(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019019
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ラテックスフォーム製造用組成物、及びラテックスフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
C08J9/30 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112979
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022120907
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】森 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】奥村 純子
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA06
4F074AA12
4F074AA13
4F074AD12
4F074AG04
4F074AG12
4F074AH04
4F074BB05
4F074BB29
4F074BC02
4F074BC04
4F074CB52
4F074CC06Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA17
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを得る新規な技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、ゴムラテックスと、ノニオン性界面活性剤と、を含有し、前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物を提供する。本技術では、また、本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物を用いて、ダンロップ法にてラテックスフォームを製造する、ラテックスフォームの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物。
【請求項2】
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、アニオン性界面活性剤を固形分0~10質量部含有する、請求項1に記載のラテックスフォーム製造用組成物。
【請求項3】
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、両性界面活性剤を固形分0~5質量部含有する、請求項1又は2に記載のラテックスフォーム製造用組成物。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリアルキレングリコール誘導体である、請求項1又は2に記載のラテックスフォーム製造用組成物。
【請求項5】
ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物を用いて、ダンロップ法にてラテックスフォームを製造する、ラテックスフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ラテックスフォーム製造用組成物、及びラテックスフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用パフ等に使用されるラテックスフォームは、ゴムラテックスに、架橋剤、架橋促進剤、起泡剤、気泡安定剤、抗菌剤、可塑剤、顔料等の各種薬剤を添加した配合液(ラテックスフォーム製造用組成物)に気体を混入させホイップクリーム状としたものに、ケイフッ化ナトリウム等のゲル化剤を入れてゲル化させる、所謂、ダンロップ法により製造されることが多い。このダンロップ法においては、ケイフッ化ナトリウム等のヘキサフルオロケイ酸塩の添加により、フッ化水素が発生し、このフッ化水素により急激にpHが低下することで、急激なゲル化が起こる。このように急激なゲル化が起こると、混入させた気体により発生した気泡の破泡や合一が起こってしまい、製造されるラテックスフォームの品質に影響が出るという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、ラテックスフォームの製造技術においては、種々の開発が進められている。例えば、特許文献1では、気泡安定剤に、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いることにより、ピンホールの少ない、収縮による変形のない、歩留まりの良い、すなわち、品質の良いラテックススポンジを得ることができる技術が開示されている。
【0004】
また、化粧用パフ等に適したスポンジの開発も進められている。例えば、特許文献2では、全高分子ポリオールに対して30質量%以上100質量%以下のダイマー酸ポリエステルポリオールを含む高分子ポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネート系のイソシアネートと、整泡剤と、触媒と、を含む組成物の機械発泡体で構成することにより、適度な吸液率、かつ肌感触が良い連続通気型スポンジ、および化粧用パフを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-046295号公報
【特許文献2】特開2020-186309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、ラテックスフォームの製造技術においては、種々の開発が進められているが、更なる開発が望まれているのが実情である。例えば、前記特許文献1の技術では、気泡を重縮合物で覆うことで重縮合物が泡の形状を保つことによりゲル化による破泡を抑制する技術であるが、製造上で硫酸等の酸と共に加熱して得られる化合物のため、重縮合物に含まれる酸を除去する必要があるといった問題がある。また、前記特許文献2では、適度な吸液率、かつ肌感触が良い連続通気型スポンジを得る技術が提案されているが、特許文献2はウレタンフォームであり、微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを得る技術については、まだまだ開発の途である。
【0007】
そこで、本技術では、微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを得る新規な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを得る技術について、鋭意研究を行った結果、特定の界面活性剤を特定量用いることで、該界面活性剤が界面活性作用と共に、増粘作用、保水作用、液体時の膜である泡の補強作用、固体時の膜であるゲルの補強作用を発揮することを突き止め、本技術を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本技術では、まず、ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物を提供する。
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、アニオン性界面活性剤を固形分0~10質量部含有させることもできる。
また、本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、両性界面活性剤を固形分0~5質量部含有させることもできる。
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物において、前記ノニオン性界面活性剤としては、ポリアルキレングリコール誘導体を用いることができる。
【0010】
本技術では、次に、ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物を用いて、ダンロップ法にてラテックスフォームを製造する、ラテックスフォームの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例12のラテックスフォームの外観写真と、走査電子顕微鏡(SEM)倍率50倍で撮影した顕微鏡写真である。
【
図2】比較例1のラテックスフォームの外観写真と、走査電子顕微鏡(SEM)倍率50倍で撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
1.ラテックスフォーム製造用組成物
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物は、ゴムラテックスと、ノニオン性界面活性剤と、を含有する。本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、可塑剤、及びその他目的に応じてラテックスフォームの製造に用いることが可能な各種成分を含有させることができる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
(1)ゴムラテックス
本技術に用いることができるゴムラテックスは、天然ゴム又は合成ゴムの未架橋又は部分架橋ポリマー(以下、「ゴムポリマー」と称する。)が、粒子として水中に分散されたものである。ゴムポリマーが天然ゴムの場合、ゴム樹液、これを濃縮したもの、又はゴム樹液等に更に保存剤等を配合したものが用いられる。ゴムポリマーが合成ゴムの場合、乳化重合によって調製されたゴムラテックスや、溶液重合等の方法によって得られたポリマーを、界面活性剤と水によって乳化し、必要に応じて溶媒を除去して調製されたゴムラテックスを用いることができる。
【0015】
本技術に用いることができるゴムポリマーとしては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォーム製造用組成物に用いることができるゴムポリマーを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、モノマー単位としてエチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、及びビニルピロリドン等を1種以上含むポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリレート-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム(MBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。また、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジン系ラテックス、DPL(解重合ラテックス)、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス中のゴムポリマー等も用いることができる。
【0016】
本技術では、ゴムラテックスとして天然ゴム(NR)ラテックスを含有するゴムラテックスを用いることができる。天然ゴムラテックスを含有するゴムラテックスを用いることで、ラテックスフォームのバイオマス率を向上させることができる。具体的には、後述する実施例で実証する通り、天然由来原料である天然ゴムのゴム成分中の含有率が40重量%以上のラテックスフォームを製造することができる。ゴムラテックスとして天然ゴムラテックスを用いる場合、脱アンモニア処理を行うことが好ましい。脱アンモニア処理された天然ゴムラテックスを用いることで、架橋反応を効率化させることができる。
【0017】
(2)ノニオン性界面活性剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有することを特徴とする。ラテックスフォームの製造に当たり、ホイップクリーム状となったラテックスフォーム製造用組成物を、如何に破泡させずにゲル化させるかが非常に重要である。しかしながら、気泡膜を安定化させすぎてしまうと、ゲル化障害を起こす可能性がある。発泡促進と気泡安定化のために界面活性剤が用いられているが、本願発明者らは、界面活性剤の中でもアニオン性界面活性剤や両性界面活性剤を用いると、気泡膜が安定化しすぎてしまい、ゲル化障害を起こすことを見出した。また、一方で、ノニオン性界面活性剤を、前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分0.5質量部以上用いることで、発泡促進作用と適度な気泡膜安定化作用を発揮すると共に、増粘作用、保水作用、泡補強作用を発揮することを見出した。
【0018】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いるノニオン性界面活性剤の量は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して固形分0.5質量部以上であれば、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量の下限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、0.5質量部以上、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、気泡促進作用と適度な気泡膜安定化作用を発揮すると共に、増粘作用、保水作用、泡補強作用を発揮することができる。その結果、微細かつ均一なセル構造を有し、機械的特性や外観の優れたラテックスフォームを得ることができる。また、吸水率が高すぎず、適度な吸水率のラテックスフォームを得ることができる。
【0019】
本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量の上限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害の発生を防止することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0020】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いるノニオン性界面活性剤に含まれる化合物の分子量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができるノニオン性界面活性剤は、例えば、分子量700以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上の化合物を有することが好ましい。本技術に用いることができるノニオン性界面活性剤に含まれる化合物の分子量の下限値を、この範囲とすることにより、気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害の発生をより確実に防止することができる。なお、この範囲の分子量の化合物を含むノニオン性界面活性剤は、水溶性、かつ、常温でペースト状ないし固体であるという性質を有する。
【0021】
本技術に用いることができるノニオン性界面活性剤は、例えば、分子量10000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下の化合物を有することが好ましい。本技術に用いることができるノニオン性界面活性剤に含まれる化合物の分子量の上限値を、この範囲とすることにより、気泡促進作用と適度な気泡膜安定化作用をより確実に発揮すると共に、増粘作用、保水作用、泡補強作用をより確実に発揮することができる。その結果、更に微細かつ均一なセル構造を有し、機械的特性や外観の更に優れたラテックスフォームを得ることができる。また、吸水率が高すぎず、適度な吸水率のラテックスフォームを得ることができる。
【0022】
なお、本技術において、「分子量」とは、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS分析法)にて分析された値である。
【0023】
本技術に用いるノニオン性界面活性剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォーム製造用組成物に用いることができるノニオン性界面活性剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。ノニオン性界面活性剤とは、親水基と疎水基とを有する界面活性剤であって、水に溶けてもイオンにならない(水中でイオン解離しない)界面活性剤である。本技術に用いるノニオン性界面活性剤としては、例えば、親水基としてエーテル結合を有するポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤(下記の化学式(1)を参照)、親水基として水酸基を有する多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(下記の化学式(2)を参照)等が挙げられる。疎水基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族の側鎖を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0024】
【0025】
【0026】
さらに、ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールアルキレン(エチレン等)オキサイド付加物等が挙げられる。なお、ポリプロピレングリコールアルキレン(エチレン等)オキサイド付加物とは、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドのブロック共重合体等であり、例えば、所謂、プルロニック(登録商標)型非イオン界面活性剤が含まれる。
【0027】
また、多価アルコール型ノニオン性界面活性剤としては、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド、及びこれらのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0028】
この中でも、本技術では、ノニオン性界面活性剤として、ポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)を用いることが好ましい。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としてポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)を用いる場合、ポリアルキレングリコールの誘導体の分子量も、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体の分子量の下限値としては、例えば、700以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上である。本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体の分子量の下限値を、この範囲とすることにより、気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害の発生をより確実に防止することができる。
【0030】
本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体の分子量の上限値としては、例えば、10000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体の分子量の上限値を、この範囲とすることにより、気泡促進作用と適度な気泡膜安定化作用をより確実に発揮すると共に、増粘作用、保水作用、泡補強作用をより確実に発揮することができる。その結果、更に微細かつ均一なセル構造を有し、機械的特性や外観の更に優れたラテックスフォームを得ることができる。
【0031】
ノニオン性界面活性剤としてポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)において、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドのブロック共重合体、例えば、下記の化学式(3)に示すプルロニック(登録商標)型ノニオン性界面活性剤を用いる場合、付加させるアルキレンオキサイドにおけるアルキレン単位の炭素数も、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体におけるアルキレン単位は、C2のエチレンオキサイドと、C3以上のアルキレンオキサイドを併用することができ、ポリアルキレングリコールの誘導体におけるアルキレン単位の炭素数の上限値は、エチレンオキサイドが親水基、C3以上のアルキレンオキサイドが疎水基として働くことを考慮すると、C3以上のアルキレンオキサイドの炭素数として6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
【0032】
【化3】
(a、b、およびcは、それぞれ任意の整数)
【0033】
また、本技術に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)の疎水基における炭素数は、7以上が好ましい。例えば、エチレンオキサイド付加物において、疎水基が、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、高級脂肪族アミン、脂肪酸アミド等の場合、疎水基における炭素数は、7以上が好ましい。疎水基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族の側鎖を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0034】
本技術に用いるポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォーム製造用組成物に用いることができるポリアルキレングリコールの誘導体を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。ポリアルキレングリコールの誘導体(ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤)としては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルやポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルやポリオキシアルキレンジアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアリールエーテルやポリオキシアルキレンジアリールエーテル等のポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノ脂肪酸エステルやポリオキシアルキレングリコールジ脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。
【0035】
(3)ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を用いることができる。前述の通り、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤を用いると、気泡膜が安定化しすぎてしまい、ゲル化障害を起こす場合があるが、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤を用いることも可能である。その場合は、他の成分や製造方法等を工夫することでゲル化障害を回避させればよい。
【0036】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物にアニオン性界面活性剤を用いる場合、その含有量としては、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、0質量部とすることが最も好ましいが、例えば、上限値を10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下として用いることもできる。本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物中のアニオン性界面活性剤の量をこの範囲とすることで、気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害の発生を防止することができる。
【0037】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に両性界面活性剤を用いる場合、その含有量としては、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、0質量部とすることが最も好ましいが、例えば、上限値を5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下として用いることもできる。本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物中の両性界面活性剤の量をこの範囲とすることで、気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害の発生を防止することができる。
【0038】
本技術では、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤は用いないことが好ましいが、ゴムラテックスとして天然ゴムを用いる場合は、アニオン性界面活性剤を用いることで、天然ゴム粒子の表面を安定化させることができ、その結果、天然ゴムの凝集を抑制することもできる。このように、用いる材料の性質に応じて、本技術の作用や効果を損なわない範囲において、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤を用いることが可能である。
【0039】
(4)架橋剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、架橋剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0040】
架橋剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物、又はフェノール化合物等が挙げられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄及び微粉末硫黄の他;二塩化硫黄及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物等を用いることができる。有機過酸化物による架橋の場合、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m-トルイルペルオキシド等のアシルペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブトキシペルオキシ)ヘキサン等のアルキルペルオキシド;t-ブトキシペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノアート、t-ブトキシペルオキシベンゾアート等のペルオキシエステル;1,1-ビス(t-ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブトキシペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサ等のペルオキシケタール;t-ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t-ブトキシペルオキシ-2-エチルヘキシルカルボナート等のペルオキシカルボナート等の有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブ等の無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサン等の不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に使用してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化-p-第三ブチルフェノール樹脂及びアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を用いることができる。
【0041】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋剤の含有量の下限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば0.2質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上である。用いる架橋剤の量を、この範囲とすることにより、発泡・架橋前の混合物の粘度を向上させて発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0042】
本技術では、用いる架橋剤の量の上限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。用いる架橋剤の量を、この範囲とすることにより、発泡不良を防ぎ、成形性を向上させることができる。
【0043】
(5)架橋促進剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、架橋促進剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋促進剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋促進剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0044】
架橋促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバミン酸亜鉛類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのようなチウラム類;N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド類;2-メルカプトベンゾチアゾール及びその塩(ナトリウム塩、亜鉛塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホリニル-2-ベンゾチアジルジスルフィド、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾールのようなチアゾール類;並びにそれらの混合物等を挙げることができる。
【0045】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋促進剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋促進剤の含有量の下限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。用いる架橋促進剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度を上げてガス抜けを抑制し、製造時の発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0046】
本技術では、用いる架橋促進剤の量の上限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば15質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。用いる架橋促進剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度が上がり過ぎることによって未発泡となることを防ぎ、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0047】
(6)架橋助剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、架橋助剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋助剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋助剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0048】
架橋助剤としては、例えば、酸化亜鉛(活性亜鉛華)、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。この中でも、本技術では、発泡速度と架橋速度のタイミング調整などの観点から、酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0049】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋助剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋助剤の含有量の下限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。用いる架橋助剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度を上げてガス抜けを抑制し、製造時の発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0050】
本技術では、用いる架橋助剤の量の上限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば15質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。用いる架橋助剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度が上がり過ぎることによって未発泡となることを防ぎ、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0051】
(7)可塑剤
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、可塑剤を用いることができる。本技術に用いることができる可塑剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる可塑剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0052】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の炭化水素系プロセス油、スピンドル油、ペトロラタム及び流動パラフィンの等の炭化水素油;ひまし油、紅花油、綿実油、あまに油、菜種油、大豆油、落下生油、パーム油、やし油、オリーブ油、コーン油等の植物油及び動物油、並びにそれらを脱水又は水素化して得られる脂肪酸エステル油等の生物起源脂肪酸エステル油、例えば脱水ひまし油等;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジ-n-オクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、リン酸トリクレジル、リン酸アルキルアリル、ブチルフタリルブチルグリコレート、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、トリエチレングリコール・ジ(2-エチル・ヘキソエート)、クエン酸アセチル・トリ-n-ブチル等が挙げられる。
【0053】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いる可塑剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の可塑剤の含有量の下限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。用いる可塑剤の量を、この範囲とすることにより、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0054】
本技術では、用いる可塑剤の量の上限値は、ゴムラテックス固形分100質量部に対して、固形分として、例えば15質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。用いる可塑剤の量を、この範囲とすることにより、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0055】
(8)その他
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ラテックスフォームの製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0056】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いることができる成分としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、着色剤、分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤等を挙げることができる。
【0057】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物には、前述したノニオン性界面活性剤が、増粘作用、保水作用、泡補強作用を発揮するため、増粘剤等を用いなくても、増粘効果が期待できるが、増粘剤を用いることも可能である。
【0058】
2.ラテックスフォーム
本技術に係るラテックスフォームは、前述した本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物を用いて製造される。
【0059】
本技術に係るラテックスフォームは、後述する実施例の写真に示す通り、微細かつ均一なセル構造を有する。また、本技術に係るラテックスフォームは、吸水性が高すぎず、適度な吸水率であることを特徴とする。
【0060】
本技術に係るラテックスフォームの吸水率は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば、400%未満、好ましくは350%未満、より好ましくは300%未満である。
【0061】
本技術に係るラテックスフォームの密度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されない。本技術に係るラテックスフォームの密度の下限値は、例えば80kg/m3以上、好ましくは90kg/m3以上、より好ましくは110kg/m3以上である。本技術に係るラテックスフォームの密度の上限値は、例えば230kg/m3以下、好ましくは220kg/m3以下、より好ましくは200kg/m3以下である。
【0062】
本技術に係るラテックスフォームの硬さ(Type-F)は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されない。本技術に係るラテックスフォームの硬さ(Type-F)の下限値は、例えば40以上、好ましくは43以上、より好ましくは45以上である。本技術に係るラテックスフォームの硬さ(Type-F)の上限値は、例えば95以下、好ましくは90以下、より好ましくは87以下である。
【0063】
本技術に係るラテックスフォームの50%圧縮荷重は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されない。本技術に係るラテックスフォームの50%圧縮荷重の下限値は、例えば3kPa以上、好ましくは4kPa以上、より好ましくは5kPa以上である。本技術に係るラテックスフォームの50%圧縮荷重の上限値は、例えば35kPa以下、好ましくは33kPa以下、より好ましくは30kPa以下である。
【0064】
3.ラテックスフォームの用途
本技術に係るラテックスフォームは、微細かつ均一なセル構造、および適度な吸水率であることを利用して、様々な用途に用いることができる。例えば、化粧用パフ、顔面に貼るシート、アイカラーチップ等の肌に直接触れる製品、マットレス、和洋枕、敷布団、椅子用クッションなどの家庭用品、列車、飛行機及び自動車等の乗り物用の座席クッション、じゅうたんの裏打ち、各種パッキン、電子機器や家庭用電化製品のシール材、緩衝材、ワイビング材、スポンジたわし、吸水ロール、吸水マット等に用いることができる。これらの中でも、本技術に係るラテックスフォームは、特に、化粧用パフに好適に使用することができる。
【0065】
4.ラテックスフォームの製造方法
本技術に係るラテックスフォームは、前述した本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物の各成分を混合して組成物を調製し、発泡、ゲル化させ、加熱架橋することにより製造することができる。ラテックスフォームの製造方法としては、ラテックスフォーム製造用組成物を物理的(機械的)に起泡させ、常温で凝固(ゲル化)させるダンロップ法と、起泡を化学的に行い、ゲル化を凍結で行うタラレイ法とが知られている。本技術ではどちらの製造方法を用いることも可能であるが、特に、ダンロップ法を採用することが好ましい。
【0066】
ダンロップ法は、組成物調製工程、発泡・ゲル化工程、架橋工程等を行う方法である。
以下、各工程について説明する。
【0067】
(1)組成物調製工程
組成物調製工程は、ラテックスフォーム製造用組成物を調製する工程である。また、ゴムラテックスに、ノニオン性界面活性剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、可塑剤等の各種添加剤を添加し、ミキサー等で十分に撹拌して混合することにより、ラテックスフォーム製造用組成物を調製する。
【0068】
(2)発泡・ゲル化工程
発泡・ゲル化工程は、調製されたラテックスフォーム製造用組成物に、ゲル化剤、及び気体を混入させ、十分に撹拌混合することで発泡させると共にゲル化させ、ゲル状物を得る工程である。
【0069】
本技術で用いることができるゲル化剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができるゲル剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。ゲル化剤としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カ・BR>潟Eム、ケイフッ化カルシウムのようなヘキサフルオロケイ酸塩;又はシクロヘキシルアミンの酢酸塩、スルファミン酸塩のようなシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
【0070】
本技術の発泡・ゲル化工程において、用いることができる気体としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる気体を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、空気、窒素、二酸化炭素、及び周囲温度で通常気体であるフルオロカーボン類が挙げられる。
【0071】
(3)架橋工程
架橋工程は、前記発泡・ゲル化工程で得られたゲル状物を、流延、注型、又は押出し成形等の方法により所望の形状に加工し、次いで、加熱して架橋反応を進行させる工程である。架橋工程における加熱の温度は、用いる架橋剤の種類等に応じて自由に設定することができる。
【0072】
架橋工程後、脱型、洗浄、乾燥、切断、研磨等のラテックスフォームの用途等に応じた所望の工程を加えて、所定形状のラテックスフォームを製造することができる。
【0073】
本技術では、以下の態様を採用することができる。
[1]
ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物。
[2]
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、アニオン性界面活性剤を固形分0~10質量部含有する、[1]に記載のラテックスフォーム製造用組成物。
[3]
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、両性界面活性剤を固形分0~5質量部含有する、[1]又は[2]に記載のラテックスフォーム製造用組成物。
[4]
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリアルキレングリコール誘導体である、[1]から[3]のいずれかに記載のラテックスフォーム製造用組成物。
[5]
ゴムラテックスと、
ノニオン性界面活性剤と、
を含有し、
前記ゴムラテックス固形分100質量部に対して、前記ノニオン性界面活性剤を固形分0.5質量部以上含有する、ラテックスフォーム製造用組成物を用いて、ダンロップ法にてラテックスフォームを製造する、ラテックスフォームの製造方法。
【実施例0074】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0075】
(1)原料
ゴムラテックス1:NBRラテックス
ゴムラテックス2:SBRラテックス
ゴムラテックス3:天然ゴムラテックスの脱アンモニア処理物
可塑剤:オリーブオイル
ノニオン性界面活性剤1、3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ノニオン性界面活性剤2:ポリアルキレングリコール誘導体(分子量:3069~4560、C3H6O単位を有する)
ノニオン性界面活性剤4:ポリアルキレングリコール誘導体
抗菌剤:ジンクピリチオン
防カビ剤:チアベンダゾール
架橋剤:硫黄
架橋助剤:酸化亜鉛
架橋促進剤1:チアゾール系架橋促進剤
架橋促進剤2:ジチオカルバミン酸亜鉛系架橋促進剤
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤
老化防止剤:4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)
アニオン性界面活性剤1:オレイン酸カリウム塩
アニオン性界面活性剤2:スルホコハク酸N-アルキルモノアミドジナトリウム
アニオン性界面活性剤3:ステアリン酸アンモニウム
両性界面活性剤1:ミリスチルジメチルアミノ酢酸
両性界面活性剤2:ヤシ脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン
増粘剤:ポリエチレンイミン
【0076】
(2)ラテックスフォームの製造
ダンロップ法に準じて、下記表1に示すラテックスフォーム製造用組成物の各成分を混合して組成物を調製し、ゲル化剤としてケイフッ化ソーダを加えて、発泡、ゲル化させ、加熱架橋することにより、各ラテックスフォームを製造した。
【0077】
(3)評価
ラテックスフォームの製造時および製造後において、下記の方法を用いて各評価を行った。
【0078】
[気泡寿命(秒)]
前記ゲル化剤を加える前の配合液を用いて、下記表1に示すラテックスフォーム製造用組成物の各成分を混合して組成物からなる配合液を用いて、5ccのシャボン玉を作成し、その寿命を計測した。シャボン玉の作成器具としては、シリンジの先にストローが付きのゴムチューブが付いたものを使用した。ストローの先に配合液の組成物を浸漬させ、ストローの先端部に配合液の膜がある状態で、シリンジにより空気を5cc封入してシャボン玉を形成し、その気泡が割れるまでの時間を計測した。
【0079】
[ゲルタイム(秒)]
起泡機からカップに吐出された発泡液に、10秒毎に棒を刺して液状から固体状への変化するタイミングを確認し、液体から固体に切り替わった時間をゲルタイムとした。
【0080】
[外観 見栄え評価]
製造したラテックスフォームの外観について、下記の評価基準に基づいて評価した。
4:ひび割れ又はピンホールの長径が0.5mm以上のものが0個
3:ひび割れ又はピンホールの長径が0.5mm以上のものがあるが、1mm以上のものが0個
2:ひび割れ又はピンホールの長径が1mm以上のものが1個以下
1:ひび割れ又はピンホールの長径が1mm以上のものが2個以上
【0081】
[セル径(μm)]
走査電子顕微鏡(JSM-IT100 InTouchScope:日本電子株式会社製)
【0082】
[密度(kg/m3)]
JIS K6401(=K7222)に従って測定した。
【0083】
[硬さ(Type-F)]
Type-F硬度計を用いて測定した。
【0084】
[引張強度(kPa)]
JIS K6251に従って測定した。
【0085】
[伸び(%)]
JIS K6251に従って測定した。
【0086】
[25%圧縮荷重(kPa)、50%圧縮荷重(kPa)]
JIS K6254に従って測定した。
【0087】
[100%Mo(kPa)]
JIS K6251に従って測定した。
【0088】
[反発弾性(%)]
JIS K6255に従って測定した。
【0089】
[圧縮残留歪(%)]
JIS K6254に従って測定した。
【0090】
[静摩擦係数]
JIS K7125に従って測定した。
【0091】
[吸水率(%)]
デシケーターの中に蒸留水を入れ、試験片を水面下50mmの位置に浸漬させ、3分間、16.7HPaの減圧下に置いた。3分経過後、常温に戻し、そのまま3分間浸漬した。浸漬させた試験片をデシケーターより取り出し、表面に付着した水滴をろ紙で拭き取った。電子天秤で重量を測定し、下記の数式(1)に基づいて、吸水率を算出した。
【0092】
[数1]
吸水率(%)=[{浸漬後の試験片の重量(g)-浸漬前の試験片の重量(g)}/浸漬前の試験片の重量(g)]×100 ・・・(1)
【0093】
(4)結果
結果を下記の表1に示す。また、実施例12及び比較例1のラテックスフォームの外観写真と、走査電子顕微鏡(SEM)倍率50倍で撮影した顕微鏡写真を、
図1及び
図2に示す。
【表1】
【0094】
(5)考察
表1、
図1、及び
図2に示す通り、ノニオン性界面活性剤をゴムラテックス固形分100質量部に対して固形分0.5質量部以上用いた実施例1~16は、ノニオン性界面活性剤の量がゴムラテックス固形分100質量部に対して固形分0.5質量部未満の比較例1~7に比べて、微細かつ均一なセル構造を有しており、吸水率が高すぎず、適度な吸水率を有していた。また、実施例17~18に示すように、ゴムラテックスとして天然ゴム(NR)ラテックスを含有するゴムラテックスを用いた場合であっても、実施例1~16と同様に、品質の高いラテックスフォームを製造することができた。