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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019031
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】静電噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20240201BHJP
   B05B 5/053 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B05B5/08 F
B05B5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114989
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022120621
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和昭
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 義基
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 翔志
【テーマコード(参考)】
4F034
【Fターム(参考)】
4F034AA04
4F034BA01
4F034BB16
4F034BB25
4F034BB26
4F034BB28
4F034CA11
4F034DA16
4F034DA24
4F034DA26
(57)【要約】
【課題】意図しない塗布パターンが形成されるのを防止することができる静電噴霧装置を提供する。
【解決手段】液体を噴霧するノズル22を備える液体噴霧部20と液体噴霧部20に対して異極となる異極部40との間に電圧を印加することでノズル22から異極部40に向けて液体を噴霧するエレクトロスプレー法による静電噴霧装置10であって、液体噴霧部20と、液体噴霧部20と異極部40との間に電圧を印加することで、液体を帯電状態でノズル22から離脱させて霧化する静電気力を発生させる電圧印加手段50と、ノズル22の先端外周面の少なくとも一部を覆い、覆った部分への静電気力の作用を遮蔽する遮蔽部材100と、を有し、遮蔽部材100のノズル22の先端外周面に対向する内側面100bとノズル22の先端外周面との間にノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fを有する、静電噴霧装置10を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧するノズルを備える液体噴霧部と前記液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加することで前記ノズルから異極部に向けて前記液体を噴霧するエレクトロスプレー法による静電噴霧装置であって、
前記液体噴霧部と、
前記液体噴霧部と前記異極部との間に電圧を印加することで、前記液体を帯電状態で前記ノズルから離脱させて霧化する静電気力を発生させる電圧印加手段と、
前記ノズルの先端外周面の少なくとも一部を覆い、覆った部分への前記静電気力の作用を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、
前記遮蔽部材の前記ノズルの先端外周面に対向する内側面と前記ノズルの先端外周面との間に前記ノズルの軸線に対し垂直方向の隙間を有する、静電噴霧装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、先端が前記ノズルの先端より後方に配置される、
請求項1に記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、先端が前記ノズルの先端より1mm以上5mm以下後方に配置される、
請求項2に記載の静電噴霧装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の内側面と前記ノズルの先端外周面との間の前記隙間は、前記ノズルの軸線に対し垂直方向に0.2mm以上5mm以下である、
請求項1に記載の静電噴霧装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記ノズルの先端外周面を全周に亘り覆う、
請求項1又は請求項2に記載の静電噴霧装置。
【請求項6】
前記隙間に溜まった前記液体を除去するように洗浄する洗浄機構を備え、
前記洗浄機構は、前記隙間に洗浄液を供給可能に構成される、
請求項1に記載の静電噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を帯電状態で液体噴霧部の先端から離脱させ、離脱した液体が静電爆発して霧化状態で被塗物に噴霧され塗布される静電噴霧装置が開示されている。この静電噴霧装置は、液体噴霧部の先端から帯電状態の液体を離脱させるための静電気力を発生させる電圧印加手段を備えている。また、液体噴霧部は、液体の出口となる開口部を有するノズルと、ノズル内に移動可能に配置される心棒を有している。これにより、この静電噴霧装置は、ノズルの開口径を大きくしても、安定した霧化が行え、目詰まりが起こり難いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-131961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、静電気力によって液体噴霧部の先端から離脱しなかった一部の液体がノズルの先端からノズルの先端外周面に伝わって液溜まりが形成されることがある。この液溜まりの先端部分に静電気力が作用すると、液溜まりから液体が離脱して霧化し、霧化した液体によって被塗物の表面に意図しない塗布パターンが形成される虞がある。
【0005】
そこで、本開示は、意図しない塗布パターンが形成されるのを防止することができる静電噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下によって把握される。
(1)本発明の静電噴霧装置は、液体を噴霧するノズルを備える液体噴霧部と前記液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加することで前記ノズルから異極部に向けて前記液体を噴霧するエレクトロスプレー法による静電噴霧装置であって、前記液体噴霧部と、前記液体噴霧部と前記異極部との間に電圧を印加することで、前記液体を帯電状態で前記ノズルから離脱させて霧化する静電気力を発生させる電圧印加手段と、前記ノズルの先端外周面の少なくとも一部を覆い、覆った部分への前記静電気力の作用を遮蔽する遮蔽部材と、を有し、前記遮蔽部材の前記ノズルの先端外周面に対向する内側面と前記ノズルの先端外周面との間に前記ノズルの軸線に対し垂直方向の隙間を有する。
(2)上記(1)において、前記遮蔽部材は、先端が前記ノズルの先端より後方に配置される。
(3)上記(2)において、前記遮蔽部材は、先端が前記ノズルの先端より1mm以上5mm以下後方に配置される。
(4)上記(1)において、前記遮蔽部材の内側面と前記ノズルの先端外周面との間の前記隙間は、前記ノズルの軸線に対し垂直方向に0.2mm以上5mm以下である。
(5)上記(1)又は(2)において、前記遮蔽部材は、前記ノズルの先端外周面を全周に亘り覆う。
(6)上記(1)において、前記隙間に溜まった前記液体を除去するように洗浄する洗浄機構を備え、前記洗浄機構は、前記隙間に洗浄液を供給可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、意図しない塗布パターンが形成されるのを防止することができる静電噴霧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置の全体構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る液体噴霧部、遮蔽部材を示す分解断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る液体噴霧部の先端側を拡大した一部拡大断面図であり、(a)は心棒の先端面がノズルの先端よりも後方に位置する場合の図であり、(b)は(a)の状態よりも心棒の先端面が前方に位置する場合の図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る液体噴霧部から液体を噴霧した状態を示す断面図である。
図5】従来の静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す斜視図である。
図6】従来の静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す側面図である。
図7】従来の静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す背面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す斜視図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す側面図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置の液体噴霧部から噴霧した液体の塗布パターンを示す背面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る液体噴霧部、遮蔽部材を示す断面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る液体噴霧部、遮蔽部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
なお、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0010】
本発明に係る静電噴霧装置は、液体を噴霧するノズルを備える液体噴霧部とこの液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加することでノズルから異極部に向けて液体を噴霧するエレクトロスプレー法による静電噴霧装置である。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置10の全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、静電噴霧装置10は、液体を噴霧するノズル22を備える液体噴霧部20と液体噴霧部20に対して異極となる異極部40との間に電圧を印加することでノズル22から異極部40に向けて液体を噴霧するように構成される。具体的には、静電噴霧装置10は、液体噴霧部20と、電圧印加手段(電圧電源)50と、遮蔽部材100と、を備える。そして、静電噴霧装置10は、電圧印加手段50によって、液体噴霧部20と異極部40との間に電圧を印加できるように構成される。
【0012】
(液体噴霧部)
図2は、液体噴霧部20と遮蔽部材100とを分離した分解断面図である。
図2に示すように、液体噴霧部20は、絶縁材料で形成される胴体部21と、胴体部21の先端に配置されるノズル22と、導電材料で形成される心棒23と、を備える。胴体部21には、液体が流通する液体流路21bが形成される。液体流路21bは、該液体流路21bへ液体を供給可能とする液体供給口21aを有する。ノズル22は、胴体部21の液体流路21bに連通する内部空間を備え、該内部空間に液体を流通可能に構成される。心棒23は、胴体部21の液体流路21b内からノズル22の内部空間内に亘って配置される。
【0013】
胴体部21には、心棒23を後端側に取り出すために、液体流路21bと連通した孔部21cが設けられている。この孔部21c内には、心棒23との間の隙間をシールして液体が漏れないようにするシール部材24が設けられている。
なお、第1実施形態では、シール部材24としてOリングを用いているが、Oリングに限らず、シールが可能なものであればよい。
【0014】
そして、孔部21cを通じて胴体部21の後端側に位置する心棒23の後端には、絶縁材料で形成される摘み部23aが設けられている。また、この心棒23の後端には、この摘み部23aのほぼ中央を貫通するように配置され導電材料で形成される電気配線接続部23bが設けられている。
【0015】
図1に示すように、電気配線接続部23bには、電圧印加手段50からの電気配線が接続される。
そして、図2に示すように、電気配線接続部23bが心棒23に接触することで心棒23と電気配線接続部23bとが電気的に接続されている。
【0016】
また、胴体部21の後端側の開口である後端開口部21dの内周面には、摘み部23aを螺合接続するための雌ネジ構造21eが設けられている。一方、摘み部23aの先端外周面には、雄ネジ構造23cが設けられている。
【0017】
したがって、胴体部21の後端開口部21dの雌ネジ構造21eに摘み部23aの先端外周面の雄ネジ構造23cを螺合させることで心棒23が取外し可能に胴体部21に取付けられている。
また、摘み部23aの螺合量を調節することで、心棒23が前後方向に移動するため、心棒23の先端面23dの位置を前後方向に調節することができる。
【0018】
ここで、一般に、静電噴霧装置では、液体を噴霧するノズルは、液体が流れる内部空間の直径が比較的小さく形成されることで、斯かる内部空間が微細な液体流路とされる。
これは、液体が流れ出るノズル先端の開口直径が大きいと、安定した液体の霧化状態が得られなくなるためと推察される。
例えば、一般には、ノズル先端の開口直径は0.1mm未満とされている。
【0019】
このため、液体が乾燥したりすると直ぐに、ノズル先端の開口部が目詰まりする。そして、この開口部の直径が小さいため、この目詰まりを解消することが難しいという問題がある。
【0020】
しかしながら、理由については、後ほど説明するが、心棒23を用いるようにすることで、従来に比較して、ノズル先端の開口径を大きくしても良好な霧化ができることを見出した。このため、第1実施形態では、ノズル22の先端の開口部22bの開口直径を比較的大きなもの(例えば、0.2mm)とすることができる。
この結果、目詰まりが発生する頻度を大幅に低減することができる。
【0021】
なお、ノズル22の開口部22bの開口直径は0.2mmに限定されるものではなく、心棒23を用いる形態においては、開口直径は1mm程度であっても問題はない。
【0022】
ノズル22の開口部22bの開口直径は、目詰まりが起きにくく、また、目詰まりが起きても清掃ができることを考慮すると、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.2mmより大きいことが更に好ましい。
【0023】
一方、ノズル22の開口部22bの開口直径は、霧化の安定性を考慮すると、1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
【0024】
また、第1実施形態では、上述のように、心棒23を前後方向に移動させることができるため、目詰まりが起きても心棒23を移動させることで目詰まりの解消を行うことができる。
更に、ノズル22の内部空間の内径は、心棒23を配置できる程度に大きくできるため、心棒23を取り外して洗浄液を大量に流して洗浄することもできる。
【0025】
図3は、液体噴霧部20の先端側を拡大した拡大図であり、図3(a)は、心棒23の先端面23dがノズル22の先端より後方に位置する場合であり、図3(b)は、図3(a)の状態よりも心棒23の先端面23dが前方に位置する場合である。
【0026】
図3(a)に示すように、ノズル22は、開口部22b側に向かってテーパ状に内径が小さくなるテーパ角度がαであるテーパ状内径部(範囲A参照)を有している。また、心棒23は、先端面23dに向かって外径が小さくなるテーパ角度がβであるテーパ形状部(範囲B参照)を有している。
【0027】
そして、ノズル22のテーパ状内径部のテーパ角度αは、心棒23のテーパ形状部のテーパ角度βよりも大きい。
また、心棒23の先端面23dの直径は、ノズル22の開口部22bの開口直径よりも小さい。一方、心棒23のテーパ形状部は、後端側に向かって徐々に直径が大きくなる。そして、この心棒23のテーパ形状部は、ノズル22の開口部22bの開口直径よりも直径の大きい部分を有するように形成されている。
【0028】
ノズル22及び心棒23の先端側を上記のように形成することによって、図3(a)及び(b)を見比べるとわかるように、心棒23を前後方向に移動させることでノズル22と心棒23とで形成される隙間の幅を調節できる。これにより、ノズル22の開口部22bから出る液体の量を調節することができる。
【0029】
また、図3(b)で示す状態よりも、更に、心棒23を前方側に動かすことで、心棒23をノズル22の内周面に当接させることができる。これにより、心棒23によってノズル22の開口部22bを閉塞することが可能である。
したがって、液体を噴霧しない状態において、ノズル22の開口部22bを心棒23で閉塞し、ノズル22内の液体が乾燥することを防止できる。これにより、ノズル22の目詰まりを抑制できる。
【0030】
(異極部40)
第1実施形態では、図1において、異極部40が被塗物となる。具体的には、心棒23に接続されるのと反対側の電気配線が被塗物に接続されることで、被塗物自体が液体噴霧部20に対する異極になっている。
また、異極部40となる被塗物は、アース手段80でアースされる。
このアース手段80は、必須の要件ではないが、作業者が被塗物に触れることがあり得るので安全面の観点で設けることが好ましい。
【0031】
なお、第1実施形態では、被塗物を異極部40とするために、被塗物に電圧印加手段50からの電気配線を接続している。しかし、被塗物を異極部40とするために、直接、電気配線を被塗物に接続する必要はない。
例えば、被塗物が搬送装置などによって、塗料などの液体を塗布する位置に搬送されるような場合には、搬送装置における被塗物が載置される載置部に、電圧印加手段50からの電気配線が接続されるようにすることで、載置部を介して被塗物が電圧印加手段50に電気的に接続されるようにしてもよい。
【0032】
(遮蔽部材)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置10は、遮蔽部材100を有している。この遮蔽部材100は、ノズル22の先端外周面の少なくとも一部を覆っている。これにより、遮蔽部材100は、覆った部分への静電気力の作用を遮蔽する。また、遮蔽部材100の内側の面である内側面100bが、ノズル22の先端外周面と対向するように配置されている。この遮蔽部材100の内側面100bとノズル22の先端外周面との間に、ノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fが設けられている。
【0033】
図2に示すように、遮蔽部材100は、ノズル22の長さ方向に延びる軸線LN回りに筒状に形成される。また、遮蔽部材100は、軸線LN方向の両端部(具体的には、先端部100aおよび後端部100c)に開口部を備える。後端部100c側の開口部は、その内周部である後方内周部100dが後方へ向かうに従って広がるようにテーパ状に形成される。また、胴体部21の先端外周部21gは、前方に向かって先細りとなるテーパ状になっている。そして、遮蔽部材100の後方内周部100dが胴体部21の先端外周部21gに対して外側から篏合することで、遮蔽部材100が液体噴霧部20に取り付けられる。なお、遮蔽部材100は、胴体部21に直接取り付けることに限定されるものではない。例えば、アーム構造などで遮蔽部材100がノズル22の先端外周面を覆うように配置されるようにしてもよい。
【0034】
図1図4に示すように、遮蔽部材100は、遮蔽部材100の先端である先端部100aがノズル22の先端より後方に配置されるようにしてもよい。
【0035】
図1図4などに示すように、遮蔽部材100は、筒状に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、遮蔽部材100のノズル22の先端外周面を覆う部分を、筒状の形状において軸方向の縦溝(隙間)を有するスプリングピンのような形状に形成してもよい。すなわち、遮蔽部材100は、ノズル22の先端外周面を全周に亘り覆うようにしてもよく、あるいは、ノズル22の先端外周面の一部を覆うようにしてもよい。
【0036】
また、遮蔽部材100は、導電材料で形成されていてもよく、あるいは、絶縁材料で形成されていてもよい。
【0037】
図4は、本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置10の液体噴霧部20から液体を噴霧する状態を示す断面図である。
図4を用いて、上記のような構成を有する第1実施形態の静電噴霧装置10を用いて液体を噴霧する状態について説明を行いながら、更に第1実施形態の静電噴霧装置10の構成などについて詳細な説明を行う。
【0038】
図1図4において、ノズル22から出る液体は、液体噴霧部20と異極部40(被塗物40)との間に電圧印加手段50によって印加される電圧により発生する静電気力で引っ張られる。このときに、心棒23の先端面23d及びノズル22の先端外周縁22aへの表面張力や粘度による付着力に対して、液体を引っ張る静電気力が釣り合う。このようにして、ノズル22の先端側に供給された液体が、図4に示すように、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン60の状態となる。
【0039】
このテーラコーン60は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電したノズル22先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されるものである。
そして、液体が、テーラコーン60の先端から静電気力によって真直ぐ引っ張られ、その後静電爆発する。
【0040】
この静電爆発に至るまでの前方側への引っ張り力は、噴霧される液体の慣性力となる。更に、静電爆発時の広がり力(反発力)や静電気力による引っ張り力などの相互作用の結果として、液体は前方側に噴霧される。
【0041】
そして、この噴霧される液体、つまり、ノズル22から帯電状態で離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため、溶媒の気化が促進される。その溶媒の気化に伴って、帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して小さい粒径の液体粒子に分裂する。この分裂が起こると、更に、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えるため、溶媒の気化が促進される。そして、再び、静電爆発して小さい粒径の液体粒子に分裂する。このような静電爆発が繰り返されることで、液体が霧化される。
【0042】
なお、液体噴霧部20への液体の供給は、噴霧により消費されることで液体噴霧部20から失われる分の液体が順次供給されていればよい。すなわち、液体噴霧部20へ供給される液体は、ノズル22の開口部22b(より正確には、開口部22bと心棒23との間の隙間)から液体が噴射するような圧力で圧送供給される必要はない。このような圧送供給によって液体が勢いよく噴射される状態の場合、良好に霧化することができなくなる可能性がある。
【0043】
ここで、第1実施形態では、ノズル22内に心棒23が配置される。
仮に、従来の静電噴霧装置のように、この心棒23が設けられていない状態とすると、液体が付着できる部分は、ノズル22の先端外周縁22aだけとなる。
このような状態で、ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくすると、例えば、ノズル22の上下左右に液体がふらつき易く、良好な形状のテーラコーン60が形成できなくなったり、また、テーラコーン60自体が維持できなくなったりする。このため、ノズル22から離脱する液体粒子の安定性(粒子の大きさ、数、及び、帯電状態などの安定性)が得られなくなる。その結果、液体の安定した霧化ができなくなるものと推察される。
【0044】
一方、第1実施形態では、ノズル22内に心棒23が配置される。このため、ノズル22の先端外周縁22aだけでなく、心棒23の先端面23dとの間でも液体は付着する。
すなわち、ノズル22の開口部22bの開口直径を比較的大きく形成しても、開口部22bの中央部に液体が付着できる心棒23の先端面23dが存在する。このため、安定したテーラコーン60を形成することができ、液体の安定した霧化ができるようになっているものと考えられる。
【0045】
なお、心棒23の先端面23dがノズル22の先端外周縁22a(つまり、ノズル22の開口部22bの先端面)から前方に出過ぎるとノズル22から出る液体に電場が作用し難くなる。一方、心棒23の先端面23dがノズル22の開口部22bの先端面から後方に引っ込み過ぎると、開口部22bの中央部に液体が付着できる部分が存在しないのと同じ状態となる。
【0046】
このことから、心棒23の先端面23dの位置は、液体を噴霧する状態において、ノズル22の開口部22bの先端面を基準にして、心棒23の長手方向に沿った前後方向で、ノズル22の先端の開口部22bの開口直径の10倍以内に位置することが好ましく、5倍以内に位置することがより好ましく、3倍以内に位置することが更に好ましい。
【0047】
例えば、第1実施形態において、ノズル22の開口部22bの開口直径を0.2mmとした場合であって、静電気力を考慮しない場合、ノズル22の開口部22bから出た液体は、ノズル22の先端で直径が約0.2mmの半球状となるように出てくる。
【0048】
そして、このノズル22の先端に出てきた液体に電場(静電気力)が作用して円錐状のテーラコーン60が形成できるように、心棒23の先端は、この液体の近くに存在することがよい。このため、心棒23の先端は、ノズル22の開口部22bの先端面から前方(出る方向)に2mm以内に位置することが好ましい。一方、液体の付着に作用するように、心棒23の先端が、ノズル22の開口部22bの先端面から後方(引っ込む方向)に2mm以内に位置するようにすることが好ましい。
【0049】
上記のように、心棒23を設けることによって、ノズル22の開口部22bの開口直径を比較的大きく形成しても、安定した液体の霧化が行える。
このため、ノズル22の開口部22bの開口直径を目詰まりが抑制できるような大きな開口直径にすることができる。
また、ノズル22の開口部22bの開口直径を比較的大きくできるため、機械加工でノズル22を製作できる。
【0050】
なお、第1実施形態では、心棒23の先端が先端面23dとして平坦な平面としている場合を示しているが、これに限定されるものではなく、安定したテーラコーン60の形成に寄与すればよい。例えば、心棒23の先端はR形状のように、前方側に向かって突出する曲面になっていてもよい。
【0051】
図5は、遮蔽部材100に相当する要素が設けられていない従来の静電噴霧装置の液体噴霧部520から液体を噴霧した状態を示す斜視図であって、噴霧した液体の塗布パターンQ、塗布パターンRを示す斜視図である。
図6は、図5に示す従来の静電噴霧装置の液体噴霧部520から液体を噴霧した状態を示す側面図である。
図7は、図5に示す従来の静電噴霧装置の液体噴霧部520から液体を噴霧した状態を示す背面図である。
図5図6及び図7を用いて、従来の静電噴霧装置の液体噴霧部520から噴霧した液体の塗布パターンについて説明する。
【0052】
図5では、従来の静電噴霧装置において、液体が液体噴霧部520から噴霧されて、被塗物40の表面に塗布パターンQ及び塗布パターンRが形成される状態が示されている。以下、この塗布パターンQ及び塗布パターンRが形成される過程を説明する。
【0053】
図6に示すように、ノズル22の先端には、塗布する液体のテーラコーン60が形成される。このテーラコーン60が静電気力により引っ張られて、テーラコーン60を形成する液体の一部がノズル22から離脱して霧化する。この霧化した液体が、被塗物40の表面に吸い寄せされて付着し、被塗物40の表面に塗布パターンQが形成される。
【0054】
一方、ノズル22の先端外周面には、静電気力により前方に引き出されないでノズル22の先端から伝わった液体により、液溜まりLが形成される。この液溜まりLは、その先端部分に静電気力が作用して前方に引っ張られて離脱し、霧化する。この霧化した液体が、被塗物40の表面に吸い寄せされて付着し、被塗物40の表面に塗布パターンRが形成される。
【0055】
塗布パターンQは、ノズル22から全方向にほぼ均等に液体が噴射されるため、本来であれば、円に近い形状になる。しかし、図7に示すように、塗布パターンQは、同電位の塗布パターンRによる反発力により、塗布パターンRに近い側がノズル22の軸線LN側に縮小した形状になる。
【0056】
このように、従来の静電噴霧装置の液体噴霧部520においては、液溜まりLが形成されることにより、意図しない塗布パターンQ及び塗布パターンRが形成されてしまうという問題があった。
【0057】
図8は、本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置10の液体噴霧部20から噴霧した液体の塗布パターンPを示す斜視図であり、図9は、側面図であり、図10は、背面図である。
図8図9及び図10を用いて、本発明の第1実施形態に係る静電噴霧装置10の液体噴霧部20から噴霧した液体の塗布パターンPについて説明する。
【0058】
図8では、図1に示す静電噴霧装置10において、液体が液体噴霧部20から噴霧されて、被塗物40の表面に塗布パターンPが形成される状態が示されている。以下、この塗布パターンPが形成される過程を説明する。
【0059】
図9に示すように、ノズル22の先端には、塗布する液体のテーラコーン60が形成される。このテーラコーン60が静電気力により引っ張られて、テーラコーン60を形成する液体の一部がノズル22から離脱して霧化する。この霧化した液体が、被塗物40の表面に吸い寄せされて付着し、被塗物40の表面に塗布パターンPが形成される。
【0060】
ノズル22の外周部22dの先端外周面には、静電気力により前方に引き出されないでノズル22の先端から伝わった液体が、遮蔽部材100のノズル22の先端外周面に対向する内側面100bとノズル22の先端外周面との間に設けられたノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fに溜まる。遮蔽部材100は、ノズル22の先端外周面の近傍において、覆った部分への静電気力の作用を遮蔽する。このため、この隙間Fに溜まった液体には静電気力が作用せず、隙間Fに溜まった液体は、静電気力により引っ張られることがない。したがって、この隙間Fに溜まった液体が、ノズル22から離脱して霧化することはなく、被塗物40の表面に意図しない塗布パターンが形成されることが防止される。
【0061】
このように、遮蔽部材100によりノズル22の先端外周面の少なくとも一部を覆い、隙間Fを設けることにより、意図しない塗布パターンが形成されることを防止し、図10に示すように、意図した円形に近い塗布パターンPだけを形成することができる。
【0062】
図9に示すように、遮蔽部材100は、遮蔽部材100の先端である先端部100aがノズル22の先端より後方に配置されるようにしてもよい。
【0063】
そして、遮蔽部材100は、遮蔽部材100の先端である先端部100aがノズル22の先端より1mm以上5mm以下後方に配置されるのが好ましく、1mm以上3mm以下後方に配置されるのがより好ましい。すなわち、図9において、ノズル22の先端に対する遮蔽部材100の先端である先端部100aの後方への距離Eは、1mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上3mm以下がより好ましい。
【0064】
距離Eが1mm以上であることで、ノズル22の先端に静電気力の作用が十分に及ぶため、液体の噴霧を適正に行うことができる。
【0065】
また、距離Eが5mm以下であることで、遮蔽部材100の先端部100aの前方側においてノズル22の外周部22dに液溜まりが形成されるのがより効果的に抑制される。そして、液溜まりの形成が抑制されることで、被塗物40の表面に図7の塗布パターンRのような意図しない塗布パターンが形成されるのをより効果的に抑制することができる。
【0066】
図4図9に示すように、遮蔽部材100は、ノズル22の先端外周面を覆っている。そして、静電噴霧装置10は、遮蔽部材100のノズル22の先端外周面に対向する内側面100bとノズル22の先端外周面との間にノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fを有している。すなわち、図9において、遮蔽部材100の内側面100bとノズル22の外周部22dの先端外周面との間には、隙間Fが設けられている。
【0067】
そして、遮蔽部材100の内側面100bとノズル22の先端外周面との間の隙間Fは、ノズル22の軸線LNに対し垂直方向に0.2mm以上5mm以下であってもよく、1mm以上5mm以下であってもよく、1mm以上3mm以下であってもよい。
【0068】
隙間Fが0.2mm以上5mm以下であることで、この隙間Fに、静電気力により前方に引き出されないでノズル22の先端から伝わった液体をより溜まりやすくできる。そして、遮蔽部材100が覆った部分への静電気力の作用を遮蔽部材100が遮蔽するため、この隙間Fに溜まった液体には静電気力が作用しない。したがって、被塗物40の表面に図7の塗布パターンRのような意図しない塗布パターンが形成されることをより効果的に抑制することができる。また、隙間Fが5mm以下であることで、隙間Fの中に形成された液溜まりに前方側から静電気力が作用して、液体が前方側に離脱して霧化することが抑制される。このため、被塗物40の表面に意図しない塗布パターンが形成されることをより効果的に抑制することができる。
【0069】
図4図9などに示すように、遮蔽部材100は筒状に形成され、ノズル22の先端外周面を全周に亘り覆うように示されている。しかし、遮蔽部材100は、ノズル22の先端外周面の全周に亘って覆うことに限定されるものではない。液体の液溜まりが、ある方向、例えば、ノズル22の下側だけに形成される場合には、ノズル22の下側だけを覆い、このノズル22において覆った部分への静電気力の作用を遮蔽するようにしてもよい。すなわち、遮蔽部材100は、筒状に形成されノズル22の先端外周面を全周に亘り覆うようにしてもよく、あるいは、ノズル22の先端外周面の一部を覆うようにしてもよい。
<第2実施形態>
【0070】
図11は、本発明の第2実施形態に係る液体噴霧部20、遮蔽部材200を示す断面図である。
図11を用いて、第2実施形態に係る液体噴霧部20、遮蔽部材200について説明する。
【0071】
第2実施形態に係る静電噴霧装置は、洗浄機構230を備える点で、第1実施形態に係る静電噴霧装置10と構成が異なる。以下では、第1実施形態に係る静電噴霧装置10と異なる点について説明し、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、原則としてその説明を繰り返さない。
【0072】
第2実施形態に係る静電噴霧装置は、隙間Fに溜まった液体を除去するように洗浄する洗浄機構230を備え、洗浄機構230は、隙間Fに洗浄液を供給可能に構成される。ここで、隙間Fは、第1実施形態における隙間Fと同様の要素である。
【0073】
洗浄機構230は、洗浄液を保管して供給する供給保管部(不図示)と、供給保管部から供給される洗浄液を隙間Fに供給する接続供給部231と、接続供給部231から供給される洗浄液を隙間Fに受け入れるための受入部150と、を備える。
【0074】
供給保管部は、洗浄液を保管する洗浄液保管部と、洗浄液保管部に保管された洗浄液を外部に送り出す洗浄液送出部と、洗浄液送出部により送り出された洗浄液を接続供給部231に送る送液部と、を備える。洗浄液送出部は、洗浄液を送るための液体用ポンプを備える。また、送液部は、管状に形成され、例えば、パイプやホースなどで形成される。
【0075】
接続供給部231は、洗浄液が供給される上流側の開口である送入口231aと、下流側の開口である送出口231bと、送入口231aと送出口231bとを接続する供給路231cと、を備える。接続供給部231は、管状に形成され、例えば、パイプやホースなどで形成される。そして、接続供給部231は、上流側において、洗浄液を供給する供給保管部と接続される。すなわち、送入口231aが、供給保管部の送液部と直接又は間接的に接続される。
【0076】
受入部150は、図11に示すように、遮蔽部材200に設けられる。そして、図11に示す第2実施形態の遮蔽部材200は、接続供給部231から供給される洗浄液を、遮蔽部材200の内部の隙間Fに受け入れるための受入部150を備える点で、第1実施形態の遮蔽部材100と構成が異なる。遮蔽部材200は、それ以外の点については、第1実施形態の遮蔽部材100と同様である。
【0077】
すなわち、遮蔽部材200は、遮蔽部材100と同様に、ノズル22の先端外周面の少なくとも一部を覆っている。これにより、遮蔽部材200は、覆った部分への静電気力の作用を遮蔽する。また、遮蔽部材200の内側の面である内側面200bが、ノズル22の先端外周面と対向するように配置されている。この遮蔽部材200の内側面200bとノズル22の先端外周面との間に、ノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fが設けられている。また、遮蔽部材200は、軸線LN方向の両端部(具体的には、前方側の端部である先端部200aおよび後方側の端部である後端部200c)に開口部を備える。
【0078】
接続供給部231の送出口231bと受入部150とは連通して接続される。送出口231bと受入部150とが連通して接続される部分である接続部240は、送出口231bから受入部150に供給される洗浄液が外部に漏れないように、密閉した状態で接続される。例えば、図11に示すように、受入部150は、遮蔽部材200の外側の面である外側面200eと内側の面である内側面200bとを繋いで設けられた貫通孔で形成される。一方、接続供給部231は、管状に形成される。そして、接続部240は、受入部150を形成する貫通孔の開口より外側の外周部に、接続供給部231の管状の端部を突き当てた状態で、全周に亘る溶接などによって形成される。但し、接続部240は、図11に示す構成や構造に限定されるものではない。例えば、接続部240は、接続供給部231の管状の端部と受入部150とを管状の継手部材(不図示)で接合することで構成されてもよい。
【0079】
図12は、図11に示す本発明の第2実施形態に係る液体噴霧部20、遮蔽部材200の変形例を示す断面図である。
図12を用いて、図11に示す第2実施形態に係る液体噴霧部20、遮蔽部材200の変形例について説明する。
【0080】
図11に示す洗浄機構230において、受入部150は、遮蔽部材200に設けられている。これに対して、図12に示す洗浄機構230において、受入部150は、液体噴霧部20の胴体部21Aに設けられている点で異なる。したがって、受入部150が設けられていない遮蔽部材200Aは、第1実施形態の遮蔽部材100と同様である。
【0081】
図12に示すように、受入部150は、受入口150aと、供給口150bと、受入供給路150cと、を備える。受入口150aは、胴体部21Aの外周部である胴体外周部21fに設けられた開口である。供給口150bは、胴体部21Aの先端の部分である胴体先端部21hに設けられた開口である。受入供給路150cは、胴体部21Aの内部に設けられ、受入口150aと供給口150bとを連接する流路である。そして、供給口150bの前方には、遮蔽部材200Aの内側面200bとノズル22の先端外周面との間に、ノズル22の軸線LNに対し垂直方向の隙間Fが設けられている。
【0082】
受入口150aに供給された洗浄液は、受入供給路150cを流れて供給口150bから送り出される。そして、供給口150bから送り出された洗浄液は、隙間Fに供給される。すなわち、図12に示す洗浄機構230において、受入部150は、受入口150aに受け入れた洗浄液を、受入供給路150cを経て、供給口150bから隙間Fに供給する。
【0083】
接続供給部231の送出口231bと受入部150とが連通して接続されるのは、図11に示す場合と同様である。図12に示すように、接続供給部231の送出口231bは、受入部150の受入口150aに接続される。そして、送出口231bと受入部150とが連通して接続される部分である接続部240は、送出口231bから受入部150の受入口150aに供給される洗浄液が外部に漏れないように、密閉した状態で接続される。
【0084】
次に、供給される洗浄液の流れについて説明する。図11図12において、洗浄液は、供給保管部から接続供給部231に供給される。接続供給部231の送入口231aに供給された洗浄液は、供給路231cを通って送出口231bに流れる。送出口231bから供給された洗浄液は、受入部150に流れる。この受入部150を流れた洗浄液は、遮蔽部材200、200Aの内部の隙間Fに供給される。
【0085】
遮蔽部材200、200Aの内部において、遮蔽部材200、200Aの内側面200bとノズル22の先端外周面との間の隙間Fを通った洗浄液は、遮蔽部材200、200Aの先端部200aの開口部から外部に排出される。
【0086】
このように、受入部150から受け入れられた洗浄液が、隙間Fを通ることで、隙間Fに溜まった液体を除去するように洗浄する。隙間Fを洗浄した洗浄液は、遮蔽部材200、200Aの前方側にある先端部200aの開口部から外部に排出される。
【0087】
なお、図11に示すように、受入部150が遮蔽部材200に設けられる場合には、洗浄液の流れを遮蔽部材200の後方側から前方側への流れとするために、受入部150は、遮蔽部材200の中央部より後方側に設けるのが望ましい。このようにすることで、隙間Fに溜まった液体をより確実に除去できる。
【0088】
洗浄機構230は、隙間Fに、洗浄液に加えて、更に、圧縮ガスを供給可能に構成されてもよい。そして、洗浄機構230の接続供給部231は、洗浄液に加えて、圧縮ガスを供給するようにしてもよい。また、供給保管部は、圧縮ガスを保管する圧縮ガス保管部と、圧縮ガス保管部に保管された圧縮ガスを外部に送り出す圧縮ガス送出部と、圧縮ガス送出部により送り出された圧縮ガスを接続供給部231に送る送ガス部と、を更に備えてもよい。圧縮ガス送出部は、圧縮ガスを送るための気体用ポンプを備える。送ガス部は、管状に形成され、例えば、パイプやホースなどで形成される。
【0089】
洗浄機構230が、隙間Fに圧縮ガスを供給可能な場合に、供給される圧縮ガスの流れは、供給される洗浄液の流れと同様である。すなわち、圧縮ガスは、供給保管部から接続供給部231に供給される。接続供給部231の送入口231aに供給された圧縮ガスは、供給路231cを通って送出口231bに流れる。送出口231bから供給された圧縮ガスは、受入部150に流れる。この受入部150を流れた圧縮ガスは、遮蔽部材200、200Aの内部の隙間Fに供給される。
【0090】
遮蔽部材200、200Aの内部において、遮蔽部材200、200Aの内側面200bとノズル22の先端外周面との間の隙間Fを通った圧縮ガスは、先端部200aの開口部から外部に排出される。
【0091】
次に、洗浄機構230により、隙間Fを洗浄する洗浄方法について説明する。この洗浄方法は、隙間Fに洗浄液を供給して洗浄する工程(洗浄工程)を備える。また、この洗浄方法は、更に、隙間Fに気体を供給して隙間Fを乾燥する工程(乾燥工程)を備えてもよい。
【0092】
洗浄工程は、まず、遮蔽部材200、200Aの内部に洗浄液を供給する(洗浄液供給工程)。次に、供給された洗浄液を隙間Fに通して、隙間Fに溜まった液体を除去するように洗浄する(隙間洗浄工程)。そして、洗浄液を、除去した液体とともに遮蔽部材200、200Aの先端部200aの開口部から外部に排出する(洗浄液排出工程)。このように、洗浄工程は、洗浄液供給工程と、隙間洗浄工程と、洗浄液排出工程と、を備える。この洗浄工程を行うことで、隙間Fの液体などが除去される。
【0093】
乾燥工程は、まず、遮蔽部材200、200Aの内部に圧縮ガスを供給する(圧縮ガス供給工程)。次に、供給された圧縮ガスを隙間Fに通して、隙間Fを形成する遮蔽部材200、200Aの内側面200bとノズル22の先端外周面などを乾燥する(隙間乾燥工程)。そして、圧縮ガスを、遮蔽部材200、200Aの先端部200aの開口部から外部に排出する(圧縮ガス排出工程)。この圧縮ガス排出工程では、圧縮ガスの排出に加えて、圧縮ガスの流れの作用によって、隙間Fの中に残存していた液体や洗浄液を一緒に排出することもある。このように、乾燥工程は、圧縮ガス供給工程と、隙間乾燥工程と、圧縮ガス排出工程と、を備える。この乾燥工程を行うことで、隙間Fの洗浄液などが除去される。
【0094】
洗浄液は、液体の種類により適宜選択される。液体が塗料の場合には、洗浄液は、シンナーなどの有機溶剤が選択される。また、圧縮ガスは、主として圧縮空気が使用される。しかし、圧縮ガスは、不燃性ガスなど、圧縮空気以外の気体でもよい。
【0095】
静電噴霧装置において、連続して液体を噴霧し続ける場合がある。この場合、ノズル22の先端から伝わった液体が、遮蔽部材200、200Aの内部において、遮蔽部材200、200Aの先端部200aの近傍にも溜まる。この状態で更に液体を噴霧し続けると、液体が、遮蔽部材200、200Aの内部に収まりきらずに遮蔽部材200、200Aの外部に溢れてしまう。この遮蔽部材200、200Aの外部に溢れた液体に静電気力が作用して霧化し、図5から図7に示す塗布パターンRのような意図しない塗布パターンが形成される。
【0096】
第2実施形態に係る静電噴霧装置は、隙間Fに溜まった液体を除去するように洗浄する洗浄機構230を備え、洗浄機構230は、隙間Fに洗浄液を供給可能に構成される。そして、この洗浄機構230を用いて、上記の洗浄方法の各工程を行う。これにより、隙間Fに溜まった液体が除去される。そして、液体が遮蔽部材200、200Aの外部に溢れないようにすることができる。これにより、図5から図7に示す塗布パターンRのような意図しない塗布パターンが形成されるのを防止することができる。
【0097】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施しても良い。
【0098】
例えば、以上において、静電噴霧装置がノズルを1つだけ有する単ノズルの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数のノズルを有する複数ノズルの静電噴霧装置についても同様である。
【0099】
第2実施形態において、図11に示す受入部150は、遮蔽部材200の外側面200eと内側面200bとを繋いで設けることに限定されない。例えば、受入部150を遮蔽部材200の後端部200cに設けて、隙間Fに洗浄液を供給するようにしてもよい。また、受入部150を後端部200cの開口部と一体的に設けてもよい。これにより、遮蔽部材200の後端部200cから先端部200aに亘り、遮蔽部材200の内部の全域、あるいは、ほぼ全域を確実に洗浄できる。
【0100】
第2実施形態において、図12に示す受入部150は、供給口150bを1つだけ備えることに限定されない。受入部150は、供給口150bを胴体先端部21hの周方向に複数備えてもよい。このために、受入供給路150cは、途中で分岐して、複数の供給口150bに連接してもよい。これにより、隙間Fの全域に偏りなく洗浄液が供給される。そして、隙間Fに溜まった液体をより確実に除去することができる。
【0101】
第2実施形態において、図12に示す遮蔽部材200Aの後端部200c側の開口部は、その内周部である後方内周部200dが後方へ向かうに従って広がるようにテーパ状に形成される。また、胴体部21Aの先端外周部21gは、前方に向かって先細りとなるテーパ状になっている。そして、遮蔽部材200Aの後方内周部200dが胴体部21Aの先端外周部21gに対して外側から篏合することで、遮蔽部材200Aが液体噴霧部20に取り付けられる。このテーパ状に形成される後方内周部200dは、その前方側の端部が、胴体先端部21hと前後方向が同じ位置又は同じ位置より前方になるように設けてもよい。これにより、遮蔽部材200Aの内側で液体が溜まる可能性のある空間の全て又はほぼ全てが、洗浄液が供給される供給口150bより前方に形成される。これにより、隙間Fに溜まった液体をより確実に除去することができる。なお、このために、図12に示すように、後方側の外周面である後方外側面200fの外径を、それ以外の外周面である外側面200eの外径より大きくしてもよい。
【0102】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0103】
10 静電噴霧装置
20 液体噴霧部
21、21A 胴体部
21a 液体供給口
21b 液体流路
21c 孔部
21d 後端開口部
21e 雌ネジ構造
21f 胴体外周部
21g 先端外周部
21h 胴体先端部
22 ノズル
22a 先端外周縁
22b 開口部
22d 外周部
23 心棒
23a 摘み部
23b 電気配線接続部
23c 雄ネジ構造
23d 先端面
24 シール部材
40 異極部(被塗物)
50 電圧印加手段
60 テーラコーン
80 アース手段
100 遮蔽部材
100a 先端部
100b 内側面
100c 後端部
100d 後方内周部
150 受入部
150a 受入口
150b 供給口
150c 受入供給路
200、200A 遮蔽部材
200a 先端部
200b 内側面
200c 後端部
200d 後方内周部
200e 外側面
200f 後方外側面
230 洗浄機構
231 接続供給部
231a 送入口
231b 送出口
231c 供給路
240 接続部
520 液体噴霧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12