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特開2024-1895水素製造装置及び方法、電力水素併産システム並びに二酸化炭素を分解する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001895
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】水素製造装置及び方法、電力水素併産システム並びに二酸化炭素を分解する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/16 20060101AFI20231227BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20231227BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20231227BHJP
   G21B 1/13 20060101ALI20231227BHJP
   G21H 5/00 20060101ALI20231227BHJP
   G21D 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   G21B 1/11 20060101ALI20231227BHJP
   G21D 5/04 20060101ALI20231227BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20231227BHJP
   G21C 15/28 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C01B3/16
B01J23/745 M
C01B32/40
G21B1/13
G21H5/00 C
G21D9/00
G21B1/11 Z
G21D5/04
C01B13/02 B
G21C15/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151993
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2022059912の分割
【原出願日】2022-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月18日に「NIFS研究会」、「原型炉に向けた炉内機器・材料・システム統合研究会」並びに「横断的研究のためのCOE共同研究プラットフォーム・Oroshhi-2の利用検討会」の共同研究会によるZOOM会議にて発表(https://kyoto-u-edu.zoom.us/j/89841379798?pwd=d0NPY25zaW9kNTZVZ0xYdUtucmFPQT09)
(71)【出願人】
【識別番号】519439232
【氏名又は名称】石山 新太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石山 新太郎
(57)【要約】
【課題】高い効率でCO分解反応を促進することにより大量の水素を製造する。
【解決手段】 水素製造装置は、超臨界COが導入される超臨界CO分解部2であって、熱源5からの熱及び放射線源6からの放射線を用いて超臨界COをCO及び酸素に分解するためのCO熱分解反応を促進する、前記超臨界COガス分解部2と、前記超臨界CO分解部2で分解された一酸化炭素に水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造装置であって、
熱、又は、熱及び放射線を用いて、超臨界COをCO及びOに分解するためのCO熱分解反応を引き起こす、超臨界CO分解部と、
前記超臨界CO分解部で分解されたCOとHOとの間で水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部と、
を備える、水素製造装置。
【請求項2】
前記超臨界CO分解部は、外部の熱源からの熱、又は、外部の熱源からの熱及び外部の放射線源からの放射線を受け取るように配置された、超臨界COが導入されるCO配管を備える、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記水性ガスシフト反応部により生成されたCOを超臨界化した状態で前記超臨界CO分解部に戻す超臨界CO循環経路をさらに備える、請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記CO配管は、外部の熱源からの熱及び外部の放射線源からの放射線を受け取るように配置されており、
前記外部の熱源は、200℃から800℃の温度の熱源である、請求項2又は3に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記CO配管は、外部の熱源からの熱を受け取るように配置されており、
前記外部の熱源は、1100℃以上の高温度域熱源である、請求項2又は3に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記外部の熱源及び外部の放射線源は、高レベル放射性廃棄物を収納した収納管である、請求項2から4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記CO配管は、前記収納管を取り囲むように配置された配管である、請求項6に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記外部の熱源は加熱ヒーターであり、前記外部の放射線源は60CO線源である、請求項2から4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記外部の熱源及び外部の放射線源は原子力発電炉である、請求項2から4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項10】
前記原子力発電炉は、該原子力発電炉の炉心で発生した熱を伝達するための溶融塩が循環する溶融塩循環経路を備え、前記CO配管は、前記溶融塩循環経路内に配置される、請求項9に記載の水素製造装置。
【請求項11】
外部の熱源、又は、前記外部の熱源及び外部の放射線源は、核融合発電炉である、請求項2から5のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項12】
前記CO配管は、前記核融合発電炉のブランケットを冷却する配管として構成される、請求項11に記載の水素製造装置。
【請求項13】
前記ブランケットは放射線・中性子増倍材を備える、請求項12に記載の水素製造装置。
【請求項14】
前記CO配管は、前記核融合発電炉のダイバータを冷却する配管として構成される、請求項11に記載の水素製造装置。
【請求項15】
前記ダイバータは、複数のダイバータカセットから構成される、請求項14に記載の水素製造装置。
【請求項16】
前記ダイバータカセットは、前記核融合発電炉の炉心プラズマから放射される熱を受け取るように配置されたタングステンのプレートと、該プレートの裏面側に連結された前記CO配管と、を備える、請求項15に記載の水素製造装置。
【請求項17】
前記プレートの裏面側に連結された前記CO配管は、複数の配管から構成される、請求項16に記載の水素製造装置。
【請求項18】
前記CO配管は、前記ダイバータに入力される超臨界COの入口配管と、前記ダイバータから出力されたガスの出口配管と、前記入口配管と前記出口配管との間で熱交換を行う熱交換器とを備える、請求項14から17のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項19】
前記CO配管は、太陽光が集光される集熱部に配置される、請求項2,3,又は5に記載の水素製造装置。
【請求項20】
前記CO配管は、マグマ層からの熱を受け取るように地下に配置される、請求項2,3,又は5に記載の水素製造装置。
【請求項21】
前記水性ガスシフト反応部は、触媒としてマグネタイト(Fe3O4)又は酸化第二鉄(Fe2O3)を備える、請求項請求項1から20のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項22】
請求項11から18のいずれか1項に記載の水素製造装置と、
前記核融合発電炉と、
前記核融合発電炉によって加熱された超臨界COを循環させてガスタービンを回転させることによって発電する発電装置と、
を備える、電力水素併産システム。
【請求項23】
水素製造装置と発電装置とを備えた電力水素併産システムであって、
前記水素製造装置は、
原子力発電炉からの熱及び放射線を受け取るように配置された、超臨界COが導入されるCO配管を有し、前記熱及び放射線により該CO配管内の超臨界COをCO及びOに分解するためのCO熱分解反応を引き起こす、超臨界CO分解部と、
前記超臨界CO分解部で分解されたCOとHOとの間で水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部と、
前記水性ガスシフト反応部により生成されたCOを超臨界化した状態で前記超臨界CO分解部に戻す超臨界CO循環経路と、
を備え、
前記原子力発電炉は、該原子力発電炉の炉心で発生した熱を伝達するための溶融塩が循環する溶融塩循環経路を備え、前記CO配管は、前記溶融塩循環経路内に配置され、
前記発電装置は、前記超臨界CO循環経路に配置され、前記超臨界CO循環経路を通って流れる超臨界COによりガスタービンを回転させることによって発電を行う、電力水素併産システム。
【請求項24】
水素製造装置と発電装置とを備えた電力水素併産システムであって、
前記水素製造装置は、
原子力発電炉からの熱及び放射線を受け取るように配置された、超臨界COが導入されるCO配管を有し、前記熱及び放射線により該CO配管内の超臨界COをCO及びOに分解するためのCO熱分解反応を引き起こす、超臨界CO分解部と、
前記超臨界CO分解部で分解されたCOとHOとの間で水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部と、
を備え、
前記原子力発電炉は、該原子力発電炉の炉心で発生した熱を伝達するための溶融塩が循環する溶融塩循環経路を備え、前記CO配管は、前記溶融塩循環経路内に配置され、
前記発電装置は、前記超臨界CO分解部の前記CO配管から排出された、CO、CO及びOによりガスタービンを回転させることによって発電を行い、
前記水性ガスシフト反応部は、前記発電装置の前記ガスタービンを回転させた前記CO、CO及びOのうちCOを前記水性ガスシフト反応に利用し、前記水性ガスシフト反応により生成されたCOは前記CO配管に戻される、電力水素併産システム。
【請求項25】
請求項10に記載の水素製造装置と、
前記溶融塩循環経路に配置された超臨界COの第2のCO配管を備え、該第2のCO配管を流れる超臨界COによりガスタービンを回転させることによって発電を行う発電装置と、
を備える、電力水素併産システム。
【請求項26】
前記第2のCO配管は、放射線を遮蔽する遮蔽ブランケットにより覆われている、請求項25に記載の電力水素併産システム。
【請求項27】
請求項19に記載の水素製造装置と、
前記集熱部の熱により加熱された超臨界COによりガスタービンを回転させることによって発電を行う発電装置と、
を備える、電力水素併産システム。
【請求項28】
請求項20に記載の水素製造装置と、
前記マグマ層の熱により加熱された超臨界COによりガスタービンを回転させることによって発電を行う発電装置と、
を備える、電力水素併産システム。
【請求項29】
水素製造方法であって、
超臨界COに、熱又は熱及び放射線を適用することによって該超臨界COをCO及び酸素に分解し、
分解された一酸化炭素に水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成し、
生成されたCOを超臨界状態で前記分解工程に戻すことによりCOを循環させる、各工程を備える、水素製造方法。
【請求項30】
二酸化炭素を分解する方法であって、
超臨界COに、熱又は熱及び放射線を適用することによって該超臨界COをCO及び酸素に分解する分解工程を備える、方法。
【請求項31】
二酸化炭素を分解する方法であって、
放射線の照射下で、COを25℃以上の温度に加熱すると共に7.38MPa以上の圧力に加圧することによって前記COをCO及び酸素に分解する分解工程を備える、方法。
【請求項32】
水素製造方法であって、
請求項31に記載の方法の前記分解工程と、
前記分解工程により分解されたCOに水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する水ガスシフト工程と、
を備える、水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置及び方法、電力水素併産システム並びに二酸化炭素を分解する方法に係り、より詳しくは、二酸化炭素を循環触媒とした放射線誘導による水原料から水素を製造する水素製造装置及び方法、電力水素併産システム並びに二酸化炭素を分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油・石炭等の炭素系化石燃料の利用により大気中に放出される二酸化炭素による地球温暖化問題は世界的問題である。そのため我が国では特にその対応策として代替エネルギー源として水素エネルギーの大規模利用が提案されている。しかしながら我が国において大量の水素製造のための既存の基幹技術・条件が整っていないため電気分解技術等で生産された水素は従前のエネルギー源に比べてコスト高となる。そのため海外で製造された大量の水素誘導体を国内輸送する方策などを進めているが、コスト変動や定期供給などの供給安定性に問題がある。
【0003】
そのため我が国の水素利用社会化において、今後製造水素の国内生産技術の確立と低コスト化が大きな課題となっている。例えば、水資源から二酸化炭素を利用した水素を製造する技術は、すでに下記(1)及び(2)の反応を組み合わせで可能であることが知られている(非特許文献1~3)。
(1) 1100℃の高温化で二酸化炭素を還元反応により一酸化炭素と酸素分子とに分解する。
(2) 一酸化炭素と水とから触媒を利用して水素を製造する(水性ガスシフト反応)
しかしながら上記(1)では、1100℃の高温度域を用いるため、大量の水素製造はコスト高となり、特殊用途以外では実用化されていない。この高温化の対応策として、放射線による中温度域での二酸化炭素の一酸化炭素分解反応もすでに周知されているが、その分解効率は0.1%程度であり、上記と同様に実用化の目途は立っていない。
【0004】
一方、水素製造の上記課題とは別に、原子力発電所から使用済み核燃料の再処理で生じる高強度放射線源である高レベル廃棄物の貯蔵・長期保管問題は大きな国民の不安ストレスの原因のひとつとなっている。また、将来のエネルギー源として期待される核融合炉においても、DT反応の結果として発生する高エネルギー中性子の対処や冷却水を用いることによる問題の解決が大きな課題となっている。さらに、太陽光発電における放射エネルギー損失を解決する手段や、地下深いマグマ層からの高温地熱を利用した発電システムの開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P.Harteck and S.Dondes,J.Chem:Phys.,26,1727(1957)
【非特許文献2】N.Fujita and C.Matsuura:Radiation induced reduction of CO2 in iron containing solution,Radiat. Phys. Chem.,43,205(1994)
【非特許文献3】X.-Z. Wu,et al.:Chem. Lett.,2000,572-573.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、従来発電や熱源として利用されている既存若しくは将来の熱源、又は、当該熱源及び不必要な放射線を誘導触媒とすると共に、地球温暖化の原因である不要な二酸化炭素を一酸化炭素に還元分解した後、分解された一酸化炭素と水資源とから水性ガスシフト反応を利用して大量水素を安価に製造することを可能ならしめた水素製造装置、電力水素併産システム及び水素製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の水素製造装置は、熱、又は、熱及び放射線を用いて、超臨界COをCO及びOに分解するためのCO熱分解反応を引き起こす、超臨界CO分解部と、前記超臨界CO分解部で分解されたCOとHOとの間で水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部と、を備えて構成したものである。
【0008】
例えば、前記超臨界CO分解部は、外部の熱源からの熱、又は、外部の熱源からの熱及び外部の放射線源からの放射線を受け取るように配置された、超臨界COが導入されるCO配管を備える。
【0009】
好ましくは、前記水性ガスシフト反応部により生成されたCOを超臨界化した状態で前記超臨界CO分解部に戻す超臨界CO循環経路をさらに備える。
前記CO配管は、外部の熱源からの熱及び外部の放射線源からの放射線を受け取るように配置されており、前記外部の熱源は、中温度域熱源である。或いは、前記CO配管は、外部の熱源からの熱を受け取るように配置されており、前記外部の熱源は、1100℃以上の高温度域熱源である。
【0010】
例えば、前記外部の熱源及び外部の放射線源は、高レベル放射性廃棄物を収納した収納管であり、前記CO配管は、前記収納管を取り囲むように配置された配管である。例えば、前記外部の熱源は加熱ヒーターであり、前記外部の放射線源は60CO線源である。例えば、前記外部の熱源及び外部の放射線源は原子力発電炉である。例えば、前記原子力発電炉は、該原子力発電炉の炉心で発生した熱を伝達するための溶融塩が循環する溶融塩循環経路を備え、前記CO配管は、前記溶融塩循環経路内に配置される。
【0011】
外部の熱源、又は、前記外部の熱源及び外部の放射線源は、核融合発電炉であってもよい。具体的には、前記CO配管は、前記核融合発電炉のブランケットを冷却する配管として構成され、好ましくは、前記ブランケットは放射線・中性子増倍材を備える。或いは、前記CO配管は、前記核融合発電炉のダイバータを冷却する配管として構成され、好ましくは、前記ダイバータは、複数のダイバータカセットから構成される。前記ダイバータカセットは、前記核融合発電炉の炉心プラズマから放射される熱を受け取るように配置されたタングステンのプレートと、該プレートの裏面側に連結された前記CO配管と、を備えていてもよい。好ましくは、前記プレートの裏面側に連結された前記CO配管は、複数の配管から構成される。さらに好ましくは、前記CO配管は、前記ダイバータに入力される超臨界COの入口配管と、前記ダイバータから出力されたガスの出口配管と、前記入口配管と前記出口配管との間で熱交換を行う熱交換器とを備える。
【0012】
他の例としての前記CO配管は、太陽光が集光される集熱部に配置される。さらに別の例のCO配管は、マグマ層からの熱を受け取るように地下に配置される。
好ましくは、前記水性ガスシフト反応部は、触媒としてマグネタイト(Fe3O4)又は酸化第二鉄(Fe2O3)を備える。
【0013】
本発明の電力水素併産システムは、上記した水素製造装置と、前記核融合発電炉と、前記核融合発電炉によって加熱された超臨界COを循環させてガスタービンを回転させることによって発電する発電装置と、を備える。
【0014】
本発明の別の例の電力水素併産システムは、原子力発電炉の前記超臨界CO循環経路に配置された、超臨界COを用いた発電装置を備える。また、前記超臨界CO分解部の前記CO配管から排出された、CO、CO及びOを含むガスを利用して発電を行う発電装置を備えていてもよく、前記発電装置は、発電に利用した前記ガスを前記水性ガスシフト反応部に供給すると共に、前記水性ガスシフト反応部で生成されたCOを再利用し、前記CO配管に戻す。また、前記溶融塩循環経路に配置された超臨界COの第2のCO配管を備え、該第2のCO配管を流れる超臨界COを用いた発電装置とを備えていてもよく、この場合、好ましくは、前記第2のCO配管は、放射線を遮蔽する遮蔽ブランケットにより覆われている。
【0015】
本発明のさらに別の例の電力水素併産システムは、太陽光の集熱部により加熱されたCO配管を超臨界CO分解部として備えた水素製造装置と、前記集熱部の熱により加熱された超臨界COを利用して発電を行う発電装置と、
を備える。
【0016】
本発明のさらに別の例の電力水素併産システムは、マグマ層の熱により加熱されるため地下深く埋められたCO配管を超臨界CO分解部として備えた水素製造装置と、加熱された超臨界COを利用して発電も行う発電装置と、を備える。
【0017】
本発明の水素製造方法は、超臨界COに、熱又は熱及び放射線を適用することによって該超臨界COをCO及び酸素に分解し、分解された一酸化炭素に水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成し、生成されたCOを超臨界状態で前記分解工程に戻すことによりCOを循環させる、各工程を備えて構成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る水素製造装置の概略図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る水素製造装置の概略図である。
図3図3は、本発明の水素製造方法の概念図である。
図4図4は、60Co高温照射による超臨界状態のCO2/CO分解効率の測定の流れを示す図である。
図5図5は、60Co高温照射による超臨界状態のCO2/CO分解効率の測定結果のグラフである。
図6図6は、従来技術と比較した本発明の効果を説明する概念図である。
図7図7は、従来技術と比較した本発明の原理を説明する概念図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態の態様1(高レベル廃棄物の利用)に係る超臨界CO分解部を示す図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態の態様2(原子力発電炉の利用)に係る水素製造装置を備える電力水素併産システム(第1変形例)を示す図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態の態様2(原子力発電炉の利用)に係る水素製造装置を備える電力水素併産システム(第2変形例)を示す図である。
図11図11は、本発明の第1又は第2の実施形態において外部熱源として用いられる核融合発電炉(態様3)の構造を示す図である。
図12図12は、本発明の水素製造装置の超臨界CO分解部(態様3)が適用された図11の核融合発電炉のブランケットの詳細な構成(態様3の第1変形例)を示す一部拡大図である。
図13図13は、本発明の水素製造装置の超臨界CO分解部が適用された図11の核融合発電炉のダイバータの詳細な構成(態様3の第2変形例)を示す図である。
図14図14は、図13のダイバータに設けられた超臨界CO分解部のCO配管の構成を示す概略図である。
図15図15は、図14のダイバータへの超臨界COの入口速度に対する出口温度の関係を示すグラフである。
図16図16は、図15のダイバータに設けられた超臨界CO分解部のCO配管1つの基本構成を示す斜視図であって、(a)は超臨界COが流れた状態のCO配管、(b)は、CO配管の配管部分のみ、(c)は炉心プラズマからの熱負荷を受けるタングステンのプレート、(d)は、CO配管の配管部分を流れるCOガスの形状を各々示す。
図17図17は、図15のダイバータに設けられた超臨界CO分解部のCO配管の具体的な構成を示す斜視図であり、(a)~(e)は各々異なる例を示す。
図18図18は、図14のダイバータに設けられた超臨界CO分解部を有する水素製造装置(態様3の第2変形例)を備える電力水素併産システムを示す図である。
図19図19は、太陽光を熱源として利用する水素製造装置(第2の実施形態)を備える電力水素併産システムを示す図である。
図20図20は、地下深い高温マグマ層を熱源として利用する水素製造装置(第2の実施形態)を備える電力水素併産システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水素製造装置の概略図である。
【0020】
図1に示されるように、第1の実施形態に係る水素製造装置1は、超臨界COが導入される超臨界CO分解部2であって、熱及び放射線を用いて超臨界COをCO及び酸素に分解するためのCO熱分解反応を促進する、超臨界CO分解部2と、超臨界CO分解部2で分解された一酸化炭素に水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成する、水性ガスシフト反応部3と、を備える。
【0021】
好ましくは、水素製造装置1は、超臨界CO分解部2から水性ガスシフト反応部3に、COを含むガスを輸送するための第1の循環経路4と、水性ガスシフト反応部3により生成されたCOを超臨界化した状態で超臨界CO分解部2に戻す第2の循環経路10をさらに備える。また好ましくは、上記した各反応においてCOガスが超臨界状態でなくなる場合には、第2の循環経路10を流れるCOガスを加圧或いは加熱すること等により超臨界COへと戻す超臨界化機構11を備える。
【0022】
また、好ましくは、水性ガスシフト反応部3は、水性ガスシフト反応のための触媒としてマグネタイト(Fe3O4)又は酸化第二鉄(Fe2O3)を備える。
超臨界CO分解部2は、外部の熱源5からの熱及び外部の放射線源6からの放射線を受け取るように配置されている。外部の熱源5は、例えば800℃以下の中温度域熱源であるがこれに限定されるものではない。放射線源6は、例えば中性子、電子線、γ線、α線の源が挙げられるが、これに限定されるものではない。熱源5及び放射線源6は、別々の源であってもよく、或いは、後述する原子炉力発電炉や核融合発電炉などの1つの源7であってもよい。
【0023】
超臨界CO分解部2で引き起こされるCO熱分解反応は以下の通りである。
CO+566kJ/mol→CO+1/2O
従って、超臨界CO分解部2では、一酸化炭素COと酸素Oとが生成される。実際には、超臨界CO分解部2から排出されるガスには、分解されなかったCOも含まれる。好ましくは、水素製造装置1は、分解された一酸化炭素COと酸素Oとを超臨界CO分解部2から排出するためのドライポンプ/ターボ分子ポンプ(図示せず)と、排出された一酸化炭素COと酸素Oとを分離する第1の分離部8とを備える。分離部8は、例えば、高い選択性でCOを吸着するCO吸着剤(例えばゼオライト)やCOを分離回収するゲッター材を有し、吸着されなかったガスをOとして分離するか、或いはその逆に、分離部8は、高い吸着性でOを吸着する材料を用いてもよい。いずれにしても本発明は第1の分離部8の構成を限定するものではない。また、分離部8は、超臨界CO分解部2で分解されなかったCOガスを他のガスから分離するようにしてもよい。この分離されたCOガスは、水性ガスシフト反応部3を経ずに直接、第2の循環経路10に戻されてもよい。
【0024】
分離部8で分離されたCOは、水性ガスシフト反応部3に導入される。さらに水性ガスシフト反応部3には、水が供給される。水性ガスシフト反応部3では、分離部8から導入されたCOとHOとの間で以下の水性ガスシフト反応プロセスが引き起こされる。
【0025】
CO+HO→CO+H+41.2kJ/mol
すなわち、水性ガスシフト反応部3は、二酸化炭素COと水素Hとを生成する。二酸化炭素COと水素Hとを分離する第2の分離部9としては、水性ガスシフト反応部3において、例えば不活性ガスであるアルゴンArが導入/排出されてArの流れが生成されており、その流れに運搬された二酸化炭素COと水素Hとが比重差により分離されるという機構などが考えられるが、本発明は第2の分離部9の構成を限定するものではない。上述したように分離された二酸化炭素COは、第2の循環経路10に戻される。分離されたHは、水素資源として外部へと取り出される。
【0026】
本願発明の第1の実施形態に係る水素製造装置1によれば、超臨界COに熱及び放射線を適用することにより、CO熱分解反応が促進されるため、従来より高い効率でCOを分離することが可能となる。以下、この分解効率について計測結果に基づいて説明する。
60Co高温照射による超臨界状態のCO2/CO分解効率の測定)
図4には、60Co高温照射による超臨界状態のCO2/CO分解効率の測定の流れが示されている。図4に示されるように、先ず、ボンベに、臨界状態ではない未臨界COガスを封入する。CO臨界温度は、304.1K(31.1℃)、CO臨界圧力は、7.38MPaであるところ、例えば25℃で7.38MPaの圧力でCOガスを封入する。圧力は臨界圧力であるが温度が臨界温度よりも低いため、ボンベに封入されたCOガスは未臨界状態となる。
【0027】
次に、未臨界COガスが封入されたボンベを加熱ヒーターで加熱すると共に、10kGy/hのγ線(1.1~1.3MeV)を照射する60Coをボンベの近傍に配置した。加熱温度は、200℃、400℃、600℃の各温度を選択し、それぞれの加熱温度を継続させ、0~60分間の間の幾つかの時間でボンベ内で分解されたCO濃度を測定し、CO/CO比率を求めた。
【0028】
図5には、60Co高温照射による超臨界状態のCO2/CO分解効率の測定結果のグラフが示されている。比較のため、ボンベを加熱せず温度を25℃に維持したときの測定結果、すなわち未臨界COの測定結果も示されている。図5のグラフに示されているように、未臨界COの測定結果(25℃)は、測定開始後の短時間内でCO/CO比率が急激に増加するが、その後は、増加することなく測定終了まで10%程度で推移する。これに対して、200℃、400℃、600℃の各温度では、ボンベ内のCOが超臨界状態となっていると考えられ、測定開始後の短時間内で急激にCO/CO比率が増加し、その後も1000秒まで、それぞれ24%、27%、45%まで緩やかに増加する遷移状態が観測された。1000秒以降は、測定終了までCO/CO比率がほぼ一定値を維持した。この安定した状態は、照射γ線に対する、分解したCOによる自己遮蔽効果、CO-O再結合反応、放射線エネルギー不足によるものと考えられる。
【0029】
図5の測定結果から、放射線照射下において、COを超臨界状態にすることによって、従来技術よりも、有意に増加し、さらに、温度をより高温にするにつれて、CO/CO比率は、より増加することが示された。このことから図1の熱源5を図4の加熱ヒーターとし、放射線源6を60CO線源とする水素製造装置1を構成することによって、従来技術よりも遥かに高いCO/CO比率を達成し、よって、水素製造効率を顕著に向上することが可能となることが理解できる。
【0030】
図6には、従来技術と本発明とのCO熱分解反応プロセスの相違が示されている。
図6に示されるように、従来の流通法電子線照射(1.2×1017eV/cms)によるCO熱分解反応プロセスでは、未臨界状態のCOからの生成物のG値(エネルギーを100eV吸収したときに発生する化学反応生成物の数)は、20℃で8であり、500℃に温度を上げても13程度であった。また、CO/CO比率は、0.1%程度である。これに対して、本発明では、超臨界状態のCOからの生成物のG値は、50℃で1300となり、CO/CO比率は、数十%にも上がる。
【0031】
COを超臨界化することにより放射線分解効果が顕著に向上する理由について、図7を用いて考察する。図7に示されるように、通常のCO希ガス状態では、放射線との邂逅確率が低いと推測される。これに対して、CO超臨界状態では、高密度であるとともに、原子間振動が激しくなるため、放射線の邂逅確率が高くなり、またO-C-O結合チェーンの切断効率が向上すると推測される。
【0032】
従って、図3に示されるように、本発明の水素製造方法は、超臨界COに、熱及び放射線を適用することによって該超臨界COをCO及び酸素に分解し、分解された一酸化炭素に水を加え、水性ガスシフト反応を引き起こすことにより、H及びCOを生成し、生成されたCOを超臨界状態で前記分解工程に戻すことによりCOを循環させる、各工程を備えて構成することができる。
【0033】
熱源5及び放射線源6、或いは、両者を統合した一つの源7の例は、上記の例に限定されるものではないことはいうまでもなく、少なくとも、以下の態様が考えられる。なお、各態様において、図1と同様の構成要件には、図1で使用された参照番号に各態様毎にアルファベットの添え字a、b、c、dを付けて詳細な説明を省略する。
(態様1―高レベル放射性廃棄物を熱源及び放射線源とする)
図8には、態様1に係る超臨界CO分解部2aが示されている。図8に示されるように、超臨界CO分解部2aは、高レベル放射性廃棄物の施設22内に設けられており、当該施設22内には、高レベル放射性廃棄物を収納した収納管20が複数本配置されており、これらが、熱及び放射線を照射する熱源及び放射線源7aとなる。収納管20の各々には、高レベル放射性廃棄物が封入されたガラス固化体21が直列に複数本配列されている。超臨界CO分解部としてのCO配管2aが各々の収納管20を取り囲むように設けられている。CO配管2aに超臨界COが導入されることで、CO配管2aを流れる超臨界COは、収納管20から照射される熱及び放射線により、CO熱分解反応が促進され、分解されたCOは、水性ガスシフト反応部3(図1)へと輸送される。
【0034】
態様1では、高レベル放射性廃棄物のより安全な保管が可能になると共に、原価0で水素を製造することが可能となる。
(態様2-原子力発電炉を熱源及び放射線源とする)
図9には、外部の熱源5b及び外部の放射線源6bの統合化した源として原子力発電炉7bが示されている。原子力発電炉7bは、炉心30と、炉心30で発生した熱を伝達するための溶融塩が循環する溶融塩循環経路31と、溶媒塩を経路31内で循環させるためのモータ付きポンプ32と、を備える。溶融塩循環経路31内には、超臨界CO分解部としてのCO配管2bが配置される。CO配管2bに超臨界COが導入されることで、CO配管2bを流れる超臨界COは、溶媒塩を介して伝達される炉心30の熱及び炉心30から照射される放射線により、CO熱分解反応が促進され、分解されたCOは、水性ガスシフト反応部3bへと輸送される。
【0035】
さらに、図9に示すシステム100は、水素製造装置だけではなく、超臨界CO分解部のCO配管2bから第1の循環経路4bを通って排出された、CO、CO及びOを含むガスを利用して発電を行う発電装置35を備えている。発電装置35は、発電に利用したガスを水性ガスシフト反応部3bに供給すると共に、水性ガスシフト反応部3bで生成されたCOを再利用し、第2の循環経路10bを介してCO配管2bに戻す。
【0036】
発電装置35は、一軸連結された、コンプレッサMC,BC及びタービンGを有するガスタービン部36を備え、CO、CO及びOを含むガスでガスタービン部36が回転することにより発電を行うことができる。
【0037】
また、溶融塩循環経路31内には、第2の配管33が配置されてもよく、原子力発電炉が通常行う水蒸気を用いた発電を実行するために使用することができる。
以上の通り、図9に示すシステム100は、水素を製造すると共に発電を行う電力水素併産システム(第1変形例)を構成する。
【0038】
図10には、第2変形例に係る電力水素併産システム101が示されている。電力水素併産システム101において、発電装置35は、第1変形例のように第1の循環経路4c、第2の循環経路10cに設けられるのではなく、超臨界COが循環される第2の配管33cに接続される。第2の配管33cは、原子力発電炉7cによって加熱される溶融塩の循環経路31に配置されているため、発電装置35は、加熱された超臨界COによって効率的に発電を行うことが可能となる。発電装置35には、分解されたCOは不要であるため、第2の変形例において、第2の配管33cは、原子力発電炉7cの炉心30からの放射線を遮蔽する遮蔽シールド34で覆われているのが好ましい。
(態様3-核融合発電炉を熱源及び放射線源とする)
図11には、外部の熱源5d及び外部の放射線源6dの統合化した源として核融合発電炉7dが示されている。核融合発電炉7dは、トカマク型の核融合発電炉であり、炉心プラズマ50を閉じ込めるためのプラズマ真空容器40と、プラズマ50を閉じ込める磁場を発生する、超伝導ヘリカルコイル41及び超伝導ポロイダルコイル42と、電磁力支持構造43と、外装部を形成するクライオスタット(断熱真空容器)44と、プラズマ50を取り囲むように真空容器40の内壁に設けられたブランケット45と、効率の良い排熱・排不純物粒子を可能とするためプラズマ粒子が集中される磁場配位を形成するダイバータ46と、を備える。
【0039】
態様3では、超臨界CO分解部のCOガス配管を、核融合発電炉7dで高熱負荷のかかる、ブランケット45に設ける(第1変形例)か、或いは、最も高温になるダイバータ46(第2変形例)に設けることが考えられる。以下、それぞれの変形例について説明する。
【0040】
図12には、態様3の第1変形例の超臨界CO分解部2dが適用された図11の核融合発電炉のブランケット45の一部拡大図が示されている。図示のようにブランケット45は、炉心プラズマ50に面するプラズマ真空容器40の内壁に設けられている。ブランケット45は、プラズマ50からの高温放射を受けるため高温度になり、冷却機構が必須である。従来では冷却水による冷却が考えられてきたが、本発明は、ブランケット45の冷却手段として、超臨界CO分解部2dを設けたものである。
【0041】
超臨界CO分解部2dは、ブランケット45の裏面側に設けられた冷却配管(図示せず)として構成されている。当該冷却配管には、超臨界COの入口配管48と、該冷却配管を流れるガスの出口配管49と、が接続される。入口配管48から導入された超臨界COは、ブランケットの冷却配管を流れ、このとき、プラズマ50から放射される熱及び中性子により熱分解反応が引き起こされてCOを含むガスとなり、出口配管49から出ていく。出口配管49から出たCOを含むガスは、水性ガスシフト反応部へと導かれる。
【0042】
好ましくは、ブランケット45は放射線・中性子増倍材47を備える。これによって、中性子を始めとする放射線を増加させて、冷却配管中のCO熱分解反応をより促進させることが可能となる。
【0043】
図13には、態様3の第2変形例の超臨界CO分解部2eが適用された図11の核融合発電炉のダイバータ46の斜視図が示されている。図示のように、ダイバータ46は、複数のダイバータカセット51を敷き詰めて構成される。ダイバータカセット51の各々は、独立して交換可能となっており、破損時の修復作業を容易にしている。なお、図13には、プラズマ真空容器40のための冷却水配管52と、配管接続部53とが示されている。
【0044】
図14には、超臨界CO分解部2eの概略図が示されている。図示のように、超臨界CO分解部2eは、ダイバータ46又はダイバータカセット51を冷却する冷却配管70(CO配管)として構成されており、具体的には、プラズマからの高温熱負荷を受けるダイバータ46又はダイバータカセット51の表面プレート72の裏面側に配置された超臨界COの冷却配管(後述する)として構成される。冷却配管70には、超臨界COの入口配管56と、該冷却配管を流れるCOを含むガスの出口配管57と、が接続される。入口配管56から導入された超臨界COは、ダイバータの冷却配管70を流れ、このとき、プラズマ50から放射される熱及び中性子により熱分解反応が引き起こされてCOを含む高温ガスとなり、出口配管57を通ってダイバータから出ていく。
【0045】
図15には、冷却配管70における超臨界COの入口速度に対する、冷却配管70の入口及び出口におけるガス温度と表面プレート72の温度との関係をシュミレーションした結果が示されている。図15のグラフに示されるように、例えば入口速度200m/sにおいて、入口温度が1200K,出口温度が1373Kとなった。また、表面プレート72の最高表面温度が約3000Kであり、平均表面温度が約2800Kとなった。従って、表面プレート72の材料としてタングステンを用いれば、その融点は図16の最高表面温度より低いので、表面プレートの溶解を防止することができる。よって、超臨界COによる十分な冷却効果が確認された。
【0046】
好ましくは、超臨界CO分解部2eは、入口配管56と出口配管57との間で熱交換を行う熱交換器55をさらに備える。熱交換器55には、入口配管56と連通する入口ポート58と、出口配管57と連通する出口ポート59と、が設けられている。入口ポート58から導入された超臨界COは、熱交換器55内の入口配管56を通過する間に、より高温のCOを含むガスが流れる出口配管57により加熱されて、より高温となり、ダイバータの冷却配管70へと流れ、プラズマからの熱によりさらに加熱されて出口配管57を通ってダイバータから出ていく。出口配管57を通って流れるCOを含むガスは、熱交換器55内で、入口配管56を流れる超臨界COを加熱することにより冷却され、出口ポート59から出ていく。シミュレーションによれば、熱交換器55の入口ポートに導入する超臨界COの温度を350Kにすれば、熱交換器55により1200Kまで温度が上昇し、さらに冷却配管70を通過した後には1373Kまで加熱され、それから熱交換器55により350Kまで冷却される。好ましい本態様によれば、350Kの温度でより容易にガスを取り扱うことが可能となる。
【0047】
図16には、冷却配管70の基本構成及び各構成要素が示されている。図16(a)に示されるように、冷却配管70は、配管部分71(図16(b))と、配管部分71の上面に連結されるタングステンの表面プレート72(図16(c))とを備えている。冷却配管70には、図16(d)に示す形状の超臨界CO73が流れることになる。
【0048】
図17には、冷却配管70(CO配管)のより具体的な複数の変形例が示されている。なお、図17(a)~(e)において、各々対応する構成要件には同様の参照番号を付与し、アルファベットの添え字を用いて各例を区別し、異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図17(a)に示されるように、冷却配管70aは、並列に並べられた複数の配管部分71aと、該複数の配管部分71aの上面に亘って連結されたタングステンの表面プレート71aと、複数の配管部分71aに超臨界COを導入するため複数の配管部分71aの一端部に連結された入口マニホルド74aと、複数の配管部分71aからCOを含むガスを排出するため複数の配管部分71aの他端部に連結された出口マニホルド75aとを備えている。入口マニホルド74aには、超臨界COの3つの入口ポートが形成され、出口マニホルド75aにはCOを含むガスの1つの出口ポートが設けられている。入口ポートは入口配管56と連通され、出口ポートは出口配管57と連通される。
【0050】
図17(b)に示す冷却配管70bは、出口マニホルド75bが3つの出口ポートを有する点において、図17(a)に示す冷却配管70aと異なり、それ以外では、同様である。
【0051】
図17(c)に示す冷却配管70cでは、入口マニホルド74c及び出口マニホルド75cが冷却配管70a、70bと比較してより平坦であり、その形状も異なっている。また、入口マニホルド74cの入口ポートの数が1つであり、出口マニホルド75cの出口ポートの数が1つである。
【0052】
図17(d)に示す冷却配管70dは、冷却配管70cと類似しているが、出口マニホルド75dが複数の出口ポートを有しており、またその形状も冷却配管70cの出口マニホルド75cとは異なっている。
【0053】
図17(e)に示す冷却配管70eは、入口マニホルド74eが平坦で複数の入口ポートを有しており、出口マニホルドが設けられておらず、複数の配管部分71aの端部が露出されたままとなっている。
【0054】
本発明の態様3に係る超臨界CO分解部2は、ブランケットやダイバータを冷却する冷却媒体としてCOガスを用いているため、従来の冷却水と比べて以下の利点を有する。
(1) 高圧の超臨界CO2が真空容器に漏洩した場合、断熱膨張により急激に温度が下がるため消火剤的に機能し近傍の高温機器へ損傷を与えない。これに対して水の場合、高温機器への場合によっては水素・蒸気爆破や酸化の危険性がある。
(2) 冷却水を用いた場合、核融合燃料であるトリチウムが混入したり、水素が中性子によりトリチウムに変換されることがあるため、環境に対してトリチウム汚染のおそれがあるが、COガスを用いる場合は、その可能性が存在しない。
(3) 冷却水を用いた場合、水が真空容器の内壁に付着する汚染があるが、COガスの場合、そのような汚染のおそれは少ない。
【0055】
図18には、核融合発電炉を熱源及び放射線源として利用した態様3(第2変形例)に係る水素製造装置と、超臨界COを用いた発電装置60と、を備える電力水素併産システム102が示されている。
【0056】
電力水素併産システム102では、上述した超臨界CO分解部2eと水性ガスシフト反応部3eとを備える水素製造装置により水素が製造されると共に、核融合発電炉の熱を利用した発電装置60により電力が生成される。
【0057】
発電装置60は、核融合発電炉のブランケット45の熱により加熱される溶融塩の循環経路69と超臨界COとの間で熱交換を行う主熱交換器61を備えている。発電装置60は、一軸連結された、低圧コンプレッサ62,高圧コンプレッサ63、バイパスコンプレッサ64、ガスタービン65及び発電機66を備えている。主熱交換器により加熱された超臨界COがガスタービン65、コンプレッサ62~64を回転させることにより一緒に発電機66も回転して電力を生成する。さらに、発電装置60は、第1の再生熱交換器67aと、第2の再生熱交換器67bと、前置冷却器67cと、中間冷却器68とを備える。
【0058】
なお、電力水素併産システム102では、ブランケット45の熱により加熱される溶融塩の循環経路69と発電装置60の超臨界COとの間で熱交換を行っていたが、図12に示すようにブランケット45の熱により直接超臨界COを加熱する構成を発電装置60に用いれば、より効率的に、直接加熱された超臨界COで発電を行うことが可能となる。
【0059】
電力水素併産システム102によれば、従来の核融合発電炉における重水素(D)と三重水素(トリチウムT)とのDT反応で電力を生成するだけでなく、水素を製造することが可能となる。従来のD-T反応の核融合発電炉では、重水素(D)とリチウム(Li)を原燃料とし、リチウム(Li)から三重水素(トリチウムT)を生成するが、炉心プラズマの温度をさらに高くすると将来的には水素(H)と水素(H)との核融合による核融合発電が可能となると期待されている。この場合、本発明の水素製造装置により製造された水素を核融合の燃料として使用することにより燃料の供給が不要となる究極の核融合発電炉を実現することができる。
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態に係る水素製造装置1bの概略図である。図2において、図1の第1の実施形態と同様の構成要件については同様の参照番号を附して詳細な説明を省略し、相違する構成要件についてのみ説明する。図2に示す第2の実施形態に係る水素製造装置1bは、1100℃以上の高温度域の熱源12を備えている。このため、放射線照射無しに、超臨界COのCO熱分解反応を促進することができると考えられるため、第1の実施形態で熱源と共に利用される放射線源を省略することができる。ただし、さらなるCO熱分解反応の促進のために放射線源13を備えていてもよく、或いは、熱源12と放射線源13とを兼ねた1つの源14を備えていてもよい。1つの源14の例としては、高エネルギー中性子が発生する元素同士の核融合を行う核融合反応炉において、高温度域加熱を可能とするダイバータ等を用いるものが挙げられる(従って、図14に示す水素製造装置は第2の実施形態としても解釈可能である)。
【0060】
また、熱源12のみの例としては、高エネルギー中性子が発生しない元素同士の核融合を行う核融合反応炉において、高温度域加熱を可能とするダイバータ等を用いるものが挙げられる。
【0061】
図2に示す熱源12の熱のみでCO分解を行う他の例としては、以下に述べる太陽光と地下深い高温マグマ層の熱源とが挙げられる。
(太陽光を利用する態様)
図19には、本発明の第2の実施形態(太陽光を利用する例)に係る、電力水素併産システム103が示されている。電力水素併産システム103では、1つ又は複数のミラーにより反射された太陽光を1か所に集光させて高温度域を達成する。
【0062】
図19に示されるように、電力水素併産システム103は、熱源としての集熱部12aを有するタワー80と、集熱部12aに向けて太陽光を反射するミラーを有する複数のヘリオスタット83と、集熱部12a内に設けられた、超臨界CO分解部としてのCO配管2fと、超臨界CO及びCOの循環経路4f、10fと、高温度域の集熱部12aで分解されたCOを含むガスを用いた水性ガスシフト反応部3fと、を備える。ヘリオスタット83は、タワー80の周囲の例えば地面の上に配置され、太陽の天球上での動きに合わせて向きを自動的に変えることができる。これによって、太陽が出ている限り、集熱部81には太陽光が直接照射されると共にヘリオスタット83から反射した太陽光が照射され続ける。
【0063】
また、循環経路4f、10fを流れるCO/COを含むガスにより発電を行う昼間発電部(図示せず、図9図10の発電装置35参照)を設けることによって、昼間での発電を行うことが可能となる。
【0064】
電力水素併産システム103は、集熱部12aより加熱された溶融塩(例えばFLiNaK)を循環させる配管82と、配管82と接続される発電部81と、を備える。発電部81は、配管82から送られた加熱されたFLiNaKを蓄える高温溶融塩タンク84と、高温溶融塩タンク84からのFLiNaKと超臨界COとの間で熱交換を行う熱交換器86と、熱交換で加熱された超臨界COを用いて発電を行う発電装置60(図18参照)と、主熱交換器86で超臨界COに熱を与えて低温になったFLiNaKを蓄える低温溶融塩タンク85と、を備える。なお、発電部81では、溶融塩ではなく集熱部12aで加熱された超臨界COを配管82で循環させてもよい。これによって、発電装置60は、集熱部12aで直接加熱された超臨界COで発電をより効率的に行うこともできる。太陽が沈む夜間や太陽が出ていない曇/雨/雪の天候においても、発電部81は、高温溶融塩タンク84の溶融塩に蓄熱した熱で発電を行うことが可能となる。本発明によれば、上記した昼間発電部による発電と、夜間での発電部81との切り替えにより、一日を通した発電システムを実現することができる。
【0065】
電力水素併産システム103では、放射線源は存在しないため1つの熱源12のみとなる。熱放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例して増大するため、集熱部12aが高温になり過ぎると、放射熱損失が大きくなるが、集熱部12aをFLiNaKだけでなく超臨界COが流れて冷却するようにすれば、超臨界COに速やかに熱エネルギーが移行するため、水素製造と発電とを達成しつつ、放射熱損失も小さく抑えることができる。
(地熱を利用する態様)
図20には、本発明の第2の実施形態(高温地熱を利用する例)に係る、電力水素併産システム104が示されている。電力水素併産システム104では、地下深く位置するマグマ層12bからの高温度域の熱を利用して発電と水素製造とを達成する。
【0066】
図20に示されるように、電力水素併産システム104は、マグマ層12bからの熱を十分に受けるように地下深く配置された、超臨界CO分解部としてのCO配管2gと、超臨界CO及びCOの循環経路4g、10gと、CO配管2gから送られてきたガスからCOを分離するゲッター材を有するCO分離回収炉90と、熱交換で加熱された超臨界COを用いて発電を行う発電装置60(図18参照)と、マグマ層12bの高温度域で分解されたCOを含むガスと水とを用いた水性ガスシフト反応部3gと、マグマ層12bで加熱された超臨界COを用いて発電を行う発電装置60(図18参照)と、を備える。
【0067】
電力水素併産システム104によれば、マグマ層12bからの熱を運搬する媒体として超臨界COを用いているため、水を用いる場合と比べてきわめて効率的に地下深くまで媒体を循環させて発電を行うことができると共に、水素を製造することができる。
【0068】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明は、上記例に限定されるものではない。例えば、核融合発電炉は図11に示したトカマク型発電炉に限定されるものではなく、ブランケット又はダイバータを備える他の型式の核融合発電炉にも適用可能である。
【0069】
また、上記例では、溶融塩としてFLiNaKを例にしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、十分に熱容量が大きく適切に使用することができる他の溶融塩を用いることができる。また、太陽熱の蓄熱材溶融塩として金属アルミニウムを用いることもできる。アルミニウムは熱伝導率が大きく、伝熱に有利な上、660℃で溶融し、融解熱及び比熱が大きいので、蓄熱(融解熱、顕熱)に有利となる。
【符号の説明】
【0070】
1、1b 水素製造装置
2~2g 超臨界CO分解部(CO配管)
3~3g 水性ガスシフト反応部
4~4g 第1の循環経路
5~5d 熱源
6~6d 放射線源
7~7d 1つの源(熱源及び放射線源)、原子力発電炉、核融合発電炉
8 第1の分離部
9 第2の分離部
10~10g 第2の循環経路
11 超臨界化機構
12、12a、12b 熱源(高温度域)、太陽光発電の集熱部、マグマ層
13 放射線源
14 1つの源(高温度域の熱源及び放射線源)
20 高レベル放射性廃棄物を収納した収納管
21 ガラス固化体
22 高レベル放射性廃棄物の施設
30 原子力発電炉の炉心
31 溶融塩循環経路
32 モータ付きポンプ
33 第2の配管
34 遮蔽シールド
35 発電装置
36 ガスタービン部
40 プラズマ真空容器
41 超伝導ヘリカルコイル
42 超伝導ポロイダルコイル
43 電磁力支持構造
44 クライオスタット(断熱真空容器)
45 ブランケット
46 ダイバータ
47 放射線・中性子増倍材
48 超臨界COの入口配管
49 超臨界COの出口配管
50 炉心プラズマ
51 ダイバータカセット
52 プラズマ真空容器40のための冷却水配管
53 配管接続部
55 熱交換器
56 入口配管
57 出口配管
58 入口ポート
59 出口ポート
60 超臨界COを用いた発電装置
61 主熱交換器
62 低圧コンプレッサ
63 高圧コンプレッサ
64 バイパスコンプレッサ
65 ガスタービン
66 発電機
67a 第1の再生熱交換器
67b 第2の再生熱交換器
67c 前置冷却器
68 中間冷却器
69 溶融塩の循環経路
70~70e ダイバータ46又はダイバータカセット51を冷却する冷却配管(CO配管)
71~71e 配管部分
72~72e 表面プレート
73 配管部分を流れる超臨界CO
74a~74e 入口マニホルド
75a~75e 出口マニホルド
80 タワー
81 発電部
82 集熱部より加熱された溶融塩を循環させる配管
83 ヘリオスタット
84 高温溶融塩タンク
85 低温溶融塩タンク
86 熱交換器
90 CO分離回収炉
100,101,102,103,104 電力水素併産システム
図1
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