(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018995
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ドア構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20240201BHJP
E06B 7/02 20060101ALI20240201BHJP
E05F 3/22 20060101ALI20240201BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E06B7/36 H
E06B7/02
E05F3/22 Z
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106700
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022121940
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祥希
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DA04
2E014DB05
2E036JA04
2E036JC03
(57)【要約】
【課題】換気機能を維持しながら、指詰め防止機能と開き位置での維持機能を有するドア構造を提供する。
【解決手段】
ドア構造は、ドア本体10の下縁部に沿って延びる保護材20を備えている。保護材20は可撓性材料を含み、ドア本体10の下面11から下方に向かって突出する。保護材20と床面51との間には隙間G1が形成される。ドア構造はさらに、ドア本体10の下面11の戸先側端部に設けられた第1磁石31と、床50に設置され第1磁石51と協働してドア本体10を開き位置に維持する第2磁石35と、を備えている。保護材20は、第1磁石31の手前で終端する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設置されたドア本体と、
前記ドア本体の下縁部に沿って延び、前記ドア本体の下面から下方に向かって突出するとともに床面との間に隙間を形成してなる可撓性材料を含む保護材と、を備えたドア構造において、
さらに、前記ドア本体の下面の戸先側端部に設けられた第1磁石と、床に設置され前記第1磁石と協働して前記ドア本体を開き位置に維持する第2磁石と、を備え、
前記保護材は、前記第1磁石の手前で終端することを特徴とするドア構造。
【請求項2】
前記ドア本体には、前記下面と戸先側の側面に開口する収納空間が形成され、
前記第1磁石は前記収納空間に収容された状態で磁石ホルダに保持され、
前記磁石ホルダは、前記ドア本体の戸先側の側面に沿う垂直板部と、前記ドア本体の下面に沿う水平板部とを有し、前記水平板部が前記ドア本体の下面から下方に突出するとともに床面との間に隙間を形成してなることを特徴とする請求項1に記載のドア構造。
【請求項3】
前記ドア本体の下面からの前記水平板部の突出高さは、前記保護材の突出高さの0.8~1.2倍であることを特徴とする請求項2に記載のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋を開閉する回転式ドア本体の下縁部と床面との間に足指が挟まれるのを防止する保護材を備えたドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅において回転式ドア本体を閉じた状態でも部屋の換気を確保し化学物質等が滞留するのを防止するために、ドア本体と床面との間に隙間が形成されている。この隙間に足の指が挟まれて怪我をする(以下、指詰めと言う)のを防ぐために、特許文献1、2に示すように、ドア本体の下縁部全長にわたって保護材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-9646号公報
【特許文献2】特許5926538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドア本体を開き位置で磁力により維持する手段が用いられることがある。この開き位置維持手段は、ドア本体の下面の戸先側端部に設けられた第1磁石と、床に設置された第2磁石とを有する。しかし、この開き位置維持手段は、保護材を用いたドア構造には適用できなかった。第1磁石と上記保護材が干渉するからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、回転可能に設置されたドア本体と、前記ドア本体の下縁部に沿って延び、前記ドア本体の下面から下方に向かって突出するとともに床面との間に隙間を形成してなる可撓性材料を含む保護材と、を備えたドア構造において、さらに、前記ドア本体の下面の戸先側端部に設けられた第1磁石と、床に設置され前記第1磁石と協働して前記ドア本体を開き位置に維持する第2磁石と、を備え、前記保護材は、前記第1磁石の手前で終端することを特徴とする。
この構成によれば、保護材により指詰めを防止することができ、しかも、保護材が第1磁石と干渉せず第1磁石の作動を阻害しないので、ドア本体を開き位置に維持することができる。
【0006】
好ましくは、前記ドア本体には、前記下面と戸先側の側面に開口する収納空間が形成され、前記第1磁石は前記収納空間に収容された状態で磁石ホルダに保持され、前記磁石ホルダは、前記ドア本体の戸先側の側面に沿う垂直板部と、前記ドア本体の下面に沿う水平板部とを有し、前記水平板部が前記ドア本体の下面から下方に突出するとともに床面との間に隙間を形成してなる。
この構成によれば、ドア本体の下縁部の戸先側端部でも換気のための隙間を形成することができる。また、磁石ホルダの水平板部がドア本体の下面から突出しているので、指詰めが生じるのを抑制できる。
【0007】
好ましくは、前記ドア本体の下面からの前記水平板部の突出高さは、前記保護材の突出高さの0.8~1.2倍である。この構成によれば、ドア本体の下縁部の戸先側端部においても、保護材が設けられた領域と同程度の換気機能、指詰め抑止機能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、換気機能を維持しながら、指詰め防止機能を有するドア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドア構造の戸先側の側面を示す図である。
【
図5】保護材の他の変形例を示す拡大断面図である。
【
図6】保護材のさらに他の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るドア構造を、
図1~
図3を参照しながら説明する。ドア本体10は、図示しない一方の側縁部で部屋のドア枠に垂直の回転軸線を中心に回転可能に支持され、ドア開口を開閉するようになっている。
【0011】
<ドア構造の詳細>
図1、
図2に示すように、ドア本体10の下縁部には、この下縁部に沿って一対の長尺の保護材20が取り付けられている。これら保護材20は、ドア本体10の板厚方向に離れて配置されており、ドア本体10の下面11に接着剤や両面接着テープにより固定され下面11から下方に突出しており、床面51との間に隙間G1が形成されている。保護材20は全体が同一材料で構成され、例えばウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、クロロプレンゴム等の軟質樹脂からなり、弾性変形可能で可撓性を有している。
図3に示すように、本実施形態の保護材20は、ドア本体の下面11のエッジ部11aを覆う突条23を有し、このエッジ部11aを保護している。
本実施形態では、一対の保護材20がドア本体10の板厚方向に離れドア本体10の下面11の一部を露出させているが、単一の保護材により下面全域を覆うようにしてもよい。
【0012】
本実施形態のドア構造は、ドア本体10の所定の開き位置を磁力により維持する開き位置維持手段30を備えている。開き位置維持手段30は、ドア本体10の下縁部の戸先側端部に設置されたドア側構成部30Aと、床側構成部30Bとを有している。床側構成部30Bは、ドア本体10が開き位置にある時の戸先側端部に対向した位置において、床50に設置されている。
【0013】
ドア側構成部30Aは、直方体形状の第1磁石31と、L字形の磁石ホルダ32を有している。ドア本体10の下隅部には、下面11と戸先側の側面12に開口する直方体形状の収納空間15が形成されている。この収納空間15に第1磁石31が収納されている。
【0014】
磁石ホルダ32は垂直板部33と水平板部34を有している。垂直板部33は、ドア本体10の側面12に形成された浅い凹部16に嵌め込まれた状態でネジ39によりドア本体10に固定され、第1磁石31を側方から押さえている。垂直板部33は側面12と面一をなしている。水平板部34はドア本体10の下面11に接し、第1磁石31を下方から押さえている。水平板部34はドア本体10の下面11から下方に突出しており、床面51との間に隙間G2を形成している。磁石ホルダ32は鉄等の磁性材で形成するのが好ましいが、磁性粒子を含む樹脂等で形成してもよい。
【0015】
開き位置維持手段30の床側構成部30Bは、床50の支持空間55に上下動可能に収容された第2磁石35を有する。支持空間55は、下側空間部と、下側空間部より水平断面積が小さい上側空間部を有している。上側空間部は床面51に開口している。第2磁石35は、支持空間55の下側空間部に上下方向のスライド可能に収納された下部35aと、上側空間部に上下方向のスライド可能に挿通された上部35bを有している。第2磁石35は非作動状態で最下位位置にあり、この時、上部35bの上端面は床面51と面一をなしている。
【0016】
保護材20はドア本体10の下縁部の回転軸線側の端から戸先側の端に向かって略全長にわたって延びるが、戸先側の端部には配置されておらず、ドア側構成部30Aの第1磁石31の手前で終端している。この終端を符号20Eで示す。保護材20の終端20Eは、磁石ホルダ32の水平板部34の端に接するか僅かな隙間を介して対峙している。このようにして、保護材20と第1磁石31は、ドア本体10の下縁部に互いに干渉することなく設置することができる。
【0017】
<開き位置維持手段の作用>
ドア本体10が閉じ位置にある時、第2磁石35は最下位位置にあり、その上部35bの先端面は床面51と面一の状態にある。ドア本体10を開き位置まで回転させると、第1磁石31が第2磁石35に近づくにつれ、両者が引き合うため第2磁石35は上昇し、磁石ホルダ32の水平板部34に当たる。これら磁石31,35の磁力により、ドア本体10は開き位置に維持される。上述したように、第2磁石35の作動軌跡上に保護材20が無いため、第2磁石35は保護材20に阻害されることなく円滑に上昇して水平板部34に接することができる。
【0018】
ドア本体10を磁石31,35の磁力に抗して閉じ方向に回転させると、第1磁石31が第2磁石35から離れるので、第2磁石35は重力または図示しない内蔵スプリングの力で元の位置に戻る。
【0019】
<ドア構造の換気機能>
ドア本体10が閉じ位置にある時に、保護材20と床面51との間には隙間G1が形成されている。また、磁石ホルダ32の水平板部34と床面51との間にも隙間G2が形成されている。その結果、ドア本体10が閉じられていても部屋の換気を行うことができる。
【0020】
<指詰め防止機能>
保護材20はドア本体10の下面11から下方に突出しているので、ドア本体10の下面11と床面51との間の寸法より、保護材20と床面11との間の隙間G1が狭くなっている。そのため、ドア本体10の下縁部において保護材20の設置領域では、足指が隙間G1に入り込まず、入り込んでも保護材20の緩衝機能により、指詰めを防止することができる。また、ドア本体10の下縁部の戸先側の端部においても、磁石ホルダ32の水平板部34がドア本体10の下面11より下方に突出しているため、この水平板部34と床面51との間の隙間G2を、ドア本体10の下面11と床面51との間の寸法より狭くすることができ、指詰めを防止することができる。
【0021】
<隙間寸法>
保護材20と床面11との間の隙間G1は、換気機能を確保するためにはGmin以上に
する必要がある。例えばGminは10mmである、また、隙間G1は指詰めを防止するためにはGmax以下にする必要がある。例えばGmaxは13mmである。したがって、隙間G1は下記式を満たすように設定される。
Gmin≦G1≦Gmax・・・(1)
同様の理由により、磁石ホルダ32の水平板部34と床面51との間の隙間G2
も下記式を満たすことが好ましい。
Gmin≦G2≦Gmax・・・(2)
【0022】
上記の観点から、磁石ホルダ32の水平板部34のドア本体10の下面11からの高さ(本実施形態では水平板部34の板厚)は、保護材20のドア本体10の下面11からの高さと略同程度とするのが好ましい。具体的には、水平板部34の高さを保護材20の高さの0.8~1.2倍とするのが好ましい。
【0023】
<保護材の変形例>
本発明のドア構造に用いられる保護材は、種々の形態を採用可能である。
図4に示す保護材120は、平板形状のベース部121と、ベース部121とほぼ等しい厚さを有しベース部121の一端部に連なる湾曲形状の緩衝部122と、ベース部121の一端部から上方に突出してドア本体10のエッジ部11aを保護する突条123を有している。ベース部121がドア本体10の下面11に固定される。ベース部121と緩衝部122との間に中空部125が形成されている。保護材120は、全体が同一材料により形成されており、スチレン系エラストマー、シリコン、軟質PVC、エチレン系エラストマー等の弾性変形可能な可撓性材料からなる。
【0024】
図5に示す保護材220は、ドア本体10の下面11に固定された断面山形をなすベース部221と、ベース部221の頂部に形成され下方に突出する緩衝部222と、ベース部221の一端部から上方に突出してドア本体10の下面11を備えている。ベース部221と緩衝部22は異なる材料からなり、二色押出成形により得られる。これらベース部221と緩衝部222は、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、クロロプレンゴム等からなり、ベース部221は緩衝部222より硬質である。
【0025】
図6に示す保護材320は、ドア本体10の下面11に固定された平板形状のベース部321と、ベース部321から下方に突出する断面山形の緩衝部322とを備えている。ベース部321と緩衝部322は異なる材料からなり、二色押出成形により得られる。緩衝部322はスチレン系エラストマー等エラストマー等の可撓性材料からなる。ベース部21は緩衝部322より硬質であり、例えばABS樹脂からなる。この保護材320は、ドア本体の板面14から後退して配置されている。
【0026】
本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、部屋を仕切る回転式のドア構造に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ドア本体
11 ドア本体の下面
12 ドア本体の側面
15 収容空間
20、120、220、320 保護材
30 開き位置維持手段
30A ドア側構成部
30B 床側構成部
31 第1磁石
32 磁石ホルダ
33 垂直板部
34 水平板部
35 第2磁石
50 床
51 床面
55 支持空間
G1、G2 隙間