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特開2024-18992タービンノズル又はブレード用の入れ子式ダンパーピン及び振動減衰システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018992
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】タービンノズル又はブレード用の入れ子式ダンパーピン及び振動減衰システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/16 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F01D5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023104973
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】17/815,372
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー ジョン スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド ウィルソン バンタッセル
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン デンバー ポッター
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マコーネル デルヴォー
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202BA02
3G202BB03
(57)【要約】
【課題】大幅な設計変更なしで、タービンノズル又はブレードの振動を低減する。
【解決手段】タービンノズル(112)又はブレード(114)用の振動減衰システム(120)は振動減衰素子(172)を含む。本体開口(160)がタービンノズル又はブレード内を通って延在している。振動減衰素子は、本体開口内で積み重なった複数のダンパーピン(174)を含む。各ダンパーピンは、内側開口(182)、第1の端面(184)及び反対側の第2の端面(186)を有する外側本体(180)と、外側本体の内側開口内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体(190)とを含む。端面同士が摩擦係合して振動を減衰させる。内側本体は、長尺体(200)と係合するように構成された第1の部分(194)を含む第1の中央開口(192)、及び外側本体の内側開口の一部(198)と摩擦係合して振動を減衰させるように構成された外面(196)を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンノズル(112)又はブレード(114)のための振動減衰システム(120)のためのダンパーピン(174)であって、当該ダンパーピン(174)が、
内側開口(182)、第1の端面(184)及び反対側の第2の端面(186)を有する外側本体(180)と、
前記外側本体(180)の内側開口(182)内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体(190)であって、長尺体(200)と係合するように構成された第1の部分(194)を含む第1の中央開口(192)、及び前記外側本体(180)の内側開口(182)の一部(198)と摩擦係合するように構成された外面(196)を有する内側本体(190)と
を備えるダンパーピン(174)。
【請求項2】
前記内側本体(190)の外面(196)が、球根状の基部(210)及び細いネック部(212)とを含む洋梨形状を有し、前記細いネック部(212)が、第1の中央開口(192)の第1の部分(194)を含む、請求項1に記載のダンパーピン(174)。
【請求項3】
前記球根状の基部(210)が、第1の中央開口(192)の第2の部分(214)であって、前記長尺体(200)から離間した第2の部分(214)を含む、請求項2に記載のダンパーピン(174)。
【請求項4】
前記外側本体(180)の内側開口(182)が、前記内側本体(190)の外面(196)の洋梨形状を収容するとともに、前記内側本体(190)に対する前記長尺体(200)の影響下で前記内側本体(190)と前記外側本体(180)との摩擦係合を可能にするように構成された形状を有する、請求項2に記載のダンパーピン(174)。
【請求項5】
前記外側本体(180)の第1の端面(184)が少なくとも部分的に凹面であり、かつ前記外側本体(180)の第2の端面(186)が少なくとも部分的に凸面であり、もって、隣り合うダンパーピン(174)の第1の端面(186)と第2の端面(186)とが摩擦係合する、請求項1に記載のダンパーピン(174)。
【請求項6】
前記外側本体(180)が、第1の端面(184)及び第2の端面(186)を貫通する第2の中央開口(188)をさらに有しており、第2の中央開口(188)は、長尺体(200)がそこを通って延在できるように構成されている、請求項5に記載のダンパーピン(174)。
【請求項7】
前記外側本体(180)及び前記内側本体(190)が積層造形され、積層造形後の分離までは、前記外側本体(180)と前記内側本体(190)とが離脱可能な結合素子(260)によって互いに一体に結合及び固定されている、請求項1に記載のダンパーピン(174)。
【請求項8】
前記内側本体(190)が平面ワッシャ部材(230)を含んでおり、前記外側本体(180)が、平面ワッシャ部材(230)を受けるように構成されたカップ部材(236)を含む、請求項1に記載のダンパーピン(174)。
【請求項9】
タービンノズル(112)又はブレード(114)のための振動減衰システム(120)であって、当該振動減衰システム(120)が、複数の積み重なったダンパーピン(174)を備えており、各々のダンパーピン(174)が、
内側開口(182)、第1の端面(184)及び反対側の第2の端面(186)を有する外側本体(180)と、
前記外側本体(180)の内側開口(182)内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体(190)であって、第1の中央開口(192)、及び前記外側本体(180)の内側開口(182)の一部(198)と摩擦係合するように構成された外面(196)を有する内側本体(190)と、
タービンノズル(112)又はブレード(114)の本体開口(160)内に延在し、かつ各内側本体(190)の第1の中央開口(192)の第1の部分(198)で係合する長尺体(200)と
を備える、振動減衰システム(120)。
【請求項10】
前記内側本体(190)の外面(196)が、球根状の基部(210)及び細いネック部(212)とを含む洋梨形状を有し、前記細いネック部(212)が、第1の中央開口(192)の第1の部分(194)を含む、請求項9に記載の振動減衰システム(120)。
【請求項11】
前記球根状の基部(210)が、第1の中央開口(192)の第2の部分(214)であって、前記長尺体(200)から離間した第2の部分(214)を含む、請求10に記載の振動減衰システム(120)。
【請求項12】
前記外側本体(180)の内側開口(182)が、前記内側本体(190)の外面(196)の梨形状を収容するとともに、前記内側本体(190)に対する前記長尺体(200)の影響下で前記内側本体(190)と前記外側本体(180)との摩擦係合を可能とするように構成された形状を有する、請求項10に記載の振動減衰システム(120)。
【請求項13】
前記複数の積み重なったダンパーピン(174)の隣り合うダンパーピン(174)の第1の端面(184)と第2の端面(186)とが摩擦係合する、請求項9に記載の振動減衰システム(120)。
【請求項14】
前記外側本体(180)が、第1の端面(184)及び第2の端面(186)を貫通する第2の中央開口(188)をさらに含んでおり、第2の中央開口(188)は、長尺体(200)がそこを通って延在できるように構成されている、請求項9に記載の振動減衰システム(120)。
【請求項15】
前記外側本体(180)及び前記内側本体(190)が積層造形され、積層造形後の分離までは、前記外側本体(180)と前記内側本体(190)とが離脱可能な結合素子(260)によって互いに一体に結合及び固定されている、請求項9に記載の振動減衰システム(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、タービンノズル又はブレードにおける振動の減衰に関する。さらに具体的には、本開示は、複数のダンパーピンを用いた振動減衰素子を含む振動減衰システムに関する。各ダンパーピンは、外側本体内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体を含む。
【背景技術】
【0002】
タービンの運転における懸念の1つは、タービンブレード又はノズルが運転中に振動応力を受ける傾向があることである。多くの施設では、タービンは頻繁な加速及び減速条件下で運転される。タービンの加速又は減速時に、ブレードの翼形部は、少なくとも瞬間的に、ある周波数の振動応力に付され、多くの場合、二次又は三次周波数での振動応力に付される。ノズル翼形部も同様の振動応力を受ける。例えば、ガスの温度、圧力及び密度の変動によって、ロータアセンブリ全体で、特にノズル又はブレードの翼形部内で、振動を励起するおそれがある。タービン及び/又は圧縮機セクションの上流で周期的又は「脈動」的に排出されるガスも、不都合な振動を励起するおそれがある。翼形部が振動応力に付されると、その振動の振幅は、ガスタービンの運転及び/又は部品の寿命に悪影響を与えかねないところまで容易に高まるおそれがある。タービンブレード内で積み重ねられた中実ダンパーピンが振動減衰のために使用されてきたが、遠心力によってダンパーピンが全体としてロックされ、振動減衰能力が低下してしまうおそれがある。
【発明の概要】
【0003】
以下に挙げるすべての態様、具体例及び特徴は、技術的に可能な方法で組合せることができる。
【0004】
本開示の一態様では、タービンノズル又はブレード用の振動減衰システムのためのダンパーピンを提供するが、本ダンパーピンは、内側開口、第1の端面及び反対側の第2の端面を有する外側本体と、外側本体の内側開口内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体であって、長尺体と係合するように構成された第1の部分を含む第1の中央開口及び外側本体の内側開口の一部と摩擦係合するように構成された外面を有する内側本体とを備える。
【0005】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、内側本体の外面は、球根状の基部及び細いネック部を含む洋梨形状を有し、細いネック部は、第1の中央開口の第1の部分を含む。
【0006】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、球根状の基部は、第1の中央開口の第2の部分であって、長尺体から離間した第2の部分を含む。
【0007】
本開示の他の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体の内側開口は、内側本体の外面の洋梨形状を収容するとともに、内側本体に対する長尺体の影響下で内側本体と外側本体との摩擦係合を可能にするように構成された形状を有する。
【0008】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体の第1の端面は少なくとも部分的に凹面であり、かつ外側本体の第2の端面は少なくとも部分的に凸面であり、もって隣り合うダンパーピンの第1の端面と第2の端面とが摩擦係合する。
【0009】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体は、第1の端面及び第2の端面を貫通する第2の中央開口をさらに含んでおり、第2の中央開口は、長尺体がそこを通って延在できるように構成されている。
【0010】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体及び内側本体が積層造形され、積層造形後の分離までは、外側本体と内側本体とが離脱可能な結合素子によって互いに一体に結合及び固定されている。
【0011】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、内側本体は平面ワッシャ部材を含んでおり、外側本体は、平面ワッシャ部材を受けるように構成されたカップ部材を含む。
【0012】
本開示の一態様は、タービンノズル又はブレード用の振動減衰システムに関するが、本振動減衰システムは、複数の積み重なったダンパーピンを備えており、各ダンパーピンは、内側開口、第1の端面及び反対側の第2の端面を有する外側本体と、外側本体の内側開口内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体であって、第1の中央開口、及び外側本体の内側開口の一部と摩擦係合するように構成された外面を有する内側本体と、タービンノズル又はブレードの本体開口に延在し、かつ各内側本体の第1の中央開口の第1の部分で係合する長尺体とを含む。
【0013】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、内側本体の外面は、球根状の基部部及び細いネック部を含む洋梨形状を有し、細いネック部は、第1の中央開口の第1の部分を含む。
【0014】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、球根状の基部は、第1の中央開口の第2の部分であって、長尺体から離間した第2の部分を含む。
【0015】
本開示の他の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体の内側開口は、内側本体の外面の洋梨形状を収容するとともに、内側本体に対する長尺体の影響下で内側本体と外側本体との摩擦係合を可能にするように構成された形状を有する。
【0016】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、複数の積み重ねた複数のダンパーピンの隣り合うダンパーピンの第1の端面と第2の端面とが摩擦係合する。
【0017】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体は、第1の端面及び第2の端面を貫通する第2の中央開口をさらに含んでおり、第2の中央開口は、長尺体がそこを通って延在できるように構成されている。
【0018】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、外側本体及び内側本体が積層造形され、積層造形後の分離までは、外側本体と内側本体とが離脱可能な結合素子によって互いに一体に結合及び固定されている。
【0019】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、長尺体の一端に保持ダンパーピンをさらに備えており、保持ダンパーピンは、複数の積み重ねられたダンパーピンのうち一番端のものと係合する。
【0020】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、内側本体は平面ワッシャ部材を含んでおり、外側本体は、平面ワッシャ部材を受けるように構成されたカップ部材を含む。
【0021】
本開示の一態様は、タービンノズル又はブレードの振動を減衰させる方法を包含するが、本方法は、タービンノズル又はブレードの作動時に、複数の積み重ねられたダンパーピン内及びそれらの間での摩擦係合によって振動を減衰させるステップを含んでおり、各ダンパーピンは、内側開口、第1の端面及び反対側の第2の端面を有する外側本体であって、第1の振動減衰が、隣り合うダンパーピンの第1の端面と反対側の第2の端面との摩擦係合によって生じる、外側本体と、外側本体の内側開口内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体であって、第2の振動減衰が、内側本体内で係合する長尺体の影響下での内側本体の外面の一部と外側本体の内側開口の一部との摩擦係合によって生じる、内側本体とを含む。
【0022】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、タービンノズル又はブレードの本体内を通って延在する本体開口内に半径方向に配置された長尺体の撓みによる第3の減衰振動をさらに含む。
【0023】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、タービンノズル又はブレードの本体開口の内面の内寸と外側本体の外寸との摩擦係合による第4の減衰振動をさらに含む。
【0024】
この発明の概要の欄に記載した態様も含めて、本開示に記載した2以上の態様を組合せて、本明細書に具体的に記載されていない実施態様としてもよい。
【0025】
1以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、目的及び利点は、発明の詳細な説明、図面並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
図1】ガスタービンの形態の例示的なターボ機械の断面図。
図2】本開示の実施形態に係る例示的なタービンの一部の断面図。
図3】本開示の実施形態に係る振動減衰システムを含む例示的なタービンノズルの斜視図。
図4】本開示の実施形態に係る振動減衰システムを含む例示的なタービンブレードの斜視図。
図5】本開示の実施形態に係る複数のダンパーピンを含む振動減衰素子を含む振動減衰システムを有するタービンノズル又はブレードの概略断面図。
図6】複数のダンパーピンを含む振動減衰素子を含む振動減衰システムを有するタービンノズル又はブレードの概略断面図。
図7】本開示の実施形態に係る外側本体及び内側本体を各々含む一対のダンパーピンの拡大断面図。
図8】本開示の別の実施形態に係る外側本体及び内側本体を含むダンパーピンの断面図。
図9】本開示の実施形態に係る、外側本体と摩擦係合する内側本体を備えるダンパーピンの断面図。
図10】本開示の実施形態に係る積層造形されたダンパーピンの断面図。
【0027】
なお、本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本開示の主題を明確に説明するため、タービン内の関連する機械部品について言及及び説明する際に、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部品について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及されることが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部品からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の部品を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0029】
さらに、本明細書では幾つかの記述的用語を繰返し用いるが、本欄の冒頭でこれらの用語を定義しておくと有用であろう。中心軸に対して異なる半径方向位置に配置された部品について説明する必要が多々ある。「半径方向」という用語は、軸に垂直な運動又は位置をいう。例えば、第1の部品が第2の部品よりも軸に近い場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向内側」又は「中心軸近位側」と記載される。一方、第1の部品が第2の部品よりも軸から遠くに位置する場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向外側」又は「中心軸遠位側」と記載される。「軸方向」という用語は、軸に平行な運動又は位置をいう。最後に、「周方向」という用語は、軸を中心とした運動又は位置をいう。自明であろうが、かかる用語は、タービンの中心軸に対して適用される。
【0030】
さらに、本明細書では、以下に記載する通り、幾つかの記述的用語を繰返し用いる。「第1」、「第2」及び「第3」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を示すものではない。
【0031】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「備える」及び/又は「含む」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと或いはその用語に続いて記載された部品又は構成要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合並びにその部品又は構成要素が存在する場合と存在しない場合とを包含する。
【0032】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層「の上」、「に係合」、「に接続」又は「に結合」しているという場合、その別の構成要素又は層の上に直接位置していても、その別の構成要素又は層に直接係合、接続又は結合していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層「の直接上」、「に直接係合」、「に直接接続」又は「に直接結合」しているという場合、介在する構成要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するために用いられる他の用語(例えば、「~の間」と「直接~の間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、記載されたものの1以上のあらゆるすべての組合せを包含する。
【0033】
本開示の実施形態では、タービンノズル又はブレードのための振動減衰素子を含む振動減衰システムを提供する。本体開口がタービンのノズル又はブレードを通って、例えばノズル又はブレードの他の部分も想定されるが特に翼形部を通って延在している。振動減衰素子は、本体開口内で積み重なった複数のダンパーピンを含む。各ダンパーピンは、内側開口、第1の端面及び反対側の第2の端面を有する外側本体と、外側本体の内側開口内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体とを含む。このように、本ダンパーピンは、振動を減衰させるために互いに摩擦係合する入れ子状の部品を含んでおり、「入れ子型ダンパーピン」と呼ぶことができる。また、隣接するダンパーピンの外側本体の両端面は隣接するダンパーピンと摩擦係合して、振動を減衰させる。内側本体は、長尺体と係合するように構成された第1の部分を含む第1の中央開口を有する。内側本体は、振動を減衰させるために外側本体の内側開口の一部と摩擦係合するように構成された外面も含んでいる。
【0034】
本振動減衰システムは、簡単な配置でノズル又はブレードの振動を低減し、ノズル又はブレードに余分な質量を追加しない。したがって、振動減衰素子は、ノズル基部又はブレード先端への遠心力を増加させることもないし、ノズル又はブレードの構成の変更を必要ともしない。入れ子型ダンパーピンは、外側本体の端面が一緒にロックされた場合(例えば遠心力のためタービンブレードで起こることがある)であっても、積み重ねられたダンパーピンを使用することができ、その内側本体は自由であり、摩擦式振動減衰運動(長尺体との相互作用による)を継続する。
【0035】
図面を参照すると、図1は本開示の教示内容を適用できる1以上のタービンを含む例示的な機械の断面図である。図1には、燃焼タービン又はガスタービン(GT)システム100(以下、「GTシステム100」)の形態のターボ機械90が示してある。GTシステム100は、圧縮機102及び燃焼器104を含む。燃焼器104は、燃焼領域105及び燃料ノズルセクション106を有する。GTシステム100は、タービン108及び共通の圧縮機/タービンシャフト110(以下「ロータ110」という)を含む。
【0036】
GTシステム100は、General Electric社(米国サウスカロライナ州グリーンビル)から市販の7HA.03エンジンであってもよい。本開示は、いかなるGTシステムに限定されるものではなく、例えば、General Electric社の他のHA、F、B、LM、GT、TM及びEクラスエンジンモデル並びに他社のエンジンモデルを始めとする、他のエンジンに関しても実施し得る。さらに重要な点として、本開示の教示内容は、必ずしもGTシステムのタービンにしか適用できないものではなく、実質的にあらゆるタイプの産業機械又は他のタービン、例えば、蒸気タービン、ジェットエンジン、圧縮機(図1のように)、ターボファン、ターボチャージャーなどにも適用し得る。したがって、GTシステム100のタービン108に対する言及は、単に説明を目的としたものにすぎず、限定的なものではない。
【0037】
図2はタービン108の例示的な部分の断面図を示す。図に示す例では、タービン108は、図1のGTシステム100で使用し得る4つの段落L0~L3を含む。4つの段落は、L0、L1、L2及びL3と記載されている。段落L0は第1段であり、4つの段落の中で最小(半径方向に)である。段落L1は第2段であり、軸方向に第1段L0に隣接して配置される。段落L2は第3段であり、軸方向に第2段L1に隣接して配置される。段落L3は最後の第4段であり、最大(半径方向に)である。なお、4つの段落は一例にすぎず、各タービンは5段以上であっても4段未満であってもよい。
【0038】
複数の静止タービンベーン又はノズル112(以下「ノズル112」)は、複数の回転タービンブレード114(以下「ブレード114」)と協働でタービン108の各段落L0~L3を形成し、タービン108を通る作動流体経路の一部を画成する。各段のブレード114は、ロータ110(図1)と(例えばブレードを周方向にロータ110(図1)と結合する各ロータホイール116によって)結合している。換言すると、複数のブレード114は、(例えばロータホイール116によって)ロータ110に周方向に離間して機械的に結合される。静止ノズルセクション115は、ケーシング124に取り付けられた複数のノズル112であって、ロータ110(図1)の周りで周方向に離間した複数のノズル112を含む。なお、ブレード114はロータ110(図1)と共に回転して遠心力を受けるのに対して、ノズル112は静止部品である。
【0039】
図1及び図2を参照すると、運転中、空気が圧縮機102を流れ、加圧空気が燃焼器104に供給される。具体的には、燃焼器104に内蔵された燃料ノズルセクション106に加圧空気が供給される。燃料ノズルセクション106は燃焼領域105と流体連通している。燃料ノズルセクション106は燃料源(図1には図示せず)とも流体連通しており、燃料及び空気を燃焼領域105に導く。燃焼器104は、燃料を着火及び燃焼させて燃焼ガスを発生させる。燃焼器104はタービン108と流体連通しており、そこで燃焼ガス流からの熱エネルギーは、燃焼した燃料(例えば作動流体)を作動流体経路に導いてブレード114を回転させることによって、機械的回転エネルギーへと変換される。タービン108は、ロータ110に回転可能に結合し、ロータ110を駆動する。圧縮機102は、ロータ110と回転可能に結合されている。ロータ110の少なくとも一方の端部は、圧縮機102又はタービン108から軸方向に延在していてもよく、発電機、負荷圧縮機及び/又は別のタービンのような負荷又は機械(図示せず)に取り付けられていてもよい。
【0040】
図3及び図4は、それぞれ、本開示の振動減衰システム120及び振動減衰素子172の実施形態を用いることができるタイプの(静止)ノズル112及び(回転)ブレード114の斜視図を示す。以降で説明する通り、図5及び図6は、本開示の様々な実施形態に係る振動減衰システム120を含むノズル112又はブレード114の概略断面図を示す。
【0041】
図3及び図4において、各ノズル112又はブレード114は、基端部130、先端部132及び基端部130と先端部132の間に延在する翼形部134を有する本体128を含む。図3に示すように、ノズル112は、基端部130の外側端壁136と、先端部132の内側端壁138とを有する。外側端壁136はケーシング124(図2)に結合する。図4に示すように、ブレード114は基端部130にダブテール140を含んでおり、ダブテール140によってブレード114はロータ110(図2)のロータホイール116(図2)に取り付けられる。ブレード114の基端部130は、ダブテール140とプラットフォーム146の間に延在するシャンク142をさらに含んでいてもよい。翼形部134とシャンク142のつなぎめにプラットフォーム146が配置され、タービン108を通る作動流体経路(図2)の中心軸近位側境界の一部を画成する。
【0042】
明らかであろうが、ノズル112及びブレード114における翼形部134は、作動流体の流れを受け止めるノズル112又はブレード114の能動部品であり、ブレード114の場合はロータ110(図1)を回転させる。ノズル112及びブレード114の翼形部134は、凹面状の正圧側(PS)外側壁150と、周方向又は横方向に反対側の凸面状の負圧側(SS)外側壁152を含んでおり、軸方向に対向する前縁154と後縁156の間に延在する。外側壁150及び152は、また、基端部130(すなわちノズル112では外側端壁136、ブレード114ではプラットフォーム146)から先端部132(すなわちノズル112では内側端壁138、ブレード114では先端158)まで半径方向に延在する。図に示す例では、ブレード114は先端シュラウドを含ND営内が、、本開示の教示内容は、先端158に先端シュラウドを含むブレードにも等しく適用できる。図3図4に示すノズル112及びブレード114は例示にすぎず、本開示の教示内容は、多種多様なノズル及びブレードに適用できる。
【0043】
タービンの運転時に、ノズル112又はブレード114は、多数の異なる強制関数による振動に励起されることがある。例えば、作動流体の温度、圧力及び/又は密度の変動は、ロータアセンブリ全体、特にブレード114又はノズル112の翼形部内及び/又は先端で振動を励起する可能性がある。タービン及び/又は圧縮機セクションの上流で周期的又は「脈動」的に排出されるガスも、不都合な振動を励起する可能性がある。本開示は、ノズル又はブレード設計の大幅な変更を伴わずに、静止ノズル112又は回転タービンブレード114の振動を低減することを目的とする。
【0044】
図5及び図6は、それぞれ、本開示の実施形態に係る振動減衰システム120を含むノズル112又はブレード114の概略断面図を示す。(なお、図5図6の概略断面図におけるノズル112は、説明の便宜上、図3に示すものとは上下逆転して示してあり、内側端壁138は省いてある。なお、ノズル112についていう基端部130及び先端部132は、ブレード114とは逆である。)。ノズル112又はブレード114用の振動減衰システム120は、本体128の先端部132と基端部130の間及び翼形部134を通って延在する本体開口160を含む。本体開口160は、基端部130と先端部132の間の距離の一部にしか延在していなくもよいし、或いは基端部130又は先端部132の1箇所以上を貫通していてもよい。本体開口160は、ブレード114の基端部130を起点としてもよいし、或いは(図3に示すように)ノズル112の先端端132を起点としてもよい。
【0045】
本体開口160は、本体128の構造のどの部分に画成されていてもよい。例えば、本体128が例えば内部に冷却回路を画成するための内部隔壁(図示せず)を含んでいる場合、本体開口160は、本体128内の隔壁における内部キャビティとして画成し得る。本体開口160は本体128内で略半径方向に延在している。ただし、本体128の半径方向範囲に対して、本体開口160のある程度の角度傾斜及びおそらくは湾曲も可能である。本体開口160は内面162を有する。
【0046】
図5及び図6に示すように、本体開口160は、基端部130で開口し、先端部132内に終端を有していてもよいし、或いは図6に示すように、先端部132で開口し、基端部130内に延在していてもよい。開口端部は、ノズル112又はブレード114における振動減衰システム120の組立てに役立ち、既存のノズル又はブレードへのシステムのレトロフィットが可能になる。図5に示すように本体開口160が基端部130を貫通している場合、本体開口160を閉鎖するための閉鎖又は固定部材164を設けてもよい。図6に示すように本体開口160が先端部132を貫通している場合、本体開口160用の閉鎖又は固定部材166を設けてもよい。固定部材164,166は、本体開口160を閉じるため用いることもできる。或いは、後述の通り、閉鎖又は固定部材164,166は、本体開口160を閉鎖し、かつ本体開口160内に長尺体200を作動状態で取り付けることができる。
【0047】
ノズル112又はブレード114用の振動減衰システム120は、本体開口160に配置された振動減衰素子172を含む。振動減衰素子172は、複数の積み重なったダンパーピン174を含む。したがって、振動減衰システム120は、複数の積み重なったダンパーピン174を含む。図7の拡大断面図に示すように、各ダンパーピン174は、内側開口182を有する外側本体180を含む。外側本体180は、第1の端面184及び反対側の第2の端面186を含む。
【0048】
外側本体180は、本体開口160内に収まる形状及び寸法を有する外面187を有する。さらに具体的には、本体開口160は内寸ID1の内面162を有し、各外側本体180の外寸OD1は、ノズル112又はブレード114の運動時の振動を減衰させるために本体開口160の内寸ID1と摩擦係合するサイズにされる。すなわち、各ダンパーピン174の外寸OD1は、本体開口160の内面162と擦れ合って(例えばノズル112又はブレード114の翼形部134の運動時の)振動を減衰させる。組立ての際、内寸ID1及び外寸OD1は、ダンパーピン174を本体開口160内に配置できるようなサイズにされる。ある非限定的な例では、ダンパーピン174の外寸OD1と本体開口160の内面162の内寸ID1との差は、約0.04~0.06mmの範囲内とすることができ、この範囲は、ダンパーピン174の挿入を可能にしつつ、使用時及びノズル112又はブレード114の翼形部134の相対運動の際の摩擦係合を可能にする。
【0049】
外側本体180の第1の端面184と第2の端面186は互いに相補形であり、互いに嵌まり合うので、互いに摩擦係合することができる。図5図7の実施形態では、外側本体180の第1の端面184が少なくとも部分的に凹面であり、外側本体180の第2の端面186が少なくとも部分的に凸面である。こうして、ノズル112又はブレード114が動くと、隣り合うダンパーピン174の第1の端面184と第2の端面186は摩擦係合しかつ互いに回転運動することができる。
【0050】
別の実施例では、図8の概略断面図に示すように、外側本体180の第1の端面184は平面であり、外側本体180の第2の端面186も平面である。この場合も、ノズル112又はブレード114が動くと、隣り合うダンパーピン174の第1の端面184と第2の端面186は摩擦係合しかつ互いに摺動する。端面184,186については他の相補的な形状も可能である。外側本体180は、第1の端面184及び第2の端面186を貫通する中央開口188(内側開口182の一部)を含む。後述の通り、中央開口188は、長尺体200がそこを通って延在することができて、かつ外側本体180内での内側本体190の旋回運動ができるように構成される。
【0051】
各ダンパーピン174は、外側本体180の内側開口182内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体190も含んでいる。内側本体190は、長尺体200と係合するように構成された第1の部分194を含む中央開口192を有する。内側本体190は、外側本体180の内側開口182の一部198と摩擦係合するように構成された外面196も含んでいる。
【0052】
内側本体190及び外側本体180の内側開口182は様々な形態を取り得る。図5図7に示すような実施形態では、内側本体190の外面196は洋梨形状を有する。さらに具体的には、内側本体190の外面196は、球根状の基部210及び細いネック部212を含む。球根状の基部210と細いネック部212とは互いに一体をなしており、単一構造である。図7に示す例では、細いネック部212は、内側本体190の中央開口192の第1の部分194を含んでいる。第1の部分194は、長尺体200の外寸OD2と係合するように構成された内寸ID2を有する。内寸ID2は、長尺体200の外寸OD2(図5に示す)との摺動係合を可能にする。ただし、第1の部分194は、内側本体190が長尺体200と共に動く(例えば長尺体200の影響下で傾斜、旋回又は他の運動をする)のを義務づけるのに十分な(半径方向)長さを有する。
【0053】
球根状の基部210は内側本体190の中央開口192の第2の部分214を含んでおり、第2の部分214は、内側本体190の中央開口192の第1の部分194の内寸ID2よりも大きい内寸ID3を有する。したがって、内側本体190の中央開口192の第2の部分214は、長尺体200から離間している。外側本体180の中央開口188も、両端面184,186でダンパーピン174の内側本体190及び長尺体200から離間している。こうして、内側本体190の中央開口192の第2の部分214は、ノズル112又はブレード114が振動すると、長尺体200の屈曲及び/又は運動の影響下で、外側本体180内で内側本体190が旋回運動できるようにする。
【0054】
外側本体180の内側開口182は、内側本体190の外面196の洋梨形状を収容するとともに、内側本体190に対する長尺体200の影響下で内側本体190と外側本体180との摩擦係合を可能にする形状を有する。図9に示すように、翼形部134の作動中に、長尺体200が翼形部13と共に運動(例えば屈曲)すると、長尺体200は、内側本体190の中央開口192の第1の部分194を介して内側本体190に運動を付え、外側本体180に対する内側本体190の揺動又は傾斜を引き起こす。これが起こると、内側本体190と外側本体180とが互いに摩擦係合し、振動を減衰させる。摩擦係合は、内側本体190の外面196及び外側本体180の内側開口182に沿ったあらゆる場所で起こり得る。例えば、摩擦係合は、内側本体190の球根状の基部210の上部(図7に示す)及び外面196と外側本体180の内側開口182の角部220(そこでは内側本体190の洋梨形状に対応して拡がる)の近くで起こり得る。。摩擦係合は、球根状の基部210及び/又は細いネック部212の外面196に沿った任意の場所でも起こり得る。
【0055】
さらに図8に関して、ある実施形態では、内側本体190は、平面ワッシャ部材230を含む。平面ワッシャ部材230は、中央開口232を有する任意のプレートを含むことができる。平面ワッシャ部材230の中央開口232は、長尺体200の外寸OD2と係合する(すなわち摺動係合するが長尺体200と共に横方向の旋回を強いる)ように構成された内寸ID4を有する。内寸ID4は、長尺体200の外寸OD2との摺動係合を可能にする。ただし、平面ワッシャ部材230は、長尺体200と共に動く(例えば長尺体200の影響下で傾斜、旋回又は他の運動をする)のを義務づけるのに十分な(半径方向)長さを有する。こうして、ノズル112又はブレード114が運動すると、内側本体190(ワッシャ部材230)は長尺体200とともに運動する。
【0056】
図8において、外側本体180は、平面ワッシャ部材230を受けるように構成された内側開口182を与えるカップ部材236を含んでいる。一例では、カップ部材236は、基部238及び管状側面239を含んでおり、これらはまとまって、隣接するダンパーピン174と共に、平面ワッシャ部材230を取り囲んでそれらの内側に収める。外側本体180は第1の端面184及び第2の端面186(カップ部材236の両面)も含んでおり、これらは上述の通り平面である。内側本体190、さらに具体的にはカップ部材236は、長尺体200が自由に通過し得る中央開口188(内側開口182の一部)も含んでいる。平面ワッシャ部材230を含む内側本体190は、振動を減衰させるため外側本体180の内側開口182の任意の部分と摩擦係合し得る。隣り合うダンパーピン174の平面状端面184,186も互いに摩擦係合して振動を減衰させる。外側本体180(すなわち、カップ部材236の外面)は、本体開口160内に摺動するが、ノズル112又はブレード114の作動時の振動を減衰させるために本体開口160の内面162と摩擦係合し得るサイズにされる。長尺体200は、ノズル112又はブレード114の作動時に振動を減衰させるために撓むこともできる。図8のように、任意の数のダンパーピン174の積み重ね(スタック)を、振動減衰システム120及び振動減衰素子172に用いることができる。
【0057】
振動減衰システム120及び振動減衰素子172は、本体開口160内に延在しかつ本体開口160に対して固定された長尺体200を含むことができる。長尺体200は、両端面184,186に中央開口188を含む外側本体180の内側開口182を通って延在しる。長尺体200は、また、内側本体190の中央開口192の第2の部分214を通って延在しており、内側本体190の中央開口192の第1の部分194と摺動係合している。さらに具体的には、長尺体200は、ノズル112又はブレード114の本体開口160内に延在し、複数の積み重なったダンパーピン174の各内側本体190の中央開口192の第1の部分194で係合する。上述の通り、内側本体190の中央開口192の第1の部分194及び長尺体200は、内側本体190が長尺体200上を自由に摺動するが、長尺体200の指示通りに内側本体190が動くようなサイズ及び形状にされる。こうして、各ダンパーピン174は、長尺体200による様々な動きを受けて、外側本体180と内側本体190との摩擦係合によって様々な振動減衰をもたらすことができる。
【0058】
図5及び図6に示すように、長尺体200は、第1の自由端240と、基端部130又は先端部132(図5では基端部130)に固定された第2の端部242とを含む。本体開口160は、長尺体200の対応する外寸OD2(図5)よりも大きい内寸ID1(図5)を有していて、本体開口160内で長尺体200に限られた運動域を与え、本体開口160内での長尺体200の撓みによって振動を減衰させる。すなわち、長尺体200は、ノズル112又はブレード114の本体128の先端部132と基端部130の間に半径方向に延在しており、本体開口160内での長尺体200の撓みによって振動を減衰させる。
【0059】
長尺体200は、ノズル112又はブレード114内で所望の撓み及び振動減衰をもたらすとともに、所望の数のダンパーピン174を配置するのに望ましい長さを有することができる。長尺体200は、その上でのダンパーピン174の自由な摺動をもたらすのに望ましい断面形状を有し得る。例えば、長尺体200及び内側本体190の中央開口192の第1の部分194は、円形又は楕円形の断面形状を有していてもよく、換言すると、それらは円筒形又はロッド状である。ただし、他の断面形状も可能である。長尺体200は、特定の用途に必要な所望の耐振動性を有する任意の材料、例えば、金属又は金属合金で作製することができる。いくつかの実施形態では、長尺体200は非常に高い剛性が必要とされることがあるが、金属又は金属合金よりも剛性の高い代替材料、例えば、限定されるものではないが、セラミック基複合材料(CMC)などが必要とされることがある。長尺体200としては、限定されるものではないが、中実ロッド、ケーブル(中実又は製織)又は中空ロッドが挙げられる。
【0060】
図5において、長尺体200の第2の端部242は、ノズル112又はブレード114の本体128の基端部130に固定されており、第1の自由端240は先端部132に向かって延在している。図5において、複数のダンパーピン174を本体開口160内に(特に本体開口160の端部246に当接させることによって)保持し得る。これに加えて或いは代えて、保持ダンパーピン250を長尺体200の一端に配置して、複数の積み重ねられたダンパーピン174のうちの一番端のものと係合させてもよい。すなわち、図5は、複数の積み重なったダンパーピン174が長尺体200の長さに対して動くのを防ぐために、長尺体200の第1の自由端240に保持ダンパーピン250を配置した実施形態を示す。ダンパーピン174は、本体開口160の端部246ではなく保持ダンパーピン250に当接してもよい。保持ダンパーピン250は長尺体200の第1の自由端240に固定してもよく、一体的な単一体(つまり内側及び外側本体のない)であってもよい。保持ダンパーピン250は、ダンパーピン174が長尺体200から滑り落ちるのを防ぐための任意の形状又はサイズを有することができる。ダンパーピンのような形状のものではない別の保持要素も用いることができる。ブレード114での遠心力は、ブレードの回転に伴って、ダンパーピン174のスタックを、タービンブレード114の本体128の先端部132における保持ダンパーピン250及び/又は本体開口160の端部246に対して押し付ける。同様に、ダンパーピン174の重量は、供用時の静止ノズル112において、先端部132における長尺体200上の保持ダンパーピン250に対して及び/又は先端部132における本体開口160の端部246に対してダンパーピン174を押し付ける。基端部130における本体開口160は、現在公知の又は将来開発される任意の閉鎖又は固定部材164で閉鎖し得る。
【0061】
図6は、本開示の他の実施形態に係る振動減衰システム120を含むノズル112又はブレード114の概略断面図を示す。図6において、長尺体200の第2の端部242は、本体128の先端部132に固定されており、第1の自由端240は基端部130に向かって延在している。ブレード114での遠心力は、ブレードの回転に伴って、タービンブレード114の本体128の先端部132における閉鎖又は固定部材166に対してダンパーピン174のスタックを押し付ける。同様に、ダンパーピン174の重量は、供用時の静止ノズル112において、基端部130における長尺体200上の保持ダンパーピン250に対して及び/又は基端部130における本体開口160の内側端252に対してダンパーピン174を押し付ける。先端部132における本体開口160は、現在公知の又は将来開発される任意の閉鎖又は固定部材166で閉鎖することができ、閉鎖又は固定部材166はまた長尺体200の第2の端部242を固定する。
【0062】
図5及び図6において、長尺体200の第2の端部242は、現在公知の又は将来開発される任意の態様で固定し得る。一例では、図6に示すように、タービンブレード114に用いる場合、第2の端部242は、タービン108(図1図2)の運転中に半径方向荷重、すなわち遠心力によって固定することができる。別の例では、第2の端部242は、例えば、カプラ、締結具及び/又は溶接を用いた締結によって、物理的に固定し得る。例えば、長尺体200は、ねじ付き締結具によって、先端部130又は基端部132(例えば実際の端部130又は132)或いは閉鎖又は固定部材166に物理的に固定し得る第2の端部242を含んでいてもよい。
【0063】
ダンパーピン174は、現在公知の又は将来開発される任意のやり方で製造できる。例えば、外側及び内側本体180,190を(外側本体180については半体として)鋳造し、それらの部材を(例えば内側本体190の周りに配置した外側本体180の半体を溶接その他の締結等によって)組み立てることができる。図10を参照すると、一実施形態では、外側本体180及び内側本体190を積層造形することができる。使用される材料に適した任意の形態の積層造形、例えば直接金属レーザー溶融(DMLM)などを用いることができる。この場合、積層造形後の分離までは、外側本体180と内側本体190とは、離脱可能な結合素子260によって互いに一体に結合及び固定されている。こうして、外側本体180は、内側本体190の周りで内側本体190と共に積層造形することができ、外側本体180及び内側本体190の各々は一体の単一体として形成される。結合素子260は、次いで、任意の方法(例えば図10に示す破線に沿って切断すること)で取り除くことができ、本明細書に記載の通り外側本体180内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体190が得られる。
【0064】
運転において、タービンノズル112又はブレード114における振動を減衰させる方法は、ノズル112又はブレード114の作動時に、多数の振動減衰プロセスを含む。減衰振動は、複数の積み重ねられたダンパーピン174内及びそれらの間での摩擦係合によって起こる。上述の通り、各ダンパーピン174は、内側開口182、第1の端面184及び反対側の第2の端面186を有する外側本体180を含む。振動減衰は、隣り合うダンパーピン174の第1の端面184と反対側の第2の端面186との摩擦係合によって起こる。図5図7では相補的な凹凸端面184,186が摩擦係合し、図8では相補的な平面状端面184,186が摩擦係合して、振動を減衰させる。上述の通り、端面184,186は、振動を減衰させるための摩擦係合を可能にする他の相補的な形状を有していてもよい。
【0065】
各ダンパーピン174は、外側本体180の内側開口182内に入れ子状及び運動可能に配置された内側本体190も含む。追加の振動減衰は、内側本体190と係合する長尺体200の影響下での内側本体190の外面196の一部と外側本体180の内側開口182の一部198との摩擦係合によって起こる。さらに追加の振動減衰は、ノズル112又はブレード114の本体128内に延在する本体開口160内に半径方向に配置された長尺体200の撓みによって起こり得る。振動減衰は、ノズル112又はブレード114における本体開口160の内面162の内寸ID1と外側本体180の外面187の外寸OD1との摩擦係合によっても起こり得る。
【0066】
本開示の実施形態は、様々な技術的及び商業的利点をもたらすが、その例については本明細書で説明した。振動減衰システム200は、簡単な構成でノズル又はブレードの振動を低減し、かつノズル112又はブレード114にあまり余分な質量を追加しない。振動減衰素子172は、ノズル112基端部130又はブレード114先端部132への遠心力を増加させることもないし、ノズル112又はブレード114の構成変更も必要としない。タービンブレード114において、入れ子型ダンパーピン174は、たとえ外側本体180が(例えば端面184,186で)遠心力のため一緒にロックされたとしても、スタック型ダンパーピンを使用することができ、内側本体190は自由であり、摩擦式振動減衰運動(長尺体との相互作用による)を継続できる。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から別途明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0068】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0069】
112 ノズル
114 ブレード
120 振動減衰システム
128 本体
130 基端
132 先端
134 翼形部
150,152外側壁
160 本体開口
172 振動減衰素子
174 ダンパーピン
180 外側本体
182 内側開口
184 第1の端面
186 第2の端面
187 外側本体の外面
188 外側本体の中央開口
190 内側本体
192 内側本体の中央開口
194 内側本体の中央開口の第1の部分
196 内側本体の外面
198 内側開口の第1の部分
200 長尺体
210 球根状の基部
212 細いネック部
214 内側本体の中央開口の第2の部分
230 平面ワッシャ部材
236 カップ部材
250 保持ダンパーピン
260 結合素子
図1
図2
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【外国語明細書】