエステル製品に含まれるポリエステルをモノマーレベルまで分解する操作を経ずに、使用済みポリエステル製品から得られるポリエステルである。メカニカルリサイクルポリエステルは、たとえば、使用済みポリエステル製品を粉砕、洗浄し、必要に応じてフレーク状またはペレット状に再生することによって得られる。
【0076】
メカニカルリサイクルポリエステルのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合は、全ピーク面積の4.5%以下であってもよく、4.0%以下であってもよい。いっぽう、この面積割合は、2.5%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、3.2%以上であってもよい。
【0077】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、メカニカルリサイクルポリエステルを実質的に含まないことが好ましい。メカニカルリサイクルポリエステルの含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。二軸配向ポリエステルフィルム8は、メカニカルリサイクルポリエステルをまったく含まないことが好ましい。
【0078】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、バイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0079】
二軸配向ポリエステルフィルム8を100質量%としたとき、ポリエステルの含有量(すなわち、ケミカルリサイクルポリエステルを含むポリエステルの含有量)は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0080】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、ポリエステル(たとえばケミカルリサイクルポリエステル、化石燃料由来ポリエステル)以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0081】
二軸配向ポリエステルフィルム8は粒子をさらに含むことが好ましい。ここで、「二軸配向ポリエステルフィルム8が粒子を含む」とは、二軸配向ポリエステルフィルム8が複数の層を含む場合には、複数の層のうち、少なくとも一つの層が、粒子を含むことを意味する。
【0082】
粒子として、たとえば、無機粒子、有機粒子を挙げることができる。無機粒子として、たとえば、シリカ(酸化珪素)粒子、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子、二酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子、カオリン粒子、結晶性のガラスフィラー、カオリン粒子、タルク粒子、シリカ-アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム粒子を挙げることができる。なかでも、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子が好ましく、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子がより好ましい。ヘイズを低減できるという理由でシリカ粒子が特に好ましい。いっぽう、有機粒子として、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子を挙げることができる。なかでもアクリル系樹脂粒子が好ましい。アクリル系樹脂粒子として、たとえば、ポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、またはそれらの誘導体からなる粒子を挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0083】
粒子の重量平均粒径は、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。0.5μm以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の表面に凹凸を形成することができる。したがって、二軸配向ポリエステルフィルム8に滑り性を付与することができる。これに加えて、二軸配向ポリエステルフィルム8をロール状に巻取る際に巻込まれ得る空気が抜けやすくなり、シワや気泡といった外観不良の発生を低減できる。いっぽう、粒子の重量平均粒径は、4.0μm以下が好ましく、3.8μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましい。4.0μm以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に粗大突起が生じることを防止できる。
【0084】
二軸配向ポリエステルフィルム8における粒子の含有量は、100ppm以上が好ましい。100ppm以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に滑り性をいっそう付与できるとともに、外観不良の発生をいっそう低減できる。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8における粒子の含有量は、1000ppm以下が好ましく、800ppm以下がより好ましい。1000ppm以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8表面の算術平均高さSaや最大突起高さSpが過度に高くなることを防止できる。これに加えて、二軸配向ポリエステルフィルム8中に生じ得るボイドを低減することができるため、ボイドによる透明性の悪化を抑制できる。
ここで、粒子の含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8の質量に対する、粒子の質量(つまり、粒子の質量/二軸配向ポリエステルフィルム8の質量)である。
【0085】
二軸配向ポリエステルフィルム8は、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料といった添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0086】
二軸配向ポリエステルフィルム8のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合は、全ピーク面積の5.5%以下である。5.5%以下であることによって、すなわち、分子量1,000以下の成分(すなわち低分子量成分)の含有量の上限が設けられることによって、二軸配向ポリエステルフィルム8が呈し得る黄色味を低減することができる。この面積割合が5.5%以下であることによって、ガスバリアフィルム7のガスバリア性を高めることもできる。具体的には、酸素ガスや水蒸気の透過を抑制または低減できる。これは、低分子量成分が原因となり得る無機薄膜層31での欠点の発生を、低減または抑制できるためである、と考えられる。
この面積割合が5.5%以下であることによって、ガスバリアフィルム7にシーラント層を形成した場合、ガスバリアフィルム7とシーラント層とのはく離強度を向上することもできる。これは、塑性成分として作用し得る低分子量成分によるはく離強度の低下を抑制できるためである、と考えられる。
【0087】
この面積割合は、5.4%以下であってもよく、5.3%以下であってもよく、5.2%以下であってもよく、5.1%以下であってもよく、5.0%以下であってもよい。
【0088】
これに加えて、分子量1000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.9%以上である。
1.9%以上であることによって、すなわち、低分子量成分の含有量の下限が設けられることによって、可塑剤のように働くことが可能な低分子量成分の含有量を確保することができる。
1.9%以上であることによって、二軸配向ポリエステルフィルム8に含まれるポリエステルの分子量をある程度以下に制限することもできる。これについて説明する。低分子量成分は、重合過程でポリエステルに取り込まれるため、ポリエステルの分子量が大きいほど低分子量成分が少なく、ポリエステルの分子量が小さいほど低分子量成分が多くなる傾向がある。本実施形態によれば、分子量1000以下の領域の面積割合が1.9%以上であるため、つまり、低分子量成分がある程度以上存在するため、二軸配向ポリエステルフィルム8に含まれるポリエステルの分子量をある程度以下に制限することができる。
したがって、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることを防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することができる。
この面積割合は、2.0%以上であってもよく、2.2%以上であってもよく、2.4%以上であってもよく、2.6%以上であってもよく、2.8%以上であってもよく、3.0%以上であってもよい。
【0089】
二軸配向ポリエステルフィルム8の厚み1μm当たりのカラーb値は0.067以下が好ましく、0.060以下がより好ましく、0.050以下がさらに好ましい。0.067以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8が呈し得る黄色味を制限することができる。したがって、たとえば、二軸配向ポリエステルフィルム8に印刷層を形成した場合、二軸配向ポリエステルフィルム8の色合いが、印刷層の見た目(つまり外観)に与える影響を低減することができる。また、たとえば、ガスバリアフィルム7を用いて包装容器を作製した場合には、二軸配向ポリエステルフィルム8の色合いが、内容品の見た目に与える影響を低減することができる。
【0090】
二軸配向ポリエステルフィルム8の固有粘度は0.50dl/g以上が好ましく、0.51dl/g以上がより好ましい。0.50dl/g以上であると、機械的性質、具体的には引張強さや突刺し強さを向上することができる。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8の固有粘度は0.70dl/g以下が好ましく、0.65dl/g以下がより好ましい。0.70dl/g以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断をいっそう抑制または低減することができる。
【0091】
二軸配向ポリエステルフィルム8の少なくとも一方の面の表面結晶化度は1.10以上が好ましく、1.15以上がより好ましく、1.20以上がさらに好ましく、1.25以上がさらに好ましい。
結晶化速度は、ポリエステルの分子量が小さいほど速くなるため、二軸配向ポリエステルフィルム8の表面結晶化度は、二軸配向ポリエステルフィルム8に含まれるポリエステルの分子量が低いほど高くなる。
表面結晶化度が1.10以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に含まれるポリエステルの分子量をある程度以下にいっそう制限できるだけでなく、可塑剤のように働くことが可能な低分子量成分の量をある程度以上にいっそう制限することができる。したがって、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断を、いっそう抑制または低減することができる。
【0092】
同じように、二軸配向ポリエステルフィルム8の両面の表面結晶化度が、1.10以上が好ましく、1.15以上がより好ましく、1.20以上がさらに好ましく、1.25以上がさらに好ましい。
【0093】
二軸配向ポリエステルフィルム8の少なくとも一方の面の表面結晶化度は1.35以下が好ましく、1.34以下がより好ましく、1.33以下がさらに好ましく、1.32以下がさらに好ましく、1.31以下がさらに好ましく、1.30以下がさらに好ましく、1.29以下がさらに好ましく、1.28以下がさらに好ましい。1.35以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8が過度に脆くなる(つまり靭性が過度に悪くなる)ことを防止できるため、機械的性質、具体的には引張強さや突刺し強さを向上することができる。
【0094】
同じように、二軸配向ポリエステルフィルム8の両面の表面結晶化度が、1.35以下が好ましく、1.34以下がより好ましく、1.33以下がさらに好ましく、1.32以下がさらに好ましく、1.31以下がさらに好ましく、1.30以下がさらに好ましく、1.29以下がさらに好ましく、1.28以下がさらに好ましい。
【0095】
なお、表面結晶化度は、ATR-IRにより求められる。すなわち、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて全反射減衰法でスペクトルを得ることにより求められる。表面結晶化度は、1340cm-1付近に現れる吸収と、1410cm-1付近に現れる吸収との強度比、具体的には、1340cm-1の強度/1410cm-1の強度である。1340cm-1付近に現れる吸収は、エチレングリコールのCH(トランス構造)の変角振動による吸収である。いっぽう、1410cm-1付近に現れる吸収は、結晶とも配向とも無関係の吸収である。
ATR-IR測定は、以下の条件でおこなわれる。
FT-IR:Bio Rad DIGILAB社製 FTS-60A/896
1回反射ATRアタッチメント:golden gate MKII(SPECAC製)
内部反射エレメント:ダイヤモンド
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
【0096】
二軸配向ポリエステルフィルム8の融点が高いほど、二軸配向ポリエステルフィルム8は耐熱性に優れる。これを踏まえると、二軸配向ポリエステルフィルム8の融点は、251℃以上が好ましく、252℃以上がより好ましい。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8の融点は、270℃以下が好ましく、268℃以下がより好ましい。270℃以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8を形成するための原料ポリエステル(たとえばケミカルリサイクルポリエステル)を溶融押出しする際に、粘度が過度に高くなることを防止でき、その結果、高速製膜が可能となる。
【0097】
二軸配向ポリエステルフィルム8における285℃の溶融比抵抗は1.0×10Ω・cm以下が好ましく、0.5×10Ω・cm以下がより好ましく、0.25×10Ω・cm以下がさらに好ましい。1.0×10Ω・cm以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程において溶融押出しされたフィルム状のポリエステル組成物を冷却ドラムに静電密着キャスト法で密着させる際に、ポリエステル組成物の表面に静電気を効果的に帯電させることが可能であるため、ポリエステル組成物を冷却ドラムに良好に密着させることができる。したがって、製膜速度を過度に落とさずに、ピンナーバブル(すなわち、ポリエステル組成物と冷却ドラムとの間にエアーが入り込むことによって生じるスジ状の欠陥)が生じることを抑制できる。なお、製膜速度は、二軸配向ポリエステルフィルム8をマスターロールに巻き取る際の、二軸配向ポリエステルフィルム8の走行速度(m/分)である。製膜速度は、キャスト速度にMD延伸倍率をかけることで算出することができる。いっぽう、溶融比抵抗は、たとえば、0.01×10Ω・cm以上であってもよく、0.03×10Ω・cm以上であってもよく、0.05×10Ω・cm以上であってもよい。0.01×10Ω・cm以上であると、異物(たとえば、溶融比抵抗を低下させることができるアルカリ土類金属化合物に起因する異物)の生成を抑制または低減することができる。
【0098】
二軸配向ポリエステルフィルム8の溶融比抵抗は、二軸配向ポリエステルフィルム8中のアルカリ土類金属化合物の含有量や、リン化合物の含有量によって調製することができる。たとえば、アルカリ土類金属化合物を構成するアルカリ土類金属原子(以下、「M2」と言うことがある。)は、溶融比抵抗を下げる作用を有するため、アルカリ土類金属化合物の含有量を高めるほど、溶融比抵抗を下げることができる。いっぽう、リン化合物自体は、二軸配向ポリエステルフィルム8の溶融比抵抗を下げる作用を有さないと考えられるものの、アルカリ土類金属化合物の存在下で、溶融比抵抗の低下に寄与する。その理由は明らかではないものの、リン化合物を含有させることにより、異物の生成を抑制し、電荷担体の量を増大させることができるためであると考えられる。
【0099】
アルカリ土類金属化合物として、たとえば、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族ジカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族次カルボン酸塩、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などを挙げることができる。アルカリ土類金属として、たとえば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを挙げることができる。なかでもマグネシウムが好ましい。より具体的には、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなどを挙げることができる。なかでも、酢酸マグネシウムが好ましい。アルカリ土類金属化合物は、単独でまたは2種以上組合せて使用できる。なお、アルカリ土類金属の定義として、マグネシウムをアルカリ土類金属に含めない定義が世の中にはあるものの、本明細書では、アルカリ土類金属は、マグネシウムを含む用語として使用している。言い換えれば、本明細書では、アルカリ土類金属は、周期表IIa族の元素を指している。
【0100】
なお、ケミカルリサイクルポリエステルは、リサイクルの過程で触媒や金属イオンが除去されるため、アルカリ土類金属化合物を、まったく、または実質的に含まないため、ケミカルリサイクルポリエステルと、他のポリエステル(たとえば、化石燃料由来ポリエステルや、これにアルカリ土類金属化合物を添加したマスターバッチ)とを併用することで、アルカリ土類金属化合物の含有量を調整することができる。
【0101】
二軸配向ポリエステルフィルム8中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で(すなわちアルカリ土類金属原子換算で)、20ppm以上が好ましく、22ppm以上がより好ましく、24ppm以上がさらに好ましい。いっぽう、アルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で、400ppm以下が好ましく、350ppm以下がより好ましく、300ppm以下さらに好ましい。400ppm以下であると、アルカリ土類金属化合物に起因する異物の生成や着色を抑えることができる。
ここで、アルカリ土類金属化合物の含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8の質量に対する、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量(つまり、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量/二軸配向ポリエステルフィルム8の質量)である。
【0102】
二軸配向ポリエステルフィルム8中のマグネシウム化合物の含有量は、マグネシウム原子基準で(すなわちマグネシウム原子換算で)、20ppm以上が好ましく、22ppm以上がより好ましく、24ppm以上がさらに好ましい。いっぽう、マグネシウム化合物の含有量は、マグネシウム原子基準で、400ppm以下が好ましく、350ppm以下がより好ましく、300ppm以下さらに好ましい。
【0103】
リン化合物として、たとえば、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、およびそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、およびそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)を挙げることができる。好ましいリン化合物として、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルなど;たとえば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステルなどのリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステルなどのリン酸トリC1-6アルキルエステルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、またはトリC6-9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;たとえば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸のモノ、ジ、またはトリC1-6アルキルエステルなど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などのC1-6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1-6アルキルホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC6-9アリールエステルなど)を挙げることができる。特に好ましいリン化合物として、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)を挙げることができる。これらリン化合物は単独で、または2種以上組合せて使用できる。
【0104】
二軸配向ポリエステルフィルム8中のリン化合物の含有量は、リン原子基準で(すなわちリン原子換算で)、10ppm以上が好ましく、11ppm以上がより好ましく、12ppm以上がさらに好ましい。10ppm以上であると、溶融比抵抗を効果的に下げることができる。また、異物の生成を抑制することができる。リン化合物の含有量は、リン原子換算で、20ppm以上であってもよく、40ppm以上であってもよく、50ppm以上であってもよい。いっぽう、リン化合物の含有量は、リン原子基準で、600ppm以下が好ましく、550ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。600ppm以下であると、ジエチレングリコールが生成を低減することができる。リン化合物の含有量は、リン原子換算で、400ppm以下であってもよく、200ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよい。
ここで、リン化合物の含有量は、二軸配向ポリエステルフィルム8の質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量(つまり、リン原子基準でのリン化合物の質量/二軸配向ポリエステルフィルム8の質量)である。
【0105】
二軸配向ポリエステルフィルム8において、アルカリ土類金属原子(すなわちM2)とリン原子(P)との質量比、すなわち、M2質量のP質量に対する比(M2質量/P質量)は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.4以上がさらに好ましい。1.0以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の溶融比抵抗を効果的に低減することができる。いっぽう、この質量比は、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。5.0以下であると、異物の生成や着色を抑えることができる。
【0106】
二軸配向ポリエステルフィルム8中の全ジカルボン酸成分のモル数を100モル%としたとき、イソフタル酸成分のモル数は、0.01モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ましく、0.10モル%以上がさらに好ましく、0.15モル%以上がさらに好ましく、0.20モル%以上がさらに好ましく、0.40モル%以上がさらに好ましい。0.01モル%以上であると、ガスバリアフィルム7のラミネート強度を向上することができる。いっぽう、イソフタル酸成分のモル数は、3.0モル%以下が好ましく、2.5モル%以下がより好ましく、2.2モル%以下がさらに好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましい。3.0モル%以下であると、結晶性が過度に低下することを防止できるため、機械的性質が過度に低下することを防止できる。また、二軸配向ポリエステルフィルム8の厚みムラを小さくすることができ、二軸配向ポリエステルフィルム8の熱収縮率を制限することもできる。
【0107】
二軸配向ポリエステルフィルム8の少なくとも一方向の引張強さは180MPa以上が好ましく、185MPa以上がより好ましく、190MPa以上がさらに好ましい。180MPa以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8を用いて、優れた強度を有する製品(たとえば包装容器)を作製することができる。
【0108】
同様に、二軸配向ポリエステルフィルム8のMD(すなわち0°方向)、45°方向、TD(すなわち90°方向)、および135°方向の引張強さは180MPa以上が好ましく、185MPa以上がより好ましく、190MPa以上がさらに好ましい。
【0109】
二軸配向ポリエステルフィルム8の少なくとも一方向の引張強さは350MPa以下が好ましく、340MPa以下がより好ましく、330MPa以下がさらに好ましい。350MPa以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断をいっそう抑制または低減することができる。引張強さは320MPa以下であってもよい。
【0110】
同様に、二軸配向ポリエステルフィルム8のMD(すなわち0°方向)、45°方向、TD(すなわち90°方向)、および135°方向の引張強さは350MPa以下が好ましく、340MPa以下がより好ましく、330MPa以下がさらに好ましい。引張強さは320MPa以下であってもよい。
【0111】
二軸配向ポリエステルフィルム8の突刺し強さは、0.50N/μm以上が好ましく、0.52N/μm以上がより好ましく、0.55N/μm以上がさらに好ましい。0.50N/μm以上であると、ガスバリアフィルム7を用いて、優れた強度を有する製品(たとえば包装容器)を作製することができる。たとえば、ガスバリアフィルム7を用いて穴が開きにくい包装容器を作製することができる。
【0112】
二軸配向ポリエステルフィルム8の長手方向、すなわちMDの熱収縮率は2.0%以下が好ましく、1.8%以下がより好ましい。2.0%以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に、蒸着加工や印刷加工などの二次加工を施す際に、熱による変形やシワの発生頻度を低減できる。MDの熱収縮率は、たとえば0.5%以上であってもよく、0.8%以上であってもよい。
【0113】
二軸配向ポリエステルフィルム8の幅方向、すなわちTDの熱収縮率は-1.0%以上1.0%以下が好ましく、-0.8%以上0.8%以下がより好ましい。-1.0%以上1.0%以下であると、蒸着加工や印刷加工などの二次加工を施す際に、熱による変形やシワの発生頻度を低減できる。
【0114】
二軸配向ポリエステルフィルム8の厚みは5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましい。5μm以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の剛性に優れているため、二軸配向ポリエステルフィルム8を巻き取る際のシワの発生頻度を低減できる。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8の厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。厚みが薄いほど、コストを抑えることができる。
【0115】
図4に示すように、二軸配向ポリエステルフィルム8は、第一層81(以下、「表層81」とも言う。)、第二層82(以下、「中心層82」とも言う。)、および第三層83(以下、「表層83」とも言う。)を含むことが好ましい。第一層81、第二層82、第三層83は、二軸配向ポリエステルフィルム8の厚み方向でこの順に並んでいる。なお、第一層81および第二層82の間や、第二層82および第三層83の間に、他の層が存在してもよい。
【0116】
第一層81、すなわち表層81は、ケミカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。第一層81が、ケミカルリサイクルポリエステルを含むと、環境負荷をいっそう軽減できる。
【0117】
第一層81におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8のケミカルリサイクルポリエステルの説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明は、第一層81におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明としても扱うことができる。
【0118】
ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、第一層81を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。10質量%以上であると、環境負荷をいっそう軽減することができる。いっぽう、ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、第一層81を100質量%としたとき、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0119】
第一層81は、化石燃料由来ポリエステルを含むことが好ましい。第一層81における化石燃料由来ポリエステルの説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8の化石燃料由来ポリエステルの説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8における化石燃料由来ポリエステルの説明は、第一層81における化石燃料由来ポリエステルの説明としても扱うことができる。
【0120】
化石燃料由来ポリエステルの含有量は、第一層81を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。5質量%以上であると、第一層81の物性を調整可能な幅をある程度確保できる。いっぽう、化石燃料由来ポリエステルの含有量は、第一層81を100質量%としたとき、100質量%以下とすることができる。化石燃料由来ポリエステルの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0121】
第一層81は、他のポリエステル、たとえば、メカニカルリサイクルポリエステル、バイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0122】
第一層81を100質量%としたときポリエステルの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0123】
第一層81は、ポリエステル以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0124】
第一層81は粒子をさらに含むことが好ましい。第一層81が粒子を含むと、二軸配向ポリエステルフィルム8の表面に凹凸を形成することができる。したがって、二軸配向ポリエステルフィルム8に滑り性を付与することができる。これに加えて、二軸配向ポリエステルフィルム8をロール状に巻取る際に巻込まれ得る空気が抜けやすくなり、シワや気泡といった外観不良の発生を低減できる。
【0125】
第一層81における粒子の説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8の粒子の説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8における粒子の説明は、第一層81における粒子の説明としても扱うことができる。
【0126】
第一層81における粒子の含有量は、500ppm以上が好ましく、600ppm以上がより好ましく、700ppm以上がさらに好ましい。500ppm以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に滑り性をいっそう付与できるとともに、外観不良の発生をいっそう低減できる。いっぽう、第一層81における粒子の含有量は、3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよく、1500ppm以下であってもよい。
ここで、粒子の含有量は、第一層81の質量に対する、粒子の質量(つまり、粒子の質量/第一層81の質量)である。
【0127】
第一層81の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。第一層81の厚みは、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
【0128】
第三層83、すなわち表層83の説明は、第一層81の説明と重複するため省略する。よって、第一層81の説明は、第三層83の説明としても扱うことができる。たとえば、第一層81についてのケミカルリサイクルポリエステルや、化石燃料由来ポリエステル、粒子、厚みなどの説明は、第三層83の説明として扱うことができる。もちろん、第一層81と第三層83とは、組成や物性(たとえば厚み)などについて、互いに独立していることができる。よって、たとえば、第一層81と第三層83との組成が同じであってもよく、異なっていてもよい。両者の厚みが同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0129】
第二層82、すなわち中心層82は、ケミカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。第二層82が、ケミカルリサイクルポリエステルを含むと、環境負荷をいっそう軽減できる。
【0130】
第二層82におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8のケミカルリサイクルポリエステルの説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明は、第二層82におけるケミカルリサイクルポリエステルの説明としても扱うことができる。
【0131】
ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、第二層82を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。10質量%以上であると、環境負荷をいっそう軽減することができる。いっぽう、ケミカルリサイクルポリエステルの含有量は、第二層82を100質量%としたとき、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0132】
第二層82は、化石燃料由来ポリエステルを含むことが好ましい。第二層82における化石燃料由来ポリエステルの説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8の化石燃料由来ポリエステルの説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8における化石燃料由来ポリエステルの説明は、第二層82における化石燃料由来ポリエステルの説明としても扱うことができる。
【0133】
化石燃料由来ポリエステルの含有量は、第二層82を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。5質量%以上であると、第二層82の物性を調整可能な幅をある程度確保できる。いっぽう、化石燃料由来ポリエステルの含有量は、第一層81を100質量%としたとき、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0134】
第二層82は、他のポリエステル、たとえば、メカニカルリサイクルポリエステル、バイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0135】
第二層82を100質量%としたときポリエステルの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0136】
第二層82は、ポリエステル以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0137】
第二層82は粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第二層82における粒子の説明は、上述の説明(すなわち二軸配向ポリエステルフィルム8の粒子の説明)と重複するため省略する。よって、二軸配向ポリエステルフィルム8における粒子の説明は、第二層82における粒子の説明としても扱うことができる。なお、第二層82は粒子を含んでいないと、粒子の周囲に生じ得るボイドが発生しないため、におい成分が二軸配向ポリエステルフィルム8を抜けることを防止できる。これに加えて、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料や、他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となるため、コスト的にも優位である。
【0138】
第二層82における粒子の含有量は、3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよく、1500ppm以下であってもよく、1000ppm以下であってもよく、500ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよく、50ppm以下であってもよく、0ppm以下であってもよい。
ここで、粒子の含有量は、第二層82の質量に対する、粒子の質量(つまり、粒子の質量/第二層82の質量)である。
【0139】
第二層82の厚みは、第一層81の厚みや、第三層83の厚みより大きいことが好ましい。第二層82の厚みは5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましい。5μm以上であると、二軸配向ポリエステルフィルム8の剛性に優れているため、二軸配向ポリエステルフィルム8を巻き取る際のシワの発生頻度を低減できる。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8の厚みは40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。厚みが薄いほど、コストを抑えることができる。
【0140】
第一層81、第二層82、第三層83の組成パターンをいくつか補足的に説明する。
一つ目の組成パターン(以下、「組成パターンA」とも言う。)として、第一層81がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第二層82がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第三層83がケミカルリサイクルポリエステルを含む、というパターンを挙げることができる。組成パターンAによれば、不純物が少ないケミカルリサイクルポリエステルが、二軸配向ポリエステルフィルム8の両表層を構成するため、二軸配向ポリエステルフィルム8中の欠点を低減することができる。組成パターンAにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明は、上述の説明(すなわち第一層81や第二層82、第三層83の説明)と重複するため省略する。よって、上述の説明は、組成パターンAにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明としても扱うことができる。よって、第一層81が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよく、第二層82が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよく、第三層83がケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよい。
二つ目の組成パターン(以下、「組成パターンB」とも言う。)として、第一層81がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第二層82も第三層83もケミカルリサイクルポリエステルを含まない、というパターンを挙げることができる。組成パターンBによれば、不純物が少ないケミカルリサイクルポリエステルが、二軸配向ポリエステルフィルム8の表層を構成するため、二軸配向ポリエステルフィルム8中の欠点を低減することができる。組成パターンBにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明は、上述の説明(すなわち第一層81や第二層82、第三層83の説明)と重複するため省略する。よって、上述の説明は、組成パターンBにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明としても扱うことができる。よって、第一層81が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよい。
なお、組成パターンBにおいて、第二層82および/または第三層83がメカニカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。これによれば、リサイクル原料比率をいっそう高めることができる。つまり、環境負荷をいっそう軽減することができる。
三つ目の組成パターン(以下、「組成パターンC」とも言う。)として、第二層82がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第一層81も第三層83もケミカルリサイクルポリエステルを含まない、というパターンを挙げることができる。組成パターンCにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明は、上述の説明(すなわち第一層81や第二層82、第三層83の説明)と重複するため省略する。よって、上述の説明は、組成パターンCおける第一層81や第二層82、第三層83の説明としても扱うことができる。よって、第二層82が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよい。
なお、組成パターンCにおいて、第一層81および/または第三層83がメカニカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。これによれば、リサイクル原料比率をいっそう高めることができる。つまり、環境負荷をいっそう軽減することができる。
四つ目の組成パターン(以下、「組成パターンD」とも言う。)として、第一層81がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第二層82がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第三層83がケミカルリサイクルポリエステルを含まない、というパターンを挙げることができる。組成パターンDによれば、不純物が少ないケミカルリサイクルポリエステルが、二軸配向ポリエステルフィルム8の表層を構成するため、二軸配向ポリエステルフィルム8中の欠点を低減することができる。組成パターンDにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明は、上述の説明(すなわち第一層81や第二層82、第三層83の説明)と重複するため省略する。よって、上述の説明は、組成パターンDおける第一層81や第二層82、第三層83の説明としても扱うことができる。よって、第一層81が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよく、第二層82が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよい。
なお、組成パターンDにおいて、第三層83がメカニカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。これによれば、リサイクル原料比率をいっそう高めることができる。つまり、環境負荷をいっそう軽減することができる。
五つ目の組成パターン(以下、「組成パターンE」とも言う。)として、第一層81がケミカルリサイクルポリエステルを含み、第二層82がケミカルリサイクルポリエステル含まず、第三層83がケミカルリサイクルポリエステルを含む、というパターンを挙げることができる。組成パターンEによれば、不純物が少ないケミカルリサイクルポリエステルが、二軸配向ポリエステルフィルム8の両表層を構成するため、二軸配向ポリエステルフィルム8中の欠点を低減することができる。組成パターンEにおける第一層81や第二層82、第三層83の説明は、上述の説明(すなわち第一層81や第二層82、第三層83の説明)と重複するため省略する。よって、上述の説明は、組成パターンEおける第一層81や第二層82、第三層83の説明としても扱うことができる。よって、第一層81が、ケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよく、第三層83がケミカルリサイクルポリエステル以外のポリエステルを含んでいてもよい。
なお、組成パターンEにおいて、第二層82がメカニカルリサイクルポリエステルを含むことが好ましい。これによれば、リサイクル原料比率をいっそう高めることができる。つまり、環境負荷をいっそう軽減することができる。
【0141】
第一層81を形成するための原料を第一の押出機に供給するとともに、第二層82を形成するための原料を第二の押出機に、第三層83を形成するための原料を第三の押出機に供給し、次いで、これらを溶融させたうえで、第一、第二および第三の押出機からTダイに導き、Tダイ内でこれらを積層したうえで、Tダイから押出し、冷却ドラムで固化し、二軸延伸する、といった手順で二軸配向ポリエステルフィルム8を作製することができる。もちろん、これらの原料を、第一、第二および第三の押出機からフィードブロックに導き、フィードブロックでこれらを積層したうえでTダイから押出ししてもよい。なお、Tダイ法以外の方法、たとえばチューブラー法を採用してもよい。
【0142】
第一層81を形成するための原料として、たとえばケミカルリサイクルポリエステル、化石燃料由来ポリエステル、粒子含有マスターバッチ、アルカリ土類金属化合物・リン化合物含有マスターバッチ(以下、「MPマスターバッチ」と言うことがある)を挙げることができる。少なくともこれらを、第一層81を形成するための原料として用いることが好ましい。
【0143】
粒子含有マスターバッチは、ポリエステルおよび粒子(たとえばシリカ)を含むことができる。粒子含有マスターバッチは、第一層81を形成するための個々の原料のうち、もっとも高濃度で粒子(たとえばシリカ)を含むことができる。
【0144】
粒子含有マスターバッチのポリエステルは、ケミカルリサイクルポリエステルであってもよく、化石燃料由来ポリエステルであってもよく、メカニカルリサイクルポリエステルであってもよく、バイオマスポリエステルであってもよい。なかでも、ケミカルリサイクルポリエステル、化石燃料由来ポリエステルが好ましく、化石燃料由来ポリエステルがより好ましい。
【0145】
粒子含有マスターバッチにおける粒子の含有量は、5000ppm以上が好ましく、10000ppm以上がより好ましく、20000ppm以上がさらに好ましい。いっぽう、粒子含有マスターバッチにおける粒子の含有量は、1000000ppm以下であってもよく、200000ppm以下であってもよく、100000ppm以下であってもよい。
ここで、粒子の含有量は、粒子含有マスターバッチの質量に対する、粒子の質量(つまり、粒子の質量/粒子含有マスターバッチの質量)である。
【0146】
いっぽう、MPマスターバッチ(すなわち、アルカリ土類金属化合物・リン化合物含有マスターバッチ)は、ポリエステル、アルカリ土類金属化合物およびリン化合物を含むことができる。MPマスターバッチは、第一層81を形成するための個々の原料のうち、もっとも高濃度でアルカリ土類金属化合物を含み、しかも、もっとも高濃度でリン化合物を含む。
【0147】
MPマスターバッチのポリエステルは、ケミカルリサイクルポリエステルであってもよく、化石燃料由来ポリエステルであってもよく、メカニカルリサイクルポリエステルであってもよく、バイオマスポリエステルであってもよい。なかでも、ケミカルリサイクルポリエステル、化石燃料由来ポリエステルが好ましく、化石燃料由来ポリエステルがより好ましい。なお、MPマスターバッチは、たとえば、ポリエステルを重合する際に、アルカリ土類金属化合物およびリン化合物を、多めに添加することで作製することができる。
【0148】
MPマスターバッチ中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で(すなわちアルカリ土類金属原子換算で)、たとえば200ppm以上が好ましく、400ppm以上が好ましく、600ppm以上が好ましく、700ppm以上が好ましい。アルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子基準で、たとえば3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよく、1500ppm以下であってもよい。
ここで、アルカリ土類金属化合物の含有量は、MPマスターバッチの質量に対する、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量(つまり、アルカリ土類金属原子基準でのアルカリ土類金属化合物の質量/MPマスターバッチの質量)である。
【0149】
MPマスターバッチ中のマグネシウム化合物の含有量は、マグネシウム化合物原子基準で(すなわちマグネシウム化合物原子換算で)、たとえば200ppm以上が好ましく、400ppm以上が好ましく、600ppm以上が好ましく、700ppm以上が好ましい。アルカリ土類金属化合物の含有量は、マグネシウム化合物原子基準で、たとえば3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよく、1500ppm以下であってもよい。
【0150】
MPマスターバッチ中のリン化合物の含有量は、リン原子基準で(すなわちリン原子換算で)、たとえば150ppm以上が好ましく、300ppm以上がより好ましく、350ppm以上がさらに好ましく、400ppm以上がさらに好ましい。いっぽう、リン化合物の含有量は、リン原子基準で、1000ppm以下であってもよく、800ppm以下であってもよく、700ppm以下であってもよい。
ここで、リン化合物の含有量は、MPマスターバッチの質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量(つまり、リン原子基準でのリン化合物の質量/MPマスターバッチの質量)である。
【0151】
なお、MPマスターバッチに代えて、アルカリ土類金属化合物含有マスターバッチと、リン化合物含有マスターバッチとを使用してもよい。アルカリ土類金属化合物含有マスターバッチは、ポリエステルおよびアルカリ土類金属化合物を含むことができる。このマスターバッチは、第一層81を形成するための個々の原料のうち、もっとも高濃度でアルカリ土類金属化合物を含む。リン化合物含有マスターバッチは、ポリエステルおよびリン化合物を含むことができる。このマスターバッチは、第一層81を形成するための個々の原料のうち、もっとも高濃度でリン化合物を含む。
【0152】
第二層82を形成するための原料として、たとえばケミカルリサイクルポリエステル、化石燃料由来ポリエステル、アルカリ土類金属化合物・リン化合物含有マスターバッチ(すなわち、MPマスターバッチ)を挙げることができる。少なくともこれらを、第二層82を形成するための原料として用いることが好ましい。
【0153】
第二層82におけるMPマスターバッチの説明は、上述の説明(すなわち第一層81におけるMPマスターバッチの説明)と重複するため省略する。よって、第一層81におけるMPマスターバッチの説明は、第二層82におけるMPマスターバッチの説明としても扱うことができる。
【0154】
第三層83を形成するための原料の説明は、第一層81を形成するための原料の説明と重複するため省略する。よって、第一層81を形成するための原料の説明は、第三層83を形成するための原料の説明としても扱うことができる。もちろん、第一層81を形成するための原料と、第三層83を形成するための原料とは、互いに独立していることができる。よって、たとえば、これらの原料が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0155】
これらの原料(具体的には、第一層81や第二層82、第三層83を形成するための原料)は、押出機に供給する前に乾燥させることが好ましい。乾燥のために、たとえば、ホッパードライヤー、パドルドライヤーなどの乾燥機や、真空乾燥機を用いることができる。
【0156】
第一層81を形成するための原料を第一の押出機に、第二層82を形成するための原料を第二の押出機に、第三層83を形成するための原料を第三の押出機に供給し、これらを溶融させたうえで、第一、第二および第三の押出機からTダイまたはフィードブロックに導き、そこでこれらを積層することができる。これらの原料は、原料中のポリエステルの融点以上、かつ200℃以上300℃以下で溶融することが好ましい。
【0157】
Tダイからフィルム状のポリエステル組成物を押出し、冷却ドラムにキャストすることができる。これによって、ポリエステル組成物を急冷固化することができ、その結果、実質的に未配向の未延伸フィルムを得ることができる。なお、冷却ドラムの表面温度は40℃以下が好ましい。
【0158】
次いで、未延伸フィルムを二軸延伸することができる。二軸延伸によって、引張強さのような機械的性質を高めることができる。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。なかでも、逐次二軸延伸が好ましい。逐次二軸延伸では、未延伸フィルムを、長手方向すなわちMDに延伸し、MD延伸後のシートを、幅方向すなわちTDに延伸することが好ましい。これによれば、比較的速い製膜速度で、厚み均一性に優れた二軸配向ポリエステルフィルム8を製造することができる。
【0159】
未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の温度、すなわちMD延伸温度は、80℃以上130℃以下が好ましい。この際の延伸倍率、すなわちMD延伸倍率は3.3倍以上4.7倍以下が好ましい。80℃以上かつ4.7倍以下であると、長手方向の収縮応力を低減することができ、ボーイング現象を減少でき、二軸配向ポリエステルフィルム8の幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みを低減することができる。
【0160】
なお、未延伸フィルムを長手方向に延伸する方法は、たとえば、複数のロール間で多段階に延伸する方法であっても、赤外線ヒーターなどにより加熱して延伸する方法であってもよい。温度を上げやすく、しかも局部加熱が容易であり、ロールに起因する傷欠点を低減できるという理由から後者が好ましい。
【0161】
長手方向に延伸されたフィルムの少なくとも一方の面に、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。長手方向に延伸されたフィルムの少なくとも一方の面に、必要に応じて樹脂分散液または樹脂溶解液を塗布してもよい。これによって、たとえば、易滑性や易接着性、帯電防止性などの機能を付与することができる。なお、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理と、樹脂分散液または樹脂溶解液の塗布との両者をおこなってもよい。
【0162】
長手方向に延伸されたフィルムをテンター装置に導き、フィルムの両端をクリップで把持して、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることでフィルムを幅方向に延伸することができる。
【0163】
フィルムを幅方向に延伸する際の予熱温度は、100℃以上130℃以下が好ましい。100℃以上であると、長手方向に延伸した際に生じた収縮応力を低減することができ、ボーイング現象を減少でき、二軸配向ポリエステルフィルム8の幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みを低減することができる。
【0164】
フィルムを幅方向に延伸する際の温度、すなわちTD延伸温度は、105℃以上135℃以下が好ましい。105℃以上であると、TD延伸によって生じる長手方向の延伸応力を低減することができ、ボーイング現象の増加を抑えることができる。135℃以下であると、昇温結晶化温度が130℃程度であるポリエステル(たとえばケミカルリサイクルポリエステル)を用いた場合でも、延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することができる。
【0165】
フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率、すなわちTD延伸倍率は3.5倍以上5.0倍以下が好ましい。3.5倍以上であると、物質収支的に高い収率が得られやすいうえ、力学強度の低下も抑制でき、しかも、幅方向の厚みムラの増大も抑制できる。5.0倍以下であると、延伸時に生じ得るフィルムの破断を抑制または低減することができる。
【0166】
二軸延伸されたフィルムを、熱固定のために加熱することができる。熱固定温度は220℃以上250℃以下が好ましい。220℃以上であると、長手方向も幅方向も熱収縮率が過度に高くなることを防止できる。したがって、二次加工時の熱寸法安定性を向上することができる。250℃以下であると、ボーイング現象の増加を抑えることができ、二軸配向ポリエステルフィルム8の幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みを低減することができる。
【0167】
熱固定処理とあわせて、または熱固定処理とは別に、熱弛緩処理をおこなうことができる。熱弛緩処理における幅方向の弛緩率は4%以上8%以下が好ましい。4%以上であると、幅方向の熱収縮率が過度に高くなることを防止できる。したがって、二次加工時の熱寸法安定性を向上することができる。8%以下であると、フィルムの幅方向中央部の長手方向の延伸応力が過度に大きくなることを防止でき、ボーイング現象の増加を抑えることができる。
【0168】
熱弛緩処理の際、二軸延伸されたフィルムが熱緩和により収縮するまでの間、幅方向の拘束力が減少してフィルムが自重により弛んだり、フィルム上下に設置されたノズルから吹き出す熱風の随伴気流によってフィルムが膨らんでしまうことがある。このように、フィルムが上下に変動しやすい状況下にあるため、二軸配向ポリエステルフィルム8の配向角の変化量が大きく変動しやすい。フィルムが平行を保つことができるように、たとえば、ノズルから吹き出す熱風の風速を調整することができる。
【0169】
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよい。また、アンカーコート処理などが施されてもよい。
【0170】
このような手順で延伸製膜された幅広の二軸配向ポリエステルフィルム8を、ワインダー装置により巻き取り、ロール状としてもよい。つまりマスターロールを作製してもよい。
【0171】
マスターロールの幅は5000mm以上10000mm以下が好ましい。5000mm以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工などの二次加工においてフィルム面積あたりのコストを抑えることができる。
【0172】
マスターロールの巻長は10000m以上100000m以下が好ましい。10000m以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工などの二次加工においてフィルム面積あたりのコストを抑えることができる。
【0173】
マスターロールをスリットしたうえで巻き取り、ロール状としてもよい。つまりフィルムロールを作製してもよい。
【0174】
フィルムロールの巻幅は400mm以上3000mm以下が好ましい。400mm以上であると、印刷工程においてフィルムロールを交換する頻度を下げることができ、コストを抑えることができる。3000mm以下であると、ロール幅が過度に大きくはなく、ロール重量が過度に重くなることを防止できる。つまり、ハンドリング性が良好である。
【0175】
フィルムロールの巻長は2000m以上65000m以下が好ましい。2000m以上であると、印刷工程においてフィルムロールを交換する頻度を下げることができ、コストを抑えることができる。65000m以下であると、ロール径が過度に大きくはなく、ロール重量が過度に重くなることを防止できる。つまり、ハンドリング性が良好である。
【0176】
フィルムロールに用いる巻芯は、特に限定されるものではなく、たとえば、直径3インチ(37.6mm)、6インチ(152.2mm)、8インチ(203.2mm)などのサイズのプラスチック製、金属製、あるいは紙製の筒状の巻芯を使用することができる。
【0177】
<2.2.無機薄膜層>
無機薄膜層31、すなわち蒸着層31は、無機酸化物を含むことができる。無機酸化物として、たとえば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)の酸化物を挙げることができる。無機薄膜層31を形成する材料として、酸化ケイ素(すなわちシリカ)、酸化アルミニウム(すなわちアルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物が好ましい。なかでも、無機薄膜層31の柔軟性と緻密性を両立できるという理由で、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物がより好ましい。つまり、無機薄膜層31が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物を含むことが好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属原子換算の質量比、すなわち金属原子換算の質量比で、Alは、20質量%以上70質量%以下が好ましい。20質量%以上であると、ガスバリア性に優れる。70質量%以下であると、無機薄膜層31が過度に硬くなることを防止できる。なお、ここでいう酸化ケイ素とは、SiOやSiOなどの各種珪素酸化物またはそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAlなどの各種アルミニウム酸化物またはそれらの混合物である。
【0178】
無機薄膜層31は金属蒸着層であってもよい。金属蒸着層の金属として、たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、銀、錫、白金、金などを挙げることができる。なかでも、アルミニウムが好ましい。つまり、無機薄膜層31がアルミニウム蒸着層であることが好ましい。
【0179】
無機薄膜層31の厚みは、たとえば1nm以上であってもよく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。無機薄膜層31の厚みは、たとえば200nm以下であってもよく、100nm以下であってもよく、50nm以下であってもよい。
【0180】
無機薄膜層31は、単層構成であってもよく、二層以上の構成であってもよい。無機薄膜層31が二層以上である場合、それらの層は、組成や物性(たとえば厚み)などについて、互いに独立していることができる。
【0181】
無機薄膜層31は、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ-ティング法といった物理気相成長法(PVD法)や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法といった化学気相成長法(CVD法)で形成することができる。なお、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を真空蒸着法で形成する場合、蒸着原料として、たとえば、SiOとAlの混合物、SiOとAlの混合物を用いることができる。
これら蒸着原料は粒子状をなすことが好ましい。粒子の大きさは、蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましい。たとえば、粒子径は1mm~5mmが好ましい。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0182】
<2.3.被覆層>
被覆層32、すなわちアンカーコート層32を形成するための組成物は、オキサゾリン基を含む樹脂、つまり、オキサゾリン基を含む重合体を含むことが好ましい。オキサゾリン基を含む樹脂は、硬化剤、すなわち架橋剤として働くことができる。オキサゾリン基を含む樹脂は、被覆層32と無機薄膜層31との密着力を高めることができる。これは、オキサゾリン基が、無機薄膜層31との親和性に優れ、しかも無機薄膜層31形成時に発生し得る無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物と反応することができるためである。なお、被覆層32中に存在する未反応のオキサゾリン基は、二軸配向ポリエステルフィルム8および被覆層32に生じ得るカルボン酸末端(たとえば、加水分解により生じ得るカルボン酸末端)と反応することができるので、架橋を形成することができる。
【0183】
オキサゾリン基を有する樹脂のオキサゾリン基含有量は、5.1mmol/g以上が好ましく、6.0mmol/g以上がより好ましい。5.1mmol/g以上であると、被覆層32にオキサゾリン基を容易に残存させることができる場合がある。いっぽう、オキサゾリン基を有する樹脂のオキサゾリン基含有量は、9.0mmol/g以下が好ましく、8.0mmol/g以下がより好ましい。なお、樹脂は、このような好適なオキサゾリン基含有量を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0184】
オキサゾリン基を有する樹脂の含有量は、被覆層32を形成するための組成物の全樹脂成分100質量中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。オキサゾリン基を有する樹脂の含有量は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0185】
被覆層32を形成するための組成物は、カルボキシ基を含む樹脂を含むことが好ましい。これによって、カルボキシ基とオキサゾリン基とを反応させることができ、架橋を形成することができる。カルボキシ基を含む樹脂として、たとえば、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系樹脂を挙げることができる。なかでも、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系樹脂が好ましい。密着の観点ではウレタン樹脂が好ましい。いっぽう、耐水性の観点ではアクリル樹脂が好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0186】
カルボキシ基を含む樹脂の酸価は、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましい。40mgKOH/g以下であると、被覆層32の柔軟性が過度に低下すること防止できる。いっぽう、酸価は、1mgKOH/g以上であってもよく、2mgKOH/g以上であってもよい。なお、樹脂は、このような好適な酸価を満たす一種、または二種以上を含んでいてもよい。
【0187】
カルボキシ基を有する樹脂の含有量は、被覆層32を形成するための組成物の全樹脂成分100質量中、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。カルボキシ基を有する樹脂の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0188】
被覆層32を形成するための組成物はシランカップリング剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。シランカップリング剤は、分子内に、有機官能基を一つ以上有することが好ましい。シランカップリング剤が、分子内に、有機官能基を複数(すなわち一つ以上)有する場合、複数の有機官能基は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。つまり、複数の有機官能基はそれぞれ独立していることができる。有機官能基として、たとえばアルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を挙げることができる。
【0189】
被覆層32を形成するための組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒として、たとえば、ベンゼン、トルエンといった芳香族系溶剤、メタノール、エタノールといったアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルのような多価アルコール誘導体を挙げることができる。
【0190】
被覆層32は、被覆層32を形成するための組成物を二軸配向ポリエステルフィルム8に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0191】
<2.4.保護層>
保護層33は、無機薄膜層31のガスバリア性を補強することができる層である。つまり、保護層33は、ガスバリアフィルム7のガスバリア性を向上する役割を担う。
【0192】
保護層33を、樹脂と硬化剤とを含む組成物で形成することによって、積層体9のガスバリア性を向上することができる。これについて説明する。一般に、無機薄膜層31には微小な欠損部分が点在する。無機薄膜層31上に、このような組成物を塗工して保護層33を形成することにより、無機薄膜層31の欠損部分に組成物を浸透させることができ、その結果、積層体9のガスバリア性を向上することができる。
【0193】
樹脂として、たとえば、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系樹脂を挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
硬化剤として、たとえば、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系硬化剤を挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0194】
なかでも、ウレタン系樹脂、すなわちウレタン樹脂が好ましい。すなわち、保護層33はウレタン樹脂を含むことが好ましい。ウレタン樹脂によって、保護層33と無機薄膜層31との密着力を高めることができる。これは、ウレタン樹脂中のウレタン結合が極性を有し、ウレタン結合が無機薄膜層31と相互作用するためである。これに加えて、ガスバリアフィルム7に屈曲負荷がかかった際に無機薄膜層31が受け得るダメージの程度を低減できる。これは、ウレタン樹脂中の非晶部分が柔軟性を有するためである。
【0195】
ウレタン樹脂の酸価は10mgKOH/g以上60mgKOH/g以下の範囲内であるのが好ましい。より好ましくは15mgKOH/g以上55mgKOH/g以下の範囲内、さらに好ましくは20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下の範囲内である。ウレタン樹脂の酸価が前記範囲であると、水分散液とした際に液安定性が向上し、また保護層33を、高極性の無機薄膜上に均一に堆積することができるため、コート外観が良好となる。
【0196】
ウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上である。Tgを80℃以上にすることで、湿熱処理過程(昇温~保温~降温)における分子運動による保護層33の膨潤を低減できる。
【0197】
ウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有することが好ましい。その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。このようなウレタン樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
【0198】
ウレタン樹脂中の芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分100モル%中、50モル%以上(すなわち50モル%以上100モル%以下)の範囲とすることが好ましい。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60モル%以上100モル%以下が好ましく、より好ましくは70モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは80モル%以上100モル%以下である。このような樹脂として、三井化学社から市販されている「タケラック(登録商標)WPB」シリーズは好適に用いることができる。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%以上であると、良好なガスバリア性が得られる。
【0199】
ウレタン樹脂は、無機薄膜層31との親和性向上の観点から、カルボン酸基(カルボキシル基)を有することが好ましい。ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、たとえば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入すればよい。また、カルボン酸基含有ウレタン樹脂を合成後、塩形成剤により中和すれば、水分散体のウレタン樹脂を得ることができる。塩形成剤として、たとえば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミンなどのN-ジアルキルアルカノールアミン類を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0200】
保護層33を形成するための組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒として、たとえば、ベンゼン、トルエンといった芳香族系溶剤、メタノール、エタノールといったアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルのような多価アルコール誘導体を挙げることができる。
【0201】
いっぽう、ゾルゲル法によって重縮合する組成物で保護層33を形成してもよい。これによれば、ガスバリア性の高い保護層33を形成できるのため、積層体9のガスバリア性を向上することができる。このような組成物は、式1で表されるアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体の少なくとも一方とを含むことができる。
式1 R M(OR
は、炭素数1~8の有機基を表す。Rは、炭素数1~8の有機基を表す。Mは金属原子を表す。nは0以上の整数を表す。mは1以上の整数を表す。n+mは、Mの原子価を表す。
なお、式1において、Rが複数ある場合、複数のRはそれぞれ独立していることができる。式1において、Rが複数ある場合、複数のRはそれぞれ独立していることができる。
【0202】
式1で表されるアルコキシドとして、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用できる。アルコキシドの部分加水分解物は、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はない。アルコキシドの加水分解の縮合物として、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用できる。
【0203】
Mで表される金属原子として、たとえば、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムを挙げることができる。なかでも、ケイ素、チタンが好ましい。なお、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを混合して用いてもよい。
【0204】
で表される炭素数1~8の有機基として、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基といったアルキル基を挙げることができる。
【0205】
で表される有機基として、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基といったアルキル基を挙げることができる。
【0206】
この組成物はシランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤として、有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを挙げることができる。とりわけ、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましい。エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとして、たとえば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0207】
なお、この組成物は、たとえば、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤をさらに含むことができる。
【0208】
<2.5.ガスバリアフィルムの物性>
ガスバリアフィルム7の酸素ガス透過度は、たとえば5.5ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、5.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、4.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、3.5ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、3.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよい。
【0209】
ガスバリアフィルム7の水蒸気透過度は、たとえば1.0g/(m・day)以下であってもよく、0.9g/(m・day)以下であってもよく、0.8g/(m・day)以下であってもよい。
【0210】
ガスバリアフィルム7の少なくとも一方向の引張強さは180MPa以上が好ましく、185MPa以上がより好ましく、190MPa以上がさらに好ましい。180MPa以上であると、ガスバリアフィルム7を用いて、優れた強度を有する製品(たとえば包装容器)を作製することができる。
【0211】
同様に、ガスバリアフィルム7のMD(すなわち0°方向)、45°方向、TD(すなわち90°方向)、および135°方向の引張強さは180MPa以上が好ましく、185MPa以上がより好ましく、190MPa以上がさらに好ましい。
【0212】
ガスバリアフィルム7の少なくとも一方向の引張強さは350MPa以下が好ましく、340MPa以下がより好ましく、330MPa以下がさらに好ましい。350MPa以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8製造過程における延伸時の応力(つまり延伸応力)が過度に大きくなることをいっそう防止でき、その結果、延伸時に生じ得るフィルムの破断をいっそう抑制または低減することができる。引張強さは320MPa以下であってもよい。
【0213】
同様に、ガスバリアフィルム7のMD(すなわち0°方向)、45°方向、TD(すなわち90°方向)、および135°方向の引張強さは350MPa以下が好ましく、340MPa以下がより好ましく、330MPa以下がさらに好ましい。引張強さは320MPa以下であってもよい。
【0214】
ガスバリアフィルム7の突刺し強さは、0.50N/μm以上が好ましく、0.52N/μm以上がより好ましく、0.55N/μm以上がさらに好ましい。0.50N/μm以上であると、ガスバリアフィルム7を用いて、優れた強度を有する製品(たとえば包装容器)を作製することができる。たとえば、ガスバリアフィルム7を用いて穴が開きにくい包装容器を作製することができる。
【0215】
ガスバリアフィルム7の長手方向、すなわちMDの熱収縮率は2.0%以下が好ましく、1.8%以下がより好ましい。2.0%以下であると、二軸配向ポリエステルフィルム8に、蒸着加工や印刷加工などの二次加工を施す際に、熱による変形やシワの発生頻度を低減できる。MDの熱収縮率は、たとえば0.5%以上であってもよく、0.8%以上であってもよい。
【0216】
ガスバリアフィルム7の幅方向、すなわちTDの熱収縮率は-1.0%以上1.0%以下が好ましく、-0.8%以上0.8%以下がより好ましい。-1.0%以上1.0%以下であると、蒸着加工や印刷加工などの二次加工を施す際に、熱による変形やシワの発生頻度を低減できる。
【0217】
ガスバリアフィルム7の厚みは5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましい。5μm以上であると、ガスバリアフィルム7の剛性に優れている。いっぽう、ガスバリアフィルム7の厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。厚みが薄いほど、コストを抑えることができる。
【0218】
<2.6.ガスバリアフィルムの用途>
ガスバリアフィルム7は、さまざまな用途に使用できる。たとえば、包装容器、ラベル(たとえば、ペットボトルの胴巻き用ラベル)、リチウムイオン電池の外装をはじめとした電子部品の外装用フィルムとして好適に使用できる。なかでも包装容器に好適に使用できる。とりわけ食品包装容器に好適に使用できる。
【0219】
<3.積層体>
図5に示すように、一実施形態において、積層体9は、ガスバリアフィルム7とシーラント層21とを含む。積層体9は、二軸配向ポリエステルフィルム8と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、シーラント層21とを含むことができる。積層体9の少なくとも一部において、二軸配向ポリエステルフィルム8、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。積層体9がシーラント層21を含むため、積層体9を含む製品(たとえば包装容器)をヒートシールによって製造することができる。なお、ここには、積層体9が、被覆層32と保護層33とを含む構造を示しているものの、積層体9は、これらを含んでいなくてもよい(以下同様である)。
【0220】
シーラント層21は、二軸配向ポリエステルフィルム8よりも低い温度で軟化することができる層である。すなわち、シーラント層21は、二軸配向ポリエステルフィルム8よりも低い温度で溶融することができる。シーラント層21は、たとえば、ホットメルト接着剤で形成してもよいし、フィルムで形成してもよいし、これら以外で形成してもよい。シーラント層21を構成する材料として、熱可塑性樹脂を挙げることができる。シーラント層21を構成する材料として、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)といったポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂を挙げることができる。なお、シーラント層21は、これらのうち一種を含んでいてもよく、二種以上を含んでいてもよい。
【0221】
なお、ポリエチレンとしては、環境負荷をいっそう低減できるという観点でバイオマスポリエチレンが好ましい。バイオマスポリエチレンは、バイオマスエタノールを原料として製造されたポリエチレンである。とりわけ、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを原料として製造されたバイオマスポリエチレンが好ましい。植物原料として、たとえば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオクを挙げることができる。
【0222】
シーラント層21は添加剤を含むことができる。添加剤として、たとえば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アンチブロッキング剤、着色剤を挙げることができる。
【0223】
シーラント層21の厚みは、たとえば5μm以上であっても、7μm以上であってもよい。シーラント層21の厚みは、たとえば50μm以下であっても、30μm以下であってもよい。なお、シーラント層21は、単層構成であってもよく、二層以上の構成であってもよい。
【0224】
図6Aに示すように、積層体9は印刷層11をさらに含むことができる。積層体9は、印刷層11と、ガスバリアフィルム7と、シーラント層21とを含むことができる。積層体9の少なくとも一部において、印刷層11、ガスバリアフィルム7、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。
【0225】
印刷層11、すなわちインク層11は、積層体9にデザインを付与することができる。デザインは、たとえば、模様や柄、絵、写真、図形のような図案状であってもよく、文字や符号、標章のような記号状であってもよく、これらのうちの二種以上の任意の組み合わせであってもよい。デザインは、無地であってもよい。
【0226】
積層体9を垂線方向で見た場合の印刷層11の形状は適宜設定できる。積層体9を垂線方向で見た場合、印刷層11の大きさは、二軸配向ポリエステルフィルム8の大きさと同じであってもよく、二軸配向ポリエステルフィルム8よりも小さくてもよい。
【0227】
印刷層11は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂、これらの二種以上の混合物を挙げることができる。印刷層11は、着色剤を含むことができる。着色剤として、たとえば、顔料、染料を挙げることができる。印刷層11が添加剤を含むことができる。添加剤として、たとえば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0228】
印刷層11はインクで形成することができる。インクは、上述した成分に加えて、たとえば溶剤を含むことができる。なお、インクは、バイオマス由来の原料が使用されたインクであってもよい。
【0229】
印刷層11は、インクを印刷し、乾燥することによって形成することができる。印刷方法として、たとえば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷を挙げることができる。印刷後の乾燥方法として、たとえば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥を挙げることができる。
【0230】
なお、図6Bに示すように、積層体9の少なくとも一部において、ガスバリアフィルム7、印刷層11、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいてもよい。
【0231】
図7Aに示すように、積層体9はシーラント層22をさらに含んでいてもよい。たとえば、積層体9は、シーラント層22と、印刷層11と、ガスバリアフィルム7と、シーラント層21とを含んでいてもよい。積層体9の少なくとも一部において、シーラント層22、印刷層11、ガスバリアフィルム7、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。もちろん、図5に示した積層構成を有する積層体9が、シーラント層22をさらに含んでいてもよい。積層体9の両面のうち、一方の面がシーラント層21によって構成され、他方の面がシーラント層22によって構成されることが好ましい。つまり、積層体9の一対の最外層のうち、一方の最外層がシーラント層21であり、他方の最外層がシーラント層22であることが好ましい。シーラント層22の説明は、シーラント層21の説明と重複するため省略する。よって、シーラント層21の説明はシーラント層22の説明としても扱うことができる。
【0232】
なお、図7Bに示すように、積層体9の少なくとも一部において、シーラント層22、ガスバリアフィルム7、印刷層11、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいてもよい。
【0233】
積層体9において、ガスバリアフィルム7を構成する二軸配向ポリエステルフィルム8が担う役割は特に限定されない。たとえば、二軸配向ポリエステルフィルム8は、上述の層(たとえばシーラント層21、印刷層11、無機薄膜層31)を保持する役割、つまり基材としての役割を担ってもよい。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8は、基材としてではなく、積層体9のなんらかの物性、たとえば強度を向上する目的で使用されてもよい。その目的で使用される二軸配向ポリエステルフィルム8は、支持体としての役割を担う、と言い換えることができる。つまり、二軸配向ポリエステルフィルム8は、支持体としての役割を担ってもよい。
なお、二軸配向ポリエステルフィルム8が、支持体としての役割を担う場合、他の層(たとえば、樹脂フィルム、紙層)が、基材としての役割を担うことができる。
【0234】
なお、二軸配向ポリエステルフィルム8が、基材としての役割を担う場合、積層体9は、支持体としての役割を担う層(以下、「支持体層」と言う。)をさらに含んでいてもよい。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルム8が、支持体としての役割を担う場合(つまり支持体層である場合)、積層体9は、基材としての役割を担う層(以下、「基材層」と言う。)をさらに含んでいてもよい。
【0235】
図5図7Bでは、ガスバリアフィルム7に着目したうえで、積層体9を説明してきたものの、ここからは、ガスバリアフィルム7よりむしろ基材層や支持体層に着目したうえで積層体9を説明する。つまり、切り口を変えて積層体9を説明する。よって、ここからの説明には、これまでの説明と重複する部分があり得る。
【0236】
図8に示すように、一実施形態において、積層体9は、基材層51と、無機薄膜層31と、シーラント層21とを含む。積層体9の少なくとも一部において、基材層51、無機薄膜層31、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。積層体9がシーラント層21を含むため、積層体9を含む製品(たとえば包装容器)をヒートシールによって製造することができる。
【0237】
図9に示すように、積層体9は被覆層32をさらに含んでいてもよい。具体的には、積層体9は、基材層51と無機薄膜層31との間に被覆層32を含んでいてもよい。基材層51と被覆層32との密着力や、被覆層32と無機薄膜層31との密着力を被覆層32によって調整することができる。積層体9の少なくとも一部において、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。被覆層32は、基材層51と無機薄膜層31とを接続することができる。
【0238】
図10に示すように、積層体9は、無機薄膜層31上に設けられた保護層33をさらに含んでいてもよい。すなわち、積層体9は、無機薄膜層31に隣接する保護層33をさらに含んでいてもよい。たとえば、積層体9は、基材層51と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、シーラント層21とを含んでいてもよい。積層体9の少なくとも一部において、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。保護層33によって、酸素ガスや水蒸気の透過を、いっそう抑制または低減できる。
【0239】
基材層51として、二軸配向ポリエステルフィルム8を用いる。すなわち、基材層51は二軸配向ポリエステルフィルム8である。いっぽう、基材層51は、単層構成であってもよく、二層以上の構成であってもよいところ、たとえば、基材層51は、二軸配向ポリエステルフィルム8と樹脂フィルム(たとえば二軸延伸ナイロンフィルム)との積層構成であってもよい。
【0240】
図11Aに示すように、積層体9は印刷層11をさらに含むことができる。積層体9は、印刷層11と、基材層51と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、シーラント層21とを含むことができる。積層体9の少なくとも一部において、印刷層11、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。
【0241】
なお、図11Bに示すように、積層体9の少なくとも一部において、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、印刷層11、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいてもよい。
【0242】
図12Aに示すように、積層体9はシーラント層22をさらに含んでいてもよい。たとえば、積層体9は、シーラント層22と、印刷層11と、基材層51と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、シーラント層21とを含んでいてもよい。積層体9の少なくとも一部において、シーラント層22、印刷層11、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。もちろん、図8図10に示した積層構成を有する積層体9が、シーラント層22をさらに含んでいてもよい。積層体9の両面のうち、一方の面がシーラント層21によって構成され、他方の面がシーラント層22によって構成されることが好ましい。つまり、積層体9の一対の最外層のうち、一方の最外層がシーラント層21であり、他方の最外層がシーラント層22であることが好ましい。
【0243】
なお、図12Bに示すように、積層体9の少なくとも一部において、シーラント層22、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、印刷層11、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいてもよい。
【0244】
図13に示すように、積層体9は中間層61をさらに含むことができる。たとえば、積層体9は、基材層51と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、中間層61と、シーラント層21とを含むことができる。積層体9の少なくとも一部において、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、中間層61、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。
【0245】
中間層61は、支持体層を含んでいてもよく、ガスバリア層を含んでいてもよく、金属箔を含んでいてもよく、これらのうち二つ以上を含んでいてもよい。もちろん、これら以外の層、たとえば、接着剤層、接着樹脂層、アンカーコート層などを含んでいてもよい。中間層61は印刷層11を含んでいてもよい。中間層61が支持体層を含むことによって、積層体9のなんらかの物性、たとえば強度を向上することができる。中間層61が、ガスバリア層や金属箔を含むことによって、積層体9のガスバリア性を向上することができる。
【0246】
支持体層として、たとえば、樹脂フィルム、紙層を挙げることができる。樹脂フィルムとして、たとえば、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ビニル樹脂、セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6))などの樹脂材料のうち1種または2種以上含むフィルムを挙げることができる。なかでもポリエステルが好ましい。つまり、樹脂フィルムはポリエステルを含むことが好ましい。樹脂フィルムは、延伸樹脂フィルムであってもよく、未延伸樹脂フィルムであってもよい。延伸樹脂フィルムとして、一軸延伸樹脂フィルムであってもよく、二軸延伸樹脂フィルムであってもよい。なかでも、寸法安定性に優れるという理由から二軸延伸樹脂フィルムが好ましい。
【0247】
紙層として、たとえば、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、板紙、合成紙、含浸紙などを使用することができる。紙層の厚みは、たとえば30g/m以上400g/m以下であることが好ましい。
【0248】
紙層および/または樹脂フィルムは、他の層(たとえば、接着剤層、接着樹脂層、アンカーコート層)を介して二軸配向ポリエステルフィルム8に積層することができる。
【0249】
接着剤層は、接着剤、すなわちラミネート接着剤で形成することができる。たとえば、ラミネート接着剤を、二軸配向ポリエステルフィルム8および/または紙層に塗布し、乾燥することによって形成することができる。ラミネート接着剤は、1液硬化型であってもよく、2液型硬化型であってもよい。ラミネート接着剤は、溶剤型であってもよく、水性型であってもよく、エマルジョン型であってもよい。ラミネート接着剤として、たとえば、ビニル系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤を挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0250】
接着剤層の厚みは、たとえば0.1μm以上であってもよく、1μm以上であってもよい。接着剤層の厚みは、たとえば10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0251】
接着樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂として、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂を挙げることができる。これに加えて、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体の少なくとも一種をポリオレフィン樹脂にグラフト重合および/または共重合した樹脂を挙げることもできる。無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂を挙げることもできる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0252】
接着樹脂層の厚みは、たとえば0.1μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。接着樹脂層の厚みは、たとえば100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0253】
アンカーコート層は、樹脂と硬化剤とを含む組成物で形成することができる。樹脂として、たとえば、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系樹脂を挙げることができる。なかでも、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系樹脂が好ましい。密着の観点ではウレタン樹脂が好ましい。いっぽう、耐水性の観点ではアクリル樹脂が好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。硬化剤として、たとえば、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系硬化剤を挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0254】
アンカーコート層を形成するための組成物はシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤は、分子内に、有機官能基を一つ以上有することが好ましい。シランカップリング剤が、分子内に、有機官能基を複数(すなわち一つ以上)有する場合、複数の有機官能基は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。つまり、複数の有機官能基はそれぞれ独立していることができる。有機官能基として、たとえばアルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を挙げることができる。
【0255】
アンカーコート層を形成するための組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒として、たとえば、ベンゼン、トルエンといった芳香族系溶剤、メタノール、エタノールといったアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルのような多価アルコール誘導体を挙げることができる。
【0256】
アンカーコート層は、アンカーコート層を形成するための組成物を二軸配向ポリエステルフィルム8に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0257】
アンカーコート層の厚みは、たとえば0.1μm以上であってもよく、0.2μm以上であってもよい。アンカーコート層の厚みは、たとえば2μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。
【0258】
支持体層は添加剤を含むことができる。添加剤としては、たとえば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アンチブロッキング剤、着色剤を挙げることができる。
【0259】
支持体層として二軸配向ポリエステルフィルム8を用いてもよい。すなわち、支持体層は、二軸配向ポリエステルフィルム8であってもよい。
【0260】
支持体層として二軸配向ポリエステルフィルム8を用いる場合、基材層51として、二軸配向ポリエステルフィルム8を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよいし、紙層を用いてもよい。このように、支持体層として二軸配向ポリエステルフィルム8を用いる場合、基材層51として二軸配向ポリエステルフィルム8を用いなくてもよい。
【0261】
支持体層として二軸配向ポリエステルフィルム8を用いる場合、基材層51として、たとえば、二軸配向ポリエステルフィルム8、二軸配向ポリエステルフィルム8以外の樹脂フィルム、紙層を挙げることができる。樹脂フィルムとして、たとえば、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ビニル樹脂、セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6))などの樹脂材料のうち1種または2種以上含むフィルムを挙げることができる。なかでもポリエステルが好ましい。つまり、樹脂フィルムはポリエステルを含むことが好ましい。樹脂フィルムは、延伸樹脂フィルムであってもよく、未延伸樹脂フィルムであってもよい。延伸樹脂フィルムとして、一軸延伸樹脂フィルムであってもよく、二軸延伸樹脂フィルムであってもよい。なかでも、寸法安定性に優れるという理由から二軸延伸樹脂フィルムが好ましい。
【0262】
なお、中間層61は、支持体層の少なくとも一方の面上に被覆層32を含んでいてもよく、無機薄膜層31を含んでいてもよい。中間層61は保護層33を含んでいてもよい(図示していない)。
【0263】
ガスバリア層はガスバリア性樹脂を含む。ガスバリア性樹脂として、たとえば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(たとえばナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6))、ポリエステル、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂を挙げることができる。ガスバリア層は、ガスバリア性樹脂を2種以上含んでいてもよい。ガスバリア層は、他の樹脂をさらに含んでいてもよく、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0264】
ガスバリア層の厚みは、たとえば3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよい。ガスバリア層の厚みは、たとえば30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
【0265】
金属箔として、たとえば、アルミニウム箔、マグネシウム箔を挙げることができる。なかでもアルミニウム箔が好ましい。なかでも、耐ピンホール性や延展性の観点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。いっぽう、鉄の含有量は、9.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。
【0266】
金属箔は、前処理が施されていてもよい。前処理として、たとえば、脱脂、酸洗浄、アルカリ洗浄などを挙げることができる。
【0267】
金属箔の厚みは、たとえば3μm以上であってもよく、6μm以上であってもよい。金属箔の厚みは、たとえば100μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0268】
なお、図14に示すように、積層体9は、印刷層11と、基材層51と、被覆層32と、無機薄膜層31と、保護層33と、中間層61と、シーラント層21とを含んでいてもよい。積層体9の少なくとも一部において、印刷層11、基材層51、被覆層32、無機薄膜層31、保護層33、中間層61、シーラント層21が、積層体9の厚み方向でこの順に並んでいることができる。
【0269】
もちろん、印刷層11の位置は適宜変更できる。たとえば、図13に示した積層構成を有する積層体9において、中間層61が印刷層11を含んでいてもよい。
【0270】
図13図14に示した積層構成を有する積層体9が、シーラント層22をさらに含んでいてもよい(図示していない)。積層体9の両面のうち、一方の面がシーラント層21によって構成され、他方の面がシーラント層22によって構成されることが好ましい。つまり、積層体9の一対の最外層のうち、一方の最外層がシーラント層21であり、他方の最外層がシーラント層22であることが好ましい。
【0271】
ここまで、積層体9が、シーラント層21、および、必要に応じてシーラント層22を含む、という構成を説明したものの、もちろん、これに限定されない。積層体9は、シーラント層21およびシーラント層22の少なくとも一方に代えて粘着層を含んでいてもよい。粘着層は、粘着剤によって形成することができる。粘着剤として、たとえば、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴムなどの合成ゴムや、天然ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリプロピレンを挙げることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0272】
このように、積層体9は、
基材層51と、無機薄膜層31と、シーラント層21または粘着層とを含み、
少なくとも基材層51および無機薄膜層31が、ガスバリアフィルム7で構成されている、と言うことができる。
積層体9は被覆層32をさらに含むことが好ましい。少なくとも基材層51、被覆層32および無機薄膜層31が、ガスバリアフィルム7で構成されていることができる。
積層体9は保護層33をさらに含むことが好ましい。少なくとも基材層51、無機薄膜層31および保護層33が、ガスバリアフィルム7で構成されていることができる。
積層体9は、被覆層32と保護層33とをさらに含むことが好ましい。少なくとも基材層51、被覆層32、無機薄膜層31および保護層33が、ガスバリアフィルム7で構成されていることができる。
【0273】
いっぽう、積層体9は、
基材層51と、無機薄膜層31と、中間層61と、シーラント層21または粘着層とを含み、
中間層61がガスバリアフィルム7を含む、と言うこともできる。
【0274】
以上、図5図14を参照して、積層体9ついて説明をした。ここからはより具体的な例を挙げる。
それに先立ち、略語の意味を、次に示す。
CRF 二軸配向ポリエステルフィルム8
PET ポリエチレンテレフタレート
ONY 延伸ナイロン
OPP 延伸ポリプロピレン
CPP 未延伸ポリプロピレン
PE ポリエチレン
PEF ポリエチレンフィルム
Al アルミニウム
MO 金属酸化物
MOR 金属アルコキシド
【0275】
具体例を挙げる。ここに挙げる例は、基材層51が、二軸配向ポリエステルフィルム8である。
(1)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(2)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/ヒートシール層(PE)
(3)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(4)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/ヒートシール層(PEF)
(5)基材層(CRF)/無機薄膜層(Al)/粘着層
(6)基材層(CRF)/無機薄膜層(Al)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(7)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(8)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/ヒートシール層(PE)
(9)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(10)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/ヒートシール層(PEF)
(11)印刷層/基材層(CRF)/無機薄膜層(Al)/粘着層
(12)印刷層/基材層(CRF)/無機薄膜層(Al)/ヒートシール層(PE)
(13)印刷層/基材層(CRF)/無機薄膜層(Al)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
【0276】
具体例をさらに挙げる。ここに挙げる例も、基材層51が、二軸配向ポリエステルフィルム8である。
(1)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/支持体層(ONY)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(2)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(3)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(4)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/支持体層(ONY)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(5)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/基材層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(6)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)/ホットメルト層(ホットメルト接着剤)
(7)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/支持体層(ONY)/ヒートシール層(PE)
(8)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/支持体層(ONY)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(9)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(10)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/支持体層(ONY)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(11)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(12)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(13)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/支持体層(ONY)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(14)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/支持体層(PET)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)/ホットメルト層(ホットメルト接着剤)
(15)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/基材層(CRF)/印刷層/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(16)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/支持体層(ONY)/ヒートシール層(PE)
(17)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/支持体層(ONY)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(18)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
【0277】
具体例をさらに挙げる。ここに挙げる例は、支持体層が、二軸配向ポリエステルフィルム8である。
(1)基材層(PET)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(2)基材層(ONY)/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/ヒートシール層(PEF)
(3)基材層(紙)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(4)基材層(OPP)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(5)基材層(PET)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(6)基材層(ONY)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(7)基材層(PET)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)/ホットメルト層(ホットメルト接着剤)
(8)基材層(OPP)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(9)基材層(PET)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(10)基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(11)基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(12)基材層(OPP)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(OPP)
(13)基材層(PET)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(14)基材層(PET)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(15)基材層(PET)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(16)基材層(PET)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(17)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(18)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(19)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(20)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/支持体層(CRF)/無機薄膜層(Al)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(21)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/支持体層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(22)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(23)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(24)ヒートシール層(PE)/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(25)ヒートシール層(PE)/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(26)ヒートシール層(PE)/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(27)ヒートシール層(PE)/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(28)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/無機薄膜層(Al)/基材層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(29)基材層(ONY)/印刷層/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/接着樹脂層(PE)/ヒートシール層(PEF)
(30)印刷層/基材層(紙)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(31)基材層(OPP)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(32)基材層(PET)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(33)基材層(ONY)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(34)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PE)/ホットメルト層(ホットメルト接着剤)
(35)基材層(OPP)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(36)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(CPP)
(37)印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(38)印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(39)基材層(OPP)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(OPP)
(40)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(41)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(42)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/ヒートシール層(PE)
(43)基材層(PET)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(44)基材層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/印刷層/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(45)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(46)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(47)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/支持体層(CRF)/無機薄膜層(Al)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(48)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/支持体層(CRF)/無機薄膜層(MO)/保護層(MOR)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(49)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(50)ヒートシール層(PEF)/接着剤層/基材層(PET)/印刷層/接着剤層/支持体層(PEF)/接着剤層/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(51)ヒートシール層(PE)/印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(52)ヒートシール層(PE)/印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/接着剤層/ヒートシール層(PEF)
(53)ヒートシール層(PE)/印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/無機薄膜層(Al)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
(54)ヒートシール層(PE)/印刷層/基材層(紙)/接着樹脂層(PE)/保護層(MOR)/無機薄膜層(MO)/支持体層(CRF)/アンカーコート層/ヒートシール層(PE)
【0278】
上述した具体例には、基材層51と無機薄膜層31とが隣接している積層体9がいくつかある。それらの積層体9において、基材層51と無機薄膜層31との間に被覆層32が設けられていてもよい。
【0279】
上述した具体例には、支持体層と無機薄膜層31とが隣接している積層体9がいくつかある。それらの積層体9において、支持体層と無機薄膜層31との間に被覆層32が設けられていてもよい。
【0280】
上述した具体例には、MOR、すなわち金属アルコキシドを含む組成物で形成された保護層33を含む積層体9がいくつかある。それらの積層体9において、保護層33は、樹脂と硬化剤とを含む組成物で形成されていてもよい。
【0281】
上述した具体例のうち、基材層51と支持体層との両者を含む積層体9がいくつかある。それらの例において、基材層51と支持体層との両者が二軸配向ポリエステルフィルム8であってもよい。
【0282】
積層体9の酸素ガス透過度は、たとえば5.5ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、5.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、4.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、3.5ml/(m・day・MPa)以下であってもよく、3.0ml/(m・day・MPa)以下であってもよい。
【0283】
積層体9の水蒸気透過度は、たとえば1.0g/(m・day)以下であってもよく、0.9g/(m・day)以下であってもよく、0.8g/(m・day)以下であってもよい。
【0284】
積層体9のラミネート強度は、3.0N/15mm以上が好ましく、3.5N/15mm以上がより好ましく、4.0N/15mm以上がさらに好ましい。3.0N/15mm以上であると、ガスバリアフィルム7にシーラント層を設けた場合に、これらの間ではく離しにくい製品(たとえば包装容器)を作製することができる。ここで、積層体9のラミネート強度は、後述の「ラミネート強度_ガスバリアフィルム」に記載の方法で測定されるはく離強度である(実施例参照)。
【0285】
積層体9は、さまざまな用途に使用できる。たとえば、包装容器、ラベル(たとえば、ペットボトルの胴巻き用ラベル)、リチウムイオン電池の外装をはじめとした電子部品の外装用フィルムとして好適に使用できる。なかでも包装容器に好適に使用できる。とりわけ食品包装容器に好適に使用できる。
【0286】
<4.包装容器>
本実施形態の包装容器は積層体9を含む。すなわち、本実施形態の包装容器は積層体9を用いて作製することができる。ここで、「包装容器は積層体9を含む」とは、包装容器が、複数の部材で構成される場合、少なくとも一つの部材が積層体9を含むことを意味する。包装容器として、たとえば、包装袋(すなわちパウチ)、蓋材、ラミネートチューブ、紙容器、紙カップを挙げることができる(たとえば特許第6984717号公報参照)。包装容器は、食品包装容器であってもよく、非食品用の包装容器であってもよい。つまり、内容品は食品であってもよく、非食品であってもよい。なかでも、包装容器は、食品包装容器であることが好ましい。
【0287】
包装袋として、たとえば、スタンディングパウチ、ピロー袋(すなわち合掌貼りシール型袋)、二方シール型袋、三方シール型袋、四方シール型袋、側面シール型袋、封筒貼りシール型袋、ひだ付シール型袋、平底シール型袋、角底シール型袋、ガセット付袋を挙げることができる。
【0288】
<5.上述の実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の実施形態に変更を加えることができる。
【0289】
上述の実施形態では、二軸配向ポリエステルフィルム8が単層構成である、という構成や、二軸配向ポリエステルフィルム8が、第一層81、第二層82、および第三層83で構成された三層構造である、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。二軸配向ポリエステルフィルム8が、第一層81および第二層82で構成された二層構成であってもよい。もちろん、二軸配向ポリエステルフィルム8は四層以上の構成であってもよい。
【実施例0290】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。なお、後述するポリエステルA~Gを、原料ポリエステルと総称することがある。
【0291】
<各物性の測定方法>
(固有粘度)
試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(質量比))の混合溶媒50ml中に溶解したうえで、30℃でオストワルド粘度計を用いて固有粘度(IV)を測定した。なお、固有粘度の単位はdl/gである。
【0292】
(テレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率)
クロロホルムD(ユーリソップ社製)およびトリフルオロ酢酸-D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)を溶解させた。この試料溶液について、核磁気共鳴(NMR)分光計(「GEMINI-200」Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件でプロトンのNMRを測定した。このNMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出したうえで、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
【0293】
(マグネシウムの定量分析)
試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)を白金ルツボにて灰化分解したうえで、6モル/L塩酸を加え、蒸発乾固した。これを1.2モル/L塩酸で溶解したうえで、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(株式会社島津製作所製「ICPS-2000」)でマグネシウムを定量した。
【0294】
(リンの定量分析)
試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解する方法、または、硫酸・硝酸・過塩素酸系および硫酸・過酸化水素水系のどちらかで湿式分解する方法によってリンを正リン酸とした。次いで、1モル/L硫酸溶液中においてモリブデン酸塩を反応させてリンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して生ずるヘテロポリ青の830nmの吸光度を吸光光度計(株式会社島津製作所製「UV-150-02」)で測定した(つまり比色定量をおこなった)。
【0295】
(溶融比抵抗)
試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)を285℃で溶融したうえで、これに一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加した。その際の電流を測定し、下記式に基づいて溶融比抵抗Si(Ω・cm)を算出した。
Si=(A/I)×(V/io)
ここで、Aは、電極の面積(cm)であり、Iは、電極間距離(cm)であり、Vは電圧(V)であり、ioは電流(A)である。
【0296】
(分子量1000以下の領域の面積割合)
試料(具体的には、原料ポリエステルおよび二軸配向ポリエステルフィルム)10gを30mLバイアル瓶に入れたうえで秤量した。このバイアル瓶内に、クロロホルム/HFIP=98/2(体積比)の混合液を加えたうえで12時間静置することによって試料を溶解させた。次いで、これを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)=98/2(体積比)で希釈し、0.1%溶液に調製した。0.1%溶液を、0.45μmのフィルター(GLサイエンス社製 GLクロマトディスク非水系Nタイプ 13N)でろ過した。ろ液について、以下の条件で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定をおこなった。
使用カラム:東ソー株式会社製、TSKgel SuperHM-H×2、およびTSKgel SuperH2000
カラム温度:40℃
移動相:クロロホルム/HFIP=98/2(体積比)
流量:0.6mL/min
注入量:20μL
検出:254nm(紫外可視検出器)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製)
装置:東ソー株式会社製 HLC-8300GPC
GPC測定によって得られた分子量分布曲線において、分子量1000以下の領域の面積割合を求めた。
なお、通常、GPC解析では、検量線の圏外は、GPC解析の算出範囲から外すことが一般的であるものの、このたびの解析においては、分子量1000以下の領域の面積割合をより正確に求めるために、検量線の圏内だけでなく検量線の圏外も含めてGPCクロマトグラム面積(すなわち全ピーク面積)を算出した。
【0297】
(厚み)
二軸配向ポリエステルフィルムの厚みを、JIS K7130-1999 A法に準拠しダイアルゲージを用いて測定した。
【0298】
(融点)
試料(具体的には二軸配向ポリエステルフィルム)5mgについて示差走査熱量計(株式会社島津製作所製「DSC60」)を用いて、25℃から320℃に10℃/minで昇温し、融解に伴う吸熱曲線のメインピークトップ温度を融点として求めた。
【0299】
(引張強さ)
二軸配向ポリエステルフィルムから、15mm幅、100mm長の試験片を切り出した。JIS K 7127に準拠し、引張試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-I」)を用いて、標線間距離50mm、引張速度200mm/minで、この試験片を引っ張った。これによって得られた応力/ひずみ曲線から試験片の引張強さ、すなわち引張破断強度を算出した。この手順で、MD(すなわち0°方向)、45°方向、TD(すなわち90°方向)、および135°方向の引張強さを求めた。
【0300】
(熱収縮率)
二軸配向ポリエステルフィルムから、幅10mm、長さ250mmの試験片を切り出した。この試験片の長さ方向に200mm間隔で一対の印(すなわちの一対の標線)を付け、5gfの張力下で標線間距離を測定した。この試験片を無荷重下の状態で、150℃で30分間加熱処理したうえで標線間距離を測定した。これらの測定結果から、下記式によって熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(A-B)/A}×100
ここで、Aは、加熱処理前の標線間距離であり、Bは、熱処理前の標線間距離である。
この手順で、MDおよびTDの熱収縮率を求めた。
【0301】
(カラーb値)
二軸配向ポリエステルフィルム10枚を重ねた状態で測色色差計(日本電色工業株式会社製「ZE2000」)にセットし、反射方式でカラーb値を求めた。厚み1μm当たりのカラーb値を下記式で算出した。
厚み1μm当たりのカラーb
=(二軸配向ポリエステルフィルム10枚重ねでのカラーb値)/(10×二軸配向ポリエステルフィルムの厚み)
【0302】
(表面結晶化度)
二軸配向ポリエステルフィルムのコロナ処理面および非処理面の両面について、以下の条件でFT-IR ATR測定を行った。すなわち、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて全反射減衰法でスペクトルを得た。
FT-IR:Bio Rad DIGILAB社製 FTS-60A/896
1回反射ATRアタッチメント:golden gate MKII(SPECAC製)
内部反射エレメント:ダイヤモンド
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
表面結晶化度は、1340cm-1付近に現れる吸収と、1410cm-1付近に現れる吸収との強度比(1340cm-1の強度/1410cm-1の強度)により算出した。1340cm-1付近に現れる吸収は、エチレングリコールのCH(トランス構造)の変角振動による吸収である。いっぽう、1410cm-1付近に現れる吸収は、結晶とも配向とも無関係の吸収である。
【0303】
(突刺し強さ)
二軸配向ポリエステルフィルムから切り出した5cm角の試験片の突刺し強さを、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製「ZTS-500N」)、電動計測スタンド(株式会社イマダ製「MX2-500N」)、および、フィルム突刺し試験用治具(株式会社イマダ製「TKS-250N」)を用いて、JIS Z1707に準じて測定した。この測定によって求められた突刺し強さ(すなわち二軸配向ポリエステルフィルムの突刺し強さ)に基づいて、厚み1μm当たりの突刺し強さも算出した。
【0304】
(ラミネート強度_二軸配向ポリエステルフィルム)
二軸配向ポリエステルフィルムのコロナ処理面側に、ウレタン系2液硬化型接着剤(具体的には、三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A525S」と、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)A50」とを13.5:1(質量比)で配合した接着剤)を用いてドライラミネート法で、ポリオレフィンシーラント層として厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を貼り合わせたうえで、40℃にて4日間エージングを施す、という手順で積層体を作製した。この積層体から切り出した幅15mm、長さ200mmの試験片について、二軸配向ポリエステルフィルムのコロナ処理面とポリオレフィン樹脂層との接合面のはく離強度(N/15mm)を測定した。はく離強度の測定は、温度23℃、相対湿度65%の条件下、株式会社東洋ボールドウイン製「テンシロンUMT-II-500型」を用いて、引張速度20cm/分、はく離角度180度でおこなった。
【0305】
(最大キャスト速度)
冷却ドラムの回転速度を段階的に変更しながら作製した未延伸フィルムについて、偏光板(西田工業株式会社製)を使用してピンナーバブルの有無を目視で判別した。これによって、ピンナーバブルが発生しなかった最大回転速度から最大キャスト速度を求めた。
【0306】
(製膜性)
二軸配向ポリエステルフィルムの製膜性を次の基準で評価した。
○:60分以上破断しなかった。すなわち60分以上の連続製膜が可能であった。
△:30分以上60分未満の間に少なくとも一回破断した。
×:30分未満で少なくとも一回破断した。
【0307】
(ラミネート強度_ガスバリアフィルム)
ガスバリアフィルムの無機薄膜層または保護層に、ウレタン系2液硬化型接着剤(具体的には、三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A525S」と、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)A50」とを13.5:1(質量比)で配合した接着剤)を用いてドライラミネート法で、ポリオレフィンシーラント層として厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を貼り合わせたうえで、40℃にて4日間エージングを施す、という手順(以下、「手順A」という。)で積層体を作製した。この積層体から切り出した幅15mm、長さ200mmの試験片について、ガスバリアフィルムとポリオレフィンシーラント層との接合面のはく離強度(N/15mm)を測定した。はく離強度の測定は、温度23℃、相対湿度65%の条件下、株式会社東洋ボールドウイン製「テンシロンUMT-II-500型」を用いて、引張速度20cm/分、はく離角度180度でおこなった。
【0308】
(レトルト処理後のラミネート強度)
手順Aで作製した積層体を、130℃の熱水中に30分間保持し、次いで、40℃で1日間(具体的には24時間)乾燥した。この積層体から切り出した幅15mm、長さ200mmの試験片について、ガスバリアフィルムとポリオレフィンシーラント層との接合面のはく離強度(N/15mm)を、上述の方法で測定した。
【0309】
(酸素ガス透過度)
手順Aで作製した積層体について、JIS-K7126-2の電解センサー法(付属書A)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN 2/20」)を用い、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、常態での酸素ガス透過度を測定した。なお、酸素ガス透過度の測定は、二軸配向ポリエステルフィルム側からポリオレフィンシーラント層側に酸素ガスが透過する方向でおこなった。
【0310】
(レトルト処理後の酸素ガス透過度)
手順Aで作製した積層体を、130℃の熱水中に30分間保持し、次いで、40℃で1日間(具体的には24時間)乾燥した。この積層体の酸素ガス透過度を上述の方法で測定した。
【0311】
(水蒸気透過度)
手順Aで作製した積層体について、JIS-K7129-1992 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W1A」)を用い、温度40℃、相対湿度90RH%の雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、二軸配向ポリエステルフィルム側からポリオレフィンシーラント層側に水蒸気が透過する方向でおこなった。
【0312】
(レトルト処理後の水蒸気透過度)
手順Aで作製した積層体を、130℃の熱水中に30分間保持し、次いで、40℃で1日間(具体的には24時間)乾燥した。この積層体の水蒸気透過度を上述の方法で測定した。
【0313】
<原料ポリエステル>
(ポリエステルB)
分別収集・回収されたペットボトルベールを洗浄液(具体的には、水1000リッターに液体台所洗剤500gを加えた洗浄液)とともに湿式粉砕機内を循環させながら粉砕した。湿式粉砕機に接続している比重分離機によって金属、砂、ガラスなど、比重の大きい異物を沈殿させ、上層部からフレークを取り出した。このフレークを純水ですすぎ、遠心脱水した。このような手順で回収フレークを得た。
回収フレークを未乾燥の状態で溶融したもの30kgを、予め加熱しておいた混合液、具体的には、エチレングリコール150kgおよび酢酸亜鉛2水和物150gの混合液と攪拌式オートクレーブ内で混ぜたうえで、水や酢酸の如きエチレングリコールよりも沸点の低い溜分を除去した。次いで、還流コンデンサーを用いて195℃~200℃の温度で4時間反応させた。
反応終了後、反応器内容物温度が97℃~98℃になるまで降温したうえで、フィルターで熱時ろ過し、それによって浮遊物や沈殿物を除去した。
ろ液をさらに冷却し、粗製BHETが完全に溶解していることを確認した後、ろ液を、50℃~51℃で活性炭床、次いでアニオン/カチオン交換混合床に30分間かけて通した。つまり前精製処理を施した。
前精製処理液を攪拌式オートクレーブに仕込んだうえで、加熱して余剰のエチレングリコールを常圧留出させることによって濃縮BHETの溶融液を得た。
濃縮BHETの溶融液を、窒素ガス雰囲気下で攪拌しつつ自然降温した後、攪拌式オートクレーブから取り出し、濃縮BHETの細片ブロックを得た。
細片ブロックを130℃まで加熱し溶融させた後、これを定量ポンプで薄膜真空蒸発器に供給し、蒸発させ、冷却凝縮することによって精製BHETを得た。
この精製BHETを2650kgを、窒素で置換した溶解槽に一度に供給し、再度窒素置換した後、溶解槽温度を150℃として溶解を行った。溶解完了後、撹拌機しながら同時に溶解槽温度を30分間掛けて230℃まで昇温した。得られたBHET溶液2650kgを重縮合反応槽に移送し、そのBHET溶液に、得られるPET量(BHET2650kgからは約2000kgのPETが得られる)に対し、三酸化アンチモン300ppm、酢酸コバルト170ppm、リン酸55ppm、二酸化チタン0.3重量%を添加し、10~40rpmで攪拌しながら重縮合反応槽温度を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。その後所定の撹拌トルクに到達したら重縮合反応槽を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてチップ状のポリエステルを得た。
このような手順で、固有粘度0.59dl/gのケミカルリサイクルポリエステル、すなわちポリエステルBを得た。
【0314】
(ポリエステルA)
ポリエステルB(すなわち固有粘度0.59dl/gのケミカルリサイクルポリエステル)を結晶化装置に連続的に供給し、150℃で結晶化させた後、乾燥機に供給し130℃で10時間乾燥させた。乾燥後のポリエステルBを、予備加熱器機に送り180℃まで加熱したうえで固相重合機へ供給した。窒素ガス下にて固相重合反応を190℃で24時間おこない、固有粘度が0.79dl/gのケミカルリサイクルポリエステル、すなわちポリエステルAを得た。
【0315】
(ポリエステルC)
固相重合反応のための時間を24時間から50時間に変更したこと以外はポリエステルAと同様の方法で、固有粘度0.83dl/gのケミカルリサイクルポリエステル、すなわちポリエステルCを得た。
【0316】
(ポリエステルD)
飲料用ペットボトルから、残りの飲料などの異物を洗い流した後、飲料用ペットボトルを粉砕することによってフレークを得た。フレークを、3.5質量%の水酸化ナトリウム溶液に混ぜ、フレーク濃度10質量%、85℃、30分の条件で攪拌することによって洗浄した(つまりアルカリ洗浄をおこなった)。アルカリ洗浄後に取り出したフレークを蒸留水を用いて、フレーク濃度10重量%、25℃、20分の条件で攪拌することによって洗浄した。この水洗を、都度蒸留水を交換して、さらに2回おこなった。水洗後のフレークを乾燥したうえで押出機で溶融し、それをフィルターに通すことによって異物をろ別した。フィルターは、目開きサイズが順次小さくなるように三段目のフィルターまで押出機内に設置された。三段目のフィルターの目開きサイズは50μmであった。このような手順で、固有粘度0.69dl/gのメカニカルリサイクルポリエステル、すなわちポリエステルDを得た。
【0317】
(ポリエステルE)
ポリエステルEとして、すなわち化石燃料由来ポリエステルとして、固有粘度0.62dl/g、かつテレフタル酸/エチレングリコール=100モル%/100モル%のポリエステル(東洋紡製)を用いた。つまり、固有粘度0.62dl/gのホモポリエチレンテレフタレート(すなわちホモPET)を用いた。なお、テレフタル酸もエチレングリコールも、使用済みポリエステル製品由来ではなく、化石燃料由来であったことを念のため断っておく。
【0318】
(ポリエステルF)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸86.4質量部およびエチレングリコール64.4質量部からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン0.017質量部およびトリエチルアミン0.16質量部を添加した。次いで加熱昇温をおこない、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応をおこなった。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。これらを添加してから15分後に、平均粒子径2.7μmの不定形シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、粒子含有量を基準として3.0質量部添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応をおこない、極限粘度0.61dl/gのポリエステルFを得た。
ここで、上述した不定形シリカ粒子のエチレングリコールスラリーは、不定形シリカ粒子をエチレングリコールに混合し、高圧分散機で分散処理をおこなった後に遠心分離処理して粗粒部を35%カットし、その後、目開き5μmの金属フィルターでろ過処理をおこなって得られたスラリーである。
なお、テレフタル酸もエチレングリコールも、使用済みポリエステル製品由来ではなく、化石燃料由来であったことを念のため断っておく。
【0319】
(ポリエステルG)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸86.4質量部およびエチレングリコール64.4質量部からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン0.025質量部およびトリエチルアミン0.16質量部を添加した。次いで加熱昇温をおこない、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応をおこなった。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩0.34質量部、次いでリン酸トリメチル0.042質量部を添加した。15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル0.036質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温した後、285℃で重縮合反応をおこなった。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期ろ過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターでろ過処理をおこない、極限粘度0.62dl/gのポリエステルGを得た。なお、テレフタル酸もエチレングリコールも、使用済みポリエステル製品由来ではなく、化石燃料由来であったことを念のため断っておく。
【0320】
【表1】
表1について補足説明する。TPAはテレフタル酸の略語である。EGはエチレングリコールの略語である。IPAはイソフタル酸の略語である。
TPA、EG、およびIPAのカラムにおいて、「-」は未測定を意味する。
Mgは、マグネシウム原子基準でのマグネシウム化合物の含有量を示す。この含有量は、ポリエステルの質量に対する、マグネシウム原子基準でのマグネシウム化合物の質量(つまり、マグネシウム原子基準でのマグネシウム化合物の質量/ポリエステルの質量)である。なお、ここでは、アルカリ土類金属化合物のうち、マグネシウム化合物の含有量だけを示す。なぜなら、原料ポリエステルが、マグネシウム化合物以外のアルカリ土類金属化合物を含まなかった(検出限界未満であった、とも言えるかもしれない)ためである。
Pは、リン原子基準でのリン化合物の含有量を示す。この含有量は、ポリエステルの質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量(つまり、リン原子基準でのリン化合物の質量/ポリエステルの質量)である。
【0321】
表1に示すように、ポリエステルA、BおよびCのうち、ポリエステルCが、固有粘度が最も高く、低分子量成分が最も少なかった。ポリエステルBは、固有粘度が最も低く、低分子量成分が最も多かった。つまり、固有粘度が高いほど、低分子量成分の含有量が低かった。
【0322】
ポリエステルB(すなわちケミカルリサイクルポリエステル)は、固有粘度がポリエステルE(すなわち化石燃料由来ポリエステル)よりも低かったものの、低分子量成分の含有量がポリエステルEと同程度であった。
【0323】
いっぽう、ポリエステルD(すなわちメカニカルリサイクルポリエステル)は、固有粘度がポリエステルE(すなわち化石燃料由来ポリエステル)よりも高かったものの、ポリエステルEよりも低分子量成分の含有量が多かった。
【0324】
<二軸配向ポリエステルフィルムNAC1の作製>
三台の押出し機を用いて、三層構成の二軸配向ポリエステルフィルムNAC1を製膜した。二軸配向ポリエステルフィルムNAC1の基層、すなわちB層を形成するために、ポリエステルAを50.0質量%、ポリエステルEを42.0質量%、ポリエステルGを8.0質量%使用した。いっぽう、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1の一対の表面層、すなわち、一対のA層を形成するために、ポリエステルAを50.0質量%、ポリエステルEを39.0質量%、ポリエステルFを3.0質量%、ポリエステルGを8.0質量%使用した。以下、製膜の手順を説明する。
A層を形成するための原料ポリエステルを乾燥させたうえで、第一および第三の押出機に供給し、285℃で溶融させるとともに、B層を形成するための原料ポリエステルを乾燥させたうえで、第二の押出機に供給し、285℃で溶融させた。各押出機から溶融ポリエステルをTダイに導き、A層/B層/A層(厚み 1μm/10μm/1μm)となるようにTダイ内で積層したうえで、Tダイから押出し、表面温度25℃のキャスティングドラム、すなわち冷却ドラムで冷却固化させた。その際、Tダイから押出された、冷却ドラム密着前のフィルムを、直径0.15mmのワイヤー状電極で帯電させた。キャスト速度は70m/分であった。このような手順で未延伸フィルムを作製した。
未延伸フィルムを赤外線ヒーターで120℃に加熱し、延伸倍率4.0倍で長手方向(すなわちMD)に一段延伸した。
引き続き、テンター式横延伸機にて予熱温度120℃、延伸温度130℃、延伸倍率4.2倍にて幅方向(すなわちTD)に延伸し、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理をおこなった。なお、幅方向延伸ゾーンの長さは12.2m、幅方向延伸速度(すなわちTD延伸倍率)は122.66%/秒であった。次いで、一対のA層のうち、冷却ドラムに接触したA層に、40W・min/mの条件でコロナ処理をおこなったうえで、ワインダーでロール状に巻取った。
このような手順で厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムNAC1のマスターロール(巻長60000m、幅8000mm)を得た。
マスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムNAC1を巻出し、800mm幅でスリットしながら、かつ、コンタクトロールで面圧を、2軸ターレットワインダーで張力をかけながら、スリットされた二軸配向ポリエステルフィルムNAC1を、直径6インチ(152.2mm)の巻芯にロール状に巻き取った。
このような手順で、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1を得た。
【0325】
<二軸配向ポリエステルフィルムNAC2、NAC3、NAC4、NAC5、NAC7、NAC8、NAC9の作製>
表2の処方にしたがって、原料ポリエステルの混合比や製膜条件を変更したこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムNAC2、NAC3、NAC4、NAC5、NAC7、NAC8、NAC9を作製した。なお、キャスト速度は、これらすべてで70m/分であった。これらすべてで、幅方向延伸ゾーンの長さは12.2m、幅方向延伸速度(すなわちTD延伸倍率)は122.66%/秒であった。
【0326】
<二軸配向ポリエステルフィルムNAC6の作製>
表2の処方にしたがって、原料ポリエステルの混合比を変更したこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1と同様の方法で未延伸フィルムを得た。なお、キャスト速度は70m/分であった。
未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップで把持し、120℃の予熱ゾーンを走行させた後、130℃、長手方向(すなわちMD)4.0倍、幅方向(すなわちTD)4.2倍で同時二軸延伸した。次いで、幅方向の弛緩率を5%として、温度245℃で熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムNAC6を得た。
【0327】
【表2】
表2について補足説明する。表2に記載された「混合比」は、対象とする層を形成するために用いた原料ポリエステルの総質量を100質量%としたときの値で示されている。たとえば、実施例1のB層について、B層を形成するために用いたポリエステルA、EおよびGの総質量100質量%中、ポリエステルAが50質量%であったことを示す。
シリカ含有量は、対象とする層の質量に対する、シリカの質量(つまり、シリカの質量/対象とする層の質量)である。対象とする層の質量は、対象とする層を形成するための原料(たとえばポリエステルや粒子)の総質量を意味する。「CRPET」は、ポリエステルA、BおよびCの総称である。
Mgは、マグネシウム原子基準でのマグネシウム化合物の含有量を示す。この含有量は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対する、マグネシウム原子基準でのマグネシウム化合物の質量である。
Pは、リン原子基準でのリン化合物の含有量を示す。この含有量は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対する、リン原子基準でのリン化合物の質量である。
【0328】
ポリエステルE(すなわち化石燃料由来ポリエステル)50質量%をポリエステルD(すなわちメカニカルリサイクルポリエステル)に置き換えることによって、低分子量成分の含有量が過度に高くなり、二軸配向ポリエステルフィルムのカラーb値も過度に高くなった(NAC7、およびNAC8参照)。
【0329】
ポリエステルE(すなわち化石燃料由来ポリエステル)80質量%をポリエステルC(すなわち固有粘度0.83dl/gのケミカルリサイクルポリエステル)に置き換えることによって、固有粘度が過度に高くなるとともに、低分子量成分の含有量が過度に低くなった。そして、延伸時にフィルムが破断した(NAC7、およびNAC9参照)。
【0330】
いっぽう、ポリエステルEのいくらか(具体的には50質量%、20質量%、80質量%)をポリエステルA(すなわち固有粘度0.79dl/gのケミカルリサイクルポリエステル)に置き換えることによって、二軸配向ポリエステルフィルムを破断なく製造することができ、しかも、カラーb値を抑えることができた(NAC7、NAC1、NAC2およびNAC3参照)。同時二軸延伸でも、二軸配向ポリエステルフィルムを破断なく製造することができた(NAC6参照)
【0331】
ポリエステルEのいくらか(具体的には50質量%、80質量%)をポリエステルB(すなわち固有粘度0.59dl/gのケミカルリサイクルポリエステル)に置き換えることによっても、二軸配向ポリエステルフィルムを破断なく製造することができ、しかも、カラーb値を抑えることができた(NAC7、NAC4およびNAC5参照)。
【0332】
<二軸配向ポリエステルフィルムAC1~AC8の作製>
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC1を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC2と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC2を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC3と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC3を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC4と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC4を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC5と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC5を作製した。
未延伸フィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC6と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC6を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC7と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC7を作製した。
長手方向延伸後のフィルムに、塗工液1をファウンテンバーコート法でコートしたうえで、乾燥しつつテンターに導いたこと以外は、二軸配向ポリエステルフィルムNAC8と同様の方法で、二軸配向ポリエステルフィルムAC8を作製した。
【0333】
(塗工液1)
下記の配合比率で各材料を混合し、塗工液1(すなわち被覆層用樹脂組成物)を作製した。
水 54.40質量%
イソプロパノール 25.00質量%
オキサゾリン基含有樹脂 15.00質量%
アクリル樹脂 3.60質量%
ウレタン樹脂J 2.00質量%
【0334】
(オキサゾリン基含有樹脂)
オキサゾリン基含有樹脂として、市販の水溶性オキサゾリン基含有アクリレート(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」;固形分10%)を使用した。この樹脂のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであった。
【0335】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ジャパンコーティングレジン株式会社製「モビニール(登録商標)7980」 カルボキシ基あり)を使用した。このアクリル樹脂の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
【0336】
(ウレタン樹脂J)
ウレタン樹脂Jとして、市販のポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)W605」;固形分30% カルボキシ基あり)を使用した。このウレタン樹脂の酸価は25mgKOH/gであった。示差走査熱量測定(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)は100℃であった。H-NMRにより測定した、ポリイソシアネート成分全体に対する芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合は55モル%であった。
【0337】
<実施例1~18および比較例1~6>
二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8に、次に示す二通りの方法で無機薄膜層を形成した。
(無機薄膜層M-1の形成)
無機薄膜層M-1を形成するために二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8に酸化アルミニウムの蒸着をおこなった。具体的には、二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8を連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させたうえで巻き取った。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却金属ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながら二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8上に付着堆積させた。これによって、厚み30nmの酸化アルミニウム膜、すなわち無機薄膜層M-1を形成した。
(無機薄膜層M-2の形成)
無機薄膜層M-2を形成するために二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。これによって、厚み13nmの複合酸化物層、すなわち無機薄膜層M-2を形成した。複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0338】
そのうえで、いくつかの例(すなわち実施例3、6、9、12、15、18、比較例3、6)では、塗工液2をワイヤーバーコート法で無機薄膜層上に塗布し、200℃で15秒乾燥させた。つまり保護層を形成した。なお、乾燥後の塗布量は0.190g/m(Dry)であった。
(塗工液2)
下記の配合比率で各材料を混合し、塗工液2を作製した。
水 60.00質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ウレタン樹脂K 10.00質量%
ウレタン樹脂Kとして、市販のメタキシリレン基含有ウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)WPB341」;固形分30%)を使用した。このウレタン樹脂の酸価25mgKOH/gであった。DSCで測定したガラス転移温度(Tg)は130℃であった。H-NMRにより測定した、ポリイソシアネート成分全体に対する芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合は85モル%であった。
【0339】
このような手順で、実施例1~18および比較例1~6のガスバリアフィルムを作製した。
【0340】
【表3】
表3に記載された「PEsフィルム」は、二軸配向ポリエステルフィルムの略語として使用している。
【0341】
二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC6を用いたガスバリアフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムNAC8を用いたガスバリアフィルムよりも、酸素ガス透過度が低く、水蒸気透過度も低かった(実施例1~18および比較例4~6参照)。これは、レトルト処理後も同様であった。
【0342】
二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC6を用いたガスバリアフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムNAC8を用いたガスバリアフィルムよりも、ラミネート強度が高かった(実施例1~18および比較例4~6参照)。
【0343】
<実施例19~36および比較例7~12>
二軸配向ポリエステルフィルムNAC1~NAC8に代えて二軸配向ポリエステルフィルムAC1~AC8を用いたこと以外は同様の方法で、実施例19~36および比較例7~12のガスバリアフィルムを作製した。
【0344】
【表4】
表4に記載された「PEsフィルム」は、二軸配向ポリエステルフィルムの略語として使用している。
【0345】
二軸配向ポリエステルフィルムAC1~AC6を用いたガスバリアフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムAC8を用いたガスバリアフィルムよりも、酸素ガス透過度が低く、水蒸気透過度も低かった(実施例19~36および比較例10~12参照)。これは、レトルト処理後も同様であった。
【0346】
二軸配向ポリエステルフィルムAC1~AC6を用いたガスバリアフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムAC8を用いたガスバリアフィルムよりも、ラミネート強度が高かった(実施例19~36および比較例10~12参照)。
【産業上の利用可能性】
【0347】
本発明はガスバリアフィルムに関するため、本発明には産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0348】
7…ガスバリアフィルム、8…二軸配向ポリエステルフィルム、81…第一層、82…第二層、83…第三層、9…積層体、11…印刷層、21…シーラント層、22…シーラント層、31…無機薄膜層、32…アンカーコート層、33…保護層、51…基材層、61…中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14