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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018944
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】硬化体及び硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20240201BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20240201BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B24/04
C04B24/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077050
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022121088
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 風彦
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB16
4G112PB17
4G112PC14
(57)【要約】
【課題】硬化体に遊離MgOが含まれる場合であっても、遊離MgOの水和反応による体積膨張を抑制し、且つ、硬化体の強度不足を解決することのできる硬化体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】硬化体であって、遊離MgOを含有するスラグ、結合材及び有機酸アルミニウムを含み、当該有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m以上7.5kg/m以下であり、遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/m以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離MgOを含有するスラグ、結合材及び有機酸アルミニウムを含み、
前記有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m以上7.5kg/m以下であり、前記遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/m以下である、硬化体。
【請求項2】
硬化体の製造方法であって、
遊離MgOを含有するスラグ、結合材及び有機酸アルミニウムを混合して混合物とする混合ステップと、
前記混合物に水を加えて混練する混練ステップと、
混練した前記混合物を硬化させる硬化ステップと、
を有し、
前記混合ステップで混合する前記有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m以上7.5kg/m以下であり、前記遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/m以下である、硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離MgOによる水和膨張を抑制できる硬化体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程では、精錬中に耐火物に含まれるMgOがスラグに溶解し、耐火物が溶損することを防ぐため、スラグに飽和溶解度以上のMgOを添加する操業が行われることがある。このような精錬で発生するスラグ中には、精錬中に未反応となったMgOおよびスラグが冷却される過程で晶出したMgOが存在する。このような未反応のMgOと晶出したMgOを遊離MgOという。
【0003】
製鋼スラグを活用する試みとして、例えば特許文献1に開示されているような、製鋼スラグを利用した硬化体がある。しかし、遊離MgOを含むスラグは、長期にわたって遊離MgOの水和反応が進行し、膨張する性質があるため、硬化体の膨張ひび割れの懸念があり、硬化体の原料としての活用は困難である。ここで、遊離MgOの水和反応とは、製鋼スラグ中の遊離MgOが雨水や海水などの水分と接触してMg(OH)を生成する反応(MgO+HO→Mg(OH))であり、この反応によって体積が膨張する。
【0004】
耐火物の分野では、例えば、特許文献2に開示されているような、耐火物表面にホウ酸などの結晶被膜を形成するMgOの水和抑制方法が周知である。特許文献2には、塩基性耐火煉瓦の表面に硫酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩の中の1種または2種以上の結晶被膜を形成する塩基性耐火煉瓦の消化防止方法において、塩基性耐火煉瓦に、水の重量をa(g)、飽和溶解度をb(g)、溶質の重量をc(g)とした場合、100c/(a×b)によって示される式の値が0.2~1.0の値を有する水溶液を含浸するかもしくは塗布したのち、この水溶液を乾燥する、塩基性耐火煉瓦の消化防止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-152364号公報
【特許文献2】特開平8-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術に基づき、遊離MgOを含有する製鋼スラグを材料として、遊離MgOの水和膨張を抑えるために、Bを含有させたスラグ硬化体を試作したところ、得られた硬化体の28日圧縮強度は20N/mmに満たず、コンクリートの代替としての使用に耐えられるものではなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、硬化体に遊離MgOが含まれる場合であっても、遊離MgOの水和反応による体積膨張を抑制し、且つ、硬化体の強度不足を解決することのできる硬化体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]遊離MgOを含有するスラグ、結合材及び有機酸アルミニウムを含み、前記有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m以上7.5kg/m以下であり、前記遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/m以下である、硬化体。
[2]硬化体の製造方法であって、遊離MgOを含有するスラグ、結合材及び有機酸アルミニウムを混合して混合物とする混合ステップと、前記混合物に水を加えて混練する混練ステップと、混練した前記混合物を硬化させる硬化ステップと、を有し、前記混合ステップで混合する前記有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m以上7.5kg/m以下であり、前記遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/m以下である、硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化体に遊離MgOが含まれる場合であっても、遊離MgOによる水和膨張に起因する膨張ひび割れの発生を抑制でき、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。本実施形態に係る硬化体の特徴は、材料に有機酸アルミニウムを用いることにある。詳細は明らかではないが、有機酸アルミニウムを用いることで、遊離MgOを含む硬化体中において下記(1)~(3)の効果が得られるものと考えられる。
【0011】
(1)有機酸アルミニウム中の有機酸が遊離MgOの表面でキレートを形成し、遊離MgOの水和を抑制する。
(2)有機酸アルミニウム中のアルミニウムイオンがゲル状の水酸化アルミニウム沈殿を形成し、硬化体中での遊離MgOと水との接触を阻害する。
(3)上記水酸化アルミニウムゲルが結合材としても働き、硬化体の強度向上に寄与する。
【0012】
上記(1)について、有機酸アルミニウムを用いると、有機酸アルミニウムが硬化体中の水に溶解、電離して有機酸イオンと水酸化アルミニウムを生成するものと考えられる。遊離MgO表面においては生成した乳酸有機酸とMg2+とがキレートを形成することによってMg2+が安定化される。これにより、Mg2++2HO→Mg(OH)+2Hの反応が抑制され、Mg(OH)の生成とMg(OH)の生成に伴う体積膨張とが抑制される。
【0013】
また、上記(2)について、ゲル状の水酸化アルミニウム沈殿が遊離MgOの表面に堆積することで、遊離MgOと水との接触を阻害する。これにより、Mg2++2HO→Mg(OH)+2Hの反応が抑制され、Mg(OH)の生成とMg(OH)の生成に伴う体積膨張とが抑制される。
【0014】
さらに、上記(3)について、一般的に硬化体の結合材としては高炉スラグ微粉末と普通ポルトランドセメントが用いられるが、有機酸アルミニウムから生成する水酸化アルミニウムのゲル状沈殿がこれらの結合材を補助する役割を担うと考えられる。これによって、有機酸アルミニウム未使用の硬化体と比較して強度は同等以上になる。以上の理由から、硬化体の強度を低下させることなく遊離MgOの水和反応による体積膨張を抑制するために、遊離MgOを含有する硬化体の材料として有機酸アルミニウムを用いることが必要になる。
【0015】
本実施形態に係る硬化体では、遊離MgOの水和膨張を抑制するために含まれる有機酸アルミニウムの単位量を1.0kg/m以上7.5kg/m以下とする。ここで、有機酸アルミニウムの単位量とは、硬化体1mあたりの有機酸アルミニウムの含有量である。
【0016】
有機酸アルミニウムの単位量が1.0kg/m未満になると遊離MgOによる水和膨張を抑制する効果が小さくなる。また、有機酸アルミニウムの単位量が7.5kg/mより多くなると、硬化体の材料となる高炉スラグ微粉末へのアルカリ刺激が不足し、硬化体が固化しなくなるので、当該固化体の強度が低下する。
【0017】
本実施形態に係る硬化体で用いられる有機酸アルミニウムとして、蟻酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、乳酸アルミニウムを用いてよく、この中では乳酸アルミニウムを用いることが好ましい。また、有機酸アルミニウムは、水に溶けるものであればよい。また、有機酸アルミニウムは、正塩だけでなく塩基性塩の有機酸アルミニウムを用いてもよい。有機酸アルミニウムとして、塩基性乳酸アルミニウムを用いることがより好ましい。さらに、固体の有機酸アルミニウムを用いてもよく、有機酸アルミニウムを水に溶解させた水溶液の有機酸アルミニウムを用いてもよい。
【0018】
本実施形態に係る硬化体の結合材として、高炉スラグ微粉末を用いてもよい。高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを粉砕したものである。高炉スラグ微粉末としては、粒径が約0.1mm以下であって、ブレーン法によって測定される比表面積が約3000cm/g以上の高炉スラグ微粉末を用いることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る硬化体の結合材として高炉スラグ微粉末に代えて、もしくは、高炉スラグ微粉末とともに普通ポルトランドセメント、エコセメント、フライアッシュ、高炉セメント及び早強セメントなどのセメントを使用してもよい。
【0020】
また、本実施形態に係る硬化体の骨材として、遊離MgOを含有するスラグを用いることが好ましい。上述したように、遊離MgOを含有するスラグを用いたとしても有機酸アルミニウムが含まれることによって、水和膨張に起因する膨張ひび割れの発生が抑制され、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体が得られる。これにより、そのままでは水和膨張するために路盤材等に使用できない遊離MgOを含有するスラグを有効利用できるという効果が得られる。
【0021】
遊離MgOを含有するスラグとは、X線回折でペリクレースのピークが確認されるスラグである。このようなスラグとしては、高クロム溶融鉄合金を溶製する際に発生するスラグを用いることが好ましい。ここで、高クロム溶融鉄合金とは、含クロム溶銑やステンレス鋼に代表される高クロム溶鋼(通常、Cr含有量5質量%以上)、及び、この高クロム溶鋼を製造するためのクロム含有母溶湯(例えば、電気炉等で溶製される、クロム濃度が5質量%以上、炭素濃度が1質量%以上2質量%以下の溶融鉄合金等)などである。
【0022】
含クロム溶銑は、通常、電気炉、鉄浴式溶融還元炉又はシャフト炉式の溶融還元炉などでクロム鉱石の溶融還元によって溶製される。高クロム溶鋼は、電気炉、転炉又はAOD炉等の一次精錬炉と、VOD炉、RH脱ガス設備その他の二次精錬炉と、を経て溶製される。また、高クロム溶鋼を製造するためのクロム含有母溶湯は、主として電気炉や転炉で溶製される。これらの溶製炉のうち、クロム鉱石を還元する溶融還元炉では、炉体の耐火物保護のため、スラグの飽和溶解度以上にMgOを添加する操業が行われるので、発生するスラグには遊離MgOが含まれる。このような遊離MgOを含有するスラグを本実施形態に係る硬化体の骨材に用いることが好ましい。
【0023】
硬化体は、高炉スラグ微粉末、普通ポルトランドセメント及び水からなるペースト分が、スラグなどの骨材の間隙を埋め、接着することで強度が発現する。本実施形態に係る硬化体において、骨材として遊離MgOを含有するスラグを用いる場合には、遊離MgOを含有するスラグの単位量は2650kg/m以下であることが好ましい。遊離MgOを含有するスラグの単位量が2650kg/mを超えると、硬化体中の高炉スラグ微粉末、普通ポルトランドセメント及び水の単位量が少なくなって骨材の接着力が低下し、硬化体の強度が低下するからである。なお、遊離MgOを含有するスラグなど各材料の単位量とは、硬化体1mに含まれる各材料の含有量である。
【0024】
一方、本実施形態に係る硬化体では、遊離MgOを含有するスラグの単位量の下限値を規定していない。遊離MgOを含有するスラグは、硬化体において骨材として機能するが、当然のことながら、遊離MgOを含有しないスラグや天然骨材も材料として用いることができる。このため、必ずしも遊離MgOを含有するスラグを用いなくてもよいので、遊離MgOを含有するスラグの単位量の下限値を規定していない。しかしながら、少ないスラグの単位量では、遊離MgOを含有するスラグの有効活用が促進されないことから、遊離MgOを含有するスラグの単位量を100kg/m以上にすることが好ましい。これにより、このままでは水和膨張するために路盤材等に使用できない遊離MgOを含有するスラグを有効利用できるという効果が得られる。
【0025】
また、本実施形態に係る硬化体は、さらに高性能減水剤を含むこと好ましい。硬化体を製造する際に、混練時の水分添加量を少なくすると硬化体の強度が上昇するが、材料を分散させることができなくなる。これに対し、混練時に高性能減水剤を添加することで、水分添加量を少なくしつつ材料を分散させることができるので、硬化体の強度を向上させることができる。高性能減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系の高性能減水剤である竹本油脂(株)製のチューポールを用いることができる。一般的に、高性能減水剤の使用量は、高炉スラグ微粉末と普通ポルトランドセメントの単位量の合計の0.3質量%以上0.5質量%以下の範囲内にすることが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態に係る硬化体の製造方法について説明する。本実施形態に係る硬化体の製造方法は、まず、骨材となる遊離MgOを含有するスラグと、結合材となる高炉スラグ微粉末及びセメントと、有機酸アルミニウムとを混合して混合物とする。この工程が混合ステップとなる。この混合ステップにおいて、混合する有機酸アルミニウムの単位量を1.0kg/m以上7.5kg/m以下とする。
【0027】
次に、当該混合物に水を加えて混練する。この工程が混練ステップとなる。混練した混合物を所定期間養生させて硬化させることで硬化体が製造される。この工程が硬化ステップとなる。
【0028】
以上が好適な硬化体の製造方法であるが、硬化体の製造方法は上記方法に限定するものではない。例えば、上記硬化体の製造方法における混合ステップを省略し、混練ステップにおいて骨材、結合材、有機酸アルミニウム及び水を混合してもよい。このように、混合ステップではなく混練ステップにおいて有機酸アルミニウムと水とを同時に添加して混練してもよい。また、混合ステップの前に有機酸アルミニウム水溶液を骨材に散布するステップを設けて、当該ステップにおいて骨材と有機酸アルミニウムとを混合し、その後の混合ステップにおいて有機酸アルミニウムを含む骨材と結合材とを混合して混合物としてもよい。
【0029】
以上、説明したように本実施形態に係る硬化体は、単位量で1.0kg/m以上7.5kg/m以下の有機酸アルミニウムを含む。これにより、本実施形態に係る硬化体は、当該硬化体に遊離MgOが含まれていたとしても水和膨張に起因する膨張ひび割れが抑制され、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体となる。
【実施例0030】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、表1に示す組成の2種類のスラグ(スラグA、スラグB)を用いて、硬化体を製造した。尚、表1において、「CaO/SiO」は、スラグ中のSiO濃度(質量%)に対するCaO濃度(質量%)の比(以下、「塩基度」と記載する。)を示し、「MgO」及び「遊離MgO」は、スラグ中のMgO濃度(質量%)及び遊離MgO濃度(質量%)をそれぞれ示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すスラグに、天然砂利(粗骨材)、高炉スラグ微粉末、水、塩基性乳酸アルミニウム及び高性能減水剤を表2に示す割合で配合し、硬化体を製造した。発明例では、有機酸アルミニウムのうち塩基性乳酸アルミニウムを用い、塩基性乳酸アルミニウムの単位量を1.0、2.7、5.2、7.5kg/mとした。塩基性乳酸アルミニウムは25質量%水溶液とし、混練前にスラグの含水率を調整するための水の一部として加えた。また、高性能減水剤としてポリカルボン酸系減水剤である竹本油脂(株)製のチューポールを用いた。
【0033】
硬化体は強度測定用と膨張判定用の二種類を製造した。強度測定用の硬化体は、硬化後に脱枠し、材齢28日まで20℃で水中養生した時点でJIS A 1108:2018に従って圧縮強度を測定した。なお、材齢とは、硬化体を打設してからの経過日数である。
【0034】
膨張判定用の硬化体は、硬化後に脱枠し、材齢14日まで20℃で水中養生した。養生後、80℃の水に浸漬させた。浸漬してから45日後に硬化体を観察し、大きな割れの有無を確認した。圧縮強度は20.0N/mm以上を合格とした。また、材齢28日後までに固化せず、圧縮強度を測定できなかったものを「測定不可」とした。また、膨張判定において、硬化体に割れが確認されなかったものを「合」とし、硬化体に割れが確認されたものを「否」とした。
【0035】
スラグAを用いた硬化体の強度測定と膨張判定の結果を表2と表3に示し、スラグBを用いた硬化体の強度測定と膨張判定の結果を表4と表5に示す。表2と表4はアルカリ刺激材に普通ポルトランドセメントを用い、表3と表5はアルカリ刺激材にエコセメントを用いている。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
表2~5に示すように、塩基性乳酸アルミニウムの単位量を1.0kg/m以上7.5kg/m以下とした全ての発明例では、硬化体の28日圧縮強度が20.0N/mm以上となり、コンクリートの代替としての使用可能な強度を有していた。また、80℃の水に45日浸漬後も大きな割れは観察されず、膨張判定も合格となった。この結果から、MgOの水和膨張に起因する膨張ひび割れが抑制され、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体となることが確認された。
【0041】
発明例49~52、110~113では高炉スラグ微粉末を使用せず、エコセメントのみを結合材として用いて硬化体を製造した。このように高炉スラグ微粉末を用いず、エコセメントのみを結合材として用いた硬化体においても28日圧縮強度が20.0N/mm以上となり、且つ、膨張判定も合格となった。この結果から、エコセメントのみを結合材として用いた場合であってもMgOの水和膨張に起因する膨張ひび割れが抑制され、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体になることが確認された。
【0042】
一方、塩基性乳酸アルミニウムを添加していない比較例1~6、13~18、25~30、37~42では、硬化体の28日圧縮強度は十分であったが、80℃の水に45日浸漬させた後の硬化体に大きなひび割れが確認され、膨張判定が否となった。また、塩基性乳酸アルミニウムの単位量を10.0kg/mとした比較例7~12、19~24、31~36、43~48では、材齢28日後までに硬化体が固化せず、圧縮強度を測定できなかった。
【0043】
次に、結合材として普通ポルトランドセメントやエコセメントを用いず、消石灰を用いて製造した硬化体の強度測定と膨張判定の結果を下記表6、表7に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
表6、7に示すように、結合材として普通ポルトランドセメントやエコセメントを用いず、消石灰を結合材として用いた硬化体においても28日圧縮強度が20.0N/mm以上となり、且つ、膨張判定も合格となった。この結果から、普通ポルトランドセメントやエコセメントを用いず、消石灰を結合材として用いた場合であってもMgOの水和膨張に起因する膨張ひび割れが抑制され、且つ、コンクリートを代替できる強度を有する硬化体になることが確認された。
【0047】
次に、スラグBを用い、有機酸アルミニウムに代えて、アルミニウムの無機塩であるリン酸アルミニウムを用いて製造した硬化体の強度測定と膨張判定の結果を下記表8に示す。
【0048】
【表8】
【0049】
アルミニウムの無機塩であるリン酸アルミニウムを添加した比較例49~52では、硬化体の28日圧縮強度は十分であったが、80℃の水に45日浸漬させた後の硬化体にひび割れが確認された。このため、比較例49~52では膨張判定が否となり、膨張抑制効果が得られなかった。