(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018893
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/57 20230101AFI20240201BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240201BHJP
H02S 50/15 20140101ALN20240201BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
H02S50/15
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024257
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2022120680の分割
【原出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五反田 武志
(72)【発明者】
【氏名】大西 春樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝也
(72)【発明者】
【氏名】齊田 穣
(72)【発明者】
【氏名】戸張 智博
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA11
5F151DA03
5F151DA16
5F151DA18
5F151KA09
(57)【要約】
【課題】ペロブスカイト層に生じたピンホールを検出しやすくすることができる光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法は、一つまたは複数の光源と、駆動装置と、カメラと、計算機と、を持つ。光源は、ペロブスカイト層に、ペロブスカイト層を透過またはペロブスカイト層で反射の少なくとも一方が可能な検査光を照射する。駆動装置は、ペロブスカイト層を有する基板と光源との間の距離または角度の少なくとも一方を変化させる。カメラは、ペロブスカイト層を透過またはペロブスカイト層で反射した検査光の少なくとも一方の色相を検出する。計算機は、カメラが検出した、ペロブスカイト層上の色相が異なる点の位置を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト層と、
前記ペロブスカイト層の法線方向に対して斜めに延びるピンホールに形成された絶縁部と、を備える、光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層接合型の光電変換素子として、タンデム型太陽電池が知られている。タンデム型太陽電池は、半導体基板の受光面側に、第2光活性層を含む第2光電変換素子が備えられるとともに、半導体基板の受光面側とは反対側に、この半導体基板を第1光活性層として機能させる第1光電変換素子が備えられて構成される。第2光活性層として、ペロブスカイト型結晶構造の材料からなる光活性層(以下、ペロブスカイト層という)を持つものが知られている。ペロブスカイト型材料を用いた光電変換素子は、層形成に安価な塗布法が適用できるメリットがある。
【0003】
タンデム型太陽電池を製造する場合は、例えば、半導体基板の受光面側とは反対側に、この半導体基板を第1光活性層として機能させる第1光電変換素子を形成して中間体とする。次いで、中間体の受光面側に、第2光活性層を含む第2光電変換素子を形成して、タンデム型太陽電池を完成させる。
【0004】
第1光活性層として挙げられる結晶シリコンは、シリコンウェハから切り出す等して形成される。シリコンウェハの表面には切削痕があるため、ペロブスカイト層を厚膜化することが望ましい。
しかし、ペロブスカイト層を厚膜化すると、ペロブスカイト層にピンホールが生じやすい。厚膜化に伴うピンホールは、異物に起因するものの他、ペロブスカイトの結晶過程で生成されるものがある。ペロブスカイト層の形成を2ステップ塗布法(基板上にPBI2を塗布してからMAIの塗布を行う塗布法)で行う場合、2液目で形成されるものがある。厚膜化に伴うピンホールは、ペロブスカイト層の法線方向に対して傾斜した斜めピンホールとなりやすい。この斜めピンホールは、一定位置からの検出では発見し難く、補修の機会を失う虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ペロブスカイト層に生じたピンホールを検出しやすくすることができる光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法は、一つまたは複数の光源と、駆動装置と、カメラと、計算機と、を持つ。光源は、ペロブスカイト層に、ペロブスカイト層を透過またはペロブスカイト層で反射の少なくとも一方が可能な検査光を照射する。駆動装置は、ペロブスカイト層を有する基板と光源との間の距離または角度の少なくとも一方を変化させる。カメラは、ペロブスカイト層を透過またはペロブスカイト層で反射した検査光の少なくとも一方の色相を検出する。計算機は、カメラが検出した、ペロブスカイト層上の色相が異なる点の位置を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のタンデム型太陽電池に用いられる多層接合型光電変換素子を示す断面模式図。
【
図2】実施形態のシングル型太陽電池に用いられる多層接合型光電変換素子を示す断面模式図。
【
図3】実施形態の多層接合型光電変換素子のペロブスカイト層のピンホールを示す断面模式図。
【
図4】実施形態の光電変換素子の検査装置および製造装置の第1の実施形態を示す模式図。
【
図5】実施形態の光電変換素子の検査装置および製造装置の第2の実施形態を示す模式図。
【
図6】実施形態の光電変換素子の検査装置および製造装置の第3の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の光電変換素子の検査装置、光電変換素子の製造装置、光電変換素子、光電変換素子の製造方法を、図面を参照して説明する。
実施形態において、光電変換素子とは、太陽電池、またはセンサなどの光を電気に変換する素子と、発光素子などの電気を光に変換する素子と、の両方を意味する。前記両素子は、活性層が発電層として機能するか、発光層として機能するか、の差があるが、基本的な構造は同様である。
【0010】
[光電変換素子]
図1は、タンデム型太陽電池に用いられる多層接合型光電変換素子(光電変換素子)1を示す。
図1に示す多層接合型光電変換素子1は、図中下側から順に、第1電極機能層2と、結晶シリコンからなる第1光活性層3と、中間機能層4と、ペロブスカイト型結晶構造を有する光活性材料からなる第2光活性層(ペロブスカイト層)5と、第2電極機能層6と、が積層されて積層体7を構成している。
図1に示す多層接合型光電変換素子1において、第1光活性層3および第2光活性層5の受光面は、第2電極機能層6側の面(図中上面)とされている。
【0011】
第1電極機能層2は、例えば、第1電極と、第1電極と第1光活性層3との間に配置された第1機能層(導電層)と、を含んで構成されている(何れも図示略)。
【0012】
第1光活性層3は、第一導電型の結晶シリコン層から構成されている。第1光活性層3を構成する結晶シリコンは、一般的に光電池に用いられるシリコンと同様の構成を採用することができる。その構成は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ヘテロ接合型シリコンなどの結晶シリコンを含む結晶シリコンなどが挙げられる。結晶シリコンは、シリコンウェハから切り出した薄膜であってもよい。シリコンウェハとして、リンやヒ素などをドープしたn型シリコン結晶、ホウ素やガリウムなどをドーピングしたp型シリコン結晶も使用できる。p型シリコン結晶中の電子は長い拡散長を有しているので、第一導電型の結晶シリコンとしてはp型の結晶シリコンが好ましい。
【0013】
中間機能層4は、第1光活性層3を主体とするボトムセルと、第2光活性層5を主体とするトップセルと、を直列に接続する機能を少なくとも備えている。中間機能層4は、例えば、第1光活性層3に接する機能層(第2導電層)4aと、第2光活性層5に接する機能層(バッファ層)4cと、第2導電層4aとバッファ層4cとの間に挟まれた透明電極(基板)4bと、を含んで構成されている。
【0014】
第2光活性層5は、ペロブスカイト型結晶構造を有する光活性材料からなる。ペロブスカイト型結晶構造とは、ペロブスカイトと同じ結晶構造をいう。ペロブスカイト構造は、イオンA、BおよびXからなり、イオンBがイオンAに比べて小さい場合にペロブスカイト構造をとる場合がある。この結晶構造の化学組成は、下記一般式(1)で表すことができる。
【0015】
ABX3…(1)
【0016】
イオンAは、1級アンモニウムイオンを利用できる。具体的にはCH3NH3+(以下、MAということがある)、C2H5NH3+、C3H7NH3+、C4H9NH3+、およびHC(NH2)2+(以下、FAということがある)などが挙げられ、CH3NH3+が好ましいがこれに限定されるものではない。また、イオンAは、Cs+、1,1,1-トリフルオロ-エチルアンモニウムアイオダイド(FEAI)も好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
イオンBは、2価の金属イオンであり、Pb2+またはSn2+が好ましいがこれに限定されるものではない。
イオンXは、ハロゲンイオンが好ましく、例えばF-、Cl-、Br-、I-、およびAt-から選択され、Cl-、Br-、I-が好ましいがこれに限定されるものではない。
【0018】
イオンA、BまたはXを構成する材料は、それぞれ単一であっても混合であってもよい。構成するイオンはABX3の化学量論比と必ずしも一致しなくても機能できる。
【0019】
第2光活性層5のペロブスカイトを構成するイオンAは、原子量または、イオンを構成する原子量の合計(分子量)が45以上から構成されることが好ましい。更に好ましくは、イオンAは、133以下のイオンを含むことが好ましい。これらの条件のイオンAは、単体では安定性が低いため、一般的なMA(分子量32)を混合する場合がある。イオンAは、MAを混合するとシリコンのバンドギャップ1.1eVに近づく。これは、波長分割して効率を向上させるタンデムとしては、全体の特性が低下してしまうので好ましくない。イオンAが複数のイオンの組み合わせであってCsを含む場合、イオンAの全体個数に対してCsの個数の割合が0.1から0.9であることがより好ましい。
【0020】
この結晶構造は、立方晶、正方晶、直方晶等の単位格子をもち、各頂点にイオンAが、体心にイオンBが、体心を中心とした立方晶の各面心にイオンXがそれぞれ配置されている。この結晶構造において、単位格子に包含される、一つのイオンBと6つのイオンXとからなる八面体は、イオンAとの相互作用により容易にひずみ、対称性の結晶に相転移する。この相転移が結晶の物性を劇的に変化させ、電子または正孔が結晶外に放出され、発電が起こるものと推定されている。
【0021】
第2電極機能層6は、例えば、第2光活性層5に接する機能層(バッファ層)6aと、機能層6aに接する第2機能層(導電層)6bと、第2機能層6bから突出する第2電極6cと、を含んで構成されている。
【0022】
第1電極機能層2に含まれる図示略の第1機能層と、第2電極機能層6に含まれる第2機能層6bとは、第2光活性層5に対して、いずれかが正孔輸送層として機能し、他方が電子輸送層として機能する。実施形態の多層接合型光電変換素子1が、より優れた変換効率を達成するためには、これらの層の両方を具備することが好ましい。実施形態の多層接合型光電変換素子1は、少なくとも第2機能層6dのみを具備してもよい。
【0023】
第1電極機能層2に含まれる図示略の第1導電層と、中間機能層4に含まれる第2導電層4aとは、第1光活性層3の特性に応じて、n型層、p型層、p+型層、p++型層などを、キャリア収集効率の改良などの目的に応じて組み合わせることができる。第1光活性層3としてp型シリコンを用いる場合には、第2導電層4aとしてリンドープシリコン膜(n層)を、第1導電層としてp+層を、それぞれ組み合わせることができる。
【0024】
図1に示す多層接合型光電変換素子1は、二つの光活性層3,5を具備している。多層接合型光電変換素子1は、第2光活性層5を具備する単位をトップセル、第1光活性層3を具備する単位をボトムセルとして、これらを中間機能層4により直列に接続した構造を有するタンデム型太陽電池とされている。第1電極機能層2と第2電極機能層6とは、陽極または陰極となり、そこから多層接合型光電変換素子1によって生成した電気エネルギーが外部に取り出される。
【0025】
図2は、シングル型太陽電池に用いられる多層接合型光電変換素子(光電変換素子)11を示す。
図2に示す多層接合型光電変換素子11は、図中下側から順に、透明基板13と、第1電極機能層14と、ペロブスカイト型結晶構造を有する光活性材料からなる光活性層(ペロブスカイト層)15と、第2電極機能層16と、が積層されて積層体17を構成している。
図2に示す多層接合型光電変換素子11において、光活性層15の受光面は、第2電極機能層16側の面(図中上面)とされている。
【0026】
光活性層15は、
図1の多層接合型光電変換素子11の第2光活性層5と同様の構成である。
第2電極機能層16は、例えば、光活性層15に接する機能層(導電層)16bと、機能層16bから突出する第2電極16cと、を含んで構成されている。
第1電極機能層14と第2電極機能層16とは、陽極または陰極となり、そこから多層接合型光電変換素子11によって生成した電気エネルギーが外部に取り出される。
【0027】
[中間体]
次に、多層接合型光電変換素子1,11の製造課程の途中において得られる中間体8,18について説明する。中間体8は、光電変換素子1の製造過程の中間体であり、中間体18は、光電変換素子11の製造過程の中間体である。
【0028】
図1~
図3に示すように、中間体8,18は、製膜対象物として電極層8a,18aを有する基板8b,18bを備え、電極層8a,18a上にペロブスカイト溶液が塗布される。塗布後のペロブスカイト溶液は、乾燥を経てペロブスカイト層5a,15aを形成する。溶液の塗布方法(および塗布装置)は、溶液を製膜対象物上に均一な膜厚で供給できる方法(および装置)であればよく、例えばスピンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、スプレー法、メニスカス塗布法等の液体塗布法が適用される。
【0029】
例えば、タンデム型太陽電池における中間体8は、基板8b(第1電極機能層2および第1光活性層3)と、電極層8a(中間機能層4)と、ペロブスカイト層5aと、が積層されている。
例えば、シングル型太陽電池における中間体18は、基板18b(透明基板13)と、電極層18a(第1電極機能層14)と、ペロブスカイト層15aと、が積層されている。
【0030】
例えば、タンデム型太陽電池における中間体8において、第1光活性層3として挙げられる結晶シリコンは、シリコンウェハから切り出す等して形成される。シリコンウェハ等の基板の表面に切削痕があることを考慮すると、ペロブスカイト層5a,15aは厚膜化が望まれる。
【0031】
ペロブスカイト層5a,15aが厚膜化されると、乾燥後のペロブスカイト層5a,15aには、
図3に示すように、ペロブスカイト層5a,15aをその表裏面と垂直な厚さ方向(法線方向)で貫通する通常のピンホールPaの他、ペロブスカイト層5a,15aの法線方向に対して傾斜したピンホール(以下、斜めピンホールという。)Pbが生じることがある。斜めピンホールPbは、法線方向から照射した検査光Laでは光が通らず、検出がされ難い。斜めピンホールPbは、法線方向に対する傾斜方向から照射した検査光Lbであれば光が通るが、斜めピンホールPbの傾斜の向きおよび角度は様々であり、一定方向から検査光を照射しても検出され難い。
【0032】
ペロブスカイト層5a,15a上に透明電極膜(第2電極機能層6又は26)が積層される工程を経て、太陽電池が製造される。ペロブスカイト層5a,15aにある大きさ以上のピンホールや異物が存在する等の異常が生じている場合には、ペロブスカイト層5a,15aの異常個所において表裏面間の短絡が生じやすく、最終的に出来上がった太陽電池の光電変換率を低下させる。
【0033】
この異常個所(特にピンホール)に対して補修処理を行うことで、性能の低下を抑制することができる。処理としては、例えば、ペロブスカイト層5a,15aを形成する原材料の溶液を付着させることで、ペロブスカイト構造(結晶)の乾燥物を形成する。また、別の例としては、絶縁性物質を塗布する、あるいは絶縁性を有する物質を溶質とする溶液を付着させて乾燥させ、絶縁性のある乾燥物を残存させる。さらに別の例としては、ペロブスカイト層5a,15aの表裏面の電極をレーザで除去するか、レーザの照射により基板8bのうちピンホールに接する面を焼成させて絶縁部を形成させる。電極が除去されるか焼成されるかはレーザのエネルギーによる。これにより、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールにおける短絡を防ぎ、太陽電池の変換効率を良好に維持する。
【0034】
[光電変換膜素子の検査装置および製造装置]
次に、実施形態の光電変換素子の検査装置および製造装置について、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態における光電変換素子の製造工程を模式的に示している。
図4に示すように、第1の実施形態の光電変換素子の検査装置20は、ペロブスカイト層5a,15aが形成された中間体8,18を動かしながら、中間体8,18に検査光(例えばITO(透明導電膜)での反射が強い波長の可視光)を照射する。検査装置20は、ペロブスカイト層5a,15aを経た検査光(透過光および反射光の少なくとも一方)の色相を検出することで、ペロブスカイト層5a,15aの異常を発見する。
【0036】
第1の実施形態の光電変換素子の製造装置30は、検査装置20で発見された異常個所Pcに対し、ペロブスカイト溶液を塗布する(付着させる)。製造装置30は、前記異常個所Pcをペロブスカイト構造の乾燥物で被覆することで、ペロブスカイト層5a,15aを補修する。例えば、ペロブスカイト溶液は、ペロブスカイト構造を少なくとも一部に形成する材料であれば制約されない。
前述したように、ペロブスカイト構造とは、結晶構造のひとつであり、ペロブスカイトと同じ結晶構造をいう。典型的には、ペロブスカイト構造は、イオンA、BおよびXからなり、イオンBがイオンAに比べて小さい場合にペロブスカイト構造をとる場合がある。この結晶構造の化学組成は、下記一般式(1)で表すことができる。
ABX3…(1)
【0037】
ここで、Aは1級アンモニウムイオンを利用できる。具体的にはCH3NH3+、C2H5NH3+、C3H7NH3+、C4H9NH3+、およびHC(NH2)2+などが挙げられ、CH3NH3+が好ましいがこれに限定されるものではない。また、AはCs、1,1,1-trifluoro-ethyl ammonium iodide(FEAI)も好ましいがこれに限定されるものではない。また、Bは2価の金属イオンであり、Pb2-またはSn2-、が好ましいがこれに限定されるものではない。また、Xはハロゲンイオンが好ましい。例えばF-、Cl-、Br-、I-、およびAt-から選択され、Cl-、Br-またはI-が好ましいがこれに限定されるものではない。イオンA、BまたはXを構成する材料は、それぞれ単一であっても混合であってもよい。構成するイオンはABX3の比率と必ずしも一致しなくても機能できる。
【0038】
図4に示すように、検査装置20は、中間体8,18のペロブスカイト層5a,15aに、このペロブスカイト層5a,15aを透過する第一検査光L1を照射する第一ライト21と、ペロブスカイト層5a,15aを透過した第一検査光L1の色相を検出する第一カメラ22と、ペロブスカイト層5a,15aにその表面(上面)で反射する第二検査光L2を照射する第二ライト24と、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L2の色相を検出する第二カメラ25と、中間体8,18を載置したテーブル27aを適宜変位させ、中間体8,18と第一ライト21および第二ライト24との間の距離および角度を変化させるテーブル駆動装置27と、第一カメラ22および第二カメラ25の検出情報から、ペロブスカイト層5a,15a上の色相が異なる点の位置を算出する計算機28と、を備えている。
【0039】
テーブル27aの下方には、テーブル27a上に載置した中間体8,18に対して下方側から第一検査光L1を照射する第一ライト21が配置されている。第一ライト21は、例えば蛍光灯、LED等の光源を備え、調光器により明るさが調整される。第一ライト21は、出射した第一検査光L1が中間体8,18(基板およびペロブスカイト層5a,15a)を透過するように、中間体8,18の法線方向に近い角度で配置されている。第一検査光L1は、ペロブスカイト層5a,15aを透過して透過光L1’となる。
【0040】
テーブル27aの上方で第一ライト21の照射方向には、中間体8,18を透過した第一検査光L1(透過光L1’)が入射される第一カメラ22が配置されている。第一カメラ22は、ペロブスカイト層5a,15aの上面のうち、第一検査光L1が透過している部分を撮影する。第一カメラ22は、撮影部分の透過光L1’を電気信号に変換し、計算機28の信号処理部へ送信する。信号処理部は、第一カメラ22が撮影した画像から、ペロブスカイト層5a,15aの大部分を占める一般箇所(正常箇所)に対して色相が異なる箇所を検出する。前記「色相が異なる箇所」は、ペロブスカイト層5a,15aのピンホール等の異常に応じて現れる。計算機28は、前記「色相が異なる箇所」を異常個所Pcとして認識する。第一カメラ22と第一ライト21とは、透過式検査装置を構成している。
【0041】
テーブル27aの上方には、テーブル27a上の中間体8,18に対して上方側から第二検査光L2を照射する第二ライト24が配置されている。第二ライト24は、例えば蛍光灯、LED等の光源を備え、調光器により明るさが調整される。第二ライト24は、出射した第二検査光L2が、ペロブスカイト層5a,15aの上面に対して斜めに入射するように配置されている。第二検査光L2は、ペロブスカイト層5a,15aの上面で反射して反射光L2’となる。
【0042】
テーブル27aの上方で第二検査光L2の反射方向には、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L2(反射光L2’)が入射される第二カメラ25が配置されている。第二カメラ25は、ペロブスカイト層5a,15aの上面のうち、第二検査光L2が当たっている部分を撮影する。第二カメラ25は、撮影部分の反射光L2’を電気信号に変換し、計算機28の信号処理部へ送信する。信号処理部は、第二カメラ25が撮影した画像から、ペロブスカイト層5a,15aの一般箇所(正常箇所)に対して色相が異なる箇所を検出する。計算機28は、前記「色相が異なる箇所」を異常個所Pcとして認識する。第二カメラ25と第二ライト24とは、正反射式検査装置を構成している。第二カメラ25と第二ライト24とは、中間体8,18の傾き動作に応じて一体的に傾くことが望ましい。
【0043】
テーブル駆動装置27は、テーブル27aをその上面(中間体載置面)が水平な状態から前後左右に傾くように駆動させるとともに、テーブル27aを垂直軸回りに回転させることが可能である。図中符号27bはテーブル駆動装置27の制御部を示す。制御部27bは、テーブル27aが予め定めた初期位置からどれだけ傾きかつ回転したかの動作量を検知し、計算機28に出力する。計算機28は、制御部27bから出力されたテーブル27aの動作量に基づき、テーブル27a上面の各部の位置を認識する。
【0044】
計算機28はコンピュータ装置であり、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェア装置と、CPUが実行するプログラム(ソフトウェア)等を記憶する記憶装置と、を備えている。計算機28の入力部には、第一カメラ22および第二カメラ25の各出力部およびテーブル駆動装置27の制御部27bが接続されている。計算機28の出力部には、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールを補修するための補修装置(後述するインクジェット装置)31の制御部31aが接続されている。
【0045】
例えば、計算機28は、テーブル駆動装置27の制御部27bから得たテーブル27aの動作量に基づき、ペロブスカイト層5a,15a上の座標を設定する。例えば、計算機28は、テーブル27a(中間体8,18)と第一ライト21および第二ライト24との間の相対位置および相対角度に基づき、第一カメラ22および第二カメラ25が検出したペロブスカイト層5a,15a上の「色相が異なる点(箇所)」の位置を定める。前記「色相が異なる点」の色相自体は、ペロブスカイト層5a,15aの異常の種類に応じて異なる。実施形態の検査装置20は、特に、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールに相当する「色相が異なる点」の位置を定める。検査装置20は、ペロブスカイト層5a,15aの異常の有無と、異常がある場合にはその位置と、を検出可能である。
【0046】
第1の実施形態の製造装置30は、計算機28が定めた「色相が異なる点」の位置に対して、ペロブスカイト層5a,15aを形成する原材料の溶液を付着させて補修する。図中符号31は前記溶液をペロブスカイト層5a,15aに付着(塗布)させる補修装置を示す。例えば、補修装置31は、前記溶液を付着させるインクジェット装置である。インクジェット装置で「色相が異なる点」の位置に前記溶液を付着させ乾燥させることで、当該位置にペロブスカイト構造(結晶)が形成され、ピンホールを除去することができる。または、絶縁性を有する物質を溶質とする溶液を付着させて乾燥させ、溶液の乾燥物を残存させることで、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールにおける短絡を防ぐことでもよい。これにより、当該ペロブスカイト層5a,15aを有する中間体8,18を用いた太陽電池の変換効率を向上させることができる。
なお、第1の実施形態において、インクジェット装置に代わり、後述する第2の実施形態のレーザ装置を補修装置31に用いてもよい。
【0047】
実施形態のピンホールとは、ペロブスカイト層5a,15aの中で異物が剥がれた跡や、ペロブスカイト層5a,15aが薄くなっている部分や、ペロブスカイト層5a,15aが存在しない部分である。ピンホールは微小だが、ライトとカメラとを用いて透過式検査装置および正反射式検査装置を構成することで、視覚的に観察することができる。
【0048】
特に、斜めピンホールは、一定方向から検査光を照射しても検出され難いが、中間体8,18と第一ライト21および第二ライト24との間の相対位置および相対角度を変化させながら検査を行うことで、斜めピンホールを検出しやすくすることができる。
【0049】
検出した異常個所Pcは、ペロブスカイト層5a,15aを形成する原材料の溶液で補修可能である。溶液で補修した箇所には、絶縁性の乾燥物(膜)が形成される。具体的に、当該箇所にはペロブスカイト構造(結晶)が形成され、ピンホールがあっても絶縁材料で埋められる。その結果、ペロブスカイト層5a,15aの異常(特にピンホール)による影響を可及的に無くし、太陽電池の変換効率および耐久性の向上を図ることができる。
【0050】
溶液による補修がなされた中間体8,18は、ペロブスカイト層5a,15aと、ペロブスカイト層5a,15aの法線方向に対して斜めに延びるピンホールに形成された絶縁部と、を備える光電変換素子を構成する。ペロブスカイト層5a,15aの圧膜化に伴い、ペロブスカイト層5a,15aの法線方向に対して傾斜した斜めピンホールが生じやすくなっても、事後的な補修によってペロブスカイト層5a,15aでの短絡が抑えられる。その結果、太陽電池の変換効率および耐久性の向上を図ることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における光電変換素子の検査装置および製造装置について、図面を参照して説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、テーブル127aおよび中間体8,18を水平移動させるテーブル駆動装置127を備えるとともに、拡散光を照射する第一ライト121および第二ライト124を備え、さらにペロブスカイト層5a,15aの異常個所にレーザを照射するレーザ装置を備える点で特に異なる。その他の、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0052】
図5は、第2の実施形態における光電変換素子の製造工程を模式的に示している。
図5に示すように、第2の実施形態の光電変換素子の検査装置120は、ペロブスカイト層5a,15aが形成された中間体8,18を水平方向にのみ動かしながら、中間体8,18に検査光を照射する。検査光は拡散光であり、中間体8,18の位置に応じてペロブスカイト層5a,15aへの入射角度が異なる。検査装置120は、ペロブスカイト層5a,15aを経た検査光(透過光および反射光の少なくとも一方)の色相を検出することで、ペロブスカイト層5a,15aの異常を発見する。
【0053】
第2の実施形態の光電変換素子の製造装置130は、検査装置120で発見された異常個所に対し、レーザを照射する。製造装置130は、前記異常個所の電極をレーザで除去するか絶縁部を形成することで、異常個所における短絡を防ぐ。
【0054】
図5に示すように、検査装置120は、中間体8,18のペロブスカイト層5a,15aに、このペロブスカイト層5a,15aを透過する第一検査光(拡散光)L3を照射する第一ライト121と、ペロブスカイト層5a,15aを透過した第一検査光L3の色相を検出する第一カメラ122と、ペロブスカイト層5a,15aにその表面(上面)で反射する第二検査光(拡散光)L4を照射する第二ライト124と、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L4の色相を検出する第二カメラ125と、中間体8,18を載置したテーブル127aを水平移動させるテーブル駆動装置127と、第一カメラ122および第二カメラ125の検出情報から、ペロブスカイト層5a,15a上の色相が異なる点の位置を算出する計算機128と、を備えている。
【0055】
テーブル127aの下方には、テーブル127a上に載置した中間体8,18に対して下方側から第一検査光L3を照射する第一ライト121が配置されている。第一ライト121は、拡散光を照射する以外は、第1の実施形態の第一ライト21と同様の構成である。
テーブル127aの上方で第一ライト121の照射方向には、中間体8,18を透過した第一検査光L3(透過光L3’)が入射される第一カメラ122が配置されている。第一カメラ122は、拡散光を検知する以外は、第1の実施形態の第一カメラ22と同様の構成である。第一カメラ122と第一ライト121とは、透過式検査装置を構成している。
【0056】
テーブル127aの上方には、テーブル127a上の中間体8,18に対して上方側から第二検査光L4を照射する第二ライト124が配置されている。第二ライト124は、拡散光を照射する以外は、第1の実施形態の第二ライト24と同様の構成である。
テーブル127aの上方で第二検査光L4の反射方向には、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L4(反射光L4’)が入射される第二カメラ125が配置されている。第二カメラ125は、拡散光を検知する以外は、第1の実施形態の第二カメラ25と同様の構成である。第二カメラ125と第二ライト124とは、正反射式検査装置を構成している。
【0057】
テーブル駆動装置127は、テーブル127aをその上面(中間体載置面)が水平なまま前後左右の水平方向に駆動させる。図中符号127bはテーブル駆動装置127の制御部を示す。制御部127bは、テーブル127aが予め定めた初期位置からどれだけ移動したかの動作量を検知し、計算機128に出力する。計算機128は、制御部127bから出力されたテーブル127aの動作量に基づき、テーブル127a上面の各部の位置を認識する。例えば、テーブル127aの動作量(水平移動量)は、テーブル127aに載置可能な中間体8,18の一枚分の水平幅程度である。
【0058】
テーブル127aおよび中間体8,18は、第一ライト121および第二ライト124に対して水平方向で移動するが、第一ライト121および第二ライト124が拡散光を照射するため、ライトは発光素子を内部に有し、発光素子からの光を散乱させる散乱物質を有する。散乱物質は、板状、粒子状等、もしくは屈折率の異なる材料から成り、光路が変化するものであれば、制約されない。
【0059】
検査装置120は、光電変換素子の製造ラインから独立しているが、製造ラインの途中に組み込まれてもよい。この場合、テーブル駆動装置127として、製造ラインの搬送コンベアを利用してもよい。
計算機128は、ペロブスカイト層5a,15a上の「色相が異なる点(箇所)」の位置を定めるプログラムの詳細を除き、第1の実施形態の計算機28と同様の構成である。
【0060】
第2の実施形態の製造装置130は、計算機128が定めた「色相が異なる点」の位置に対して、レーザを照射して補修する。図中符号131は前記レーザをペロブスカイト層5a,15aに照射する補修装置、符号131aは補修装置131の制御部をそれぞれ示す。例えば、補修装置131は、波長が1064nm、532nm、355nm、266nmを有するレーザ装置である。レーザ装置で「色相が異なる点」の位置にレーザを照射することで、当該異常個所の電極をレーザで除去または絶縁可能となり、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールにおける短絡を防ぐ。これにより、当該ペロブスカイト層5a,15aを有する中間体8,18を用いた太陽電池の変換効率を向上させることができる。
なお、第2の実施形態において、レーザ装置に代わり、第1の実施形態のインクジェット装置を補修装置131に用いてもよい。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態における光電変換素子の検査装置および製造装置について、図面を参照して説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態に対して、基板にペロブスカイト溶液を塗布するためのスピンコート装置をテーブル駆動装置に利用する点で特に異なる。その他の、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0062】
図6は、第3の実施形態における光電変換素子の製造工程を模式的に示している。
図6に示すように、第3の実施形態の光電変換素子の検査装置220は、ペロブスカイト層5a,15aが形成された中間体8,18を垂直軸回りに回転させながら、中間体8,18に検査光を照射する。検査光は拡散光であり、中間体8,18の位置に応じてペロブスカイト層5a,15aへの入射角度が異なる。検査装置220は、ペロブスカイト層5a,15aを経た検査光(透過光および反射光の少なくとも一方)の色相を検出することで、ペロブスカイト層5a,15aの異常を発見する。
【0063】
第3の実施形態の光電変換素子の製造装置230は、検査装置220で発見された異常個所に対し、第1の実施形態のようにペロブスカイト溶液または溶質が絶縁性を有する溶液を塗布するか、第2の実施形態のようにレーザを照射する。
【0064】
図6に示すように、検査装置220は、中間体8,18のペロブスカイト層5a,15aに、このペロブスカイト層5a,15aを透過する第一検査光L5(拡散光)を照射する第一ライト221と、ペロブスカイト層5a,15aを透過した第一検査光L5の色相を検出する第一カメラ222と、ペロブスカイト層5a,15aにその表面(上面)で反射する第二検査光L6(拡散光)を照射する第二ライト224と、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L6の色相を検出する第二カメラ225と、中間体8,18を載置したテーブル227aを水平回転させるスピンコード装置(駆動装置)227と、第一カメラ222および第二カメラ225の検出情報から、ペロブスカイト層5a,15a上の色相が異なる点の位置を算出する計算機228と、を備えている。
【0065】
テーブル227aの下方には、テーブル227a上に載置した中間体8,18に対して下方側から第一検査光L5を照射する第一ライト221が配置されている。第一ライト221は、拡散光を照射する以外は、第1の実施形態の第一ライト221と同様の構成である。
テーブル227aの上方で第一ライト221の照射方向には、中間体8,18を透過した第一検査光L5(透過光L5’)が入射される第一カメラ222が配置されている。第一カメラ222は、拡散光を検知する以外は、第1の実施形態の第一カメラ22と同様の構成である。第一カメラ222と第一ライト221とは、透過式検査装置を構成している。
【0066】
テーブル227aの上方には、テーブル227a上の中間体8,18に対して上方側から第二検査光L6を照射する第二ライト224が配置されている。第二ライト224は、拡散光を照射する以外は、第1の実施形態の第二ライト224と同様の構成である。
テーブル227aの上方で第二検査光L6の反射方向には、ペロブスカイト層5a,15aで反射した第二検査光L6(反射光L6’)が入射される第二カメラ225が配置されている。第二カメラ225は、拡散光を検知する以外は、第1の実施形態の第二カメラ25と同様の構成である。第二カメラ225と第二ライト224とは、正反射式検査装置を構成している。
【0067】
スピンコート装置227は、公知のスピンコート装置に対し、テーブル227aを低回転で回転可能な検査モードを有している。図中符号227bはスピンコート装置227の制御部を示す。制御部227bは、テーブル227aが予め定めた初期位置からどれだけ回転したかの動作量を検知し、計算機228に出力する。計算機228は、制御部227bから出力されたテーブル227aの動作量に基づき、テーブル227a上面の各部の位置を認識する。
計算機228は、ペロブスカイト層5a,15a上の「色相が異なる点(箇所)」の位置を定めるプログラムの詳細を除き、第1の実施形態の計算機28と同様の構成である。
【0068】
第3の実施形態の製造装置230は、計算機228が定めた「色相が異なる点」の位置に対して補修する。図中符号231は補修装置、符号231aは補修装置231の制御部をそれぞれ示す。「色相が異なる点」の位置に前記溶液を付着させ乾燥させることで、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールを除去する、または絶縁物を形成することで短絡を防ぐ。または、「色相が異なる点」の電極をレーザで除去するまたは絶縁部を形成することで、ペロブスカイト層5a,15aのピンホールにおける短絡を防ぐ。これにより、当該ペロブスカイト層5a,15aを有する中間体8,18を用いた太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0069】
スピンコート装置を利用し、ペロブスカイト層5a,15aが形成された中間体8,18を回転させながら、中間体8,18全域でペロブスカイト層5a,15aの異常を検査することができる。ペロブスカイト層5a,15aの法線方向に対して斜めに検査光を照射することで、ペロブスカイト層5a,15aの斜めピンホールを検出しやすくなる。検査光が拡散光であったり中間体8,18と第一ライト221および第二ライト224との間の相対角度を変化可能であったりすれば、様々な傾斜の斜めピンホールを検出しやすくなる。その結果、ペロブスカイト層5a,15aの異常(特にピンホール)を可及的に無くし、太陽電池の変換効率および耐久性の向上を図ることができる。光電変換素子の製造工程で用いるスピンコート装置を利用することで、別途テーブル駆動装置を設ける場合に比べて、設備費の低減を図ることができる。
【0070】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、主に検査装置と補修装置とについて説明したが、補修を行った場合に補修の成否を確認する装置をさらに備えてもよい。具体的には、補修装置の後工程に検査装置と同等の装置を備えて検査してもよいし、補修装置で補修を行った場合に前工程の検査装置に戻して再度検査を行ってもよい。また、補修後の検査を行う際は、補修を行った箇所(補修前に異常ありと判定した箇所)に重点的に検査をおこなってもよい。さらに、補修の内容によっては、補修箇所は異常判定時とも周囲の正常な箇所とも色相が異なるので、その場合は補修前の異常判定時の色相と補修後の色相を比較して補修成否を判定してもよい。
【0071】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、一つまたは複数の光源と、駆動装置と、カメラと、計算機と、を持つことにより、ペロブスカイト層を有する基板と光源との間の相対距離および相対角度を適宜変化させながら、検査光の透過光および反射光の少なくとも一方を検出可能となる。これにより、ペロブスカイト層の異常を検出しやすくすることができる。特に、基板と光源との間の相対角度を変化させながら検査を行うことで、ペロブスカイト層の法線方向に対して傾斜した斜めピンホールを検出しやすくすることができる。その結果、ペロブスカイト層の異常(特にピンホール)を可及的に無くし、太陽電池の変換効率および耐久性の向上を図ることができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1,11…光電変換素子、5a,15a…ペロブスカイト層、8b,18b…基板、20,120,220…検査装置、21,121,221…第一ライト(光源)、22,122,222…第一カメラ(カメラ)、24,124,224…第二ライト(光源)、25,125,225…第二カメラ(カメラ)、27,127…テーブル駆動装置(駆動装置)、28,128,228…計算機、30,130,230…製造装置、31,131,231…補修装置、227…スピンコート装置(駆動装置)、L1,L3,L5…第一検査光(検査光)、L2,L4,L6…第二検査光(検査光)、Pa,Pb…ピンホール