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特開2024-1901検査デバイス用基材、検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001901
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】検査デバイス用基材、検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20231228BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20231228BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20231228BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N35/02 F
C12Q1/68 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100746
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】文珠 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
【テーマコード(参考)】
2G058
4B063
【Fターム(参考)】
2G058CC17
2G058CC19
2G058DA07
4B063QA01
4B063QQ41
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できる検査デバイス用基材、前記検査デバイス用基材を用いた検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法の提供。
【解決手段】平均厚みが250μm以上350μm以下であり、かつ密度が0.25×10g/m以上0.40×10g/m以下である検査デバイス用基材である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均厚みが250μm以上350μm以下であり、かつ密度が0.25×10g/m以上0.40×10g/m以下である検査デバイス用基材。
【請求項2】
坪量が50g/m以上100g/m以下である、請求項1に記載の検査デバイス用基材。
【請求項3】
濾紙、上質紙、不織布、及びニトロセルロースから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から2のいずれかに記載の検査デバイス用基材。
【請求項4】
検査対象物における対象物質の存在の有無を検査する検査デバイスであって、
請求項1から2のいずれかに記載の検査デバイス用基材に疎水性材料を含浸させてなり、
前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを有することを特徴とする検査デバイス。
【請求項5】
前記露出部が、液受入部と、前記液受入部と連通した流路部と、前記流路部と連通した検出部とを有する、請求項4に記載の検査デバイス。
【請求項6】
前記検査デバイス用基材の両面に、前記疎水性部と、前記露出部とを有し、
前記検査デバイス用基材の両面で異なるデザインの流路が形成され、かつ前記流路が連通している三次元流路を有する、請求項4に記載の検査デバイス。
【請求項7】
前記疎水性材料の前記検査デバイス用基材に対する含浸量が15g/m以上20g/m以下である、請求項4に記載の検査デバイス。
【請求項8】
粒径1μm以上の液滴を含むエマルジョン検査用である、請求項4に記載の検査デバイス。
【請求項9】
ホモジナイズ未処理乳汁検査用である、請求項4に記載の検査デバイス。
【請求項10】
請求項1から2のいずれかに記載の検査デバイス用基材の両面から疎水性材料を含浸させて、前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを形成する含浸工程を含むことを特徴とする検査デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査デバイス用基材、検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、POCT(Point of Care Testing;臨床現場即時診断)を目的とした測定方法が急速に普及している。代表例としてイムノクロマト法と呼ばれる、サンドイッチELISA法の原理とクロマトグラフィーの原理を組み合わせた測定方法を利用した検査デバイス(以下、「検査チップ」、「検査装置」などと称することもある)が用いられている。
【0003】
このような検査デバイスとしては、例えば、シート状の検査チップであって、表面側の第1層と、裏面側の第2層とを備え、前記第1層及び前記第2層は隣接し、前記第1層又は前記第2層のいずれか一方が、液受入部Aを有し、前記第1層は、少なくとも、検出確認部Bを有し、前記第2層は、少なくとも、前記検出確認部Bに隣接する液流通部Dと、前記液流通部Dに接続された液流路Eとを有し、前記第1層が液受入部Aを有する場合、前記液受入部Aは、前記検出確認部Bから離隔し、被検査液を前記液受入部Aに滴下したときに当該被検査液が、毛細管現象により、前記液受入部A、前記液流路E及び前記液流通部Dをこの順で経由して、前記検出確認部Bまで流通するように構成されている検査チップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の検査チップは、基材に熱転写媒体を熱転写することにより流路などを形成することから、熱転写媒体として疎水性成分を含有する疎水性材料(インク)を保持し、基材(例えば濾紙)に含浸できるインク含浸量には限りがある。たとえ、インクの含浸性を向上させるためにインク含浸量を増加しても面方向への浸透も同時に生じるため、流路精度の劣化にもつながる。また、流路形成できる基材の平均厚みにも制限があり、より薄い基材の方が流路形成には好ましい。
一方、前記基材は、その取扱い上ある程度の強度(紙力)が必要となる。紙力を付与するためにはセルロース密度は高い方が好ましい。しかし、前記基材が薄くかつ高密度となると、検査対象物の流通性が低下し、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物には不向きとなる。特に大きな乳脂肪粒子を含む生乳では乳脂肪粒子が基材を構成する繊維間に留まり流路を閉塞してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-175970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できる検査デバイス用基材、前記検査デバイス用基材を用いた検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平均厚みが250μm以上350μm以下であり、かつ密度が0.25×10g/m以上0.40×10g/m以下である検査デバイス用基材である。
<2> 坪量が50g/m以上100g/m以下である、前記<1>に記載の検査デバイス用基材である。
<3> 濾紙、上質紙、不織布、及びニトロセルロースから選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<2>のいずれかに記載の検査デバイス用基材である。
<4> 検査対象物における対象物質の存在の有無を検査する検査デバイスであって、
前記<1>から<2>のいずれかに記載の検査デバイス用基材に疎水性材料を含浸させてなり、
前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを有することを特徴とする検査デバイスである。
<5> 前記露出部が、液受入部と、前記液受入部と連通した流路部と、前記流路部と連通した検出部とを有する、前記<4>に記載の検査デバイスである。
<6> 前記検査デバイス用基材の両面に、前記疎水性部と、前記露出部とを有し、
前記検査デバイス用基材の両面で異なるデザインの流路が形成され、かつ前記流路が連通している三次元流路を有する、前記<4>から<5>のいずれかに記載の検査デバイスである。
<7> 前記疎水性材料の前記検査デバイス用基材に対する含浸量が15g/m以上20g/m以下である、前記<4>から<6>のいずれかに記載の検査デバイスである。
<8> 粒径1μm以上の液滴を含むエマルジョン検査用である、前記<4>から<7>のいずれかに記載の検査デバイスである。
<9> ホモジナイズ未処理乳汁検査用である、前記<4>から<8>のいずれかに記載の検査デバイスである。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の検査デバイス用基材の両面から疎水性材料を含浸させて、前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを形成する含浸工程を含むことを特徴とする検査デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できる検査デバイス用基材、前記検査デバイス用基材を用いた検査デバイス、及び検査デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の検査デバイスの一例を示す概略図である。
図2図2は、熱転写媒体の一例を示す概略図である。
図3A図3Aは、流路側の流路パターンの一例を示す概略図である。
図3B図3Bは、検出部側の流路パターンの一例を示す概略図である。
図4A図4Aは、実施例1における流路への検査対象物の漏洩が生じておらず、バリア性が良好である状態を示す図である。
図4B図4Bは、比較例2における流路への検査対象物の漏洩が生じており、バリア性が不良である状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(検査デバイス用基材)
本発明の検査デバイス用基材は、検査対象物における対象物質の存在の有無を検査する検査デバイスに用いられる基材である。
本発明においては、検査デバイス用基材の平均厚み及び密度、更に坪量を最適化することにより、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立することができる。
【0011】
前記検査デバイス用基材の平均厚みは、250μm以上350μm以下であり、250μm以上300μm以下が好ましい。
ここで、前記平均厚みは、例えば、JIS P8118:2014「紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定することができる。
前記検査デバイス用基材の密度は0.25×10g/m以上0.40×10g/m以下であり、0.25×10g/m以上0.35×10g/m以下が好ましい。
前記密度は、検査デバイス用基材の坪量を検査デバイス用基材の平均厚みで除することにより算出することができる。
【0012】
前記検査デバイス用基材の坪量は、50g/m以上100g/m以下が好ましく、75g/m以上95g/m以下がより好ましい。
前記坪量は、JIS P8124:2011「紙及び板紙-坪量の測定方法」に基づき測定した値である。
【0013】
前記検査デバイス用基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メンブレン膜等の濾紙、普通紙、上質紙、水彩紙、ケント紙、合成紙、合成樹脂フィルム、コート層を有する専用紙、ニトロセルロース、布地、繊維製品などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メンブレン膜等の濾紙、上質紙、布地が好ましい。
前記布地としては、例えば、レーヨン、ベンベルグ、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ビニロン等の人造繊維、綿、絹等の天然繊維、又はこれらの混紡繊維、あるいはこれらの不織布などが挙げられる。
【0014】
前記検査デバイス用基材の形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート状、短冊状などが挙げられる。
前記検査デバイス用基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
本発明の検査デバイス用基材は、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立することができるので、以下に説明するように、本発明の検査デバイスの基材として好適に用いられる。
【0016】
(検査デバイス)
本発明の検査デバイスは、検査対象物における対象物質の存在の有無を検査する検査デバイスであり、本発明の検査デバイス用基材に疎水性材料を含浸させてなり、前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを有する。
【0017】
<検査対象物>
検査対象物としては、液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血液(血清、血漿)、リンパ液、尿、髄液、鼻孔液、唾液、又は検体抽出液などが挙げられる。前記検査対象物としては、人間を含むあらゆる動物が対象となる。
【0018】
<対象物質>
対象物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、核酸、タンパク質、アミノ酸、糖質、脂質、腫瘍マーカー、炎症マーカー、酵素、ホルモン、シグナル伝達物質などが挙げられる。
【0019】
前記細胞としては、例えば、血中循環腫瘍細胞(CTC)、赤血球、白血球などが挙げられる。
前記核酸としては、例えば、circulating normal DNA、circulating tumor DNA、non-coding RNA(miRNA、transfer RNA、ribosomal RNA等)などが挙げられる。
前記タンパク質としては、例えば、アルブミン、ヘモグロビン、γ-グロブリン、フィブリノーゲン、アンチトロンビンIII、トランスフェリン、セルロプラスミン、成長因子を含むサイトカイン、ケモカインなどが挙げられる。
前記糖質としては、例えば、ブドウ糖、1.5AG(1.5アンヒドログリシトール)などが挙げられる。
前記脂質としては、例えば、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどが挙げられる。
【0020】
前記腫瘍マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9(シリアルルイスA糖類)、前立腺特異抗原(PSA)、CA125(糖タンパク)、SSC(扁平上皮癌関連抗原)などが挙げられる。
前記炎症マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C反応性タンパク質(CRP)などが挙げられる。
前記酵素としては、例えば、γ-GTP、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、アミラーゼなどが挙げられる。
前記ホルモンとしては、例えば、副腎皮質刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、プロラクトン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、アルドステロン、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、成長ホルモンなどが挙げられる。
【0021】
本発明の検査デバイスは、疎水性部と、露出部とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0022】
<疎水性部>
疎水性部は、疎水性材料が含浸した部である。
前記疎水性部は、含浸された疎水性材料により疎水性を有しており、毛細管現象による検査対象物の流通が発現されない。
【0023】
<露出部>
露出部は、疎水性材料が含浸せず検査デバイス用基材が露出した部である。
前記露出部は、液受入部と、前記液受入部と連通した流路部と、前記流路部と連通した検出部とを有することが好ましい。前記液受入部に付与する液は、検査対象物である。
前記液受入部は、検査対象物が滴下される部位である。
前記検出部は、液受入部に滴下された検査対象物中に対象物質が存在するか否かを確認する部位である。
前記露出部である液受入部、流路部、及び検出部は、毛細管現象により検査対象物の流通が発現される。
【0024】
前記検査デバイス用基材の両面に、前記疎水性部と、前記露出部とを有することが好ましい。これにより、基材中に三次元流路を形成することができる。
前記検査デバイス用基材の両面で異なるデザインの流路が形成され、かつ前記流路が連通している三次元流路を有することが好ましい。
前記疎水性材料の前記検査デバイス用基材に対する含浸量は15g/m以上20g/m以下が好ましく、15g/m以上18g/m以下がより好ましい。
前記疎水性材料の含浸量が15g/m以上20g/m以下であると、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できる。
前記疎水性材料の含浸量が20g/mを超えると、流路内の厚み方向だけでなく面方向にも疎水性材料が浸透して流路を塞いでしまうことがある。
【0025】
前記疎水性材料の検査デバイス用基材への含浸は、例えば、熱転写媒体の疎水性材料を含有する転写層を検査デバイス用基材に接触させて熱転写することにより行われることが好ましい。
【0026】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護部材などが挙げられる。
【0027】
前記保護部材は、検査デバイスに手が触れたときの汚染を防ぐ目的の部材である。
前記保護部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、検査デバイスの全体を覆うハウジング、流路等の露出部上に設けられる保護フィルムなどが挙げられる。
前記保護フィルムの材料としては、検査デバイスから容易に剥がすことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン紙、ポリプロピレン等のポリオレフィンシート、ポリテトラフルオロエチレンシートなどが挙げられる。
【0028】
ここで、図1は、本発明の検査デバイスの一例を示す概略図である。
図1は検査デバイスを模式的に分解した図であり、図1の左側に示すように、検査デバイス10は、検査デバイス用基材1と、疎水性材料からなる第1層2と、疎水性材料からなる第2層3とを有する。また、検査デバイス10は、検査デバイス用基材1に対して両面から第1層1と第2層3が含浸した構成を有する。
【0029】
検査デバイス10は、液受入部4と、前記液受入部と連通した流路部6と、前記流路部と連通した検出部5とを有し、検査対象物を液受入部4に滴下すると、検査対象物が毛細管現象により、液受入部4、流路部6、検出部5の順に流通するように構成されている。
【0030】
液受入部4の平面視の形状は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ
、例えば、円形であってもよく、また、楕円形、矩形等であってもよい。
検出部5の平面視の形状は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、円形であってもよく、また、楕円形、矩形等であってもよい。
【0031】
(検査デバイスの製造方法)
本発明の検査デバイスの製造方法は、含浸工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0032】
<含浸工程>
前記含浸工程は、本発明の検査デバイス用基材の両面から疎水性材料を含浸させて、前記疎水性材料が含浸した疎水性部と、前記疎水性材料が含浸せず前記検査デバイス用基材が露出した露出部とを形成する工程である。
【0033】
前記含浸工程は、熱転写媒体を用い、熱ラミネーターにより行われる。例えば、検査デバイス用基材の表裏の両面に流路側パターンを抜き取った熱転写媒体と反対面に検出部側パターンを抜き取った熱転写媒体を固定し、所定の温度に設定した熱ラミネーターに通すことにより、表裏から異なる形状に抜き取られた熱転写媒体上の転写層に含まれる疎水性材料を基材中に含浸させ、基材内に三次元形状の流路を形成することができる。
【0034】
-熱転写媒体-
熱転写媒体は、支持体と、該支持体上に疎水性材料を含有する転写層を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0035】
--支持体--
支持体としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の形状としては、例えば、リボン状、フィルム状などが挙げられる。
前記支持体の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記支持体の大きさとしては、検査デバイスの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記支持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、セルロースアセテートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
支持体は、特に制限はなく、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
支持体の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0037】
--転写層--
前記転写層は疎水性材料を含有し、前記支持体上に前記疎水性材料を付与することにより形成される。
前記疎水性材料は、検査デバイス用基材に含浸することができ、かつ検査デバイス用基材における毛細管現象を阻害するものであれば、特に限定されず、疎水性成分を含有し、バインダー樹脂を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0038】
---疎水性成分---
前記疎水性成分としては、例えば、ワックスなどが挙げられる。
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蜜ロウ、カルナバワックス、鯨ロウ、木ロウ、キャンデリラワックス、米ぬかロウ、モンタンワックス等の天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸;ステアリンアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;ソルビタンの脂肪酸エステル等のエステル類;ステアリンアミド、オレインアミド等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
---バインダー樹脂---
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、部分ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸、イソブチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
---その他の成分---
前記その他の成分としては、例えば、着色剤、粘度調整剤、分散剤、分散助剤、フィラーなどが挙げられる。
【0041】
前記転写層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホットメルト塗工法、前記ワックス及び前記バインダー樹脂を溶剤に分散させた塗布液を塗布する方法などが挙げられる。
なお、前記疎水性材料は、転写層を形成するに当たり、加熱して溶融させておくことが好ましい。
【0042】
前記支持体上の転写層への流路パターンの形成(印刷)は、特に限定されないが、例えば、熱転写プリンタを好適に用いることができる。そして、第1の印刷工程では、第1の支持体上の第1の転写層を用い、検査デバイスの第1の層の反転デザインとなるように第1の支持体上の第1の転写層に印刷する。また、第2の印刷工程では、第2の支持体上の第2の転写層を用い、検査デバイスの第2の層の反転デザインとなるように第2の支持体上の第2の転写層に印刷する。
なお、印刷するデザインは、例えば、パソコン等によりあらかじめ作成し、そのデータを印刷装置に取り込むことができる。また、検査デバイス用基材の表面及び裏面の印刷は別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。
前記熱転写プリンタとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリアルサーマルヘッド、ライン型サーマルヘッド等を有するサーマルプリンタなどが挙げられる。
【0043】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、搬送工程などが挙げられる。
【0044】
本発明の検査デバイスは、粒径1μm以上の液滴を含むエマルジョン検査用であることが好ましい。粒径1μm以上の液滴としては、例えば、乳脂肪粒子などが挙げられる。
また、本発明の検査デバイスは、ホモジナイズ未処理乳汁検査用であることが好ましい。具体的には、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳などが挙げられる。
【0045】
本発明の検査デバイス用基材を用いた本発明の検査デバイスは、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できるので、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳を閉塞することなく検査可能であり、乳脂肪粒子に含まれるプロゲステロン等のホルモン成分の検出も可能となり、妊娠検査薬などに好適に用いることができる。
【実施例0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1~4及び比較例1~5)
<検査デバイスの製造>
-疎水性材料の調製-
疎水性成分としてのパラフィンワックス(日本精鑞株式会社製、Praffin Wax-135)72質量部、疎水性成分としての合成ワックス(三菱ケミカル株式会社製、「ダイヤカルナ(登録商標)30」)18質量部、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(東ソー株式会社製、「ウルトラセン 722」)11.25質量部、及び着色剤としてのカーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、「MA-100」)1.8質量部を配合し、100℃で溶融混合した。その際、サンドミルを用いて各成分の分散を行った。以上により、疎水性材料を調製した。
得られた疎水性材料について、140℃、3,000/sの条件でティー・エイ・インスツルメント社製レオメーターAR-G2を用いて粘度を測定したところ、23mPa・sであった。
【0048】
-熱転写媒体の作製-
次に、120℃に保持したホットプレート上に、支持体(東レ株式会社製、ルミラー6C F531、PETフィルム、厚み6μm)を配置した。次いで、支持体上に、120℃で溶融状態を維持した上述の疎水性材料をメイヤーバー(三井電気精機株式会社製)により、平均厚みが5μm~12μmとなるように塗布し、転写層を形成し、図2に示す構成の熱転写媒体20を作製した。図2中11は支持体、12は転写層である。
【0049】
-流路の形成(印刷)-
次に、熱転写プリンタ(サトーホールディングス株式会社製、レスプリR412v-ex)を用い、表1に示す基材の流路(表)側は図3Aに示す直径4mmの円が中心距離6mm間隔に4つ配置され、これらの円が2.5mm幅の流路で接続されたパターン、検出部(裏)側は図3Bに示す流路の最上部と最下部の円部が同一径で貫通するパターンを、それぞれ上記熱転写プリンタにより表1に示す基材上に印刷することにより、熱転写媒体に印刷部の疎水性材料が抜き取られた流路パターンを形成した。
【0050】
-基材中への流路の形成-
基材の一の面に流路側パターンを抜き取った熱転写媒体と、基材の反対面に検出部側パターンを抜き取った熱転写媒体を固定し、下記の条件の熱ラミネーターに通すことにより、表裏から異なる形状に抜き取られた熱転写媒体の疎水性材料を基材中に含浸させ、基材内に三次元形状の流路を形成した。
【0051】
-熱ラミネート条件-
熱ラミネーターとしてGBC社製、GL535MLを用いて熱ラミネートを行った。
(1)基材への疎水性材料の転写:温度85℃~120℃にてライン速度10mm/secにて熱ラミネートした。
(2)基材への疎水性材料の含浸:温度85℃~120℃にてライン速度5mm/secにて熱ラミネートした。
【0052】
-基材への疎水性材料の含浸量の異なる流路の形成-
表1に示すように、流路側パターンを形成するために用いる熱転写媒体の疎水性材料の重量(厚み)と、検出部側パターンを形成するために用いる熱転写媒体の疎水性材料の重量(厚み)との組み合わせにより疎水性材料の含浸量を調整した流路をそれぞれ形成した。
以上により、実施例1~4及び比較例1~5の検査デバイスを作製した。
【0053】
次に、作製した各検査デバイスについて、以下のようにして、諸性能を評価した。結果を表2に示した。
【0054】
<バリア性>
作製した各検査デバイスにおいて、アスクル株式会社製の蛍光サインペンより抽出した水性蛍光インクを蒸留水(検査対象物)に溶かした溶液を液受入部にスポイトで16μL滴下し、流路に通して、流路からの溶液の漏れの有無を、UVランプ(株式会社コンテック製、BL-LED3435-UV)を用いて目視観察し、下記の基準で判定した。
[評価基準]
〇:流路からの漏れがなく、バリア性が良好である
△:流路からの漏れが僅かに生じるが、実用上問題ないレベルである
×:流路から漏れが生じ、バリア性が不良である
濾紙中への疎水性材料の含浸が充分でない場合、流路外に検査対象物の漏洩が生じる。流路外に検査対象物が漏洩した程度を観察した。なお、図4Aは、実施例1の流路への検査対象物の漏洩が生じていないバリア性が良好である状態を示す。図4Bは、比較例2の流路への検査対象物の漏洩が生じており、バリア性が不良である状態を示す。
【0055】
<液流通性>
各検査デバイスについて、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳及び上記水性蛍光インクを蒸留水に溶解した溶液を液受入部にスポイトで16μL滴下してから、検出部に到達するまでの時間をストップウォッチで測定した。3分(180秒)までに検出部に到達しない場合は「閉塞」とした。なお、評価数はn=3、流通時間はn=3の平均値、「閉塞」がn=3中に1つでも確認された場合は「閉塞」と判定した
【0056】
<紙力>
作製した各検査デバイスを、カッター(オルファ株式会社製、ハイパーAL型)を用いて所定の形状に裁断できるか否かを下記の基準で評価した。
[評価基準]
〇:カッターで容易に裁断できる
〇△:カッターによる裁断が可能である
△:カッターによる裁断が困難である
×:カッターによる裁断できない(繊維の凝集力が弱く、破れる)
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
-基材-
・サンプル1~サンプル4:表1に示す平均厚み、坪量、及び密度となるように作製した濾紙
・Whatman #40、#41、#42:市販の定量濾紙、メルク社製
・Advantec No.60:市販の粘調液用濾紙、アドバンテック東洋株式会社製
【0060】
表1及び表2の結果から、実施例1~3は、基材の平均厚みが250μm以上350μm以下であり、かつ密度が0.25×10g/m以上0.40×10g/m以下を満たしており、液流通性、バリア性、及び紙力がいずれも良好であることがわかった。
実施例4は、疎水性材料の含浸量が15g/m以上20g/m以下を満たしていないため、実施例1~3に比べてバリア性及び水の流通性がやや低下することがわかった。
これに対して、比較例1は、基材の平均厚みが薄いため、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳で流路が閉塞してしまった。
比較例2は、基材の平均厚みが厚く、密度が低いため、バリア性及び水の流通性が低下することがわかった。
比較例3は、基材の平均厚みが薄く、密度が低いため、水及びホモジナイズ加工されていない牛の生乳で流路が閉塞してしまい、紙力が低いことがわかった。
比較例4及び5は、基材の平均厚みが薄く、密度が高いため、流通時間が大幅に遅くなってしまい、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳で流路が閉塞してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の検査デバイス用基材を用いた本発明の検査デバイスは、流路形成性と、高粘度な検査対象物又は懸濁した検査対象物の流通性とを両立できるので、ホモジナイズ加工されていない牛の生乳を閉塞することなく検査可能であり、乳脂肪粒子に含まれるプロゲステロン等のホルモン成分の検出が可能となり、妊娠検査薬などに応用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 検査デバイス用基材
2 第1層
3 第2層
4 液受入部
5 検出部
6 流路部
10 検査デバイス
11 支持体
12 転写層
20 熱転写媒体

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B