IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイコ エレクトロニクス アンプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハウツンクの特許一覧

<>
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図1
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図2
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図3
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図4
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図5
  • 特開-加熱可能な充電ソケット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019057
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】加熱可能な充電ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20240201BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20240201BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20240201BHJP
【FI】
H01R13/66
H01R13/533 A
B60L53/16
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023119772
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 118 827.2
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ミーケ イスカラ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シュヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ハイス
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5H125
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA14
5E021FB20
5E021FC05
5E021FC40
5E021MA40
5E087EE02
5E087EE10
5E087EE11
5E087MM08
5E087PP02
5E087PP03
5E087PP08
5E087QQ04
5E087RR02
5E087RR25
5E087RR49
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125CD09
5H125DD02
5H125FF12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充電プラグと充電ソケットとの凍結を防ぐ、または存在する凍結を除去するように、既存の充電ソケットを改良する。
【解決手段】本発明は、充電プラグに接続するための電気車両またはハイブリッド車両の充電ソケット(1)、本発明による充電ソケット(1)を備えるキットおよび電気車両またはハイブリッド車両に関するもであり、充電ソケット(1)に、加熱モジュール(19)を受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を設けることによって、このような凍結を防ぎ、または存在する凍結を除去することができる。キットにおいて、充電ソケットは、任意の数の加熱モジュール(19)を有することができる。本発明による電気車両またはハイブリッド車両は、本発明による充電ソケット(1)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電プラグ(11)に接続するための電気車両またはハイブリッド車両(9)の充電ソケット(1)であって、前記充電ソケット(1)は、加熱モジュール(19)を受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を有する、充電ソケット(1)。
【請求項2】
前記充電ソケット(1)は、前記充電プラグ(11)に差し込むための前面(21)と、前記前面(21)から離れる方を向く後面(23)とを有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記充電ソケット(1)の前記後面(23)から前記前面(21)に延びている、請求項1に記載の充電ソケット(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記後面(23)側で開いている、請求項2に記載の充電ソケット(1)。
【請求項4】
前記充電ソケット(1)は、充電プラグ(11)の相手側コンタクトに接触する電気コンタクトを受け入れるように構成されているコンタクトレセプタクル(29)を有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、少なくとも2つのコンタクトレセプタクル(29)間に延びている、請求項1から3のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項5】
前記充電ソケット(1)は、環状間隙(33)を形成しながら、コンタクト要素を受け入れるコンタクト本体(27)を囲むソケット壁(31)を有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は前記ソケット壁(31)内に延びている、請求項1から4のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項6】
前記ソケット壁(31)は、加熱モジュールシャフト(17)が配置される少なくとも1つの増厚部(35)を有する、請求項5に記載の充電ソケット(1)。
【請求項7】
前記充電ソケット(1)は、AC充電ソケット(5)とDC充電ソケット(7)とを有して構成され、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は前記AC充電ソケット(5)に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記充電ソケット(1)の前記後面と前記前面との間の深さ(41)の少なくとも半分にわたって延びている、請求項2から6のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項9】
複数の加熱モジュールシャフト(17)が、前記コンタクト本体(27)および/または前記ソケット壁(31)に設けられ、前記加熱モジュールシャフト(17)は前記後面(23)側で開いている、請求項5から8のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を閉じる底部(43)を前記前面(21)側に有する、請求項2から8のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項11】
前記加熱モジュール(19)は、それぞれの前記加熱モジュールシャフト(17)に遊びなくまたは圧入(19a)で受け入れられている、請求項1から10のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項12】
前記加熱モジュール(19)は、前記加熱モジュールシャフト(17)を補完するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項13】
電気車両またはハイブリッド車両(9)の充電ソケット(1)における加熱モジュール(19)の使用であって、前記充電ソケット(1)は、前記加熱モジュール(19)を受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を有する、加熱モジュール(19)の使用。
【請求項14】
電気車両またはハイブリッド車両(9)の加熱可能な充電ソケット(1)を提供するためのキットであって、複数のN個の加熱モジュールシャフト(17)を有する充電ソケット(1)を備え、前記加熱モジュールシャフト(17)は1~N個の加熱モジュール(19)を任意に有する、キット。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)を備える電気車両またはハイブリッド車両(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電プラグに接続するための電気車両またはハイブリッド車両の充電ソケット、および充電ソケットを提供するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両またはハイブリッド車両を氷点未満の気温で充電する場合、充電プロセスの完了後、充電プラグが差し込まれているときに充電プラグが凍結して充電ソケットに凍り付く危険がある。これは、例えば、充電プロセス中に、流れる充電電流によって充電プラグと充電ソケットとの接続部に熱が発生して、車両の雪または氷が解けることに起因する。充電プロセスの完了後、充電プラグと充電ソケットは冷えて、解けた水が充電ソケットと充電プラグとを凍結させることがあり、充電プラグを充電ソケットから引き抜くことができなくなるおそれがある。
【0003】
電気車両またはハイブリッド車両を使用する地域によっては、特に冬季に、このような凍結が様々な頻度で発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、充電プラグと充電ソケットとの凍結を防ぐ、または存在する凍結を除去するように、既存の充電ソケットを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、最初に述べた充電ソケットについて、充電ソケットが、加熱モジュールを受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフトを有する点で、この課題を解決する。
【0006】
本発明はさらに、電気車両またはハイブリッド車両の充電ソケットにおける加熱モジュールの使用であって、充電ソケットが、加熱モジュールを受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフトを有する、加熱モジュールの使用によって、この課題を解決する。
【0007】
本発明はさらに、電気車両またはハイブリッド車両の加熱可能な充電ソケットを提供するためのキットについて、複数のN個の加熱モジュールシャフトを有する充電ソケットを備え、加熱モジュールシャフトは1~N個の加熱モジュールを任意に有する点で、この課題を解決する。
【0008】
さらに、本発明は、電気車両またはハイブリッド車両について、電気車両またはハイブリッド車両が本発明による充電ソケットを備える点で、この課題を解決する。
【0009】
これは、充電ソケットを車両において加熱することができるため、充電プラグと充電ソケットとの凍結を防ぐことができるという利点を有する。本発明を使用して、凍結した充電ソケットを再び解かし、凍結を除去することもできる。加熱モジュールを別個に構成することに起因して、好ましくは電気車両またはハイブリッド車両を使用する地域に応じて、加熱モジュールを少なくとも1つの加熱モジュールシャフトに受け入れても受け入れなくてもよい。したがって、例えばポルトガルのようなより温暖な地域では、充電ソケットの加熱モジュールシャフトにおける加熱モジュールの使用を省くことができるのに対し、ノルウェーで販売されている電気車両またはハイブリッド車両の充電ソケットは、少なくとも1つの加熱モジュールを有することができる。
【0010】
このように構成された充電ソケットは、少なくとも1つの加熱モジュールが車両側で制御され、操作されるため、使用される外部充電構造から独立して充電ソケットの加熱が可能であるという利点も有する。これは、公共充電ステーションにおける充電プラグと充電ソケットとの凍結も防ぎ、または、充電プロセスが完了し、本発明による加熱モジュールなしでは充電プラグおよび充電ソケットが既に冷えている場合に、凍結を除去する。車両側で、これは、少なくとも1つの加熱モジュールが、内蔵エネルギー貯蔵デバイス、好ましくはトラクションバッテリによって動作されることを意味する。
【0011】
本発明を、それ自体がそれぞれ好ましく、希望に応じて互いに組み合わせることができる以下のさらなる発展によって、改良することができる。
【0012】
したがって、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトが、充電ソケットの材料に成型される(注型される、cast)ことが特に好ましい。したがって、加熱モジュールシャフトは、充電ソケットの壁にシャフト状キャビティを形成する。
【0013】
充電ソケットは、充電プラグに差し込むための前面と、前面から離れる方を向く後面とを有することができ、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトは、充電ソケットの後面から前面に延びる。少なくとも1つの加熱モジュールシャフトは、後面側で開くことができると好ましい。
【0014】
したがって、加熱モジュールを加熱モジュールシャフトに充電ソケットの後面から挿入することができる。1つの加熱モジュールが加熱モジュールシャフトに挿入され、または加熱モジュールシャフトが、1つの加熱モジュールを受け入れるように構成されていることが好ましい。
【0015】
この構造は、加熱モジュールによって、例えば1つの後面のみではなく、加熱モジュールの伸長に垂直なすべての方向において、充電ソケットに熱を導入することができるという利点を有する。これは、充電プラグと充電ソケットとの凍結が充電ソケットの前面で発生するため、好ましい。
【0016】
充電ソケットは、充電プラグの相手側コンタクトに接触する電気コンタクトを受け入れるように構成されているコンタクトレセプタクルを有することができる。均一な入熱を可能にするために、好ましい構成において、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトは、少なくとも2つのコンタクトレセプタクル間に延びることができる。この加熱モジュールシャフトは、後面から前面に延びることもでき、後面側で開き、前面側で閉じることができると好ましい。これは、充電ソケットの壁のみでなく、コンタクトレセプタクル間で充電ソケットに熱を導入することもできるという利点を有する。
【0017】
さらなる好ましい構成において、充電ソケットは、環状間隙を形成しながら、コンタクト要素を受け入れるコンタクト本体を囲むソケット壁を有することができ、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトはソケット壁内に延びる。
【0018】
コンタクト本体は、充電ソケットの電気コンタクトを受け入れ、プラグ面を形成する、充電ソケットの一部であると理解されるべきである。それにより、コンタクト本体は、後面から離れるように延びる。コンタクト本体から離隔して、コンタクト本体を完全に取り囲む自立ソケット壁を設けることができる。環状間隙は、このソケット壁とコンタクト本体との間に構成される。したがって、相手側プラグを環状間隙に位置合わせし、かつ/または環状間隙の中央に配置し、さらに環状間隙に受け入れることができると好ましい。このために、環状間隙および/またはコンタクト本体は、充電プラグと充電ソケットとの誤った嵌合を防ぐ平坦領域を構成することができる。
【0019】
少なくとも1つの加熱モジュールシャフトが、コンタクト本体、ここではさらに好ましくは少なくとも2つのコンタクトレセプタクル間と、ソケット壁との両方に設けられて、コンタクト本体とソケット壁との両方を加熱できるようになっていることが好ましい。
【0020】
さらなる構成において、充電ソケットは、組立状態で、すなわち充電ソケットが電気車両またはハイブリッド車両に装着されたときに、充電ソケットの上部3分の1(upper third)に少なくとも1つの加熱モジュールシャフトを有することができる。これは、凍結が充電プラグと充電ソケットとの接続部の上側で次第に発生するため、好ましい。
【0021】
加熱モジュールを受け入れるために、充電ソケットのさらなる構成において、ソケット壁は、加熱モジュールシャフトが配置される少なくとも1つの増厚部を有することができる。他の構成において、加熱モジュールシャフトをそれぞれ有するいくつかの増厚部を、ソケット壁に設けることができる。これらの増厚部は、上から下に延びる軸に対して(充電ソケットの組立状態に対して)対称であることが好ましく、鏡面対称であることがさらに好ましい。同様に、増厚部を回転対称に、ソケット壁に沿って等距離に設けることができる。電気車両またはハイブリッド車両を使用する地域に応じて、加熱モジュールシャフトをそれぞれ有する略任意の数の増厚部を設けることができる。
例えば、一部の地域では、ソケット壁の上部3分の1および/またはコンタクト本体の上部3分の1において、1つの加熱要素が加熱モジュールシャフトにそれぞれ受け入れられれば十分であり得るが、(例えば)フィンランドの市場の電気車両またはハイブリッド車両の充電ソケットでは、2つの加熱要素が、コンタクト本体の1つの加熱モジュールシャフトにそれぞれ受け入れられ、4つ以上の加熱要素が、ソケット壁の4つ以上の加熱モジュールシャフトにそれぞれ受け入れられることが好ましいとされ得る。
【0022】
したがって、異なる市場のために異なる充電ソケット、言い換えると、異なる形状を有する充電ソケットを製造する必要なしに、充電ソケットを非常に可変的で汎用性の高い方法で使用することができる。適用地域に応じて、加熱モジュールシャフトは、任意の組合せで空いたままであってもよく、または加熱モジュールを有してもよい。
【0023】
2011/2012年以来、電気車両またはハイブリッド車両に複合充電ソケットを使用することが可能になっている。複合充電ソケットでは、充電ソケットを、AC充電ソケットとDC充電ソケットとを有して構成することができる。好ましい構成において、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトをAC充電ソケットに配置することができる。
【0024】
DC充電ソケットは、通常、電気車両またはハイブリッド車両の高速充電のために使用され、充電プロセスの完了直後に車両を再び使用する、または車両を再び使用するときに高速充電プロセスを終了させて、高速充電プロセスを早期の段階で中断させるようになっている。これらの適用の場合、充電プラグと充電ソケットとの凍結は、例えば一般家庭のいわゆるウォールボックスにより電気車両またはハイブリッド車両を一晩中充電するために使用される、AC充電ソケットを介したより低速の充電の場合よりもはるかに発生しにくい。低速の充電では、充電プロセスの終了後に充電プラグが充電ソケットに残るため、凍結の危険性が非常に高い。
【0025】
特に、本発明による充電ソケットは、例えば、CCS充電ソケット(複合充電システム)として構成され、IEC62196規格に準拠し得る。
【0026】
加熱モジュールシャフトが後面から前面にどれだけ延びているかに応じて、後面から前面の方向に沿って、加熱要素から充電ソケット内に、様々な均一性で熱を伝達することができる。したがって、1つの構成において、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトが、充電ソケットの後面と前面との間の深さの少なくとも半分にわたって延びていることが好ましい。これは、充電ソケットのより均一な加熱を保証することができる。
【0027】
加熱モジュールシャフトの深さは、加熱モジュールの有効長さに対応し得る。有効長さは、加熱モジュールが熱を発生させ放出する長さである。
【0028】
凍結は特に充電ソケットの前面で発生し得るため、特に好ましい構成において、受け入れられた加熱モジュールが、第1の長さの能動領域と第2の長さの受動領域とを有することができる。加熱要素は、能動領域において、動作中に、すなわち、(好ましくは電気車両の制御ユニットにより制御および/または調整された)電圧が印加されたときに、熱を発生させるのに対し、加熱要素は、受動領域において、動作中に熱を発生させない。これは、例えば、加熱要素が受動領域よりも能動領域において高い電気抵抗を有することによって実現することができ、したがって、受動領域において、大幅な熱損失なしで電流伝導が生じる(この熱損失は、能動領域において、充電ソケットを加熱するために使用される)。
これは、特に、前面を向く充電ソケットの領域を加熱するために使用することができ、それは、この前面において、後面、すなわち車両の方を向く、または車両側寄りの充電ソケットの領域よりも、凍結が発生しやすいからである。
【0029】
これは、凍結によって影響され得る充電ソケットの箇所のみにおいて熱を発生させればよいというさらなる利点を有することができる。これにより、凍結によって影響されない充電ソケットの領域への熱という形での不要なエネルギー投入を避ける。これにより、電気車両またはハイブリッド車両のエネルギー貯蔵装置から(例えばトラクションバッテリから)の電気エネルギーを節約する。
【0030】
本発明による充電ソケットの好ましい構成において、複数の加熱モジュールシャフトが、コンタクト本体および/またはソケット壁に設けられ、加熱モジュールシャフトは後面側で開いている。加熱モジュールシャフトは、上から下に延びる軸に対して(充電ソケットの組立状態に対して)対称であることが好ましく、鏡面対称であることがさらに好ましい。同様に、加熱モジュールシャフトは回転対称であってよく、周方向に沿って等距離に配置する、すなわち均等に分散させることができる。電気車両またはハイブリッド車両を使用する地域に応じて、略任意の数の加熱モジュールシャフトが、1つの加熱モジュールをそれぞれ有する、または備えることができる。
【0031】
さらなる好ましい構成において、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトは、少なくとも1つの加熱モジュールシャフトを前面に対して閉じる底部を有することができる。
【0032】
したがって、加熱モジュールシャフトを前面で閉じることができる。前面で、したがって加熱モジュールシャフトの底部で、(コンタクトキャリアの)充電ソケットの壁に延びるキャビティが、これにより終端し、コンタクトキャリアの加熱モジュールシャフトの対向する2つの壁が結合して、(コンタクトキャリアの)充電ソケットの1つの壁を形成することができる。
【0033】
閉じられた加熱モジュールシャフトは、充電ソケットの装着時に電気車両またはハイブリッド車両の外側からアクセスできないため、異物および/または水の侵入から保護され得る。加熱モジュールが加熱モジュールシャフトに挿入されていない場合、例えば、その後、加熱モジュールを、以前にアクセスできなかったため汚染されないままである対応する加熱モジュールシャフトに、適切に訓練されたサービス要員によって挿入することができる。
【0034】
加熱モジュールと充電ソケットとの間、すなわち加熱モジュールと加熱モジュールシャフトの内壁との間の良好な熱伝達を可能にするために、充電ソケットのさらなる好ましい構成において、加熱モジュールを、それぞれの加熱モジュールシャフトに遊びなくまたは圧入で受け入れることができる。加熱モジュールは、それぞれの加熱モジュールシャフトに圧入されることが好ましい。これにより、加熱モジュールからソケット壁またはコンタクト本体への良好な熱伝達が可能になる。
【0035】
加熱モジュールは、加熱モジュールシャフトを補完するように構成されていることが特に好ましい。これは、熱伝達が空隙によって損なわれないという利点を有する。理想的には、加熱モジュールの材料が、加熱モジュールシャフトの内壁の材料に密着し、熱伝達が熱伝導によって生じ得るようになっている。しかしながら、空隙が生じるとすぐに、熱伝達は、熱伝導によってのみではなく、熱放射によっても行われなくなる。しかしながら、このプロセスは、加熱モジュールによって発生した熱を、熱伝導よりも低い効果で充電ソケットに伝える(空隙は、伝達効果よりも絶縁効果を有する。絶縁二重窓と比較されたい)。
【0036】
好ましい構成において、本発明による前述のキットは、同一のまたは異なる加熱モジュールを備える。例えば、より大きい加熱電力を有する加熱モジュールを、充電ソケットの下側よりも充電ソケットの上側で、対応する加熱モジュールシャフトに受け入れることができる。これは、充電ソケットの上側で凍結の可能性が高いことを考慮に入れており、これを抑制することができる。
【0037】
加熱モジュールは、ハウジングに受け入れられた加熱レジスタを含むことができる。加熱レジスタを、2部品ハウジングまたはオーバモールドにより形成されたハウジングに受け入れることができる。特に、加熱レジスタは、電気接続部を有することができ、加熱モジュールがそれぞれの加熱モジュールシャフトに受け入れられたときに、電気接続部は充電ソケットの後面を向くことが好ましい。したがって、少なくとも1つの加熱モジュールに、後面からのみアクセスでき、電気的に接触することができる。充電ソケットは、後面にプリント回路基板を有することができ、プリント回路基板を介して、1つまたは複数の加熱要素を制御し、加熱要素に接触することができる。例えば、加熱レジスタに取り付けられたコンタクトばねまたはコンタクトピルなどの、加熱レジスタまたは接触手段の曲がり部分が、これに適している。
【0038】
以下で、添付図面を参照しながら、実施形態に基づいて、例として本発明について説明する。簡単にするために、同一の参照符号は常に、機能および/または構造に関して互いに対応する要素に使用される。
【0039】
上記の実施形態によれば、機構の技術的効果が特定の適用に重要でなければ、以下の実施形態のいずれかにおいてその機構を省略することができる。さらに、上記の実施形態によれば、技術的効果が特定の適用に重要である機構を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による充電ソケットの概略斜視正面図である。
図2】本発明による充電ソケットの概略分解斜視後面図である。
図3図1に示す平面A-Aに沿った断面図である。
図4図1に示す平面B-Bに沿った斜視断面図である。
図5図1に示す平面C-Cに沿った拡大断面図である。
図6】本発明による加熱モジュールの構成の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1および図2において、充電ソケット1が異なる方向からの斜視図で示されている。充電ソケット1は、複合充電ソケット3として構成され、すなわちAC充電ソケット5とDC充電ソケット7とを有する。
【0042】
充電ソケット1は、電気車両またはハイブリッド車両9において充電プラグ11に接続するために使用される。これは、例えば、公共充電ステーション13または家庭用ウォールボックス15で可能である。
【0043】
図示の充電ソケット1の構成は、5つの加熱モジュールシャフト17を有し、これは図2により明確に見られる。各加熱モジュールシャフト17は、加熱モジュール19を受け入れるように構成されている。図1では、加熱モジュール19はそれぞれの加熱モジュールシャフト17に受け入れられているが、図2では、加熱モジュール19はそれぞれの加熱モジュールシャフト17から取り外されて示されている。さらに、図1にはプリント回路基板20が示され、これを介して、加熱モジュール19に電力を供給することができる。この回路基板20は図2には示されていない。
【0044】
以下の説明は、図1および図2の両方に関する。
【0045】
充電ソケット1は、充電プラグ11を挿入するための前面21と、前面21から離れる方を向く後面23とを有する。
【0046】
図示の充電ソケット1の構成において、加熱モジュールシャフト17は、充電ソケット1の後面23から前面21に延びている。
【0047】
図2に見られるように、加熱モジュールシャフト17は後面23側で開いている。
【0048】
図示の充電ソケット1は、電気車両またはハイブリッド車両9に配置される形状および接続割当て(connection assignment)に関する要件を満たしている。例えば、(充電プラグ11の誤った差込みを防ぐための)コンタクト本体27の平坦形状25、DC充電ソケット7に対するコンタクト本体27の向きおよび位置が指定されている。
【0049】
コンタクト本体27は、充電ソケット1の組立状態で(この状態は図示されていない)、充電プラグ11の相手側コンタクト(図示せず)に接触する電気コンタクト(図示せず)を受け入れるコンタクトレセプタクル29を有する。AC充電ソケット5は、このようなコンタクトレセプタクル29を7つ有しており、DC充電ソケット7は2つ有している。明確にするために、すべてのコンタクトレセプタクル29に参照符号が付されているわけではない。
【0050】
充電ソケット1はソケット壁31を有し、このソケット壁31は、環状間隙33を形成しながら、AC充電ソケット5のコンタクト本体27とDC充電ソケット7のコンタクト本体27との両方を取り囲む。2つのコンタクト本体27の周りに形成された環状間隙33は、AC充電ソケット5とDC充電ソケット7との間で結合する。
【0051】
図示の充電ソケット1の構成は、ソケット壁31に4つの増厚部35を有する。他の構成において、任意の数の増厚部35を設けることができる。同様に、充電ソケット1をAC充電ソケット5のみとして構成することができる。この場合、ソケット壁31は、AC充電ソケット5を完全に取り囲み、DC充電ソケット7はない。この場合、ソケット壁31は、AC充電ソケット5の下部領域37で、好ましくは円弧状にコンタクト本体27の周りに延びることができる。
【0052】
図1および図2を参照すると、図示の充電ソケット1の構成において、1つの加熱モジュールシャフト17が、AC充電ソケット5のコンタクト本体27に位置し、4つの加熱モジュールシャフト17が、AC充電ソケット5のソケット壁31の増厚部35において、後面23から前面21に向かって延びていることが示されている。充電ソケット1の他の構成(図示せず)において、任意の数の加熱モジュールシャフト17を、AC充電ソケット5およびDC充電ソケット7に任意の配置で設けることができる。図示の数および位置は単に例示的なものである。
【0053】
同様に、対応する加熱モジュール19を、任意の組合せで加熱モジュールシャフト17に受け入れることができ、または加熱モジュール19を省いてもよい。言い換えると、充電ソケット1が有する加熱モジュールシャフト17と同数の加熱モジュール19を、充電ソケット1に受け入れることができる(好ましくは、対応する加熱モジュールシャフト17のそれぞれに1つの加熱モジュール19)。
【0054】
しかしながら、他方で、いくつかの加熱モジュールシャフト17は空いたままであってもよく、すなわち、加熱モジュール19をこれらの加熱モジュールシャフト17に受け入れなくてもよい。特に、電気車両またはハイブリッド車両9を使用するより温暖な地域では、加熱モジュール19を充電ソケット1に全く受け入れなくてもよい。この場合、加熱モジュールシャフト17は空である。
【0055】
しかしながら、同じ充電ソケット1が、それぞれの用途に使用されてもよく、その場合、電気車両またはハイブリッド車両9を使用する地域に合わせた適切な数の加熱モジュール19を有することができる。したがって、充電ソケット1が凍結を防ぐ加熱電力を可変的に設定することができる。したがって、充電ソケット1は、可変的で汎用性が高く、製造コストを節約する。
【0056】
図示の構成において、加熱モジュールシャフト17は、2つのコンタクトレセプタクル29間でコンタクト本体27に配置されている。さらに、図示の構成において、4つの加熱モジュールシャフト17が、増厚部35、すなわちソケット壁31において、後面23から前面21に延びている。すべての加熱モジュールシャフト17が後面23に開いて、加熱モジュール19をそれぞれ後面23から加熱モジュールシャフト17に、好ましくは遊びなくまたは圧入19aで挿入することができるようになっている。
【0057】
加熱モジュールシャフト17は、充電ソケット1の後面23と前面21との間のシャフト深さ39(図3図5も参照)にわたって延びている。このシャフト深さ39は、後面23と前面21との間の深さ41の半分よりも大きいことが好ましい。図2に、シャフト深さ39が示されている。
【0058】
ソケット壁31において、加熱モジュールシャフト17は対称に(鏡面対称に)配置されている。他の構成(図示せず)において、加熱モジュールシャフト17を、ソケット壁31の上または中に(on or in the socket wall 31)、等距離に配置することができる。
【0059】
加熱モジュールシャフト17は、底部43により前面21側で閉じられている。加熱モジュール19を、この底部43まで受け入れることができる。少なくとも1つの加熱モジュール19が、それぞれの加熱モジュールシャフト17に、遊びなくまたは圧入19aで受け入れられることが好ましい。これは、例えば、図3図4、および図5の断面図に見られる。断面図は、加熱モジュール19が加熱モジュールシャフト17を補完するように構成されていることも示す。これにより、加熱モジュール19から充電ソケット1への熱伝達が向上する。
【0060】
図3図5は、図1の平面A-A、B-B、およびC-Cに沿った様々な断面図を示す。
【0061】
図3および図5は、コンタクト本体27に受け入れられた加熱モジュール19を示す。図6に分解図で示す加熱モジュール19は、2つの加熱モジュール半部19bから構成され、これらの加熱モジュール半部19bは、任意の数の接続要素19c(例えばピン)を介して互いに接続され、加熱ワイヤ19dを囲む。加熱ワイヤ19dには、コンタクト側45でのみアクセスできる。
【0062】
加熱モジュール19は、圧入19aによって加熱モジュールシャフト17に挿入され、シャフト深さ39の略全体にわたって延びている。加熱モジュールシャフト17に後面23からのみアクセスできるように、加熱モジュールシャフト17を前面21で閉じる底部43も、見て取れる。
【0063】
図6の分解図において、接続要素19cを対応する相手側接続要素19fに嵌め込むことができることがさらに示されている。さらに、加熱ワイヤ19dは、加熱モジュール19のコンタクト側45に曲がり部47を有することが示されている。一方で、これは、2つの加熱モジュール半部19b間における加熱ワイヤ19dの位置を保証し、他方で、プリント回路基板20に接触するための十分に大きい接触領域が設けられる。このプリント回路基板20との接触は、図5に概略的に示されている。
【0064】
図4に、4つの加熱モジュール19のうちの2つが断面図で示されている。これらは、ソケット壁31の増厚部35に圧入19aで受け入れられている。加熱モジュールシャフト17は、底部43によってそれぞれ境界付けられて、加熱モジュールシャフト17に後面23からのみアクセスできるようになっている。この後面で、図示の加熱モジュール19の加熱ワイヤ19dも曲げられ、すなわち曲がり部47が設けられて、プリント回路基板20(図示せず、図5参照)に電気的に接触する。
【符号の説明】
【0065】
1 充電ソケット
3 複合充電ソケット
5 AC充電ソケット
7 DC充電ソケット
9 電気車両またはハイブリッド車両
11 充電プラグ
13 公共充電ステーション
15 家庭用ウォールボックス
17 加熱モジュールシャフト
19 加熱モジュール
19a 圧入
19b 加熱モジュール半部
19c 接続要素
19d 加熱ワイヤ
20 プリント回路基板
21 前面
23 後面
25 平坦形状
27 コンタクト本体
29 コンタクトレセプタクル
31 ソケット壁
33 環状間隙
35 増厚部
37 下部領域
39 シャフト深さ
41 後面と前面との間の深さ
43 底部
45 コンタクト側
47 加熱ワイヤの曲がり部
A-A 平面
B-B 平面
C-C 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電プラグ(11)に接続するための電気車両またはハイブリッド車両(9)の充電ソケット(1)であって、前記充電ソケット(1)は、加熱モジュール(19)を受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を有する、充電ソケット(1)。
【請求項2】
前記充電ソケット(1)は、前記充電プラグ(11)に差し込むための前面(21)と、前記前面(21)から離れる方を向く後面(23)とを有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記充電ソケット(1)の前記後面(23)から前記前面(21)に延びている、請求項1に記載の充電ソケット(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記後面(23)側で開いている、請求項2に記載の充電ソケット(1)。
【請求項4】
前記充電ソケット(1)は、充電プラグ(11)の相手側コンタクトに接触する電気コンタクトを受け入れるように構成されているコンタクトレセプタクル(29)を有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、少なくとも2つのコンタクトレセプタクル(29)間に延びている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項5】
前記充電ソケット(1)は、環状間隙(33)を形成しながら、コンタクト要素を受け入れるコンタクト本体(27)を囲むソケット壁(31)を有し、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は前記ソケット壁(31)内に延びている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項6】
前記ソケット壁(31)は、加熱モジュールシャフト(17)が配置される少なくとも1つの増厚部(35)を有する、請求項5に記載の充電ソケット(1)。
【請求項7】
前記充電ソケット(1)は、AC充電ソケット(5)とDC充電ソケット(7)とを有して構成され、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は前記AC充電ソケット(5)に配置されている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記充電ソケット(1)の前記後面と前記前面との間の深さ(41)の少なくとも半分にわたって延びている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項9】
前記充電ソケット(1)は、前記充電プラグ(11)に差し込むための前面(21)と、前記前面(21)から離れる方を向く後面(23)とを有し、
数の加熱モジュールシャフト(17)が、前記コンタクト本体(27)および/または前記ソケット壁(31)に設けられ、前記加熱モジュールシャフト(17)は前記後面(23)側で開いている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)は、前記少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を閉じる底部(43)を前記前面(21)側に有する、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項11】
前記加熱モジュール(19)は、それぞれの前記加熱モジュールシャフト(17)に遊びなくまたは圧入(19a)で受け入れられている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項12】
前記加熱モジュール(19)は、前記加熱モジュールシャフト(17)を補完するように構成されている、請求項に記載の充電ソケット(1)。
【請求項13】
電気車両またはハイブリッド車両(9)の充電ソケット(1)における加熱モジュール(19)の使用であって、前記充電ソケット(1)は、前記加熱モジュール(19)を受け入れるように構成されている少なくとも1つの加熱モジュールシャフト(17)を有する、加熱モジュール(19)の使用。
【請求項14】
電気車両またはハイブリッド車両(9)の加熱可能な充電ソケット(1)を提供するためのキットであって、複数のN個の加熱モジュールシャフト(17)を有する充電ソケット(1)を備え、前記加熱モジュールシャフト(17)は1~N個の加熱モジュール(19)を任意に有する、キット。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の充電ソケット(1)を備える電気車両またはハイブリッド車両(9)。
【外国語明細書】