(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019004
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】農業用給水弁および農業用給水装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A01G25/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109196
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022121089
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弁体の作動トルクを低減できる農業用給水弁を提供する。
【解決手段】農業用給水弁10は、側壁20aに吐出口20dを有する有頂縦筒状の弁箱20、内周面に雌ねじ22aが形成された雌ねじ部材(軸受22)、外周面に形成された雄ねじ24aを有し、雌ねじ部材に螺合される弁軸24、弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされて、弁軸の回転に伴って上下動することで吐出口を開閉する縦筒状の弁体26、および吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、弁箱と弁体との隙間を封止する2つの環状パッキン28,30を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に用水を供給するための農業用給水弁であって、
有頂縦筒状に形成され、側壁に吐出口を有する弁箱、
前記弁箱の上方に設けられ、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材、
外周面に形成された雄ねじを有し、前記雌ねじ部材に対して螺合される弁軸、
縦筒状に形成され、前記弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされて、前記弁軸の回転に伴って上下動することで前記吐出口を開閉する弁体、および
前記弁体が全閉位置にあるときに、前記吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、前記弁箱と前記弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備える、農業用給水弁。
【請求項2】
前記2つの環状パッキンの圧縮状態の圧縮率は、前記弁体が全閉位置にあるときよりも、前記弁体が全開位置から全閉手前位置までにあるときの方が小さい、請求項1記載の農業用給水弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記弁箱に外嵌めされ、
前記弁体の閉時移動方向における後側の前記環状パッキンは、前側の前記環状パッキンよりも前記弁箱の軸心から近い位置において圧縮される、請求項2記載の農業用給水弁。
【請求項4】
前記弁体の内周面には、前記2つの環状パッキンと対応する位置に、前記弁体の閉時移動方向における前側に向かって拡径するテーパ面が形成され、
前記2つの環状パッキンのそれぞれは、前記弁体が全閉位置にあるときに前記テーパ面または当該テーパ面の前記弁体の閉時移動方向における後側に形成されたストレート面によって横方向に圧縮される、請求項3記載の農業用給水弁。
【請求項5】
前記弁体は、前記弁箱に外嵌めされ、
前記弁体の内周面には、前記2つの環状パッキンと対応する位置に、前記弁体の閉時移動方向における前側に向かって拡径するテーパ面が形成され、
前記2つの環状パッキンのそれぞれは、前記弁体が全閉位置にあるときに前記テーパ面または当該テーパ面の前記弁体の閉時移動方向における後側に形成されたストレート面によって横方向に圧縮され、
前記弁箱の軸心からの距離は、前記テーパ面よりも、前記テーパ面の間の前記弁体の内周面の方が大きい、請求項2記載の農業用給水弁。
【請求項6】
前記弁体の閉時移動方向における前側の前記環状パッキンは、上下方向に圧縮され、
前記弁体の閉時移動方向における後側の前記環状パッキンは、横方向に圧縮される、請求項2記載の農業用給水弁。
【請求項7】
圃場に用水を供給するための農業用給水装置であって、
給水弁と電動アクチュエータとを備え、
前記給水弁は、
有頂縦筒状に形成され、側壁に吐出口を有する弁箱、
前記弁箱の上方に設けられ、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材、
外周面に形成された雄ねじを有し、前記雌ねじ部材に対して螺合される弁軸、
縦筒状に形成され、前記弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされて、前記弁軸の回転に伴って上下動することで前記吐出口を開閉する弁体、および
前記弁体が全閉位置にあるときに、前記吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、前記弁箱と前記弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備え、
前記電動アクチュエータは、前記弁軸に対して回転力を与える駆動機構を備え、前記給水弁の上に取り付けられる、農業用給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は農業用給水弁および農業用給水装置に関し、特にたとえば、圃場に用水を供給する、農業用給水弁および農業用給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の農業用給水装置の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、給水弁(給水バルブ)の上にこれを駆動する電動アクチュエータを取り付けることで、圃場の用水管理を遠隔操作または自動制御で行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、給水弁として一般的に広く普及しているアルファルファ型の弁が用いられる。しかしながら、アルファルファ型およびアングル型などの止め弁構造の弁(弁棒によって弁体を弁座と直角方向に作動させる弁)では、止水するときに用水の流れに逆らって弁体を移動させる必要がある。このため、用水圧が高くなると、それに伴って弁体の作動トルク(止水トルク)も高くなってしまう。電動アクチュエータを用いて給水弁を駆動する場合には、高出力のモータが必要となり、消費電力も増してしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、農業用給水弁および農業用給水装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、弁体の作動トルクを低減できる、農業用給水弁および農業用給水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、圃場に用水を供給するための農業用給水弁であって、有頂縦筒状に形成され、側壁に吐出口を有する弁箱、弁箱の上方に設けられ、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材、外周面に形成された雄ねじを有し、雌ねじ部材に対して螺合される弁軸、縦筒状に形成され、弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされて、弁軸の回転に伴って上下動することで吐出口を開閉する弁体、および弁体が全閉位置にあるときに、吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、弁箱と弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備える、農業用給水弁である。
【0008】
第1の発明では、農業用給水弁は、有頂縦筒状に形成された弁箱を備える。弁箱の側壁には、吐出口が形成される。弁箱の上方には、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材が設けられる。この雌ねじ部材には、外周面に雄ねじが形成された弁軸が螺合される。弁体は、縦筒状に形成され、弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされる。この弁体は、弁軸の回転に伴って上下動することで吐出口を開閉する。つまり、用水は吐出口から横方向に排出されるのに対して、弁体の移動方向は上下方向であり、弁体が上下動する際には弁体の内側面に用水圧が作用する。また、農業用給水弁は、弁体が全閉位置にあるときに、吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、弁箱と弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備える。これら2つの環状パッキンによって、弁体が全閉位置にあるときの吐出口からの水漏れが防止される。
【0009】
第1の発明によれば、弁体が用水圧を受ける方向に対して直交する方向に移動するので、弁体の作動トルクを低減できる。これにより、電動アクチュエータを用いて農業用給水弁を駆動する場合には、小型のモータで駆動可能となる上、消費電力が少なくなるので蓄電池も小型化でき、延いては電動アクチュエータの小型化および低価格化を実現できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、2つの環状パッキンの圧縮状態の圧縮率は、弁体が全閉位置にあるときよりも、弁体が全開位置から全閉手前位置までにあるときの方が小さい。
【0011】
第2の発明によれば、弁体をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキンの摩耗を低減できる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明に従属し、弁体は、弁箱に外嵌めされ、弁体の閉時移動方向における後側の環状パッキンは、前側の環状パッキンよりも弁箱の軸心から近い位置において圧縮される。
【0013】
第4の発明は、第3の発明に従属し、弁体の内周面には、2つの環状パッキンと対応する位置に、弁体の閉時移動方向における前側に向かって拡径するテーパ面が形成される。そして、2つの環状パッキンのそれぞれは、弁体が全閉位置にあるときに、テーパ面または当該テーパ面の弁体の閉時移動方向における後側に形成されたストレート面によって横方向に圧縮される。
【0014】
第5の発明は、第2の発明に従属し、弁体は、弁箱に外嵌めされ、弁体の内周面には、2つの環状パッキンと対応する位置に、弁体の閉時移動方向における前側に向かって拡径するテーパ面が形成される。そして、2つの環状パッキンのそれぞれは、弁体が全閉位置にあるときに、テーパ面または当該テーパ面の弁体の閉時移動方向における後側に形成されたストレート面によって横方向に圧縮される。また、弁箱の軸心からの距離は、テーパ面よりも、テーパ面の間の弁体の内周面の方が大きい。
【0015】
第6の発明は、第2の発明に従属し、弁体の閉時移動方向における前側の環状パッキンは、上下方向に圧縮され、弁体の閉時移動方向における後側の環状パッキンは、横方向に圧縮される。
【0016】
第7の発明は、圃場に用水を供給するための農業用給水装置であって、給水弁と電動アクチュエータとを備え、給水弁は、有頂縦筒状に形成され、側壁に吐出口を有する弁箱、弁箱の上方に設けられ、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材、外周面に形成された雄ねじを有し、雌ねじ部材に対して螺合される弁軸、縦筒状に形成され、弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされて、弁軸の回転に伴って上下動することで吐出口を開閉する弁体、および弁体が全閉位置にあるときに、吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、弁箱と弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備え、電動アクチュエータは、弁軸に対して回転力を与える駆動機構を備え、給水弁の上に取り付けられる、農業用給水装置である。
【0017】
第7の発明では、農業用給水装置は、給水弁と給水弁の上に取り付けられる電動アクチュエータとを備える。給水弁は、有頂縦筒状に形成された弁箱を備える。弁箱の側壁には、吐出口が形成される。弁箱の上方には、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材が設けられる。この雌ねじ部材には、外周面に雄ねじが形成された弁軸が螺合される。弁体は、縦筒状に形成され、弁箱に対して上下方向にスライド可能に外嵌めまたは内嵌めされる。この弁体は、弁軸の回転に伴って上下動することで吐出口を開閉する。つまり、用水は吐出口から横方向に排出されるのに対して、弁体の移動方向は上下方向であり、弁体が上下動する際には弁体の内側面に用水圧が作用する。また、給水弁は、弁体が全閉位置にあるときに、吐出口の上側および下側の位置のそれぞれにおいて、弁箱と弁体との隙間を封止する2つの環状パッキンを備える。これら2つの環状パッキンによって、弁体が全閉位置にあるときの吐出口からの水漏れが防止される。一方、電動アクチュエータは、給水弁の弁軸に対して回転力を与えるモータおよびメインギア等の駆動機構を備える。
【0018】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏し、弁体が用水圧を受ける方向に対して直交する方向に移動するので、弁体の作動トルクを低減できる。したがって、小型のモータで駆動可能となる上、消費電力が少なくなるので蓄電池も小型化でき、電動アクチュエータの小型化および低価格化を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、弁体が用水圧を受ける方向に対して直交する方向に移動するので、弁体の作動トルクを低減できる。これにより、電動アクチュエータを用いて農業用給水弁を駆動する場合には、小型のモータで駆動可能となる上、消費電力が少なくなるので蓄電池も小型化でき、延いては電動アクチュエータの小型化および低価格化を実現できる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の一実施例である農業用給水弁を備える農業用給水装置を圃場に設置した様子を示す図である。
【
図2】全開状態の農業用給水弁を示す正面図である。
【
図3】全開状態の農業用給水弁を示す側面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線における全開状態の農業用給水弁の断面を示す断面図である。
【
図5】全閉状態の農業用給水弁を示す断面図である。
【
図6】農業用給水弁の弁体周辺部分を拡大して示す断面図であり、(a)は半開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図8】農業用給水装置が備える電動アクチュエータを示す断面図である。
【
図9】この発明の他の実施例の農業用給水弁の弁体周辺部分を拡大して示す断面図であり、(a)は半開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図10】この発明のさらに他の実施例の全開状態の農業用給水弁を示す正面図である。
【
図11】全開状態の農業用給水弁を示す断面図である。
【
図12】全閉状態の農業用給水弁を示す断面図である。
【
図13】この発明のさらに他の実施例の農業用給水弁の弁体周辺部分を示す断面図であり、(a)は全開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図14】この発明のさらに他の実施例の農業用給水弁の弁体周辺部分を示す断面図であり、(a)は全開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図15】この発明のさらに他の実施例の農業用給水弁の弁体周辺部分を示す断面図であり、(a)は全開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図16】この発明のさらに他の実施例の農業用給水弁の弁体周辺部分を示す断面図であり、(a)は全開状態の弁体周辺部分を示し、(b)は全閉状態の弁体周辺部分を示す。
【
図17】この発明のさらに他の実施例の全開状態の農業用給水弁を示す断面図である。
【
図18】全閉状態の農業用給水弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の一実施例である農業用給水弁10(以下、単に「給水弁10」と言う。)は、圃場に用水を供給するための装置である。給水弁10は、たとえば、畦畔102に設けられた給水桝104内に配置され、畦畔102の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部(立上り管の上端部)に取り付けられる。
【0023】
詳細は後述するように、給水弁10の上には、給水弁10の変位機構(弁軸24および弁体26)を駆動するための電動アクチュエータ12が取り付けられ、これら給水弁10と電動アクチュエータ12とで圃場用給水装置14(以下、単に「給水装置14」と言う。)が構成される。電動アクチュエータ12が取り付けられた給水弁10、つまり給水装置14は、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う圃場水管理システムに用いられる。圃場水管理システムについては、この出願人等による特開2017-193914号公報および特開2020-103099号公報などに記載されているので、それを参照されたい。
【0024】
図2~
図5に示すように、給水弁10は、弁箱20、軸受22(雌ねじ部材の一例)、弁軸24、弁体26および2つの環状パッキン28,30(第1環状パッキン28および第2環状パッキン30)等を備える。
【0025】
弁箱20は、円筒状の側壁20aと側壁20aの上端開口を封止する円板状の天壁20bとを有する有頂縦筒状に形成される。弁箱20は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成され、その呼び径は、たとえば100mmであり、その高さ(軸方向長さ)は、たとえば300mmである。なお、天壁20bは、給水弁10内部のメンテンナンス等のため、側壁20aに対して着脱可能な構成にしておくことが好ましい。弁箱20の側壁20aの下端部には、受口形状の接続部20cが下向きに開口するように形成される。この接続部20cは、分岐管108の下流側端部と接着接合などによって接続され、用水パイプライン106からの用水は、側壁20aの下端開口から弁箱20内に流入する。また、弁箱20の側壁20aの上部には、矩形状の1または複数(この実施例では2つ)の吐出口20dが周方向に並ぶように形成される。つまり、側壁20aの下端開口から弁箱20内に流入した用水は、弁箱20内を上向きに流れた後、吐出口20dから横向きに排出される。
【0026】
弁箱20の上方には、内周面に雌ねじ22aが形成された円環板状の軸受22が水平方向に拡がるように設けられる。なお、雌ねじ22aは、軸受22に直接ねじ溝を切ることで形成してもよいし、軸受22に金属製のナットを固着することで形成してもよい。この軸受22は、下端部が弁箱20の側壁20aに接着または融着などで固定された長板状の2つの支柱32によって、弁箱20の天壁20bと所定間隔(弁体26の移動代)をあけた状態で支持される。支柱32は、吐出口20dからずれた周方向位置、つまり吐出口20d間の側壁20aと対向する周方向位置に設けられる。
【0027】
軸受22には、外周面に雄ねじ24aが形成された弁軸24が上下動可能に螺合される。また、軸受22の周縁部には、弁箱20の側壁20aの上端部周囲(つまり吐出口20dの周囲)を覆うように、下方に延びる円筒状の飛散防止カバー34が取り付けられる。飛散防止カバー34は、ステンレス円筒や透明シート等を用いて形成するとよい。さらに、軸受22の上面には、電動アクチュエータ12の底壁(取付台60)をねじ止めするための複数のねじ穴(図示せず)が周方向に所定間隔で並ぶように形成される。
【0028】
弁軸24の下端部には、連結部材36を介して弁体26が連結される。弁体26は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって、弁箱20の側壁20aの外径よりも少し大きい内径を有する円筒状(縦筒状)に形成される。そして、弁体26は、弁箱20の側壁20aに対して上下方向にスライド可能に外嵌めされる。つまり、弁箱20の側壁20aの外側面と弁体26の内側面との間には、弁体26が上下動できるように隙間が形成される。一方、連結部材36は、弁軸24の下端部に回転可能に取り付けられる長板状の横片36aと、横片36aの両端部から下方に延びる長板状の縦片36bとを有するブリッジ状に形成される。縦片36bは、支柱32と対向する位置、つまり吐出口20dからずれた周方向位置に設けられる。この連結部材36の縦片36bの下端部に、弁体26の上端部が接着または融着などによって固定される。また、連結部材36の横片36aの両端面には、溝状のガイド部36cが形成されており、このガイド部36cには、支柱32がスライド可能に嵌め入れられる。
【0029】
そして、弁軸24に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁軸24が上下動し、これに伴い連結部材36および弁体26も上下動する。この弁体26の上下動により、弁箱20の吐出口20dが開閉される。すなわち、弁体26は、弁軸24の回転に伴って上下動することで吐出口20dを開閉する。この際、連結部材36および弁体26は、ガイド部36cによって、弁軸24と共に回転することが防止される(回り止めされる)と共に、支柱32に沿って真っ直ぐに上下動するように案内される。この実施例では、弁体26が下限位置である全開位置にあるときに、吐出口20dの全体が露出する全開状態となる。一方、弁体26が上限位置である全閉位置にあるときに、吐出口20dの全体が弁体26によって覆われる全閉状態となって止水される。つまり、この実施例では、吐出口20dを閉めるときの弁体26の移動方向(閉時移動方向)は上方向であり、吐出口20dを開くときの弁体26の移動方向(開時移動方向)は下方向である。
【0030】
また、弁箱20の側壁20aの外側面には、吐出口20dの上側において周方向に延びる第1環状溝20eが形成されると共に、吐出口20dの下側において周方向に延びる第2環状溝20fが形成される。第1環状溝20eおよび第2環状溝20fには、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30がそれぞれ装着される。この実施例では、環状パッキン28,30として、断面円形のゴム製のОリングが用いられる。これら2つの環状パッキン28,30は、弁体26が全閉位置にあるときに、弁箱20の側壁20aの外側面(環状溝20e,20fの底面)と弁体26の内側面とによって横方向に圧縮されて圧縮状態となることで、弁箱20と弁体26との隙間を封止する。これら2つの環状パッキン28,30によって、弁体26が全閉位置にあるときの吐出口20dからの水漏れが適切に防止される。
【0031】
ここで、
図6からよく分かるように、環状パッキン28,30の圧縮率は、弁体26が全閉位置にあるとき(
図6(b)の状態)よりも、弁体26が全開位置から全閉手前位置までにあるとき(
図6(a)の状態)の方が小さいように設定される。つまり、最終止水状態では、環状パッキン28,30は所定の圧縮率で圧縮されるが、一部開状態を含む開状態では、環状パッキン28,30は圧縮が緩いか弁体26の内周面から離れている。具体的には、この実施例では、弁体26の閉時移動方向における後側(この実施例では下側)に配置される第2環状パッキン30は、前側(この実施例では上側)の第1環状パッキン28よりも弁箱20の軸心から近い位置において圧縮される。つまり、第2環状パッキン30の径は、第1環状パッキン28の径よりも小さい。また、弁体26の内周面には、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30と対応する位置に、弁体26の閉時移動方向における前側に向かって拡径する第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bが形成される。また、第2テーパ面26bは、第1テーパ面26aよりも弁箱20の軸心から近い位置に形成される。そして、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30のそれぞれは、弁体26が全閉位置にあるときに、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bによって横方向(厳密には斜め横方向)に所定の圧縮率で圧縮される。このように、弁体26が全開位置から全閉手前位置までにあるときの環状パッキン28,30の圧縮率を全閉位置にあるときの圧縮率よりも小さくすることで、弁体26をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキン28,30の摩耗を低減できる。
【0032】
図7に示すように、このような給水弁10には、弁軸24を電動で回転させるための電動アクチュエータ12が取り付けられ、電動アクチュエータ12によって給水弁10の変位機構(弁軸24および弁体26)が作動される。電動アクチュエータ12としては、公知のものを適宜利用可能であるが、一例として、この出願人等による特開2017-193914号公報および特開2020-103099号公報に記載のものを用いることができる。以下、
図7および
図8を参照して、この実施例で用いる電動アクチュエータ12の構成について簡単に説明する。
【0033】
図7および
図8に示すように、電動アクチュエータ12は、円筒状の筐体40を備える。筐体40の上には、保持体44を介して太陽電池パネル42が着脱可能に取り付けられる。また、筐体40の内部には、電子基板46と、蓄電池48と、モータ50およびメインギア52等を含む駆動機構とが収容される。
【0034】
電子基板46には、CPUおよびメモリ等を含む制御部、および無線通信モジュール等を含む無線通信部などが配設される。蓄電池48は、太陽電池パネル42によって発電された電力を蓄電する。モータ50は、蓄電池48に蓄えられた電力によって駆動される。このモータ50の出力軸50aの先端部には、小ギア54が設けられており、メインギア52は、この小ギア54と連結されることで、モータ50からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0035】
メインギア52は、両ボス型のギアであり、メインギア52の軸部には、略円柱状の回転軸56が挿通される。この回転軸56の下端部には、給水弁10の弁軸24の上端部と連結されるカップリング部56aが形成される。また、メインギア52の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝52aが形成され、回転軸56の外周面には、キー溝52aと嵌合される滑りキー56bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸56は、メインギア52が回転すると共に回転し、かつメインギア52の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。
【0036】
また、筐体40の外側面には、使用者による操作指示を受け付けるための操作パネル58が設けられる。さらに、筐体40の下部には、回転軸56などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口40aが形成される。また、筐体40の底壁は、給水弁10に対して電動アクチュエータ12を取り付けるための取付台60として用いられる。この取付台60の中央部には、給水弁10の弁軸24が挿通される通孔60aが形成され、この通孔60aの周囲には、複数の取付孔60bが周方向に所定間隔で並ぶように形成される。
【0037】
給水弁10に電動アクチュエータ12を取り付ける際には、給水弁10の軸受22上に電動アクチュエータ12を載置した状態で、軸受22に対して取付台60をねじ止めする。また、給水弁10の弁軸24の上端部と電動アクチュエータ12の回転軸56のカップリング部56aとを回転不可に連結する。
【0038】
電動アクチュエータ12を取り付けた給水弁10、つまり給水装置14においては、たとえば、ユーザが遠隔操作端末を用いて管理サーバにアクセスし、給水弁10を全閉、全開または任意の開度とするため等の操作指示(制御信号)を送信すると、この操作指示に応じた制御信号が管理サーバから中継機を介して電動アクチュエータ12に対して送信される。電動アクチュエータ12の制御部は、受信した制御信号に応じてモータ50を駆動させる。このモータ50の駆動力は、メインギア52に伝達されて、メインギア52と共に回転軸56が回転する。これにより、回転軸56に固定的に連結された給水弁10の弁軸24に対して、回転力が付与される。回転力が加えられた弁軸24は、送りねじ機構によって上下動され、これに伴い弁体26が上下動して全開位置および全閉位置などに移動される。
【0039】
ここで、弁箱20内に流入した用水は吐出口20dから横方向に排出されるのに対して、弁体26の移動方向は上下方向であり、弁体26が上下動する際には、円筒状の弁体26の内側面に用水の圧力が作用する。つまり、用水圧は、弁体26の内側面に対して弁軸24と垂直な方向に作用し、弁体26の移動方向である上下方向には作用しないので、用水圧が高い場合でも弁体26の作動トルクは高くならない。また、弁体26が全開位置から全閉手前位置までにあるときの環状パッキン28,30の圧縮率を全閉位置にあるときの圧縮率よりも小さくしているので、弁体26をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキン28,30の摩耗を低減できる。さらに、弁体26の開時移動方向が下方向であるので、吐出口20dを開くときに弁箱20の上部に空気溜まりが生じず、エアハンマによる弁体26等の破損が防止される。さらにまた、環状パッキン28,30を弁箱20の外側面に取り付けているので、環状パッキン28,30の消耗状況を容易に目視でき、その交換も容易となる。
【0040】
以上のように、この実施例によれば、弁体26が用水圧を受ける方向に対して直交する方向に移動するので、弁体26の作動トルクを低減できる。これにより、電動アクチュエータ12を用いて給水弁10を駆動する場合には、小型のモータ50で駆動可能となる上、消費電力が少なくなるので蓄電池48も小型化でき、電動アクチュエータ12(延いては給水装置14)の小型化および低価格化を実現できる。
【0041】
なお、上述した給水弁10の構成は単なる一例であり、給水弁10の具体的な構成(弁体26の位置、形状および移動方向、ならびに2つの環状パッキン28,30の種類、圧縮方向および取付位置などの具体的態様)は、この発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
【0042】
たとえば、上述の実施例では、弁体26の内周面に第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bを形成し、第1テーパ面26aと第2テーパ面26bとの間の内周面をストレート面(垂直面)にしているが、これに限定されない。図示は省略するが、このテーパ面26a,26b間の弁体26の内周面は、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bよりも弁体26の軸線に対する傾斜角度が小さいテーパ面とすることもできるし、弁体26の内周面を一定の傾斜角度で延びる1つのテーパ面にして、その1つのテーパ面の上端部を第1テーパ面26aとし、下端部を第2テーパ面26bとすることもできる。また、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bは必ずしも形成する必要はなく、弁体26の止水位置周辺部または内周面全体をストレート面としても構わない。
【0043】
さらに、上述の実施例では、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bによって2つの環状パッキン28,30を横方向に圧縮しているが、これに限定されない。たとえば、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bの少なくとも一方については、その軸方向長さを小さくしておき、テーパ面26a,26bの弁体26の閉時移動方向における後側に形成されたストレート面によって環状パッキン28,30を圧縮することもできる。すなわち、テーパ面26a,26bによって環状パッキン28,30を止水可能な寸法まで圧縮した後、弁体26が全閉位置にきたときには、その圧縮状態をテーパ面26a,26bの後側に形成したストレート面で維持することで、止水するようにしてもよい。このことは、後述する
図9に示す実施例においても同様である。
【0044】
また、上述の実施例では、弁体26の第2テーパ面26bを第1テーパ面26aよりも弁箱20の軸心から近い位置に形成し、第2環状パッキン30を第1環状パッキン28よりも弁箱20の軸心から近い位置において圧縮するようにした。これに対して、
図9に示す実施例では、弁体26に形成する第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bの弁箱20の軸心からの距離は同じであり、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30の弁箱20の軸心からの距離も同じである。一方で、第1テーパ面26aと第2テーパ面26bとの間の弁体26の内周面26c(ストレート面)の弁箱20の軸心からの距離は、第1テーパ面26aおよび第2テーパ面26bの弁箱20の軸心からの距離よりも大きい。
【0045】
これによって、
図9に示す実施例でも、2つの環状パッキン28,30の圧縮率は、弁体26が全閉位置にあるとき(
図9(b)の状態)よりも、弁体26が全開位置から全閉手前位置までにあるとき(
図9(a)の状態)の方が小さくなる。したがって、
図9に示す実施例においても、弁体26をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキン28,30の摩耗を低減できる。
【0046】
また、上述の実施例では、弁箱20に対して弁体26を外嵌めするようにしたが、
図10~
図12に示す実施例のように、弁箱20に対して弁体26を内嵌めすることもできる。
図10~
図12を参照して簡単に説明すると、この実施例では、弁体26は、弁箱20の側壁20aの内径よりも少し小さい外径を有する円筒状(縦筒状)に形成され、弁箱20の側壁20aに対して上下方向にスライド可能に内嵌めされる。また、連結部材36は、横片36aおよび縦片36bに加えて、各縦片36bの下端部から内方に突出し、吐出口20dを通って弁箱20内まで延びる第2横片36dを有する。そして、この連結部材36の第2横片36dの先端部に、弁体26の上端部が固定される。
【0047】
さらに、弁箱20の側壁20aの内側面には、吐出口20dの上側において周方向に延びる第1環状溝20eが形成されると共に、吐出口20dの下側において周方向に延びる第2環状溝20fが形成される。第1環状溝20eおよび第2環状溝20fには、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30がそれぞれ装着される。環状パッキン28,30は、
図12に示すように、弁体26が全閉位置にあるときに、弁箱20の側壁20aの内側面と弁体26の外側面とによって横方向に圧縮されることで、弁箱20と弁体26との隙間を封止する。
【0048】
図10~
図12に示す実施例においても、弁体26が用水圧を受ける方向に対して直交する方向(上下方向)に移動するので、弁体26の作動トルクを低減できる。ただし、弁箱20に対して弁体26を内嵌め(内側摺動)にすると、連結部材36等の構造が少し複雑になるので、弁体26は、弁箱20に対して外嵌め(外側摺動)にする方が好ましい。
【0049】
また、上述の実施例では、弁箱20側に環状パッキン28,30を取り付けるようにしたが、
図13に示す実施例のように、弁体26側に環状パッキン28,30を取り付けることもできる。また、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30の一方を弁箱20側に取り付け、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30の他方を弁体26側に取り付けることもできる。
【0050】
図13に示す実施例では、弁体26の内側面には、弁体26が全閉位置にあるときに吐出口20dの上側および下側となる位置に、第1環状溝26dおよび第2環状溝26eが形成される。そして、第1環状溝26dおよび第2環状溝26eには、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30がそれぞれ装着される。なお、弁箱20に対して弁体26を内嵌めする場合には、弁体26の外側面に第1環状パッキン28および第2環状パッキン30を取り付けるとよい。
【0051】
さらに、上述の実施例では、弁箱20と弁体26とによって環状パッキン28,30を横方向に圧縮したが、
図14または
図15に示す実施例のように、環状パッキン28,30を上下方向に圧縮することもできる。
【0052】
図14に示す実施例では、弁箱20の側壁20aの外側面には、吐出口20dの上側において周方向に延びる鍔状の第1環状突起20gが形成されると共に、吐出口20dの下側において周方向に延びる鍔状の第2環状突起20hが形成される。第1環状突起20gおよび第2環状突起20hの下面には、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30がそれぞれ貼り付けられる。この実施例では、環状パッキン28,30として、断面T字形のTリングが用いられる。また、第2環状突起20hおよび第2環状パッキン30は、第1環状突起20gおよび第1環状パッキン28よりも弁箱20の軸心から近い位置に配置される。一方、弁体26の内径は、弁箱20に形成される第2環状突起20hの外径と略同じ大きさに形成され、弁体26の下端部には、内方に突出する第3環状突起26fが形成される。
【0053】
図14に示す実施例においては、弁体26が全閉位置にあるときに、第1環状パッキン28が第1環状突起20gの下面と弁体26の上端面とによって上下方向に圧縮されると共に、第2環状パッキン30が第2環状突起20hの下面と第3環状突起26fの上面とによって上下方向に圧縮されることで、弁箱20と弁体26との隙間が封止される。この際、第2環状パッキン30は、第1環状パッキン28よりも弁箱20の軸心から近い位置において圧縮され、環状パッキン28,30の圧縮率は、弁体26が全閉位置にあるとき(
図14(b)の状態)よりも、弁体26が全開位置から全閉手前位置までにあるとき(
図14(a)の状態)の方が小さいように設定される。したがって、
図14に示す実施例においても、弁体26をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキン28,30の摩耗を低減できる。
【0054】
また、
図15に示す実施例は、
図14に示す実施例とほぼ同じであるが、環状パッキン28,が弁体26側に取り付けられる。すなわち、
図15に示す実施例では、第1環状パッキン28が弁体26の上端面に貼り付けられると共に、第2環状パッキン30が第3環状突起26fの上面に貼り付けられる。
図15に示す実施例においても、弁体26をより低トルクで上下動させることができると共に、環状パッキン28,30の摩耗を低減できる。
【0055】
さらにまた、上述の実施例では、弁体26の閉時移動方向を上方向とし、弁体26の開時移動方向を下方向としたが、
図16に示す実施例のように、弁体26の閉時移動方向を下方向とし、弁体26の開時移動方向を上方向とすることもできる。また、第1環状パッキン28および第2環状パッキン30は、必ずしも同じ方向に圧縮される必要はなく、
図16に示す実施例のように、第1環状パッキン28と第2環状パッキン30とで圧縮方向を異ならせることもできる。
【0056】
簡単に説明すると、
図16に示す実施例では、弁箱20の側壁20aの外側面には、吐出口20dの上側において周方向に延びる第1環状溝20eが形成されると共に、吐出口20dの下側において周方向に延びる鍔状の第2環状突起20hが形成される。この第1環状溝20eには、第1環状パッキン28が装着され、第2環状突起20hの上面には、第2環状パッキン30が貼り付けられる。また、弁体26の閉時移動方向における後側(この実施例では上側)の第1環状パッキン28は、前側(この実施例では下側)の第2環状パッキン30よりも弁箱20の軸心から近い位置において配置される。
図16に示す実施例においては、弁体26が全閉位置にあるときに、第1環状パッキン28が弁箱20の側壁20aの外側面と弁体26の内側面とによって横方向に圧縮されると共に、第2環状パッキン30が第2環状突起20hの上面と弁体26の下端面とによって上下方向に圧縮されることで、弁箱20と弁体26との隙間が封止される。
【0057】
また、上述の実施例では、雌ねじ部材として軸受22を用い、弁体26と共に弁軸24が上下動するようにしたが、これに限定されない。
図17および
図18に示す実施例のように、弁軸24が上下動することなく回転することで、弁体26を上下動させることもできる。言い換えると、弁体26を上下動させるための送りねじ機構は、軸受22側ではなく、連結部材36側に設けることもできる。
【0058】
図17および
図18に示す実施例では、弁箱20の上方に設けられる連結部材36の横片36aの上面中央部には、内周面に雌ねじ70aが形成された雌ねじ部材70が固着される。雌ねじ部材70としては、フランジ付きナット等が用いられる。この雌ねじ部材70には、外周面に雄ねじ24aが形成された弁軸24が螺合される。また、この実施例の軸受22は、弁軸24の上端部を回転可能に支持する支持部材72を有している。すなわち、軸受22の中央部の孔は、ねじ溝を有さない貫通孔22bとされ、軸受22の中央上部には、玉軸受ユニット等の支持部材72が固着される。さらに、軸受22の上面には、中央部に孔74aを有する円環板状の嵩上げ部74が、支持部材72の周囲を覆うように設けられる。つまり、支持部材72は、嵩上げ部74の孔74a内に配置され、嵩上げ部74よりも上方に出っ張らないようにされる。なお、嵩上げ部74は、軸受22の上面に円環板状の部材を固着することで設けてもよいし、軸受22の中央上部に窪み部を形成することで設けてもよい。また、嵩上げ部74は、必ずしも設けられる必要はなく、省略することもできる。
【0059】
このような給水弁10では、
図17および
図18に示すように、弁軸24に対して軸線回りの回転力が加えられると、弁軸24の雄ねじ24aと雌ねじ部材70の雌ねじ70aとの送りねじ機構によって、弁軸24が上下動することなく、連結部材36および弁体26が上下動する。
【0060】
図17および
図18に示す実施例によれば、弁軸24を上下動させることなく、弁体26を上下動させることができるので、電動アクチュエータ12の回転軸56に上下動機能(または伸縮機能)を持たせる必要がなくなり、回転軸56の上下動を吸収するためのスペースも不要となる。したがって、この給水弁10を用いることで、電動アクチュエータ12(延いては給水装置14)を簡略化でき、より小型化および低価格化できる。
【0061】
また、上述の実施例では、環状パッキン28,30として、ОリングおよびTリングなどのスクイーズ型のパッキンを用いたが、スクイーズ型のパッキンよりも摺動(摩擦)抵抗の小さいリップ型のパッキンを用いることもできる。また、環状パッキン28,30の表面および弁体26の内側面(内嵌めの場合は外側面)の少なくとも一方にテフロン(登録商標)等の低摩擦材料をコーティングしたり、弁体26自体を低摩擦材料によって形成したりする等して、弁体26が上下動する際の摩擦抵抗を低減することもできる。
【0062】
さらに、上述の実施例では、弁箱20に2つの吐出口20dを形成しているが、吐出口20dの数および形状などは、適宜変更可能である。また、上述の実施例では、弁箱20の接続部20cは、受口形状を有しているが、弁箱20と用水パイプライン106の分岐管108との接続は、フランジ接続やねじ接続であってもよい。また、接続部20c(弁箱20の下端開口)は、横向きに開口していてもよい。さらに、弁箱20の側壁20aおよび弁体26は、必ずしも円筒状に形成される必要はなく、角筒状(箱状)に形成することもできる。
【0063】
さらに、上述の実施例では、給水弁10に電動アクチュエータ12を取り付けるようにしたが、給水弁10は必ずしも電動アクチュエータ12によって駆動される必要はなく、給水弁10は、手作業(人力手動)によって開閉されても構わない。手作業で給水弁10を開閉する場合には、弁軸24の上端部に、弁軸24を手動で回転させるためのハンドルを取り付けたり、レンチ等の工具を用いて弁軸24を回転させるためのナット等の嵌合部を設けたりするとよい。
【0064】
さらにまた、上述した弁箱20、弁体26および2つの環状パッキン28,30を含む給水弁10の基本構造は、産業用の給水弁または排水弁に適用することもできる。この際、弁箱20内の水の流れ方向は、上向き以外でもよく、弁体26の移動方向も上下方向以外でもよい。
【0065】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 …農業用給水弁
12 …電動アクチュエータ
14 …農業用給水装置
20 …弁箱
22 …軸受(雌ねじ部材)
24 …弁軸
26 …弁体
26a …第1テーパ面
26b …第2テーパ面
28 …第1環状パッキン
30 …第2環状パッキン
70 …雌ねじ部材