(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018965
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/78 20060101AFI20240201BHJP
B29C 44/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B29C49/78
B29C44/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092602
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022121989
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄一
【テーマコード(参考)】
4F208
4F214
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH17
4F208AM19
4F208AP06
4F208AQ01
4F208AR07
4F208LA09
4F208LB01
4F208LW02
4F208LW21
4F208LW25
4F208LW39
4F214AG07
4F214AH17
4F214AM19
4F214AP06
4F214AQ01
4F214AR07
4F214UA17
4F214UB01
4F214UW02
4F214UW21
4F214UW25
(57)【要約】
【課題】加工装置を用いて樹脂成形体を製造するにあたって、不良品が製造されることを抑制することを目的としている。
【解決手段】加工装置を用いた樹脂成形体の製造方法であって、前記樹脂成形体は、本体部と、被加工部とを有し、前記加工装置は、移動可能に構成された移動部と、監視部とを有し、前記移動部は、前記被加工部を加工するように構成された加工部を備え、前記監視部は、前記加工部の位置が、前記本体部を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成され、前記製造方法は、移動工程を備え、前記移動工程では、前記被加工部を基準として前記加工部の位置を前記被加工部へ近づけ、且つ、前記監視部により、前記移動工程における前記加工部の位置が、前記許容誤差範囲内にあるか否かが監視されている、製造方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置を用いた樹脂成形体の製造方法であって、
前記樹脂成形体は、本体部と、被加工部とを有し、
前記加工装置は、移動可能に構成された移動部と、監視部とを有し、
前記移動部は、前記被加工部を加工するように構成された加工部を備え、
前記監視部は、前記加工部の位置が、前記本体部を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成され、
前記製造方法は、移動工程を備え、
前記移動工程では、前記被加工部を基準として前記加工部の位置を前記被加工部へ近づけ、且つ、前記監視部により、前記移動工程における前記加工部の位置が、前記許容誤差範囲内にあるか否かが監視されている、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記製造方法は、加工工程を更に備え、
前記加工工程では、前記移動工程において前記加工部の位置が前記許容誤差範囲内である場合に、当該加工部の位置で前記加工部を動作させ、前記被加工部を加工する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記移動工程において、前記監視部が、前記加工部の位置が前記許容誤差範囲外であることを検出すると、その旨が報知される、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記移動部は、前記加工部に付設されている当接部を有し、
前記移動工程において、前記当接部が、前記被加工部へ近づけられて前記被加工部に当接することで前記被加工部が前記当接部に案内されて前記加工部が位置決めされる、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記移動部は、台座部と、台座移動部と、移動機構部と、保持部とを更に有し、
前記台座部には、前記移動機構部が固定されて設けられ、
前記台座移動部は、前記台座部を前記被加工部へ近づけるように前記台座部を移動可能であり、
前記移動機構部には、前記保持部が設けられ、且つ、前記移動機構部は、前記台座部が移動する方向に平行な平面において前記保持部が移動自在となるように構成され、
前記保持部には、前記当接部及び前記加工部が保持されている、方法。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記樹脂成形体は、発泡樹脂成形体である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、取付片である被加工部及びダクト本体である本体部を有する樹脂成形体が開示されている。特許文献1において、被加工部には、被加工部における予め定められた位置に開口部が形成されている。この開口部は、例えば、樹脂成形体を成形した後に、穴あけ用の加工装置を用いることで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工部に加工(特許文献1の例では開口部を形成する加工装置)をする際には、本体部に基準位置を設け、この基準位置を基準として加工装置の位置を決定することができる。一方で、樹脂成形体は、成形後に収縮等の変形をするため、寸法バラつき(設計上の寸法に対する誤差)が含まれ得る。樹脂成形体が構成部位として本体部だけでなく被加工部を有すると、各構成部位が各構成部位の形状等に応じて複雑に変形をする場合がある。この場合、加工装置の加工位置(特許文献1の例では開口部の形成位置)が、本体部の基準位置に基づいて定められた位置となっていても、加工装置の加工位置が、被加工部における予め定められた位置(特許文献1の例では取付片である被加工部の中央位置)から外れ、結果として、不良品が製造されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、加工装置を用いて樹脂成形体を製造するにあたって、不良品が製造されることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、加工装置を用いた樹脂成形体の製造方法であって、前記樹脂成形体は、本体部と、被加工部とを有し、前記加工装置は、移動可能に構成された移動部と、監視部とを有し、前記移動部は、前記被加工部を加工するように構成された加工部を備え、前記監視部は、前記加工部の位置が、前記本体部を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成され、前記製造方法は、移動工程を備え、前記移動工程では、前記被加工部を基準として前記加工部の位置を前記被加工部へ近づけ、且つ、前記監視部により、前記移動工程における前記加工部の位置が、前記許容誤差範囲内にあるか否かが監視されている、製造方法が提供される。
【0007】
本発明では、移動工程では、加工装置の加工部の位置が本体部を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かが監視されていることから、加工部に加工される位置が本体部を基準としたときにおいて許容誤差範囲内となることが担保されていることに加え、被加工部を基準として加工装置の加工部の位置を被加工部へ近づけているため、加工装置の加工部の位置が被加工部自体の寸法バラつきを加味して定められることになり、不良品が製造されることを抑制することが可能である。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]加工装置を用いた樹脂成形体の製造方法であって、前記樹脂成形体は、本体部と、被加工部とを有し、前記加工装置は、移動可能に構成された移動部と、監視部とを有し、前記移動部は、前記被加工部を加工するように構成された加工部を備え、前記監視部は、前記加工部の位置が、前記本体部を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成され、前記製造方法は、移動工程を備え、前記移動工程では、前記被加工部を基準として前記加工部の位置を前記被加工部へ近づけ、且つ、前記監視部により、前記移動工程における前記加工部の位置が、前記許容誤差範囲内にあるか否かが監視されている、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記製造方法は、加工工程を更に備え、前記加工工程では、前記移動工程において前記加工部の位置が前記許容誤差範囲内である場合に、当該加工部の位置で前記加工部を動作させ、前記被加工部を加工する、方法。
[3][2]に記載の方法であって、前記移動工程において、前記監視部が、前記加工部の位置が前記許容誤差範囲外であることを検出すると、その旨が報知される、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記移動部は、前記加工部に付設されている当接部を有し、前記移動工程において、前記当接部が、前記被加工部へ近づけられて前記被加工部に当接することで前記被加工部が前記当接部に案内されて前記加工部が位置決めされる、方法。
[5][4]に記載の方法であって、前記移動部は、台座部と、台座移動部と、移動機構部と、保持部とを更に有し、前記台座部には、前記移動機構部が固定されて設けられ、前記台座移動部は、前記台座部を前記被加工部へ近づけるように前記台座部を移動可能であり、前記移動機構部には、前記保持部が設けられ、且つ、前記移動機構部は、前記台座部が移動する方向に平行な平面において前記保持部が移動自在となるように構成され、前記保持部には、前記当接部及び前記加工部が保持されている、方法。
[6][1]~[5]の何れか1つに記載の方法であって、前記樹脂成形体は、発泡樹脂成形体である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る製造方法で加工された樹脂成形体20Aの斜視図である。
図1Bは、
図1Aとは異なる異なる方向から樹脂成形体20Aを見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る製造方法で加工される前の樹脂成形体20を加工装置100に設置した状態を示す斜視図である。
図2において、加工装置100の移動部1,2のそれぞれは、初期位置に位置している。
【
図3】
図3は、
図2に示す樹脂成形体20及び加工装置100の上面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す加工装置100の移動部1,2が初期位置から加工位置へ移動して樹脂成形体20に接近した状態を示す上面図である。
【
図9】
図9は、
図4に示す移動部1の第1保持部1D1を取り除いた状態を示している。
図9において、破線円cは、第1切断部品1F1を模式的に示している。
図9は、移動部1が前進したときに当接部1Eと取付片22とが当接しない場合を模式的に示している。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、
図9とは異なり、移動部1が前進したときに当接部1Eと取付片22とが当接する場合を模式的に示している。
図10Aは、当接部1Eが取付片22に当接する直前の様子を示しており、
図10Bは、当接部1Eが取付片22に当接し、且つ、移動部1(台座部1A)が予め定められた幅だけ前進し終えた様子を示している。
【
図12】
図12Aは、当接部2E(第1当接部2E1及び第2当接部2E2)が本体部21の基部21Aに対して上下方向に向かい合うように配置された状態を示す断面図である。
図12Aは、当接部2Eのx2方向における幅方向の中央部の断面図である。
図12Bは、
図12Aに示す状態から当接部2E同士の対向間隔が狭まった状態を示す断面図である。
図12Bにおいて、当接部2Eは、基部21Aに当接していない。
【
図13】
図13Aは、
図12Bに示す状態から当接部2Eがx2方向に移動し、当接部2Eが袋体23の拡径部23Aに突き当たった状態を示す断面図である。
図13Bは、
図13Aに示す状態から当接部2E同士の対向間隔が更に狭まって当接部2Eが基部21Aを保持し、加工部2Fの切断部品2F1が降下して袋体23を切断した様子を示している。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態に係る製造方法で加工される前の樹脂成形体20を示す斜視図である。
【
図17】
図17Aは、加工装置100に樹脂成形体20を設置する直前の状態を、加工部32e側から見た状態の正面図であり、
図17Bは、
図17A中の領域Bの拡大図である。
図17~
図18では、支持ブラケット32fは図示省略し、加工部32eは、先端部位を○で簡略図示している。
【
図18】
図18Aは、
図17Bの状態から被加工部24を支持ブロック32dに当接させた直後の状態を示し、
図18Bは、
図18Aの状態から被加工部24を下方に押圧して支持ブロック32d及び移動ベース32aを移動させた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
1 第1実施形態
図1~
図13を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
1-1 樹脂成形体20,20Aの構成説明
図1A及び
図1Bに示す樹脂成形体20Aは、
図2~
図4に示す加工装置100を用いて、樹脂成形体20を加工することで製造される。樹脂成形体20Aは、特に限定されるものではないが、実施形態においてはダクトで構成されている。
樹脂成形体20Aは、取付片22に開口部22Dが形成されている点と、袋体23が切断されて開口23tが形成されている点で樹脂成形体20と構成が異なっているがその他構成は同じである。具体的には、
図2に示す樹脂成形体20の取付片22が加工装置100に加工されることで、
図1に示す開口部22Dが形成され、
図2や
図12Aに示す樹脂成形体20の袋体23が加工装置100に加工されることで、袋状に閉塞されていた袋体23に開口23tが形成される。取付片22及び袋体23は、樹脂成形体の被加工部の一例である。
【0013】
樹脂成形体20Aは、例えば、ブロー成形で製造される発泡樹脂成形体である。実施形態では、樹脂成形体20Aの構成樹脂が発泡樹脂であるものとして説明するが、発泡樹脂に限定されるものではない。樹脂成形体20A(樹脂成形体20)を構成する樹脂は、例えば、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成することができ、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物等が挙げられる。
【0014】
以下、加工装置100による加工前の成形体である樹脂成形体20の構成要素について説明する。
図2に示すように、樹脂成形体20は、本体部21と、取付片22と、袋体23とを備えている。
【0015】
本体部21は、基部21Aと、基準部21Bとを有する。基部21Aは、ダクトの管部であり、筒状に形成されている。実施形態において、基部21Aは、
図2に示すように、基準部21Bから上方に延びた後に、湾曲してy方向に平行に延び、更に、湾曲してx方向に平行に延びている。なお、x方向、y方向は、後述するx-y座標系の方向を意味している。基部21Aの一方側には基準部21Bが設けられ、他方側には袋体23が設けられている。基準部21B及び上述した袋体23の開口23tは、ダクトの連通口(例えば、吸気口又は排気口)としての機能を有する。基準部21Bは、加工装置100の設置部3に設置される部分であり、作業者が、基準部21Bを設置部3上に設置することで、樹脂成形体20が加工装置100に対して位置決めされ、樹脂成形体20が加工可能な状態となる。
【0016】
取付片22は、板状部22Aと、縁部22Bと、接続部22Cとを有し、本体部21と一体的に形成されている。板状部22Aは、ブロー成形用の金型に溶融樹脂が押圧されることで形成される中実の板状部分である。板状部22Aには、加工装置100の加工部1F(
図5参照)によって開口部22D(
図1A参照)が形成される。開口部22Dの用途は、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂成形体20を取付対象物に取り付けるときに活用される。実施形態において、縁部22Bは、弧状に延びるように形成されている。接続部22Cは、取付片22と本体部21(基部21A)との接続部分である。
【0017】
袋体23は、拡径部23Aと、閉塞部23Bとを有し、本体部21と一体的に形成されている。拡径部23Aは、基部21Aの端部に接続されている。拡径部23Aは、基部21Aに対して径方向に広がるように形成されており、換言すると、拡径部23Aの径は、基部21Aのうち拡径部23Aとの接続部分の径よりも、大きくなっている。閉塞部23Bは、加工装置100の加工部2F(
図7参照)によって切断される部分である(
図13B参照)。ブロー成形では、溶融樹脂内にエアーが供給されて、溶融樹脂を膨らませる必要があることから、樹脂成形体20には閉塞部23Bのようなエアーを閉塞する部位が形成されることになる。そこで、実施形態に係る製造方法では、この閉塞部23Bを切断して開口23tを形成している。
【0018】
1-2 加工装置100が加味することができる寸法について
加工装置100は、樹脂成形体20を加工する機能を有するが、加工装置100が樹脂成形体20の加工にあたって加味することができる寸法は、以下の第1及び第2観点に分けることができる。
【0019】
1-2-1 第1観点の寸法
第1観点は、樹脂成形体20の本体部21(より具体的には、基準部21B)を基準とする寸法であり、後述する許容誤差範囲に対応している。以下では、本体部21(基準部21B)に対して、x-y座標系を定義して説明している。x-y座標系は、設置部3の位置(設置部3に設置された基準部21Bの位置)に基づいた座標系であり、基準位置Oは、設置部3の位置(設置部3に設置された基準部21Bの位置)に基づいて定められる。x-y座標系は、移動部1,2(後述する台座部1A,台座部2A)の移動方向に平行な平面座標系である。
【0020】
1-2-2 第2観点の寸法
第2観点は、被加工部の一例である取付片22又は袋体23を基準とする寸法である。つまり、第1観点に係るx-y座標系における寸法を満たしていても、不良品となってしまうケースがあるため、実施形態では、この第2観点の寸法も加味した加工を実施している。例えば、取付片22の中央部に開口部22Dを形成することが良品の条件となっている場合において、取付片22自体の形状は寸法通りであっても、取付片22が本体部21に接続される位置が大きくずれているとする。この場合、開口部22Dの位置が、第1観点に係るx-y座標系における寸法を満していても、取付片22の中央部から大きく外れてしまうことになる。そこで、加工装置100は、第1観点の寸法だけでなく、こちらの第2観点の寸法を満たしやすいように構成されている。
以下では、取付片22に対して、x1-y1座標系を定義して説明している。x1-y1座標系は、移動部1に基づいた座標系(取付片22の加工のための専用の座標系)であり、基準位置O1は、移動部1の位置(例えば、初期位置)に基づいて定められる。x1-y1座標系は、台座部1Aの移動方向に平行な平面座標系である。
また、以下では、取付片22に対して、x2-y2座標系を定義して説明している。x2-y2座標系は、移動部2に基づいた座標系(袋体23の加工のための専用の座標系)であり、基準位置O2は、移動部2の位置(例えば、初期位置)に基づいて定められる。x2-y2座標系は、台座部2Aの移動方向に平行な平面座標系である。
なお、実施形態では、x-y座標系、x1-y1座標系、x2-y2座標系は、水平面に平行であるが、傾斜していてもよいし、垂直面に平行であってもよい。
【0021】
このように、実施形態に係る製造方法は、原点(基準部21B)を基準とする寸法が許容誤差範囲内であることと(第1観点)、取付片22内又は袋体23内における相対位置が予め定められた範囲内(第2観点)であることを満たすことが可能となっている。以下に、加工装置100の詳細構成について説明する。
【0022】
1-3 加工装置100の詳細構成説明
図2に示すように、加工装置100は、移動部1,2と、設置部3と、監視部11,12とを備えている。なお、加工装置100は、移動部1,2等の各種駆動機構の制御や、監視部11,12の検出信号の判定等の各種制御を行う制御装置(図示省略)を備えている。
【0023】
1-3-1 移動部1(板状部分に穴を形成するための移動部)
図5及び
図6に示すように、移動部1は、台座部1Aと、台座移動部1Bと、移動機構部1Cと、保持部1Dと、当接部1Eと、加工部1Fとを有する。
【0024】
1-3-1-1 台座部1A
台座部1A上には、移動機構部1Cが固定されており、台座部1Aと移動機構部1Cとの相対位置は、変化しない。台座部1A上には、3つの監視部11が固定されており、台座部1Aと各監視部11との相対位置も変化しない。また、台座部1Aには、台座移動部1Bが取り付けられており、台座移動部1Bの駆動力により台座部1Aはx1-y1座標系におけるx1方向に平行に移動可能に構成されている。
【0025】
1-3-1-2 台座移動部1B
台座移動部1Bは、x1方向に台座部1Aを移動可能に構成されており、例えば、油圧式又はエアー式のシリンダ機構で構成することができる。
【0026】
1-3-1-3 移動機構部1C
移動機構部1Cは、保持部1Dが台座部1Aに対して相対的にx1方向に平行及びy1方向に平行に移動するように構成されている。なお、保持部1Dには、当接部1E及び加工部1Fが設けられているため、保持部1Dと共に当接部1E及び加工部1Fが移動する。移動機構部1Cは、例えば、2軸(x1方向の軸及びy1方向の軸)のリニアガイド機構で構成することができる。
【0027】
台座移動部1Bの駆動力により、
図3及び
図4に示すx1-y1座標系におけるx1方向に台座部1Aが移動すると、移動部1の当接部1Eが樹脂成形体20の取付片22に当接(干渉)する場合がある。例えば、樹脂成形体20の取付片22の形成位置が、x-y座標系における所望の位置からずれているほど、当接部1Eが取付片22に干渉しやすい。当接部1Eが取付片22に当接しても、台座移動部1Bの駆動力が台座部1Aに与えられると、台座部1Aは前進するが、その一方で、当接部1Eが取付片22に当接しているので、当接部1Eはx1方向に前進しにくく、移動機構部1Cは、当接部1E(保持部1D)と取付片22との当接力が増大しないように当接部1E(保持部1D)に回避動作させる。ここで、回避動作とは、例えば、当接部1E(保持部1D)がy1方向に平行に移動することや、x1方向に平行な方向に後退することを指す。このように、回避動作が行われることで、保持部1D、当接部1E及び加工部1Fは、台座部1Aに対する相対位置が変わる。なお、台座移動部1Bの駆動力により当接部1Eが前進しても、取付片22に当接しない場合もあり、この場合には、保持部1D、当接部1E及び加工部1Fは、台座部1Aに対する相対位置が変わらない。
【0028】
移動機構部1Cは、前進方向(つまり、x1方向)に保持部1Dを付勢するように構成されている。換言すると、移動機構部1Cは、後退方向(つまり、-x1方向)よりも、左右方向(つまり、y1方向に平行な方向)に移動しやすいように構成されている。これにより、当接部1Eが取付片22に当接しても、当接部1E(保持部1D)は、容易には、x1方向に平行な方向に押し戻されない。つまり、当接部1E(保持部1D)は、y1方向に平行な回避動作をしつつも、やや強制的にx1方向に押し込まれることになり、取付片22が当接部1Eの内側に案内されやすくなる効果が期待できる。なお、当接力が上述した付勢力を超えると当接部1Eは後退することになる。
【0029】
1-3-1-4 保持部1D
保持部1Dは、第1保持部1D1と、第2保持部1D2と、連結部1D3とを有する。第1保持部1D1には、加工部1Fの第1切断部品1F1が固定されており、第2保持部1D2には、加工部1Fの第2切断部品1F2が固定されている。第1保持部1D1と第2保持部1D2とは対向するように配置されている。保持部1Dは、図示省略の駆動機構の駆動力により、第1保持部1D1と第2保持部1D2との間の対向間隔が狭まるように構成されている。なお、第1保持部1D1が上方に移動してもよいし、第2保持部1D2が下方に移動してもよいし、両方移動してもよい。第1保持部1D1には、排出口Opが形成されており、取付片22のうち加工部1Fに切断された部分は、加工部1Fの内部空間を介して排出口Opから排出される。また、実施形態では、第2保持部1D2は、3つの監視部11によって監視されている。連結部1D3は、x1-y1座標の平面において、第1保持部1D1の位置及び第2保持部1D2の位置がずれることを防止する機能を有する。
【0030】
1-3-1-5 当接部1E
当接部1Eは、加工部1Fに付設されており、例えば、保持部1D(実施形態では、第1保持部1D1)に保持されている。これにより、当接部1Eは、x1-y1座標系において、保持部1Dと一体的に移動する。取付片22自体の形状の寸法バラつきや取付片22の本体部21に対する取付位置の寸法バラつきがない又は非常に小さければ、当接部1Eは、取付片22に当接せず、加工部1Fが所望の位置に配置されることになる。一方で、当該寸法バラつきがそれなりにある場合も想定されることから、移動部1は、当接部1Eを有することで、より適切に樹脂成形体20を加工できるような構成を採用している。つまり、当接部1Eは、取付片22へ近づけられて取付片22に当接することで、加工部1Fが位置決めされるように構成されている。この位置決めは、上述した第2観点の寸法を満たすための位置決めである。当接部1Eによる位置決め機能について以下に具体的に説明する。
【0031】
当接部1Eは、取付片22に当接したときに取付片22が当接部1Eに案内されるように構成されている。実施形態では、当接部1Eは、当接面1E1を有し、当接面1E1は、上面視したときに弧状に形成されている。換言すると、当接面1E1は、台座部1Aの後退方向に対して凸をなすように湾曲している。これにより、当接部1Eの内側(y1方向における当接部1Eの中央寄り)に取付片22が案内されやすくなり、特に、y1方向に平行な方向において、加工部1Fの位置を修正することができる。なお、実施形態では、当接面1E1は、
図5に示すように、取付片22の縁部22Bの形状に沿うように形成されている。
【0032】
例えば、取付片22の形状自体は寸法通りであるが、本体部21に対する接続位置がy1方向において少しずれていたとしても、当接部1Eが取付片22に当接したときに移動機構部1Cの作用により当接部1E(加工部1F)が台座部1Aに対して相対移動し、当接部1Eの内側に取付片22が円滑に案内され、加工部1Fが所望の位置に誘導される。
【0033】
1-3-1-6 加工部1F
加工部1Fは、取付片22を加工するように構成されている。実施形態では、加工部1Fは、取付片22に開口部22Dを形成する。なお、加工部1Fは、開口部の他に切り欠きを形成するものであってもよく、種々の加工部材を採用することができる。加工部1Fは、第1切断部品1F1と、第2切断部品1F2とを有する。
【0034】
第1切断部品1F1は、
図5に示すように、第1保持部1D1に保持されている。第1切断部品1F1は、筒状に形成されており、第1切断部品1F1の内部には、第2切断部品1F2が挿入可能な空間が形成されている。第1切断部品1F1の上端部は、排出口Opに連通するように設けられている。
第2切断部品1F2は、第2保持部1D2に保持されている。第2切断部品1F2は、第1切断部品1F1と中心軸が合うように対向配置されている。第2切断部品1F2は、第1切断部品1F1側に突き出すように形成された刃を有しており、第1切断部品1F1と第2切断部品1F2との相対位置が近づくことで、第1切断部品1F1の刃と第2切断部品1F2の下端部が取付片22を挟み込み、そして、第1切断部品1F1の刃が第2切断部品1F2内に挿入されることで、取付片22の一部が切断され、排出口Opから排出される。
【0035】
1-3-2 移動部2(袋体を切断するための移動部)
図7及び
図8に示すように、移動部2は、台座部2Aと、台座移動部2Bと、移動機構部2Cと、保持部2Dと、当接部2Eと、加工部2Fとを有する。
【0036】
1-3-2-1 台座部2A
台座部2Aの構成は、台座部1Aと基本的には同様である。台座部2A上には、移動機構部2Cが固定されており、台座部2Aと移動機構部2Cとの相対位置は、変化しない。台座部2A上には、3つの監視部12が固定されており、台座部2Aと各監視部12との相対位置も変化しない。また、台座部2Aには、台座移動部2Bが取り付けられており、台座移動部2Bの駆動力により台座部2Aはx2-y2座標系におけるx2方向に平行に移動可能に構成されている。
【0037】
1-3-2-2 台座移動部2B
台座移動部2Bの構成は、台座移動部1Bと基本的には同様である。台座移動部2Bは、x2方向に台座部2Aを移動可能に構成されており、例えば、油圧式又はエアー式のシリンダ機構で構成することができる。
【0038】
1-3-2-3 移動機構部2C
移動機構部2Cの構成は、移動機構部1Cと基本的には同様であるため、適宜説明を割愛する。移動機構部2Cは、保持部2Dが台座部2Aに対して相対的にx2方向に平行及びy2方向に平行に移動するように構成されている。なお、保持部2Dには、当接部2E及び加工部2Fが設けられているため、移動機構部2Cが当接部2E及び加工部2Fと共に移動する。移動機構部2Cは、例えば、2軸(x2方向の軸及びy2方向の軸)のリニアガイド機構で構成することができる。
【0039】
移動機構部2Cも、移動機構部1Cと同様、当接部2Eに対して回避動作をさせるように構成されている。移動機構部2Cにおける回避動作とは、例えば、当接部2E(保持部2D)がy2方向に平行に移動することや、x2方向に平行な方向に後退することを指す。このように、回避動作が行われることで、保持部2D、当接部2E及び加工部2Fは、台座部2Aに対する相対位置が変わる。
また、移動機構部2Cも、移動機構部1Cと同様、前進方向(つまり、x2方向)に保持部2Dを付勢するように構成されている。
【0040】
1-3-2-4 保持部2D
保持部2Dには、加工部2Fが固定されている。なお、
図2~
図4、
図7、
図8では、加工部2Fが保持部2Dに固定される部位については、便宜上、省略している。また、保持部2Dは、当接部2Eが上下方向に移動可能となるように、当接部2Eをガイドする機能を有する。
【0041】
1-3-2-5 当接部2E
当接部2Eは、第1当接部2E1と、第2当接部2E2とを有する。第1当接部2E1及び第2当接部2E2のそれぞれは、上下に移動可能に構成されており、樹脂成形体20を挟み込んで押さえつけることができるように構成されている。
【0042】
当接部2Eは、加工部2Fに付設されており、例えば、保持部2Dに保持されている。これにより、当接部2Eは、x2-y2座標系において、保持部2Dと一体的に移動する。台座移動部2Bの駆動力により、
図3及び
図4に示すx2-y2座標系におけるx2方向に台座部2Aが移動すると、移動部2の当接部2Eが樹脂成形体20の袋体23に当接し、移動部2の位置決めがなされる。つまり、移動部1の当接部1Eは、必ずしも取付片22に当接する必要がなかったが、移動部2の当接部2Eは、加工部2Fが袋体23に当接する(
図13A参照)。これにより、当接部2Eが本体部21の基部21Aのうち袋体23に接続される根本部分を保持することができ(
図13B参照)、より確実且つ精度よく加工部2Fで袋体23を切断することができる。移動部1の加工では、取付片22が、第1切断部品1F1と第2切断部品1F2によって上下方向から挟まれるように加工がされるため、取付片22の加工中に位置ずれすることは回避されやすい状況である。一方で、移動部2の加工では、後述する加工部2Fのように、刃で構成されている切断部品2F1を降下させることで切断する。このとき、袋体23の加工中に、例えば袋体23が移動又は撓む等して、切断位置が位置ずれる又は切断部品2F1が袋体23を適切に通過しない等の懸念がある。そこで、移動部2では、移動部2の当接部2Eを袋体23に当接させて位置決めをし、適切な箇所(袋体23の根本部分)をより確実に保持できるようにしている。
【0043】
当接部2Eは、袋体23に当接したときに袋体23が当接部2Eに案内されるように構成されている。実施形態では、第1当接部2E1及び第2当接部2E2のそれぞれは、当接面2E3を有し、当接面2E3は、上面視したときに弧状に形成されている。換言すると、当接面2E3は、台座部2Aの後退方向に対して凸をなすように湾曲している。これにより、袋体23の中心軸がy2方向における当接部2Eの中央寄りに案内されやすくなり、y2方向に平行な方向において切断部品2F1の中央と袋体23の中心軸とを揃えることができ、切断部品2F1で袋体23をより確実に切断することができる。
【0044】
1-3-2-6 加工部2F
加工部2Fは、袋体23を加工するように構成されている。実施形態では、加工部2Fは、袋体23を切断して開口23tを形成する。加工部2Fは、切断部品2F1と、ガイド部2F2とを有する。
【0045】
切断部品2F1は、薄い板状の刃で構成されており、上下方向に移動可能に構成されている。切断部品2F1は、x2方向において予め定められた間隔をあけた状態で、当接部2Eに対向するように設けられている。切断部品2F1は、ガイド部2F2によってガイドされている。なお、説明の便宜上、図示を省略しているが、ガイド部2F2が保持部2Dに固定されることで、加工部2Fは保持部2Dに保持されている。
【0046】
1-3-3 設置部3
設置部3は、樹脂成形体20の基準部21Bを設置することができるように構成されている。設置部3に基準部21Bが設置されることで、樹脂成形体20が
図3及び
図4に示すx-y座標系において位置決めされる。設置部3の形状は、基準部21Bの形状に応じて設定することができる。
【0047】
1-3-4 監視部11
監視部11は、加工部1Fの位置が、本体部21を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成されている。監視部11は、センサ支持部11Aと、センサ部11Bと有する。そして、センサ支持部11Aは、台座部1Aに固定され、且つ、センサ支持部11Aにはセンサ部11Bが固定されている。センサ部11Bは、例えば電極で構成することができ、センサ部11Bは、保持部1D(実施形態では第2保持部1D2)に接触しているか否かを検出することで、保持部1Dと一体で移動する加工部1Fの位置が許容誤差範囲内であるかを検出している。なお、センサ部11Bは、接触式のセンサで構成することに限定されるものではなく、例えば、非接触の測距センサで構成することもできる。
【0048】
図5及び
図6に示すように、監視部11は、移動部1の移動機構部1Cを基準として後退方向側(-x1方向側)と、進行方向に直交する左右方向側(y1方向側と-y1方向側)とに、それぞれ設けられている。
【0049】
ここで、上述した許容誤差範囲は、本体部21の基準部21Bの位置を基準とする寸法(x-y座標系を基準とする寸法)として予め定められる許容範囲を意味しており、第1観点の寸法に対応している。例えば、取付片22が本体部21に接続される位置が所望の範囲から逸脱している場合には、取付片22の位置が基準部21Bの位置を基準として逸脱していることになるため、許容誤差範囲外となる。
【0050】
また、当接部1Eが取付片22に当接する場合、保持部1Dが台座部1Aに対して任意に相対移動することになるが、その任意の相対移動として許容される範囲が、上述の許容誤差範囲と一致している。つまり、当接部1Eが取付片22に当接する場合において、保持部1Dがセンサ部11Bに接触していなければ、x-y座標系における許容誤差範囲内であることが担保される。換言すると、監視部11の位置は、監視部11と保持部1Dとが接触していなければ、x-y座標系における許容誤差範囲内であることが担保されているように設定されている。
実施形態では、監視部11がx1-y1座標系の台座部1Aに固定されているが、台座部1Aの初期位置はx-y座標系に基づいて定められ、また、台座移動部1Bが台座部1Aを前進させる幅は、予め定められている。このため、x1-y1座標系とx-y座標系とは互いに変換可能であり、監視部11の位置をx-y座標系における許容誤差範囲内であることが担保されているように設定することは可能である。
【0051】
1-3-5 監視部12
監視部12の構成は、監視部11と基本的には同様であるため、適宜説明を割愛する。監視部12は、加工部2Fの位置が、本体部21を基準とする許容誤差範囲内にあるか否かを検出可能に構成されており、具体的には、監視部12は、センサ支持部12Aと、センサ部12Bと有する。センサ支持部12Aは、台座部2Aに固定され、且つ、センサ支持部12Aにはセンサ部12Bが固定されている。センサ部12Bは、例えば電極で構成することができ、センサ部12Bは、保持部2Dに接触しているか否かを検出することで、保持部2Dと一体で移動する加工部1Fの位置が許容誤差範囲内であるかを検出している。
【0052】
図7及び
図8に示すように、監視部12は、移動部2の移動機構部2Cを基準として後退方向側(-x2方向側)と、進行方向に直交する左右方向側(y2方向側と-y2方向側)とに、それぞれ設けられている。
【0053】
1-4 樹脂成形体20Aの製造方法について
本方法は、設置工程と、移動工程と、加工工程と、取り外し工程とを備える。以下、各工程について説明する。
【0054】
1-4-1 設置工程
図2に示すように、設置工程では、樹脂成形体20の基準部21Bを設置部3に設置して、樹脂成形体20を加工装置100において位置決めする。なお、設置工程では、樹脂成形体20が動かないように任意の保持部(図示省略)を用いて動きを規制してもよい。設置工程では、移動部1,2は初期位置に位置している。
【0055】
1-4-2 移動工程
1-4-2-1 移動部1について
移動工程では、取付片22を基準として移動部1(加工部1F)の位置を取付片22へ近づける。つまり、移動部1の位置を
図3に示す位置(初期位置)から、
図4に示す位置(加工位置)へ前進させる。このように、実施形態では、移動部1が、x-y座標系とは異なるx1-y1座標系(取付片22の加工のための専用の座標系)で移動するように構成されている。つまり、取付片22を基準として加工部1Fの位置を取付片22へ近づけているため、加工部1Fの位置を、取付片22自体の寸法バラつきを予め想定・加味して定めやすくなる。このため、実施形態では、加工部1Fの加工位置を予め定められた範囲に収めやすくなっており、換言すると、第2観点の寸法を満たしやすくなっている。このため、実施形態では、不良品が製造されてしまうことを抑制することが可能である。
【0056】
図9に示すように、取付片22の形状自体が寸法通りであり、また、取付片22の本体部21に対する接続位置も寸法通りである場合には、移動部1が前進したとき、当接部1Eが取付片22に当接せずに当接部1Eの内側に収まる。
図9に示す位置p1は、加工部1Fの中心位置であり、後述する加工工程では、位置p1を中心とする開口部が形成されることになる。
【0057】
一方で、
図10Aに示すように、例えば、取付片22の形状自体は、寸法通りであるが、取付片22の本体部21に対する接続位置がy1方向に平行な方向において少しずれているとする。この場合、
図10Aに示す状態から、当接部1Eが更に前進して取付片22に当接したときに、移動機構部1Cの作用により当接部1E(加工部1F)が台座部1Aに対して相対移動する。相対移動量は、
図10Aに示す間隔d1と
図10Bに示す間隔d2の差に対応している。間隔d1は、当接部1Eが取付片22に当接する前における、センサ部11Bと第2保持部1D2との間の距離である。間隔d2は、当接部1Eが取付片22に当接して取付片22が当接部1E内に案内された後における、センサ部11Bと第2保持部1D2との間の距離である。間隔d2は、間隔d1よりも狭くなっており、保持部1Dや加工部1Fが、-y1方向に移動したことになる。
【0058】
ここで、第2観点の寸法では、
図11に示す予め定められた範囲Rg内に開口部22Dを収める必要があるとする。予め定められた範囲Rgは、例えば、取付片22の縁部22Bの形状等に基づいて決定することができる。仮に、移動部1が当接部1Eを有さない場合、加工部1Fは前進するだけなので、加工部1Fの中心位置は、
図11に示す位置p2に移動することになる。この位置p2で加工がなされると、破線円c2のような開口が形成されてしまい、開口部22Dが矩形の予め定められた範囲Rgからはみ出してしまう。しかし、移動部1が当接部1Eを有することで、当接部1E内に取付片22が誘導され、加工部1Fの中心位置は、
図11に示す位置p3に移動することになる。位置p3で加工がなされると、開口部22Dが予め定められた範囲Rgからはみ出してしまうことが回避されている。このように、実施形態では、移動部1が当接部1Eを有することで、より第2観点の寸法を満たしやすく、不良品が製造されてしまうことをより効果的に抑制することが可能である。
【0059】
なお、移動部1が当接部1E等を備えない代わりに、作業者が、移動部1を都度、移動させて、加工部1Fの位置を調整する従来方法も存在するが、このような従来方法は、調整作業が手間である。また、樹脂成形体20は成形条件(肉厚や環境温度、原料ロット)に応じてその収縮量が変わることから、樹脂成形体20の変形は一律なものではない。また、成形条件だけでなく、樹脂成形体20を加工するタイミングに起因する、樹脂成形体20の状態をバラつかせる要因もあり、例えば、樹脂成形体を金型から取り出してから加工装置100で加工するまでの時間の長短によっても、樹脂成形体20の収縮量が変わってくる。このように、樹脂成形体20の成形条件や樹脂成形体20の状態をバラつかせる要因により、樹脂成形体20の変形が一律でなくなるが、これは、実施形態のように、樹脂成形体20が発泡樹脂で構成されている場合に影響が顕著である。このため、従来方法では作業者の作業の熟練度によって、加工精度にバラつきが生じてしまう懸念がある。それに対し、本実施形態は、調整作業の手間や加工精度のバラつきを抑制可能である。
【0060】
上述したように、樹脂成形体20が発泡樹脂で構成されている場合、収縮による変形の影響が顕著であることから、実施形態に係る製造方法は、樹脂成形体20が発泡樹脂で構成されている場合に好適である。なお、樹脂成形体20が発泡樹脂成形体である場合において、樹脂成形体20を構成する樹脂の発泡倍率は、1.1~8倍であり、好ましくは、1.2~4倍である。具体的には例えば、1.1,1.2,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0061】
また、当接部1Eにより取付片22が案内されて加工部1Fの位置が相対移動しても、第1観点に係る許容誤差範囲外となることが回避されている。つまり、移動工程では、監視部11により、保持部1D(加工部1F)の位置が、許容誤差範囲内にあるか否かが監視されている。このため、樹脂成形体20Aの加工位置が、x-y座標系における許容誤差範囲内となることが担保される。換言すると、実施形態では、第1観点の寸法を満たすことができ、不良品が製造されてしまうことを抑制することが可能である。
【0062】
また、監視部11が、加工部1Fの位置が許容誤差範囲外であることを検出すると、制御装置は、例えば、音声又は表示によりその旨を報知し、移動部1,2の動作を停止させる。これにより、移動工程から加工工程に強制的に移行してしまうことを回避することができる。
【0063】
1-4-2-2 移動部2について
袋体23を基準として移動部2(加工部2F)の位置を取付片22へ近づける。なお、移動部2については、
図2に示すように、第1当接部2E1及び第2当接部2E2の対向間隔を袋体23の上下幅よりも大きくあけておいた状態で、移動部2の位置を
図3に示す初期位置から予め定められた距離後退させ、袋体23が第1当接部2E1と第2当接部2E2との間を通過するようにしている(
図12Aに示す状態参照)。その後、第1当接部2E1と第2当接部2E2を前進させて袋体23の拡径部23Aに当接させ、位置決めをする(
図12B及び
図13A参照)。
【0064】
図13に示すように、当接部2Eの位置決めが完了すると、第1当接部2E1と第2当接部2E2との間の対向間隔が狭まり、第1当接部2E1及び第2当接部2E2が本体部21を挟んで押さえつける。
【0065】
袋体23の形状自体が寸法通りであり、また、袋体23の本体部21に対する接続位置も寸法通りである場合には、移動部2が前進したとき、当接部2Eが袋体23に、丁度、当接することになる。
【0066】
一方で、例えば、袋体23の拡径部23Aの形成位置が近すぎて(
図12Aにおける-x2方向に寄りすぎて)、第1当接部2E1及び第2当接部2E2がすぐに拡径部23Aに当接してしまう状況も考えられる。この場合には、保持部2Dが-x2方向に相対移動することになる。
逆に、袋体23の拡径部23Aの形成位置が遠すぎて(
図12Aにおけるx2方向に寄りすぎて)、台座部2Aが予め定められた幅だけ前進しても、当接部2Eが拡径部23Aに当接しない状況も考えられる。このような場合には、当接部2Eが拡径部23Aに当接していないことを制御装置が検出するように構成されているとよい。そして、制御装置は、当該検出をすると、当接部2Eを更に前進させ、前進量が予め定められた閾値を超えた場合、監視部12による接触検出がなくても、加工部2Fの位置が許容誤差範囲外であることを検出してもよい。
【0067】
監視部12は、加工部2Fの位置が許容誤差範囲外であることを検出すると、監視部11と同様に、制御装置は、例えば、音声又は表示によりその旨を報知し、移動部1,2の動作を停止させる。
【0068】
移動部2についても、第1及び第2観点の寸法の内容については、上述の4-2-1で述べた移動部1の内容と基本的に同様であるため省略する。
【0069】
1-4-3 加工工程
加工工程は、移動工程において加工部1F,2Fの位置が許容誤差範囲内である場合に実施される。つまり、移動工程において、加工部1F,2Fの位置が許容誤差範囲外であることが検出されない場合、制御装置は、移動工程で移動させた加工部1F,2Fの位置で樹脂成形体20を加工する。
つまり、取付片22については、加工部1Fにより、開口部22Dが形成され、袋体23については、閉塞部23Bが加工部2Fにより切断され、開口23tが形成される。
【0070】
1-4-4 取り外し工程
取り外し工程では、移動部1,2が移動工程における動作とは逆の順序で動作し、移動部1,2が例えば初期位置に退避する。そして、製造された樹脂成形体20Aが設置部3から取り外される。
【0071】
1-5 変形例
上記実施形態に係る製造方法は、基準部21Bから比較的、遠い位置にある部位を加工するときに好適である。基準部21Bから遠い位置にある部位ほど、樹脂成形体20の収縮等の変形の影響が大きいためである。基準部21Bと移動部による加工対象部位(取付片22や袋体23)との直線距離(cm)が、具体的には例えば、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,120,140,160,180,200,220,240,260,280,300,320,340,360,380,400であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、移動部1の当接部1Eが取付片22に当接しない場合があるものとして説明したが、これに限定されるものではない。当接部1Eも、当接部2Eと同様、加工対象部位である取付片22に当接して、位置決めをしてもよい。
【0073】
2 第2実施形態
図14~
図17を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、第1実施形態中での説明は、その趣旨に反しない限りは、本実施形態にも適用可能である。以下、相違点を中心に説明する。
【0074】
2-1.樹脂成形体20
図14に示すように、本実施形態では、加工対象である樹脂成形体20は、本体部21と、被加工部24を供える。樹脂成形体20は、例えば、リザーブタンクのような中空成形体である。被加工部24は、加工前の状態では、開口が形成されていない柱状部位(好ましくは円柱状部位)である。被加工部24は、中実であっても中空であってもよい。何れの場合でも、ドリルのような加工部32e(
図15Bに図示)を用いて、被加工部24に対して穿孔などの加工が行われる。樹脂成形体20は、例えば、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて、ブロー成形等の方法で製造可能である。また、基準面21a又はこれに隣接した位置に、第2の被加工部(不図示)が設けられていることが好ましい。
【0075】
2-2.加工装置100
図15~
図16に示すように、本実施形態の加工装置100は、固定部31と、移動部32と、ステージ33と、監視部34を供える。
【0076】
固定部31は、メインベース31aと、基準ベース31bと、連結部31cと、基準ブロック31da,31dbを供える。基準ベース31bは、連結部31cを介してメインベース31aに固定されている。基準ブロック31da,31dbは、基準ベース31bに固定されている。基準ブロック31da,31dbは、本体部21の位置決めの基準とするためのブロックである。本実施形態では、x方向及びy方向の位置決めのために、一対の基準ブロック31da,31dbが設けられており、本体部21の2つの基準面21a,21bを一対の基準ブロック31da,31dbのそれぞれに当接させることによって、本体部21の位置決めが可能になっている。なお、本実施形態では、便宜上、
図16Aに示すように、本体部21の長手方向をx方向と、x方向に直交する方向をy方向とする。
【0077】
固定部31には、基準面21a又はこれに隣接した位置に設けられた第2の被加工部(不図示)を加工するための加工部(不図示)が設けられていることが好ましい。この加工部は、本体部21を基準として、第2の被加工部を加工するように構成されていることが好ましい。本実施形態によれば、樹脂成形体20が互いに離れた複数箇所に被加工部を有する場合に、樹脂成形体20に成形収縮が生じても、各被加工部での加工位置のズレを抑制することができる。
【0078】
移動部32は、ステージ33を介してメインベース31aに固定されている。ステージ33は、本実施形態では、二軸軸ステージであり、x方向及びy方向の移動を可能とするステージである。従って、移動部32は、固定部31に対して、x方向及びy方向に移動可能になっている。なお、ステージ33を一軸ステージとして、移動部32が、メインベース31aに対してx方向のみに移動可能になるようにしてもよい。
【0079】
移動部32は、移動ベース32aと、支持ベース32bと、連結部32cと、支持ブロック32dと、加工部32eと、支持ブラケット32fと、リニアスライダ32gを供える。支持ベース32bは、連結部32cを介して移動ベース32aに固定されている。支持ブロック32dは、支持ベース32bに固定されている。加工部32eは、支持ブラケット32fによって支持されており、支持ブラケット32fは、リニアスライダ32gによってy方向に移動可能に構成されている。リニアスライダ32gは、移動ベース32aに固定されている。
【0080】
支持ブロック32dは、被加工部24を支持可能に構成されている。被加工部24の位置が、本体部21を基準として設計通りであれば、被加工部24を支持ブロック32dに支持させても、移動部32は、移動しない。一方、
図17Bに示すように、樹脂成形体20の成形のばらつきなどが原因で、本体部21を基準とした被加工部24の位置が、設計上の位置から左側にずれると、
図18Aに示すように、被加工部24が支持ブロック32dのテーパー面32d1に当接する。その状態で被加工部24を押し下げると、
図18Bに示すように、支持ブロック32dが
図8Aの左向き(-x方向)に移動し、支持ブロック32dの支持部32d2によって被加工部24が安定的に支持される。支持ブロック32dは、支持ベース32b及び連結部32cを介して移動ベース32aに連結されているので、支持ブロック32dの移動に伴って、移動ベース32aも一緒に移動する(つまり、移動部32の全体が一緒に移動する)。なお、被加工部24の位置が設計上の位置から右側にずれると、支持ブロック32d及び移動ベース32aは、右向き(+x方向)に移動する。
【0081】
加工部32eは、支持ブラケット32fとリニアスライダ32gを介して移動ベース32aに固定されているので、支持ブロック32dが移動しても、支持ブロック32dと加工部32eの相対位置は、変化しない。加工部32eは、支持ブロック32dの支持部32d2に対向した位置に設けられており、被加工部24を基準として支持部32d2が被加工部24に近づくように移動する際に、加工部32eも被加工部24に近づくように移動する。
【0082】
この後は、リニアスライダ32gが加工部32eを前進させて、加工部32eが被加工部24を加工(例:穿孔)することができる。
【0083】
このように、本実施形態では、樹脂成形体20を加工装置100に設置する際に、加工部32eの位置を被加工部24に近づける移動工程が行われる。また、この移動工程によって、加工部32eによる加工位置のばらつきを、樹脂成形体20の寸法ばらつきよりも小さくすることができるので、不良品の製造が抑制される。
【0084】
監視部34は、固定部31に固定されており、加工部32eの位置が、本体部21を基準とする許容誤差範囲内であるかどうかを監視する。この監視は、第1実施形態と同様の方法で行うことができる。これによって、寸法が許容範囲外である樹脂成形体20を加工するという無駄な工程の発生を抑制できる。
【0085】
本実施形態では、例えば、移動ベース32aが監視部34に接触するかどうかを監視することができる。監視部34は、x方向について、移動ベース32aの両側に配置することが好ましい。この場合、移動ベース32aが+x方向のと-x方向のどちらに移動した場合でも、移動ベース32aの移動量が許容誤差範囲内であるかどうかを監視することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 :加工装置
1 :移動部
1A :台座部
1B :台座移動部
1C :移動機構部
1D :保持部
1D1 :第1保持部
1D2 :第2保持部
1D3 :連結部
1E :当接部
1E1 :当接面
1F :加工部
1F1 :第1切断部品
1F2 :第2切断部品
2 :移動部
2A :台座部
2B :台座移動部
2C :移動機構部
2D :保持部
2E :当接部
2E1 :第1当接部
2E2 :第2当接部
2E3 :当接面
2F :加工部
2F1 :切断部品
2F2 :ガイド部
3 :設置部
11 :監視部
11A :センサ支持部
11B :センサ部
12 :監視部
12A :センサ支持部
12B :センサ部
20 :樹脂成形体
20A :樹脂成形体
21 :本体部
21A :基部
21B :基準部
21a :基準面
21b :基準面
22 :取付片
22A :板状部
22B :縁部
22C :接続部
22D :開口部
23 :袋体
23A :拡径部
23B :閉塞部
23t :開口
24 :被加工部
31 :固定部
31a :メインベース
31b :基準ベース
31c :連結部
31da :基準ブロック
31db :基準ブロック
32 :移動部
32a :移動ベース
32b :支持ベース
32c :連結部
32d :支持ブロック
32d1 :テーパー面
32d2 :支持部
32e :加工部
32f :支持ブラケット
32g :リニアスライダ
33 :ステージ
34 :監視部