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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019035
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】採血装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/15 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B5/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115728
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2022121257
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】北村 和之
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038UA03
4C038UB08
4C038UC02
(57)【要約】
【課題】採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置を提供する。
【解決手段】採血装置1は、血液バッグ3を載置する載せ皿40と、載せ皿40を揺動させる揺動機構50と、を備える。揺動機構50は、載せ皿40が装置接地面の少なくとも一方向と平行に配置される第1位置と、装置接地面に対して載せ皿40が傾いて配置される第2位置との間で載せ皿40の姿勢を変化させるとともに、非揺動時に載せ皿40を第1位置で静止させる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液バッグを載置する載せ皿と、
前記載せ皿を揺動させる揺動機構と、を備え、
前記揺動機構は、前記載せ皿が装置接地面の少なくとも一方向と平行に配置される第1位置と、前記装置接地面に対して前記載せ皿が傾いて配置される第2位置との間で前記載せ皿の姿勢を変化させるとともに、非揺動時に前記載せ皿を前記第1位置で静止させる
採血装置。
【請求項2】
前記揺動機構は、
前記装置接地面の第1方向に前記載せ皿を傾かせる第1傾動部と、
前記第1方向と直交する前記装置接地面の第2方向に、前記載せ皿および前記第1傾動部を傾かせる第2傾動部と、を有する
請求項1に記載の採血装置。
【請求項3】
前記第1傾動部は、第1動力部の動力により駆動し、
前記第2傾動部は、第2動力部の動力により前記第1傾動部と独立して駆動可能である
請求項2に記載の採血装置。
【請求項4】
前記第1傾動部および前記第2傾動部は、共通の動力部の動力で駆動する
請求項2に記載の採血装置。
【請求項5】
前記血液バッグの重量を測定する重量センサをさらに備え、
前記重量センサは、前記第1傾動部と前記載せ皿の間に配置される
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の採血装置。
【請求項6】
前記揺動機構は、カムの回転動作により前記載せ皿を前記第1位置と前記第2位置の間で揺動させる
請求項1に記載の採血装置。
【請求項7】
前記カムは、前記装置接地面の垂直方向から傾いた傾斜軸周りに回転し、前記傾斜軸の傾きに対応する角度のカム面を有し、
前記カム面は、前記カムが所定の回転位置のときに前記装置接地面と平行となる
請求項6に記載の採血装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液を採取する際に、採血した血液と血液バッグ内の抗血液凝固剤とを混和させるために使用される採血装置が知られている。この種の採血装置は、例えば、血液バッグを収容する載せ皿を揺動させるための揺動機構を備えている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-294478号公報
【特許文献2】特開2000-84067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の採血装置では、血液バッグ内の液体の混和を促すために、血液バッグを収容した載せ皿が装置接地面から傾いた姿勢で揺動されることが好ましい。一方、静止状態での載せ皿の装置接地面に対する傾斜角度によっては、載せ皿に収容された血液バッグのラベルの確認や当該ラベルに付されたバーコードの読み取りなどがしにくくなり、採血の際に作業員の作業性が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の採血装置は、血液バッグを載置する載せ皿と、載せ皿を揺動させる揺動機構と、を備える。揺動機構は、載せ皿が装置接地面の少なくとも一方向と平行に配置される第1位置と、装置接地面に対して載せ皿が傾いて配置される第2位置との間で載せ皿の姿勢を変化させるとともに、非揺動時に載せ皿を第1位置で静止させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の採血装置の外観斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】上蓋および載せ皿を取り外した状態の採血装置の平面図である。
図4】載せ皿の構成例を示す図である。
図5】第1実施形態の揺動機構の構成例を示す図である。
図6】揺動機構の第1変形例を示す図である。
図7】揺動機構の第2変形例を示す図である。
図8】第2実施形態の揺動機構を示す概要図である。
図9】実施形態と比較例での載せ皿の移動範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る採血装置の構成例について説明する。なお、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0010】
また、以下の説明では、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。一例として、本明細書では、装置接地面の装置奥行方向に延びる第1軸をY軸と定義し、第1軸と直交して装置接地面の装置幅方向に延びる第2軸をX軸と定義する。また、第1軸および第2軸とそれぞれ直交し、装置接地面に対して高さ方向に延びる軸をZ軸と定義する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の採血装置の外観斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、上蓋および載せ皿を取り外した状態の採血装置の平面図である。また、以下の説明では、後述する操作部30側を装置正面側とし、作業員が装置正面側に存在するものとして説明する。
【0012】
第1実施形態の採血装置1は、血液を採取する際に血液バッグ3を揺動させて、採血した血液と血液バッグ3内に予め充填された抗血液凝固剤を混和させるために使用される。採血装置1は、筐体10と、上蓋20と、操作部30と、載せ皿40と、揺動機構50とを備えている。
【0013】
筐体10は、上面側が開放された箱体状であり、筐体10の上面側は上蓋20で閉塞される。上蓋20は、例えば、透明な樹脂(例えばアクリル樹脂など)で構成され、装置背面側に設けられたヒンジ26によって筐体10に対して開閉可能に取り付けられている。
【0014】
装置正面側において、上蓋20には把手22が設けられ、例えば、上蓋ロック機構(不図示)を解除して把手22を持ち上げることで、上蓋20を開くことができる。
【0015】
また、筐体10と上蓋20に囲まれた吸引室2には、載せ皿40および揺動機構50が収容される。また、筐体10の内部には、筐体10および上蓋20で囲まれた吸引室2内を減圧するための減圧機構(不図示)、各部に電力を供給するための電源部(不図示)や、採血装置1の各部を統括制御する制御部(不図示)などが収容されている。
【0016】
上記の減圧機構は、真空ポンプと、空気流量を調整するバルブとを含む。制御部は、減圧機構を駆動させることで、吸引室2内に吸引圧(陰圧)を発生させて血液バッグ3内に血液を採取する。なお、制御部は、減圧機構の真空ポンプやバルブにより吸引圧を制御できる。
【0017】
操作部30は、例えば液晶タッチパネルで構成され、筐体10の装置正面側に配置される。操作部30の画面表示は制御部によって制御される。例えば、操作部30の画面に表示される文字情報又は画像情報によって、ユーザは各種情報を取得できる。操作部30の画面には、例えば、採血中は採血量または採血残量が表示される。その他にも、操作部30の画面には、採血速度などの状況を示す表示(色表示など)が行われる。また、操作部30のアイコン画像をタッチするユーザの操作により、操作部30は、採血開始や採血停止などの各種操作を受け付ける。
【0018】
なお、採血装置1への入力は、上記に限定されることなく、不図示の接続端子を介して接続された入力機器(例えば、バーコードリーダ等)が受け付けてもよい。また、採血装置1からの各種出力は、上記の接続端子を介して接続された公知の出力機器から行われてもよい。
【0019】
図4(a)は、載せ皿40の概略平面図である。図4(b)は、図4(a)の載せ皿40のB-B線断面図である。
【0020】
載せ皿40は、揺動機構50に対して着脱可能に取り付けられ、採血時には図2に示すように上面に血液バッグ3が載置されて収容される部材である。なお、載せ皿40には、例えば、血液バッグ3に接続される部材(例えば、白血球除去フィルター等)の一部などがさらに収容されてもよい。
【0021】
載せ皿40は、平面視形状が略長方形状で、上下方向に所定の深さを有する平底の椀状容器として形成されている。載せ皿40は、例えばアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂などの樹脂材料で形成され、全体が透明である。また、載せ皿40は、略長方形状の底面部41aと、底面部41aの外周に立設される周壁部41bを有する。なお、載せ皿40の底面部41aは、後述の載せ皿取付部51に取り付けられる。
【0022】
揺動機構50は、載せ皿40の姿勢を変化させて、載せ皿40を所定方向に揺動させる。第1実施形態の揺動機構50は、載せ皿40が装置接地面と平行に配置される第1位置と、載せ皿40が装置接地面に対して傾いて配置される第2位置の間で載せ皿40の姿勢を変化させることができる。また、揺動機構50は、採血を行っていない停止時(非揺動時)には載せ皿40を第1位置に静止させる。
【0023】
以下の説明では、採血装置1が水平面上に設置され、装置接地面および第1位置での載せ皿40が水平面に沿っている場合を前提とする。なお、第1位置での載せ皿40は、装置接地面と厳密に平行であることまでは要さず、装置接地面に対して許容誤差の範囲内で傾きが生じていてもよい。
【0024】
図5(a),(b)は、第1実施形態の揺動機構50の構成例を示す図である。揺動機構50は、載せ皿取付部51と、第1傾動部52と、第2傾動部53と、重量センサ54を有している。
【0025】
載せ皿取付部51は、上面側に載せ皿40が着脱可能に取り付けられる平板状の部材であって、例えば矩形状に形成されている。載せ皿取付部51への載せ皿40の取り付けは、例えばねじ止めによって行われる。なお、載せ皿取付部51への載せ皿40の取り付けは、例えば、爪と爪受けの係合による抜け止めや、溝に突起をスライドさせて係合することで脱落を防止するなどの手法で行ってもよく、これらの構成にさらにねじ止めを併用してもよい。
【0026】
第1傾動部52は、装置接地面に沿って延びる第1軸(Y軸)を中心として載せ皿取付部51を傾ける機構である。第1傾動部52は、平板状の支持部材55の上に配置されている。第1傾動部52は、モータ52aと、モータ52aの回転により第1軸を中心として回動し、載せ皿取付部51を装置幅方向に上下揺動させるように傾ける第1機構52bとを有している。装置幅方向は第1方向の一例である。なお、第1傾動部52による第1軸周りの傾き角をθ1とも称する。
【0027】
また、モータ52aには、モータ52aの回転角度を検出し、制御部に出力する第1エンコーダ52cが取り付けられている。制御部は、第1エンコーダ52cの出力から第1傾動部52による傾き角θ1を算出できる。
【0028】
第2傾動部53は、第1軸と直交して延びる第2軸(X軸)を中心として支持部材55を傾ける機構である。第2傾動部53は、モータ53aと、モータ53aの回転により第2軸を中心として回動し、支持部材55を装置奥行方向に上下揺動させるように傾ける第2機構53bを有している。装置奥行方向は第2方向の一例である。なお、第2傾動部53による第2軸周りの傾き角をθ2とも称する。
【0029】
また、モータ53aには、モータ53aの回転角度を検出し、制御部に出力する第2エンコーダ53cが取り付けられている。制御部は、第2エンコーダ53cの出力から第2傾動部53による傾き角θ2を算出できる。なお、第2傾動部53は、モータ53aの動力により、モータ52aの動力で駆動する第1傾動部52とは独立して駆動することができる。
【0030】
揺動機構50は、載せ皿取付部51を第1傾動部52で装置幅方向に上下揺動させるように傾けることができ、載せ皿取付部51および第1傾動部52が配置された支持部材55を第2傾動部53で装置奥行方向に上下揺動させるように傾けることができる。揺動機構50は、第1傾動部52と第2傾動部53を制御することで載せ皿40を三次元的に揺動させることができ、載せ皿40の姿勢を第1位置と第2位置の間で変化させることが可能となる。
【0031】
重量センサ54は、第2傾動部53の下側に配置され、例えばロードセルで構成されている。重量センサ54は、載せ皿40に載置されている血液バッグ3の重量を計測し、計測した重量を制御部に出力する。
【0032】
制御部は、重量センサ54で計測された血液バッグ3の重量に基づいて現在の採血量を算出し、目標の採血量となったときに採血を停止する。また、制御部は、血液バッグ3の重量に基づき、単位時間当たりの採血速度を算出できる。採血速度が所定値以下で遅い場合、制御部は例えば吸引圧を低めにする制御を行う。また、採血速度が所定値よりも速い場合、制御部は例えば吸引圧を高めにする制御を行う。これにより、採血対象となるドナー(供血者)の動態に合わせた採血を行うことが可能となる。
【0033】
以下、第1実施形態の採血装置1の効果を述べる。
第1実施形態の採血装置1は、血液バッグ3を載置する載せ皿40と、載せ皿40を揺動させる揺動機構50と、を備える。揺動機構50は、載せ皿40が装置接地面と平行に配置される第1位置と、装置接地面に対して載せ皿40が傾いて配置される第2位置との間で載せ皿40の姿勢を変化させるとともに、非揺動時に載せ皿40を第1位置で静止させる。
揺動機構50は、装置接地面と平行な第1位置と装置接地面に対して傾いた第2位置の間で載せ皿40の姿勢を変化させて血液バッグ3を揺動できるので、採血装置1において血液バッグ3内の液体の混和が良好に行われる。また、本実施形態では、非揺動時に載せ皿40が装置接地面と平行な第1位置で静止する。血液バッグ3が装置接地面から傾いて停止している状態と比べると、第1位置での血液バッグ3は上面のラベルの視認がしやすく、またラベルに付されたバーコードの読み取りも容易となる。そのため、採血を行う際の作業性も向上する。
このように、第1実施形態によれば、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ3内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置1が提供される。
【0034】
また、揺動機構50は、装置接地面の装置幅方向(第1方向)に載せ皿40を傾かせる第1傾動部52と、装置幅方向と直交する装置接地面の装置奥行方向(第2方向)に、載せ皿40および第1傾動部52を傾かせる第2傾動部53と、を有する。
第1傾動部52および第2傾動部53を組合わせて揺動機構50を構成することで、装置幅方向の傾きと装置奥行方向の傾きをそれぞれ別の機構に担わせることができ、揺動機構50の設計をシンプルにできる。
【0035】
また、第1傾動部52は、モータ52a(第1動力部)の動力により駆動し、第2傾動部53は、モータ52a(第2動力部)の動力により第1傾動部52と独立して駆動可能である。
そのため、揺動機構50は、装置幅方向の傾きと装置奥行方向の傾きを独立して制御できるので、血液バッグ3が積置された載せ皿40を所望の挙動で揺動させることができる。
【0036】
ここで、第1実施形態の揺動機構50は、図5の構成に限定されるものではない。例えば、上記の揺動機構50において、第1傾動部52が下側に配置され、第2傾動部53が上側に配置されていてもよい。また、第1実施形態の揺動機構は、以下の構成であってもよい。
【0037】
図6(a),(b)は、揺動機構の第1変形例を示す図である。第1変形例の揺動機構50aでは、第1実施形態の揺動機構50と比べて重量センサ54の配置が異なっている。なお、第1変形例の説明において、図5と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0038】
第1変形例の揺動機構50aでは、第1傾動部52は、載せ皿取付部51の代わりに、平板状の第2の支持部材55aを駆動させる。これにより、第1傾動部52は、第1軸(Y軸)を中心として第2の支持部材55aを装置幅方向に上下揺動させるように傾ける。また、第2の支持部材55aの上には重量センサ54が配置され、載せ皿40は重量センサ54の上に着脱可能に取り付けられる。第1変形例の構成では、重量センサ54が載せ皿取付部を兼ねている。
【0039】
第1変形例の揺動機構50aは、図6の揺動機構50と同様に、第1傾動部52および第2傾動部53を有する。そのため、第1変形例においても、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ3内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置1を提供できる。
また、第1変形例の揺動機構50aは、血液バッグ3の重量を測定する重量センサ54をさらに備え、重量センサ54は、第1傾動部52と載せ皿40の間に配置されている。揺動機構50aでは、重量センサ54によって、第1傾動部52や第2傾動部53を介さずに載せ皿40および血液バッグ3の重量を計測できる。そのため、第1変形例によれば、図5の構成よりも耐荷重の小さい小型の重量センサ54を適用することができ、重量センサ54のコストダウンと省スペース化を図ることができる。
【0040】
図7(a),(b)は、揺動機構の第2変形例を示す図である。第2変形例の揺動機構50bは、第1傾動部52および第2傾動部53を共通の動力源で駆動させる構成である。なお、第2変形例の説明において、図5図6と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0041】
揺動機構50bは、第1傾動部52と、第2傾動部53と、重量センサ54と、支持部材55と、第2の支持部材55aと、吸引室2に固定されている取付基部55bとを有している。
【0042】
第1傾動部52は、平板状の支持部材55の上に配置されている。第1傾動部52は、第1軸(Y軸)を中心として平板状の第2の支持部材55aを装置幅方向に上下揺動させるように傾ける機構である。また、第2の支持部材55aの上には重量センサ54が配置され、載せ皿40は重量センサ54の上に着脱可能に取り付けられる。
【0043】
第1傾動部52は、モータ52aと、第1機構52bと、第1エンコーダ52cと、モータ52aに接続された第1シャフト52dを有している。第1機構52bは、第1軸に沿って延びる第1シャフト52dを介してモータ52aの動力を受ける。そして、第1機構52bは、モータ52aの回転により第1軸を中心として回動し、第2の支持部材55aを装置幅方向に上下揺動させるように傾ける。また、第1シャフト52dには、傘歯車52d1が取り付けられている。
【0044】
また、モータ52aには、モータ52aの回転角度を検出し、制御部に出力する第1エンコーダ52cが取り付けられている。制御部は、第1エンコーダ52cの出力から第1傾動部52による傾き角θ1を算出できる。
【0045】
第2傾動部53は、第2軸(X軸)を中心として支持部材55を傾ける機構である。第2傾動部53は、第2機構53b1と、第2エンコーダ53cと、第2シャフト53dと、第3シャフト53eとを有している。
【0046】
第2シャフト53dは、第1シャフト52dと直交する方向に延びており、支持部材55を上下に貫通して軸支されている。第2シャフト53dの一端には傘歯車53d1が固定され、第2シャフト53dの他端には傘歯車53d2が固定されている。第2シャフト53dの傘歯車53d1は、第1シャフト52dの傘歯車52d1と噛み合っている。
【0047】
第3シャフト53eは、第2軸に沿って延びており、他端側に配置された第2機構53b1に動力を伝達する。第3シャフト53eの一端側には、第2シャフト53dの傘歯車53d2と噛み合う傘歯車53e1が固定されている。また、第3シャフト53eには、第3シャフト53eの回転角度を検出し、制御部に出力する第2エンコーダ53cが取り付けられている。
【0048】
第2機構53b1は、支持部材55および取付基部55bに取り付けられている。第2機構53b1は、第3シャフト53eの回転により第2軸を中心として回動し、取付基部55bに対して支持部材55を装置奥行方向に上下揺動させるように傾けることができる。
【0049】
揺動機構50bの第1傾動部52は、モータ52aの回転により、第2の支持部材55aを装置幅方向に上下揺動するように傾けることができる。また、モータ52aによって回転する第1シャフト52dの傘歯車52d1は、第2シャフト53dの傘歯車53d1と噛合してモータ52aの回転を第2傾動部53に伝達する。
【0050】
これにより、第1シャフト52dが回転すると、第2傾動部53の第2シャフト53dおよび第3シャフト53eが従動して回転する。すると、第2傾動部52の第2機構53b1が駆動して、取付基部55bに対して支持部材55が装置奥行方向に上下揺動するように傾けられる。
【0051】
第2変形例の揺動機構50bは、図6の揺動機構50と同様に第1傾動部52および第2傾動部53を有する。そのため、第2変形例においても、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ3内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置1を提供できる。
また、第2変形例の揺動機構50bは、第1傾動部52と第2傾動部53を共通のモータ52aで駆動させるため、上記の揺動機構50と比べてモータおよびドライバの数を削減でき、採血装置1の低コスト化や装置重量の軽減を図ることができる。
【0052】
なお、上記の揺動機構50bにおいて、第1傾動部52と第2傾動部53の少なくとも一方にモータの回転の伝達と遮断を切り替えるクラッチ(不図示)を設けてもよい。そして、当該クラッチの制御により第1傾動部52と第2傾動部53を選択的に動作させてもよい。
【0053】
(第2実施形態)
図8(a),(b)は、第2実施形態の揺動機構50cを示す概要図である。揺動機構50cは、カムの回転により載せ皿を揺動させる構成である。第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0054】
揺動機構50cは、モータおよび重量センサ(いずれも不図示)と、歯車伝達機構56と、載せ皿取付部51を有している。揺動機構50cのモータは、例えばDCブラシレスモータやステッピングモータなどで構成される。図8において、モータの回転軸は紙面垂直方向に延びている。
【0055】
歯車伝達機構56は、モータの回転軸を中心に回転するウォーム57aと、ウォーム57aと噛み合うウォームホイール57bを有している。ウォームホイール57bは、回転軸と交差する歯車伝達機構56の中心軸57cに遊嵌されており、ウォーム57aの回転に従動して中心軸57c周りに回転する。また、歯車伝達機構56の中心軸57cは、垂直方向(Z軸方向)に対して斜めに傾いて配置されている。
【0056】
また、歯車伝達機構56の中心軸57cには、ウォームホイール57bと一体に回転する傾斜カム58がさらに配置されている。傾斜カム58は、中心軸57cに直交する平面に対して傾斜したカム面58aを有し、中心軸57cに遊嵌されている。ウォームホイール57bとともに傾斜カム58が中心軸57c周りに回転することで、傾斜カム58のカム面58aの傾斜方向は中心軸57cを中心とする回転方向に360度変化する。例えば、図8(b)は、図8(a)の状態から傾斜カム58が180度回転した状態を示している。
【0057】
載せ皿取付部51は、上面側に載せ皿40が取り付けられる部材であって、図8(a),(b)に示すように、傾斜カム58のカム面58a側に配置される。載せ皿取付部51は、底面側に配置された球面軸受51aを介して中心軸57cと連結されている。載せ皿取付部51自体は中心軸57cを中心として回転しないが、載せ皿取付部51の姿勢(傾斜方向)は、傾斜カム58の回転によるカム面58aの動きに同期して変化する。これにより、載せ皿取付部51は、載せ皿40の姿勢を変化させて載せ皿40を三次元的に揺動させることができる。
【0058】
また、傾斜カム58のカム面58aの傾き角は、垂直方向(Z軸方向)に対する中心軸57cの傾き角と等しい角度に設定されている。そのため、傾斜カム58の所定の回転位置(図8(a)の位置)では、カム面58aが装置接地面に沿った状態となる。このとき、載せ皿取付部51および載せ皿40が装置接地面と平行に配置された第1位置をとる。
【0059】
一方、傾斜カム58が図8(a)の位置から回転すると、カム面58aが装置接地面から傾いた状態となる。このとき、載せ皿取付部51および載せ皿40は、装置幅方向または装置奥行方向の少なくともいずれかに傾いた第2位置をとる。
【0060】
以上のようにして、揺動機構50cは、モータの動力で傾斜カムを回転させることで載せ皿40を三次元的に揺動させることができ、載せ皿40の姿勢を第1位置と第2位置の間で変化させることが可能となる。
【0061】
以上のように、第2実施形態での揺動機構50cは、傾斜カム58の回転動作により、載せ皿40が装置接地面と平行に配置される第1位置と、装置接地面に対して載せ皿40が傾いて配置される第2位置との間で載せ皿40の姿勢を変化させるとともに、非揺動時に載せ皿40を第1位置で静止させる。
第2実施形態の構成によっても、採血の際の作業性の低下を抑制しつつ、血液バッグ3内の液体の混和を良好に行うことのできる採血装置1が提供される。
また、第2実施形態によれば、傾斜カム58の回転で載せ皿40の姿勢を第1位置と第2位置の間で変化させることができるので、揺動機構50cの構成をシンプルにできる。
【0062】
また、図9(a)は、実施形態の揺動機構での載せ皿40の移動範囲を示す図である。また、図9(b)は比較例における載せ皿40の移動範囲を示す図である。図9(b)の比較例は、例えば第2実施形態と同様の構成の揺動機構を適用する。しかし、歯車伝達機構56の中心軸57cが垂直方向に沿って配置されている点で、比較例は第2実施形態の揺動機構50cと異なっている。
【0063】
図9(b)の比較例の場合、傾斜カム58のカム面が装置接地面に対して常に傾いているため、載せ皿40も常に装置接地面に対して傾いた位置をとる。したがって、比較例では、構造上載せ皿が装置接地面と平行な状態とはならない。これに対し、図9(a)の実施形態の揺動機構では、実線で示すように載せ皿40が装置接地面と平行な第1位置をとることができる。そのため、実施形態の揺動機構では、比較例と比べて血液バッグ上面のラベルの視認がしやすく、またラベルに付されたバーコードの読み取りを容易にすることができる。
【0064】
また、採血時に膨張した血液バッグ3を収容しやすくするため、載せ皿40には、覆い41cや、上面側で回動するストッパー(不図示)が設けられることがある。図9(b)の比較例の場合、覆い41cを有する載せ皿40は高さh1’まで到達するため、採血装置1内のスペースを高さh1’に合わせて確保する必要がある。これに対し、図9(a)に示す実施形態の揺動機構の場合、覆い41cを有する載せ皿40は、中心軸57cの傾きにより、高さh1’よりも低い高さh1までの軌道に収まる。これにより、実施形態の構成では、中心軸57cを垂直方向に沿って配置する場合と比べて採血装置1を高さ方向に低くして小型化することが可能となる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0066】
第2実施形態では、載せ皿取付部51を傾斜カム58で揺動させる例を説明したが、載せ皿取付部51の裏面側にカム面を形成し、載せ皿40を揺動させる構成としてもよい。
【0067】
なお、上記実施形態では、載せ皿40が水平面に沿って配置された状態を第1位置としたが、上記実施形態は一例であり、第1位置では、載せ皿40が装置接地面の少なくとも一方向と平行に配置されていればよい。例えば、作業員が採血装置1の正面ではなく、側方に存在するケースを想定する。上記のケースでは、載せ皿40が装置奥行方向に延びる第1軸(Y軸)に対して平行に配置され、且つ、装置幅方向に延びる第2軸(X軸)に対して作業員側に傾けて配置された状態を第1位置とすると、載せ皿40に収容された血液バッグ3のラベルの確認や当該ラベルに付されたバーコードの読み取りなどの作業性が向上する。ここで、載せ皿40の第1位置での装置接地面の第1軸や第2軸に対する向きは、例えば、作業員による操作部30の所定操作に基づいて設定可能に構成される。そして、制御部が設定内容に基づいてモータの回転角度を制御することで、設定された第1位置に載せ皿40を静止させることができる。
すなわち、載せ皿40の第1位置は、作業員との相対的な配置(視認方向)を考慮して規定され、本実施形態の揺動機構は、載せ皿40の第1位置での装置接地面の第1軸や第2軸に対する向きを変更可能に構成されている。
【0068】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1…採血装置、2…吸引室、3…血液バッグ、10…筐体、20…上蓋、40…載せ皿、50,50a,50b,50c…揺動機構、52…第1傾動部、52a…モータ、53…第2傾動部、53a…モータ、56…歯車伝達機構、57c…中心軸、58…傾斜カム、58a…カム面

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