(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018962
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】染色毛の退色抑制用組成物、染色毛用の毛髪化粧料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240201BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240201BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q5/12
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q7/00
A61K8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089703
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022120011
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】牧田 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC692
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB53
4C083CC33
4C083CC37
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD27
4C083EE26
4C083EE28
4C083EE29
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】 染色毛の退色を抑制する技術を提供する。
【解決手段】 下記(ア)または(イ)の糖組成の還元水飴を有効成分とする、染色毛の退色抑制用組成物;(ア)単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満、(イ)五糖以上が50質量%以上。本発明によれば、所定の還元水飴を原料として配合することにより、染色毛の退色を抑制できる毛髪化粧料を得ることができる。当該毛髪化粧料を、例えば、整髪料や養毛料、洗髪料とし、これらを日常的に普通の方法で使用すれば、簡便に染色毛の退色を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)または(イ)の糖組成の還元水飴を有効成分とする、染色毛の退色抑制用組成物;
(ア)単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満、
(イ)五糖以上が50質量%以上。
【請求項2】
前記(ア)の糖組成が、(ウ)単糖が2~10質量%、二糖が15~55質量%、三糖が15~65質量%、四糖が1~15質量%かつ五糖以上が1~38質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(イ)の糖組成が、(エ)単糖が2~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%かつ五糖以上が50~82質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴を有効成分とする、染色毛の退色抑制用組成物。
【請求項5】
下記(ウ)~(オ)から選択されるいずれかの還元水飴を含有する、染色毛用の毛髪化粧料;
(ウ)糖組成が、単糖が2~10質量%、二糖が15~55質量%、三糖が15~65質量%、四糖が1~15質量%かつ五糖以上が1~38質量%の還元水飴、
(エ)糖組成が、単糖が2~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%かつ五糖以上が50~82質量%の還元水飴、
(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴。
【請求項6】
染色毛の退色抑制用毛髪化粧料である、請求項5に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
前記還元水飴を0.5質量%超20質量%以下含有する、請求項5に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
洗髪料、養毛料およびヘアリンスから選択されるいずれかである、請求項5に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を原料として配合する工程を有する、染色毛用の毛髪化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色毛の退色抑制用組成物、染色毛用の毛髪化粧料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔料や染料、酸化脱色剤などを用いて毛髪の色を変えること(ヘアカラーリング)が行われている。ヘアカラーリング製品のうち、一時染毛料(顔料などを毛髪の表面に付着させて髪を一時的に着色するもの)を除いた、半永久染毛料や永久染毛剤は、毛髪内部に色素を浸透させ、あるいは毛髪内部で色素を生成させて染色するものであり、約2週間~3ヶ月という長期間にわたって色持ちすることが求められる。
【0003】
しかしながら、実際には、日々の洗髪等により毛髪内部の染料が抜けていき、あるいはドライヤーやへアアイロン、太陽光などにより色素が熱分解して、徐々に退色してしまうことが課題となっている。そこで、染色毛の退色を抑制する技術が研究開発されており、例えば、特許文献1には特定のシリコーンにより染色毛の退色を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、乾燥した染色毛に塗布する態様、すなわち整髪料様の使用態様で有効なことは示されているが、洗髪料に配合して用いるなど、他の使用態様で退色抑制効果が得られるか否かは不明である。すなわち、係る先行技術を鑑みても、染色毛の退色を抑制する技術は十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、染色毛の退色を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、デンプンの加水分解の程度が比較的小さい水飴を還元してなる還元水飴(中~低糖化還元水飴)が、染色毛の退色を抑制できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0007】
(1)本発明に係る染色毛の退色抑制用組成物の第1の態様は、下記(ア)または(イ)の糖組成の還元水飴を有効成分とする;
(ア)単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満、
(イ)五糖以上が50質量%以上。
【0008】
(2)本発明において、還元水飴の糖組成は、(ウ)単糖が2~10質量%、二糖が15~55質量%、三糖が15~65質量%、四糖が1~15質量%かつ五糖以上が1~38質量%であってもよい。
【0009】
(3)本発明において、還元水飴の糖組成は、(エ)単糖が2~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%かつ五糖以上が50~82質量%であってもよい。
【0010】
(4)本発明に係る染色毛の退色抑制用組成物の第2の態様は、(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴を有効成分とする。
【0011】
(5)本発明に係る染色毛用の毛髪化粧料は、下記(ウ)~(オ)から選択されるいずれかの還元水飴を含有することを特徴とする;
(ウ)糖組成が、単糖が2~10質量%、二糖が15~55質量%、三糖が15~65質量%、四糖が1~15質量%かつ五糖以上が1~38質量%の還元水飴、
(エ)糖組成が、単糖が2~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%かつ五糖以上が50~82質量%の還元水飴、
(オ)デキストロース当量が10以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴。
【0012】
(6)本発明に係る毛髪化粧料は、染色毛の退色を抑制するために用いられるもの(退色抑制用毛髪化粧料)であってもよい。
【0013】
(7)本発明に係る毛髪化粧料において、還元水飴の配合量は、例えば0.5質量%超20質量%以下であってもよい。
【0014】
(8)本発明に係る毛髪化粧料は、洗髪料、養毛料およびヘアリンスから選択されるいずれかであってもよい。
【0015】
(9)本発明に係る染色毛用の毛髪化粧料の製造方法は、本発明に係る染色毛の退色抑制用組成物を原料として配合する工程を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、染色した毛髪の退色を抑制することができる。本発明によれば、所定の還元水飴を原料として配合することにより、染色毛の退色を抑制できる毛髪化粧料を得ることができる。当該毛髪化粧料を、例えば、整髪料や養毛料、洗髪料とし、これらを日常的に普通の方法で使用すれば、簡便に染色毛の退色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例のシャンプーおよびトリートメントの原材料を示す表である。
【
図2】水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または多価アルコール(各種の還元水飴、還元麦芽糖水飴、ソルビトール)を配合したシャンプー(試料3~7)で洗髪した染色毛について、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図3】水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または各種の多価アルコール(グリセリン、低糖化還元水飴、低糖化水飴)を配合したシャンプー(試料3~5)で洗髪した染色毛について、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図4】水(試料1)または低糖化還元水飴を0~15質量%配合したシャンプー(試料2~7)で洗髪した染色毛について、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図5】水(試料1)または低糖化還元水飴を0~15質量%配合したシャンプー(試料2~7)で洗髪した染色毛の外観を示す写真である。
【
図6】青系酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した場合の、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図7】青系酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した後の外観を示す写真である。
【
図8】青系酸化染毛剤で染色した毛髪を、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した後の、当該洗髪工程で使用した浸漬液(水またはシャンプー希釈液)の外観を示す写真である。
【
図9】緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した場合の、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図10】緑系酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した後の外観を示す写真である。
【
図11】緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤で染色した毛髪を、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した後の、当該洗髪工程で使用した浸漬液(水またはシャンプー希釈液)の外観を示す写真である。
【
図12】半永久染毛料で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないシャンプー(試料2)または低糖化還元水飴を配合したシャンプー(試料3)で洗髪した場合の、洗髪前後の色差を示す棒グラフである。
【
図13】緑系酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないトリートメント(試料2)または中糖化還元水飴を配合したトリートメント(試料3)で処理した場合の、熱処理前後の色差を示す棒グラフである。
【
図14】緑系酸化染毛剤で染色した毛髪について、水(試料1)、多価アルコールを配合しないトリートメント(試料2)または低糖化還元水飴を配合したトリートメント(試料3)で処理した場合の、熱処理前後の色差を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明は、上記2つの態様に係る染色毛の退色抑制用組成物を提供する。当該2つの態様の退色抑制用組成物をまとめて、またはそのいずれかを指して、「本組成物」という場合がある。
【0020】
また、上記(ア)~(オ)の還元水飴をまとめて、またはそれらのうちのいずれか1以上を指して、「所定の還元水飴」という場合がある。本発明は、所定の還元水飴を含有することを特徴とする、染色毛用の毛髪化粧料を提供する。
【0021】
「染色毛」とは、染色した毛髪をいう。本発明が対象とする染色毛は、色素が毛髪内部(コルテックス)に存在して、複数日以上の色持ちが期待される染色毛である。
【0022】
「染色毛の退色を抑制する」とは、染色毛の髪の色が変化する程度を小さくすることをいう。すなわち、染色毛の髪の色が全く変化しない場合のほか、変化したとしてもその色変化の程度が本発明を用いない場合と比較して小さい場合にすることを含む。
【0023】
毛髪の色の変化の程度は常法に従って確認することができる。すなわち、例えば、染色後の毛髪について市販の測色器械を使って色を測定(数値化)する。続いて、一定期間経過後、あるいは洗髪や熱処理等のダメージ処理後の同毛髪について、同様に測色器械を用いて色を数値化し、これら2つの測定値間の色差ΔE*を算出する。この色差が大きければ色変化が大きく、色差が小さければ色変化は小さいと判断することができる。
【0024】
後述する実施例に示すように、所定の還元水飴は、異なる作用機序(半永久染毛料あるいは酸化染毛剤)により染色された毛髪であっても、洗髪による退色を抑制できる。また、異なる色素(赤系、青系、緑系、黄系、茶系あるいは黒系)により染色された毛髪であっても、洗髪による退色を抑制できる。ここで、洗髪による退色は、洗髪料に含有される界面活性剤やアルコール等の洗浄作用により、毛髪内部に存在する染料が流出することが一因と考えられる。このことから、所定の還元水飴は、少なくとも、係る洗髪時の毛髪内部からの染料の流出を抑えることができると考えられる。すなわち、所定の還元水飴は、染色作用機序や色素の種類を問わず、染色された毛髪内部からの染料流出を抑えて、退色を抑制できるといえる。
【0025】
また、後述する実施例に示すように、所定の還元水飴は、洗い流す態様で用いられるトリートメントに配合して用いても、熱による染色毛の退色を抑制できる。ここで、熱による退色は、毛髪内部に存在する色素が熱により分解することが一因と考えられる。このことから、所定の還元水飴は、少なくとも、洗い流す態様で用いられる毛髪化粧料に配合して用いても、毛髪表面ないし毛髪内部に残存し、熱による色素分解を抑えることができると考えられる。すなわち、所定の還元水飴は、リンスオフあるいはリーブオンの使用態様を問わず、染色された毛髪における色素分解を抑えて、退色を抑制できるといえる。
【0026】
したがって、所定の還元水飴は、染色毛用の毛髪化粧料に配合して用いることができる。特に、染色毛の退色を抑制することをその使用目的に含む毛髪化粧料(退色抑制用毛髪化粧料)に好適に用いることができる。
【0027】
毛髪化粧料として、具体的には、洗髪料(シャンプー、洗髪粉など)や養毛料(トニック、ヘアローション 、ヘアエッセンス、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアパックなど)、ヘアリンス(リンスなど)、整髪料(ヘアオイル、椿油、スタイリング料、セット料、ブロー料、ブラッシング料、チック、ヘアスティック、ポマード、ヘアクリーム、ヘアミルク、ヘアソリッド、ヘアワックス、ヘアバーム、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアラッカー、ヘアリキッド、ヘアウォーター、ヘアフォーム、ヘアジェルなど)を例示することができる。
【0028】
所定の還元水飴を洗髪料に配合した場合にあっては、当該洗髪料を用いて行われる洗髪時における退色を抑制できる。一方、所定の還元水飴を洗髪料以外の毛髪化粧料(整髪料や養毛料、ヘアリンスなど)に配合した場合にあっては、少なくとも、その後に行われる洗髪時における退色の抑制効果を期待できるほか、ドライヤーやへアアイロン、太陽光などの日常生活で負荷される熱による退色を抑制することができる。
【0029】
「還元水飴」は、水飴を還元して得られる糖アルコールの一種である。ここで、原料となる水飴は、デンプンを酸や酵素などで加水分解(糖化)して得られるものであり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。よって、還元水飴もまた、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。
【0030】
還元水飴は、一般に、糖化の程度により、高糖化還元水飴、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴に分けられる場合がある。本発明者らは、還元水飴のうちでも糖化の程度が比較的小さい中糖化還元水飴ないし低糖化還元水飴が、染色毛の退色抑制効果を発揮することを見出した。すなわち、所定の還元水飴のうち、上記(ア)および(ウ)は、中糖化還元水飴に該当し、(イ)および(エ)は低糖化還元水飴に該当する。また、(オ)は、中~低糖化還元水飴に該当する。
【0031】
換言すれば、本発明において、中糖化還元水飴の糖組成は、例えば、(ア)単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満、より詳細には、(ウ)単糖が2~10質量%、二糖が15~55質量%、三糖が15~65質量%、四糖が1~15質量%かつ五糖以上が1~38質量%を例示することができる。
【0032】
また、本発明において、低糖化還元水飴の糖組成は、例えば、(イ)五糖以上が50質量%以上、より詳細には、(エ)単糖が2~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%、四糖が5~13質量%かつ五糖以上が50~82質量%を例示することができる。
【0033】
なお、「糖組成」は、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
【0034】
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴や水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
【0035】
還元水飴は、原料となる水飴のデキストロース当量で規定することもできる。「デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)」は、水飴の分解度の指標として用いられる値であり、試料中の還元糖をグルコースとして測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。
【0036】
本発明において、中糖化還元水飴の原料水飴のDEは、例えば、32以上、36以下、37以下、38以下、39以下、40未満を例示することができる。また、低糖化還元水飴の原料水飴のDEは、例えば、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、16以下、18以下、20以下、22以下、24以下、26以下、28以下、30以下、32未満を例示することができる。すなわち、中~低糖化還元水飴の、原料水飴のDEとしては、(オ)10以上40未満を例示することができる。
【0037】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
【0038】
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0039】
還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。所定の還元水飴に係る市販品としては、例えば、「アクアオール♯1」、「エスイー57」、「アクアオール♯2」、「スイートNT」、「エスイー30」、「エスイー100」(以上、物産フードサイエンス)、「PO-10」、「PO-20」(以上、三菱商事ライフサイエンス)などを例示することができる。
【0040】
還元水飴の公知の製造方法としては、原料となる水飴に水素を添加する還元反応を挙げることができる。水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
【0041】
所定の還元水飴は、毛髪化粧料を製造する通常の工程において、原料として配合して用いる。その配合方法は、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて、適宜、当業者に公知の手法により行うことができる。還元水飴は多価アルコールであることから、グリセリンや1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の従来配合される他の多価アルコールと同様に扱って、毛髪化粧料を製造することができる。
【0042】
毛髪化粧料には、還元水飴を配合するほか、本発明の特徴を損なわない限り他の成分(例えば、界面活性剤、溶媒、分散媒、他の多価アルコール、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、ソルビトール等の他の糖類、着色剤、動植物エキス、ビタミン類、無機塩類、有機塩類、可溶化剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤、油剤など)が配合されてよい。
【0043】
毛髪化粧料における還元水飴の配合量もまた、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて適宜設定することができる。例えば、化粧料の総質量を100質量%として、退色抑制効果を得る観点からは、還元水飴の下限は、0.5質量%超、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上または0.9質量%以上を例示することができる。また、上限は、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下または16質量%以下を例示することができる。
【0044】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0045】
<原材料>原材料は、特段の記載のない限り下記のものを用いた。
(1)シャンプーおよびトリートメントの原材料
シャンプーおよびトリートメントは
図1に示す原材料(全て市販品)を用いて作製した。還元水飴・還元麦芽糖水飴および水飴については、その糖組成およびDE値(還元水飴・還元麦芽糖水飴については原料糖のDE値)も
図1に示す。
【0046】
(2)毛髪
レベル16のブリーチ毛からなる毛束(製品名:人毛ライトブラウン(16LV)、ビューラックス社)を用いた。
【0047】
(3)染料
下記[3-1]および[3-2]の染料を用いて染毛した。
[3-1]酸化染毛剤
赤系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ アディクシー ネイキッドコーラル」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、硫酸トルエン2,5-ジアミン、5-アミノオルトクレゾール
青系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ アディクシー マットアッシュ」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、パラフェニレンジアミン
緑系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ アディクシー エメラルド」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、硫酸トルエン2,5-ジアミン
緑系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ アディクシー サファイア」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、硫酸トルエン2,5-ジアミン
黄茶系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ ボーテ ベージュブラウン」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、硫酸トルエン2,5-ジアミン、5-アミノオルトクレゾール
赤茶系酸化染毛剤:製品名「オルディーブ ボーテ ルージュブラウン」(ミルボン社)、有効成分(1剤);レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、5-アミノオルトクレゾール
黒系酸化染毛剤:製品名「シンフリー トリートメントヘアカラー クリームタイプ 2N」(ポーラ社)、有効成分(1剤);レゾルシン、パラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール
なお、2剤はいずれの場合も過酸化水素水(製品名「オルディーブ アディクシー オキシ」(過酸化水素6%、ミルボン社)を用いた。酸化染毛剤は、使用直前に1剤と2剤とを1:1(重量比)で混合して用いた。
【0048】
[3-2]半永久染毛料
製品名「hoyu Bigen カラートリートメント ナチュラルブラウン」(ホーユー社)、含有成分;水、グリセリン、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘントリモニウムクロリド、 タウリン、ジメチコン、ミネラルオイル、ツバキ種子油、ヒアルロン酸Na、乳酸、ヒドロキシエチルセルロース、セトリモニウムクロリド、イソプロパノール、フェノキシエタノール、香料、(+/-)HC黄4、HC青2、塩基性青75、塩基性茶16
【0049】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)染毛
毛髪に染料を塗布し、30分(酸化染毛剤の場合)または15分(半永久染毛料の場合)静置した後、流水で洗浄し、風乾して染色毛とした。
【0050】
(2)シャンプーおよびトリートメントの配合
本実施例におけるシャンプーおよびトリートメントの配合を表1に示す。
【表1】
【0051】
(3)シャンプーの製造
表1に示す配合となるよう原材料を秤量し、常温環境下で、均一な溶液になるよう手動で攪拌混合してシャンプーを作製した。
【0052】
(4)トリートメントの製造
表1に示す配合により、下記〔1〕-〔4〕の手順でシャンプーを作製した。
〔1〕秤量したステアリン酸グリセリル、ベヘントリモニウムクロリドおよびセタノールを合わせて、80℃の湯浴で温め溶解した。
〔2〕秤量した精製水および各種多価アルコールを合わせて、80℃の湯浴で温めた。
〔3〕〔1〕に〔2〕を加えながら、ホモミキサーで撹拌した(3000rpm、2分)。
〔4〕溶液の温度が50℃程度に下がったことを確認した後、フェノキシエタノールを添加した。
【0053】
(5)色差測定による退色の評価
〔1〕色測定1:染色毛について、分光光度計(島津社)を用いて波長380~740nmの透過率を測定した。透過スペクトルから、式2によりXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを算出した。続いて、X,Y,Zに基づき、式3によりL*a*b*表色系の値(L*,a*,b*)を算出した。これらの算出は、日本産業規格(JIS)Z8781-4に従い、カラー測定ソフトウェアCOL-UVPC(島津社)を用いて行った。
〔2〕色測定2:洗髪後あるいは熱処理後の染色毛について、〔1〕に記載の方法により透過率を測定してL*a*b*値を得た。
〔3〕色差の算出:色測定1および2の測定値(〔1〕および〔2〕のL*a*b*)を下記の式4に代入し、色差ΔE*abを算出した。式4:ΔE*ab=〔(ΔL*)
2+(Δa*)
2+(Δb*)
2〕
1/2
【0054】
ここで、色差は、色空間における2つの色(本実施例においては、洗髪前/熱処理前の毛髪の色と洗髪後/熱処理後の毛髪の色)の間の距離である。したがって、色差が大きいほど当該2つの色は互いに区別しやすく、色差が小さいほど区別しにくいといえる。色差の値と目視での感じ方との対応関係について、参考として、塗料・塗装業界における一般的目安を表2に示す(日本画像学会誌石川典夫、測色の基礎と実際、日本画像学会誌 第44巻 第6号、2005年第489-498頁)。また、米国国家標準局(NBS;National Bureau of Standards)が提唱する相関関係を表3に示す。
【表2】
【0055】
【0056】
<実施例1>多価アルコールの検討
(1)糖アルコール間の比較
赤系酸化染毛剤(色:ネイキッドコーラル)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして、ソルビトールおよび還元水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。シャンプーにおける多価アルコールの配合量は10質量%とした。シャンプーを水で7倍に希釈してシャンプー希釈液とし、染色毛を、水またはシャンプー希釈液に浸漬し、40℃で20分インキュベートした後、流水で30秒間洗浄することにより洗髪した(洗髪工程)。その後風乾した。洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた毛束を試料2、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、ソルビトール、還元麦芽糖水飴および高糖化還元水飴をそれぞれ配合したシャンプーを用いた毛束を試料3~7とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~7の洗髪前後の色差を測定した。その結果を
図2に示す。
【0057】
図2に示すように、試料5(ソルビトール)、試料6(還元麦芽糖水飴)および試料7(高糖化還元水飴)は、試料2(多価アルコール無し)よりも色差が大きかった。これに対して、試料3(中糖化還元水飴)および試料4(低糖化還元水飴)は、試料2よりも色差が小さかった。中~低糖化の還元水飴を配合したシャンプーで洗髪した染色毛は、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた場合と比較して、洗髪前後の色差が小さかった。この結果から、中~低糖化の還元水飴は、染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。
【0058】
(2)グリセリンおよび水飴との比較
赤系酸化染毛剤(色:ネイキッドコーラル)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして、グリセリン、低糖化還元水飴および低糖化水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。シャンプーにおける多価アルコールの配合量は5質量%とした。続いて、本実施例1(1)に記載の方法で洗髪および風乾した。洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた毛束を試料2、グリセリン、低糖化還元水飴および低糖化水飴を配合したシャンプーを用いた毛束をそれぞれ試料3、試料4および試料5とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~5の洗髪前後の色差を測定した。その結果を
図3に示す。
【0059】
図3に示すように、試料3(グリセリン)は、試料2(多価アルコール無し)よりも色差が大きく、試料5(低糖化水飴)は試料2と同等の色差であった。これに対して、試料4(低糖化還元水飴)は、試料2よりも色差が顕著に小さかった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーで洗髪した染色毛は、多価アルコールを配合しないシャンプーや、グリセリンまたは低糖化水飴を配合したシャンプーを用いた場合と比較して、洗髪前後の色差が小さかった。この結果から、低糖化還元水飴は、染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。
【0060】
<実施例2>配合量の検討
赤系酸化染毛剤(色:ネイキッドコーラル)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。低糖化還元水飴の配合量を0~15質量%として、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。続いて、これらのシャンプーを用いて実施例1(1)に記載の方法で洗髪および風乾した。洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、低糖化還元水飴を0~15質量%となるよう配合したシャンプーを用いた毛束を試料2~7とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~7の洗髪前後の色差を測定した。その結果を
図4に、洗髪後の毛束の外観を撮影した写真を
図5に、それぞれ示す。
【0061】
図4に示すように、試料3では、試料2よりも色差が大きかった。これに対して、試料4、試料5、試料6および試料7では、試料2よりも色差が小さかった。すなわち、低糖化還元水飴の配合量が0%のシャンプーを用いた場合と比較して、当該配合量が0.5質量%のシャンプーを用いた場合は洗髪前後の染色毛の色差が大きかったが、1~15質量%のシャンプーを用いた場合は、色差が小さかった。
【0062】
また、
図5に示すように、試料3は試料2と同程度の色の濃さであり、試料4~7は試料2よりも色が濃いことが視認された。すなわち、低糖化還元水飴の配合量が0%のシャンプーを用いた染色毛と比較して、当該配合量が0.5質量%のシャンプーを用いた染色毛は同程度の色の濃さであったが、当該配合量が1~15質量%のシャンプーを用いた染色毛は色が濃かった。
【0063】
これらの結果から、洗髪料における中~低糖化還元水飴の配合量を0.5質量%超とすることにより、高い退色抑制効果が得られることが明らかになった。
【0064】
<実施例3>染料の検討:青系酸化染毛剤
青系酸化染毛剤(色:マットアッシュ)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして低糖化還元水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。シャンプーにおける低糖化還元水飴の配合量は5質量%とした。続いて、実施例1(1)に記載の方法による洗髪を2回行った後、風乾した。当該洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた毛束を試料2、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた毛束を試料3とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~3の、洗髪前と2回目の洗髪後との色差を測定した。その結果を
図6に、2回目の洗髪後の毛束の外観を撮影した写真を
図7に、2回目の洗髪工程で使用した浸漬液(水またはシャンプー希釈液)の外観を撮影した写真を
図8に、それぞれ示す。
【0065】
図6に示すように、試料3は、試料2よりも色差が小さかった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーで洗髪した場合は、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた場合と比較して、洗髪前後の染色毛の色差が小さかった。
【0066】
また、
図7に示すように、試料3は試料2よりも色が濃いことが視認された。すなわち、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた染色毛と比較して、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた染色毛は色が濃かった。
【0067】
さらに、
図8に示すように、試料3のシャンプー希釈液は、試料2よりも色が薄かった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーの希釈液の方が、多価アルコールを配合しないシャンプーの希釈液よりも、使用後の色が薄かった。このことから、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた場合は、洗髪時における染色毛からの色落ちが抑制されたことが明らかになった。
【0068】
これらの結果から、青系酸化染毛剤で染色した毛髪に対しても、赤系酸化染毛剤で染色した場合(実施例1および実施例2)と同様に、中~低糖化還元水飴により染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。
【0069】
<実施例4>染料の検討:緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤
緑系(色:エメラルド)、黄茶系(色:ベージュブラウン)、赤茶系(色:ルージュブラウン)および黒系(色:ブラック)の酸化染毛剤を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして低糖化還元水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。シャンプーにおける低糖化還元水飴の配合量は5質量%とした。続いて、実施例1(1)に記載の方法で洗髪および風乾した。洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた毛束を試料2、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた毛束を試料3とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~3の、洗髪前後の色差を測定した。その結果を
図9に、洗髪後の毛束の外観を撮影した写真(代表写真として、緑系酸化染毛剤により染色した試料のみを示す)を
図10に、洗髪工程で使用した浸漬液(水またはシャンプー希釈液)の外観を撮影した写真を
図11に、それぞれ示す。
【0070】
図9に示すように、緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤のいずれを用いた染色毛においても、試料3は、試料2よりも色差が小さかった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーで洗髪した場合は、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた場合と比較して、洗髪前後の染色毛の色差が小さかった。
【0071】
また、
図10に示すように、試料3は試料2よりも色が濃いことが視認された。すなわち、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた染色毛と比較して、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた染色毛は色が濃かった。
【0072】
さらに、
図11に示すように、緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤のいずれを用いた染色毛においても、試料3のシャンプー希釈液は、試料2よりも色が薄かった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーの希釈液の方が、多価アルコールを配合しないシャンプーの希釈液よりも、使用後の色が薄かった。このことから、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた場合は、洗髪時における染色毛からの色落ちが抑制されたことが明らかになった。
【0073】
これらの結果から、緑系、黄茶系、赤茶系および黒系の酸化染毛剤のいずれで染色した毛髪に対しても、赤系や青系の酸化染毛剤で染色した場合(実施例1~3)と同様に、中~低糖化還元水飴により染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。
【0074】
<実施例5>染料の検討:半永久染毛料
半永久染毛料(色:ナチュラルブラウン)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして低糖化還元水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりシャンプーを製造した。シャンプーにおける低糖化還元水飴の配合量は5質量%とした。続いて、実施例1(1)に記載の方法で洗髪および風乾した。洗髪工程で、水を用いた毛束を試料1、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた毛束を試料2、低糖化還元水飴を配合したシャンプーを用いた毛束を試料3とした。試験方法(5)に記載の方法で、試料1~3の、洗髪前後の色差を測定した。その結果を
図12に示す。
【0075】
図12に示すように、試料3は、試料2よりも色差が小さかった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したシャンプーで洗髪した場合は、多価アルコールを配合しないシャンプーを用いた場合と比較して、洗髪前後の染色毛の色差が小さかった。この結果から、半永久染毛料で染色した毛髪に対しても、酸化染毛剤で染色した場合(実施例1~4)と同様に、中~低糖化還元水飴により染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。
【0076】
<実施例6>トリートメントによる退色抑制の評価
緑系酸化染毛剤(色:サファイア)を用いて試験方法(1)に記載のとおり染毛した。多価アルコールとして中糖化還元水飴および低糖化還元水飴を用いて、試験方法(2)および(3)に記載のとおりトリートメントを製造した。トリートメントにおける中糖化還元水飴および低糖化還元水飴の配合量は10質量%とした。また、ココイルグルタミン酸Na20gを水80gに均一に溶解して、モデルシャンプーとした。
【0077】
染毛した後、1日置いた染色毛を、モデルシャンプーを水で7倍に希釈した希釈液に浸漬し、40℃で10分インキュベートした後、流水で1分間洗浄することにより洗髪した。キムタオルで毛髪の水分を除去し、トリートメントまたは水を毛束4本に対して1g量塗布し、ラップをかけて室温(約25℃)にて5分置いた。水を塗布した毛束を試料1、多価アルコールを配合しないトリートメントを塗布した毛束を試料2、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合したトリートメントを塗布した毛束を試料3とした。続いて、流水で1分間洗浄した後、風乾した。
【0078】
試験方法(5)の色測定1として、試料1~3について熱処理前の色測定を行った。続いて、毛髪をへアアイロンに挟んで固定し、160度で10秒間加熱することにより熱処理を行った。その後、試験方法(5)の色測定2として、試料1~3について熱処理後の色測定を行い、熱処理前後の色差を算出した。多価アルコールとして中糖化還元水飴を用いた場合の結果を
図13に、低糖化還元水飴を用いた場合の結果を
図14に、それぞれ示す(いずれもN=4)。
【0079】
図13に示すように、試料3は、試料1および試料2のいずれよりも色差が小さかった。すなわち、中糖化還元水飴を配合したトリートメントで処理した場合は、トリートメント処理しなかった場合や多価アルコールを配合しないトリートメントで処理した場合と比較して、熱処理前後の染色毛の色差が小さかった。
【0080】
また、
図14に示すように、試料3は、試料1および試料2のいずれよりも色差が小さかった。すなわち、低糖化還元水飴を配合したトリートメントで処理した場合は、トリートメント処理しなかった場合や多価アルコールを配合しないトリートメントで処理した場合と比較して、熱処理前後の染色毛の色差が小さかった。
【0081】
これらの結果から、中~低糖化還元水飴は、養毛料に配合しても、洗髪料に配合した場合(実施例1~5)と同様に、染色毛の退色を抑制できることが明らかになった。