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特開2024-1904内視鏡装置、内視鏡システム、輻輳角変更方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001904
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】内視鏡装置、内視鏡システム、輻輳角変更方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20231228BHJP
   G03B 35/08 20210101ALI20231228BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231228BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B23/24 B
G03B35/08
G03B15/00 H
A61B1/00 522
A61B1/00 553
A61B1/00 731
A61B1/00 735
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100755
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】能登屋 瑞希
【テーマコード(参考)】
2H040
2H059
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA15
2H040CA03
2H040CA12
2H040CA23
2H040CA24
2H040DA03
2H040DA12
2H040DA15
2H040DA21
2H040DA52
2H040FA01
2H040GA02
2H040GA10
2H040GA11
2H059AA10
4C161AA29
4C161BB06
4C161CC06
4C161FF40
4C161HH52
4C161PP12
4C161RR06
(57)【要約】
【課題】被写体距離に応じて輻輳角を変化させることで、計測可能領域の割合を変化させることができる技術を提供する。
【解決手段】内視鏡装置は、光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系と、輻輳角を変化させる光学作用部材と、撮像光学系における光学作用部材の状態を制御する制御部と、を備える。制御部は、被写体までの距離を計測する計測演算部を備え、計測演算部の計測結果に基づいて、撮像光学系における光学作用部材の状態を制御することで輻輳角を変化させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系と、
輻輳角を変化させる光学作用部材と、
前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
被写体までの距離を計測する計測演算部を備え、
前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記光学作用部材は、前記2つの入射光路の一方又は各々に挿脱可能なプリズムであり、
前記制御部は、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記プリズムの挿脱状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記光学作用部材は、前記2つの入射光路の一方に挿脱可能なプリズムである、
ことを特徴とする請求項2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記2つの入射光路の各々に挿入された前記プリズムは、相反する光学作用を有する、
ことを特徴とする請求項2記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記光学作用部材は、前記2つの入射光路の一方に配置された平行平板であり、
前記平行平板は、2つのプリズムで構成され、当該2つのプリズムのうちの一方のプリズムは、前記2つの入射光路の他方に挿脱可能であり、
前記制御部は、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記平行平板における前記一方のプリズムの挿脱状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記光学作用部材は、前記2つの入射光路の一方又は各々に配置された液晶プリズムであり、
前記制御部は、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記液晶プリズムの液晶分子の配向状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記光学作用部材は、前記2つの入射光路の一方又は各々に配置された絞りであり、
前記絞りは偏心可能であり、
前記制御部は、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記絞りの偏心状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記計測演算部により計測された距離が閾値以上の場合は前記輻輳角が小さくなるように前記光学作用部材の状態を制御し、前記計測演算部により計測された距離が前記閾値未満の場合は前記輻輳角が大きくなるように前記光学作用部材の状態を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項9】
内視鏡装置と制御装置とを備えた内視鏡システムであって、
前記内視鏡装置は、
光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系と、
輻輳角を変化させる光学作用部材と、
を有し、
前記制御装置は、
被写体までの距離を計測する計測演算部を有し、
前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御することで前記輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
前記内視鏡装置は、光学アダプタを含む、
ことを特徴とする請求項9記載の内視鏡システム。
【請求項11】
被写体までの距離を計測し、
光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系における光学作用部材の状態を前記距離に基づいて制御することで輻輳角を変化させる、
ことを特徴とする輻輳角変更方法。
【請求項12】
被写体までの距離を計測し、
光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系における光学作用部材の状態を前記距離に基づいて制御することで輻輳角を変化させる、
処理をプロセッサに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、内視鏡装置、内視鏡システム、輻輳角変更方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置が備える機能の一つとして、ステレオ計測機能が知られている。ステレオ計測機能は、計測対象箇所を視差のある2方向から撮像し、撮像した画像間の相関演算により各画像上での対応する計測点のズレ量を求め、求めたズレ量から三角測量の原理で物体の大きさや深さ等を計測する機能である。このようなステレオ計測機能では、視差のある2つの画像の各々の視野の重なり領域が計測可能領域となるため、その各々の視野内に計測対象箇所が含まれている必要がある。
【0003】
視差のある2つの画像を撮像する光学系として、例えば特許文献1に記載の複眼撮像系が知られている。この複眼撮像系は、輻輳角を変化させる手段として、例えば、被写体側にプリズム系を備えており、当該プリズム系を構成するプリズムを回転させることで輻輳角を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-152096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステレオ計測機能を備えた従来の内視鏡装置では、輻輳角が固定されているために、視差のある2つの画像の視野が重なる計測可能領域の割合が、被写体距離(被写体までの距離)に応じて変化する。
【0006】
図16は、従来の内視鏡装置において、計測可能領域の割合が被写体距離に応じて変化する例を示す図である。この例では、輻輳角θが固定されている撮像光学系301の2つの視野302、303が重なる領域が計測可能領域304となり、重ならない領域が計測不可能領域305となる。この場合、撮像光学系301を介して撮像される2つの視野302、303の画像(視差のある2つの画像)の計測可能領域の割合は、被写体距離に応じて変化する。図16では、一例として、被写体距離が5mm、10mm、25mmの各々の被写体が撮像された2つの視野302、303の画像306、307における計測可能領域304と計測不可能領域305とを示している。これらの画像306、307によれば、被写体距離10mmの画像306、307に比べて、被写体距離5mmの画像306、307は計測可能領域304の割合が小さくなり、被写体距離25mmの画像306、307は計測可能領域304の割合が大きくなっている。
【0007】
このように、従来の内視鏡装置では輻輳角が固定されているために、計測可能領域の割合が被写体距離に応じて変化する。そのため、被写体距離によっては計測可能領域の割合が小さくなり(例えば図16の被写体距離5mmの場合)、ステレオ計測機能の使い勝手が低下する。
【0008】
なお、特許文献1には、輻輳角を変化させる手段を備えた複眼撮像系の開示があるものの、被写体距離に応じて輻輳角を変化させる技術については何ら開示が無い。
【0009】
本発明の一側面に係る目的は、被写体距離に応じて輻輳角を変化させることで、計測可能領域の割合を変化させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る内視鏡装置は、光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系と、輻輳角を変化させる光学作用部材と、前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、被写体までの距離を計測する計測演算部を備え、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御することで前記輻輳角を変化させる。
【0011】
本発明の一態様に係る内視鏡システムは、内視鏡装置と制御装置とを備えた内視鏡システムであって、前記内視鏡装置は、光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系と、輻輳角を変化させる光学作用部材と、を有し、前記制御装置は、被写体までの距離を計測する計測演算部を有し、前記計測演算部の計測結果に基づいて、前記撮像光学系における前記光学作用部材の状態を制御することで前記輻輳角を変化させる。
【0012】
本発明の一態様に係る輻輳角変更方法は、被写体までの距離を計測し、光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系における光学作用部材の状態を前記距離に基づいて制御することで輻輳角を変化させる。
【0013】
本発明の一態様に係るプログラムは、被写体までの距離を計測し、光軸が撮像素子の撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する撮像光学系における光学作用部材の状態を前記距離に基づいて制御することで輻輳角を変化させる、処理をプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
上記の態様によれば、被写体距離に応じて輻輳角を変化させることで、計測可能領域の割合を変化させることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る内視鏡装置1の外観構成を例示する図である。
図2】第1の実施形態に係る内視鏡装置1の内部構成を例示する図である。
図3】撮像光学系15の構成を例示する図である。
図4】第1の入射光路に挿入された光学作用部材16の配置例を示す図である。
図5】第1の入射光路に挿入された光学作用部材16の配置例を示す図である。
図6】プリズム16aの作用を例示する図である。
図7】プリズム16aが第1の入射光路に挿入されていない場合の輻輳角を例示する図である。
図8】プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合の輻輳角を例示する図である。
図9】制御部34がプリズム16aの挿脱状態を制御する処理を例示するフローチャートである。
図10】プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合と挿入されていない場合の各被写体距離での計測可能領域の割合をプロットしたグラフG1、G2を例示する図である。
図11】プリズム16aが撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に対して挿脱可能に構成された場合の具体例を示す図である。
図12】平行平板16b(プリズム16b1、16b2)の作用を例示する図である。
図13】第1の入射光路に配置された液晶プリズム16cの作用を例示する図である。
図14】絞り143の開口部143R、143Lの各々が外側へ偏心された状態の撮像光学系15を例示する図である。
図15】コンピュータ200のハードウェア構成を例示する図である。
図16】従来の内視鏡装置において、計測可能領域の割合が被写体距離に応じて変化する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る内視鏡装置1の外観構成を例示する図である。図1に例示した内視鏡装置1は、ステレオ計測機能を備えた内視鏡装置であって、挿入部10と、操作部20と、本体部30とを備える。
【0018】
挿入部10は、被検体の内部に挿入可能な細長形状を有し、先端部11と、湾曲自在に形成された湾曲部12と、可撓性を有する長尺な可撓管部13とを有する。先端部11には、矢印で示すように光学アダプタ14が着脱自在に装着可能とされている。光学アダプタ14が先端部11に装着されることで、内視鏡装置1ではステレオ計測機能による計測が可能になる。
【0019】
操作部20は、ユーザの操作を受け付けるものであって、ジョイスティック21や複数のボタン(不図示)等を有する。ジョイスティック21は、湾曲部12を所望の方向に湾曲させるための操作を受け付ける湾曲操作子である。
【0020】
本体部30は、表示部31や外部インタフェース32等を有する。表示部31は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、画像や操作画面等を表示する。また、表示部31は、ユーザのタッチ操作を受け付けるタッチパネル31aを有する。外部インタフェース32は、外部記憶装置(例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ)等の外部装置が接続される。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る内視鏡装置1の内部構成を例示する図である。図2に例示した内視鏡装置1において、光学アダプタ14が先端部11に装着されている状態の光学アダプタ14及び先端部11は、撮像光学系15、光学作用部材16、撮像素子11a、発光素子11b、及び照明光学系17を含む。
【0022】
撮像光学系15は、詳細は後述するように、光軸が撮像素子11aの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系により形成される2つの入射光路を有する。このような撮像光学系15は、撮像素子11aの撮像領域の長辺方向を左右方向としたときに、その撮像領域の左半分と右半分の各々の領域に視差のある被写体像を同時に結像する。光学作用部材16は、詳細は後述するように、輻輳角を変化させるものである。
【0023】
撮像素子11aは、撮像光学系15により結像された被写体像を撮像(光電変換)して撮像信号を生成し、本体部30(画像生成部33)へ出力する。撮像素子11aは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等である。
【0024】
発光素子11bは、被写体を照明するための照明光を発する。発光素子11bは、LED(Light Emitting Diode)等である。照明光学系17は、発光素子11bが発した照明光を被写体に照射する。なお、ここでは、発光素子11bが発した照明光で被写体を照明するようにしたが、例えば、本体部30が備える光源部が発した照明光を挿入部10等に挿通されたライトガイドで導光して被写体を照明するように構成してもよい。
【0025】
操作部20は、ジョイスティック21や複数のボタン(不図示)等に対するユーザの操作を受け付け、当該操作に応じた信号を本体部30(制御部34)へ出力する。
【0026】
本体部30は、上述の表示部31及び外部インタフェース32の他、画像生成部33、制御部34、及び記録部35を含む。なお、表示部31が有するタッチパネル31aは、ユーザのタッチ操作を受け付け、当該タッチ操作に応じた信号を制御部34へ出力する。
【0027】
画像生成部33は、撮像素子11aから出力される撮像信号に対して所定の信号処理を施すことにより画像を生成し、生成した画像を制御部34へ順次出力する。画像生成部33は、例えば、画像生成回路により構成される。
【0028】
制御部34は、内視鏡装置1の各部を制御する。例えば、制御部34は、撮像素子11aや発光素子11bの駆動を制御したり、表示部31の表示を制御したり、ジョイスティック21に対するユーザの操作に応じて湾曲部12の湾曲を制御したり、撮像光学系15における光学作用部材16の状態を制御したりする。
【0029】
また、制御部34は、各種の処理を行う。例えば、制御部34は、画像生成部33から順次出力される画像を、表示部31に表示したり、静止画又は動画として記録部35又は外部インタフェース32に接続された外部記憶装置に記録したりする。また、例えば、制御部34は、画像生成部33から出力される画像に基づいてステレオ計測機能による計測処理を行う。
【0030】
また、制御部34は、計測演算部34aを含む。計測演算部34aは、画像生成部33から出力される画像に基づいて、被写体距離(先端部11に装着された光学アダプタ14の先端から被写体までの距離)を計測する。このときの被写体距離の計測は、三角測量の原理を用いて公知の方法(例えば、特開2006-136706号公報に記載の方法)により行うことができる。そして、制御部34は、計測演算部34aの計測結果に基づいて、撮像光学系15における光学作用部材16の状態を制御することで輻輳角を変化させる。
【0031】
このような制御部34は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)を含んで構成される。そして、プロセッサがRAMをワークエリア等として使用しながらROMに記憶されているプログラムを実行することで制御部34の機能が実現される。制御部34、又は、制御部34及び画像生成部33は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0032】
記録部35は、静止画や動画、計測結果等を記録する。記録部35は、制御部34のプロセッサが実行するプログラムを記録してもよい。記録部35は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリである。
【0033】
図3は、撮像光学系15の構成を例示する図である。図3に例示したように、撮像光学系15は、光学アダプタ14に含まれるアダプタ光学系140と、先端部11に含まれるマスタ光学系110とを含む。アダプタ光学系140は、それぞれが負のレンズパワーを有する左眼レンズ141Lと右眼レンズ141Rとからなる双眼レンズ141と、正のレンズパワーを有する共軸レンズ142と、絞り(明るさ絞り)143と、カバーガラス144とを含む。左眼レンズ141Lと右眼レンズ141Rは、光軸が撮像素子11aの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系であり、撮像光学系15は、これらにより形成される2つの入射光路(被写体から撮像素子11aまでの入射光路)を有する。絞り143は、2つの入射光路に対応して配置された2つの開口部143L、143Rを有する。マスタ光学系110は、カバーガラス111と、正のレンズパワーを有する共軸レンズ112とを含む。
【0034】
このような撮像光学系15では、被写体から右眼レンズ141R、共軸レンズ142、絞り143の開口部143R、カバーガラス144、カバーガラス111、共軸レンズ112を順に通過した光が、撮像素子11aの撮像領域の左半分の領域11aLに結像される。また、被写体から左眼レンズ141L、共軸レンズ142、絞り143の開口部143L、カバーガラス144、カバーガラス111、共軸レンズ112を順に通過した光が、撮像素子11aの撮像領域の右半分の領域11aRに結像される。すなわち、2つの入射光路からの光(視差のある2つの被写体像)が、撮像素子11aの撮像領域の左半分と右半分の領域11aL、11aRに同時に結像される。以下では、2つの入射光路のうち、右眼レンズ141R等を通過する入射光路を第1の入射光路といい、左眼レンズ141L等を通過する入射光路を第2の入射光路という。
【0035】
次に、光学作用部材16について説明する。第1の実施形態において、光学作用部材16は、撮像光学系15における第1の入射光路に対して挿脱可能に構成される。このときの挿脱は、制御部34の制御の下、光学アダプタ14に含まれる図示しないアクチュエータにより行われる。
【0036】
図4及び図5は、第1の入射光路に挿入された光学作用部材16の配置例を示す図である。図4の配置例は、光学作用部材16が、双眼レンズ141(右眼レンズ141R)と共軸レンズ142との間に挿入された状態を示している。図5の配置例は、光学作用部材16が、絞り143(開口部143R)とカバーガラス144との間に挿入された状態を示している。
【0037】
第1の実施形態において、光学作用部材16は、くさび型のプリズム16aである。プリズム16aは、厚みの厚い方向に光線を曲げる作用がある。図6は、プリズム16aの作用を例示する図である。図6の左側は、厚みの厚い方が外側(共軸レンズ142の中心軸から離れる側)になるようにプリズム16aが第1の入射光路に挿入された場合の作用を例示し、図6の右側は、厚みの厚い方が内側(共軸レンズ142の中心軸に近づく側)になるようにプリズム16aが第1の入射光路に挿入された場合の作用を例示している。なお、図6では、模式的に、プリズム16aが挿入されていない場合の第1の入射光路の光線を破線で示し、プリズム16aが挿入されている場合の第1の入射光路の光線を実線で示している。
【0038】
図6の左側に例示したように、厚みの厚い方が外側になるようにプリズム16aが第1の入射光路に挿入された場合は、プリズム16aが挿入されていない場合に比べて、光線が矢印で示すように厚みの厚い方である外側へ曲げられる。一方、図6の右側に例示したように、厚みの厚い方が内側になるようにプリズム16aが第1の入射光路に挿入された場合は、プリズム16aが挿入されていない場合に比べて、光線が矢印で示すように厚みの厚い方である内側へ曲げられる。
【0039】
このように、プリズム16aは厚みの厚い方向に光線を曲げる作用があることから、プリズム16aを図6の左側又は右側に例示した向きで、図4又は図5に例示したように第1の入射光路に挿入することにより、輻輳角を変化させることができる。輻輳角は、詳しくは、第1の入射光路の主光線と第2の入射光路の主光線とがなす角度である。第1の入射光路の主光線は、絞り143の開口部143Rの中心と、撮像素子11aの撮像領域の左半分の領域11aLの中心とを通る光線である。第2の入射光路の主光線は、絞り143の開口部143Lの中心と、撮像素子11aの撮像領域の右半分の領域11aRの中心とを通る光線である。
【0040】
ここで、プリズム16aの挿脱による輻輳角の変化例を、図7及び図8を用いて説明する。図7は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されていない場合の輻輳角を例示する図である。図8は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合の輻輳角を例示する図である。
【0041】
図7に例示したように、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されていない場合、第1の入射光路の主光線41と第2の入射光路の主光線51とのなす角度である輻輳角は、θ0である。これに対し、図8に例示したように、プリズム16aが図6の右側に例示した向き(厚みの厚い方が内側になる向き)で、図4に例示したように第1の入射光路に挿入された場合は、第1の入射光路の視野42の向きが矢印で示したように内向きに変化し、輻輳角がθ1(>θ0)に変化する。また、第1の入射光路の視野42と第2の入射光路の視野52とが重なる領域である計測可能領域61(又は、それらが重ならない領域である計測不可能領域62)も変化する。すなわち、被写体距離に応じた計測可能領域61(又は計測不可能領域62)の割合も変化する。
【0042】
内視鏡装置1では、このようなプリズム16aの挿脱状態を、制御部34が被写体距離に応じて制御することで、被写体距離に適した輻輳角(計測可能領域の割合が大きくなる方の輻輳角)へ変化させることができる。このような制御部34の制御について、図9及び図10を用いて説明する。
【0043】
図9は、制御部34がプリズム16aの挿脱状態を制御する処理を例示するフローチャートである。この処理は、例えば、ユーザによりステレオ計測モードが選択された後であって計測対象箇所が指示される前に、制御部34により自動で行われる。ステレオ計測モードは、ステレオ計測機能をユーザに使用可能にさせるモードである。図10は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合(図8の場合)と挿入されていない場合(図7の場合)の各被写体距離(各ワーキングディスタンス(WD))での計測可能領域の割合(視野重なり率)をプロットしたグラフG1、G2を例示する図である。G1は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合のグラフであり、G2は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されてない場合のグラフである。なお、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合の輻輳角は、例えば3.8°であり、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されてない場合の輻輳角は、例えば1.42°である。
【0044】
図9に例示した処理では、まず、制御部34(計測演算部34a)が、画像生成部33から出力される画像に基づいて被写体距離を計測する(S11)。次に、制御部34は、S11で計測された被写体距離が閾値以上であるか否かを判定する(S12)。閾値は、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合と挿入されていない場合の各被写体距離での計測可能領域の割合を比較したときに、両者が一致又は略一致するときの被写体距離である。図10に例示したグラフG1、G2によれば、閾値が12.5mmとなる。
【0045】
S12の判定結果がYESの場合、制御部34は、輻輳角が小さくなるようにプリズム16aの挿脱状態を制御する(S13)。すなわち、図7に例示したように、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されていない状態になるように制御する。これにより、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されている場合よりも、計測可能領域の割合を大きくすることができる(図10の閾値以上のグラフG2参照)。
【0046】
一方、S12の判定結果がNOの場合、制御部34は、輻輳角が大きくなるようにプリズム16aの挿脱状態を制御する(S14)。すなわち、図8に例示したように、プリズム16aが第1の入射光路に挿入された状態になるように制御する。これにより、プリズム16aが第1の入射光路に挿入されていない場合よりも、計測可能領域の割合を大きくすることができる(図10の閾値未満のグラフG1参照)。
【0047】
S13又はS14が終了すると、図9に例示した処理が終了する。
【0048】
以上のように、第1の実施形態によれば、被写体距離に応じて輻輳角を変化させることで、計測可能領域の割合を変化させることができる。そのため、被写体距離によって計測可能領域の割合が小さくなるのを防止することができ、ステレオ計測機能の使い勝手を向上させることができる。
【0049】
第1の実施形態では、プリズム16aが、撮像光学系15における第1の入射光路に対して挿脱可能に構成されたが、撮像光学系15における第2の入射光路に対して挿脱可能に構成されてもよいし、撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に対して挿脱可能に構成されてもよい。この場合、第2の入射光路に挿入されるプリズム16aは、双眼レンズ141(左眼レンズ141L)と共軸レンズ142との間に挿入されるようにしてもよいし、絞り143(開口部143L)とカバーガラス144との間に挿入されるようにしてもよい。また、第2の入射光路に挿入されるプリズム16aの向きは、厚みの厚い方が内側になるようにされてもよいし、外側になるようにされてもよい。
【0050】
プリズム16aが、撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に対して挿脱可能に構成される場合、第1の入射光路に挿入されるプリズム16aと第2の入射光路に挿入されるプリズム16aは、相反する光学作用を有する向きで挿入されるようにしてもよい。すなわち、各々のプリズム16aの向きは、厚みの厚い方が内側になるようにされてもよいし、厚みの厚い方が外側になるようにされてもよい(いずれの場合も光学作用としては相反する方向となる)。前者の場合は、より大きな輻輳角へ変化させることができ、後者の場合は、より小さな輻輳角へ変化させることができる。
【0051】
図11は、プリズム16aが撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に対して挿脱可能に構成された場合の具体例を示す図である。図11の上側は、第1の入射光路と第2の入射光路の各々にプリズム16aが挿入されていない場合を示し、その右側は、この場合の被写体距離Dの被写体が撮像された視野42、52の画像43、53を示している。図11の下側は、第1の入射光路と第2の入射光路の各々にプリズム16aが挿入されている場合を示し、その右側は、この場合の被写体距離Dの被写体が撮像された視野42、52の画像43、53を示している。なお、この具体例では、第1の入射光路に挿入されるプリズム16aと第2の入射光路に挿入されるプリズム16aが、双眼レンズ141と共軸レンズ142との間に、厚みの厚い方が内側になるようにして、挿入される。
【0052】
図11に示した具体例では、第1の入射光路と第2の入射光路の各々にプリズム16aが挿入されることで、プリズム16aが挿入されていない場合に比べて、第1の入射光路の視野42と第2の入射光路の視野52が矢印で示すように共に内向きに変化し、輻輳角がθ0からθ2(>θ0)に変化する。なお、θ2は、プリズム16aが第1の入射光路のみに挿入された場合の輻輳角(図8のθ1参照)よりも大きくなる。また、被写体距離に応じた計測可能領域61(又は計測不可能領域62)の割合も変化する。例えば、被写体距離Dの被写体が撮像された視野42、52の画像43、53では、プリズム16aが挿入されている場合の方が、プリズム16aが挿入されていない場合よりも計測可能領域61の割合が拡大している。この具体例では、その割合が1(100%)になっている。
【0053】
このように、図11に示した具体例のようにプリズム16aが第1の入射光路と第2の入射光路の各々に対して挿脱可能に構成されることで、被写体距離に応じて輻輳角をより大きく変化させることができる。
【0054】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る内視鏡装置1において、光学作用部材16が、平行平板16bとされたものである。
【0055】
平行平板16bは、撮像光学系15における第1の入射光路に配置される。例えば、平行平板16bは、図4に例示した光学作用部材16のように、双眼レンズ141(右眼レンズ141R)と共軸レンズ142との間に配置されてもよいし、図5に例示した光学作用部材16のように、絞り143(開口部143R)とカバーガラス144との間に配置されてもよい。
【0056】
平行平板16bは、2つのくさび型のプリズム16b1、16b2で構成される。プリズム16b1、16b2は、例えば、第1の実施形態で説明したプリズム16aである。そして、2つのプリズム16b1、16b2のうちの一方のプリズム16b1は、第2の入射光路に対して挿脱可能に構成される。このときの挿脱は、制御部34の制御の下、光学アダプタ14に含まれる図示しないアクチュエータにより行われる。第2の入射光路に挿入されるプリズム16b1は、共軸レンズ142の中心軸に対称な位置に挿入される。例えば、平行平板16bが双眼レンズ141(右眼レンズ141R)と共軸レンズ142との間に配置される場合、第2の入射光路に挿入されるプリズム16b1は、双眼レンズ141(左眼レンズ141L)と共軸レンズ142との間に挿入される。
【0057】
図12は、平行平板16b(プリズム16b1、16b2)の作用を例示する図である。図12の左側は、平行平板16b(プリズム16b1、16b2)が第1の入射光路に配置されている場合の作用を例示し、図12の右側は、平行平板16bにおける一方のプリズム16b1が第2の入射光路に挿入されている場合のプリズム16b1、16b2の作用を例示している。なお、図12の左側では、模式的に、平行平板16b(プリズム16b1、16b2)が第1の入射光路に配置されている場合の第1の入射光路の光線と第2の入射光路の光線を実線で示している。また、図12の右側では、模式的に、平行平板16b(プリズム16b1、16b2)が第1の入射光路に配置されている場合(図12の左側の場合)の第1の入射光路の光線と第2の入射光路の光線を点線で示し、平行平板16bにおける一方のプリズム16b1が第2の入射光路に挿入されている場合の第1の入射光路の光線と第2の入射光路の光線を実線で示している。
【0058】
図12の左側に例示したように、第1の入射光路に平行平板16b(プリズム16b1、16b2)が配置されている場合は、第1の入射光路及び第2の入射光路の光線に対して何ら作用は及ばない。一方、図12の右側に例示したように、平行平板16bにおける一方のプリズム16b1が第2の入射光路に挿入された場合は、プリズム16b1の作用により第2の入射光路の光線が矢印で示すようにプリズム16b1の厚みが厚い方(内側)に曲げられ、他方のプリズム16b2の作用により第1の入射光路の光線が矢印で示すようにプリズム16b2の厚みが厚い方(内側)に曲げられる。なお、図12の右側に例示したプリズム16b1、16b2の作用は、図11で説明したプリズム16aの作用と同じになる。
【0059】
第2の実施形態では、このような平行平板16bにおける一方のプリズム16b1の挿脱状態を、制御部34が被写体距離に応じて制御することで、被写体距離に適した輻輳角(計測可能領域の割合が大きくなる方の輻輳角)へ変化させることができる。このような制御部34の制御は、第1の実施形態と同様に、被写体距離を計測して、それが閾値以上であれば輻輳角が小さくなるようにプリズム16b1の挿脱状態を制御し、それが閾値未満であれば輻輳角が大きくなるようにプリズム16b1の挿脱状態を制御すればよい。すなわち、被写体距離が閾値以上であれば、プリズム16b1が図12の左側に示した状態になるように制御し、被写体距離が閾値未満であれば、プリズム16b1が図12の右側に示した状態になるように制御すればよい。なお、閾値は、プリズム16b1が図12の左側に示した状態である場合と図12の右側に示した状態である場合の各被写体距離での計測可能領域の割合を比較したときに、両者が一致又は略一致するときの被写体距離である。
【0060】
以上のように、第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態では、平行平板16bを構成する2つのプリズム16b1、16b2のうちの一方のプリズム16b1の挿脱だけで、第1の入射光路の視野42と第2の入射光路の視野52の両方を内向きに変化させることができ、より大きな輻輳角へ変化させることができる。
【0061】
第2の実施形態では、平行平板16bを構成する2つのプリズム16b1、16b2のうち、プリズム16b1が第2の入射光路に挿脱されたが、プリズム16b2が第2の入射光路に挿脱されてもよい。この場合は、プリズム16b2が第2の入射光路に挿入されることで、第1の入射光路のプリズム16b1と第2の入射光路のプリズム16b2は、共に、厚みが厚い方が外側となる。そのため、平行平板16b(プリズム16b1、16b2)が図12の左側に例示した状態である場合に比べて、第1の入射光路の視野42と第2の入射光路の視野52の両方を外向きに変化させることができ、より小さな輻輳角へ変化させることができる。
【0062】
また、第2の実施形態では、平行平板16bが、撮像光学系15における第1の入射光路に配置されたが、撮像光学系15における第2の入射光路に配置されてもよい。例えば、平行平板16bは、双眼レンズ141(左眼レンズ141L)と共軸レンズ142との間に配置されてもよいし、絞り143(開口部143L)とカバーガラス144との間に配置されてもよい。なお、この場合は、平行平板16bを構成する2つのプリズム16b1、16b2のうちの一方が、第1の入射光路であって共軸レンズ142の中心軸に対称な位置に挿脱可能に構成される。
【0063】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る内視鏡装置1において、光学作用部材16が、液晶プリズム16cとされたものである。
【0064】
液晶プリズム16cは、撮像光学系15における第1の入射光路に配置される。例えば、液晶プリズム16cは、図4に例示した光学作用部材16のように、双眼レンズ141(右眼レンズ141R)と共軸レンズ142との間に配置されてもよいし、図5に例示した光学作用部材16のように、絞り143(開口部143R)とカバーガラス144との間に配置されてもよい。
【0065】
液晶プリズム16cは、くさび型の液晶レンズであり、電圧が印加されることで液晶分子の配向状態が変化し、光線の屈折角度を変化させる。液晶プリズム16cへの電圧の印加は、制御部34の制御の下、光学アダプタ14に含まれる図示しないドライバ回路により行われる。以下では、液晶プリズム16cに電圧が印加されていない場合の液晶分子の配向状態を第1の配向状態といい、液晶プリズム16cに電圧が印加されている場合の液晶分子の配向状態を第2の配向状態という。
【0066】
図13は、第1の入射光路に配置された液晶プリズム16cの作用を例示する図である。図13の左側は、第1の配向状態の液晶プリズム16cの作用を例示し、図13の右側は、第2の配向状態の液晶プリズム16cの作用を例示している。なお、図13の左側では、模式的に、液晶プリズム16cが第1の配向状態である場合の第1の入射光路の光線を実線で示している。また、図13の右側では、模式的に、液晶プリズム16cが第1の配向状態である場合(図13の左側の場合)の第1の入射光路の光線を点線で示し、液晶プリズム16cが第2の配向状態である場合の第1の入射光路の光線を実線で示している。
【0067】
図13に例示したように、第1の入射光路に配置された液晶プリズム16cの配向状態が第2の配向状態である場合(図13の右側の場合)は、それが第1の配向状態である場合(図13の左側の場合)に比べて、第1の入射光路の光線が矢印で示すように内側に曲げられる。なお、このような作用は、図6の右側に例示したプリズム16aによる作用と同様になる。
【0068】
第3の実施形態では、このような液晶プリズム16cの配向状態を、制御部34が被写体距離に応じて制御することで、被写体距離に適した輻輳角(計測可能領域の割合が大きくなる方の輻輳角)へ変化させることができる。このような制御部34の制御は、第1の実施形態と同様に、被写体距離を計測して、それが閾値以上であれば輻輳角が小さくなるように液晶プリズム16cの配向状態を制御し、それが閾値未満であれば輻輳角が大きくなるように液晶プリズム16cの配向状態を制御すればよい。すなわち、被写体距離が閾値以上であれば、図13の左側に示した第1の配向状態になるように制御し、被写体距離が閾値未満であれば、図13の右側に示した第2の配向状態になるように制御すればよい。なお、閾値は、液晶プリズム16cが図13の左側に示した第1の配向状態である場合と図13の右側に示した第2の配向状態である場合の各被写体距離での計測可能領域の割合を比較したときに、両者が一致又は略一致するときの被写体距離である。
【0069】
以上のように、第3の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第3の実施形態では、輻輳角を変化させるためにメカ的な駆動機構を備える必要が無いため、光学アダプタ14の小型化が可能になる。
【0070】
第3の実施形態では、第1の入射光路に配置された液晶プリズム16cの配向状態が第2の配向状態である場合に、それが第1の配向状態である場合に比べて、第1の入射光路の光線が内側に曲げられるようにしたが、それが外側に曲げられるようにしてもよい。
【0071】
また、第3の実施形態では、液晶プリズム16cが、撮像光学系15における第1の入射光路に配置されたが、撮像光学系15における第2の入射光路に配置されてもよいし、撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に配置されてもよい。この場合、第2の入射光路に配置される液晶プリズム16cは、双眼レンズ141(左眼レンズ141L)と共軸レンズ142との間に配置されるようにしてもよいし、絞り143(開口部143L)とカバーガラス144との間に配置されるようにしてもよい。また、第2の入射光路に配置された液晶プリズム16cの配向状態が第2の配向状態である場合は、それが第1の配向状態である場合に比べて、第2の入射光路の光線が内側に曲げられるようにしてもよいし、外側に曲げられるようにしてもよい。
【0072】
液晶プリズム16cが、撮像光学系15における第1の入射光路と第2の入射光路の各々に配置された場合、第1の入射光路に配置された第2の配向状態の液晶プリズム16cと第2の入射光路に配置された第2の配向状態の液晶プリズム16cは、相反する光学作用を有するようにしてもよい。すなわち、各々の液晶プリズム16cが第2の配向状態である場合は、その各々の液晶プリズム16cが第1の配向状態である場合に比べて、第1の入射光路の光線と第2の入射光路の光線が共に内側に曲げられるようにしてもよいし、外側に曲げられるようにしてもよい(いずれの場合も光学作用としては相反する方向となる)。前者の場合は、より大きな輻輳角へ変化させることができ、後者の場合は、より小さな輻輳角へ変化させることができる。
【0073】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、第1の実施形態に係る内視鏡装置1において、絞り143が光学作用部材16を兼ねるものである。
【0074】
第4の実施形態では、絞り143の開口部143R、143Lの各々が外側へ偏心可能に構成される。開口部143R、143Lの偏心は、制御部34の制御の下、光学アダプタ14に含まれる図示しないアクチュエータにより行われる。
【0075】
図14は、絞り143の開口部143R、143Lの各々が外側へ偏心された状態の撮像光学系15を例示する図である。図14に例示した撮像光学系15のように、絞り143の開口部143R、143Lの各々が外側へ偏心された状態の場合では、それらが偏心されていない状態の場合(図3の場合)に比べて、第1の入射光路の視野と第2の入射光路の視野の両方が内向きとなる。なお、このような作用は、図11で説明したプリズム16aの作用と同様になる。
【0076】
第4の実施形態では、このような絞り143の偏心状態を、制御部34が被写体距離に応じて制御することで、被写体距離に適した輻輳角(計測可能領域の割合が大きくなる方の輻輳角)へ変化させることができる。このような制御部34の制御は、第1の実施形態と同様に、被写体距離を計測して、それが閾値以上であれば輻輳角が小さくなるように絞り143の偏心状態を制御し、それが閾値未満であれば輻輳角が大きくなるように絞り143の偏心状態を制御すればよい。すなわち、被写体距離が閾値以上であれば、絞り143(開口部143R、143L)が偏心されていない状態(図3の状態)になるように制御し、被写体距離が閾値未満であれば、絞り143(開口部143R、143L)が偏心されている状態(図14の状態)になるように制御すればよい。なお、閾値は、絞り143が偏心されていない状態である場合と偏心されている状態である場合の各被写体距離での計測可能領域の割合を比較したときに、両者が一致又は略一致するときの被写体距離である。
【0077】
以上のように、第4の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第4の実施形態では、絞り143が光学作用部材16を兼ねるので、例えば、第1乃至第3の実施形態に比べて、光学アダプタ14の構成要素数を少なくすることができる。
【0078】
第4の実施形態では、絞り143の開口部143R、143Lの各々が外側へ偏心可能に構成されたが、内側へ偏心可能に構成されてもよい。この場合、開口部143R、143Lの各々が内側へ偏心された状態の場合では、それらが偏心されていない状態の場合に比べて、第1の入射光路の視野と第2の入射光路の視野の両方が外向きとなり、より小さい輻輳角へ変化させることができる。
【0079】
また、第4の実施形態では、絞り143の2つの開口部143R、143Lのうちの一方のみが内側又は外側へ偏心可能に構成されてもよい。この場合、2つの開口部143R、143Lのうちの一方が内側又は外側へ偏心された状態の場合では、それが偏心されていない状態の場合に比べて、第1の入射光路の視野と第2の入射光路の視野の一方が内向き又は外向きとなる。そのため、変化量は小さくなるものの、より大きい又は小さい輻輳角へ変化させることができる。
【0080】
なお、第4の実施形態において、2つの開口部143L、143Rを有する絞り143は、開口部143Lを有する絞りと開口部143Rを有する絞りとを有する、ということもできる。この場合、第4の実施形態に係る内視鏡装置1は、撮像光学系15が、第1の入射光路と第2の入射光路の各々に配置された絞りを含み、その絞りの一方又は各々が光学作用部材16を兼ね、光学作用部材16を兼ねる絞りが偏心可能とされ、制御部34が、計測演算部34aの計測結果に基づいて、光学作用部材16を兼ねる絞りの偏心状態を制御することで輻輳角を変化させる、ということもできる。
【0081】
以上、第1乃至第4の実施形態について説明したが、各実施形態において、本体部30は、有線又は無線によりネットワークに接続されて当該ネットワークに接続された外部装置(サーバ等)との間で通信を行うための通信インタフェースを備えてもよい。これにより、例えば、内視鏡装置1で取得されたデータをクラウド上で共有することができる。
【0082】
また、各実施形態において、本体部30の一部(例えば制御部34等)の機能を外部の制御装置により実現するようにして、内視鏡装置1を、内視鏡装置と制御装置とを備えた内視鏡システムとして実現するようにしもよい。この場合、その制御装置は、図15に例示するコンピュータ200により実現されてもよい。
【0083】
図15は、コンピュータ200のハードウェア構成を例示する図である。図15に例示したコンピュータ200は、プロセッサ201、メモリ202、入力装置203、出力装置204、記憶装置205、可搬型記憶媒体駆動装置206、通信インタフェース207、及び入出力インタフェース208を備え、その各々は、バス209に接続されて互いにデータの送受信が可能である。
【0084】
プロセッサ201は、CPU等であり、OS(Operating System)やアプリケーション等のプログラムを実行することにより、各種の処理を行う。メモリ202は、RAM及びROMを含む。RAMには、プロセッサ201が実行するプログラムの一部等が一時的に格納される。また、RAMは、プロセッサ201のワークエリアとしても使用される。ROMには、プロセッサ201が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データ等が記憶される。
【0085】
入力装置203は、キーボード、マウス、タッチパネル、ジョイスティック等である。出力装置204は、LCD等の表示装置等である。
【0086】
記憶装置205は、データを記憶する装置であり、HDD、SSD等である。可搬型記憶媒体駆動装置206は、可搬型記憶媒体206aを駆動し、その記憶内容にアクセスしてデータの読み出しや書き込み等を行う。可搬型記憶媒体206aは、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。この可搬型記憶媒体206aには、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、USBメモリ、SDカードメモリ等も含まれる。
【0087】
通信インタフェース207は、有線又は無線によりネットワークに接続され、当該ネットワークに接続された外部装置との間で通信を行うためのインタフェースである。入出力インタフェース208は、内視鏡装置等の外部装置と接続され、当該外部装置との間でデータの入出力を行うためのインタフェースである。
【0088】
このようなコンピュータ200において、プロセッサ201が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データは、メモリ202に限らず、記憶装置205や可搬型記憶媒体206aに記憶されてもよい。また、プロセッサ201が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データは、外部装置からネットワーク、通信インタフェース207を介して、メモリ202、記憶装置205、及び可搬型記憶媒体206aのうちの1つ以上に記憶されてもよい。
【0089】
また、コンピュータ200は、図15に例示したものに限らず、図15に例示した一部の構成要素を複数備えて構成されてもよいし、一部の構成要素を省いて構成されてもよい。例えば、コンピュータ200は、複数のプロセッサを備えてもよい。
【0090】
また、コンピュータ200は、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、DSP(Digital Signal Processor)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェアを含んで構成されてもよい。例えば、プロセッサ201は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 内視鏡システム
10 挿入部
11 先端部
11a 撮像素子
11b 発光素子
12 湾曲部
13 可撓管部
14 光学アダプタ
15 撮像光学系
16 光学作用部材
16a プリズム
16b 平行平板
16b1、16b2 プリズム
16c 液晶プリズム
17 照明光学系
20 操作部
21 ジョイスティック
30 本体部
31 表示部
31a タッチパネル
32 外部インタフェース
33 画像生成部
34 制御部
34a 計測演算部
35 記録部
41 主光線
42 視野
43 画像
51 主光線
52 視野
53 画像
61 計測可能領域
62 計測不可能領域
110 マスタ光学系
111 カバーガラス
112 共軸レンズ
140 アダプタ光学系
141 双眼レンズ
141L 左眼レンズ
141R 右眼レンズ
142 共軸レンズ
143 絞り(明るさ絞り)
143L、143R 開口部
144 カバーガラス
200 コンピュータ
201 プロセッサ
202 メモリ
203 入力装置
204 出力装置
205 記憶装置
206 可搬型記憶媒体駆動装置
206a 可搬型記憶媒体
207 通信インタフェース
208 入出力インタフェース
209 バス
301 撮像光学系
302、303 視野
304 計測可能領域
305 計測不可能領域
306、307 画像
G1、G2 グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図15
図16