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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000190
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20231225BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231225BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231225BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B60R16/033 C
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H01M10/48 P
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098819
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】吉村 実
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503FA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC25
5H125CA08
5H125DD05
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE55
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】自動運転走行を再開するまでの時間を短縮できると共に、部品の耐久性の劣化を抑制できる電源制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る電源制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行う。コントローラは、起動時の車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、可否判定を行わない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行うコントローラを備える電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、前記可否判定を行わない、
電源制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記車両のイグニッションスイッチがオフされてからオンされるまでの経過時間が第1閾値時間以内である場合に、前記可否判定を行わない、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
自動運転走行の終了から前記車両のイグニッションスイッチがオンされるまでの経過時間が第2閾値時間以内である場合に、前記可否判定を行わない、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記可否判定は、
前記バックアップを行うためのスイッチの故障判定を行う第1判定を含み、
前記コントローラは、
前記第1判定を行わない、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記可否判定は、
前記バックアップ電源を充放電させることによってバックアップ電源の劣化を判定する第2判定を含み、
前記コントローラは、
前記第2判定を行わない、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記可否判定は、
前記バックアップ電源から負荷に所定時間、電力を供給可能か否かを判定する第3判定を含み、
前記コントローラは、
前記第3判定を行わない、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記可否判定は、
前記バックアップ電源の蓄電量が所定閾値以上か否かを判定する第4判定を含み、
前記コントローラは、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合であっても、前記第4判定は行う、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項8】
自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行う電源制御装置のコントローラが、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、前記可否判定を行わない、
電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バックアップ電源を搭載する自動運転車両は、車両のイグニッションスイッチ(以下、「IG」と記載する)がオンされる起動時に、自動運転走行および異常発生時のFOP(フェイルオペレーション)が正常に動作可能か否かのバックアップ可否判定を実施する。自動運転車両は、バックアップ可否判定によって可と判定すれば自動運転走行が許可される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
自動運転車両は、例えば、高速道路などの自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域を自動運転走行中に、トイレ休憩などの理由で途中のサービスエリアなどに立ち寄る場合がある。自動運転車両は、サービスエリアで一旦IGがオフされ、休憩が済めばIGがオンされて自動運転走行を再開する。
【0004】
この場合、自動運転車両は、IGがオフされる前に既にバックアップ可否判定を行って可と判定しているにもかかわらず、休憩後、IGがオンされると、再度バックアップ可否判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-72880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動運転車両は、IGがオフされる前に既にバックアップ可否判定を行って可と判定しているにもかかわらず、IGがオンされて再度バックアップ可否判定を行うと、自動運転走行を再開するまでの時間が長くなる。また、自動運転車両は、頻繁にバックアップ可否判定を行うと、バックアップ可否判定のために動作させるスイッチなどの部品の耐久性が低下する。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、自動運転走行を再開するまでの時間を短縮できると共に、部品の耐久性の劣化を抑制できる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行う。前記コントローラは、前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、前記可否判定を行わない。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様に係る電源制御装置および電源制御方法は、自動運転走行を再開するまでの時間を短縮できると共に、部品の耐久性の劣化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
図2図2は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態に係る電源制御装置の主コントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施形態に係る電源制御装置は、電気自動車、ハイブリット自動車、または、内燃機関によって走行するエンジン自動車に搭載される。なお、実施形態に係る電源制御装置は、メイン電源とバックアップ電源とを備え、メイン電源に電源失陥が発生した場合に、バックアップ電源によってメイン電源をバックアップしてFOP(フェイルオペレーション)を実施する任意の装置に搭載されてもよい。
【0013】
[1.電源制御装置の構成]
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、メイン電源10と、外部装置100とに接続される。
【0014】
さらに、電源制御装置1は、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に接続される。また、電源制御装置1は、第1系統110と、第2系統120とを備える。
【0015】
第1系統110は、メイン電源10の電力を第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に供給する。第2系統120は、後述するバックアップ電源20の電力を第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104に供給する。
【0016】
第1一般負荷101および第2一般負荷105は、例えば、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、各種ライト、ドライブレコーダ、セキュリティ装置、通信装置、および各種センサなどを含む。
【0017】
第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104は、自動運転用の装置である。例えば、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダなどを含む。第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。
【0018】
外部装置100は、例えば、自動運転制御装置である。外部装置100は、GPS(Global Positioning System)を備え、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104を動作させて、車両を自動運転走行制御する装置である。
【0019】
メイン電源10は、電源制御装置1がエンジン自動車に搭載される場合、発電機12と、鉛バッテリ(以下、「PbB11」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB11以外の任意の2次電池であってもよい。
【0020】
発電機12は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。発電機12は、発電した電力によるPbB11および後述するバックアップ電源20の充電を行う。また、発電機12は、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105への電力供給を行う。
【0021】
メイン電源10は、電源制御装置1が電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載される場合、DC/DCコンバータ(以下、「DCDC」と記載する)と、PbB11とを含む。この場合、DCDCは、発電機と、PbB11よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続され、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0022】
また、電源制御装置1は、バックアップ電源20と、コントローラ3と、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に電力を供給する複数の接続部と、DCDC22とを備える。
【0023】
具体的には、電源制御装置1は、第1接続部41、第2接続部42、第3接続部43、第4接続部44、第5接続部45、第6接続部46、第7接続部47、第8接続部48、第9接続部49、および第10接続部50を備える。
【0024】
第1接続部41は、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。なお、第1接続部41は、DCDCであってもよい。この場合、DCDCは、動作することによって第1系統110と第2系統120とを接続し、動作を停止することによって第1系統110と第2系統120との接続を切断する。
【0025】
第2接続部42は、第2系統120と第1FOP負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第3接続部43は、第2系統120と第2FOP負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第4接続部44は、第2系統120と第3FOP負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。
【0026】
第5接続部45は、バックアップ電源20と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。DCDC22は、第5接続部45に対して並列接続となるように第2系統120に接続される。第6接続部46は、第1系統110と第1一般負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第7接続部47は、第1系統110と第1FOP負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第8接続部48は、第1系統110と第2FOP負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第9接続部49は、第1系統110と第2一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。第10接続部50は、第1系統110と第3FOP負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。
【0027】
バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0028】
また、電源制御装置1は、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52とを備える。第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられ、第1系統110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられ、第2系統120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0029】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)や各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、その機能の一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0030】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、第1~第10接続部41~50およびDCDC22の動作を制御する。
【0031】
[2.電源制御装置の動作例]
次に、図2図4を参照して、電源制御装置1の動作例について説明する。図2図4は、実施形態に係る電源制御装置1の動作例を示す説明図である。
【0032】
[2.1.通常時動作]
コントローラ3は、IGがオンされた状態で第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時の停車中、手動運転中、または自動運転中には、図2に示すように、複数の接続部を制御する。
【0033】
具体的には、コントローラ3は、第1~第4,第6~第10接続部41~44,46~50をオンし、第5接続部45をオフする。これにより、電源制御装置1は、メイン電源10から第1~第2一般負荷101,105および第1~第3FOP負荷102~104に電力を供給できる。
【0034】
[2.2.電源制御装置の地絡発生時動作]
例えば、図3に示すように、電源制御装置1では、第1系統110で地絡200が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第1電圧センサ51によって検出される電圧が地絡閾値以下になる。
【0035】
このため、コントローラ3は、第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間継続して地絡閾値以下になった場合に、第1系統110の地絡200を検知して第1接続部41をオフし、第5接続部45をオンし、第6~第10接続部46~50をオフする。
【0036】
これにより、電源制御装置1は、第1系統110で地絡200が発生しても、バックアップ電源20から第1~第3FOP負荷102~104に電力を供給するFOP制御を行うことができる。
【0037】
その後、コントローラ3は、第1系統110で地絡200が発生し、FOP制御へ移行したことを外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、バックアップ電源20から供給される電力によって第1~第3FOP負荷102~104を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0038】
[2.3.充電時動作]
コントローラ3は、LiB21の蓄電量が低下した場合に、バックアップ電源20を充電する。図4に示すように、コントローラ3は、例えば、バックアップ電源20からSOC(State Of Charge)取得ライン23を介して、LiB21のSOCを取得し、LiB21のSOCが65%以下まで低下すると、DCDC22を降圧動作させる。そして、コントローラ3は、メイン電源10から第1接続部41およびDCDC22を介してバックアップ電源20に電力を供給してバックアップ電源20を充電する。
【0039】
[3.バックアップ可否判定]
電源制御装置1は、IGがオンされる起動時に、自動運転走行および異常発生時のFOPが正常に動作可能か否かのバックアップ可否判定を実施し、可と判定すれば自動運転走行を許可する。
【0040】
自動運転車両は、例えば、高速道路などの自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域を自動運転走行中に、トイレ休憩などの理由で途中のサービスエリアなどに立ち寄る場合がある。この場合、自動運転車両は、サービスエリアで一旦IGがオフされ、休憩が済めばIGがオンされて自動運転走行を再開する。
【0041】
この場合、車両の駐車時間は極短時間になることが多いが、電源制御装置1は、IGがオフされる前に既にバックアップ可否判定を行って可と判定しており、それから短時間しか経過していないもかかわらず、IGがオンされると再度バックアップ可否判定を行う。このような状況は、車両が自宅以外の場所、例えば、コンビニエンスストアやガソリンスタンドに停車する場合にも発生する。
【0042】
しかしながら、電源制御装置1は、IGがオフされる前に既にバックアップ可否判定を行って可と判定しているにもかかわらず、IGがオンされて再度バックアップ可否判定を行うと、自動運転走行を再開するまでの時間が長くなる。また、自動運転車両は、頻繁にバックアップ可否判定を行うと、バックアップ可否判定のために動作させるスイッチなどの部品の耐久性が低下する。
【0043】
そこで、実施形態に係る電源制御装置1は、コントローラ3を備える。コントローラ3は、自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源20によるバックアップが可能か否かの可否判定(以下、「バックアップ可否判定」と記載する)を行う。コントローラ3は、起動時の車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、バックアップ可否判定を行わない、すなわちバックアップ可否判定を禁止する。
【0044】
例えば、コントローラ3は、車両の位置が、予め自動運転走行が許可されている高速道路、自動車専用道路、および幅員が所定幅以上の道路上、サービスエリア、退避場、および安全地帯などの領域内である場合に、バックアップ可否判定を行わない、または、その一部を省略する。
【0045】
つまり、本実施形態におけるバックアップ可否判定を行わないとは、バックアップ可否判定の全項目の判定を行わないこと以外に、後述するSOC判定などの一部の項目の判定は実施し、残りの項目の判定を行わないことを含むものである。
【0046】
なお、コントローラ3は、車両が自宅以外の場所、例えば、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなどの駐車時間が短時間になる場所に駐車される場合に、バックアップ可否判定を行わない、または、その一部を省略するように構成されてもよい。
【0047】
これにより、電源制御装置1は、例えば、IGがオンされると、直に自動運転走行を再開できる。また、電源制御装置1は、不要なバックアップ可否判定を実施しないため、バックアップ可否判定のために使用される部品の耐久性が向上する。例えば、電源制御装置1は、第1~第10接続部41~50の耐久性を向上させることができる。
【0048】
具体的には、コントローラ3は、IGがオフされてからオンされるまでの経過時間が第1閾値時間以内である場合に、可否判定を行わない。第1所定時間は、例えば、1時間である。なお、第1所定時間は、バックアップ可能な状態が変化しないことが予想される時間であれば、1時間以外の時間であってもよい。
【0049】
この場合、コントローラ3は、IGがオンされた場合に、前回のバックアップ可否判定で可と判定していれば、それからの経過時間が1時間以内であり、バックアップ可能な状態が変化している可能性が低いため、より確実に判定が不要であることを推定できる。
【0050】
また、コントローラ3は、自動運転走行の終了からIGがオンされるまでの経過時間が第2閾値時間以内である場合に、可否判定を行わない。第2所定時間は、例えば、1時間15分である。なお、第2所定時間は、バックアップ可能な状態が変化しないことが予想される時間であれば、1時間15分以外の時間であってもよい。
【0051】
この場合、電源制御装置1は、IGがオンされた場合に、前回のバックアップ可否判定で可と判定していれば、それからの経過時間が1時間15分以内であり、バックアップ可能な状態が変化している可能性が低いため、より確実に判定が不要であることを推定できる。
【0052】
また、バックアップ可否判定は、バックアップを行うためのスイッチの故障判定を行う第1判定(以下、「バックアップ可否判定(a)」と記載する場合がある)を含む。コントローラ3は、第1判定を行わない。
【0053】
例えば、コントローラ3は、IGがオンされると、第1~第10接続部41~50を順次オン/オフ制御して第1電圧センサ51、第2電圧センサ52の電圧値を読み取ることで、第1~第10接続部41~50のオン固着やオフ固着を判定する第1判定を実施する。そして、コントローラ3は、起動時の車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合には、第1判定を行わない。これにより、電源制御装置1は、第1~第10接続部41~50の動作回数を低減することによって、第1~第10接続部41~50の耐久性向上できる。
【0054】
また、バックアップ可否判定は、バックアップ電源20を充放電させることによってバックアップ電源20の劣化を判定する第2判定(以下、「バックアップ可否判定(b)」と記載する場合がある)を含む。コントローラ3は、第2判定を行わない。
【0055】
例えば、コントローラ3は、IGがオンされると、図4の状態になるように、第1~第10接続部41~50およびDCDC22を制御し、LiB21を充電または放電することでLiB21の内部抵抗を測定し、その値に基づいて、第2判定を実施する。そして、コントローラ3は、起動時の車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合には、第2判定を行わない。これにより、電源制御装置1は、不必要なバックアップ電源20の充放電回数を低減できるため、バックアップ電源20の劣化を防止できる。
【0056】
また、バックアップ可否判定は、バックアップ電源20から負荷に所定時間、電力を供給可能か否かを判定する第3判定(以下、「バックアップ可否判定(c)」と記載する場合がある)を含む。コントローラ3は、第3判定を行わない。
【0057】
例えば、コントローラ3は、図3の状態になるように、第1~第10接続部41~50を制御し、所定時間バックアップ電源20から電力を供給させ、所定時間経過後の第2電圧センサ52によってバックアップ電源20の電圧が正常範囲であるか否かに基づいて、第3判定を実施する。そして、コントローラ3は、起動時の車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合には、第3判定を行わない。これにより、電源制御装置1は、不必要なバックアップ電源20からの給電回数を低減できるため、バックアップ電源20の劣化を防止できる。
【0058】
また、バックアップ可否判定は、バックアップ電源20の蓄電量が所定閾値以上か否かを判定する第4判定(以下、「バックアップ可否判定(d)」と記載する場合がある)を含む。所定閾値は、例えば、LiB21のSOCが80%である。例えば、コントローラ3は、バックアップ電源20から取得するLiB21のSOCに基づいて、第4判定を行う。コントローラ3は、起動時の車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合であっても、第4判定は行う。これにより、電源制御装置1は、自動運転走行再開後にFOP制御を行う場合に、確実にFOP制御を実施できる。なお、バックアップ可否判定は、第1判定~第3判定がなくてもよく、あるいは第1判定~第3判定のうち少なくとも1つ以上であってもよい。
【0059】
[4.コントローラが実行する処理]
次に、図5を参照して、電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理について説明する。図5は、実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
なお、通常時動作、地絡発生時動作、および充電時動作にコントローラ3が実行する制御処理について、図2図4を参照して既に説明したため、ここでは処理の説明を省略し、バックアップ可否判定処理の詳細について説明する。
【0061】
コントローラ3は、IGがオンされると、外部装置100から自車位置を取得する(ステップS101)。続いて、コントローラ3は、自車位置が自動運転走行可能領域内か否かを判定する(ステップS102)。
【0062】
具体的には、ステップS102において、コントローラ3は、自動運転走行から手動運転走行に切り替えた後の停車場所、または、自動運転走行中の停車場所が自動運転走行可能領域内でIGがオンされたか否かを判定する。
【0063】
つまり、コントローラ3は、自車位置が比較的短時間の間駐車される位置か否かを判定する。このため、コントローラ3は、ステップS102において、自車位置が自宅以外の場所か否かをAND条件として判定するように構成されてもよい。この場合、自動運転走行可能領域内でIGがオンされ、かつ自車位置が自宅以外である場合、ステップS102がYesとなる。
【0064】
コントローラ3は、自車位置が自動運転走行可能領域内でないと判定した場合(ステップS102,No)、処理をステップS104へ移す。コントローラ3は、自車位置が自動運転可能領域内であると判定した場合(ステップS102,Yes)、第1条件フラグをオンにする(ステップS103)。なお、第1条件フラグは、IGがオンされた時点では、オフになっている。
【0065】
続いて、コントローラ3は、第1所定時間が第1閾値時間以内か否かを判定する(ステップS104)。第1所定時間は、IGがオフされてからオンされるまでの経過時間である。コントローラ3は、第1所定時間が第1閾値時間以内でないと判定した場合(ステップS104,No)、処理をステップS106へ移す。
【0066】
コントローラ3は、第1所定時間が第1閾値時間以内であると判定した場合(ステップS104,Yes)、第2条件フラグをオンにする(ステップS105)。なお、第2条件フラグは、IGがオンされた時点では、オフになっている。
【0067】
続いて、コントローラ3は、第2所定時間が第2閾値時間以内か否かを判定する(ステップS106)。第2所定時間は、自動運転走行の終了からIGがオンされるまでの経過時間である。コントローラ3は、第2所定時間が第2閾値時間以内でないと判定した場合(ステップS106,No)、処理をステップS108へ移す。
【0068】
コントローラ3は、第2所定時間が第2閾値時間以内であると判定した場合(ステップS106,Yes)、第3条件フラグをオンにする(ステップS107)。なお、第3条件フラグは、IGがオンされた時点では、オフになっている。
【0069】
続いて、コントローラ3は、バックアップ可否判定省略条件が成立しているか否かを判定する(ステップS108)。バックアップ可否判定省略条件は、例えば、第1条件フラグがオンである。バックアップ可否判定省略条件は、第1条件フラグおよび第2条件フラグの両方がオンであってもよい。バックアップ可否判定省略条件は、第1条件フラグ、第2条件フラグ、および第3条件フラグの全てがオンであってもよい。
【0070】
コントローラ3は、バックアップ可否判定省略条件が成立していると判定した場合(ステップS108,Yes)、処理をステップS110へ移す。つまり、コントローラ3は、後述するバックアップ可否判定(a),(b),(c)を実施ぜず処理をステップS110へ移す。
【0071】
コントローラ3は、バックアップ可否判定省略条件が成立していないと判定した場合(ステップS108,No)、バックアップ可否判定(a),(b),(c)を実施する(ステップS109)。バックアップ可否判定(a)は、バックアップを行うための第1~第5接続部41~45の故障判定である。
【0072】
なお、バックアップ可否判定(a)は、第6~第8接続部46~48の故障判定をさらに含んでもよい。また、コントローラ3は、バックアップ可否判定省略条件が成立していないと判定した場合(ステップS108,No)、処理をステップS111に移してもよい。
【0073】
バックアップ可否判定(b)は、バックアップ電源20を充放電させることによるバックアップ電源20の劣化判定である。バックアップ可否判定(c)は、バックアップ電源20から第1~第3FOP負荷102~104に所定時間、電力を供給可能か否かの判定である。
【0074】
続いて、コントローラ3は、バックアップ可否判定(d)を実施する(ステップS110)。バックアップ可否判定(d)は、バックアップ電源20の蓄電量が所定閾値以上か否かの判定である。例えば、バックアップ可否判定(d)は、LiB21のSOCが80%以上か否かの判定である。
【0075】
続いて、コントローラ3は、自動運転走行許可可能か否かを判定する(ステップS111)。コントローラ3は、バックアップ可否判定(a),(b),(c),(d)の全てで可と判定した場合に、自動運転走行許可可能と判定する。
【0076】
コントローラ3は、自動運転走行許可可能と判定した場合(ステップS111,Yes)、許可フラグをオンにする(ステップS112)。コントローラ3は、自動運転走行許可可能でないと判定した場合(ステップS111,No)、許可フラグをオフにする(ステップS113)。なお、コントローラ3は、許可フラグの設定内容を不揮発性メモリに記憶すると共に、許可フラグの設定内容を外部装置100に通知する。
【0077】
コントローラ3は、許可フラグをオンまたはオフにした後、自動運転走行が開始されたか否かを判定する(ステップS114)。コントローラ3は、自動運転走行が開始されたか否かの通知を外部装置100から取得する。コントローラ3は、自動運転走行が開始されていないと判定した場合(ステップS114,No)、処理をステップS117に移す。
【0078】
コントローラ3は、自動運転走行が開始されたと判定した場合(ステップS114,Yes)、自動運転走行が終了されたか否かを判定する(ステップS115)。コントローラ3は、自動運転走行が終了されたか否かの通知を外部装置100から取得する。コントローラ3は、自動運転走行が終了されていないと判定した場合(ステップS115,No)、処理をステップS117に移す。
【0079】
コントローラ3は、自動運転走行が終了されたと判定した場合(ステップS115,Yes)、第2タイマをスタートさせる(ステップS116)。第2タイマは、自動運転走行の終了からIGがオンされるまでの経過時間である第2所定時間を計測するタイマである。
【0080】
続いて、コントローラ3は、IGがオフされたか否かを判定する(ステップS117)。コントローラ3は、IGがオンまたはオフされたことを示す情報を車両から取得するように構成される。コントローラ3は、IGがオンまたはオフされたことを示す情報を外部装置100から取得するように構成されてもよい。
【0081】
コントローラ3は、IGがオフされていないと判定した場合(ステップS117,No)、処理をステップS110に移す。コントローラ3は、IGがオフされたと判定した場合(ステップS117,Yes)、第1タイマをスタートさせる(ステップS118)。
【0082】
第1タイマは、IGがオフされてからオンされるまでの経過時間である第1所定時間を計測するタイマである。コントローラ3は、第1タイマをスタートさせた後に、処理を終了する。
【0083】
[5.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行うコントローラを備える電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行が許可されている自動運転走行可能領域である場合には、前記可否判定を行わない、
電源制御装置。
(2)
前記コントローラは、
前記車両のイグニッションスイッチがオフされてからオンされるまでの経過時間が第1閾値時間以内である場合に、前記可否判定を行わない、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(3)
前記コントローラは、
自動運転走行の終了から前記車両のイグニッションスイッチがオンされるまでの経過時間が第2閾値時間以内である場合に前記可否判定を行わない、
前記(1)または(2)に記載の電源制御装置。
(4)
前記可否判定は、
前記バックアップを行うためのスイッチの故障判定を行う第1判定を含み、
前記コントローラは、
前記第1判定を行わない、
前記(1)から(3)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(5)
前記可否判定は、
前記バックアップ電源を充放電させることによってバックアップ電源の劣化を判定する第2判定を含み、
前記コントローラは、
前記第2判定を行わない、
前記(1)から(4)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(6)
前記可否判定は、
前記バックアップ電源から負荷に所定時間、電力を供給可能か否かを判定する第3判定を含み、
前記コントローラは、
前記第3判定を行わない、
前記(1)から(5)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(7)
前記可否判定は、
前記バックアップ電源の蓄電量が所定閾値以上か否かを判定する第4判定を含み、
前記コントローラは、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合であっても、前記第4判定は行う、
前記(1)から(6)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(8)
自動運転走行機能を有する車両の起動時に、バックアップ電源によるバックアップが可能か否かの可否判定を行う電源制御装置のコントローラが、
前記起動時の前記車両の位置が、自動運転走行可能領域である場合には、前記可否判定を行わない、
電源制御方法。
【0084】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 電源制御装置
10 メイン電源
11 PbB
12 発電機
3 コントローラ
20 バックアップ電源
21 LiB
41 第1接続部
42 第2接続部
43 第3接続部
44 第4接続部
45 第5接続部
46 第6接続部
47 第7接続部
48 第8接続部
49 第9接続部
50 第10接続部
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
100 外部装置
101 第1一般負荷
102 第1FOP負荷
103 第2FOP負荷
104 第3FOP負荷
105 第2一般負荷
110 第1系統
120 第2系統
200 地絡
図1
図2
図3
図4
図5