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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019037
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】シート成形容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/26 20060101AFI20240201BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D1/26 120
B65D65/40 D
B32B27/10
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116440
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022121247
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】石田 義一
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA10
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA07
3E033CA09
3E033DC03
3E033DD01
3E033FA01
3E086AA21
3E086AB01
3E086AC31
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB71
3E086BB74
3E086BB90
3E086CA01
4F100AK01A
4F100AK04
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AL01A
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA12A
4F100CA19
4F100CA19C
4F100DA01A
4F100DA01B
4F100DG10B
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA04A
4F100JA12
4F100JA12A
4F100JC00A
4F100JK02
4F100JK02A
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JL14C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】紙を含むシート材をプレス成形してなるシート成形容器について、使用時に高温での加熱条件下においても容器形状の変化を抑制する。
【解決手段】シート成形容器のシート材10´が、紙層10aと樹脂フィルム層10bを有し、樹脂フィルム層10bは無延伸の樹脂フィルムからなり、樹脂フィルム層10bのJIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下である構成とする。樹脂フィルム層10bは無延伸であるから、加熱による熱収縮により特定方向に容器が変形することが抑制できる。樹脂フィルム層10bの引張弾性率が高いため、紙層10aの紙が加熱により反る場合でも、樹脂フィルム層10bがその反りを抑えることができるので、容器の変形を抑制できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材をプレス成形することで形成されるシート成形容器であって、
前記シート材は、紙層と樹脂フィルム層を有し、
前記樹脂フィルム層は紙層の少なくとも片面に積層されており、
前記樹脂フィルム層は無延伸の樹脂フィルムからなり、
前記樹脂フィルム層のJIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下である、シート成形容器。
【請求項2】
前記樹脂フィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの結晶化度は5%以下である、請求項1に記載のシート成形容器。
【請求項3】
前記樹脂フィルム層は前記シート成形容器の内面に形成される、請求項1または請求項2に記載のシート成形容器。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、生物由来のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、
前記バイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂は、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、
前記共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、
前記共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中における前記イソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、
前記共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点が234℃以上250℃以下である請求項2に記載のシート成形容器。
【請求項5】
前記シート成形容器の外面にワックスからなる離型コート層を有する、請求項3に記載のシート成形容器。
【請求項6】
前記樹脂フィルム層は抗菌材を含有する、請求項3に記載のシート成形容器。
【請求項7】
食品収納用である、請求項5に記載のシート成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を収納するのに好適なシート成形容器およびそのシート成形容器を形成するためのシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材をプレス成形してなる、食品を収納するのに好適なシート成形容器が知られている。そのシート材としては、特許文献1、2および3のように、紙と樹脂フィルムを積層したものや、樹脂フィルムのみを単体でまたは複数種積層したものが汎用されている。
【0003】
紙と樹脂フィルムを積層したシート材は、樹脂フィルムのみからなるシート材と比較して、化石燃料の使用量を削減できる点で利点を有する。紙と樹脂フィルムからなるシート材では、その樹脂フィルム層が、シート成形容器の内面、すなわち食品と接触する面を構成し、成形容器に耐水耐油機能を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-265809号公報
【特許文献2】特開2010-111423号公報
【特許文献3】特開2018-171876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のシート成形容器は、生産効率等を勘案して、シート材を重ね合わせた状態(5枚から40枚程度)でプレス成形される関係上、多数枚が重ねられた状態でパッケージされていることが多く、エンドユーザーは一枚ずつ剥離して使用に供することになる。
このようなシート成形容器は、弁当の惣菜容器として用いられたり、カップケーキのような焼き菓子を焼成する際、当該容器に直接生地を流しいれ、オーブンによる焼成調理に利用されたりしている。
【0006】
このような使用にあたり、シート成形容器には形状保持性が要求される。これは、容器内方への食材等の内容物を収容した状態で容器形状が変形せずに維持されることが必要であるが、特に焼き菓子を焼成する場合や電子レンジで加熱する場合のように高温での加熱条件下で容器が変形してしまうと、内容物がこぼれ出てしまうおそれがあるからである。
例えば、特許文献1や3のように二軸延伸のPET(ポリエチレンテレフタレート)を紙に積層した場合には二軸延伸PETの加熱による熱収縮により特定方向に容器が変形してしまう。
このような耐熱性を要求される場合においてはポリブチレンテレフタレートのような耐熱性の高い樹脂を積層したものが使用されることがあるが形状保持性は十分ではなく、高温条件下で加熱すると容器が変形してしまう。
【0007】
また、紙は製造工程により生じる紙目があり、MD方向(縦方向=抄紙機における走行方向)はコシが強いが、それと直角の方向であるCD方向(横方向=抄紙機における走行方向と直角の方向)はコシが弱いため、シート成形容器が高温での加熱条件下では、紙に積層した樹脂フィルム層の熱収縮に紙が対抗できずにコシが弱いCD方向に丸まるように変形してしまう。
さらに、紙自体も紙の水分量の変化により反りが生じやすく、高温での加熱条件下で生じる紙の反り(変形)に樹脂フィルム層が追従してしまい、シート成形容器の変形が生じてしまう。
【0008】
そこで本発明の解決すべき課題は、紙を含むシート材をプレス成形してなるシート成形容器について、使用時に高温での加熱条件下においても容器形状の変化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、シート材をプレス成形することで形成される発明にかかるシート成形容器を、シート材が、紙層と樹脂フィルム層を有し、樹脂フィルム層は紙層の少なくとも片面に積層されており、樹脂フィルム層は無延伸の樹脂フィルムからなり、樹脂フィルム層のJIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下である構成としたのである。
【0010】
このように構成すると、樹脂フィルム層は無延伸であるから、樹脂フィルム層の加熱による熱収縮により特定方向に容器が変形することが抑制できる。
また、樹脂フィルム層の引張弾性率が、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下であるから、紙が加熱により反る場合でも樹脂フィルム層がその反りを抑えることができるので、容器の変形を抑制できる。
【0011】
発明にかかるシート成形容器は、樹脂フィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、ポリエチレンテレフタレートフィルムの結晶化度は5%以下であることが好ましい。
【0012】
このように構成することで、樹脂フィルム層は耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、しかもその結晶化度は5%以下と非常に低いことから、樹脂フィルム層の加熱による熱収縮により容器が変形することが一層抑制できる。
【0013】
発明にかかるシート成形容器は、樹脂フィルム層はシート成形容器内面に形成される構成を採用することが好ましい。
【0014】
このように構成することで、容器内面に耐油性、耐水性を付与することでき、容器に油分や水分のある食品を収容しても容器を構成する紙に浸透しないので、容器外面に油分や水分が染み出たりするのを防ぐことができる。
また、油分や水分が紙へ浸透することに起因する紙の変形を防ぎ、容器全体の変形を抑制することができる。
【0015】
発明にかかるシート成形容器は、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、生物由来のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、バイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂は、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点が234℃以上250℃以下である構成を採用することが好ましい。
【0016】
このように構成することで、耐熱性に優れ、環境負荷に優しいシート成形容器となる。
【0017】
発明にかかるシート成形容器は、シート成形容器外面にワックスからなる離型コート層を有する構成を採用ことが好ましい。
【0018】
このように構成することで、重なり合うシート成形容器間の離型性が向上するため、使用の際に一枚ずつ剥離することが一層容易となる。
【0019】
発明にかかるシート成形容器において、その樹脂フィルム層は抗菌材を含有する構成を採用することが好ましい。
【0020】
このように構成することで、樹脂フィルム層に抗菌性が付与されるため、衛生面で優れたシート成形容器とすることができる。
【0021】
発明にかかるシート成形容器は、食品収納用に用いることができる。
【0022】
食品用途とすることで、高温での加熱条件下で容器の変形が抑制されるので、変形による内容物がこぼれ出てしまうことが抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明を以上のように構成することで、紙を含むシート材をプレス成形してなるシート成形容器について、使用時に高温での加熱条件下においても容器形状の変化が抑制されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のシート成形容器の斜視図
図2】実施形態のシート材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0026】
<シート成形容器およびシート材>
図1に示す実施形態のシート成形容器10は、食品収納用として好適に用いられ、図2に示す実施形態のシート材10´をプレス成形することで作成されるものである。
図1に示すように、実施形態のシート成形容器10は、平面視円形の底壁11と、底壁11の周縁から広がって立ち上がる周壁12と、を有し、上方に開口している。
シート成形容器10の底壁11は平坦であり、周壁12の全周には上下方向に延びる多数の皺12aが形成されている。
シート成形容器10は、底壁11と周壁12により区画される収納空間に上方より食品を収納可能となっている。
【0027】
シート成形容器10の寸法は特に限定されないが、弁当箱に入れられておかず等の食品を収納するのに好適な寸法として、開口径が50~80mm、底壁11の直径が30~60mm、高さ(側面長さ)が15~50mmが例示できる。
なお、底壁11の形状は、平面視円形に限定されず、平面視楕円形、平面視長円形などでもよい。
また、周壁12の形状も、底壁11から広がって立ち上がるものに限定されず、たとえば底壁11に対してほぼ垂直に立ち上がっていてもよい。
周壁12の皺12aの形成態様も限定されず、たとえば底壁11が平面視長円形である場合には、その丸みのある角隅部分のみに皺を形成してもよい。
シート成形容器10は、底壁11と周壁12以外の要素、たとえばフランジを有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、実施形態のシート材10´は、紙層10aとPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる樹脂フィルム層10bとが積層一体化してなる。
シート材10´は、紙層10aとして植物性パルプを原料とすることから、環境に対する負荷の小さなものとなっている。また、PETとして生物(植物)由来のバイオマス樹脂として製造されたバイオマスPETを使用した場合には、環境に対する負荷がより小さなものとなる。
シート材10´は、多数枚が重ね合わされた状態で、従来と同様の金型を用いてプレス成形されることで、シート成形容器10が形成される。
【0029】
ここで、シート成形容器10においては、樹脂フィルム層10bが容器内面となり、紙層10aが容器外面となる。
樹脂フィルム層は紙層の少なくとも片面に積層されていればよく、樹脂フィルム層を容器外面としてもよいが、食品などの油分や水分を含むものを収容する場合には、樹脂フィルム層を容器内面とし、紙層を容器外面とすれば、容器を構成する紙に浸透しないので、容器外面に油分や水分が染み出たりするのを防ぐことができる。
また、油分や水分が紙へ浸透することに起因する紙の変形を防ぎ、容器全体の変形を抑制することができる。
【0030】
シート成形容器10は、上記のような製法に由来して、多数枚が重なり合った状態で完成され、その状態でパッケージされ、出荷されることになる。
紙層10aや樹脂フィルム層10bは、単層で構成されていてもよいし、収納する食品の性質等に応じて、異種の紙やPET以外の樹脂を複数層に積層して構成されていてもよい。
【0031】
<紙層および樹脂フィルム層>
紙層10aを構成する紙の種類は特に限定されないが、紙としては純白紙や耐油紙が、例示できる。
紙の坪量も特に限定されないが、紙の坪量としては、10g/m~150g/mが例示できる。紙の厚みも特に限定されないが、紙の厚みとしては、10μm~170μmが例示できる。
これらの上限を上回ると、プレス成形した場合の成形不良が出やすくなり、坪量が上記数値範囲の下限を下回ると、プレス成形した場合に破れ等が生じやすくなる。
【0032】
紙層10aは、MD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が100Mpa以上300Mpa以下であることが好ましく、さらに160Mpa以上260Mpa以下であることが好ましい。このように構成することで、成形後の容器が容器全体として変形しにくくなるので、加熱による容器の変形をより抑制できる。
さらに、紙層10aの、MD方向の引張弾性率とCD方向の引張弾性率との差(MD方向の引張弾性率-CD方向の引張弾性率)が200Mpa以下であることが好ましい。なお、この差は小さい方がより好ましいが、紙の製造工程上、MD方向とCD方向の引張弾性率を均等に調整することは技術的にも製造コストの面でも難しいので、製造コストを勘案するとその下限値は50Mpa程度であるといえる。
【0033】
特に好ましいのは、MD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が160Mpa以上260Mpa以下であり、CD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が60Mpa以上90Mpa以下であって、MD方向の引張弾性率とCD方向の引張弾性率との差(MD方向の引張弾性率-CD方向の引張弾性率)が90Mpa以上170Mpa以下であることが容器の変形抑制効果と製造コストとのバランスの面でより好ましい。
このように構成することで、紙のMD方向とCD方向との紙目方向による引張弾性率の差が小さくなるので、加熱による紙の特定方向に対する変形をより抑制できるので、容器全体として変形を抑制できる。
【0034】
樹脂フィルム層10bは、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム層からなり、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは押出ラミネートにより紙層10aの片面に積層されている。
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、無延伸であり、その結晶化度は5%以下である。
また、樹脂フィルム層10bのJIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下である。
このように構成することで、樹脂フィルム層10bはその結晶化度は5%以下で無延伸であるから、樹脂フィルム層10bの加熱による熱収縮により特定方向に容器が変形することが抑制できる。
また、樹脂フィルム層10bの引張弾性率が、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下であるから、紙が加熱により反る場合でも樹脂フィルム層10bがその反りを抑えることができるので、容器10の変形を抑制できる。
その結果、成形後のシート成形容器を200℃で10分間加熱したときの加熱前後のシート成形容器の形状変化率が20%以内に抑えることが可能となる。
【0035】
また、樹脂フィルム層10bは、生物由来のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、このバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂は、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、融点が234℃以上250℃以下であることが好ましい。
このように構成することで、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム層は高い融点を有するので耐熱性に優れ、生物由来のバイオマス樹脂を含むので環境負荷に優しいシート成形容器となる。
【0036】
また、紙層10aや樹脂フィルム層10bには印刷が施されているなどして、紙層10aと樹脂フィルム層10bの間に、印刷層等の他の層であって、樹脂フィルムとは異なる層が介在していてもよい。
印刷層のインクの種類は特に限定されないが、環境に対する負荷が小さいため、バイオマスインクや生分解性インクが好ましい。
【0037】
さらに、紙層10aの樹脂フィルム層10bとの積層面とは逆側の面(シート成形容器10における容器外面)には、離型コート層等の他の層であって、樹脂フィルムとは異なる層が設けられていてもよい。
離型コート層を設けた場合、上記のようにして重なり合った状態でシート成形容器10を、使用の際に一枚ずつ剥離することが容易となる。
離型コート層は、カルナバワックスなどの植物性ワックスから構成すると、環境に対する負荷が小さく、食品とともに経口摂取した場合にも悪影響が小さいため好ましい。離型コート層の塗布量は特に限定されないが、塗布量としては0.1g/m~2.0g/mが例示できる。
【0038】
樹脂フィルム層10bの形成方法としては、押出ラミネートとすることで、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム層の結晶化度を5%以下とし、無延伸となり、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム層のJIS K7161-1:2014による引張弾性率を3000Mpa以上4300Mpa以下に調整することが可能となる。
【0039】
また、樹脂フィルム層10bには抗菌材成分を含有させてもよい。特に、食品収納用としてシート成形容器10を用いる場合には、食品が接する面である樹脂フィルム層10bに抗菌性を付与できるので衛生面で優れたシート成形容器となる。
抗菌材成分は特に限定されないが、例えば、抗菌性金属微粒子が例示でき、粒径が300nm以下の抗菌性金属微粒子を樹脂フィルム層10b中に分散させることで好適な抗菌性を付与することができる。なお、抗菌性金属微粒子とは、銀のような金属単体で構成される微粒子のみならず銀のような金属と他の金属(例えば亜鉛)や他の化合物とが結合した微粒子であって抗菌性を備えたもの、例えば脂肪酸と銀との脂肪酸金属塩のような金属を含む抗菌性を備えた無機微粒子や銀と亜鉛を含むAg-Zn系抗菌材と呼ばれるような抗菌性を備えた無機微粒子も含むものである。
この中でも、銀と亜鉛を含むAg-Zn系抗菌材と呼ばれるような抗菌性を備えた無機微粒子を用いることが電子レンジ加熱のような高温加熱に対しても耐熱性があり抗菌性の低下が抑えられることからより好ましい。ただし、含有できる抗菌材をこれらに限定するものではなく、他の抗菌材の含有を排除するものでもない。
【0040】
その配合方法も問わず、抗菌材をポリエチレンテレフタレート樹脂に直接配合してもよいし、抗菌材を含むマスターバッチを準備した上で、そのマスターバッチをポリエチレンテレフタレート樹脂に配合して混練して分散させてもよい。特に、抗菌性金属微粒子を抗菌材として用いる場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂に相溶性のある樹脂をマスターバッチのベース樹脂とし、そのベース樹脂に抗菌性金属微粒子を配合したものをマスターバッチとして準備し、そのマスターバッチをポリエチレンテレフタレート樹脂に配合して混練して押出することで樹脂フィルム層中に分散させる、という方法を採用することが樹脂フィルム中に均一に分散し安定した抗菌性が得られるので好ましい。
樹脂フィルム層中の抗菌材の含有量は、含有する抗菌材の抗菌活性能にもよるが、0.1重量%以上3.0重量%以下含有することが好ましく、0.5重量%以上1.0重量%以下含有することがより好ましい。
樹脂フィルム層中の抗菌材の含有量が0.1重量%を下回る場合、十分な抗菌性能が得られず、3.0重量%を超える場合、抗菌性は優れるが過剰に抗菌材が含有されるのでコストが高くなる。また、3.0重量%を超える場合、本発明のシート成形容器を構成する樹脂フィルム層に必要とされる引張弾性率や結晶化度に悪影響を与えるおそれもある。
なお、抗菌性は、JIS Z 2801:2012(フィルム密着法)による抗菌試験により大腸菌、黄色ブドウ球菌を用いた場合の抗菌活性値を求めることで抗菌性を確認することができる。
【0041】
また、樹脂フィルム層10bには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂を配合することも許容できる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエチレンテレフタレート樹脂と相溶性の高い樹脂が配合できる樹脂として挙げられる。
なお、本実施形態では、樹脂フィルム層10bはポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム層であったが、前述の所定の物性(特に、無延伸の樹脂フィルムであり、そのJIS K7161-1:2014による引張弾性率が3000Mpa以上4300Mpa以下である)等を備えた樹脂フィルム層であればよく、ポリエチレンテレフタレート樹脂に限定されるものではない。
【実施例0042】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を一層明確にする。
実施例・比較例として、樹脂フィルム層と紙層を備えたシート材を用いて、実施例1および実施例2ならびに比較例1から比較例4のシート成形容器をそれぞれ20個準備した。
なお、その積層順は、樹脂フィルム層がシート材の表面(シート成形容器では内面)に、紙層がシート材の裏面(シート成形容器では外面)にそれぞれ相当する。
【0043】
紙層の紙は、坪量35g/mであり、MD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が160Mpa以上250Mpa以下であり、CD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が60Mpa以上90Mpa以下であるものを用いた。
ここで、実施例1および比較例1から4の紙は、MD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が244Mpa、CD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が64Mpaであるものを、実施例2の紙は、MD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が170Mpa、CD方向のJIS P8113:2006による引張弾性率が86Mpaであるものを、それぞれ用いた。
【0044】
また、樹脂フィルム層としては、実施例1および実施例2ならびに比較例1から比較例3はいずれも厚みが15μmであり、比較例4は12μmであった。
【0045】
ここで、実施例1および実施例2の樹脂フィルム層は押出PET(ポリエチレンテレフタレート:無延伸、結晶化度0%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が4000Mpa)とし、比較例1の樹脂フィルム層は押出PBT(ポリブチレンテレフタレート:無延伸、結晶化度10%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が2600Mpa)を、比較例2の樹脂フィルム層は押出TPX(ポリメチルペンテン:無延伸、結晶化度30%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が1350Mpa)を、比較例3の樹脂フィルム層は押出PP(ポリプロピレン:無延伸、結晶化度55%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が1950Mpa)を、比較例4の樹脂フィルム層は二軸延伸PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート:結晶化度0%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が4000Mpa)、をそれぞれ用いた。
【0046】
また、比較例4の樹脂フィルム層は紙にドライラミネートで積層されており、東洋モートン株式会社製のドライラミネート用接着剤(品番:TM329/CAT8B)を用いて貼り合わせた。
【0047】
離型コートは、実施例および比較例いずれもトーヨーケム社製のポリエチレンワックスを分散させたOC-2128を0.4g/mとなるように紙層の樹脂フィルム層が接する面とは反対側の面に塗工した。
【0048】
このようにして準備したそれぞれのシート体を所定の大きさにカットした後、20枚重ねた状態でプレス成形してシート成形容器を作製した。
実施例1から2および比較例1から3のシート成形容器については、いずれも、図1に示される平面視円形の形状とし、寸法は開口径が約77mm、底壁の直径が約45mm、高さが約27mmである。
比較例4のシート成形容器については、平面視楕円形の形状とし、寸法は開口長径が約77mm、底壁の長径が約45mm、高さが約27mmである。
【0049】
<評価1:注水時の容器形状保持性>
実施例および比較例のシート成形容器の内面に50mlの水を入れたときのシート成形容器の形状保持性を評価した。
結果を次表1に示す。
表より、実施例1、2および比較例4は口径が78mmと1mm拡がった程度で形状を保持したが、比較例1は81mmと拡がり、比較例2および3は容器が変形しすぎて水が溢れた。
【0050】
【表1】
【0051】
<評価2:高温加熱条件での容器の表面状態>
実施例および比較例のシート成形容器の内面に何も入れない状態で、200℃10分間オーブンで加熱した後の容器内面の表面状態を観察した。
結果を次表2に示す。
表より、実施例1、2および比較例2はシート成形容器の内面の樹脂フィルム層が溶融する等の変化は見られなかった。なお、比較例1は変形が見られた(後述の評価3)。また、比較例3は、シート成形容器の内面の樹脂フィルム層の溶融が見られた。
比較例4は、一方向に丸まったように容器が変形していた。
【0052】
【表2】
【0053】
<評価3:高温加熱条件での容器の変形状態測定>
評価2の加熱後の実施例1および実施例2と比較例1の容器の変形状態を観察した。
結果を次表3から表6に示す。
なお表6中、変化量は、短手の変化量絶対値+長手の変化量絶対値を、変化率(%)は、(変化量+元口径寸法)/元口径寸法(×100)をそれぞれ示す。
表より、実施例1および実施例2は比較例1よりも容器口径の変化が小さいことがわかった。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
<評価4:抗菌試験>
実施例1のシート成形容器と、シート成形容器を構成する樹脂フィルム層として押出PETであってAg-Zn系の無機微粒子を含む無機系抗菌材を下記の割合でそれぞれ含有する樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3から実施例5のシート成形容器を作製した。
なお、実施例3から実施例5に用いた無機系抗菌材を含有する樹脂フィルムは、それぞれ、無延伸、結晶化度0%、JIS K7161-1:2014による引張弾性率が約4000Mpaとなるように調整を行ったものを準備して使用した。
また、これらの無機系抗菌材を含有する樹脂フィルムは、無機系抗菌材を10重量%含むPETで構成されるマスターバッチペレットを予め準備しておき、別途準備した押出用のPETペレットへ当該マスターバッチペレットを所望量添加し、これらを溶融混練して樹脂フィルムとして押出することで、実施例3から実施例5に用いられる無機系抗菌材を含有する樹脂フィルムとして得たものを用いた。
また、抗菌試験にあたっては、実施例1および実施例3から実施例5のシート成形容器から樹脂フィルム層を剥がし、剥がした樹脂フィルム層を抗菌試験に供した。
このようにして得られた実施例1および実施例3から実施例5のシート成形容器の樹脂フィルム層をJIS Z 2801:2012(フィルム密着法)による抗菌試験により大腸菌および黄色ブドウ球菌を用いて24時間培養させた後の抗菌活性値を求めることで抗菌性を確認した。
結果を次表7に示す。
なお、表7中、◎は、大腸菌と黄色ブドウ球菌のいずれにおいても抗菌活性値が2.0以上であることを、〇は、大腸菌と黄色ブドウ球菌のいずれかの抗菌活性値が2.0以上であることを、×は、大腸菌と黄色ブドウ球菌のいずれも抗菌活性値が2.0未満であることを、それぞれ示す。
表より、実施例5は特に高い抗菌性能を示すことがわかった。
【0059】
【表7】
【0060】
今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものでない。
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、その範囲内およびこれと均等の意味での、すべての修正と変更を含むものとする。
たとえば実施形態では、シート成形容器10を食品収納に好適なものとして構成しているが、食品以外の収納用途に好適なものとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 シート成形容器
10´ シート材
10a 紙層
10b 樹脂フィルム層
11 底壁
12 周壁
12a 皺
図1
図2