(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019087
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】時計部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240201BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20240201BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20240201BHJP
G04B 15/14 20060101ALI20240201BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G04B17/06
G04B37/22 B
G04B19/02 Z
G04B15/14
G04B45/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023121499
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】22187582.6
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラム, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン, ヴァレンタン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品の機能性を損傷することなく特に魅力的な視覚効果を達成することを可能にする、時計部品の、特に時計ムーブメント部品の、マーキング及びまたは装飾用の解決策を探すことである。
【解決手段】上面である表面11を含む、時計部品1の製造方法であって、1つの空洞7を形成するために、ブランクの表面を彫刻するステップと、空洞内と空洞の外の両方で、表面上に、金属または金属合金層を堆積するステップと、素材の層8を形成するために、空洞内に、金属または金属合金層上に、素材を堆積するステップであって、当該素材は、金属または金属合金層の金属または金属合金と異なり、金属または金属合金層は、素材の層の接着層を形成するステップ、のステップを少なくとも含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に上面である表面(11)を含む、少なくとも一部分を含む、時計部品(1)の製造方法であって、
側壁(18)と底部(17)とを含む少なくとも1つの空洞(7)を形成するために、前記時計部品(1)または前記時計部品(1)のブランク(1a)の当該表面(11)を彫刻する(E3)ステップと、
前記表面(11)上に、前記少なくとも1つの空洞(7)内と前記少なくとも1つの空洞(7)の外の両方であって、前記側壁(18)にわたり延長しないよう、または前記側壁(18)の全高さにわたり延長しないよう、金属または金属合金層(22)を堆積する(E7)ステップと、
素材の層(8)を形成するために、少なくとも前記少なくとも1つの空洞(7)内で、前記金属または金属合金層(22)上に、素材を堆積する(E4)ステップであって、当該素材は、前記金属または金属合金層(22)の前記金属または前記金属合金とは異なり、前記金属または金属合金層(22)は、前記素材の層(8)の接着層を形成し、前記素材の層(8)の前記厚さは、前記金属または金属合金層(22)の前記厚さよりも大きい、ステップと、
前記少なくとも1つの空洞(7)内に素材を堆積する(E4)ことからなる前記ステップに続き、とりわけ選択的化学腐食により、前記少なくとも1つの空洞(7)の外に堆積された前記金属または金属合金層(22)を除去する(E5)ステップ、
を少なくとも含む、
時計部品(1)の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの空洞(7)の前記深さは、10μmより小さい、または6μmより小さい、そして任意で3μmより大きい、
請求項1に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの空洞(7)の前記深さは、10μmと100μmの間、または15μmと80μmの間、または20μmと50μmの間である、
請求項1に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項4】
前記金属または金属合金層(22)の前記金属または金属合金は、アルミニウム、またはクロム、またはチタン、または、アルミニウム、クロム、またはチタンの合金製である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空洞(7)に素材を堆積する(E4)ことからなる前記ステップは、金属または金属合金の前記堆積、または塗料、ラッカー、ワニス、複合素材、とりわけ発光性複合素材の前記堆積を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項6】
前記表面(11)を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップは、底部(17)と前記底部(17)に直角な側壁(18)を含む少なくとも1つの空洞を形成する、及びまたは金属または金属合金層(22)を堆積する(E7)ことからなる前記ステップは、前記金属または金属合金層(22)が、前記側壁(18)の全高さにわたり延長しない、とりわけ前記側壁の上部に延長しない、または前記少なくとも1つの空洞の前記底部(17)のみにわたり延長する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項7】
金属または金属層(22)を堆積する(E7)ことからなる前記ステップ、及びまたは前記少なくとも1つの空洞(7)、とりわけ前記底部(17)に素材を堆積する(E4)ことからなる前記ステップは、方向性をもつ堆積、とりわけ物理蒸着(PVD)、とりわけ電子ビーム蒸着(EBE)により実施される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項8】
前記表面(11)を含む前記部分は、微細機械加工可能素材、とりわけ単結晶シリコン, 多結晶シリコン, 非晶質シリコン, 非晶質二酸化ケイ素, ドープシリコン, 炭化ケイ素といったシリコンを全体または部分的に、またはガラス、セラミック、石英、ルビー、ダイヤモンドを含む、または金属または金属合金、とりわけニッケルまたはニッケルリンといった少なくとも部分的に非晶質の金属合金、または鋼、チタン、金の合金、またはプラチノイド合金を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項9】
前記表面(11)を含む前記部分は、シリコンの形状を取り、当該方法は、前記表面(11)を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップの実施後に行われる、前記少なくとも1つの空洞(7)内と前記少なくとも1つの空洞(7)の外の両方に、前記表面(11)上に二酸化ケイ素の層(13)を形成する、前記シリコンの酸化(E8)ステップを含む、及びまたは当該方法は、前記表面(11)に金属または金属合金層(22)を堆積する(E7)ことからなる前記ステップの実施前に行われる、前記少なくとも1つの空洞(7)内と前記少なくとも1つの空洞(7)の外の両方に、前記表面(11)上に二酸化ケイ素の層(13)を形成する、前記シリコンの酸化(E8)ステップを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項10】
前記時計部品(1)のまたは前記時計部品(1)のブランク(1a)の前記部分の前記表面を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップは、フォトリソグラフィにより得られたマスクを介した深堀り反応性イオンエッチングの実施を含む、及びまたはとりわけフェムト秒レーザによる、レーザ彫刻の実施を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項11】
前記部分の前記表面を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップは、前記時計部品(1) の輪郭を彫刻することからなるステップと同一作業で実施される、及びまたは前記部分の前記表面を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップは、前記時計部品(1)の輪郭を彫刻することからなるステップの前に実施される、及びまたは前記部分の前記表面を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップは、第一マスクから少なくとも1つの空洞(7)を彫刻する(E3)ことからなる前記ステップを実施するため、前記第一マスクを基板(10a)上に、とりわけ前記基板(10a)の前記表面(11)上に位置決めするステップと、第二マスクから前記時計部品(1)のブランク(1a)の輪郭をエッチングするため、前記基板(10a)上の、とりわけ前記基板(10a)の他の表面上の、前記第一マスクとは別個の第二マスクの位置決めのステップとを含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項12】
前記方法は、一方では金属または金属合金層(22)を堆積する(E7)ことからなるステップと、他方では前記金属または金属合金層(22)上に素材を堆積する(E4)ことからなるステップとの間に中間ステップを含み、前記中間層は、前記金属または金属合金層(22)上にマスク(24)を堆積することを含み、前記マスク(24)は、前記少なくとも1つの空洞(7)上に重ね合わされ、前記少なくとも1つの空洞を被覆しないよう前記空洞の前記表面積以上の表面積を有する、少なくとも1つの開口を含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項13】
前記時計部品は、レバー、歯車、特に脱進機の歯車、ぜんまい、特にひげぜんまい、アンクル、てん輪といったムーブメント部品、またはベゼル、特にベゼルまたはベゼルディスクまたはフランジといった、外部部品である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計部品(1)の製造方法。
【請求項14】
特に上面である表面(11)を含む、少なくとも1つの第一部分を含む時計部品であって、
前記時計部品は、前記表面(11)内に配置され、側壁(18)と底部(17)とを含む、少なくとも1つの空洞(7)を含み、前記時計部品は、前記空洞の前記底部(17)上に配置され、前記側壁(18)にわたり延長しないまたは前記側壁(18)の全高さにわたり延長しない金属または金属合金層(22)と、少なくとも前記少なくとも1つの空洞(7)内において前記金属または金属合金層(22)上に配置される素材の層(8)を含み、前記素材は、前記金属または金属合金層(22)の前記金属または前記金属合金と異なり、前記金属または金属合金層(22)は、前記金属の層(8)の接着機能を果たし、前記素材の層(8)の前記厚さは前記金属または金属合金層(22)の厚さよりも大きい、時計部品。
【請求項15】
前記金属または金属合金層(22)の前記厚さは、100nm以下である、及びまたは素材の層(8)の前記厚さは100nmから200nmの間である、及びまたは前記少なくとも1つの空洞(7)の前記深さは10μmより小さい、または6μmより小さく、任意で3μmより大きい、及びまたは前記素材の層(8)の前記厚さと前記金属または金属合金層(22)の前記厚さの合計は、前記空洞の前記深さより厳密に小さい、及びまたは前記少なくとも1つの空洞の範囲は、100μmより大きい、または150μmより大きい、または200μmより大きい、または250μmより大きい、
請求項14に記載の時計部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品の製造方法に関する。本発明はまた、当該製造方法で得られた時計部品に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の外部部品について、様々な装飾及びまたはマーキング方法が実施される。これら外部部品に対して、時計ムーブメント部品は、多くの場合、より小さな寸法であり、いかなる場合でも劣化してはならない、非常に精密な外形の機能的パーツを含む。このため、例えば表示または装飾の目的で、このような時計ムーブメント部品上にマーキングを形成することは非常に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3632839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、本発明の目的は、とりわけ、部品の機能性を損傷することなく特に魅力的な視覚効果を達成することを可能にする、時計部品の、特に時計ムーブメント部品の、マーキング及びまたは装飾用の解決策を探すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特に上面である表面を含む、少なくとも一部分を含む、時計部品の製造方法であって、
少なくとも1つの空洞を形成するために、前記時計部品または前記時計部品のブランクの当該表面を彫刻するステップと、
前記表面上に、前記少なくとも1つの空洞内と前記少なくとも1つの空洞の外の両方に、金属または金属合金層を堆積するステップと、
素材の層を形成するために、少なくとも前記少なくとも1つの空洞内で、前記金属または金属合金層上に、素材を堆積するステップであって、当該素材は、前記金属または金属合金層の前記金属または前記金属合金と異なり、前記金属または金属合金層は、前記素材の層の接着層を形成するステップ、
のステップを少なくとも含む、
時計部品の製造方法に依拠する。
【0006】
本発明は、より具体的には請求項により定義される。
【0007】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付する図面に関して非限定的な態様で示される、特定の実施形態についての以下の記載においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1c】
図1cは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1d】
図1dは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1e】
図1eは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1f】
図1fは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図1g】
図1gは、本発明の実施形態にかかる時計ムーブメントのひげぜんまいの製造方法の、連続するステップを図示する。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態にかかる時計部品の製造方法の、ステップとサブステップを模式的に図示するフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態にかかる製造方法により製造されたひげぜんまいの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ムーブメント部品の機能的性能に影響を与えない、見ることができる彫刻を得るために、少なくとも1つの彫刻ステップと、得られた彫刻の着色の1つのステップとを有利に組み合わせる、時計部品の製造方法を実施する。
【0010】
特許明細書の解釈を単純にするため、同じ機能を示すために、様々な実施形態とその変形例において、同じ参照が用いられる。本発明の一実施形態にかかる製造方法は、例えばひげぜんまいであってもよい、時計ムーブメント部品の製造の観点で示される。
【0011】
図1aから1gは、より具体的には、時計部品の製造方法の一実施形態にかかる、製造の様々なステップ中の、時計部品1、とりわけ時計ムーブメント部品の、または時計部品1のブランク1aの、断面図を示す。本発明の製造方法は、より具体的には、表面の彫刻方法に関する、特定の製造段階に対処する。有利には、とりわけ装飾目的での、時計部品1の可視面または上面の彫刻方法である。代替的に、とりわけ識別またはマーキング目的での、非可視面または底面の彫刻方法に関してもよい。
【0012】
図1aから1gで図示する実施形態によれば、方法は、
図1aの断面に特に図示される、少なくとも時計部品1の一部または時計部品1のブランク1aの一部を使用可能にするE1からなる第一ステップを含む。当該有利な実施形態において、いくつかのブランク1aを同じ支持部または基板10aにリンクさせ、以下に説明する方法であり、
図2のフロー図で要約されるステップに同時に曝すことができることを注記する。
【0013】
このため、時計部品ブランク1aは、好ましくは微細機械加工可能素材の形状を取る、または微細機械加工可能素材に基づく、基板10aから、微細機械加工操作により製造可能である。以下の記載において、ブランクという用語は、時計部品の製造方法におけるあらゆる中間要素を示すために、幅広い意味で用いられることを注記する。このため、ブランクは、準備され彫刻される前の単なる基板であってもよく、例えば将来の時計部品の輪郭の全部または一部を定義するために、既に部分的に彫刻された基板であってもよい。説明の単純化のため、ブランク1aまたは時計部品1は、時計部品1が製造中であったとしても、同じ部品を示すために代替的に用いられる。
【0014】
本発明が実施されたブランク1aの部分は、以下で詳細に説明する、表面11上に可視パターンまたは表示を形成するために、本発明に係る方法により具体的に処理される表面11を含む。
【0015】
基板10aは、微細機械加工可能素材製であってもよく、微細機械加工可能素材を基にしてもよい。基板は、あらゆる形態で、シリコンを全部または部分的に含んでもよい。このため、基板は、その方向に関わらず単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、非晶質二酸化ケイ素、ドープの種類とレベルに関わらずドープシリコン、を含んでもよい。基板は、とりわけ、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板の形状をとってもよい。代替的に、基板は、石英、ダイヤモンド、ガラス、セラミック、ルビー、サファイア、または炭化ケイ素を含んでもよい。代替的に、基板は、金属または金属合金、とりわけ少なくとも部分的に非晶質の金属合金製であってもよい。例えば、基板は、ニッケルまたはニッケルリン、または鋼、チタン、金の合金、またはプラチノイド合金を含んでもよい。
【0016】
図1bは、少なくとも1つの空洞7を形成するために、時計部品1または時計部品1のブランク1aの表面11を彫刻するE3からなる、方法の第二ステップを図示する。好ましい実施形態によれば、彫刻は、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)技術により実施される。当該技術は、樹脂層により被覆された表面11の領域に影響を与えることなく、マスクを形成する樹脂層の開口に倣って、垂直または実質的に垂直な側壁18を有する空洞7を形成することを可能にする。より具体的には、彫刻ステップは、少なくとも1つの空洞7を形成するため、シリコンをエッチングする。各空洞7は、部品の表面11に実質的に平行な、底部17を形成する表面により区切られる、実質的に長方形状の断面を有する。空洞の深さは、表面11に直角に測定され、表面11の平面と、空洞の底部17の平面との間のそれぞれの距離に対応する。より一般的には、少なくとも1つの空洞7は、有利にはブランク1aの表面11の残りに対して不連続を形成する、側壁18を有する。
【0017】
有利には、少なくとも1つのまたは全ての空洞7の深さは、10μmより小さい。更に有利には、当該深さは、好みにより、任意の二酸化ケイ素層13の厚さ以上である。
【0018】
当該好ましい実施形態によれば、深堀り反応性イオンエッチングにより彫刻するE3からなるステップは、以下に説明するように、底部17上にその後堆積される素材の層の露出を暴露することを可能にするため、特に低い粗さによってとりわけ特徴付けられる表面テクスチャの底部17を、とりわけ50nmより小さい、好みにより20nm程度の、または20nmより小さい粗さRa、及びまたは100nmより小さい、好みにより80nm程度の、または80nmより小さい粗さSaを有する底部17をも、得ることを可能にする。
【0019】
また、時計部品1の表面11を彫刻するE3からなる当該ステップは、有利には、当該時計部品1の輪郭を彫刻することからなるステップと同一作業内で実施される。変形例として、当該時計部品1の部分の表面を彫刻するE3からなるステップは、当該時計部品1の輪郭を彫刻することからなるステップ前に実施されてもよい。これらの場合、方法は、第一マスクから、とりわけブラインド彫刻により、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)技術を用いて、少なくとも1つの空洞7を彫刻するE3からなるステップを実施するため、図示しない第一マスクを、基板10a上に、とりわけ当該基板10aの当該表面11上に、位置決めするステップと、第二マスクから、時計部品1のブランク1aの輪郭を彫刻するため、当該基板10a上に、とりわけ当該基板10aの他の表面上に、図示しない第二マスクを位置決めするステップと、を含んでもよい。換言すれば、基板から部品を切断するために用いられる彫刻と、本発明に係る少なくとも1つの空洞を形成する彫刻とは、同一の作業内で、または部分的に同一の作業内で、実施可能である。これら2つの彫刻は、異なるマスクから実施される。
【0020】
このため、とりわけシリコン、石英、ガラス、またはダイヤモンドを含む部品に、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)を使用することが有利である。
【0021】
変形例として、彫刻は、とりわけフェムト秒レーザによる、レーザエッチングの実施を含んでもよい。
【0022】
シリコンを全部または部分的に含む基板10aの使用の実施形態において、方法はその後、ブランク1aの表面を酸化するE8からなる任意のステップを含む。
図1cに示すように、ブランク1aの表面11は、その後、二酸化ケイ素(SiO
2)の層13を含む。当該二酸化ケイ素の層13は、とりわけ空洞7の底部17を少なくとも含む、上面11上に形成される。換言すれば、当該二酸化ケイ素の層13は、とりわけ、上面11上と、空洞の底部17上に、形成される。
【0023】
その後、方法は、少なくとも1つの空洞7、より具体的には少なくとも1つの空洞7の底部17上と、少なくとも1つの空洞7の外側の両方に、ブランク1aの表面11上に金属または金属合金層22を堆積するE7からなるステップを含む。
【0024】
図1aから1gで図示する当該実施形態によれば、当該金属または金属合金層22は、クロムの層である。変形例として、金属または金属合金は、アルミニウムまたはチタン製、またはアルミニウム、クロム、またはチタンの合金製であってもよい。
【0025】
金属または金属合金層22を堆積するE7からなる当該ステップは、方向性をもつ堆積により、とりわけ物理蒸着(PVD)、とりわけ電子ビーム蒸着(EBE)による堆積により実施されてもよい。このため、有利には、金属または金属合金層22は、ここでは底部17に直角または実質的に直角な、空洞7の側壁18上へのあらゆる素材の堆積を回避して、堆積される。当該ステップの結果は、
図1dに図示される。変形例として、金属または金属合金層22は、側壁18の無視できる部分にのみ、とりわけ底部17から延長する下部、例えば空洞7外の表面11との境界に達しない、1μmより少ない距離にわたり底部17から延長する下部にのみ延長しても良い。
【0026】
また、以下で詳細に説明する当該金属または金属合金層22の犠牲層機能は、当該層の小さな厚みについて、とりわけ100nm以下の厚みにおいて、最適であることが発見された。
【0027】
方法は、その後、部品の表面上へ、より具体的には金属または金属合金層22上へ、少なくとも、少なくとも1つの空洞7内そして場合により空洞7外部の表面11上において、素材を堆積するE4からなる第四ステップを実施する。
図1aから1gで図示する実施形態によれば、素材は、金属または金属合金であり、当該堆積ステップは、
図1eに図示するように、少なくとも1つの金属または金属合金の層8を形成する。これは、より具体的には、
図1eの、金の層8と同一である。
【0028】
好みにより、素材は、金属または金属合金層22と両立不可能な場合を除き、Au、Ag、Cr、CrN、Ni、Pt、TiN、ZrN、Pdまたはそれらの合金を含む群の一部を形成する金属である。他の変形例において、当該素材は、以下に特定するように、金属でなくともよい。
【0029】
当該少なくとも1つの素材の層8の厚さは、数ナノメートル程度であってよい。厚さは、好ましくは、少なくとも5nm、または少なくとも10nm、または少なくとも50nm、または少なくとも100nmである。より具体的には、厚さは、好ましくは5nmと1000nmの間、または100nmと1000nmの間である。以下に説明するように、100nmから200nmの間の厚さが、好適な解決策を形成する。
【0030】
素材の堆積E4のステップは、単一且つ唯一の層の堆積を含んでもよい。代替的に、当該堆積のステップは、2以上の別個の層の、連続した堆積を含んでもよい。
【0031】
一実施形態によれば、素材堆積ステップE4は、方向性をもつ堆積、とりわけ物理蒸着(頭文字PVD)、とりわけ電子ビーム蒸着(EBE)により実施される。より一般的には、当該堆積は、上述の物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)といった、気相堆積であってもよい。
【0032】
任意で、素材堆積ステップE4は、以下に説明する金属または金属合金層22の除去E5の後続のステップを促進するために、空洞または複数の空洞7周りの金属または金属合金層22上への素材の層8の堆積により影響を受ける表面11の範囲を減少させるために、シリコン製のマスク24といった、例えば剛性マスクまたはステンシルの、マスク24の適用前に第一サブステップを含んでもよい。第一変形例によれば、マスク24のパターンは、空洞7内のみに素材を堆積するよう、空洞7のパターンに正確に対応することができる。しかしながら、第二の、より単純な変形例によれば、マスク24のパターンは、表面11上の空洞7により形成されたパターンと正確に合致する必要はなく、
図1eに図示するように、空洞周りに部品の表面の狭い表面積を見せることができる。後者の場合、素材の層8は、空洞7の外の、部品の表面上にもまた堆積される。換言すれば、全ての場合において、マスク24は、少なくとも1つの空洞7を被覆しないように、空洞の表面積以上の表面積の、少なくとも1つの空洞7上に重ね合わされる少なくとも1つの開口を含む。このため、当該実施形態において、マスク24は、その上に素材堆積が実施される、検討する部品の部分の全表面積11に対して減少された、表面積の範囲を定める。素材堆積ステップE4はまた、
図1fで図示する結果を達成するために、素材の堆積の終了後の、マスク24の除去の、最終の、第二サブステップを含む。
【0033】
図1fにおいて、部品の表面上に堆積された金属または金属合金層22は、当該表面を、素材の層8から分離することを注記する。当該金属または金属合金層22は、このため、素材の堆積に対する分離の第一機能を発揮する。
【0034】
方法は、その後、当該少なくとも1つの空洞外に堆積された金属または金属合金層22を、とりわけ選択的化学腐食により、除去するE5からなるステップを含む。実際、当該ステップは、選択的化学腐食を通じて、特に酸浴を介して、クロムの層の剥離を実施可能である。当該腐食は、時計部品の表面11にダメージを与えることなく、とりわけ本実施形態によれば二酸化ケイ素の層にダメージを与えることなく、金属または金属合金層22を除去するものである。同時に、金属または金属合金層22の溶解は、空洞または複数の空洞7の外に存在する素材の層8の除去を引き起こす。当該ステップにおいて、とりわけ部品の表面11の全体にわたり、素材の層8が金属または金属合金層22を完全には被覆しないという事実は、当該ステップを実施するのに必要な時間を最小化することができる。最終的な結果は、
図1gに図示される。このように、金属または金属合金層22は、空洞外に堆積された素材の層の簡単な除去を可能にする、犠牲層機能を発揮し、望ましい最終結果は、当該素材を空洞内のみで保存するというものである。
【0035】
有利には、空洞7内に存在する、金属または金属合金層22上への素材の層8の完全な被覆は、これら層が、除去ステップE5によって影響を受けないことを可能にする。このため、これら2つの層22、8は、空洞7内での存在を維持する。金属または金属合金層22は、有利には、部品1への素材の層8の接着を改善することにより、空洞内の素材の層8の第二接着層機能を充足することを注記する。
【0036】
更に、上述の除去ステップを最適化するため、少なくとも1つの空洞7において、金属または金属合金層22の不連続があることが非常に有利である。このため、少なくとも1つの空洞の側壁18の全部または一部に、とりわけ側壁18の上部に、金属または金属合金層22が堆積されないことが有利である。換言すれば、金属または金属合金層22は、空洞7の底部17のみにわたり延長する、または側壁18にわたり延長しない、または側壁18の無視できる高さにわたり延長する、とりわけ側壁の上部にわたり延長しない。この結果を簡単にするため、少なくとも1つの空洞7が、それ自身、表面11と空洞7の側壁18との間の境界において、不連続を有することが有利である。これは、側壁18が垂直または実質的に垂直な場合に顕著である。加えて、素材の層8の厚さは、空洞7内の、とりわけ少なくとも空洞7の底部17において、金属または金属合金層22を完全に被覆し、当該除去ステップにおいて実施される化学腐食中に酸の通過を可能とする穴を有しないことを可能にするのに十分な厚さである。このため、好ましい実施形態によれば、素材の層8の厚さは、少なくとも100nm、とりわけ100から200nmの間である。素材の層8の厚さは、好みにより、金属または金属合金層22の厚さよりも大きいことを注記する。より一般的には、上述の全部または一部の特徴を組み合わせることによる、金属または金属合金層22を少なくとも1つの空洞7内にアクセス不能にするあらゆる構成は、少なくとも1つの空洞内の2つの重ね合わされた層22、8を除去しないことを保証するために非常に有利である。
【0037】
最後に、本方法は、ブランク1aを基板10aから引き離すE6からなる任意ステップを含んでもよい。当該ステップの実施を簡単にするため、部品ブランク1aは、とりわけ特許文献1に記載のように、部分的に彫刻された破損区域を含んでもよい。
【0038】
もちろん、金属または金属合金層22の組成は、選択した素材の層8の組成に対してケースバイケースで、例えば選択された素材及びまたはその厚さに応じて、適合される。金属または金属合金層22は、素材の層8が金属である場合、素材の層8の組成とは異なる組成を有する。
【0039】
変形実施形態によれば、素材を堆積するE4からなるステップは、空洞または複数の空洞7の底部17上への、吹き付け技術またはブラシの使用といった当業者に既知のあらゆる技術により塗布される塗料の層である素材の層8の塗布のステップからなる。代替的に、ラッカー、ワニス、または複合素材、特に発光性複合素材の層を塗布することもできる。
【0040】
当該素材の層8の厚さは、その中に層8が堆積される空洞7の深さに合致してもよい。この特定の場合、当該素材の層8の厚さは、好みにより空洞7の深さより非常にわずかに少なくてよい。
【0041】
全ての実施形態とその変形例において、素材堆積ステップE4を、とりわけ上述の実施形態にかかる素材の層8の手動での塗布の観点において、ブランク1aを基板10aから引き離すE6からなるステップの実施後に行うことが可能であることを注記する。
【0042】
更に、全ての実施形態において、全てのステップは、基板にリンクされていない、部品ブランク1a自身に実施されてもよい。全てのステップはまた、時計部品の製造の異なるステップにおいて、即ち当該時計部品のブランク上に、または製造中に、または最終または準最終時計部品上に直接、実施されてもよい。
【0043】
このような方法は、らせん巻きの彫刻前に本発明の空洞または複数の空洞を製造することからなる変形例を使用することにより、特に、ひげぜんまいの製造に適しているが、そうでない場合、特にステップE3が、深堀り反応性イオンエッチングのステップである場合に、樹脂がらせん巻きの間を流れるため、本発明の空洞を彫刻するために巻きに液体樹脂を位置させることは実務上困難である。
【0044】
最後に、本発明は、時計部品ブランクまたは時計部品の表面、特に上面、を含む少なくとも一部分に適用される以下の2つの必須ステップの組み合わせを通じて、求める目的を達成するように見える。
- 少なくとも1つの空洞を形成するために、ブランクのまたは時計部品の表面を彫刻するE3、
- 素材の層8を形成するために、当該少なくとも1つの空洞内に素材を堆積するE4、
であって、犠牲層及びまたは接着層としての役割を果たす中間金属または金属合金層22が部品の表面11と素材の層8との間に挿入される。
【0045】
全ての実施形態とその変形例において、少なくとも1つの空洞の、そして好ましくは全ての空洞の深さは、有利には10μmより小さい、または6μmより小さい。加えて当該深さは、任意で3μmより大きい。このため、当該深さは3μmと10μmの間、または3μmと6μmの間である。驚くべきことに、裸眼では、ひげぜんまいのような時計ムーブメント部品といった小さいサイズの時計部品について、少なくとも1つの空洞7と表面11との間のコントラストは、当該少なくとも1つの空洞7の深さが小さいときに一層際立つことである。これは、素材の層8が金属または金属合金であり、部品がとりわけ全体または部分的にシリコンを含む場合にとりわけ際立つ。
【0046】
更に、少なくとも1つの空洞、そして好ましくは全ての空洞の深さもまた、部品がシリコンを単独でまたは部分的に含む場合に、当該表面上に存在する可能性のある二酸化ケイ素13のコーティングの厚さ以上であってよい。当該二酸化ケイ素のコーティングは、0.1μmから5μmの間の厚さを有してもよい。
【0047】
変形例として、部品1が、例えば特にセラミック製のベゼルディスクといった外部部品である場合に特に適している変形例として、少なくとも1つの空洞、そして好ましくは全ての空洞の深さは、10μmと100μmの間、または15μmと80μm、または20μmと50μmの間である。
【0048】
時計ムーブメント部品の顕著な場合として、少なくとも1つの空洞、好ましくは全ての空洞は、少なくとも100μmの、または少なくとも150μmの、または少なくとも200μmの、または少なくとも250μmの長さを、少なくとも1方向に有することができる。当該長さは、800μm以下、または600μm以下、または500μm以下、または400μm以下であってもよい。
【0049】
少なくとも1つの空洞に堆積された素材は、金属または金属合金であってもよい。変形例として、素材は、特に中間接着金属層を任意で有する、塗料、ラッカー、ワニス、複合素材、とりわけ発光性複合素材であってもよい。
【0050】
実施形態とその変形例において、少なくとも1つの空洞に堆積された素材は、有利には、空洞の深さよりも厳密に少ない厚さを有する。堆積厚さは、100nm以上であってもよい。厚さは、100nmから1000nmの間、有利には100nmと200nmの間であってもよい。特に、厚さは、空洞の深さと同一の、または実質的に同一の厚さを有してもよい。加えて、素材の層8の厚さと金属または金属合金層22の厚さの合計は、空洞の深さよりも厳密に少ないまたは空洞の深さと実質的に等しくてもよい。
【0051】
本発明は、微細機械加工可能素材製の、即ち微細機械加工技術により得られた、特に写真平版術を伴い、またはレーザ加工を伴い得られた、あらゆる時計ムーブメント部品に特に良好に適用される。このため、このような時計ムーブメント部品、特にその一般形態は、例えば、少なくとも部分的に、深堀り反応性イオンエッチング(頭文字DRIE)ステップにより得ることができる。具体的には、このような時計ムーブメント部品、特にその一般形態は、例えば、少なくとも部分的に、UV-Liga(フォトリソグラフィ、電解めっき、形成)技術により、得られてもよい。
【0052】
本発明にかかる時計部品は、全部または部分的に、あらゆる形状のシリコンを含んでもよい。このため、時計部品は、その方向に関わらず単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、非晶質二酸化ケイ素、ドープの種類とレベルに関わらずドープシリコン、を含んでもよい。時計部品は、とりわけ、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板から製造されてもよい。
【0053】
本発明にかかる時計部品はまた、炭化ケイ素、ガラス、セラミック、石英、ルビー、またはサファイアを含んでもよい。代替的に、時計部品は、金属または金属合金、とりわけ少なくとも部分的に非晶質の金属合金製であってもよい。例えば、部品は、ニッケルまたはニッケルリン、または鋼、チタン、金の合金、またはプラチノイド合金を含んでもよい。
【0054】
もちろん、本発明は説明した実施形態に限定されず、例えば実施形態及びまたはその変形例を組み合わせることにより、他の実施形態を想起することも可能である。具体的には、彫刻ステップE3は、フォトリソグラフィにより得られたマスクを利用することによる深堀り反応性イオンエッチングと、とりわけフェムト秒レーザによるレーザエッチングとの実施を組み合わせることができる。
【0055】
このため、本発明は、犠牲層または金属合金層を介して、部品の表面上の彫刻と、素材による彫刻の部分的な、または完全な、充填とを有利に組み合わせることにより、求める目的を達成するように見える。当該組み合わせは、判読可能なマーキングを、具体的には見ることができる魅力的なマーキングを、小さな表面上であっても、時計ムーブメント部品の機能性に影響を与えることなく、形成することを可能にする。有利には、当該表面は、上面または可視表面、とりわけ部品が時計内に、具体的には時計ムーブメント内に組付けられると可視となる表面である。代替的に、当該表面は、底面または非可視表面である。
【0056】
マーキングは、装飾目的で設けられてもよい。代替的にまたは加えて、マーキングは、識別目的で設けられてもよい。レーザを、具体的にはフェムト秒レーザを必要とする本発明にかかる方法の変形例は、時計部品、具体的には時計ムーブメント部品、とりわけ特定のひげぜんまい上のマーキングを個別化するために特に有利である。マーキングは、例えば、シリアルナンバーや測定結果であってもよい。
【0057】
本発明はまた、上述の製造方法により得られた時計部品に関する。部品は、レバー、歯車、例えば脱進機の歯車、アンクル、てん輪またはひげぜんまい、とりわけ発振器ひげぜんまいといった、時計ムーブメント部品であってもよい。変形例として、時計部品は、ベゼルまたはベゼルディスク、またはフランジといった、外部部品であってもよい。
【0058】
とりわけ、特定の実施形態によれば、部品は、表面を、特に上面または可視表面を含むリンク部を形成する第一部分と、ばねを形成する渦巻に巻かれた少なくとも1つのブレードを含む、第一部分より剛性が低い第二部分とを含む、微細機械加工素材製のひげぜんまいといった時計ムーブメント部品であってもよく、第一部分の表面は、本発明にかかる素材が堆積される少なくとも1つの空洞を含む。より一般的には、時計部品、または本発明の影響を受ける表面を含む少なくとも一部分は、有利には、とりわけシリコンベースの微細機械加工可能素材に基づく、すなわち少なくとも50重量%の微細機械加工可能素材を含む。
【0059】
このように、
図3は、前述の実施形態の1つに沿った製造方法により得られたひげぜんまいを図示する。ひげぜんまいは、上面12が平面P1に位置し、外端がリンク部3と一体に製造される、少なくとも1つのブレード2を含み、リンク部の剛性は少なくとも1つのブレード2よりも実質的に高い。ひげぜんまい1はまた、少なくとも1つのブレード2の内端と一体に製造された、軸A1のひげ玉4を含む。
【0060】
リンク部3は、ブレード2周りに配置されたリングの一部の形状の、第一の、中央部31を含み、その角度範囲は、軸A1に対しておおよそ100度である。当該リンク部3はまた、第一の、中央部31の両側に配置され、それぞれここでは開口の形状を取るひげぜんまいの位置決め及びまたは固定用の要素5を含む、2つの曲げ部32を含む。
【0061】
リンク部3は、平面P1に位置された、その上面11に、とりわけ自身の中央部31に、適用されたパターン(または表示)6を含むという特定の特徴を有する。上面11は、ここでは、ひげぜんまいの少なくとも1つのブレード2の上面12に連続して形成される。
【0062】
パターン6は、前述の方法に由来し、その中に素材の層8が堆積される、上面11から形成される空洞7を含む。
【0063】
軸A1に対して半径方向に測定されるパターンの範囲e、すなわち空洞の範囲は、100μmより大きい、または150μmより大きい、または200μmより大きい、または250μmより大きくてもよい。こうしたパターンまたは表示6は、このように、自身が時計ムーブメントに組付けられる、組み立てられたてんぷ内にひげぜんまい1が搭載されると、可視となるまたは判読可能になる。
【0064】
当該ひげぜんまいは、てん輪ひげぜんまい用のひげぜんまいであってもよい。ひげぜんまいは、一体であってもよい。ひげぜんまいは、シリコン製であってもよく、シリコンの基板からまたはSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板から製造されてもよい。本発明が検討する表面は、二酸化ケイ素のコーティングで被覆されてもよい。
【0065】
本発明はまた、当該時計部品を含む、時計に関する。本発明は特に、当該時計ムーブメント部品を含む、時計ムーブメントに関する。
【符号の説明】
【0066】
1 時計部品
1a ブランク
7 空洞
8 素材の層
11 表面
17 底部
18 側壁
22 金属または金属合金層
24 マスク
【外国語明細書】