(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019058
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】締結部材の締結状態検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G01L5/00 103F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119786
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022119490
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA01
2F051AB05
(57)【要約】
【課題】被締結部材の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩みであっても、締結部材の締結状態を検出する。
【解決手段】ホイールナット240に設けられる検出装置100は、ハブナット250の先端面251に設けた磁石400の磁界を検出する磁気センサを備える。磁気センサがホイールナット240の回転と連動して回転すると、磁気センサの出力信号が変化する。検出装置に設けた処理装置は、磁気センサの出力信号の変化に基づいて、ホイールナット240の締結状態を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部材に締結される被締結部材と、
前記被締結部材を前記所定部材にねじ締結するねじ部材と、を備え、
前記ねじ部材は、ねじ軸を中心に回転し、前記被締結部材を締め付ける締結部材を含み、さらに、
前記ねじ軸と交差する方向に磁界の向きを有する磁性体と、
前記磁性体と対向する位置に設けられ、前記磁性体による磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの出力信号に基づいて、前記締結部材の締結状態を判定する処理装置と、を備え、
前記磁性体および前記磁気センサの一方は、前記締結部材、あるいは、前記締結部材と連動して前記ねじ軸を中心に回転するA部材に固定され、前記締結部材の回転と連動して回転し、
前記磁性体および前記磁気センサの他方は、前記所定部材、あるいは、前記所定部材に固定されるB部材、あるいは、前記被締結部材に固定されるC部材に固定される、締結部材の締結状態検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサは、印加される磁界の方向に応じた出力信号を出力し、
前記処理装置は、所定期間毎に前記磁気センサの出力信号を取得し、前記出力信号の大きさが所定量以上変化したとき、前記締結部材の締結状態に変化が生じていると判定する、請求項1に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、印加される磁界の方向に応じた出力信号を出力し、
前記処理装置は、
初期値を設定する初期値設定部と、
前記磁気センサの出力信号と前記初期値の差が、所定値以上であるとき、前記締結部材の締結状態に変化が生じていると判定する状態判定部と、を備える、請求項1に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項4】
前記初期値設定部は、ユーザによって初期化操作が実行されたとき、前記磁気センサの出力信号を前記初期値に設定する、請求項3に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサは、前記締結部材、あるいは、前記A部材に固定されており、
前記初期値設定部は、前記磁気センサの出力信号が、所定時間以上、磁界を検出していない状態を示したあと、前記磁気センサの出力信号が磁界を検出した状態になったとき、前記磁気センサの出力信号を前記初期値に設定する、請求項3に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項6】
前記B部材は、前記所定部材に固定されたボルトであり、
前記被締結部材は、前記ボルトが挿通される挿通孔を有し、
前記締結部材は、前記ボルトに螺合して前記被締結部材を前記所定部材に締結するナットであり、
前記ボルトの先端面に前記磁石が固定され、
前記磁気センサは、前記ナット、あるいは、前記A部材であるナットキャップに固定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項7】
前記締結部材は、前記所定部材に形成されたネジ穴に螺合して、前記被締結部材を前記所定部材に締結するボルトであり、
前記磁石は、前記ネジ穴の底面に固定され、
前記磁気センサは、前記ボルトの先端面に固定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項8】
前記被締結部材は、車両のホイールであり、
前記所定部材は、前記ホイールを取り付けるハブである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項9】
前記被締結部材は、車両のホイールであり、
前記所定部材は、前記ホイールを取り付けるハブであり、
前記C部材は、前記ホイールに固定されるホイールキャップである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【請求項10】
前記C部材に、前記磁気センサが固定される、請求項9に記載の締結部材の締結状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締結部材の締結状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-329907号公報(特許文献1)には、車輪に取り付けられて車軸方向の加速度を検出するGセンサの検出値に基づいて、車輪の脱落を事前に検知し、運転者に警告する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術は、車輪を車体に取り付けるためのボルトあるいはナットの締め付け不良や緩みが生じたときに発生する、車輪の振動に基づいて、ボルトあるいはナットの緩みを推定し、車輪の脱落を事前に検知している。
【0005】
しかしながら、ボルトあるいはナットが緩んだ時に生じる車輪の振動の形態は、車両や車輪(タイヤ)の種類によって変化するので、精度よく、ボルトやナットの緩みを推定することが困難な場合がある。また、車輪に振動が生じない程度の軽い緩み具合の場合、車輪に振動が生じないので、ボルトあるいはナットの締結状態を推定することが困難である。このため、被締結物の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩み具合であっても、ボルトやナット(締結部材)の締結状態を検出することが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、被締結部材の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩みであっても、締結部材の締結状態を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1)本開示に係る締結部材の締結状態検出装置は、所定部材に締結される被締結部材と、被締結部材を所定部材にねじ締結するねじ部材と、を備え、ねじ部材は、ねじ軸を中心に回転し、被締結部材を締め付ける締結部材を含む。締結状態検出装置は、さらに、ねじ軸と交差する方向に磁界の向きを有する磁性体と、磁性体と対抗する位置に設けられ、磁性体による磁界を検出する磁気センサと、磁気センサの出力信号に基づいて締結部材の締結状態を判定する処理装置と、を備える。磁性体および磁気センサの一方は、締結部材、あるいは、締結部材と連動してねじ軸を中心に回転するA部材に固定され、締結部材の回転と連動して回転する。磁性体および磁気センサの他方は、所定部材、あるいは、所定部材に固定されるB部材、あるいは、被締結部材に固定されるC部材に固定される。
【0008】
この構成によれば、締結部材を締め付けることにより、被締結部材が所定部材に締結される。締結状態検出装置は、ねじ軸と交差する方向に磁界の向きを有する磁性体と、磁性体と対抗する位置に設けられ、磁性体による磁界を検出する磁気センサと、磁気センサの出力信号に基づいて締結部材の締結状態を判定する処理装置と、を備える。
【0009】
磁性体および磁気センサの一方は、締結部材、あるいは、締結部材と連動してねじ軸を中心に回転するA部材に固定され、締結部材の回転と連動して回転する。磁性体および磁気センサの他方は、所定部材、あるいは、所定部材に固定されるB部材、あるいは、被締結部材に固定されるC部材に固定される。
【0010】
締結部材が回転し、磁気センサあるいは磁性体が回転すると、磁気センサに印加される磁界の方向や磁束密度が変化し、磁気センサの出力信号が変化する。処理装置は、磁気センサの出力信号に基づいて、締結部材の締結状態を判定する。締結部材の回転と連動して回転する磁気センサの検出信号に基づいて締結部材の回転を検出し、締結部材の締結状態を判定するので、被締結物の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩みであっても、締結部材の締結状態を検出することができる。
【0011】
なお、締結部材を、一旦、締め付けた後、締結部材が締め付け方向(増し締め方向)に回転することは、極めて希である。磁気センサの検出信号に基づいて、締結部材の回転を検出したとき、締結部材が緩め方向に回転し、締結部材の締結状態が緩んでいると推定しても差し支えない。
【0012】
2)好ましくは、磁気センサは、印加される磁界の方向に応じた出力信号を出力し、処理装置は、所定期間毎に磁気センサの出力信号を取得し、出力信号の大きさが所定量以上変化したとき、締結部材の締結状態に変化が生じていると判定するようにしてよい。
【0013】
この構成によれば、磁気センサは、ねじ軸と交差する方向に磁界の向きを有する磁性体の磁界の方向に応じた出力信号を出力する。したがって、締結部材が回転し、磁気センサあるいは磁性体が回転すると、磁気センサの出力信号が変化する。処理装置は、所定期間毎、たとえば、20~120秒毎に磁気センサの出力信号を取得する。処理装置は、出力信号の大きさが所定量以上変化したとき、たとえば、今回取得した出力信号の値(今回値)と前回値の差、あるいは、前回までのN回の出力信号の平均値と今回値の差が、所定値以上大きいとき、締結部材の締結状態に変化が生じていると判定する。
【0014】
3)好ましくは、磁気センサは、印加される磁界の方向に応じた出力信号を出力し、処理装置は、初期値を設定する初期値設定部と、磁気センサの出力信号と初期値の差が、所定値以上であるとき、締結部材の締結状態に変化が生じていると判定する状態判定部と、を備えるようにしてよい。
【0015】
4)初期値設定部は、ユーザによって初期化操作が実行されたとき、磁気センサの出力信号を初期値に設定するようにしてよい。
【0016】
この構成によれば、ユーザが、たとえば、締結部材を規定トルクで締め付けたあと、初期化操作を行うと、初期値設定部は、そのときの締め付け位置(回転位置)における磁気センサの出力信号の値を初期値に設置する。締め付け位置から状態判定部は、磁気センサの出力信号と初期値の差が、所定値以上であるとき、締結部材の締結状態の変化が生じていると判定する。これにより、締結部材が、締め付け位置から回転し締結状態が変化したことを検出することができる。
【0017】
5)好ましくは、磁気センサは、締結部材、あるいは、A部材に固定されており、初期値設定部は、磁気センサの出力信号が、所定時間以上、磁気を検出していない状態を示したあと、磁気センサの出力信号が磁気を検出した状態になったとき、磁気センサの出力信号を初期値に設定するようにしてもよい。磁気センサが設けられた締結部材、あるいは、A部材が、取り外され、作業台や整備台等に置かれると、磁気センサは磁石の磁界(磁気)を検出しない状態になる。そして、締結部材を用いて、被締結部材を所定部材に締結すると、磁気センサは、磁石の磁界を検出する状態になる。
【0018】
この構成によれば、磁気センサが固定された締結部材が、作業台や整備台に置かれ、磁気センサの出力信号が、所定時間以上、磁気を検出していない状態を示したあと、締結部材を用いて、被締結部材が締結され、磁気センサの出力信号が磁気を検出した状態になったとき、初期値設定部は、そのときの締め付け位置(回転位置)における磁気センサの出力信号の値を初期値に設置する。磁気センサが固定されたA部材が、作業台や整備台に置かれ、磁気センサの出力信号が、所定時間以上、磁気を検出していない状態を示したあと、締結部材によって被締結部材が締結され、締結部材にA部材が取り付けられ、磁気センサの出力信号が磁気を検出した状態になったとき、初期値設定部は、そのときの締め付け位置(回転位置)における磁気センサの出力信号の値を初期値に設置する。状態判定部は、磁気センサの出力信号と初期値の差が、所定値以上であるとき、締結部材の締結状態に変化が生じていると判定する。これにより、締結部材が、締め付け位置から回転し締結状態が変化したことを検出できる。
【0019】
6)B部材は、所定部材に固定されたボルトであり、被締結部材は、ボルトが挿通される挿通孔を有し、締結部材は、ボルトに螺合して被締結部材を所定部材に締結するナットであり、ボルトの先端面に前記磁石が固定され、磁気センサは、ナット、あるいは、A部材であるナットキャップに固定されるようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、ナットによって被締結部材を所定部材に締結(ねじ締結)する構成において、ナットの締結状態を検出することができる。
【0021】
7)締結部材は、所定部材に形成されたネジ穴に螺合して、被締結部材を所定部材に締結するボルトであり、磁石は、ネジ穴の底面に固定され、磁気センサは、ボルトの先端面に固定されるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、ボルトによって被締結部材を所定部材に締結(ねじ締結)する構成において、ボルトの締結状態を検出することができる。
【0023】
8)被締結部材は車両のホイールであり、所定部材はホイールを取り付けるハブであってよい。
【0024】
この構成によれば、ハブにホイールを締結する締結部材の締結状態の変化を検出できるので、車輪(タイヤ)の脱落を事前に検知することが可能になる。
【0025】
9)被締結部材は車両のホイールであり、所定部材はホイールを取り付けるハブであり、C部材は、ホイールに固定されるホイールキャップであってよい。また、C部材であるホイールキャップに磁気センサが固定されてよい。
【0026】
この構成によれば、ハブにホイールを締結する締結部材の締結状態の変化を検出できるので、車輪の脱落を事前に検知することが可能になる。また、ホイールキャップに磁気センサを固定するので、磁気センサを固定するスペースを、比較的容易に確保できる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、被締結部材の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩みであっても、締結部材の緩みを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態1に係る締結部材の緩み検出装置を搭載した車両を示す図である。
【
図2】ホイールがハブに締結された状態を示す側面図である。
【
図3】ホイールの締結部を示す部分拡大分解斜視図である。
【
図7】(A)、(B)および(C)は、磁気センサの出力信号を説明する図である。
【
図8】処理装置に構成される機能ブロックの一例を示す図である。
【
図9】(A)、(B)および(C)は、変形例3における磁気センサの出力信号を説明する図である。
【
図10】実施の形態2に係るホイールの締結部の断面図である。
【
図11】実施の形態3に係るホイールの締結部の断面図である。
【
図14】実施の形態5に係るホイールの締結部の断面図である。
【
図15】実施の形態6に係るホイールの締結部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0030】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態(実施の形態1)に係る検出装置100(
図3参照)が搭載された車両200を示す図である。車両200は、複数の車輪210を備える。また、車両200は、後述の通信部3と通信可能でかつ図示しない表示部を備えるマルチインフォメーションディスプレイ201を備える。
【0031】
車輪210は、ホイール220と、ホイール220に取り付けられるタイヤ230とを含む。ホイール220には、車両200のハブ(車軸)に設けたハブボルトが挿通されるホイール孔が設けられており、複数(
図1では5つ)のホイールナット240をハブボルトに螺合することにより、ホイール220がハブに締結される。なお、ホイールナット240の個数は上記の例に限られず、たとえば、4個、6個、8個、あるいは10個であってもよい。
【0032】
図2は、ホイール220(車輪210)がハブ300に締結された状態を示す側面図である。ホイール220(車輪210)は、所定のピッチ円(
図2の一点鎖線を参照)上において、ホイールナット240により、ハブ300に締結されている。なお、ピッチ円直径(PCD:Pitch Circle Diameter)の大きさは、任意であってよく、たとえば、114.3mmであってよく、275mmであってよい。
図2は、ホイールナット240が所定の締め付けトルクで締め付けられ、ホイール220(車輪210)がハブ300に締結された状態を示している。ホイールナット240は右ネジであり、
図2において、時計方向に回転されることにより締め付けが行われる。なお、
図2に示す矢印Zは鉛直方向を示す。
【0033】
図3は、ホイール220の締結部を示す部分拡大組み付け図である。
図3において、ハブの図示は省略されている。ホイールナット240が、ハブボルト250に螺合することにより、ホイール220が締結される。ホイール220には、ホイール孔221が形成されている。ホイール孔221にハブボルト250を挿通し、ハブボルト250にホイールナット240を螺合することにより、ホイール220が締結される。なお、符号243は座金(ワッシャー)である。なお、座金243を用いることなく、ホイールナット240の座面を球面座としてもよい。
【0034】
図4は、ホイール220の締結部の断面図である。
図4に示すように、ハブボルト250は、ハブ(車軸)300に設けられている(ハブボルト250は、ハブ300に固定されている)。本実施の形態において、ホイールナット240とハブボルト250が、本開示の「ねじ部材」の一例に相当する。ハブ300が、本開示の「所定部材」の一例に相当し、ハブボルト250が、本開示の「B部材」の一例に相当する。ホイール220が、本開示の「被締結部材」の一例に相当し、ホイールナット240が、本開示の「締結部材」に一例に相当する。ハブボルト250の先端面251には、磁石400が設けられている。磁石400は、ハブボルト250の先端面251に接着等によって固定されており、ハブボルト250の軸方向(
図4の一点鎖線:本開示の「ねじ軸」に相当する)に直交する方向にN極とS極を備える。磁石400は、本開示の「ねじ軸と交差する方向に磁界の向きを有する磁性体」の一例に相当する。なお、ハブボルト250の軸方向と交差する方向にN極とS極を形成可能であれば、ハブボルト250の少なくとも先端部(先端部、あるいは、ハブボルト250の全体)を磁化することにより、磁石を形成してもよい。また、ハブボルト250の側面の一部に,ねじ軸の方向にN極およびS極を備えた磁石を設け、ハブボルト250の先端部に、ねじ軸と交差する方向に強透磁率体(透磁率がハブボルト250の透磁率より高い、高透磁率体)を配置してもよい。この強透磁率体を通る磁束によって、ハブボルト250の先端部に、ねじ軸と交差する方向に磁界の方向が向くようにしてよく、この場合、強透磁率体が、本件発明の「磁性体」の一例に相当する。
【0035】
本実施の形態において、ホイールナット240は、袋ナットである。ホイールナット240は、ハブボルト250が貫通しないように片面側が閉じられている。ホイールナット240は、天井部241と、側面部242とを含む。側面部242は、ハブボルト250のうちホイール孔221を貫通した部分を周状に取り囲むように設けられている。天井部241は、ハブボルト250の先端面251と(ハブボルト250の挿入方向に)対向するように設けられている。天井部241は、側面部242と連続的に設けられている。側面部242は、座金243に当接し、ホイールナット240の締め付け力(締結力)を、ホイール220に伝達する。
【0036】
検出装置100が、ホイールナット240に設けられている。検出装置100は、ホイールナット240の天井部241の内表面241aに取り付けられている(接着され、固定されている)。検出装置100は、ホイールナット240のうちハブボルト250が収容される空間C内に配置されている。
【0037】
また、検出装置100は、各車輪210に設けられる複数のホイールナット240のうちの一部に設けられている。なお、検出装置100は、各車輪210に設けられる複数のホイールナット240の全てに設けられていてもよい。
【0038】
図5は、検出装置100の構成の一例を示す図である。検出装置100は、磁気センサ1と、処理装置2と、通信部3と、電源部4とを備える。
【0039】
磁気センサ1は、たとえば、磁気抵抗効果素子(MR(Magneto Resistive)センサ素子)を用いた磁気センサであってよい。
図6は、
図4のA-A断面を示す図である。検出装置100の基板に設けられた磁気センサ1は、磁石400に対向する位置に配置されており、本実施の形態において、ホイールナット240の回転軸(ハブボルト250の中心軸)Oを通る磁気検出軸Bxを備える。
【0040】
図7は、磁気センサ1の出力信号を説明する図である。
図7(A)において、矢印は磁気センサ1の磁気検出軸Bxである。磁気センサ1に用いられるセンサ素子は、たとえば、巨大磁気抵抗効果を奏するGMR(Giant Magneto Resistance)センサ素子、あるいは、トンネル磁気抵抗効果を奏するTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサ素子であってよい。本実施の形態において、磁気検出軸Bxは、磁化の方向が所定の方向にピン(固定)されたピンド層の磁化方向である。検出する磁界(磁束)の方向(フリー層の磁化の方向)が磁気検出軸Bxの矢印の方向に一致するとき、センサ素子の抵抗が最小になる。検出する磁界(磁束)の方向(フリー層の磁化の方向)が磁気検出軸Bxの矢印の方向と反対のとき、センサ素子の抵抗が最大になる。また、検出する磁界(磁束)の方向(フリー層の磁化の方向)が磁気検出軸Bxと角度をなす場合は、センサ素子の抵抗は角度に応じた値になる。本実施の形態において、検出する磁界(磁束)の方向は、磁石400によって磁気センサ1に印加される磁界(磁束)の方向である。
【0041】
図7(B)は、検出する磁界の方向と磁気検出軸Bxの角度とセンサ素子の抵抗Rの関係を示している。
図7(A)に示すように、検出する磁界(磁束)の方向(磁石400の磁束の方向)が磁気検出軸Bxの矢印の方向に一致する位置の回転角θを0°とし、反時計回りに磁気センサ1を回転した際の抵抗Rの変化を、
図7(B)に示している。回転角θが0°のとき、抵抗Rは最も小さく、磁気センサ1の回転とともに抵抗Rが増大し、回転角θが180°のとき、抵抗Rが最も大きくなる。また、回転角θが180°から360°に向けて、抵抗Rは減少し、回転角θが360°(0°)のとき、抵抗Rは最も小さくなる。
【0042】
図7(C)は、磁気センサ1の出力信号を示している。磁気センサ1はセンサ素子の抵抗変化を電圧Vに変換して出力し、本実施の形態では、抵抗Rが小さいほど電圧V(出力信号)が大きくなるよう出力する。
【0043】
図5を参照して、処理装置2は、磁気センサ1の出力信号(磁気検出信号)に基づいて、ホイールナット240の締結状態を判定する。処理装置2は、たとえば、図示しないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備えてよい。通信部3は、処理装置2の処理結果または処理結果に基づく情報を、無線通信により、車両200のマルチインフォメーションディスプレイ201に送信する。電源部4は、磁気センサ1、処理装置2、および、通信部3の各々に電力を供給する。電源部4は、電池であってよい。
【0044】
図8は、処理装置2に構成される機能ブロックの一例を示す図である。状態判定部21は、磁気センサ1の出力信号に基づいて、ホイールナット240の締結状態を判定する。初期値設定部22は、ホイールナット240の締結状態を判定する際の基準値である初期値を設定する。
【0045】
初期値設定部22は、車両200のマルチインフォメーションディスプレイ201に設けられた初期化ボタン201a(
図1参照)が押下されたことを、通信部3を介して受信すると、磁気センサ1の出力信号Vxを初期値Vsに設定し、メモリに記憶する。初期化ボタン201aは、ホイール220(車輪210)をハブ(車軸)300に取り付け、ホイールナット240を所定の締め付けトルクで締結したときに押下される。また、初期化ボタン201aは、ホイールナット240を増し締めしたときに、押下されてもよい。初期化ボタン201aの押化が、本開示の「初期化操作」の一例に相当する。なお、初期化ボタン201aは、ホイールナット240に設けられていてもよい。
【0046】
状態判定部21は、所定期間毎、たとえば、20秒~120秒毎に、磁気センサ1の出力信号Vxを取得する。たとえば、磁気センサ1が、所定期間毎に磁気を検出し、出力信号Vxを出力する。状態判定部21は、出力信号Vxを受信すると、出力信号Vxと初期値Vsとを比較する。初期値Vsと出力信号Vxの差(|Vs-Vx|)が、所定値α以上(|Vs-Vx|≧α)の場合、状態判定部21は、ホイールナット240の締結状態に変化が生じていると判定する。所定値αは、たとえば、ホイールナット240が90°回転した値に相当する値であってよい。
【0047】
状態判定部21は、ホイールナット240の締結状態に変化が生じていると判定したとき、その情報を、通信部3を介して、車両200のマルチインフォメーションディスプレイ201に送信する。マルチインフォメーションディスプレイ201は、送信された情報を受けて、ホイールナット240の緩みを警報(表示)する。
【0048】
本実施の形態の状態判定部21では、ホイールナット240の回転方向を検出できない。しかし、通常の使用時において、ホイールナット240が締め付け方向(増し締め方向)に回転することは、極めて希である。したがって、ホイールナット240と一体的に回転する磁気センサ1の出力信号Vxに基づいて、ホイールナット240が回転したことを検出したとき、ホイールナット240が緩め方向に回転したと判定しても差し支えない。本実施の形態において、所定値αは、初期値Vsに対してホイールナット240が90°相当回転した値としている。初期値Vsが、
図7(C)に示した90°~180°、あるいは、270°~360°の回転角θに位置する場合、「|Vs-Vx|≧α」が成立したときには、既に、ホイールナット240が90°以上回転している場合がある。しかし、ホイールナット240が、180°回転する以前に「|Vs-Vx|≧α」が成立するので、ホイールナット240の締結状態の変化(たとえば、緩み)を判定できる。なお、所定値αは、ホイールナット240が90°相当回転した値でなくともよく、緩みを判定する閾値として、実験等によって、適宜設定してよい。
【0049】
本実施の形態によれば、ハブ300に固定されたハブボルト250の先端面251に、ハブボルト250の軸方向に交差する方向にN極とS極を備えた磁石400が設けられている。磁気センサ1は、ホイールナット240の回転と連動して回転する。磁気センサ1は、磁石400によって磁気センサ1に印加される磁界(磁束)の方向に応じた出力信号Vxを出力する。そして、状態判定部21は、磁気センサ1の出力信号Vxと初期値Vsの差が所定値α以上であるとき、ホイールナット240の締結状態に変化が生じたと判定する。したがって、本実施の形態では、ホイールナット240が回転したとき、ホイールナット240の締結状態に変化が生じていると判定するので、比較的軽い緩みであっても、ホイールナット240の締結状態を検出することができる。
【0050】
本実施の形態では、ホイールナット240に、磁気センサ1を含む検出装置100を設けている。検出装置100の電源部4の蓄電量が空になったとき、ホイールナット240を外して、比較的容易に電源部4(電池)を交換することが可能であり、メンテナンス性が向上する。また、電源部4を交換できない場合であっても、検出装置100を含むホイールナット240を交換すればよい。
【0051】
なお、上記の実施の形態では、ハブボルト250の軸方向に交差する方向にN極とS極を備えた磁石400を設けていたが、この磁石400の磁界(磁束)の方向と直交する磁界を有する磁石を設けてもよい。
【0052】
上記の実施の形態において、磁気センサ1(検出装置100)がハブボルト250の先端面251に固定され、磁石400がホイールナット240の天井部241の内表面241aに固定されていてもよい。この場合、ホイールナット240の天井部241を磁化することにより、磁石を形成してもよい。
【0053】
<変形例1>
上記実施の形態では、初期値設定部22は、初期化ボタン201aが押化されたとき、初期値Vsを設定していた。変形例1では、初期化ボタン201aを用いることなく、初期値Vsを設定する。
【0054】
磁気センサ1が設けられたホイールナット240が、ハブボルト250から取り外され、作業台や整備台に置かれると、磁気センサ1には、磁石400の磁界(磁気)が印加されないので、磁気を検出しない(できない)。この状態では、磁気センサ1は、
図7(C)において、回転角θが90°あるいは270°における値に相当する出力信号Vxを出力する。そして、取り外されていたホイールナット240をハブボルト250に螺合し、ホイールナット240の締め付けを開始すると、磁気センサ1は、
図7(C)に示した出力信号Vxを出力しつつ、ホイール220がハブ300にされる。
【0055】
変形例1において、初期値設定部22は、磁気センサ1の出力信号Vxが磁気を検出していない状態(回転角θが90°あるいは270°における値に相当する出力信号Vxを出力している状態)が、所定時間Ts以上継続しているか否かを判定する。所定時間Tsは、たとえば、10分であってよい。なお、磁気センサ1が、所定期間毎に磁気を検出し、出力信号Vxを出力しいている場合は、回転角θが90°あるいは270°における値に相当する出力信号Vxを所定回数連続して取得した場合に、所定時間Ts以上継続していると判定してもよい。
【0056】
初期値設定部22は、磁気センサ1の出力信号Vxが磁気を検出していない状態が、所定時間Ts以上継続していると判定したあと、ホイールナット240が締め付けられることにより出力信号Vxが変化し、その後、所定時間Tf以上継続して一定の値を示したとき、その一定の値を初期値Vsとして、メモリに記憶する。所定時間Tfは、たとえば、1分であってよい。
【0057】
この変形例1によれば、初期化ボタン201aを設けることなく、初期値Vsを設定して、ホイールナット240の緩みを検出することができる。
【0058】
<変形例2>
上記実施の形態では、初期値Vsを設定し、初期値Vsと磁気センサ1の出力信号Vxを比較することにより、ホイールナット240の緩みを検出していた。変形例2では、初期値Vsを設定することなく、ホイールナット240の緩みを検出する。
【0059】
変形例2では、処理装置2の機能ブロックとして、初期値設定部22が設けられない。状態判定部21は、磁気センサ1の出力信号Vxが磁気を検出していない状態が、所定時間Ts以上継続していると判定したあと、ホイールナット240が締め付けられることにより出力信号Vxが変化し、その後、所定時間Tf以上継続して一定の値を示した場合、緩み検出処理を開始する。所定時間Tsおよび所定時間Tfは、変形例1と同様であってよい。
【0060】
状態判定部21は、緩み検出処理が開始されると、所定期間毎、たとえば、20秒~120秒毎に、磁気センサ1の出力信号Vxを取得する。状態判定部21は、今回取得した出力信号Vxの値(今回値Vx(n))と、前回取得した出力信号Vxの値(前回値Vx(n-1))の差(|Vx(n-1)-Vx(n)|)が、所定値β以上((|Vx(n-1)-Vx(n)|≧β)の場合、ホイールナット240の締結状態に変化が生じていると判定する。また、状態判定部21は、前回までに取得したN回の出力信号Vxの平均値Vxaveと今回値Vx(n)との差(|Vxave-Vx(n)|)が、所定値β以上(|Vxave-Vx(n)|≧β)の場合、ホイールナット240の締結状態に変化が生じていると判定してもよい。
【0061】
この変形例2によれば、初期値設定部22を設けることなく、ホイールナット240の締結状態を検出することができる。
【0062】
<変形例3>
上記実施の形態では、磁気センサ1は、ひとつの磁気検出軸Bxを備えていた。変形例3では、磁気センサは、ふたつの磁気検出軸を備える。
図9は、変形例3における、磁気センサの出力信号を説明する図である。
図9(A)に示すように、変形例3の磁気センサは、ふたつのセンサ素子(たとえば、TMRセンサ素子)を備え、センサ素子1-1の磁気検出軸Bxとセンサ素子1-2の磁気検出軸Byが直交するよう配置されている。
図9(A)において、磁気検出軸Bxおよび磁気検出軸Byの矢印方向は、ピンド層の磁化方向である。
【0063】
図9(B)は、センサ素子1-1とセンサ素子1-2の出力信号を示している。
図9(A)に示すように、検出する磁界(磁束)の方向(磁石400の磁束の方向)が磁気検出軸Bxの矢印の方向に一致する位置の回転角θを0°とし、反時計回りに磁気センサを回転した際の出力信号を、
図9(B)に示している。実線は、センサ素子1-1の出力信号Vxであり、破線は、センサ素子1-2の出力信号Vyである。
図9(B)に示すように、出力信号Vyは、基準電圧Vrを中心としたサイン(sin)カーブであり、出力信号Vxは、コサイン(cos)カーブである。このため、回転角θが変化すると、出力信号Vyと出力信号Vxとの組み合わせも変化する。したがって、ホイールナット240が回転したことの検出を、出力信号Vyと出力信号Vxとの組み合わせから実施してもよい、また、出力信号Vyと出力信号Vxとの組み合わせから、回転角θを推測することが可能である。(たとえば、「(Vy-Vr)/(Vx-Vr)」)の値が決まると、回転角θも一義的に決まる。)したがって、
図9(C)に示すように、出力信号Vyと出力信号Vxとの組み合わせと回転角θの関係を記憶したマップ等から、回転角θを直線的な値として求めることが可能である。このように、出力信号Vyと出力信号Vxとの組み合わせから、ホイールナット240の回転角θを推測し、ホイールナット240の締結状態を検出してもよい。この変形例3のように、磁気検出軸が直交する磁気センサを用いてホイールナット240の回転角を推定すれば、より的確にホイールナット240の締結状態を検出することができる。
【0064】
<実施の形態2>
図10は、実施の形態2に係るホイール220の締結部の断面図である。実施の形態2において、ホイールナット340は、ネジ穴が貫通している貫通ナットである。ホイールナット340には、ナットキャップ341が、ホイールナット340と一体的に回転するよう取り付けられている。ナットキャップ341は、ホイールナット340と連動して、ねじ軸(
図10の一点鎖線)を中心に回転する。ナットキャップ341は、本開示の「A部材」の一例に相当する。磁気センサ1を含む検出装置100は、たとえば接着等により、ナットキャップ341の天井面に取り付けられ、ホイールナット340に間接的に固定される。この実施の形態2においても、磁気センサ1は、ホイールナット240の回転に連動して回転するので、ホイールナット240の締結状態を検出することができる。
【0065】
この実施の形態2では、ナットキャップ341に、磁気センサ1を含む検出装置100を設けている。これにより、比較的容易に電源部4(電池)を交換することが可能であり、また、電源部4を交換できない場合であっても、検出装置100を含むナットキャップ341を交換すればよい。なお、磁気センサ1(検出装置100)がハブボルト250に固定され、磁石400がナットキャップ341に固定されていてもよい。
【0066】
<実施の形態3>
図11は、実施の形態3に係るホイール220の締結部の断面図である。実施の形態3は、ホイール220をホイールボルト500によってハブ300に締結する構造である。ハブ300には、ホイールボルト500が螺合するネジ穴310が形成されており、ネジ穴310にホイールボルト500を螺合し、締め付けることにより、ホイール220がハブ300に締結される。ホイールボルト500が、本開示の「締結部材」の一例に相当する。
【0067】
本開示の「所定部材」に相当するハブ300のネジ穴310の底面には、磁石400が、ホイールボルト500の軸方向(ねじ軸)と交差する方向にN極とS極を有するよう設けられている。ホイールボルト500の先端面には、検出装置100が設けられている。検出装置100は、たとえば、ホイールボルト500の先端面に形成された凹部に嵌め込まれ、接着によって固定されてよい。検出装置100は、実施の形態1と同様な構成であり、磁気センサ1と、処理装置2と、通信部3と、電源部4とを備え、実施の形態1と同様の機能を奏する。
【0068】
この実施の形態3では、ホイールボルト500が回転し磁気センサ1が回転すると、磁気センサ1の出力信号が変化する。したがって、実施の形態1と同様に、処理装置2は、磁気センサ1の出力信号に基づいて、ホイールボルト500の締結状態を判定することができるので、被締結物の種類に拘わらず、また、比較的軽い緩みであっても、ホイールボルト500(締結部材)の締結状態を検出することができる。
【0069】
この実施の形態3では、ホイールボルト500に、磁気センサ1を含む検出装置100を設けている。これにより、比較的容易に電源部4(電池)を交換することが可能であり、また、電源部4を交換できない場合であっても、検出装置100を含むホイールボルト500を交換すればよい。なお、磁気センサ1(検出装置100)がホイールボルト500に固定され、磁石400がネジ穴310の底面に固定されていてもよい。
【0070】
<実施の形態4>
図12は、実施の形態4に係る車輪210aの概略図である。車輪210aは、実施の形態1と同様に、ホイール220aと、ホイール220aに取り付けられるタイヤ230とを含み、ホイール220aには、ハブに設けたハブボルトが挿通されるホイール孔が設けられており、ホイールナット240aをハブボルトに螺合することにより、ホイール220aがハブに締結される。
【0071】
実施の形態4では、ホイール220aを覆うホイールキャップ600が、ホイール220aに取り付けられている。ホイールキャップ600は、ホイールカバーとも称され、ホイール220aの意匠性を高めるとともに、ハブ周りへの埃や水の浸入を抑制する。ホイールキャップ600は、板ばね等の弾撥部材から形成された複数の爪部601を備え、爪部601がホイール220aのリム部に嵌合することにより、ホイール220aに固定される。ホイールキャップ600は、ABS樹脂等から形成され、ホイール220a(車輪210a)のエアバルブ222を受け入れる切り欠き部602が設けられている。この切り欠き部602が、エアバルブ222の位置になるよう、ホイールキャップ600がホイール220aに固定される。
【0072】
図13は、
図12のB-B断面を示す図である。ハブボルト250がハブ300に固定されており、ハブボルト250にホイールナット240aが螺合することよって、ホイール220aがハブ300に締結される。ホイールナット240aの頂面には、磁石400が設けられている。磁石400は、実施の形態1と同様に、ねじ軸(
図13の一点鎖線)に直交する方向にN極とS極を備える。磁石400と対向するホイールキャップ600の面には、検出装置100が接着等によって固定されており、検出装置100の磁気センサ1が、磁石400と対向する位置に設けられている。磁石400と磁気センサ1の位置関係は、
図6と同様であり、磁気検出軸Bxがホイールナット240aの回転軸(ねじ軸)を通る。なお、ホイールナット240aの頂面を磁化することにより、磁石を形成してもよい。
【0073】
この実施の形態4においては、ホイールナット240aが回転し締結状態が緩むと、ホイールナット240aに固定された磁石400が回転し、磁気センサ1の検出信号が変化する。これにより、上記実施の形態1と同様に、ホイールナット240aの締結状態を検出することができる。実施の形態4において、ハブ300が、本開示の「所定部材」に相当し、ホイール220aが「被締結部材」に相当する。ホイールナット240aが、本開示の「締結部材」に相当し、ホイールキャップ600が、本開示の「C部材」に相当する。
【0074】
この実施の形態4では、検出装置100(磁気センサ1)がホイールキャップ600に固定される。このため、検出装置100(磁気センサ1)の体格に対してホイールナット240aの二面幅(あるいは、呼び径(M径)が小さい場合であっても、磁気センサ1を用いてホイールナット240aの締結状態を検出できる。実施の形態4において、検出装置100(磁気センサ1)がホイールナット204aに固定され、磁石400がホイールキャップ600に固定されてもよい。また、ホイールナット240aとホイール220aの間に座金を備えてもよく、ホイールナット204aの座面を球面座としてもよい。
【0075】
<実施の形態5>
図14は、実施の形態5に係るホイール220aの締結部の断面図である。実施の形態5は、実施の形態3と同様に、ホイール220aをホイールボルト500aによってハブ300に締結する構造である。ハブ300には、ホイールボルト500aが螺合するネジ穴310が形成されており、ネジ穴310にホイールボルト500aを螺合し、締め付けることにより、ホイール220aがハブ300に締結される。また、実施の形態4と同様に、ホイールキャップ600が、ホイール220aに取り付けられている。
【0076】
ホイールボルト500aの頂面には、磁石400が設けられている。磁石400は、実施の形態1と同様に、ねじ軸(
図14の一点鎖線)に直交する方向にN極とS極を備える。ホイールボルト500aの頂面を磁化することにより、磁石を形成してもよい。磁石400と対向するホイールキャップ600の面には、検出装置100が接着等によって固定されており、検出装置100の磁気センサ1が、磁石400と対向する位置に設けられている。磁石400と磁気センサ1の位置関係は、
図6と同様であり、磁気検出軸Bxがホイールボルト500aの回転軸(ねじ軸)を通る。
【0077】
ホイールボルト500aが回転し締結状態が緩むと、ホイールボルト500aに固定された磁石400が回転し、磁気センサ1の検出信号が変化するので、上記実施の形態1と同様に、ホイールボルト500aの締結状態を検出することができる。実施の形態5において、ホイールボルト500aが、本開示の「締結部材」に相当し、ホイールキャップ600が、本開示の「C部材」に相当する。
【0078】
この実施の形態5では、検出装置100(磁気センサ1)がホイールキャップ600に固定される。このため、検出装置100(磁気センサ1)の体格に対してホイールボルト500aの二面幅(あるいは、呼び径(M径)が小さい場合であっても、磁気センサ1を用いてホイールボルト500aの締結状態を検出できる。検出装置100(磁気センサ1)がホイールボルト500aに固定され、磁石400がホイールキャップ600に固定されてもよい。
【0079】
<実施の形態6>
図15は、実施の形態6に係るホイール220aの締結部の断面図である。この実施の形態では、実施の形態5のホイールボルト500aに、ホイールボルト500aと一体的に回転するボルトキャップ501を取り付けている。ボルトキャップ501は、ホイールボルト500aと連動して、ねじ軸を中心に回転する。そして、磁石400が、ボルトキャップ501の頂面に固定されている。磁石400は、に直交する方向にN極とS極を備える。ボルトキャップ501の頂面を磁化することにより、磁石を形成してもよい。
【0080】
ホイールボルト500aが回転し締結状態が緩むと、ボルトキャップ501はホイールボルト500aと連動して回転し、磁気センサ1の検出信号が変化するので、ホイールボルト500aの締結状態を検出することができる。実施の形態6において、ホイールボルト500aが、本開示の「締結部材」に相当し、ボルトキャップ501が、本開示の「A部材」に相当し、ホイールキャップ600が、本開示の「C部材」に相当する。
【0081】
この実施の形態5では、ボルトキャップ501に磁石400が固定されている。ホイールボルト500aを、インパクト、トルクレンチ等で締め付けた後、ホイールボルト500aに、磁石400が固定されたボルトキャップ501を取り付けることができる。これにより、ホイールボルト500aの締め付け時に、磁石400が破損することを避けられる。検出装置100(磁気センサ1)がボルトキャップ501に固定され、磁石400がホイールキャップ600に固定されてもよい。この場合、ホイールボルト500aの締め付け時に、検出装置100(磁気センサ1)が破損することを避けられる。
【0082】
<変形例4>
図16は、変形例4の車輪210bの概略図である。変形例4は、実施の形態4の変形例である。実施の形態4では、ホイール220aの全体を覆うホイールキャップ600を、ホイール220aに取り付けていた。変形例4では、
図16に示すように、ホイール220bの中心部およびホイールナット240aを覆う、センターキャップ700が取り付けられている。センターキャップ700は、板ばね等の弾撥部材から形成された複数の爪部701を用いて、ホイール220bのセンターボア223に固定されてよい。
【0083】
変形例4では、センターキャップ700に、検出装置100(磁気センサ1)を固定する。他の構成は、実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。この変形例4においても、ホイールナット240aが回転し締結状態が緩むと、ホイールナット240aに固定された磁石400が回転し、磁気センサ1の検出信号が変化する。これにより、ホイールナット240aの締結状態を検出することができる。センターキャップ700が、本開示の「C部材」に相当する。この変形例4では、センターキャップ700は、五角形であり、五角形の頂点近傍にホイールナット240aが位置するよう、ホイール220bに取り付け可能とされている。これにより、磁石400と磁気センサ1の位置が一致する。なお、ホイール200bとセンターキャップ700の周方向の位置決めを行うため、溝やリブ等の位置決め部材を設けるようにしてもよい。変形例4において、検出装置100(磁気センサ1)がホイールナット204aに固定され、磁石400がセンターキャップ700に固定されてもよい。
【0084】
なお、実施の形態5および実施の形態6においても、ホイールキャップ600に代えて、センターキャップ700を用いてもよい。
【0085】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
A)所定部材(300)に固定されたボルト(250)と、ボルト(250)が挿通される挿通孔(221)を有し、所定部材(300)に締結される被締結部材(220)と、ボルト(250)に螺合して被締結部材(220)を所定部材(300)に締結するナットからなる締結部材(240、340))と、ボルト(250)の軸方向と交差する方向にN極とS極を有するよう、ボルト(250)の先端面に形成された磁石(400)と、締結部材(240、340)の回転と連動して回転するとともに磁石(400)による磁界を検出する磁気センサ(1)と、磁気センサ(1)の出力信号に基づいて、締結部材(240、340)の締結状態を判定する処理装置(2)と、を備える、締結部材の締結状態検出装置。
【0086】
B)所定部材(300)に形成されたネジ穴(310)と、ネジ穴(310)に螺合して、被締結部材(220)を所定部材(300)に締結するボルトからなる締結部材(500)と、締結部材(500)の軸方向と交差する方向にN極とS極を有するよう、ネジ穴(310)の底面に形成された磁石(400)と、締結部材(500)の先端面に設けられ、締結部材(500)の回転と連動して回転するとともに磁石(400)による磁界を検出する磁気センサ(1)と、磁気センサ(1)の出力信号に基づいて、締結部材(500)の締結状態を判定する処理装置(2)と、を備える、締結部材の締結状態検出装置。
【0087】
上記実施の形態では、検出装置100に設けられた処理装置2によってホイールナット、ホイールボルトの緩みを検出する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、車両200に設けたECU(Electronic Control Unit)において、処理装置2で実行される処理を実行するようにしてもよい。この場合、検出装置100の通信部3を通じて、磁気センサ1の検出値をECUに送信し、ECUがホイールナットあるいはホイールボルトの締結状態に変化が生じたことを判定する。
【0088】
上記実施の形態では、車両200のホイールを締結するホイールナットあるいはホイールボルトの締結状態を検出する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、エレベータの籠を昇降させるワイヤ巻き取り機やモータ等に取り付けられるナット等の締結部材の締結状態を検出してもよい。また、遊園地の娯楽施設や公園に設置された遊具等に用いられる締結部材であってもよい。
【0089】
上記実施の形態および上記変形例は、技術的に矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることもできる。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 磁気センサ、2 処理装置、21 状態判定部、22 初期値設定部、3 通信部、4 電源部、100 検出装置、200 車両、201 マルチインフォメーションディスプレイ、201a 初期化ボタン、210,210a,210b 車輪、220,220a,220b ホイール、221 ホイール穴、230 タイヤ、240,240a,340 ホイールナット、241 天井部、241a 内表面、242 側面部、243 座金、250 ハブボルト、251 先端面、300 ハブ(車軸)、310 ネジ穴、341 ナットキャップ、400 磁石、500,500a ホイールボルト、501 ボルトキャップ、600 ホイールキャップ、700 センターキャップ。