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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019088
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】多色セラミック部品の製造
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20240201BHJP
   G04B 19/28 20060101ALI20240201BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240201BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C04B35/488
G04B19/28 A
G04B19/06 A
G04B19/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023121505
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】22187737.6
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビアンヴェニュ, カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウージェ, ピエール
(57)【要約】
【解決手段】
セリア-ジルコニア基のグリーン体の形態の、中間部品を製造する(E1)、
脱バインダ中間部品を得るために、中間部品を全部または一部脱バインダする(E2)、
含浸脱バインダ中間部品を得るために、少なくとも1つの金属塩を含む、少なくとも1つの溶液により、脱バインダ中間部品を、その表面の一部のみに、局所的に含浸する(E3)、
含浸脱バインダ中間部品を、還元雰囲気下の少なくとも1つの熱処理のステップ(E42;E41’)により、焼結及び熱処理する(E4)、
ステップを含む、
セラミック時計部品の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア-ジルコニア基のグリーン体の形態の、中間部品を製造する(E1)、
脱バインダ中間部品を得るために、前記中間部品を全部または一部脱バインダする(E2)、
含浸脱バインダ中間部品を得るために、少なくとも1つの金属塩を含む、少なくとも1つの溶液により、前記脱バインダ中間部品を、その表面の一部のみに、局所的に含浸する(E3)、
前記含浸脱バインダ中間部品を、還元雰囲気下の少なくとも1つの熱処理のステップ(E42;E41’)により、焼結及び熱処理する(E4)、
ステップを含む、
セラミック時計部品の製造方法。
【請求項2】
前記含浸脱バインダ中間部品を焼結及び熱処理する(E4)ことからなる前記ステップは、還元雰囲気下の熱処理の第二サブステップ(E42)の実施の前に、酸化雰囲気下で前記含浸脱バインダ中間部品を焼結する(E41)ことからなる第一サブステップを含む、または還元焼結(E41’)の単一のステップを含む、
請求項1に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項3】
セリア-ジルコニア製のグリーン体の形態の、中間部品を製造する(E1)ことからなる前記ステップは、とりわけジルコニアに対して計算された1.4モル%から4モル%の間の割合の酸化イットリウムYを含み、酸化セリウムを3%から6%の間の、または3%から5%の間の重量割合で含む、イットリア安定化ジルコニア基のセラミック粉末を用いる、
請求項1または2に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項4】
前記ジルコニア基のセラミック粉末は、アルミナを0.1%から1%の間の重量割合で含む、
請求項3に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項5】
前記含浸脱バインダ中間部品を焼結及び熱処理する(E4)ことからなる前記ステップは、酸化雰囲気下で前記含浸脱バインダ中間部品を焼結する(E41)ことからなる第一サブステップと、その後還元雰囲気下で熱処理する(E42)第二サブステップを含み、酸化雰囲気下で前記含浸脱バインダ中間部品を焼結する(E41)ことからなる前記第一サブステップは、前記含浸脱バインダ中間部品を、1400℃から1650℃の間、または1450℃から1550℃の間の温度で、少なくとも30分の熱保持に曝す、及びまたは還元雰囲気下で熱処理する(E42)前記第二サブステップは、前記含浸脱バインダ中間部品を、1200℃から1550℃の間、または1350℃から1500℃の間の温度で、とりわけHを含む還元雰囲気内で、少なくとも30分の熱保持に曝す、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項6】
前記含浸脱バインダ中間部品を焼結及び熱処理する(E4)ことからなる前記ステップは、前記含浸脱バインダ中間部品を、1400℃から1650℃の間、または1450℃から1550℃の間の温度で、とりわけHを含む還元雰囲気内で、少なくとも1時間の熱保持に曝す、還元焼結(E41’)の単一ステップを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項7】
前記脱バインダ中間部品を部分的に含浸する(E3)ことからなる前記ステップは、Co、Fe、Mn、Ni、Alから選択される少なくとも1つの金属塩を含む溶液を使用する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項8】
前記含浸脱バインダ中間部品を焼結及び熱処理する(E4)ことからなる前記ステップは、SCIモードの比色分析パラメータで定義され、47.5から54.1の間のL*、または47.8から49.5の間のL*、または48.0から49.2の間のL*、11.7から25.1の間のa*、または14.4から17.7の間のa*、または13.4から16.4の間のa*、5.2から15.5の間のb*、または5.8から8.8の間のb*、または5.9から8.0の間のb*である、少なくとも1つの赤色を有する第一非含浸表面部分、及びまたは、SCIモードの比色分析パラメータで定義され、47.0より小さいL*、または45.6より小さいL*、または45.4より小さいL*、-0.5から1の間のa*、または-0.1から1.0の間のa*、または0.3から0.9の間のa*、-1から1.6の間のb*、または-0.8から1.4の間のb*、または0.3から1.1の間のb*である、少なくとも1つの含浸表面積内の暗色の、とりわけ黒色の第二部分を含む、多色セラミック時計部品を形成可能であり、分光測光法測定は、研磨表面仕上げを有する部品で実施される、
請求項7に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項9】
前記焼結ステップから得られた前記時計部品の前記表面の全部または一部を、とりわけPVDにより、被覆することからなる追加ステップ、及びまたは研削及びまたは研磨及びまたはサンドブラスト及びまたはサテン仕上げの追加ステップを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載のセラミック時計部品の製造方法。
【請求項10】
セリア-ジルコニア基であり、一体鋳造の一体のパーツであり、少なくとも第一色の第一部分と、前記第一色と異なる第二色の第二部分とを含む、赤色の第一色と黒色の第二色を含む、2色、または多色である、セラミック時計部品。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第一部分から、前記少なくとも1つの第二部分まで延長する、少なくとも機械的及びまたは濃度の意味で、とりわけセリウム濃度の意味で、連続する、少なくとも1つの中核部を含む、
請求項10に記載のセラミック時計部品。
【請求項12】
少なくとも前記第一部分と前記第二部分は、同一操作で形成された同一の粉末から得られ、同一操作で熱処理される、
請求項10または11に記載のセラミック時計部品。
【請求項13】
3%から5%の間の重量割合の酸化セリウムを含む、
請求項10から12のいずれか一項に記載のセラミック時計部品。
【請求項14】
前記第一部分は、SCIモードの比色分析パラメータで定義され、47.5から54.1の間のL*、または47.8から49.5の間のL*、または48.0から49.2の間のL*、11.7から25.1の間のa*、または14.4から17.7の間のa*、または13.4から16.4の間のa*、5.2から15.5の間のb*、または5.8から8.8の間のb*、または5.9から8.0の間のb*である、赤色の部分である、及びまたは前記第二部分は、SCIモードの比色分析パラメータで定義され、47.0より小さいL*、または45.6より小さいL*、または45.4より小さいL*、-0.5から1の間のa*、または-0.1から1.0の間のa*、または0.3から0.9の間のa*、-1から1.6の間のb*、または-0.8から1.4の間のb*、または0.3から1.1の間のb*である、黒色の部分であり、分光測光法測定は、研磨表面仕上げを有する部品で実施される、
請求項10から13のいずれか一項に記載のセラミック時計部品。
【請求項15】
小型時計ベゼル、文字盤、目盛り、巻き上げ竜頭、プッシュピース、またはその他のあらゆる小型時計外部部品または時計部品ムーブメントのあらゆる補給品である、
請求項10から14のいずれか一項に記載のセラミック時計部品。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか一項に記載のセラミック時計部品を含む、時計または宝飾品パーツ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア基の、2色セラミック、または多色セラミック製の時計部品に、より具体的には焼結工業用セラミック製の時計部品に関する。本発明はまた、当該時計部品を含む、時計に関する。本発明は最後に、ジルコニア基の、2色セラミック、または多色セラミック製の時計部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計製造分野においては、宝飾品と同様、より単純にセラミックとも呼ばれる、工業用セラミック製の部品を使用することが知られている。「工業用」の形容詞は、選択されたセラミックの高性能性質に言及するものである。特に、これら工業用セラミックは、非常に高い機械的、熱的、または電気的、及びまたは生化学的性質、及び化学慣性と反磁性とを達成可能であり、このため工業用セラミックは、時計部品、とりわけ時計ムーブメント部品、また小型時計外部部品を形成するのに適したものとなる。工業用セラミックは、その組成を理由に、従来のセラミックから異なる。なぜならば、工業用セラミックは、例えば長石やカオリンといった自然鉱物粉末ではなく、精製合成粉末に由来するためである。
【0003】
工業用セラミックの中で、高い機械的性質を有することから、ジルコニア基セラミックが一般的に用いられる。しかしながら、ジルコニア基セラミックの1つの欠点は、自然には白色体の形状であることである。腕時計製造の要件の1つに、使用される素材の魅力的な外観があり、これは必然的に色を含む。従来技術では、例えば着色顔料を用いて、このようなセラミックを着色するいくつかのステップがあるが、これは製造方法を複雑化する一方、他の欠点も追加するものである。とりわけ、これらセラミック部品の使用の限界は、特定の色を、そしてとりわけ例えば赤色と黒色といったいくつかの色の組み合わせを得ることの困難性、または不可能性、に起因する。より一般的には、同一の均一、予見可能、且つ再現性のある色を得ることに困難性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】スイス国特許出願公開第707424号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Technical Report of Colorimetry(比色分析の技術レポート)」、CIE 15、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明の全般的な目的は、従来技術の欠点を有さない、特に時計用の、セラミック部品を製造する解決策を提案することである。
【0007】
より具体的には、本発明の第一の目的は、色が制御された、とりわけ多色の、とりわけ2色の、とりわけ赤色と黒色の結果を得ることを可能にする、セラミックを得ることを可能にする、セラミック部品の製造の解決策を提案することである。
【0008】
本発明の第二の目的は、色に信頼性あり且つ再現性のある、セラミック部品の製造の解決策を提案することである。
【0009】
本発明の第三の目的は、最大限単純化され、時計部品としての利用と両立可能な、適切な技術的性質を有するセラミックを得ることを可能にする、セラミック部品の製造の解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、
セリア-ジルコニア基のグリーン体の形態の、中間部品を製造する、
脱バインダ(場合により「脱バインダの」とも称される)中間部品を得るために、前記中間部品を全部または一部脱バインダする、
含浸脱バインダ中間部品を得るために、少なくとも1つの金属塩を含む、少なくとも1つの溶液により、前記脱バインダ中間部品を、その表面の一部のみに、局所的に含浸する、
前記含浸脱バインダ中間部品を、還元雰囲気下の少なくとも1つの熱処理のステップにより、焼結及び熱処理する、
ステップを含む、
セラミック時計部品の製造方法に基づく。
【0011】
本発明はまた、セリア-ジルコニア基であり、一体鋳造の一体のパーツであり、少なくとも第一色の第一部分と、前記第一色と異なる第二色の第二部分とを含む、とりわけ赤色の第一色と黒色の第二色を含む、2色、または多色である、セラミック時計部品に関する。
【0012】
本発明は、より具体的には、請求項で定義される。
【0013】
本発明の主題、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して与えられる一特定実施形態についての以下の非限定的説明において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかるセラミック時計部品の製造方法の、ステップのフローチャートである。
図2図2aから2cは、本発明の実施形態の3つの変形例にかかる、熱処理の3つの実施例にかかる、時間に応じた温度の変化を図示する。
図3図3は、本発明の実施形態の第一実施例にかかる、熱処理の第一サブステップに対応する、酸化雰囲気下での焼結のステップ後に得られた、ベゼルディスクを図示する。
図4図4は、本発明の実施形態の第一実施例にかかる、熱処理の第二サブステップに対応する、還元雰囲気下での熱処理のステップ後に得られた、図3のベゼルディスクを図示する。
図5図5は、本発明の様々な例示的実施形態より得られた、複数のセラミックの性質の詳細を示す、2つの表を含む。
図6図6は、酸化セリウムとアルミナを異なる割合で含む原材料から、本発明の実施形態により得られたベゼルディスクを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これ以降、セラミック部品とは、少なくとも1つの高密度セラミックを主として含む素材製の要素を意味する。「高密度」セラミックとは、その密度が、検討する素材の理論的密度の95%から100%の間であるセラミックを意味するものと理解される。本明細書において、「セラミック」または「工業用セラミック」は、安定化酸化ジルコニウム基の高密度素材を意味する。
【0016】
更に、「ジルコニア基」とは、全ての場合において、少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%の重量割合で、主としてジルコニア成分を含む素材を意味するものと理解される。例えば、本発明にかかるセラミック素材は、少なくとも50重量%のジルコニアを含む。
【0017】
全ての場合において、本発明にかかる(即ち高密度)セラミックは、有機化合物を含まない。このため、「バインダ添加セラミック」(場合によっては「バインダ添加のセラミック」)の一般用語は、セラミックと、一般的には、様々な割合の1以上の有機化合物からなるバインダと、からなる複合素材を意味する。「グリーン体」の用語は、バインダ添加され、成形されたセラミックを意味する。この段階において、セラミックは焼成されていない。
【0018】
本発明の実施形態にかかるセラミック体の製造方法は、以下に模式的に説明するステップを含む。
【0019】
一実施形態にかかる製造方法の第一ステップは、セリア-ジルコニア基のグリーン体の形態の、中間部品を製造することE1からなる。当該中間部品は、その最終または準最終形状にある。この段階において、部品は焼成されていない。
【0020】
当該第一ステップは、以下に説明するサブステップを含んでもよい。
【0021】
第一サブステップにおいて、セラミック部品を製造する方法は、原材料、すなわちジルコニア基のセラミック粉末の準備E11、を含む。一実施形態によれば、ジルコニア基粉末は、酸化セリウムCeOを含む。このため、「セリア-ジルコニア」の用語は、少なくとも50重量%のジルコニアと、酸化セリウムとを含む、ジルコニア基のセラミック粉末またはセラミックを意味するために用いられる。一実施形態によれば、酸化セリウムは、全体の3%から6%の間の、または3%から5%の間の、重量割合で存在する。更に、ジルコニア基粉末は、イットリア(または酸化イットリウム)(Y)により、例えばジルコニアに対して計算される割合で、1.4モル%から4モル%の間の割合の酸化イットリウムYにより、安定化され、イットリアの割合は、n(Y)/[n(Y)+n(ZrO)]に従って計算され、ここでnは素材の量である。最後に、有利には、粉末はアルミナを含む。当該アルミナは、最終的な色に対する効果により有利である。アルミナは、この段階におけるジルコニア基粉末への導入の代替または追加として、方法の後段で導入されてもよい。アルミナの割合は、例えば、0.1重量%から1重量%の間で可変である。当該割合は、得られる最終色に、とりわけ色相と不透明性に影響を及ぼす。
【0022】
製造方法の第二サブステップは、第一サブステップで得られたセラミック粉末内へ、バインダを導入することE12からなる。当該バインダは、一般的には、1以上の有機化合物からなる。これにより、バインダ添加セラミック粉末が得られる。
【0023】
第三サブステップは、セラミック部品の成形E13からなり、これにより中間部品を得ることを可能にする。このため、第一アプローチは、第二サブステップの最後に得られたバインダ添加粒子のクラスタをプレスするステップを含む。このような方法において、第二サブステップは、プレス用のスプレー乾燥顆粒の形状の、バインダ添加セラミック粉末を準備する。第二アプローチは、金型内への射出による成形からなる。この場合、第二サブステップから得られる準備は、「供給原料」と呼ばれるバインダ添加セラミック粉末である。第三アプローチは、通常鋳込成形と呼ばれる、金型内への鋳込みと、その後の乾燥による成形からなる。この場合、第二サブステップから得られる準備は、スラリーまたはスリップと呼ばれる、懸濁液内のバインダ添加セラミック粉末である。第三サブステップの終わりに、前述のように定義されたグリーン体と呼ばれる、最終形状に近づく形状を有し、セラミック粉末とバインダの両方を含む、セラミック部品が得られる。代替的に、ゲル鋳込み、冷凍鋳込み成形、または他の凝固鋳込み技術といった、他の成形技術も使用可能である。
【0024】
実施形態の第二ステップは、脱バインダ中間部品を得るために、中間部品を全部または一部脱バインダすることE2からなる。中間部品に適用される当該脱バインダは、
- 熱処理による、
- または、例えば水性であってよい溶液(溶媒)を用いた処理、のいずれかによる、
- または、溶液(溶媒)と熱処理を組み合わせる、混合態様による、
いくつかの方法で実施することができる。
当該ステップは、バインダの少なくとも一部の抽出を引き起こす。このため、当該ステップは、完全脱バインダまたは部分脱バインダである。更に表記を単純にするため、当該ステップは、「脱バインダ」と称される。得られた部品は、少なくとも部分的に脱バインダされる。この段階において、部品は、脱バインダ中間部品と称される、単一素材ボディを形成する。脱バインダに加えて、ステップE2は、任意で、取り扱い操作中の脆弱性を減少させるために、部品の高密度化(多孔性減少)の開始を可能にする、「予備焼結」熱処理を含んでもよい。このような単一の熱処理中、脱バインダは、450℃まで行われ、予備焼結は、より高い温度で行われると考えれる。脱バインダの用語は、追加の予備焼結を含む、広い意味で用いられる。
【0025】
第三ステップは、脱バインダ中間部品を、少なくとも1つの金属塩を含む、少なくとも1つの溶液で、(局所的に)含浸された脱バインダ中間部品を得るために、その表面の一部のみを、局所的に含浸することE3からなる。部品の表面における含浸区域の位置は、最終結果の審美性の決定要因である。含浸区域は、表面の形状的部分を示してもよい。含浸区域はまた、部品の一表面を完全に被覆、または部品の全ての表面を完全に被覆してもよい。
【0026】
当該含浸ステップは、例えば、特許文献1に記載の方法に従い実施される。含浸ステップは、追加の元素が金属塩の形状で存在する、水溶液の使用を含んでもよい。含浸ステップは、例えば手動で、またはインクジェット印刷など、様々な方法で適用されてもよい。異なる色を得るために、塩(硝酸塩、塩化物、等)と、金属(ニッケル、鉄、コバルト、アルミニウム、等)の様々な水溶液を用いることができる。例えば、金属塩は、Co、Fe、Mn、Ni、Alの元素から選択されてもよい。特に、当該含浸は、セラミック内へ塩を導入し、塩はその後還元可能な顔料を形成する。これら顔料は、特定の例示的実施形態に基づき以下に説明されるように、その性質に基づき、還元されると異なる色を得る。特に、顔料は、オレンジ色、茶灰色、そして有利には黒色に色づく。観察によれば、Co、Fe、Mn、Niの元素は、黒色を得ることを可能にする。観察によれば、色への効果のため当初のセラミック粉末の組成内に予見されていたアルミナは、例えばアルミニウム塩を用いて、当該含浸ステップを介して、脱バインダ中間組成内に代替的にまたは追加的に導入されてもよい。観察によれば、当該含浸ステップ中に、1以上の異なる金属塩を含浸に用いることができる。更なる観察によれば、当該含浸ステップは、完全に脱バインダされていない中間部品に対して実施されてもよく、ここで脱バインダの最終段階はそれ以降に行われる。
【0027】
方法の第四ステップは、最終またはほぼ最終部品を得るために、(局所的に)含浸された脱バインダ中間部品を熱処理することE4からなり、中間部品を焼結し還元することからなる。
【0028】
既知のように、焼結は、脱バインダから派生する孔を除去することにより(またはステップE2が予備焼結を含む場合、孔の除去を継続することにより)、部品を高密度化することを可能にする。焼結は、熱処理、より具体的には高温焼成からなる。
【0029】
部品の最終機械的性質と最終的な色は、第四ステップE4の終わりに初めて出現し、これは部品の様々な構成要素と、熱処理中に作用する加熱炉内に存在する気体との間の反応の結果である。こうした反応は複雑である。
【0030】
第一実施形態によれば、熱処理の第四ステップは、有利には、異なる条件下で実施される、少なくとも2つのサブステップを含む。
【0031】
とりわけ、第一サブステップは、好みにより大気中の、酸化焼結E41からなる。このため、少なくとも30分の熱保持での、1400℃から1650℃の間の、または1450℃から1550℃の間の温度での、熱処理が有利には実施される。変形例として、他のあらゆる酸化雰囲気内の熱処理を実施してもよい。当該第一ステップの終わりに、脱バインダ中間部品の含浸及び非含浸区域は、互いに異なる色を有することを注記する。更に、これらの色は、中間色である。
【0032】
方法はその後、少なくとも、還元雰囲気下の部品の熱処理E42の第二サブステップを含む。当該第二サブステップは、部品の区域の少なくとも1つの色を修正することを可能にする。特に、酸化セリウムの(Ce+IVからCe+IIIへの)完全または部分的還元は、部品の少なくとも1つの非含浸区域に、鮮やかな赤からオレンジまでの色を形成することを可能にする。更に、含浸区域に非常に暗い色を、(とりわけコバルト塩での含浸後に)とりわけ黒色を得ることが可能であることが観察された。代替的に、含浸区域により明るい色を、(とりわけアルミニウム塩での含浸後に)とりわけオレンジ色を得ることが可能であることも観察された。このため、本発明にかかる方法は、2色の、とりわけ赤と黒または赤とオレンジの、非常に魅力的な外観のセラミックを得るのに特に適している。還元雰囲気下での部品の熱処理E42の第二サブステップにおいて、少なくとも30分の熱保持での、1200℃から1550℃の間の、または1350℃から1500℃の間の温度での、熱処理が有利には実施される。E42において、雰囲気は、有利には、とりわけ純粋な、水素を、または例えば窒素との混合物としての水素を、またはアルゴンといった不活性ガスと共の水素を、含む。当該還元熱処理の第二サブステップの終わりに、中間色とは異なる、最終的な色が得られる。
【0033】
図2aは、上述の第一実施形態にかかる、2つのサブステップE41とE42について、時間に応じた温度変化を図示する。第一サブステップE1の終わりに、部品は、第二サブステップE42の開始前に、室温RTまで冷却される。
【0034】
観察によれば、代替的に、2つのサブステップE41(酸化焼結)とE42(還元熱処理)は、部品を室温まで冷却する必要なくして、互いに続いてもよい。このため、ステップE4全体は、気体を(酸化雰囲気から還元雰囲気へ)交換可能な、同じ加熱炉内で、実施することができる。当該変形実施形態は、図2bに示す。
【0035】
観察によれば、他の変形例によると、2つのサブステップE41(焼結目標を有する)とE42(還元熱処理目標を有する)は、還元焼結の単一のステップE41’に統合することができる。当該変形例は、図2cに図示する。還元焼結ステップE41’において、少なくとも1時間の熱保持での、1400℃から1650℃の間の、または1450℃から1550℃の間の温度での、熱処理が有利には実施される。更に、雰囲気は、有利には、とりわけ純粋な、水素を、または例えば窒素との混合物としての水素を、またはアルゴンといった不活性ガスと共の水素を、含む。
【0036】
本実施形態の3つの変形例において、2色セラミック製の部品または部品の一部を得ることが可能になる。
【0037】
任意で、部品の製造方法は、(ステップE2、E3、またはE4から得られた)時計部品の表面に、例えばレーザまたは従来の工具を用いて、凹部を作成することからなる追加ステップを含んでもよい。任意で、方法は、表面の全部または一部、例えば凹部に、被覆を堆積するために、焼結ステップから得られた時計部品の表面の全部または一部を被覆することからなる追加ステップを含んでもよい。当該被覆ステップは、物理的気相成長法(PVD)技術により実施されてもよい。ステップは、例えば白金といった金属を、有利には接着層により、堆積することを可能にする。最後に、方法は、他の、任意の、仕上げステップを、例えば研削及びまたは研磨及びまたはサンドブラスト及びまたはサテン仕上げステップを含んでもよい。
【0038】
最後に、本発明にかかる時計部品の製造方法は、以下の利点がある。
- 実施される含浸は、表面的だけでなく、部品のかなりの深さにわたる着色を得ることを可能にする。このため、表面摩耗の場合、部品の色への影響はない。
- 部品の少なくとも2つの異なる色の部分は、一体部から製造された、一体鋳造形状である。換言すれば、2つの部分の間には、2つの色が少なくとも部分的に別個に製造されその後組み立てられた要素により得られた場合のような、脆弱な接合面または境界は存在しない。
- ジルコニア基焼結工業用セラミック製の部品は、腕時計製造適用と両立可能な、高い機械的性質を有する。具体的には、とりわけ高い靭性と高い破壊応力を有する。
- 更に、単純且つ簡単に再現性のある態様で、様々な色のセラミック部品が得られる。
- 塩による含浸は、固溶体ではなく、焼結中に顔料を形成するが、これにより色の不透明性を得ることができる。このため、方法は、暗い区域を得る、より具体的には黒色の区域を得るために適している。
- 加えて、方法は、いくつかのセリア-ジルコニア組成により動作し、これにより、赤色の区域を得ることを可能にするが、赤色の詳細な色は、とりわけ使用された酸化セリウムとアルミナの割合に応じて、制御可能である。
- この結果として、方法は、少なくとも黒色の一部と赤色の一部を含む、ジルコニア基セラミックの製造に特に適した方法である。
- 加えて、方法は、異なる色の区域間に、はっきりとした境界を得ることを可能にする。
【0039】
本発明はまた、本発明にかかる製造方法で得られた素材自身と、セリア-ジルコニア基のセラミック、即ちセリア-ジルコニア基の焼結工業用セラミック製の時計部品に関する。当該素材と、当該素材を含む時計部品は、有利には、少なくとも第一色の第一部分と、第一色とは異なる第二色の第二部分、とりわけ赤色の第一部分と黒色の第二部分とを含む。
【0040】
観察によれば、工業用セラミックの色は、分光測光法により測定される。測定は、4mmの測定直径のための、7mmの開口の反射で実施される。測定装置の形状は、拡散照明と、8°でのスペクトルの測定に対応する。部品が十分な平面積を有さない場合、測定を実施するために制御ペレットが用いられる。反射測定は、360nmから740nmの間で実施され、色はオブザーバが10°で、発光体D65を用いるという仮定で評価される。明度L*及び色度値a*とb*、彩度C*及び色相角h*は、非特許文献1に示すように、国際照明委員会が定義する空間、CIE L*a*b*において、評価される。測定は、SCI(鏡面反射成分含有)モードと、SCE(鏡面反射成分除去)モードで実施される。更に、分光測光法測定は、好ましくは2nm±0.2nmに等しい、正規化粗度パラメータRaにより定義された粗度を有する、研磨された表面仕上げを有する部品に実施される。観察によれば、パラメータRaは、ISO4287規格に従い測定される。
【0041】
このため、より具体的には、上述の規格化されたアプローチによると、本発明は、以下のSCIモードの比色分析パラメータにより定義される、少なくとも赤色の一部分を含むことができる、多色セラミック時計部品を形成することを可能にする。47.5から54.1の間のL*、または47.8から49.5の間のL*、または48.0から49.2の間のL*、及び11.7から25.1の間のa*、または14.4から17.7の間のa*、または13.4から16.4の間のa*、及び5.2から15.5の間のb*、または5.8から8.8の間のb*、または5.9から8.0の間のb*。更に、部品は、以下のSCIモードの比色分析パラメータにより定義される、少なくとも暗色の、とりわけ黒色の一部分を含むことができる。47.0より小さいL*、または45.6より小さいL*、または45.4より小さいL*、または43.0から47.0の間のL*、または44.3から45.6の間のL*、または45.0から45.4の間のL*、及び-0.5から1の間のa*、または-0.1から1.0の間のa*、または0.3から0.9の間のa*、及び-1から1.6の間のb*、または-0.8から1.4の間のb*、または0.3と1.1の間のb*。
【0042】
更に、工業用セラミック基の当該素材を含む時計部品は、一体鋳造形状及びまたは一体成形を形成する。当該時計部品は一体のパーツである。特に、異なる色の2つのパーツ間には、2つの別個のパーツが、例えばオーバーモールドまたはバイインジェクション成形または共圧方法により組み立てられた場合には存在する、脆弱性を導きかねない、機械的物理的不連続は存在せず、2つの別個のパーツが、組み立てられた場合には、その後も依然2つの組立てられた別個のパーツの予期せぬ分離の危険性が存在するのであるが、本発明の部品はこれには該当しない。時計部品は、とりわけ、ジルコニアの連続に加えて、セリウムの濃度または化学成分の連続を有する。部品は、少なくともこれら2つの元素(ZrとCe)の濃度の連続をその中核部に有するが、追加元素については有さず、当該中核部は、時計部品の異なる色の部分について、同一且つ連続であり、一体のパーツ製である。当該中核部は、上述の着色方法により影響を受けない、素材内の十分な深さの区域と見做されてもよい。代替的に、薄い部品の全深さを着色する、含浸パラメータを実行してもよい。加えて、時計部品は、単一製造フェーズにより形付けられるため、少なくとも2つの異なる色の部分について、同一の原材料、例えば同一セラミック部品から、そして同一の焼結作業中に同時に、最終形状を達成することができる。
【0043】
本発明のセリア-ジルコニア基の素材は、有利には、重量割合で3%から5%(重量%を意味する)の酸化セリウムを含む。
【0044】
本発明は当然、セリア-ジルコニア基で、焼結された、当該工業用セラミックを含む、時計部品にも関する。当該時計部品は、小型時計ベゼル、文字盤、目盛り、巻き上げ竜頭、プッシュピース、またはその他のあらゆる小型時計外部部品またはあらゆる時計ムーブメントの補給品であってもよい。当該時計部品は、全体がセリア-ジルコニア基のセラミック素材製であってもよく、代替的に部分的であってもよい。例えば、当該時計部品は、他の別個の要素がその上に取り付けられる、完全に本発明にかかるセリア-ジルコニア基のセラミック製の本体を含んでもよい。
【0045】
本発明はまた、本発明にかかる当該焼結工業用セラミック、または上述の少なくとも1つの時計部品を含む、時計、とりわけ腕時計に関する。
【0046】
本発明の実施のいくつかの実施例を、以下に説明する。
【0047】
第一実施例によれば、製造された時計部品は、ベゼルディスクである。
【0048】
方法の第一ステップは、前述のより一般的な方法に対応する、以下に説明するサブステップを含む。
第一サブステップは、原材料を選択することからなる。当該実施例によれば、選択は、イットリア(3モル%)で安定化され、酸化セリウム(3重量%)とアルミナ(0.1重量%)を含む、ジルコニア基のセラミック粉末に向けられる。
方法の第二サブステップは、供給原料を得るために、第一サブステップで得られたセラミック粉末内へバインダを組み込むことからなる。
第三サブステップは、金型内への射出による、セラミック部品の成形からなる。前述の名称によれば中間部品に対応する、グリーン体を構成する、バインダ添加の、未焼成の、セリア-ジルコニア製のベゼルディスクが、得られる。
【0049】
第二ステップは、熱処理によりグリーン体を脱バインダすることからなり、この場合は予備焼結を包含する。脱バインダと予備焼結は、単一の熱処理により実施される。中間部品は、周囲空気加熱炉内で、1時間、少なくとも750°に加熱される。
【0050】
本発明の第三ステップは、含浸ステップである。このために、追加元素が金属塩の形状で存在する、水溶液が用いられる。含浸は、例えば1 M Al(NO と0.5 M Co(NOの組成の溶液を得るために、固体Al(NO3・9HO、 Co(NO・6HOを溶解させることで得られた、アルミニウムとコバルト塩の水溶液を用いて、ここでは手動で実施される(代替的にインクジェットにより実施されてもよい)。含浸は、将来のベゼルディスクを形成するリングの二分の一に実施される。
【0051】
最後に、第四熱処理ステップは、まず周囲空気内で、1480℃で2時間の熱保持での焼結を含む。(酸化焼結の第一サブステップを形成する)当該第一熱処理の終わりに、図3に模式的に図示するベゼルディスク1は、非含浸場所2において黄色であり、含浸場所3において青色である(当該青色は、含浸により導入されたコバルト塩から形成された、CoAl化合物の形成を理由とする)。当該実施例において、その後、ベゼルディスクは研削される。第四熱処理ステップはその後、還元雰囲気下での熱処理を含む、第二サブステップを含む。ベゼルディスクは、水素HとアルゴンArからなる還元雰囲気内で、1400°で1時間の熱保持の、熱処理に曝される。セリア-ジルコニアは、非含浸区域2において、当該還元熱処理の終わりに、赤色に変わる。大気中での焼結の終わりに青色であった含浸区域3は、図4に示すように、黒色に変わる。
【0052】
このため、本発明にかかる方法の終わりに、セリア-ジルコニア製のベゼルディスクは、2色である。非含浸場所において赤色であり、含浸場所において黒色である。
【0053】
当該実施例において、(とりわけ射出中に形成される)凹部4(図3、4参照)を有するベゼルディスクは、その後、サンドブラストされ、PVDによる白金の堆積により被覆され、その後研磨される。このため、凹部は白金の色を有し、ベゼルディスクは、黒色と赤色の2色である。
【0054】
もちろん、本発明は、前述の実施例に限定されない。その目的のため、図5に示す表は、本発明の様々な実施形態に対応する、(2から12の番号を付与された)追加の実施例を図示する。これら実施例間の相違点は、セラミック粉末と含浸溶液(金属塩の性質、濃度、等)の組成、脱バインダの温度、大気中の焼結の温度、(試料2から5と12ではフォーミングガス(水素Hと窒素Nの還元混合物)下で実施され、試料6から11では水素20%と窒素80%の混合物内で実施される)還元の温度を含む、各種パラメータが修正されたことである。得られた色は、前述のように、分光測光法により測定される。結果は、セリア-ジルコニア製の部品を、ここでは一方は(いくつかの色相を、オレンジまで有する)赤色、他方は(いくつかのL*a*b*C*h*の値を有する)黒色の、2色で、得ることができることを示す。観察によれば、部品の表面は、研磨される。このため、当該研磨表面の粗度は、正規化粗度パラメータRaにより定義され、2nm±0.2nmに等しい。当該パラメータRaは、ISO4287規格に従い測定される。パラメータは、粗度の(算術)平均高さを示す。参照試料12は、含浸されないため、単色である。当該方法により、2色部品の実施例が得られ、その赤色部分は、SCIモードで、48.3から49.4の間のL*、14.4から17.6の間のa*、6.3から8.8の間のb*、SCEモードで、20.5から24.0の間のL*、34.5から38.1の間のa*、28.3から37.9の間のb*により特徴づけられ、その黒色部分は、SCIモードで、45から45.6の間のL*、0.3から0.9の間のa*、0.3から1.3の間のb*、SCEモードで、5.0から12.0の間のL*、1.4から5.7の間のa*、5.5から10.8の間のb*により特徴づけられてもよい。
【0055】
全ての実施例において、使用されたジルコニアは、3モル%の酸化イットリウムの割合の酸化イットリウムで安定化された。当該割合は、本発明から逸脱することなく、例えば1.4モル%から4モル%の間で、変更可能である。更に、イットリア安定化ジルコニア内の酸化セリウムの割合も変更可能である。これら実施例では、3重量%の割合が選択された。基質内のアルミナの割合もまた、変更可能である。これら実施例では、0.1重量%と0.5重量%の割合が選択された。
【0056】
図6は、1470℃で2時間の熱保持での大気中の焼結後の、フォーミングガスからなる還元雰囲気下における1400℃で1時間の熱保持での還元後に、得られた赤色に対して、選択された原材料内の酸化セリウムとアルミナの割合の変化が与える影響の実施例を図示する。図6の左側に位置する部品は、図5の表の実施例12に対応する、5重量%の酸化セリウムCeOと1重量%のアルミナAlを含むイットリア安定化ジルコニア製の、オレンジっぽい色のベゼルディスク11である。図6の右側に位置する部品は、(組成と熱処理の観点から、図5の表の実施例2から5を構成する部品の赤色区域に対応する)3重量%の酸化セリウムCeOと0.1重量%のアルミナAlを含むイットリア安定化ジルコニア製の、赤色の、ベゼルディスク12である。観察によれば、2つの部品のいずれも含浸されなかった。
【0057】
上述の元素に加え、いくつかの他の製造パラメータも、とりわけ色に、影響を与える。当業者であれば、求める結果に応じてこれらパラメータを定義可能である。主たるものとしては、
- 還元処理に使用される、気体雰囲気。例えば、(5%から100%の)様々な割合で水素を含んでもよく、様々な追加気体、とりわけアルゴンAr及びまたは窒素Nを含んでもよい。チャンバ内の気体の流れもまた可変である。
- 大気、またはより一般的には酸化雰囲気、または代替的には還元雰囲気(ステップE41’)内の、有利には1400℃から1650℃の間、そしてより具体的には1450℃から1550℃の間の焼結、及びまたはE41では少なくとも30分の、またはE41’では少なくとも1時間の熱保持の、温度。
- 30分から数時間までの間で変更可能な、焼結熱保持の継続時間。
- 有利には1200℃から1550℃の間、そしてより具体的には1350℃から1500℃の間の、還元雰囲気内の第二熱処理サブステップE42での還元の温度。
- 有利にはE42については30分と数時間の間の、還元の熱保持の継続時間。
- 成形方法(射出、押圧、等)。
【符号の説明】
【0058】
1 ベゼルディスク
2 非含浸区域
3 含浸区域
4 凹部
11 ベゼルディスク
12 ベゼルディスク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】