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特開2024-18973容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、および容積式ポンプの流量を調整する方法
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  • 特開-容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、および容積式ポンプの流量を調整する方法 図1
  • 特開-容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、および容積式ポンプの流量を調整する方法 図2
  • 特開-容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、および容積式ポンプの流量を調整する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018973
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、および容積式ポンプの流量を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/22 20060101AFI20240201BHJP
   F04C 14/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F04C14/22 D
F04C14/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096771
(22)【出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】10 2022 118 965.1
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523224844
【氏名又は名称】ポンプ テクノロジー ソリューションズ ペ―エス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Pump Technology Solutions PS GmbH
【住所又は居所原語表記】Lange Enden 1 13437 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ハイリッヒ
【テーマコード(参考)】
3H044
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC23
3H044DD35
(57)【要約】
【課題】容積式ポンプ(1)の流量を調整する装置(6)を提供する。
【解決手段】容積式ポンプ(1)の流量を調整する装置(6)は、変位可能な調整ピストン(7)と、その変位方向(x)において調整ピストン(7)に作用するばね要素(9)とを備える。さらに、装置(6)は、ばね要素(9)の作用方向(a)に抗して調整ピストン(7)に力を加える手段(10)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能な調整ピストン(7)と、その変位方向(x)において前記調整ピストン(7)に作用するばね要素(9)とを備える容積式ポンプ(1)の流量を調整する装置(6)であって、
前記ばね要素(9)の作用方向(a)に抗して前記調整ピストン(7)に力を加える手段(10)を備えることを特徴とする、装置(6)。
【請求項2】
前記調整ピストン(7)に力を加える前記手段(10)は、電磁弁(12)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(6)。
【請求項3】
前記電磁弁(12)は、ロッド(13)を備え、前記ロッド(13)は、前記調整ピストン(7)の前記変位方向(x)に移動可能であり、前記調整ピストン(7)に作用することを特徴とする、請求項2に記載の装置(6)。
【請求項4】
前記調整ピストン(7)に力を加える前記手段(10)は、空圧弁を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(6)。
【請求項5】
前記調整ピストン(7)に力を加える前記手段(10)は、液圧弁を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(6)。
【請求項6】
前記調整ピストン(7)に力を加える前記手段(10)は、電気モーターを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(6)。
【請求項7】
前記調整ピストン(7)に力を加える前記手段(10)は、ばね要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(6)。
【請求項8】
吸込みポートと、圧力ポートと、前記容積式ポンプ(1)の流量を調整する請求項1から7の何れか1項に記載の装置(6)とを備える、容積式ポンプ(1)。
【請求項9】
前記容積式ポンプ(1)は、ベーンポンプとして設計されていることを特徴とする、請求項8に記載の容積式ポンプ(1)。
【請求項10】
流量を調整する変位可能な調整ピストン(7)と、その変位方向(x)において前記調整ピストン(7)に作用するばね要素(9)とを備える容積式ポンプ(1)の流量を調整する方法であって、
前記ばね要素(9)の作用方向(a)に抗して前記調整ピストン(7)に力が加えられることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位可能な調整ピストンと、その変位方向において調整ピストンに作用するばね要素とを備える容積式ポンプの流量を調整する装置に関する。さらに、本発明は、吸込みポートおよび圧力ポートを備える容積式ポンプ、ならびに容積式ポンプの流量を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1のプリアンブル部に記載の装置および対応する容積式ポンプが特許文献1によって知られている。
【0003】
特許文献2には、ベーンポンプの形態の液圧デリバリーシステムのためのさらなる調整装置が記載されている。
【0004】
ベーンポンプの形態の容積式ポンプを有する液圧システムが、例えば、特許文献3によって知られている。
【0005】
これらの装置では、可変制御可能な容積式ポンプの流量を自動的に調節することができる。そのために、当該装置は、調整ピストンを有しており、調整ピストンは、制御圧力チャンバーにおける差圧と、通常では、その制御圧力チャンバー内に配置されているばねの力とを介して、その位置が変位されることによって、必要なポンプストロークを設定でき、容積式ポンプの流量を自動的に調整できる。
【0006】
これらの装置およびそれを用いて制御される容積式ポンプでは、特に容積式ポンプを駆動するモーターが高速のときに、流量を制限することが可能であり、このことは、容積式ポンプに割り当てられたそれぞれの流量に対してのみ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第10 2005 050 216(B4)号
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2005 016 181(A1)号
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2008 042 728(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、容積式ポンプの流量をほとんど全ての所望の値に設定できるようにする容積式ポンプの流量を調整する装置、容積式ポンプ、およびそのような容積式ポンプの流量を調整する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、その目的は、請求項1で言及される特徴によって達成される。
【0010】
本発明によるばね要素の作用方向に抗して調整ピストンに力を加える手段によって、調整ピストンの位置を変更すること、すなわち、調整ピストンに加えられる差圧およびばね要素の力からなる容積式ポンプの流量の制御変数を変更できるようになる。ばね要素に付加的な力が加わるというこのようなアクティブな介入は、制御の基礎となる制御変数を変更でき、従って、容積式ポンプの流量をアクティブに低下または増大させることができる。
【0011】
容積式ポンプの速度の増加に伴って、容積式ポンプの流量を制限することもできるが、それぞれの容積式ポンプに割り当てられた流量にしかできないという公知の解決策と異なり、本発明による解決策の場合は、容積式ポンプの流量をアクティブに変更すること、具体的には、さらに低下させるか、または必要なら増大させることができる。容積式ポンプの流量が少ないと、容積式ポンプの内部抵抗が低くなり、そのことが容積式ポンプによるエネルギー消費を削減する。このように、流量を減少させることによって、大幅なエネルギー削減を有利に実現できる。
【0012】
本発明による解決策のさらに重要な利点は、容積式ポンプに対して大がかりな介入をすることなく、調整ピストンに力を加える手段を後付けできるので、本発明による装置を既存の容積式ポンプにも使用できることである。本発明による装置に関する費用がこのように低いと、本発明の解決策によるコストが比較的低くなる。
【0013】
本発明の非常に有利なさらなる実施形態では、調整ピストンに力を加える手段が電磁弁を備えるようにしてもよい。このような電磁弁によって、調整ピストンに力を加える手段の非常に簡単かつ精密な制御が可能になる。既存の容積式ポンプへの電磁弁の後付けを非常に簡単な手法で実現することもできる。
【0014】
この点において、電磁弁がロッドを備え、そのロッドが調整ピストンの変位方向に移動可能であり、調整ピストンに作用する場合には、調整ピストンに対する電磁弁の非常に簡単な連結が実現される。
【0015】
電磁弁の使用の代替として、調整ピストンに力を加える手段が空圧弁を備えることも可能である。
【0016】
調整ピストンに力を加えるための別の可能性として、調整ピストンに力を加える手段が液圧弁を備える。
【0017】
さらに、調整ピストンに力を加える手段が電気モーターを備えるようにしてもよい。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、調整ピストンに力を加える手段がばね要素を備えるようにしてもよい。
【0019】
吸込みポート、圧力ポート、および本発明による装置を備える容積式ポンプが請求項8に提示されている。
【0020】
本発明による装置を使用すると、このような容積式ポンプは、例えば、パワーステアリングポンプとして自動車に使用でき、本発明によるその流量の調整により、例えば、燃料の形態のエネルギーを削減することができる。
【0021】
容積式ポンプがベーンポンプとして設計されている場合には、特に自動車に用いることが有利であることが判明している。
【0022】
容積式ポンプの流量を調整する方法が請求項10に提示されている。
【0023】
本方法において、調整ピストンに作用するばね要素の作用方向に抗して調整ピストンに力が加えられ、そうすることによって、基本的に存在する容積式ポンプの可変流量に、さらにアクティブな影響を与えることができる。
【0024】
本発明による方法によって、容積式ポンプの流量調整を決定づける調整ピストンの位置を非常に容易に変更でき、このようにして、流量のアクティブな制御を実現できる。このように、容積式ポンプの流量に、以前よりも大きく影響を与えることができ、例えば、流量を低下させる場合には、大幅なエネルギーの削減を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置によれば、容積式ポンプの流量をほとんど全ての所望の値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】流量を調整する装置が配置されている本発明による容積式ポンプを通る断面を示す。
図2】先行技術によって知られている容積式ポンプの特性曲線を示す。
図3】本発明による容積式ポンプの特性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の一実施例について、図面を参照しながら原理的に説明する。
【0028】
図1は、容積式ポンプ1を示し、その主な特徴は、例えば、独国特許出願公開第10 2008 042 728(A1)号によって知られており、本事例では、ベーンポンプとして設計されている。したがって、容積式ポンプ1の基本設計および動作モードは、公知であるため、ここでは詳細に説明しない。
【0029】
容積式ポンプ1は、吸込みポートおよび圧力ポートを有し、それらポートは、図1による断面図では見えない。当業者には、吸込みポートおよび圧力ポートの位置は、非常に容易に理解されるはずである。さらに、容積式ポンプ1は、本質的に公知の手法であるハウジング2を有し、ハウジング2は、ハウジング2に対して移動可能な外側リング3と、外側リング3の内側に配置され、回転軸5に取り付けられた内側リング4とを有し、回転軸5は、ハウジング2に対して静止しており、ドライブシャフトとして設計されている。本質的に公知の手法で、内側リング4は、複数の羽根4aを有する。
【0030】
ハウジング2内で外側リング3を変位させることによって、容積式ポンプ1によって送り出される流量は、本質的に公知の手法で変更される。ハウジング2内での外側リング3の変位による流量のこのような変更も本質的に公知であるため、ここでは、以下でより詳細に説明することをしない。
【0031】
流量を調整するために、調整ピストン7を有する装置6が用いられる。調整ピストン7は、ハウジング2の空所8内で「x」と称される変位方向に変位できるように取り付けられている。さらに、装置6は、調整ピストン7に対して作用方向「a」に作用するばね要素9を有する。本質的に公知の手法で、空所8内の調整ピストン7の位置によって、外側リング3に作用する圧力が決定され、これによって、外側リング3の位置が調節される。
【0032】
したがって、調整ピストン7は、両方向矢印「x」に従って2つの方向(前後)に移動できるように空所8内に取り付けられている。ばね要素9の作用方向「a」は、調整ピストン7の変位方向xに平行であるが、1方向にのみ力を加えることができるばね要素9の性質によって1方向にだけ延びる。
【0033】
容積式ポンプ1の流量を調整する装置6は、さらに、ばね要素9の作用方向aの反対方向、すなわち矢印「a」の反対の方向に、調整ピストン7に力を加える手段10を備える。
【0034】
手段10によって調整ピストン7に力を加えることによって、空所8内の調整ピストン7の位置を変更することが可能である。このように、手段10は、調整ピストン7に力を加えるだけでなく、調整ピストン7の位置を変更することもできる。調整ピストン7の位置のこのような変更は、本質的に公知の手法で、ハウジング2内の外側リング3の位置も変更し、従って、容積式ポンプ1の流量も変更させる。
【0035】
調整ピストン7を所望の位置にロックするために、手段10によって調整ピストン7に加えられる力は、容積式ポンプ1のある一定の流量が設定される限り、常に加えられる。
【0036】
図2および図3は、調整ピストン7に力を加える手段10の効果を示す。図2は、先行技術によって知られている容積式ポンプの回転数nに対する変位体積FVを示し、図3は、本発明による容積式ポンプ1の回転数nに対する変位体積FVを示す。
【0037】
図3の平行な2本の水平線を見ると分かるように、それらの間の参照符号11で指定した領域において、容積式ポンプ1は、変位体積FVをアクティブに変更可能であり、すなわち、ばね要素9の作用方向に抗して調整ピストン7に力を加えることによって、その領域11において容積式ポンプ1の変位体積FVにアクティブに影響を及ぼすことができる。ばね要素9のばね定数を選択することによって、固定流量が可変流量に変わる点に影響を与えることができる。
【0038】
手段10の制御は、図示しない制御デバイスを介して行うことができ、その制御デバイスは、例えば、自動車の一部であって、容積式ポンプ1が据え付けられた操舵システムである。
【0039】
本実施例では、調整ピストン7に力を加える手段10は、電磁弁12を有する。また、電磁弁12は、さらにロッド13を有し、ロッド13は、調整ピストン7の変位方向xに移動可能であり、調整ピストン7に作用する。ロッド13は、適切なシーリング要素によってハウジング2からシールされることによって、空所8の内部に位置する液圧媒体がロッド13のハウジング2に入る領域を通って漏出できないようにすることが好ましい。
【0040】
しかしながら、図示しない装置6の一実施形態では、調整ピストン7に力を加える手段10は、空圧弁、液圧弁、電気モーターおよび/またはばね要素を備えることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 容積式ポンプ
2 ハウジング
3 外側リング
4 内側リング
4a ベーン
5 回転軸
6 装置
7 調整ピストン
8 空所
9 ばね要素
10 手段
12 電磁弁
13 ロッド
a 作用方向
x 変位方向
図1
図2
図3