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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001908
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電動工具収納ケース
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/02 20060101AFI20231228BHJP
   B65D 43/22 20060101ALI20231228BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B25H3/02
B65D43/22 100
B65D85/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100766
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】色川 久志
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】東海林 潤一
【テーマコード(参考)】
3C012
3E068
3E084
【Fターム(参考)】
3C012BH02
3E068AA28
3E068CC04
3E068CE03
3E068CE08
3E068DD13
3E068DD28
3E068DE02
3E068EE32
3E068EE34
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA03
3E084CC03
3E084DA03
3E084DB14
3E084DC03
3E084FA01
3E084FD01
3E084GA06
3E084GB06
(57)【要約】
【課題】収納部に対する蓋部の固定操作によらず、蓋部が不意に開いて収納部に収納された収納物が散乱することを抑制可能な電動工具収納ケースを提供する。
【解決手段】電動工具収納ケース1は、係止機構70を有する。係止機構70は、蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態からサブケース開口部を覆った状態になる過程で蓋体30の自重により係止状態となり、係止状態において蓋体30がサブケース開口部を覆った状態からサブケース開口部を開口させた状態となることを抑制する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する収納部と、
前記開口部を開口させた状態と前記開口部を覆った状態との間で動作可能な蓋部と、
前記蓋部が前記開口部を開口させた状態から前記開口部を覆った状態になる過程で前記蓋部の自重により係止状態となり、前記係止状態において前記蓋部が前記開口部を覆った状態から前記開口部を開口させた状態となることを抑制する係止機構と、を有する、
ことを特徴とする、電動工具収納ケース。
【請求項2】
作業者の操作により前記係止状態を解除可能な操作部を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電動工具収納ケース。
【請求項3】
前記操作部を前記係止状態となる方向に付勢する付勢手段を有する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の電動工具収納ケース。
【請求項4】
前記係止機構は、
前記蓋部に設けられたアームと、
前記アームに設けられた係止部と、
前記収納部に設けられた被係止部と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電動工具収納ケース。
【請求項5】
前記アーム部は、前記蓋部に回動可能に支持される、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電動工具収納ケース。
【請求項6】
前記係止部は、前記アームに対して回転可能である、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電動工具収納ケース。
【請求項7】
前記被係止部は、前記蓋部が前記開口部を開口させた状態から前記開口部を覆った状態になる過程で前記係止部が乗り越える傾斜部を有する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電動工具収納ケース。
【請求項8】
前記被係止部は、前記係止状態において前記蓋部が前記開口部を開口させた状態に向けて動こうとした場合に前記係止部が引っ掛かるかえし部を有する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電動工具収納ケース。
【請求項9】
前記係止機構とは別に、ユーザの操作により前記蓋部を前記開口部を覆った状態に固定する固定機構を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電動工具収納ケース。
【請求項10】
前記固定機構は、U字状の操作部を有し、前記蓋部が前記開口部を覆った状態でU字状の隙間から前記係止機構の状態を目視可能である、
ことを特徴とする、請求項9に記載の電動工具収納ケース。
【請求項11】
前記係止状態において前記係止機構は、前記固定機構による固定が可能な位置から前記蓋部が所定長だけ開くことを許容する、
ことを特徴とする、請求項9に記載の電動工具収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ユーザがラッチ機構を操作することで収納部に対して蓋部を閉じた状態に固定する電動工具収納ケースを開示する。下記特許文献2は、側面に引手を設けた旅行用トランクを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-181694号公報
【特許文献2】特公平7-73528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成において、ユーザが蓋部と収納部の固定を忘れたまま電動工具収納ケースを持ち上げると、不意に蓋部が開き、収納部に収納された収納物が散乱する虞があった。
【0005】
特許文献1のような電動工具収納ケースを収納する収納棚は、収納スペースの最適化のため、必要最小限の高さとなるよう棚の高さを設定される。このため、電動工具収納ケースをハンドルが上になるよう収納棚に収納すると、ハンドルに手が届かず、電動工具収納ケースを収納棚から側方に引き出しにくい場合があった。
【0006】
特許文献2の構成は、側面の引手を利用することでハンドルによらずトランクを側方に引き出しやすい。しかし、引手は側面の上部に設けられるため、収納棚の上段にトランクが置かれている場合には操作がしにくかった。また、側面に引手収納凹部を設ける必要があり、トランクの収納可能容量が減っていた。
【0007】
本発明者は、下記の課題1~3を認識した。
・課題1…収納部に対する蓋部の固定操作によらず、蓋部が不意に開いて収納部に収納された収納物が散乱することを抑制可能な電動工具収納ケースを提供すること。
・課題2…収納棚の上段、下段のいずれに置かれても収納棚から側方に引き出しやすい電動工具収納ケースを提供すること。
・課題3…収納棚から側方に引き出しやすい構造としながら収納可能容量の減少を抑制可能な電動工具収納ケースを提供すること。
【0008】
本発明の目的は、上記課題のうち少なくとも課題1を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、電動工具収納ケースである。この電動工具収納ケースは、
開口部を有する収納部と、
前記開口部を開口させた状態と前記開口部を覆った状態との間で動作可能な蓋部と、
前記蓋部が前記開口部を開口させた状態から前記開口部を覆った状態になる過程で前記蓋部の自重により係止状態となり、前記係止状態において前記蓋部が前記開口部を覆った状態から前記開口部を開口させた状態となることを抑制する係止機構と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記課題のうち少なくとも課題1を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る電動工具収納ケース1の斜視図。
図2】電動工具収納ケース1を別角度から見た斜視図。
図3】電動工具収納ケース1をハンドル60が上になるように立てた状態の斜視図。
図4】電動工具収納ケース1の平面図。
図5】(A)は、図5(B)のM-M断面図。(B)は、電動工具収納ケース1の蓋体30の平面図。(C)は、図5(B)のN部拡大図。
図6】電動工具収納ケース1の背面図。
図7】電動工具収納ケース1のメインケース10の底面図。
図8】多数の電動工具収納ケース1を収納棚90に並べた状態を示す図。
図9】蓋体30を閉じた状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図10図9のA-A断面図。
図11】(A)は、図10のG部拡大図。(B)は、図9の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図12】蓋体30が開こうとした際に係止機構70による係止で止まった状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図13図12のB-B断面図。
図14】(A)は、図13のH部拡大図。(B)は、図12の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図15】係止機構70による係止を解除して蓋体30を開ける途中の状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図16図15のC-C断面図。
図17】(A)は、図16のJ部拡大図。(B)は、図15の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図18図15の状態から蓋体30を更に開けた状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図19図18のD-D断面図。
図20図18の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図21図18の状態から蓋体30を閉じていく過程でローラ75が被係止部74に接触した状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図22図21のE-E断面図。
図23】(A)は、図22のK部拡大図。(B)は、図21の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図24図21の状態から蓋体30を更に閉じていく過程でローラ75が被係止部74を乗り越える途中の状態の電動工具収納ケース1の正面図。
図25図24のF-F断面図。
図26】(A)は、図25のL部拡大図。(B)は、図24の状態の電動工具収納ケース1の要部斜視図。
図27】係止機構70の変形例を示す図。
図28】本発明の実施の形態2に係る電動工具収納ケース2の平面図。
図29】電動工具収納ケース2の側面図。
図30】(A)は、電動工具収納ケース2の右半分の正面図。(B)は、電動工具収納ケース2の要部斜視図。
図31】(A)は、本発明の実施の形態3に係る電動工具収納ケース3の右半分の正面図。(B)は、図31(A)のP部拡大図。(C)は、電動工具収納ケース3の要部斜視図。
図32】(A)は、本発明の実施の形態4に係る電動工具収納ケース4の側面図。(B)は、電動工具収納ケース4の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1図26は、本発明の実施の形態1に係る電動工具収納ケース1に関する。図1より、電動工具収納ケース1の互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。
【0013】
電動工具収納ケース1は、メインケース10、サブケース20、蓋体30と、一対の側部ラッチ40、中央ラッチ50、ハンドル60、係止機構70、を備える。
【0014】
メインケース10は、収納部の例示である。メインケース10は、上部が開口した例えば樹脂製の箱体であり、内部に電動工具本体や電池パック、充電器等をそれぞれ収納可能である。図2に示すように、メインケース10は、略長方形の底面部11と、底面部11の4辺から立ち上がる外壁部12と、を有する。底面部11の4つの角部近傍には、スタッキング用凸部11aがそれぞれ設けられる。メインケース10は、背面部に接地部15(凸部)を有する。接地部15は、背面部を下にして電動工具収納ケース1を立てるときに載置面に接触する。
【0015】
サブケース20は、収納部の例示である。サブケース20は、上部が開口した例えば樹脂製の箱体であり、内部に各種小物を収納可能である。サブケース20は、メインケース10の上方に回動可能に設けられる。サブケース20は、後部において図2に示す一対の第1のヒンジ部65(第1の回動支持部)によってメインケース10に回動可能に連結され、メインケース10に対する蓋としても機能する。
【0016】
蓋体30は、蓋部の例示である。蓋体30は、例えば樹脂製であり、サブケース20の上方に回動可能に設けられる。蓋体30は、後部において図2に示す一対の第2のヒンジ部67(第2の回動支持部)によってサブケース20に回動可能に連結され、サブケース20に対する蓋として機能する。
【0017】
蓋体30は、略長方形の上面部31と、上面部31の4辺から下方に延びる外壁部32と、を有する。上面部31の4つの角部近傍には、上面部31の縁から離間したスタッキング用凹部31aがそれぞれ設けられる。複数の電動工具収納ケース1を積み重ねる際には、メインケース10の底面部11に設けられたスタッキング用凸部11aを、蓋体30の上面部31に設けられたスタッキング用凹部31aに嵌める。
【0018】
ハンドル60は、例えば樹脂性であってU字状に形成され、メインケース10の前面部に回動可能に支持される。メインケース10の前面(前方に臨む外壁部12)には一対のハンドルベース部16が突設され(前方に突出するように設けられ)、この一対のハンドルベース部16にハンドル60の両端部がそれぞれ不図示の連結ピンによって回動可能に連結される。
【0019】
一対の側部ラッチ40は、例えば樹脂性かつ互いに同一構成であってハンドル60の両側に分かれて設けられ、メインケース10に対するサブケース20の回動を規制する(サブケース20をメインケース10に対して回動不能にロックする)固定機構である。側部ラッチ40は、メインケース10に回動可能に連結されたラッチ操作部41と、ラッチ操作部41に回動可能に連結されたラッチ本体部42と、を含む。ラッチ本体部42は、サブケース20の前面上部に設けられた図示しない係止部(係止凸部)と係合し、メインケース10に対するサブケース20の回動を規制する。ユーザは、ラッチ操作部41により、ラッチ本体部42と前記係止部との係合、解除を操作できる。
【0020】
中央ラッチ50は、例えば樹脂性であり、サブケース20に対する蓋体30の回動を規制する(蓋体30をサブケース20に対して回動不能にロックする)固定機構である。中央ラッチ50は、サブケース20に回動可能に連結されたラッチ操作部51と、ラッチ操作部51に回動可能に連結されたラッチ本体部52と、を含む。ラッチ本体部52は、蓋体30の前面上部に設けられた2つの係止部36とそれぞれ係合し、サブケース20に対する蓋体30の回動を規制する。ユーザは、ラッチ操作部51により、ラッチ本体部52と係止部36との係合、解除を操作できる。
【0021】
ラッチ操作部51は、U字状に形成され、U字状の隙間から後述の係止機構70の状態を目視可能とする。ラッチ本体部52は、左右方向の中央部に切欠部52aを有し、切欠部52aから係止機構70の操作部71が外方に臨む。
【0022】
蓋体30は、回動規制有効状態の中央ラッチ50のラッチ本体部52の背後となる位置に支持凸部34を有する。支持凸部34は、蓋体30の前面中央部に設けられる。なお、蓋体30の前述の2つの係止部36は、支持凸部34の左右両肩部にそれぞれ設けられる。支持凸部34は、係止機構70を支持する。
【0023】
(簡易ロック機構)
以下、電動工具収納ケース1における簡易ロック機構を説明する。
【0024】
係止機構70は、蓋体30の簡易ロック機構である。係止機構70は、蓋体30がサブケース20の図19及び図20に示す開口部20a(以下「サブケース開口部」)を開口させた状態からサブケース開口部を覆った状態になる過程で蓋体30の自重により係止状態となり、係止状態において蓋体30がサブケース開口部を覆った状態からサブケース開口部を開口させた状態となることを抑制する。
【0025】
係止機構70は、操作部71、アーム基部72、アーム73、被係止部74、係止部としてのローラ75、付勢手段としての板バネ78、を含む。
【0026】
操作部71は、係止機構70による係止状態を解除する際にユーザに操作される。アーム基部72は、アーム73を支持する。操作部71及びアーム基部72は、例えば一体の樹脂成形体であり、左右方向と平行な回動軸を中心に支持凸部34に回動可能に支持される。アーム73は、例えば金属製であり、アーム基部72からU字状に下方に延出し、アーム基部72と共に左右方向と平行な回動軸を中心に回動可能である。ローラ75は、アーム73の下部に支持され、左右方向と平行な回転軸を中心にアーム73に対して回転可能である。板バネ78は、支持凸部34に対して操作部71を係止状態となる方向(図11(A)の反時計回り方向)に付勢する。
【0027】
被係止部74は、サブケース20の前部に設けられた凸部である。被係止部74は、好ましくはサブケース20と一体の樹脂成形体である。被係止部74は、上面に傾斜部76を有し、下面にかえし部77を有する。傾斜部76は、図23(A)及び図26(A)に示すように、蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態からサブケース開口部を覆った状態になる過程でローラ75が乗り越える部分である。かえし部77は、図11(A)及び図14(A)に示すように、係止状態において蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態に向けて動こうとした場合にローラ75が引っ掛かる部分である。
【0028】
図9図26は、蓋体30の開閉動作を示す。
【0029】
図9図11は、蓋体30が閉じた状態であって中央ラッチ50により蓋体30がサブケース20に固定された状態を示す。図9図11の状態は、蓋体30がサブケース開口部を覆った状態である。図9図11の状態では、被係止部74のかえし部77とローラ75との間に、上下方向の所定長の隙間がある。このため、中央ラッチ50による固定がなければ、この隙間の分だけ蓋体30はサブケース20に対して上方に回動できる(図12図14)。すなわち、係止機構70は、中央ラッチ50による固定が可能な位置(図9図11の状態)から蓋体30が所定長だけ開くことを許容する。
【0030】
図12図14は、中央ラッチ50による固定が解除された状態において蓋体30が開こうとした際に係止機構70による係止で止まった状態を示す。ユーザが中央ラッチ50による固定を忘れた場合でも、係止機構70による係止、具体的にはローラ75がかえし部77に突き当たって引っ掛かることにより、図12図14の状態を超えて蓋体30が開くことが抑制される。図12図14の状態も、蓋体30がサブケース開口部を覆った状態である。
【0031】
図15図17は、係止機構70による係止を解除して蓋体30を開ける途中の状態を示す。ユーザは、板バネ78の付勢に抗して操作部71を図17(A)の時計回り方向に回動させることで、係止機構70による係止を解除でき、その後に蓋体30を上方に回動させることで、図18図20に示すように蓋体30を開けること(サブケース開口部を開口させた状態にすること)ができる。図18図20の状態は、蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態である。
【0032】
図21図23は、図18図20の状態から蓋体30を閉じていく過程でローラ75が被係止部74の傾斜部76に接触した状態を示す。この状態から、蓋体30の自重により、ローラ75は回転しながら図24図26に示すように傾斜部76を乗り越えていく。板バネ78の付勢力は、ローラ75が傾斜部76を乗り越えるのを許容する程度に小さいものとする。図示は省略するが、図24図26の状態から蓋体30は自重によりさらに下方に回動していき、図9図11に示したのと同じ位置まで至る。ローラ75は、傾斜部76を乗り越えた後、自重及び板バネ78の付勢により、図9図11に示した状態に戻る。
【0033】
係止機構70の別構成例として、被係止部74を、図27に示すようにメインケース10の前部に設けられた被係止部74Aとしてもよい。この場合、メインケース10に対する蓋部30の簡易ロックも可能となる。
【0034】
(収納棚からの引出に係る構成)
以下、電動工具収納ケース1を図8に示すような収納棚90から引き出すための構成を説明する。
【0035】
蓋部30の上面部31は、電動工具収納ケース1の上面部を成す。メインケース10の底面部11は、電動工具収納ケース1の下面部(以下「ケース下面部」)を成す。メインケース10の外壁部12、サブケース20の外壁部22、蓋部30の外壁部32は、電動工具収納ケース1の一対の側面部(以下「ケース側面部」)、前面部(以下「ケース前面部」)、背面部(以下「ケース背面部」)を成す。電動工具収納ケース1は、図8に示すように、ケース前面部が上を向いた姿勢(以下「起立姿勢」)で収納棚90に収納可能である。
【0036】
蓋部30は、2つの凹部33を有する。2つの凹部33は、蓋部30の前左端部及び前右端部においてそれぞれ蓋部30の上面と前面に跨がって設けられる。図4に示すように、凹部33の左右の壁部として、リブ35、39が蓋部30に設けられる。
【0037】
右側のリブ35は、右側の凹部33の右壁部を成す。左側のリブ35は、左側の凹部33の左壁部を成す。リブ35は、第1操作部の例示であり、起立姿勢で収納棚90に収納された電動工具収納ケース1を側方に引き出すための操作部である。リブ35は、起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも上側に位置する。
【0038】
図4に示すように、リブ35の前端部は、電動工具収納ケース1の前端部よりも長さL1だけ後方に位置する。電動工具収納ケース1の前端部は、例えば側部ラッチ40の前端部あるいは中央ラッチ50の前端部である。
【0039】
右側のリブ39は、右側の凹部33の左壁部を成す。左側のリブ39は、左側の凹部33の右壁部を成す。リブ39は、左右方向において凹部33と側部ラッチ40との間に位置する。リブ39は、凹部33に指入れする際に指が側部ラッチ40に触れにくくする。
【0040】
蓋部30は、2つの凹部37を有する。2つの凹部37は、蓋部30の後左端部及び後右端部においてそれぞれ蓋部30の上面と背面に跨がって設けられる。図4に示すように、右側の凹部37の右壁部、及び左側の凹部37の左壁部として、2つのリブ38が蓋部30に設けられる。
【0041】
リブ38は、第2操作部の例示であり、起立姿勢で収納棚90に収納された電動工具収納ケース1を側方に引き出すための操作部である。リブ38は、起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも下側に位置する。
【0042】
図4に示すように、リブ38の後端部は、電動工具収納ケース1の後端部よりも長さL2だけ後方に位置する。電動工具収納ケース1の後端部は、例えば接地部15の後端部である。
【0043】
メインケース10は、2つのリブ13を有する。2つのリブ13は、メインケース10の前面部の左右両端部においてそれぞれ前方に突出し、上下方向に延びる。リブ13は、側部ラッチ40を保護するためにメインケース10の上下方向の全長に渡って設けられていたリブの下部を切り欠いたのであり、メインケース10の上端部から上下方向の中間部までの範囲に設けられる(メインケース10の下端部まで至らない)。あるいは、リブ13は、メインケース10の下端部まで至るが、前方への突出長が上部では長く下部では短い。
【0044】
リブ13は、第1操作部の例示であり、起立姿勢で収納棚90に収納された電動工具収納ケース1を側方に引き出すための操作部である。リブ13は、起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも上側に位置する。
【0045】
メインケース10は、2つのリブ14を有する。2つのリブ14は、メインケース10の背面部の左右両端部においてそれぞれ後方に突出し、上下方向に延びる。リブ14は、第1のヒンジ部65の補強用のリブを下方に延長したものであり、メインケース10の上端に位置する第1のヒンジ部65から上下方向の中間部までの範囲に設けられる(メインケース10の下端部まで至らない)。リブ14は、メインケース10の下端部まで至るが後方への突出長が上部では長く下部では短い構成としてもよい。
【0046】
リブ14は、第2操作部の例示であり、起立姿勢で収納棚90に収納された電動工具収納ケース1を側方に引き出すための操作部である。リブ14は、起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも下側に位置する。
【0047】
図8に示すように多数の電動工具収納ケース1が起立姿勢で収納棚90に収納された場合、リブ13、14、35、38の少なくともいずれかに指を引っ掛けて、電動工具収納ケース1を容易に収納棚90から側方(図8の紙面手前側)に引き出すことができる。
【0048】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0049】
(1) 係止機構70は、蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態からサブケース開口部を覆った状態になる過程で蓋体30の自重により係止状態となり、係止状態において蓋体30がサブケース開口部を覆った状態からサブケース開口部を開口させた状態となることを抑制する。このため、ユーザが中央ラッチ50によりサブケース20に対して蓋部30を固定し忘れても、蓋部30が不意に開いてサブケース20に収納された収納物が散乱することを抑制できる。
【0050】
(2) 係止機構70による係止は、操作部71を上方に回動させるというワンアクションで解除でき、使い勝手が良い。
【0051】
(3) 板バネ78が操作部71を係止状態となる方向に付勢するため、傾斜部76を乗り越えたローラ75を係止有効位置(図11(A)に示すローラ75の回動位置)まで回動する確実性、すなわち蓋部30を閉じた際に係止機構70による係止が有効になる確実性が高められる。一方、板バネ78の付勢力は、ローラ75が傾斜部76を乗り越えるのを許容する程度に小さいものであるため、ローラ75が傾斜部76を乗り越えられずに蓋部30が自重だけで閉まらなくなるリスクは抑制される。
【0052】
(4) 係止機構70において、被係止部74と係合する係合部がローラ75である。ローラ75は、傾斜部76を転がりながら乗り越えることができるため、傾斜部76を乗り越えられずに止まって蓋部30が自重だけで閉まらなくなるリスクを抑制できる。
【0053】
(5) 被係止部74は、蓋部30を閉じるときにローラ75が乗り越える傾斜部76を上面に有する。このため、被係止部74の上面が例えば上下方向と垂直な平面である場合と比較して、ローラ75が被係止部74を下方に乗り越えやすくなり、蓋部30が自重だけで閉まらなくなるリスクを抑制できる。
【0054】
(6) 被係止部74は、係止状態において蓋体30がサブケース開口部を開口させた状態に向けて動こうとした場合にローラ75が引っ掛かるかえし部77を下面に有する。このため、被係止部74の下面が例えば上下方向と垂直な平面である場合と比較して、ローラ75が不意に被係止部74を上方に乗り越えること、すなわち係止機構70による係止が不意に解除されるリスクを抑制できる。
【0055】
(7) ラッチ操作部51がU字状に形成され、ユーザはU字状の隙間から係止機構70の状態を目視で確認できるため、使い勝手が良い。
【0056】
(8) 図9図11の状態では、被係止部74のかえし部77とローラ75との間に、上下方向の所定長の隙間がある。すなわち、係止機構70は、中央ラッチ50による固定が可能な位置(図9図11の状態)から蓋体30が所定長だけ開くことを許容する(図12図14)。このため、サブケース20への収納物が多すぎて蓋部30が完全には閉まらない場合でも係止機構70による係止を有効化でき、使い勝手が良い。また、図9図11の状態におけるかえし部77とローラ75との間の所定長の隙間は、係止機構70による係止を有効化させやすくする意味があり、かかりやすいことが重要な簡易ロックのメリットが高められる。仮に隙間が無いと、蓋部30を完全に閉めないと係止機構70による係止が有効にならないが、本実施の形態ではそうした問題がない。
【0057】
(9) 電動工具収納ケース1は、起立姿勢で収納棚90に収納された電動工具収納ケース1を側方に引き出すための操作部として、リブ13、14、35、38を有する。よって、リブ13、14、35、38の少なくともいずれかに指を引っ掛けて、電動工具収納ケース1を容易に収納棚90から側方(図8の紙面手前側)に引き出すことができ、使い勝手が良い。なお、リブ13、14、35、38は、側方から指を引っ掛けることが可能な操作部であるので、起立姿勢以外の姿勢で収納棚に収納された電動工具収納ケース1を引き出すことにも使用可能である。
【0058】
(10) リブ13、35は起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも上側に位置するため、収納棚90の下段に収納された電動工具収納ケース1を引き出すのに好適に利用できる。リブ14、38は起立姿勢の電動工具収納ケース1の上下方向の中心よりも下側に位置するため、収納棚90の上段に収納された電動工具収納ケース1を引き出すのに好適に利用できる。すなわち、電動工具収納ケース1は、収納棚90の上段、下段のいずれに置かれても収納棚90から側方に引き出しやすく、使い勝手が良い。
【0059】
(11) リブ13は、側部ラッチ40を保護するためにメインケース10の上下方向の全長に渡って設けられていたリブの下部を切り欠いたのであり、メインケース10の収納可能容量を減少させない。また、リブ14は、第1のヒンジ部65の補強用のリブを下方に延長したものであり、メインケース10の収納可能容量を減少させない。また、リブ35、38を形成するための凹部33、37は、蓋部30の4つの角部に設けられ、かつ指入れが可能な最小限の大きさにできるため、サブケース20の収納可能容量の減少を抑制できる。すなわち、電動工具収納ケース1は、収納棚90から側方に引き出しやすい構造でありながら、収納可能容量の減少を抑制可能である。
【0060】
(12) リブ35、38を形成するための凹部33、37が蓋部30の4つの角部に設けられるため、蓋部30とサブケース20との間にパッキンを設けて防水構造とする際に邪魔になりにくい。
【0061】
(13) リブ13、14、35、38の各々は、電動工具収納ケース1の左部と右部の両方に設けられるため、収納棚90に収納された電動工具収納ケース1の左側面と右側面のどちらが手前側にあっても、電動工具収納ケース1を容易に収納棚90から側方に引き出すことができ、使い勝手が良い。
【0062】
本実施の形態の変形例として、リブ13、14、35、38のいずれかを省略してもよい。引出し用の操作部としての4種類のリブがあると便利であるが、例えばリブ35、38の組合せのみ、あるいはリブ13、14の組合せのみであっても、一定の利便性を確保委できる。あるいは、リブ13、14、35、38のいずれか1種類のみでも、収納棚90から側方に引き出しやすい構造としつつ収納可能容量の減少を抑制できるという効果は得られる。
【0063】
(実施の形態2)
図28図30は、本発明の実施の形態2に係る電動工具収納ケース2に関する。電動工具収納ケース2は、実施の形態1の電動工具収納ケース1と比較して、収納棚90からの引出に係る構成において相違する。以下、相違点を中心に説明する。
【0064】
電動工具収納ケース2は、蓋部130を有する。蓋部130は、蓋部30に対応する部材である。蓋部130は、左右両端部にそれぞれ低背部131を有し、低背部131にリブ132を有する。低背部131は、蓋部130の上面が一段低くなった部分である。低背部131の側壁部とリブ132の間が指入れ用の凹溝となる。リブ132は、低背部131の前端部と後端部を除いた範囲に設けられる。このため、リブ132の上方又は下方からリブ132の裏側に指を引っ掛けて電動工具収納ケース2を収納棚90から引き出せる。
【0065】
本実施の形態では、低背部131の分だけ収納可能容量が減少するものの、収納棚90から側方に引き出しやすいという効果は得られる。
【0066】
(実施の形態3)
図31(A)は、本発明の実施の形態3に係る電動工具収納ケース3の右半分の正面図である。図31(B)は、図31(A)のP部拡大図である。図31(C)は、電動工具収納ケース3の要部斜視図である。電動工具収納ケース3は、実施の形態2のリブ132がリブ232に替わったものである。リブ232は、上端部に返し形状部233を有し、指を引っ掛けやすくなっている。
【0067】
(実施の形態4)
図32(A)は、本発明の実施の形態4に係る電動工具収納ケース4の側面図である。図32(B)は、電動工具収納ケース4の要部斜視図である。電動工具収納ケース4は、実施の形態2のリブ132がリブ332に替わったものである。リブ332は、低背部131の前後に分けて設けられ、低背部131の前後方向の中間部には存在しない。このため、下側のリブ332の上方から下側のリブ332の裏側に指を引っ掛けて、又は上側のリブ332の下方から上側のリブ332の裏側に指を引っ掛けて、電動工具収納ケース4を収納棚90から引き出せる。
【0068】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0069】
1~4…電動工具収納ケース、10…メインケース、11…底面部、11a…スタッキング用凸部、12…外壁部、13、14…リブ(凸部)、15…接地部、16…ハンドルベース部、20…サブケース(収納部)、22…外壁部、30…蓋体(蓋部)、31…上面部、31a…スタッキング用凹部、32…外壁部、33…凹部、34…支持凸部、35…リブ(凸部)、36…係止部、37…凹部、38、39…リブ(凸部)、40…側部ラッチ(第1のロック部材)、41…ラッチ操作部、42…ラッチ本体部、50…中央ラッチ(第2のロック部材)、51…ラッチ操作部、52…ラッチ本体部、60…ハンドル、65…第1のヒンジ部(第1の回動支持部)、67…第2のヒンジ部(第2の回動支持部)、70…係止機構、71…操作部、72…アーム基部、73…アーム、74…被係止部、75…ローラ(係止部)、76…傾斜部、77…かえし部、90…収納棚。
図1
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