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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019015
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】接続機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01R4/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111685
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2022119537
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】古田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】新内 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】寺口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 康夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 志乃
(57)【要約】
【課題】電線が結線された状態における操作部の不要な変位を抑制する。
【解決手段】接続機器1では、弾性部材4は、結線状態において復元力により電線91を端子部31に押し付けて、電線91を弾性部材4と端子部31との間に挟持する。操作部5は、弾性部材4に力を付与して結線状態よりも大きく弾性変形した状態である非結線状態にて維持する。接続機器1では、端子部31と非結線状態の弾性部材4との間に電線91が挿入された状態で、操作部5による弾性部材4の状態維持が解除されると、弾性部材4の復元力により、操作部5が所定の退避位置へと移動されて、退避位置からの移動が制限された状態にて保持機構20により保持される。また、弾性部材4が、非結線状態から結線状態へと移行して、電線91を端子部31に押し付ける。これにより、電線91が結線された状態における操作部5の不要な変位を抑制することができる。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続される接続機器であって、
ケースと、
前記ケースに固定された導電性の端子部と、
前記ケースに取り付けられ、結線状態において復元力により電線を前記端子部に押し付けて挟持する弾性部材と、
前記弾性部材に力を付与して前記結線状態よりも大きく弾性変形した状態である非結線状態にて維持する操作部と、
を備え、
前記端子部と前記非結線状態の前記弾性部材との間に前記電線が挿入された状態で、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除されると、前記弾性部材の前記復元力により、前記操作部が所定の退避位置へと移動されて前記退避位置からの移動が制限された状態にて保持機構により保持されるとともに、前記弾性部材が前記非結線状態から前記結線状態へと移行して前記電線を前記端子部に押しつけることを特徴とする接続機器。
【請求項2】
請求項1に記載の接続機器であって、
前記退避位置にて保持される前記操作部に対して、前記結線状態の前記弾性部材から前記復元力は付与されないことを特徴とする接続機器。
【請求項3】
請求項2に記載の接続機器であって、
前記退避位置にて保持される前記操作部は、前記結線状態の前記弾性部材から離間していることを特徴とする接続機器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記ケースは、前記退避位置に位置する前記操作部に接触する操作保持部を備え、
前記操作部は、
操作部本体と、
前記操作部本体に接続されるとともに前記退避位置にて前記操作保持部と接触する被保持部と、
を備え、
前記保持機構は、前記操作保持部と前記被保持部とにより構成され、
前記被保持部は、弾性変形可能な弾性支持部を介して前記操作部本体により支持され、または、前記操作保持部は、前記ケースのうち前記操作保持部近傍の部位により弾性変形可能な弾性支持部を介して支持されることを特徴とする接続機器。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記操作部の移動に伴って移動するとともに前記操作部の位置を示す視認可能な識別部をさらに備えることを特徴とする接続機器。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記操作部は、
前記弾性部材の前記復元力が作用する第1部位と、
前記非結線状態において前記復元力に対する反力が生じる第2部位と、
を備え、
前記弾性部材が前記非結線状態であるとき、前記復元力のベクトルである復元力ベクトルが前記第1部位と前記第2部位とを結ぶ直線である基準線と略重なって前記復元力と前記反力とが釣り合うことにより、前記操作部の位置が維持されて前記弾性部材の状態が前記非結線状態にて維持されることを特徴とする接続機器。
【請求項7】
請求項6に記載の接続機器であって、
前記操作部は、前記第1部位および前記第2部位とは異なる第3部位をさらに備え、
前記端子部と前記非結線状態の前記弾性部材との間に前記電線が挿入された状態で、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除されると、前記操作部において前記反力が生じる部位が前記第2部位から前記第3部位へと移行し、前記復元力と前記反力との釣り合いが崩れることにより、前記操作部が前記退避位置へと移動されることを特徴とする接続機器。
【請求項8】
請求項7に記載の接続機器であって、
前記操作部は、前記ケースに設けられた回転軸の周りを回転するカム部を備え、
前記カム部は、前記回転軸が挿入されるとともに前記回転軸の外径よりも内径が大きい軸受けを備え、
前記弾性部材の前記非結線状態への移行時には、前記カム部が前記回転軸の周りを回転することにより、前記第1部位と前記回転軸との間の距離が増大して前記弾性部材が撓み、前記弾性部材の前記復元力により、前記第2部位が前記ケースに設けられた支持部に対して押圧されるとともに、前記復元力ベクトルが前記基準線と略重なることにより、前記操作部の回転位置が維持されて前記弾性部材の状態が前記非結線状態にて維持され、
前記電線を結線する際には、前記カム部を前記支持部に対して変位させ、前記第2部位の前記支持部に対する押圧を解除することにより、前記軸受けの一部である前記第3部位が前記回転軸に対して押圧され、前記操作部において前記反力が生じる部位が前記第2部位から前記第3部位へと移行することを特徴とする接続機器。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記電線を結線する際に、前記電線から前記操作部に力が付与されることにより、前記操作部の位置が変更され、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除されることを特徴とする接続機器。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記弾性部材は板バネであることを特徴とする接続機器。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記弾性部材を前記非結線状態にて維持する際の前記操作部の位置を仮止め位置として、
前記操作部は、前記操作部の移動経路に沿って前記退避位置を挟んで前記仮止め位置の反対側に位置するもう1つの退避位置へと移動可能であり、前記もう1つの退避位置からの移動が制限された状態にて保持されることを特徴とする接続機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が接続される接続機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御盤等において電線が接続される接続機器として、いわゆるプッシュイン式の接続機器が利用されている。当該接続機器では、ケースの挿入穴に電線を差し込み、ケース内に設けられた板バネにより当該電線を導通端子に押し付けて電気的に接続する。
【0003】
例えば、特許文献1のプラグでは、作業者がリリースボタンを押し込んでベースハウジングの凹部に係止させることにより、リリースボタンに押された板バネが弾性変形し、電線の挿入が可能な状態にて板バネの形状が維持される。電線がベースハウジングに挿入されると、作業者がリリースボタンを引き上げてベースハウジングの他の凹部に係止させる。これにより、板バネが弾性復帰し、電線が板バネと端子金具との間に挟持される。
【0004】
当該プラグに電線を接続する際には、作業者は、一方の手で電線をベースハウジングに挿入した状態で保持しつつ、他方の手でリリースボタンを係止位置まで引き上げる必要がある。このため、電線の接続動作が繁雑になり、接続作業に要する時間を短縮することが難しい。また、当該プラグでは、片手で接続作業を行うことは困難である。
【0005】
一方、特許文献2の接続機器では、操作部をケースの内部へと押し込むことにより、操作部に接触する板バネを非結線状態まで撓ませ、この状態で操作部をケースの段差部に係止することにより、板バネの状態が非結線状態にて維持される。また、当該接続機器では、ケースに挿入された電線により状態解除部を押して回転させることにより、状態解除部が上記操作部をケースの段差部から押し出す。これにより、操作部のケースに対する係止が解除され、板バネが復元して電線を端子部との間で挟持する。すなわち、当該接続機器では、ケースに挿入した電線により操作部を変位させるだけで電線の接続が実現される。このように、当該接続機器では、上述のような電線の自動結線を実現することにより、電線の接続作業が容易とされる。特許文献3の接続機器においても、ケースに挿入した電線により操作部を押して回転させることにより、電線の自動結線が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-012294号公報
【特許文献2】国際公開第2018/221312号
【特許文献3】国際公開第2022/014526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2の接続機器では、電線が結線された状態において、操作部はケース内にて変位可能な状態である。このため、操作部がケース内にてがたつくおそれがある。また、結線後の操作部はバネに接触しており、バネの位置は、端子部との間に挟まれた電線の太さによって変わるため、操作部の位置も電線の太さによって変わる。このため、操作部が視認可能な識別部を備えている場合、電線の太さによって識別部の視認性が悪くなることも考えられる。特許文献3においても同様である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電線が結線された状態における操作部の不要な変位を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、電線が接続される接続機器であって、ケースと、前記ケースに固定された導電性の端子部と、前記ケースに取り付けられ、結線状態において復元力により電線を前記端子部に押し付けて挟持する弾性部材と、前記弾性部材に力を付与して前記結線状態よりも大きく弾性変形した状態である非結線状態にて維持する操作部と、を備える。前記端子部と前記非結線状態の前記弾性部材との間に前記電線が挿入された状態で、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除されると、前記弾性部材の前記復元力により、前記操作部が所定の退避位置へと移動されて前記退避位置からの移動が制限された状態にて保持機構により保持されるとともに、前記弾性部材が前記非結線状態から前記結線状態へと移行して前記電線を前記端子部に押しつける。
【0010】
本発明の態様2は、態様1の接続機器であって、前記退避位置にて保持される前記操作部に対して、前記結線状態の前記弾性部材から前記復元力は付与されない。
【0011】
本発明の態様3は、態様2の接続機器であって、前記退避位置にて保持される前記操作部は、前記結線状態の前記弾性部材から離間している。
【0012】
本発明の態様4は、態様1ないし3のいずれか1つの接続機器であって、前記ケースは、前記退避位置に位置する前記操作部に接触する操作保持部を備える。前記操作部は、操作部本体と、前記操作部本体に接続されるとともに前記退避位置にて前記操作保持部と接触する被保持部と、を備える。前記保持機構は、前記操作保持部と前記被保持部とにより構成される。前記被保持部は、弾性変形可能な弾性支持部を介して前記操作部本体により支持され、または、前記操作保持部は、前記ケースのうち前記操作保持部近傍の部位により弾性変形可能な弾性支持部を介して支持される。
【0013】
本発明の態様5は、態様1ないし3のいずれか1つ(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の接続機器であって、前記接続機器は、前記操作部の移動に伴って移動するとともに前記操作部の位置を示す視認可能な識別部をさらに備える。
【0014】
本発明の態様6は、態様1ないし3のいずれか1つ(態様1ないし5のいずれか1つ、であってもよい。)の接続機器であって、前記操作部は、前記弾性部材の前記復元力が作用する第1部位と、前記非結線状態において前記復元力に対する反力が生じる第2部位と、を備える。前記弾性部材が前記非結線状態であるとき、前記復元力のベクトルである復元力ベクトルが前記第1部位と前記第2部位とを結ぶ直線である基準線と略重なって前記復元力と前記反力とが釣り合うことにより、前記操作部の位置が維持されて前記弾性部材の状態が前記非結線状態にて維持される。
【0015】
本発明の態様7は、態様6の接続機器であって、前記操作部は、前記第1部位および前記第2部位とは異なる第3部位をさらに備える。前記端子部と前記非結線状態の前記弾性部材との間に前記電線が挿入された状態で、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除されると、前記操作部において前記反力が生じる部位が前記第2部位から前記第3部位へと移行し、前記復元力と前記反力との釣り合いが崩れることにより、前記操作部が前記退避位置へと移動される。
【0016】
本発明の態様8は、態様7の接続機器であって、前記操作部は、前記ケースに設けられた回転軸の周りを回転するカム部を備える。前記カム部は、前記回転軸が挿入されるとともに前記回転軸の外径よりも内径が大きい軸受けを備える。前記弾性部材の前記非結線状態への移行時には、前記カム部が前記回転軸の周りを回転することにより、前記第1部位と前記回転軸との間の距離が増大して前記弾性部材が撓み、前記弾性部材の前記復元力により、前記第2部位が前記ケースに設けられた支持部に対して押圧されるとともに、前記復元力ベクトルが前記基準線と略重なることにより、前記操作部の回転位置が維持されて前記弾性部材の状態が前記非結線状態にて維持される。前記電線を結線する際には、前記カム部を前記支持部に対して変位させ、前記第2部位の前記支持部に対する押圧を解除することにより、前記軸受けの一部である前記第3部位が前記回転軸に対して押圧され、前記操作部において前記反力が生じる部位が前記第2部位から前記第3部位へと移行する。
【0017】
本発明の態様9は、態様1ないし3のいずれか1つ(態様1ないし8のいずれか1つ、であってもよい。)の接続機器であって、前記電線を結線する際に、前記電線から前記操作部に力が付与されることにより、前記操作部の位置が変更され、前記操作部による前記弾性部材の状態維持が解除される。
【0018】
本発明の態様10は、態様1ないし3のいずれか1つ(態様1ないし9のいずれか1つ、であってもよい。)の接続機器であって、前記弾性部材は板バネである。
【0019】
本発明の態様11は、態様1ないし3のいずれか1つ(態様1ないし10のいずれか1つ、であってもよい。)の接続機器であって、前記弾性部材を前記非結線状態にて維持する際の前記操作部の位置を仮止め位置として、前記操作部は、前記操作部の移動経路に沿って前記退避位置を挟んで前記仮止め位置の反対側に位置するもう1つの退避位置へと移動可能であり、前記もう1つの退避位置からの移動が制限された状態にて保持される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、電線が結線された状態における操作部の不要な変位を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一の実施の形態に係る接続機器の正面図である。
図2】接続機器の縦断面図である。
図3】ケースの正面図である。
図4】端子金具の正面図である。
図5】弾性部材の正面図である。
図6】操作部の正面図である。
図7】接続機器の縦断面図である。
図8】接続機器の縦断面図である。
図9】接続機器の縦断面図である。
図10】操作部の変位量と回転モーメントとの関係を示す図である。
図11】接続機器の縦断面図である。
図12】接続機器の縦断面図である。
図13】接続機器の縦断面図である。
図14】接続機器の縦断面図である。
図15】接続機器の縦断面図である。
図16】操作部の変位量と回転モーメントとの関係を示す図である。
図17】接続機器の縦断面図である。
図18】接続機器の縦断面図である。
図19】接続機器の縦断面図である。
図20】接続機器の縦断面図である。
図21】接続機器の縦断面図である。
図22】接続機器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る接続機器1の正面図である。図1では、接続機器1の手前側の蓋部の図示を省略し、接続機器1の内部構造を示している。接続機器1は、電線が接続されるプッシュイン式の接続機器である。図1では、電線が接続機器1に挿入されていない状態を示す。接続機器1は、例えば、制御盤の端子台等に利用される。
【0023】
以下の説明では、図1中の上下方向および左右方向を、単に「上下方向」および「左右方向」とも呼ぶ。また、図1において紙面に垂直な方向を「厚さ方向」とも呼ぶ。当該上下方向、左右方向および厚さ方向は、接続機器1が使用される際の取付方向とは必ずしも一致する必要はない。また、当該上下方向は、重力方向とも必ずしも一致する必要はない。
【0024】
図2は、接続機器1の厚さ方向の中央よりも手前側における断面を示す縦断面図である。図2では、断面よりも奥側の構成についても併せて図示している。後述する他の縦断面図においても同様である。
【0025】
接続機器1は、ケース2と、端子金具3と、弾性部材4と、操作部5とを備える。図3は、ケース2の正面図である。図4は、端子金具3の正面図である。図5は、弾性部材4の正面図である。図6は、操作部5の正面図である。
【0026】
ケース2は、厚さ方向の手前側に向かって開口する略直方体状の箱状部材である。ケース2は、端子金具3、弾性部材4および操作部5を内部に収容する。ケース2は、例えば、樹脂製の部材である。ケース2には、電線が挿入可能な挿入穴21が設けられる。また、ケース2には、操作部5を操作するための操作穴27が設けられる。本実施の形態では、操作穴27は、ケース2の上面に配置される。また、挿入穴21は、ケース2の右側面に配置される。ケース2の右側面には、上下方向に延びるスリット29も設けられる。スリット29は、挿入穴21から離間して挿入穴21の上側に配置される。
【0027】
端子金具3は、ケース2に固定された導電性の部材であり、例えば、金属板を加工することにより形成される。端子金具3は、端子部31と、解除部32と、外部端子33と、解除接続部34と、金具本体35と、を備える。金具本体35は、厚さ方向に略垂直に広がる略平板状の部位であり、正面視における形状は略矩形である。金具本体35は、端子部31、解除部32、外部端子33および解除接続部34を接続して一繋がりの部材とする接続部である。
【0028】
端子部31は、金具本体35の上端部に沿って伸びる略平板状の部位であり、当該上端部から厚さ方向の奥側に向かって突出する。本実施の形態では、端子部31は、右方に向かうに従って少し上方に向かうように傾斜している。後述するように、電線は、端子部31と弾性部材4との間に挟持される。
【0029】
解除部32は、金具本体35の左側にて略上下方向に延びるとともに、両主面を左右方向に向けて配置される略平板状の部位である。解除部32は、上下方向の中央近傍にて屈曲している。解除部32の下部は、上下方向に略平行に延びる。解除部32の上部は、解除部32の下部の上端部から上方に向かうに従って右方に向かう傾斜部である。
【0030】
解除部32は、金具本体35の正面視における左上の角部に、解除接続部34を介して接続される。解除接続部34は、金具本体35の当該角部から上方へと延び、さらに左方へと延びる帯状または棒状の部位である。解除接続部34は、解除部32の上下方向の中央近傍にて解除部32に接続される。解除接続部34のうち解除部32と接続される部位は細いため、比較的小さい力で容易に変形する。例えば、解除部32の上部に左向きの力が加えられると、解除部32は、解除接続部34との接続部位を略中心として反時計回り方向に少し回転し、解除部32の下部が右方へと変位する。
【0031】
外部端子33は、金具本体35の下端部から下方に突出する略帯状または略棒状の部位である。本実施の形態では、2本の外部端子33が、金具本体35の下端部から下方へと延びる。2本の外部端子33は、例えば、ハンダ付け等により制御盤の基板に固定されて電気的に接続される。これにより、接続機器1が当該基板に実装される。
【0032】
弾性部材4は、ケース2に取り付けられた弾性変形可能な部材である。本実施の形態では、弾性部材4は、略帯状の板バネである。弾性部材4は、導電材料により形成されてもよく、樹脂等の絶縁材料により形成されてもよい。本実施の形態では、弾性部材4は、導電性の金属により形成される。弾性部材4は、例えば、長手方向の中央部にて略L字状、略V字状または略U字状に折り曲げられた形状を有する。以下の説明では、弾性部材4の当該折り曲げられている部位を、「屈曲部41」と呼ぶ。また、弾性部材4において屈曲部41から左方へと延びる2つの部位のうち、下側に位置する部位を「固定部42」と呼び、固定部42よりも上側に位置する部位を「可動部43」と呼ぶ。
【0033】
ケース2には、厚さ方向に延びる略円柱状の弾性部材支持部22が設けられており、弾性部材支持部22の周囲がケース2の他の部位により周方向において部分的に囲まれることにより、溝部が形成されている。当該溝部には弾性部材4の屈曲部41が挿入されており、これにより、弾性部材4がケース2に取り付けられる。固定部42の下面はケース2に接触しているため、固定部42の下方に対する移動は制限されている。したがって、固定部42はケース2に実質的に固定されている。
【0034】
可動部43は、弾性部材支持部22の上側において、屈曲部41から左斜め上に向かって延びる。可動部43の先端部(すなわち、図2中の左端部)は、端子部31の左右方向の中央よりも左側の部位に下側から接触している。図2に示す状態では、可動部43は、操作部5の下部の左側に位置し、当該下部に近接している。図2に示す例では、可動部43は操作部5から離間しており、可動部43と操作部5との間に間隙が設けられている。なお、可動部43は、図2に示す状態において操作部5に接触していてもよい。可動部43は、後述するように、操作部5によって下方へと押されることにより、弾性部材支持部22を支点として弾性変形して下向きに撓み、端子部31から下方へと離間する。また、可動部43に対する下向きの押圧力がなくなると、可動部43は弾性部材4の復元力により元の状態に戻る(すなわち、弾性復帰する)。
【0035】
図2に示す状態では、上述のように、弾性部材4の可動部43の先端部が、端子部31に下側から接触している。これにより、挿入穴21の内側(すなわち、左側)において、後述する電線の挿入経路が、弾性部材4の可動部43により閉鎖されている。図1および図2に示す状態は、接続機器1が使用される前の状態であり、以下の説明では、当該状態を「初期状態」とも呼ぶ。
【0036】
初期状態(すなわち、挿入穴閉鎖状態)の弾性部材4は、固定部42と可動部43とが近づく向きに少し撓んでいる。これにより、弾性部材4がケース2から脱落することを防止することができる。また、弾性部材4および端子部31により電線を挟持する際に、当該電線が比較的細い場合であっても、十分な挟持力(すなわち、グリップ力)を発揮させることができる。
【0037】
操作部5は、操作部本体であるカム部51と、カム部51に接続される解除受け部55、被保持部56および弾性支持部57と、を備える。操作部5は、樹脂等の絶縁材料により形成される。図2に示す例では、カム部51は、正面視において略L字状の板状部材である。カム部51の中央部には、カム部51を厚さ方向に貫通する貫通孔511が設けられる。貫通孔511の正面視における形状は、図2中における左右方向の径が上下方向の径よりも大きい略楕円または略長円である。
【0038】
カム部51の貫通孔511には、ケース2に設けられた回転軸24が挿入されている。回転軸24は、厚さ方向に延びる略円柱状の部位である。カム部51は、回転軸24を略中心として、厚さ方向に略垂直な面内において回転可能にケース2により支持される。貫通孔511の内周面は、カム部51が回転軸24の周りを回転する際の軸受け516となる。貫通孔511の内径は、回転軸24の外径よりも大きい。したがって、正面視において、貫通孔511の面積は回転軸24の面積よりも大きい。図2に示す初期状態では、回転軸24は、貫通孔511内において左側に偏った位置に位置している。
【0039】
カム部51は、図2に示す初期状態から回転軸24の周りを図2中における時計回り方向に回転可能である。一方、カム部51は、初期状態から図2中における反時計回り方向には回転できないように、ケース2により回転が制限されている。図2に示す例では、ケース2の上部の幅方向中央部に、ケース2の上面から下方へと突出する支持部25が設けられる。そして、支持部25の右側面に、カム部51の上部の左側面が接触することにより、カム部51の反時計回り方向への回転が制限される。
【0040】
以下の説明では、カム部51のうち貫通孔511を囲む略円環状の部位を「カム中央部54」と呼ぶ。カム中央部54は、ケース2の上述の支持部25に図2中の右側から接触している部位も含む。カム中央部54には、支持部25の左側において上方(すなわち、回転軸24を中心とする径方向の外方)に突出する比較的小さい突起部541が設けられる。また、カム部51では、図2中においてカム中央部54から右斜め下方に突出する部位を「カム下凸部52」と呼び、カム中央部54から右斜め上方に突出する部位を「カム上凸部53」と呼ぶ。カム下凸部52の正面視における形状は略逆三角形である。カム上凸部53の正面視における形状は略矩形帯状である。
【0041】
カム中央部54は、カム下凸部52よりも厚さ方向の手前側に突出する。換言すれば、カム下凸部52の手前側の面は、カム中央部54の手前側の面よりも奥側に位置する。図2に示す初期状態では、カム下凸部52の手前側に端子部31が位置し、正面視においてカム下凸部52と端子部31とが重なっている。また、カム下凸部52の左側の側面が、弾性部材4の可動部43に対して接触することなく、右側かつ上側から近接している。
【0042】
図2に示す初期状態では、カム上凸部53は、ケース2の内部に全体が収容されている。したがって、接続機器1に上述の蓋部(図示省略)が設けられている状態では、カム上凸部53の全体が当該蓋部によって手前側から覆われており、正面視において視認できない。カム上凸部53とカム中央部54との接続部は、操作穴27の下方にて操作穴27と上下方向に対向する凹部となっている。なお、カム中央部54、カム下凸部52およびカム上凸部53の形状は様々に変更されてよい。
【0043】
解除受け部55は、カム中央部54から左方に突出する略板状または略棒状の部位である。解除受け部55の正面視における形状は略帯状である。図2に示す初期状態では、解除受け部55は、カム中央部54の下端部から左斜め下方に突出する。解除受け部55は、端子部31から上方に離間した位置に位置し、正面視において端子部31と略平行に延びる。また、解除受け部55は、カム下凸部52よりも上側に位置する。解除受け部55は、厚さ方向において解除部32と略同じ位置に位置する。解除受け部55は、後述する非結線状態において解除部32に接触し、電線91の結線時に解除部32から付与される力を受ける。なお、解除受け部55の形状は様々に変更されてよい。
【0044】
弾性支持部57は、カム中央部54から左方に突出する略板状の部位であり、正面視における弾性支持部57の形状は略C字状である。弾性支持部57の略C字状の両端部(すなわち、弾性支持部57の右側の上端部および下端部)は、カム中央部54に接続されている。弾性支持部57の当該両端部を除く部位は、カム中央部54から左方に離間している。弾性支持部57は、いわゆる樹脂バネである。弾性支持部57は、厚さ方向に垂直な向きに押圧されると、厚さ方向に垂直な面内にて弾性変形し、当該押圧が解除されると、自身の復元力により元の位置に戻る(すなわち、弾性復帰する)。
【0045】
弾性支持部57の中央部(すなわち、図2中の上下方向の中央部)には、被保持部56が設けられる。被保持部56は、弾性支持部57の中央部から、カム中央部54および回転軸24とは反対側に突出する。換言すれば、被保持部56は、弾性支持部57の中央部から、回転軸24を中心とする径方向の外方へと突出する。被保持部56は、正面視において略半円状の略板状の部位である。被保持部56は、弾性支持部57を介してカム中央部54に間接的に接続される。
【0046】
被保持部56は、弾性変形可能な弾性支持部57を介してカム部51により支持されているため、弾性支持部57の弾性変形に伴ってカム部51に対する相対位置が変化する。例えば、図2中に示す被保持部56に右向きの押圧力が加わると、弾性支持部57が回転軸24を中心とする周方向に広がるように撓み、被保持部56は右方(すなわち、カム中央部54および回転軸24に近づく方向)へと移動する。また、当該押圧力が解除されると、弾性支持部57が弾性復帰し、被保持部56は左方(すなわち、カム中央部54および回転軸24から離れる方向)へと移動する。被保持部56および弾性支持部57は、解除部32よりも奥側に位置する。
【0047】
図2に示す初期状態では、操作部5の被保持部56は、ケース2の操作保持部26に直接的に接触している。操作保持部26は、正面視において略半円状の略板状の部位であり、厚さ方向において被保持部56と略同じ位置に位置する。操作保持部26は、ケース2の左側面近傍に設けられる。操作保持部26は、ケース2のうち操作保持部26の周囲の部位から、カム部51および回転軸24に向かって右方へと突出している。図2に示す例では、操作保持部26は、解除部32の上端部近傍において、解除部32よりも上側に位置している。
【0048】
図2に示す初期状態では、被保持部56の左端部は、操作保持部26の右端部よりも下側かつ左側に位置する。また、正面視において略半円状の操作保持部26の中心は、正面視において略半円状の被保持部56の中心および回転軸24の中心を通る仮想的な直線よりも上側(すなわち、回転軸24を中心とする周方向の時計回り側)に位置する。このため、被保持部56が操作保持部26と係合し、操作部5が、図2中における時計回り方向への回転が制限された状態で、図2に示す位置にて保持される。接続機器1では、被保持部56および操作保持部26により、操作部5を図2に示す位置にて保持する保持機構20が構成される。なお、被保持部56および弾性支持部57の形状は様々に変更されてよい。また、操作保持部26の形状も様々に変更されてよい。
【0049】
次に、接続機器1に対する電線の接続の流れについて説明する。まず、作業者は、図2に示す初期状態から、カム部51を回転軸24の周りにて時計回り方向に回転させる。カム部51が回転される際には、例えば、図7に示すように、作業者が通常のマイナスドライバー等の工具92の先端部を、ケース2の上面に設けられた操作穴27から挿入し、初期状態の操作部5に接触させる。具体的には、工具92の先端部は、カム部51のうちカム中央部54とカム上凸部53との接続部近傍の上面に接触する。工具92と操作部5との接触部は、回転軸24よりも右側に位置する。
【0050】
そして、工具92を下方へと押し込むことにより、操作部5が図7中における時計回り方向に回転する。操作部5が初期状態から時計回り方向に回転すると、カム部51のカム下凸部52が弾性部材4の可動部43の上面に接触し、可動部43を下方へと押し下げる。これにより、弾性部材4が撓み(すなわち、弾性変形し)、弾性部材4の復元力が、カム下凸部52のうち弾性部材4と接触する部位に作用する。また、カム部51の時計回り方向への回転に伴って、被保持部56が上方へと移動し、操作保持部26によって右方(すなわち、回転軸24を中心とする径方向の内方)へと押圧される。そして、弾性支持部57が撓んで周方向に広がり、被保持部56は右方へと変位しつつさらに上方へと移動する。
【0051】
図8は、カム部51を初期状態(図7参照)から時計回りに約13°回転させた状態を示す図である。図8に示す状態は、操作部5の回転途上の状態であり、後述する結線状態および非結線状態ではない。図7および図8に示すように、操作部5を時計回りに回転させることにより、被保持部56は操作保持部26の右側面と接触した状態を維持しつつ、操作保持部26の右端部を越えて操作保持部26よりも上側まで移動する。図8に示す状態では、被保持部56の左端部は、操作保持部26の右端部よりも上側かつ左側に位置する。また、正面視において略半円状の操作保持部26の中心は、正面視において略半円状の被保持部56の中心および回転軸24の中心を通る仮想的な直線よりも下側(すなわち、回転軸24を中心とする周方向の反時計回り側)に位置する。これにより、保持機構20において、操作保持部26と被保持部56との係合(すなわち、操作保持部26による操作部5の保持)が解除される。
【0052】
また、図7および図8に示すように、作業者が工具92を下方へと押し込むことによって操作部5を時計回りに回転させると、カム部51と弾性部材4の可動部43との接触部と、回転軸24の中心との間の最短距離が増大し、弾性部材4の撓みが大きくなる。具体的には、弾性部材4の可動部43が下方へと押し下げられ、端子部31から下方へと離間する。
【0053】
図8に示す状態では、カム部51のカム下凸部52のうち、下端よりも少し左斜め上の部位が、弾性部材4の可動部43に点接触し、当該部位に弾性部材4の復元力が作用する。以下の説明では、操作部5のうち弾性部材4の復元力が作用する部位を「第1部位513」と呼ぶ。第1部位513は、カム部51の回転に伴ってカム部51上において移動する。上述のように、第1部位513と回転軸24の中心との間の最短距離(以下、単に「第1部位513と回転軸24との間の距離」とも呼ぶ。)が増大すると、カム部51は、当該復元力により上方へと押し上げられる。そして、軸受け516である貫通孔511の内周面の下部が、回転軸24の下部に対して押圧され、貫通孔511の内周面の下部には、弾性部材4の復元力に対する反力が生じる。以下の説明では、操作部5のうち、弾性部材4の復元力により回転軸24に対して押圧されて反力が生じる部位(すなわち、軸受け516の一部)を「第3部位515」と呼ぶ。
【0054】
図8では、操作部5の第1部位513に作用する弾性部材4の復元力のベクトル(以下、「復元力ベクトル」とも呼ぶ。)を、符号81を付した太線の矢印にて示す。また、第1部位513と第3部位515とを結ぶ仮想的な直線である第2基準線83を、二点鎖線にて示す。なお、上述の反力は、第3部位515から第2基準線83に沿って働く。換言すれば、当該反力のベクトルは、第3部位515から第2基準線83上に延びる。第3部位515は、上述のように操作部5の軸受け516の一部であり、詳細には、軸受け516のうち回転軸24の下部と接触している部位である。第3部位515も、第1部位513と同様に、カム部51の回転に伴って貫通孔511の内周面上において移動する。
【0055】
図8に示す状態では、復元力ベクトル81は、第2基準線83には重なっておらず、第2基準線83よりも右側において上方に向かっている。したがって、弾性部材4の復元力により、カム部51に反時計回り方向の回転モーメントが作用している。すなわち、図8に示す状態では、作業者が工具92によりカム部51を押し下げる力を加え続けていないと、弾性部材4および操作部5は、図7に示す初期状態へと戻る。
【0056】
実際の操作では、作業者は、操作部5を図8に示す状態で静止させることなく、図9に示す状態(以下、「非結線状態」とも呼ぶ。)までさらに回転させる。図8に示す状態から操作部5をさらに時計回り方向に回転させると、第1部位513は、カム下凸部52の下端へと近づき、第1部位513と回転軸24との間の距離がさらに増大する。これにより、弾性部材4の可動部43がさらに下方へと押し下げられ、端子部31から下方へと大きく離間する。これにより、挿入穴21からケース2の内部へと向かう電線の挿入経路が開放される。また、復元力ベクトル81と第2基準線83との成す角度は、操作部5の時計回り方向への回転に従って小さくなり、復元力ベクトル81が第2基準線83に近づく。これにより、弾性部材4の復元力によりカム部51に作用する反時計回り方向の回転モーメントが減少する。
【0057】
操作部5が図7に示す初期状態から図9に示す非結線状態へと回転する際には、カム部51の貫通孔511が回転軸24に対して左方へと移動する。換言すれば、回転軸24が、貫通孔511内において右方へと相対移動する。すなわち、上述の反力が生じる第3部位515は、貫通孔511の内周面(すなわち、軸受け516)上において右方へと移動する。また、カム部51の突起部541が、ケース2の支持部25の左側にて右方へと移動し、支持部25に近づく。
【0058】
そして、図9に示す非結線状態では、突起部541の上端部が支持部25に下方から接触する。一方、貫通孔511の内周面(すなわち、軸受け516)は回転軸24から離間する。これにより、カム部51を介した弾性部材4の復元力によって、突起部541の上端部が支持部25に対して押圧される。当該復元力は、回転軸24には加わらず、支持部25により支持される。このため、操作部5において当該復元力に対する反力が生じる部位が、第3部位515(図8参照)から突起部541の上端部(以下、「第2部位514」と呼ぶ。)へと移行する。なお、第1部位513、第2部位514および第3部位515はそれぞれ異なる部位である。
【0059】
非結線状態における上記反力は、第2部位514から、第2部位514と第1部位513とを結ぶ仮想的な直線である第1基準線82に沿って働く。換言すれば、当該反力のベクトルは、第2部位514から第1基準線82上に延びる。図9に示す例では、第1基準線82は第2基準線83(図8参照)よりも長い。なお、非結線状態では、貫通孔511の内周面は回転軸24に接触していてもよいが、カム部51を介した弾性部材4の復元力は、上述のように支持部25により支持され、回転軸24には実質的に加わらない状態となる。
【0060】
図9に示す非結線状態では、カム部51のうちカム下凸部52の下端部が、弾性部材4の可動部43に接触する第1部位513である。第1部位513からの復元力ベクトル81は、第1基準線82に略重なり、弾性部材4の復元力と、操作部5に生じる当該復元力に対する反力とが釣り合う。このため、カム部51には、時計回り方向の回転モーメントも、反時計回り方向の回転モーメントも作用しない。したがって、作業者が操作部5から手を離しても(すなわち、作業者が操作部5に力を加えていない状態であっても)、操作部5の周方向の位置(すなわち、回転位置)は図9に示す非結線状態で維持される。また、操作部5から弾性部材4に付与される力により、弾性部材4の状態も非結線状態で維持(すなわち、仮止め)される。弾性部材4の可動部43は、第1部位513におけるカム部51の略接線方向へと延びている。図9示す非結線状態は、弾性部材4が撓んだ状態で仮止めされた仮止め状態である。以下の説明では、図9に示す操作部5の位置を「仮止め位置」とも呼ぶ。
【0061】
非結線状態では、操作部5の解除受け部55が、端子金具3の解除部32の上部に右側から接触する。図9に示す例では、解除受け部55により解除部32の上部が左斜め上方へと押圧され、解除部32が、解除接続部34(図4参照)との接続部位を略中心として反時計回り方向に少し回転する。その結果、解除部32の下部が少し右方へと変位し、端子部31に少し近づく。
【0062】
また、非結線状態では、操作部5の一部であるカム上凸部53が、ケース2の右側面からスリット29を介して右方に突出する。ケース2から突出したカム上凸部53は、作業者により視認可能である。上述のように、接続機器1が初期状態の場合(図7参照)、カム上凸部53はケース2から突出しておらず、ケース2の内部に位置する。したがって、作業者は、カム上凸部53のケース2からの突出状態を目視することで、接続機器1が非結線状態であるか否かを容易に判別することができる。
【0063】
非結線状態では、操作部5の突起部541の右側面が、ケース2の支持部25の左側面に接触する。これにより、操作部5がこれ以上時計回りに回転しないように、カム部51の動きが制限される。また、カム部51のカム上凸部53の下端部は、スリット29の下端においてケース2に接触する。これによっても、操作部5がこれ以上時計回りに回転しないように、カム部51の動きが制限される。
【0064】
図10は、操作部5の初期状態からの変位量と、弾性部材4の復元力により操作部5に作用する回転モーメントとの関係を概念的に示す図である。図10中の横軸は、回転軸24の周りにおける操作部5の初期状態からの変位量(すなわち、回転角度)を示し、図7中の時計回り方向への回転角度を正とする。図10中の縦軸は、上述の回転モーメントを、図7中の反時計回り方向へのモーメントを正として示す。図10中において符号85を付す点が、回転モーメントがおよそ0である非結線状態である。なお、実際に操作部5に作用する回転モーメントの変化は、図10中において直線で示す回転モーメントの変化と必ずしも同じである必要はない。
【0065】
接続機器1が非結線状態とされると、図11に示すように、作業者により工具92(図9参照)が操作穴27から抜かれ、電線91が挿入穴21に挿入される。電線91は、挿入穴21からケース2内へと所定の挿入方向に沿って挿入され、端子部31と非結線状態の弾性部材4との間に位置する。電線91のケース2に対する挿入方向は、上下方向および左右方向に対して傾斜する斜め方向である。これにより、電線91が接続機器1から上下方向に突出することを抑制することができるとともに、挿入穴21を視認しつつ電線91を容易に挿入穴21に挿入することができる。当該挿入方向と上下方向との成す角度は、接続機器1の使用が想定される場所や作業者の位置、目線等によって適宜最適化が可能である。
【0066】
電線91は、例えば単線であってもよく、比較的太いより線であってもよい。また、電線91は、比較的細いより線の先端部に棒状圧着端子等が設けられた電線であってもよい。当該棒状圧着端子は、棒状の導電部の根元に絶縁スリーブ等が設けられた絶縁被覆付圧着端子でもよく、絶縁スリーブ等が設けられていない裸圧着端子であってもよい。電線91の先端部の直径は、電線91が接続される接続機器1の電流容量によって様々に変更されてよい。また、電線91の先端部以外の部位の直径も、様々に変更されてよい。なお、後述するように、電線91により解除部32を押圧する場合、電線91の直径は、当該押圧のための荷重を確保することができる直径以上であることが望ましい。
【0067】
電線91の先端は、ケース2内において、端子金具3の解除部32と接触する。図11に示す例では、解除部32の下部の右側面に、電線91の先端が直接的に接触する。すなわち、解除部32の下部の右側面は、電線91を受ける受け面である。当該受け面は、電線91の挿入方向において、非結線状態の弾性部材4よりも奥に位置する。
【0068】
作業者は、電線91の先端を解除部32に直接的に接触させた状態で、電線91を挿入方向へと少し押し込んで解除部32に力を付与する。これにより、解除部32の下部が略左向きに押圧され、解除部32が、解除接続部34(図4参照)との接続部位を略中心として時計回り方向に少し回転する。その結果、カム部51の解除受け部55に接触している解除部32の上部が少し右方へと変位し、解除受け部55が解除部32の上部によって右方へと押される。なお、解除部32の上部は、電線91の押圧前は解除受け部55から僅かに離間していてもよく、この場合、電線91の押圧により右方へと変位して解除受け部55に接触し、解除受け部55を右方へと押す。
【0069】
そして、解除受け部55が解除部32により右方へと押されることにより、カム部51が、図9に示す位置から図11に示す位置へと第2部位514(すなわち、突起部541の支持部25との接触部)を略中心として反時計回り方向に少し回転する。すなわち、電線91から操作部5に力が付与されることにより、操作部5の位置(すなわち、回転位置)が変更される。図11に示す状態では、貫通孔511に対する回転軸24の相対位置が、図9に示す非結線状態から少し左側に変更される。
【0070】
図11に示すように、カム部51が非結線状態から反時計回り方向に少し回転すると、復元力ベクトル81が第1基準線82から右側にずれ、復元力と反力との釣り合いが崩れる。このため、弾性部材4の復元力により、カム部51に反時計回り方向の回転モーメントが作用する(図10の点86に対応)。その結果、カム部51がさらに反時計回りに回転するとともに、弾性部材4が非結線状態から復元する。
【0071】
カム部51の反時計回り方向への回転に伴い、回転軸24は、図12に示すように、カム部51の貫通孔511に対して相対的に左方へと移動し、カム部51の貫通孔511の内周面(すなわち、軸受け516)に接触する。これにより、カム部51を介した弾性部材4の復元力は、回転軸24によって主に受けられることになり、支持部25には実質的に加わらなくなる。
【0072】
換言すれば、カム部51が回転軸24および支持部25に対して相対的に変位することにより、第2部位514の支持部25に対する押圧が解除され、第3部位515が回転軸24に対して押圧される。これにより、操作部5において弾性部材4の復元力に対する反力が生じる部位は、第2部位514から第3部位515へと移行し、上述の第2基準線83が生成される。図12に示す例では、第2基準線83は復元力ベクトル81から左側にずれている。また、第2基準線83は、第1基準線82よりも左側に傾いており、第2基準線83と復元力ベクトル81とのずれは、第1基準線82と復元力ベクトル81とのずれよりも大きくなる。これにより、復元力と反力との釣り合いがさらに大きく崩れ、カム部51に作用する反時計回り方向の回転モーメントも大きくなる。
【0073】
なお、第2基準線83は、必ずしも第1基準線82よりも左側に傾いている必要はなく、第1基準線82からずれている必要もない。また、上述の例では、カム部51の回転軸24に対する変位は、回転軸24周りの回転、および、回転軸24に対する左右方向への移動(すなわち、スライド)であるが、これらの変位は並行しておこなわれてもよく順次行われてもよい。あるいは、上述のカム部51の回転軸24に対する変位は、回転軸24周りの回転、および、回転軸24に対する左右方向への移動のうち一方のみであってもよい。
【0074】
接続機器1では、上述のように、第2基準線83が生成されて復元力と反力との釣り合いがさらに大きく崩れることにより、操作部5が反時計回り方向にさらに回転し、弾性部材4がさらに復元して可動部43が上方へと変位する。これにより、図13に示すように、操作部5の突起部541がケース2の支持部25から左方に離間し、被保持部56が操作保持部26に上側かつ右側から接触する。また、弾性部材4の可動部43が電線91に下方から近づく。
【0075】
そして、弾性部材4の可動部43が上方へとさらに変位することにより、図14に示すように、弾性部材4は、電線91に下側から接触する結線状態となる。弾性部材4は、自身の復元力により、電線91を端子部31に押し付けて、端子部31との間に電線91を挟持する。これにより、電線91と端子部31とが電気的に接続される。接続機器1では、電線91が接続機器1に挿入された後、自動的に(すなわち、電線91以外の工具や指を利用した作業者による操作部5の操作無しで)結線される。このように、電線91の自動結線が行われることにより、電線91の接続作業が簡素化される。
【0076】
また、操作部5のカム下凸部52は、上方へと変位する弾性部材4の可動部43によって、図13に示す位置から反時計回り方向へと弾かれ(すなわち、蹴り上げられ)、図14に示すように、可動部43から上方に離間する。操作部5の被保持部56は、操作保持部26の右側面と接触した状態を維持しつつ、操作保持部26の右端部を越えて操作保持部26よりも下側まで移動する。これにより、被保持部56が操作保持部26と係合し、操作部5が、弾性部材4から離れた図14に示す位置へと退避される。
【0077】
図14に示す操作部5の位置は、図2に示す上述の初期状態と同じ位置である。以下の説明では、図14に示す操作部5の位置(すなわち、初期位置)を、「退避位置」とも呼ぶ。退避位置に位置する操作部5では、上述のように、カム中央部54の上部の左側面が支持部25の右側面に接触することにより、図14中における反時計回り方向への回転が制限される。また、退避位置に位置する操作部5では、上述のように、保持機構20によって図14中における時計回り方向への回転が制限される。このように、操作部5は、退避位置からの移動が制限された状態で、保持機構20(すなわち、互いに接触する操作保持部26および被保持部56)によりに退避位置にて保持される。
【0078】
なお、電線91の太さや形状および種類等(以下、単に「太さ等」ともいう。)は、上述のように様々に変更される。電線91が比較的太い場合、非結線状態から結線状態に移動する際の弾性部材4の可動部43の変位は比較的小さく、操作部5のカム部51が可動部43によって反時計回り方向へと弾かれる(すなわち、蹴り上げられる)力も比較的小さい。一方、電線91が比較的細い場合、非結線状態から結線状態に移動する際の可動部43の変位は比較的大きく、操作部5が可動部43によって反時計回り方向へと弾かれる力も比較的大きい。接続機器1では、可動部43によって反時計回り方向に弾かれた操作部5を、保持機構20によって所定の退避位置にて保持するため、電線91の太さ等に関わらず、結線状態における操作部5の位置を同じにすることができる。
【0079】
操作部5が図13に示す位置から図14に示す退避位置へと移動する際には、弾性支持部57が撓んで(すなわち、弾性変形して)周方向へと広がり、被保持部56が右方へと変位しつつ下方へと移動する。これにより、被保持部56は、操作保持部26に接触した状態で滑らかに下方へと移動する。その結果、操作部5の退避位置への移動が滑らかに行われる。
【0080】
接続機器1では、弾性支持部57が省略されて被保持部56がカム中央部54によって直接的に支持され、操作保持部26が、弾性支持部57と略同様の構造を有する弾性変形可能な弾性支持部を介して、ケース2のうち操作保持部26近傍の部位によって支持されていてもよい。この場合、被保持部56が下方へと移動する際に、当該弾性支持部が撓んで操作保持部26が左方へと変位する。これにより、被保持部56は、操作保持部26に接触した状態で滑らかに下方へと移動する。なお、接続機器1では、操作保持部26が上記弾性支持部を介して支持され、被保持部56も弾性支持部57を介して支持されてもよい。この場合も、被保持部56は、操作保持部26に接触した状態で滑らかに下方へと移動する。
【0081】
図14に示すように、退避位置にて保持される操作部5は、結線状態の弾性部材4から上方に離間している。したがって、結線状態の弾性部材4の復元力は、退避位置にて保持される操作部5に対して付与されない。また、電線91に電流が流れる際に、電線91にて発生する熱が、弾性部材4を介して操作部5に伝導することが防止される。このため、当該熱によって操作部5が劣化することを抑制することができる。
【0082】
上述のように、接続機器1では、非結線状態(図9参照)において挿入穴21に挿入された電線91を作業者が少し押し込むことにより(図11参照)、操作部5による弾性部材4の状態維持(すなわち、非結線状態における維持)が解除される。そして、弾性部材4の復元力によって、弾性部材4が非結線状態から図14に示す結線状態へと移行するとともに、操作部5が退避位置へと移動されて保持機構20により保持される。すなわち、接続機器1では、作業者から操作部5への力の付与は、非結線状態における弾性部材4による復元力と当該復元力に対する反力との釣り合いを崩す際にのみ行われ、その後は、作業者からの力の付与無しに、弾性部材4の結線状態への移行、および、操作部5の退避位置への移動が実現される。
【0083】
上述のように、図9に示す非結線状態では、カム上凸部53は、ケース2の右側面からスリット29を介して右方に突出している。一方、図14に示す結線状態では、カム上凸部53は、ケース2の内部に収容され、ケース2から突出していない。したがって、作業者は、カム上凸部53のケース2からの突出状態を目視することで、接続機器1が非結線状態であるか、それとも結線状態に移行したかを容易に判別することができる。すなわち、カム上凸部53は、操作部5の移動に伴って移動する識別部(インジケータ)として機能し、操作部5の位置、および、接続機器1の状態を視認可能に示す。
【0084】
接続機器1では、結線状態の弾性部材4の可動部43は電線91に接触しているため、結線状態の可動部43の位置は、電線91の太さ等によって異なる。一方、操作部5は、結線状態において所定の退避位置に位置するため、電線91の太さ等に関わらず、結線状態の操作部5の位置は同じである。したがって、識別部であるカム上凸部53の結線状態における位置も、電線91の太さ等に関わらず同じである。このため、作業者は、接続機器1に結線された電線91の太さ等に関わらず、接続機器1が結線状態であることを容易に確認することができる。
【0085】
なお、作業者は、接続機器1の結線状態への移行時に生じる振動や音等により、電線91の結線を認識してもよい。当該振動や音等は、弾性部材4、電線91、端子部31、操作部5およびケース2のうち一の部材が他の部材と衝突することにより生じる。具体的には、例えば、弾性部材4の可動部43により電線91が端子部31に押し付けられる際に、当該振動や音等が生じる。また、当該振動や音等は、操作部5が退避位置へと位置する際に、操作部5のカム中央部54が支持部25の右側面に衝突することにより、および、操作部5の被保持部56がケース2の操作保持部26と係合することにより生じる。このように、接続機器1では、3ヶ所以上において当該振動や音等が生じるため、作業者は、接続機器1の結線状態への移行を容易に認識することができる。接続機器1では、当該振動や音等の発生を促進させ、あるいは、当該振動や音等を増幅する様々な構造が採用されてもよい。
【0086】
なお、接続機器1を非結線状態から結線状態に移行させる際には、必ずしも、電線91により解除部32の下部を押すことによってカム部51を反時計回り方向に回転させる必要はない。例えば、図9に示す非結線状態において、ケース2から右方に突出しているカム上凸部53を作業者の指先等で上方へと僅かに移動させ、カム部51を反時計回り方向に少し回転させてもよい。これにより、操作部5による弾性部材4の状態維持(すなわち、非結線状態における維持)が解除される。そして、弾性部材4の復元力によって、弾性部材4が非結線状態から結線状態へと移行するとともに、操作部5が退避位置へと移動されて保持機構20により保持される。この場合も、作業者から操作部5への力の付与は、非結線状態における弾性部材4による復元力と当該復元力に対する反力との釣り合いを崩す際にのみ行われ、その後は、作業者からの力の付与無しに、弾性部材4の結線状態への移行、および、操作部5の退避位置への移動が実現される。
【0087】
図14に示す結線状態の接続機器1から電線91を取り外す際には、例えば、作業者が上述の工具92(図7参照)の先端部を操作穴27に挿入し、カム部51に接触させて押し下げることにより、カム部51を図14に示す退避位置から時計回り方向に回転させる。これにより、弾性部材4の可動部43が押し下げられて電線91から下方へと離間し、弾性部材4および端子部31による電線91の挟持が解除される。このとき、弾性部材4は、操作部5により、結線状態よりも大きく弾性変形した非結線状態にて維持されてもよい。作業者は、挿入穴21から電線91を引っ張り出すことで、電線91を接続機器1から容易に取り外すことができる。
【0088】
接続機器1では、工具92が挿入される操作穴27と、電線91が挿入される挿入穴21とが、ケース2の異なる側面に設けられており、工具92の挿入方向と電線91の挿入方向とが異なる。このため、工具92と電線91とが干渉することを防止し、電線91の接続機器1からの取り外しを容易とすることができる。
【0089】
以上に説明したように、電線91が接続される接続機器1は、ケース2と、端子部31と、弾性部材4と、操作部5とを備える。端子部31は、ケース2に固定される導電性の部材である。弾性部材4は、ケース2に取り付けられる。弾性部材4は、結線状態において復元力により電線91を端子部31に押し付けて、電線91を弾性部材4と端子部31との間に挟持する。操作部5は、弾性部材4に力を付与して結線状態よりも大きく弾性変形した状態である非結線状態にて維持する。接続機器1では、端子部31と非結線状態の弾性部材4との間に電線91が挿入された状態で、操作部5による弾性部材4の状態維持が解除されると、弾性部材4の復元力により、操作部5が所定の退避位置へと移動されて、退避位置からの移動が制限された状態にて保持機構20により保持される。また、弾性部材4が、非結線状態から結線状態へと移行して、電線91を端子部31に押し付ける。
【0090】
これにより、電線91が結線された状態において、操作部5を所定の退避位置にて保持し、操作部5の不要な変位を抑制することができる。その結果、結線状態の接続機器1において、操作部5がケース2内でがたつくことを抑制することができるため、接続機器1の操作性を向上することができる。また、結線状態の接続機器1において、電線91の太さ等に関わらず操作部5が同じ位置(すなわち、退避位置)に保持されるため、操作部5の位置が電線91の太さ等によって変わる場合に比べて、接続機器1の操作性を向上することができる。
【0091】
上述のように、退避位置にて保持される操作部5に対して、結線状態の弾性部材4から復元力は付与されないことが好ましい。これにより、電線91が結線された状態において、操作部5の不要な変位をさらに抑制することができる。
【0092】
上述のように、退避位置にて保持される操作部5は、結線状態の弾性部材4から離間していることが好ましい。これにより、電線91への通電時に発生する熱が、弾性部材4を介して操作部5に伝導することを防止することができる。その結果、当該熱によって操作部5が劣化することを抑制することができる。
【0093】
上述のように、ケース2は、退避位置に位置する操作部5に接触する操作保持部26を備えることが好ましい。また、操作部5は、操作部本体(上記例では、カム部51)と、被保持部56とを備えることが好ましい。被保持部56は、操作部本体に接続されるとともに、退避位置にて操作保持部26と接触する。保持機構20は、操作保持部26と被保持部56とにより構成される。被保持部56は、弾性変形可能な弾性支持部57を介して操作部本体により支持される。または、操作保持部26は、ケース2のうち操作保持部26近傍の部位により弾性変形可能な弾性支持部を介して支持される。
【0094】
これにより、被保持部56と操作保持部26との係合を滑らかに行うことができ、操作部5の退避位置への移動を滑らかに行うことができる。また、弾性部材4の復元力を過剰に大きくすることなく、操作部5を退避位置へと移動させることができる。さらには、操作部5の退避位置からの移動も、比較的小さい力で滑らかに行うことができる。
【0095】
上述のように、接続機器1は、操作部5の移動に伴って移動するとともに操作部5の位置を示す視認可能な識別部(上記例では、カム上凸部53)をさらに備えることが好ましい。接続機器1では、既述のように、結線時の操作部5の位置が電線91の太さ等に関わらず同じになるため、結線時の識別部の位置も電線91の太さ等に関わらず同じになる。したがって、作業者は、接続機器1が結線状態であるか否かを容易に識別することができる。上記識別部は、操作部5の一部であることが、より好ましい。これにより、接続機器1の構造を簡素化することができる。
【0096】
上述のように、操作部5は、第1部位513と、第2部位514とを備えることが好ましい。第1部位513には、弾性部材4の復元力が作用する。第2部位514には、非結線状態において当該復元力に対する反力が生じる。接続機器1では、弾性部材4が非結線状態であるとき、復元力のベクトルである復元力ベクトル81が第1部位513と第2部位514とを結ぶ直線である基準線(上記例では、第1基準線82)と略重なって、復元力と反力とが釣り合うことにより、操作部5の位置が維持されて弾性部材4の状態が非結線状態にて維持される。これにより、非結線状態の弾性部材4に係合して弾性部材4をケース2に係止する係止部等が不要となるため、弾性部材4の非結線状態を維持するための構造を簡素化することができる。
【0097】
なお、非結線状態の接続機器1では、復元力ベクトル81は第1基準線82とおよそ重なっていればよく、厳密に一致する必要はない。例えば、図9に示す復元力ベクトル81が、第1基準線82よりも僅かに右側に傾いている場合(すなわち、カム部51に作用する回転モーメントが、図10に示す点85よりも僅かに点86側に移動して、点85と点86との間に位置する状態)であっても、カム部51と弾性部材4との間に生じる摩擦力等により非結線状態が維持されていればよい。この場合であっても、上述のように、弾性部材4の非結線状態を維持するための構造を簡素化することができる。
【0098】
上述のように、操作部5は、第1部位513および第2部位514とは異なる第3部位515をさらに備えることが好ましい。接続機器1では、端子部31と非結線状態の弾性部材4との間に電線91が挿入された状態で、操作部5による弾性部材4の状態維持が解除されると、操作部5において反力が生じる部位が第2部位514から第3部位515へと移行する。そして、上記復元力と反力との釣り合いが崩れることにより、操作部5が退避位置へと移動される。
【0099】
このように、接続機器1では、非結線状態において反力が生じる部位(すなわち、第2部位514)と、操作部5の非結線状態からの位置変更時に反力が生じる部位(すなわち、第3部位515)とが異なる。これにより、非結線状態における第2部位514とケース2との接触面積を小さくし、操作部5とケース2との摩擦抵抗を小さくして、非結線状態を解除するために必要な力を低減することができる。また、操作部5の位置変更時における第3部位515とケース2との接触面積を大きくして、位置変更の際に操作部5を安定的に支持することができる。すなわち、接続機器1では、非結線状態を解除するために必要な力の低減と、位置変更の際における操作部5の安定的な支持とを両立することができる。
【0100】
上述のように、操作部5は、ケース2に設けられた回転軸24の周りを回転するカム部51を備えることが好ましい。また、カム部51は、回転軸24が挿入されるとともに回転軸24の外径よりも内径が大きい軸受け516を備えることが好ましい。弾性部材4の非結線状態への移行時には、カム部51が回転軸24の周りを回転することにより、第1部位513と回転軸24との間の距離が増大して弾性部材4が撓む。そして、弾性部材4の復元力により、第2部位514がケース2に設けられた支持部25に対して押圧されるとともに、復元力ベクトルが上記基準線(上記例では、第1基準線82)と略重なることにより、操作部5の回転位置が維持されて弾性部材4の状態が非結線状態にて維持される。また、電線91を結線する際には、カム部51を支持部25に対して変位させ、第2部位514の支持部25に対する押圧を解除する。これにより、軸受け516の一部である第3部位515が回転軸24に対して押圧され、操作部5において反力が生じる部位が第2部位514から第3部位515へと移行する。
【0101】
これにより、非結線状態を解除するために必要な力の低減と、位置変更の際における操作部5の安定的な支持とを両立可能な接続機器1を、簡素な構造で実現することができる。また、当該構造では、操作部5の位置変更時における第3部位515とケース2との接触面積を大きくするということは、回転軸24の径を大きくするということであり、これにより、回転軸24の変形や破損を好適に抑制することができる。
【0102】
上述のように、好ましくは、電線91を結線する際に、電線91から操作部5に力が付与されることにより、操作部5の位置が変更され、操作部5による弾性部材4の状態維持が解除される。これにより、電線91の自動結線を実現することができ、電線91の接続作業を簡素化することができる。
【0103】
上述のように、接続機器1は、電線91を結線する際に、挿入された電線91により押圧されて変位することにより操作部5に接触して操作部5の位置を変更する解除部32をさらに備えることが好ましい。これにより、電線91の自動結線を簡素な構造で実現することができる。また、解除部32は、端子部31と一繋がりの部材であることが好ましい。これにより、接続機器1の部品点数を少なくすることができる。
【0104】
上述のように、弾性部材4は板バネであることが好ましい。これにより、接続機器1の構造を簡素化することができる。
【0105】
上述のように、接続機器1では、電線91が挿入される前に、復元力ベクトル81が第1基準線82と略重なった非結線状態(すなわち、弾性部材4からカム部51に作用する回転モーメントが約0である状態)で操作部5の位置が維持されるが、例えば、図15に示すように、復元力ベクトル81が第1基準線82に対して左側に僅かに傾いている状態において操作部5の位置が維持されてもよい。
【0106】
図15に示す状態では、カム部51に作用する回転モーメントは時計回り方向となり、操作部5の初期状態からの変位量(すなわち、回転角度)と、操作部5に作用する回転モーメントとの関係は、図16に示すように、点86(すなわち、結線状態)および点85(すなわち、復元力ベクトル81が第1基準線82と重なる状態)よりも右下に位置する点87に示すものとなる。したがって、弾性部材4からカム部51に対して、カム部51を時計回りに回転させようとする力が働き、カム部51を反時計回りに回転させて初期状態へと戻す方向の力は働かない。図15に示す例では、カム部51を時計回りに回転させようとする上記力は、カム部51と弾性部材4との間に生じる摩擦力等と釣り合い、これにより非結線状態が維持される。したがって、弾性部材4の非結線状態を維持するための構造を簡素化することができる。
【0107】
なお、図15に示す例では、操作部5の突起部541の右側面が、ケース2の支持部25の左側面に接触する。また、カム部51のカム上凸部53の下端部は、スリット29の下端においてケース2に接触する。これにより、操作部5がこれ以上時計回りに回転しないように、カム部51の動きが制限される。上述のように、弾性部材4の復元力は上記摩擦力等と釣り合っているため、ケース2の支持部25およびスリット29の下端には、操作部5からの力は加わらない。なお、弾性部材4がカム部51を時計回りに回転させようとする力が大きい場合、操作部5からケース2の支持部25およびスリット29の下端に力が加わってもよい。
【0108】
図15に示す非結線状態から結線状態への移行の際には、上記と略同様に、挿入穴21に挿入された電線91(図11参照)により、解除部32を介してカム部51の解除受け部55に反時計回り方向の力が加えられる。これにより、復元力ベクトル81は、第1基準線82の左側から右側へと移行し、カム部51が反時計回り方向へと回転する。
【0109】
以上のように、図15に示す例では、復元力ベクトル81は、非結線状態において第1基準線82に対して一方側に僅かに傾いており、非結線状態から結線状態への移行の際に、第1基準線82の当該一方側から他方側へと移行する。これにより、非結線状態をさらに安定的に維持することができる。
【0110】
図17および図18は、本発明に係る他の好ましい接続機器1aを示す縦断面図である。接続機器1aでは、退避位置にて操作部5を保持する保持機構20の操作保持部26が、図2に示す位置よりも上側に位置し、操作保持部26の下側にもう1つの操作保持部26aが設けられる。操作保持部26aは、操作保持部26と略同様に、正面視において略半円状の略板状の部位であり、厚さ方向において操作保持部26および被保持部56と略同じ位置に位置する。操作保持部26aは、操作保持部26と同様にケース2の左側面近傍に設けられ、操作保持部26に下側から隣接する。操作保持部26aは、ケース2のうち操作保持部26aの周囲の部位から、カム部51および回転軸24に向かって右方へと突出している。
【0111】
上述のように、操作保持部26および操作部5の被保持部56は、操作部5を図17に示す退避位置にて保持する保持機構20を構成する。一方、操作保持部26aは、操作部5の被保持部56と共に、操作部5を図18に示すもう1つの退避位置にて保持するもう1つの保持機構20aを構成する。当該もう1つの退避位置は、操作部5の移動経路(すなわち、回転軸24を略中心とする周方向)に沿って、図17に示す退避位置を挟んで上述の仮止め位置(すなわち、図9に示す位置)と反対側に位置する。
【0112】
図17に示す例では、操作部5が退避位置に位置する状態において、電線91が端子部31と弾性部材4の可動部43との間に挟持されており、接続機器1aは結線状態である。接続機器1aが非結線状態から結線状態へと移行する際には、操作部5は、仮止め位置から弾性部材4の復元力によって反時計回り方向へ回転する。そして、保持機構20において被保持部56が操作保持部26と係合することにより、操作部5は、図17中における時計回り方向への回転が制限された状態で、図17に示す退避位置にて保持される。被保持部56は、操作保持部26と操作保持部26aとの間に位置し、操作保持部26aに上側から接触する。これにより、操作部5の図17中における反時計回り方向への回転も制限され、操作部5は退避位置にて安定的に保持される。
【0113】
図17に示す例では、カム部51のカム下凸部52が弾性部材4と接触しており、カム上凸部53が、ケース2のスリット29を介して右方に少し突出している。作業者は、電線91を軽く引っ張る等して、電線91が結線されていることを確認した後、カム上凸部53をケース2に向けて(すなわち、図17中の左方へと)押し込む。これにより、操作部5が図17中における反時計回り方向へと回転し、被保持部56は、図18に示すように、操作保持部26aの右端部を越えて操作保持部26aの下側に移動する。そして、保持機構20aにおいて被保持部56が操作保持部26aと係合し、操作部5は、図18中における時計回り方向への回転が制限された状態で、図18に示すもう1つの退避位置にて保持される。なお、操作部5の反時計回り方向へのこれ以上の回転は、カム部51のカム中央部54とケース2の支持部25との接触により制限される。
【0114】
図18に示す例では、カム上凸部53は、ケース2の内部に全体が収容されており、上述の蓋部(図示省略)が設けられている状態では、正面視において視認できない。このように、作業者が、電線91の結線を確認した後にカム上凸部53をケース2内に押し込んで、操作部5を上述の退避位置からもう1つの退避位置へと移動させることにより、電線91の結線が確認済みであることを、識別部であるカム上凸部53の位置から容易に認識することができる。また、図18に示す例では、操作部5のカム下凸部52は、結線状態の弾性部材4から離間している。これにより、電線91への通電時に発生する熱が、弾性部材4を介して操作部5に伝導することを防止することができる。
【0115】
図17および図18に示す接続機器1aでは、上述のように、操作部5は、操作部5の移動経路に沿って退避位置を挟んで仮止め位置の反対側に位置するもう1つの退避位置へと移動可能であり、当該もう1つの退避位置からの移動が制限された状態にて保持される。接続機器1aでは、例えば、結線される電線91が比較的細く、非結線状態から結線状態に移行する際に操作部5が可動部43に弾かれる力が比較的大きい場合、操作部5は図17に示す退避位置を通過し、図18に示すもう1つの退避位置にて、保持機構20aにより保持されてもよい。一方、結線される電線91が比較的太く、非結線状態から結線状態に移行する際に操作部5が可動部43に弾かれる力が比較的小さい場合は、操作部5は図17に示す退避位置にて保持機構20により保持されてもよい。これにより、結線される電線91が比較的細い場合であっても、非結線状態から結線状態に移行する際に、保持機構20近傍において操作部5からケース2に付与される力を低減することができる。
【0116】
図19は、本発明に係る他の好ましい接続機器1bを示す縦断面図である。図19では、初期状態の接続機器1bを示す。接続機器1bでは、図2に示す保持機構20に代えて、保持機構20とは異なる構造を有する保持機構20bが設けられる。また、接続機器1bでは、図2に示す操作部5に代えて、カム上凸部53とは形状が異なるカム上凸部53bを有する操作部5bが設けられる。接続機器1bの他の構成は、上述の接続機器1と略同じであり、対応する構成に同符号を付す。
【0117】
保持機構20bは、操作保持部26bと、被保持部56bとを備える。操作保持部26bはケース2の一部であり、被保持部56bは操作部5bの一部である。被保持部56bは、カム中央部54の図19中における左上の部位の外周縁から、回転軸24とは反対側に突出する。換言すれば、被保持部56bは、カム中央部54の左上の部位から、回転軸24を中心とする径方向の外方へと突出する。被保持部56bは、正面視において略半長円状の略板状の部位である。なお、被保持部56bの形状は様々に変更されてよい。
【0118】
操作保持部26bは、正面視において略長方形状の略板状の部位である。操作保持部26bは、回転軸24の図19中における左上側において、操作部5bの周囲に配置される。操作保持部26bは、ケース2の図19中における奥側の面から手前側に突出する。操作保持部26bは、厚さ方向において被保持部56bと略同じ位置に位置する。換言すれば、操作保持部26bは、ケース2のうち操作保持部26bの周囲の部位から、厚さ方向における被保持部56bと略同じ位置まで突出している。操作保持部26bのうち操作部5bと上記径方向にて対向する側面には、操作部5bおよび回転軸24に向かって突出する突起部261bが設けられる。
【0119】
図19に示す初期状態では、退避位置に位置する操作部5bの被保持部56bは、操作保持部26bの突起部261bよりも下側にて、操作保持部26bの上記側面、および、突起部261bの下側の側面と接触している。これにより、被保持部56bが操作保持部26bと係合し、操作部5bが、図19中における時計回り方向への回転が制限された状態で、退避位置にて保持される。接続機器1bでは、被保持部56bおよび操作保持部26bにより、操作部5bを退避位置にて保持する保持機構20bが構成される。
【0120】
操作保持部26bは、弾性変形可能な材料(例えば、比較的軟質な樹脂)により形成されており、上記径方向に弾性変形可能である。保持機構20bでは、操作保持部26bのうち被保持部56bと接触する部位(すなわち、操作保持部26bのうち図19中の下端部かつ厚さ方向の手前側の部位)のみを操作保持部と捉え、操作保持部26bの他の部位を当該操作保持部を支持する支持部と捉えると、当該操作保持部は、弾性変形可能な当該支持部(すなわち、弾性支持部)を介して、ケース2のうち当該操作保持部近傍の部位によって支持される。
【0121】
カム上凸部53bは、正面視における形状が少し異なる点を除き、図2に示すカム上凸部53と略同じ構造を有する。操作部5bでは、カム上凸部53bとカム中央部54との境界部に溝部531bが設けられる。溝部531bは、カム上凸部53bとカム中央部54との境界部において、カム部51bの手前側の面から奥側へと凹む略直線状の凹部である。溝部531bの左右両側の部位は、溝部531bよりも厚さ方向の奥側において連続している。
【0122】
図19に示す初期状態では、溝部531bは、上下方向に略平行に延びてカム部51bを上下に縦断する。溝部531bの上端は、ケース2の操作穴27の略鉛直下方に位置する。溝部531bの下端は、溝部531bの上端の略鉛直下方に位置する。溝部531bの下端は、端子部31の略鉛直上方に位置する。換言すれば、ケース2の操作穴27、溝部531bの上端および下端、並びに、端子部31は、平面視において重なる。したがって、操作穴27の上方から操作穴27を介してケース2の内部を見た場合、操作部5bの溝部531bを介して端子部31を視認可能である。
【0123】
接続機器1bに対して電線が接続される際には、まず、工具92の先端部がケース2の操作穴27に挿入され、初期状態の操作部5bに接触する。具体的には、工具92の先端部は、カム部51bのうちカム上凸部53bとカム中央部54との境界部において、溝部531bの上端部に挿入される。そして、工具92が下方へと押し込まれることにより、操作部5bが、初期状態から図19中における時計回り方向に回転する。
【0124】
このとき、操作保持部26bは、被保持部56bによって上記径方向の外方(すなわち、回転軸24から径方向において離れる方向)へと押圧され、当該径方向外方へと弾性変形する。被保持部56bは、操作保持部26bと接触した状態を維持しつつ上方へと移動し、操作保持部26bの突起部261bよりも上側に移動する。これにより、保持機構20bにおいて、操作保持部26bと被保持部56bとの係合(すなわち、操作保持部26bによる操作部5bの保持)が解除される。
【0125】
また、カム部51bのカム下凸部52は、接続機器1と略同様に、弾性部材4の可動部43の上面に接触し、可動部43を下方へと押し下げる。これにより、弾性部材4が撓み(すなわち、弾性変形し)、端子部31から下方へと離間する。上述のように、工具92の先端部は溝部531bに挿入されて操作部5bと係合しているため、工具92を押し下げる際に、工具92の先端部と操作部5bとの接触位置がずれることが抑制される。したがって、作業者が工具92を押し込む力が、工具92から操作部5bへと好適に伝達されるため、操作部5bを容易に回転させることができる。
【0126】
工具92が下方へと押し込まれ、操作部5bが、図20に示す非結線状態まで時計回り方向に回転されると、接続機器1と略同様に、カム部51bの突起部541の上端部(すなわち、第2部位514)がケース2の支持部25に下方から接触し、カム部51bを介した弾性部材4の復元力によって、突起部541の当該上端部が支持部25に対して押圧される。カム下凸部52の下端部(すなわち、第1部位513)からの復元力ベクトル81は、第1部位513と第2部位514とを結ぶ第1基準線82に略重なり、弾性部材4の復元力と、操作部5bに生じる当該復元力に対する反力とが釣り合う。これにより、操作部5bの周方向の位置(すなわち、回転位置)、および、弾性部材4の状態が、図20に示す非結線状態で維持される(すなわち、仮止めされる)。
【0127】
図20に示す非結線状態では、操作部5bのカム上凸部53bが、ケース2の右側面からスリット29を介して右方に突出する。ケース2から突出したカム上凸部53bは、作業者により視認可能である。カム上凸部53bは、接続機器1bが初期状態の場合(図19参照)、ケース2から突出しておらず、ケース2の内部に位置する。したがって、作業者は、カム上凸部53bのケース2からの突出状態を目視することで、接続機器1bが非結線状態であるか否かを容易に判別することができる。
【0128】
接続機器1bが非結線状態とされると、工具92が操作穴27から抜かれ、図21に示すように、電線91が挿入穴21に挿入されて端子部31と非結線状態の弾性部材4の可動部43との間に位置する。電線91は、その先端が解除部32と接触した状態で、ケース2内に少し押し込まれる。これにより、解除部32は、図20に示す状態から時計回り方向に少し回転し、カム部51bを押して反時計回り方向に少し回転させる。その結果、接続機器1と略同様に、図20に示す復元力ベクトル81が第1基準線82から右側にずれ、弾性部材4の復元力によってカム部51bに反時計回り方向の回転モーメントが作用する。そして、カム部51bが反時計回りに回転するとともに、弾性部材4が非結線状態から復元し、図21に示すように、弾性部材4の可動部43と端子部31との間に電線91が挟持された結線状態となる。接続機器1bでは、接続機器1と略同様に、電線91の自動結線が行われることにより、電線91の接続作業が簡素化される。
【0129】
カム部51bが反時計回りに回転する際には、カム下凸部52は、上方へと変位する弾性部材4の可動部43によって反時計回り方向へと弾かれ(すなわち、蹴り上げられ)、可動部43から上方に離間する。操作部5bの被保持部56bは、操作保持部26bを径方向外方へと押圧して弾性変形させることにより、下方へと滑らかに移動し、操作保持部26bの突起部261bよりも下側に位置する。これにより、被保持部56bが操作保持部26bと係合し、操作部5bが、弾性部材4から離れた退避位置において、保持機構20bにより保持される。退避位置に位置する操作部5bでは、上述のように、保持機構20bによって時計回り方向への回転が制限される。また、操作部5bが結線状態の弾性部材4から上方に離間しているため、結線状態の弾性部材4から操作部5bに対して復元力は付与されず、電線91に電流が流れる際に、電線91にて発生する熱が弾性部材4を介して操作部5bに伝導することも防止される。
【0130】
上述のように、図20に示す非結線状態では、カム上凸部53bは、ケース2の右側面からスリット29を介して右方に突出している。一方、図21に示す結線状態では、カム上凸部53bは、ケース2の内部に収容され、ケース2から突出していない。したがって、作業者は、カム上凸部53bのケース2からの突出状態を目視することで、接続機器1bが非結線状態であるか、それとも結線状態に移行したかを容易に判別することができる。すなわち、カム上凸部53bは、操作部5bの移動に伴って移動する識別部(インジケータ)として機能し、操作部5bの位置、および、接続機器1bの状態を視認可能に示す。
【0131】
図21に示す結線状態の接続機器1bから電線91を取り外す際には、例えば、作業者が上述の工具92(図19参照)の先端部を操作穴27に挿入し、カム部51bに接触させて押し下げることにより、カム部51bを図21に示す退避位置から時計回り方向に回転させる。これにより、弾性部材4の可動部43が押し下げられて電線91から下方へと離間し、弾性部材4および端子部31による電線91の挟持が解除される。このとき、弾性部材4は、操作部5bにより、結線状態よりも大きく弾性変形した非結線状態にて維持されてもよい。作業者は、挿入穴21から電線91を引っ張り出すことで、電線91を接続機器1bから容易に取り外すことができる。
【0132】
以上に説明したように、電線91が接続される接続機器1bは、ケース2と、端子部31と、弾性部材4と、操作部5bとを備える。端子部31は、ケース2に固定される導電性の部材である。弾性部材4は、ケース2に取り付けられる。弾性部材4は、結線状態において復元力により電線91を端子部31に押し付けて、電線91を弾性部材4と端子部31との間に挟持する。操作部5bは、弾性部材4に力を付与して結線状態よりも大きく弾性変形した状態である非結線状態にて維持する。接続機器1bでは、端子部31と非結線状態の弾性部材4との間に電線91が挿入された状態で、操作部5bによる弾性部材4の状態維持が解除されると、弾性部材4の復元力により、操作部5bが所定の退避位置へと移動されて、退避位置からの移動が制限された状態にて保持機構20bにより保持される。また、弾性部材4が、非結線状態から結線状態へと移行して、電線91を端子部31に押し付ける。これにより、接続機器1と略同様に、電線91が結線された状態において、操作部5bを所定の退避位置にて保持し、操作部5bの不要な変位を抑制することができる。
【0133】
接続機器1bでは、図22に示すように、初期状態の操作部5bの溝部531bを利用して、端子部31の電圧測定が可能である。具体的には、電圧測定用のテストピン93を、操作穴27を介してケース2内に挿入し、溝部531bに沿って下方へと移動して端子部31に接触させる。これにより、端子部31の電圧を容易に測定することができる。なお、テストピン93による端子部31の電圧測定は、図21に示す結線状態においても同様に可能である。
【0134】
上述の接続機器1,1a,1bでは、様々な変更が可能である。
【0135】
例えば、接続機器1では、弾性部材4は板バネには限定されず、他の構造を有するもの(例えば、弦巻バネ)であってもよい。接続機器1a,1bにおいても同様である。
【0136】
接続機器1では、上述のように、操作部5のカム上凸部53が識別部の機能を有するが、操作部5の他の部位、または、操作部5以外の部位が、操作部5の位置を示す視認可能な識別部であってもよい。あるいは、当該識別部は、必ずしも設けられなくてもよい。接続機器1a,1bにおいても同様である。
【0137】
上記例では、接続機器1の非結線状態の維持が解除されると、操作部5において、弾性部材4の復元力に対する反力が生じる部位が、第2部位514から第3部位515へと移行するが、これには限定されない。例えば、操作部5において上記反力が生じる部位は、接続機器1の状態に関わらず同じ構成(例えば、軸受け516)であってもよい。接続機器1a,1bにおいても同様である。
【0138】
上記例では、操作部5は、弾性部材4の復元力と上記反力との釣り合いによって仮止め位置に維持されるが、これには限定されず、他の様々な構成によって仮止め位置に維持されてもよい。操作部5bにおいても同様である。
【0139】
操作部5では、カム部51の形状および構造は上述の例には限定されず、適宜変更されてよい。また、操作部5は必ずしもカム部51を備える必要はなく、カム部51以外の構造を有していてもよい。操作部5bにおいても同様である。
【0140】
上述の弾性支持部57は、図2に示すような樹脂バネには限定されず、被保持部56を弾性的に支持可能であれば、その構造は様々に変更されてよい。操作保持部26および操作保持部26aが弾性支持部を介して支持される場合においても同様である。なお、被保持部56を支持する弾性支持部57、並びに、操作保持部26および操作保持部26aを支持する弾性支持部は省略されてもよい。
【0141】
図19に示す操作保持部26bの形状および構造は、様々に変更されてよい。例えば、操作保持部26bは、ケース2の図19中における奥側の面から手前側に突出する略半球状の部材であってもよく、カム部51bが回転する際に、被保持部56bによって厚さ方向の奥側へと押圧されて厚さ方向に弾性変形してもよい。
【0142】
保持機構20は、必ずしも被保持部56と操作保持部26とが係合する構造である必要はなく、操作部5を所定の退避位置にて保持可能であれば、様々に変更されてよい。例えば、保持機構20は、ケース2に設けられた磁石と、操作部5に設けられた磁性体との間に生じる磁気力を利用して、操作部5を退避位置にて保持してもよい。保持機構20a,20bについても同様である。
【0143】
退避位置にて保持される操作部5は、必ずしも、結線状態の弾性部材4から離間している必要はなく、弾性部材4と接触していてもよい。また、この場合、結線状態の弾性部材4から操作部5に対して、弾性部材4の復元力の一部が付与されてもよい。操作部5bにおいても同様である。
【0144】
接続機器1では、操作部5の一部は、必ずしも非結線状態においてケース2から突出している必要はない。例えば、接続機器1の状態にかかわらず、操作部5全体がケース2内に位置していてもよく、操作部5の一部が常にケース2から突出していてもよい。接続機器1a,1bにおいても同様である。
【0145】
解除部32は、必ずしも端子部31と一繋がりの部材である必要はなく、端子部31とは別部材であってもよい。
【0146】
上述の接続機器1,1a,1bは、様々な装置において電線を接続するために利用されてよい。例えば、接続機器1,1a,1bは、リレーソケットまたは操作スイッチ等に利用されてよい。
【0147】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0148】
1,1a,1b 接続機器
2 ケース
4 弾性部材
5,5b 操作部
20,20a,20b 保持機構
24 回転軸
26,26a,26b 操作保持部
31 端子部
51,51b カム部
53,53b カム上凸部
56,56b 被保持部
57 弾性支持部
81 復元力ベクトル
82 第1基準線
83 第2基準線
91 電線
513 第1部位
514 第2部位
515 第3部位
516 軸受け
図1
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