IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋アルミエコープロダクツ株式会社の特許一覧

特開2024-19096紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法
<>
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図1
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図2
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図3
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図4
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図5
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図6
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図7
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図8
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図9
  • 特開-紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019096
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/34 20060101AFI20240201BHJP
   B65D 1/28 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D1/34
B65D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121680
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022119889
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 晴加
(72)【発明者】
【氏名】篠原 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕史
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA10
3E033BA13
3E033BB08
3E033CA07
3E033CA09
3E033CA15
3E033CA16
3E033DA08
3E033DD01
3E033FA01
(57)【要約】
【課題】 トップシール性が高い紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法を提供する。
【解決手段】 紙容器は、底部と、底部に接続された側壁部と、側壁部の上端に接続され、外方に水平方向に延びるフランジ部と、フランジ部の外周縁に接続された縁巻部とから主に構成されている。又、フランジ部は、プレス成形によりその下面から上面へ折り込まれて形成された複数のシワ6(圧潰シワ7を含む)を有する。更に、フランジ部のシワ6(圧潰シワ7を含む)は、少なくとも一部に平坦状部分28が形成されている。このように構成することで、フランジ部が平坦化すると共に、シワ6の内方の微細な空隙25の有無がトップシールへの影響を与えないため、トップシールフィルムのような蓋材を用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が向上した紙容器となる。又、シワが平坦化されていない従来の紙容器に比べて強度が向上する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも容器内面側となる面に樹脂層が形成された一枚の板紙原紙からプレス成形のみによって形成され、底部と、前記底部に接続された側壁部と、前記側壁部の上端に接続され、外方に水平方向に延びるフランジ部とを備える紙容器であって、
前記側壁部及び前記フランジ部にはプレス成形により形成される複数のシワを有し、
前記フランジ部の前記シワは、前記フランジ部の下面から上面へ折り込まれて形成され、
前記フランジ部の上面に現れる前記シワには、少なくとも一部に平坦状部分が形成される、紙容器。
【請求項2】
前記フランジ部の外周縁には縁巻部を備え、
前記縁巻部の高さが最も高い部分が前記フランジ部の上面と同一高さ又は下方に位置する、請求項1記載の紙容器。
【請求項3】
前記平坦状部分を有する前記シワの紙容器断面厚み(S1)と前記平坦状部分を有さない前記シワの紙容器断面厚み(S2)との比(S1/S2)が0.7以下である、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項4】
前記フランジ部の前記シワは、前記板紙原紙のフランジ部に対応する部分に形成された複数の罫線に基づいて形成される、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項5】
前記側壁部の前記シワは、前記側壁部の内面から外面へ折り込まれて形成される、請求項1又は請求項2記載の紙容器。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載の紙容器と、トップシール性を有する蓋材とで構成される、トップシール紙容器。
【請求項7】
板紙原紙を準備する準備工程と、
前記板紙原紙をプレス加工することによって、底部と、前記底部に接続される側壁部と、前記側壁部の上端に接続され、外方に水平方向に延びると共にその上面に下面から上面へ折り込みされて形成されたシワを有するフランジ部とを備える紙容器を形成するプレス工程と、
前記シワの少なくとも一部に平坦状部分を形成するシワ押圧工程とを備える、紙容器の製造方法。
【請求項8】
前記シワ押圧工程は、前記シワへの超音波加工を含む、請求項7記載の紙容器の製造方法。
【請求項9】
前記板紙原紙の少なくとも容器内面側となる面に樹脂層が形成され、前記超音波加工により前記樹脂層が溶融する、請求項8記載の紙容器の製造方法。
【請求項10】
前記シワ押圧工程は、前記超音波加工前のシワの紙容器断面厚み100%に対し、前記超音波加工により前記平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚みを70%以下とする、請求項9記載の紙容器の製造方法。
【請求項11】
前記紙容器及び前記蓋材にはバリア性を備えた樹脂層が形成されている、請求項6記載のトップシール紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法に関し、特に、一枚の板紙原紙からプレス成形のみによって形成された紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一枚の板紙原紙からプレス成形のみによって形成された紙容器として、特許文献1に示すものが存在している。
【0003】
図8は特許文献1に示す従来の紙容器の外観形状を示した斜視図である。
【0004】
図8を参照して、紙容器51は、コーナー部が丸みを帯びた略矩形形状の底部52と、底部52の周縁と接続され斜め上方に立ち上がる側壁部53と、側壁部53の上端に接続され水平方向に延びるフランジ部54と、フランジ部54の外周端に接続された縁巻部55とから構成されている。尚、側壁部53及びフランジ部54のコーナー部は、その内部から外周に向かって放射状に複数のシワ56が形成された側壁コーナー部57及び曲線フランジ部58となっている。
【0005】
図9図8で示した紙容器をプレス成形して形成するための板紙原紙の全体形状を示した平面図である。
【0006】
図9を参照して、板紙原紙70は、四隅が丸みを帯びた略矩形形状を有し、その中央部72は紙容器の底部52に相当する部分であり、その外周部73は紙容器51の側壁部53、フランジ部54及び縁巻部55に相当する部分である。尚、外周部73の四隅における側壁コーナー部57及び曲線フランジ部58に相当する部分には、放射状に延びる複数の罫線71が形成されている。
【0007】
このような特許文献1に示す上記のような紙容器51においては、プレス成形時にコーナー部に発生しやすい不規則なシワが、板紙原紙70に形成された罫線71によって吸収されることにより、成形時に不規則なシワが生じることを抑制することができる。
【0008】
しかし、プレス成形した紙容器51には上記のようにシワ56が形成されるので、板紙原紙70に複数の罫線71を形成してプレス成形して規則的にシワ56の形成を制御できたとしてもシワ56自体は凹凸が生じてしまう。したがって、プラスチック製容器の場合は、容器に平坦なフランジ部を形成し、このフランジ部にトップシール性を有するプラスチックフィルムをトップシールすることで密封性の高いトップシール容器とすることが可能であるが、プレス成形によりシワ56が形成される紙容器51の場合は、フランジ部54を形成してプラスチックフィルムをトップシールしてもシワ56の凹凸により完全な密封ができない。このため、トップシール性を有するプラスチックフィルムを用いてトップシールを行うことは困難であった。
【0009】
そこで、特許文献2には、板紙の一方面に熱可塑性樹脂層を積層した板紙原紙を用いてフランジ部を有する深絞り紙容器をプレス成形した後に、フランジ部を超音波加工により平滑な面に形成することで、フランジ部を超音波加工による熱と圧力を用いて押しつぶして凹凸の少ない平滑な面を形成し、トップシールによる密封性の高い深絞り紙容器に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10-43027号公報
【特許文献2】特開2000-33927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10は板紙原紙に形成された罫線の紙容器製造時における変化状態を示した図であり、(1)はプレス工程前、(2)はプレス工程後、(3)は超音波加工によるシワ押圧工程後、(4)はトップシール包装後の状態を示した図である。
【0012】
図10の(1)を参照して、板紙原紙80は、容器内面側に図示しない樹脂層が形成され、容器内面側から容器外面側へ折り込まれて罫線81が形成されている。即ち、罫線81の凹部82及び凸部83がそれぞれ容器内面側と容器外面側とに形成されている。
【0013】
次に、図10の(2)を参照して、このような板紙原紙80に対してプレス加工されると、容器外面側の罫線81の凸部83を中心としたシワ86が形成される。このとき、容器内面側に形成されていた罫線81の凹部82は、その両側の部分から圧縮され、シワ86の内方に空間84が形成される。
【0014】
そして、図10の(3)を参照して、超音波加工によりシワ86が上下方向から押圧されると、容器内面側のシワ86の表面の樹脂層が溶融して、融着層となって互いに融着しようとする。これにより、フランジ部のシワ86に生じていた凹凸をある程度平坦化することができる。
【0015】
しかしながら、特許文献2に記載の紙容器では、側壁部やフランジ部に形成されるシワ86は紙容器の内面から外面へ折り込まれて形成されている。シワ86がこのように形成されている場合には、特許文献2のような超音波加工による熱と圧力を用いて押しつぶしてフランジ部のシワ86を平坦化したとしても、シワ86の内方側の微細な空間84を完全には溶融して融着することができず、シワ86の内方に空隙85が残ってしまう。このような紙容器に水分を含む食品(内容物)を収容して紙容器のフランジ部にプラスチックフィルム87によるトップシール包装を行ったとしても、図10の(4)に示されているように、シワ86の内方に存在する微細な空隙85から内容物の水分等が染み出たり漏れたりするため、トップシール性が十分であるとは言えない。これは、シワ86の内方に存在する微細な空隙85に水分等の液体が毛細管現象により吸収されてしまうからだと推察される。これは気体であっても同様の問題が生じてしまう。
【0016】
又、このような空隙85を無くすにはフランジ部への超音波加工時に与えるエネルギーを大きくしたり、超音波加工の時間を長くしたりすることが考えられるが、そのような対応を行った場合には、シワ86が過加熱状態となり樹脂や紙の焦げが生じてしまうなどの問題が生じてしまい、加工の制御が難しい。
【0017】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、トップシール性が高い紙容器、トップシール紙容器及び紙容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、少なくとも容器内面側となる面に樹脂層が形成された一枚の板紙原紙からプレス成形のみによって形成され、底部と、底部に接続された側壁部と、側壁部の上端に接続され、外方に水平方向に延びるフランジ部とを備える紙容器であって、側壁部及びフランジ部にはプレス成形により形成される複数のシワを有し、フランジ部のシワは、フランジ部の下面から上面へ折り込まれて形成され、フランジ部の上面に現れるシワには、少なくとも一部に平坦状部分が形成されるものである。
【0019】
このように構成すると、フランジ部が平坦化すると共に、シワの内方側の微細な空隙の有無がトップシールへ影響を与えない、という作用1が得られる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、フランジ部の外周縁には縁巻部を備え、縁巻部の高さが最も高い部分がフランジ部の上面と同一高さ又は下方に位置するものである。
【0021】
このように構成すると、蓋材の取付面の外方延長上に縁巻部が位置しない、という作用2が得られる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚み(S1)と平坦状部分を有さないシワの紙容器断面厚み(S2)との比(S1/S2)が0.7以下であるものである。
【0023】
このように構成すると、平坦状部分を有するシワが平坦状部分を有さないシワに対して確実に扁平化する、という作用3が得られる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、フランジ部のシワは、板紙原紙のフランジ部に対応する部分に形成された複数の罫線に基づいて形成されるものである。
【0025】
このように構成すると、プレス成形時に不規則に発生しようとするシワが罫線に吸収される、という作用4が得られる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、側壁部のシワは、側壁部の内面から外面へ折り込まれて形成されるものである。
【0027】
このように構成すると、シワの凹部が側壁部の内面側に位置すると共に、紙容器の内面から外面へ折り込まれるシワが延びるのは側壁部の上部までとなるため、シワの内方に存在する微細な空隙による毛細管現象が発現したとしても毛細管現象により吸収された水分等は側壁部の上部に到達するだけでフランジ部には到達しない、という作用5が得られる。
【0028】
請求項6記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の紙容器と、トップシール性を有する蓋材とで構成されるトップシール紙容器である。
【0029】
このように構成すると、フランジ部に漏れなくトップシールされる、という作用6が得られる。
【0030】
請求項7記載の発明は、板紙原紙を準備する準備工程と、板紙原紙をプレス加工することによって、底部と、底部に接続される側壁部と、側壁部の上端に接続され、外方に水平方向に延びると共にその上面に下面から上面へ折り込みされて形成されたシワを有するフランジ部とを備える紙容器を形成するプレス工程と、シワの少なくとも一部に平坦状部分を形成するシワ押圧工程とを備える紙容器の製造方法である。
【0031】
このように構成すると、フランジ部が平坦化すると共に、シワの内方側の微細な空隙の有無がトップシールへ影響を与えない紙容器が得られる、という作用7が得られる。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明の構成において、シワ押圧工程は、シワへの超音波加工を含むものである。
【0033】
このように構成すると、フランジ部の平坦化が容易となる、という作用8が得られる。
【0034】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成において、板紙原紙の少なくとも容器内面側となる面に樹脂層が形成され、超音波加工により樹脂層が溶融するものである。
【0035】
このように構成すると、シワの内部や周囲の隙間が樹脂層で埋められ、フランジ部が更に平坦化した紙容器が得られる、という作用9を得られる。
【0036】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、シワ押圧工程は、超音波加工前のシワの紙容器断面厚み100%に対し、超音波加工により平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚みを70%以下とするものである。
【0037】
このように構成すると、フランジ部のシワが超音波加工前のシワに対して確実に扁平化した紙容器が得られる、という作用10を得られる。
【0038】
請求項11記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、紙容器及び蓋材にはバリア性を備えた樹脂層が形成されているものである。
【0039】
このように構成すると、フランジ部に漏れなくトップシールされる、という作用11を得られる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、上記作用1が得られるため、トップシールフィルムのような蓋材を用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が向上した紙容器となる。又、シワが平坦化されていない従来の紙容器に比べて強度が向上する。
【0041】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、上記作用2が得られるため、蓋材の取付が容易となり、歩留まりが向上する。
【0042】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用3が得られるため、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が更に向上する。
【0043】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用4が得られるため、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性の品質にバラツキが生じにくくなると共に、美感が向上する。
【0044】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、上記作用5が得られるため、喫食のし易さが向上すると共に、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、良好なトップシール性と喫食のし易さを両立できる。
【0045】
請求項6記載の発明は、上記作用6が得られるため、トップシール紙容器の密封性が向上する。
【0046】
請求項7記載の発明は、上記作用7が得られるため、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が向上した紙容器が得られる。
【0047】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明の効果に加えて、上記作用8が得られるため、紙容器の生産性が向上する。
【0048】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の効果に加えて、上記作用9が得られるため、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が更に向上した紙容器が得られる。
【0049】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、上記作用10が得られるため、トップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性が更に向上した紙容器が得られる。
【0050】
請求項11記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、上記作用11が得られるため、トップシール紙容器の密封性が向上すると共に、ガスバリア性の高いトップシール紙容器となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】この発明の実施の形態による紙容器の全体形状を示した平面図である。
図2図1で示した紙容器の全体構造を示した断面図である。
図3図1で示した紙容器をプレス成形して形成するための板紙原紙の全体形状を示した平面図である。
図4図3で示した板紙原紙に形成された罫線の紙容器製造時における変化状態を示した図であり、(1)はプレス工程前、(2)はプレス工程後、(3)は超音波加工によるシワ押圧工程後、(4)はトップシール包装後の状態を示した図である。
図5図1で示した紙容器の製造方法によるシワ押圧工程を示す概略断面図である。
図6図1で示した紙容器等を対象とした測定試験の様子を示した模式図である。
図7図6で示した測定試験の結果を示したグラフであって、(1)は長手方向のものであり、(2)は短手方向のものである。
図8】特許文献1に示す従来の紙容器の外観形状を示した斜視図である。
図9図8で示した紙容器をプレス成形して形成するための板紙原紙の全体形状を示した平面図である。
図10】板紙原紙に形成された罫線の紙容器製造時における変化状態を示した図であり、(1)はプレス工程前、(2)はプレス工程後、(3)は超音波加工によるシワ押圧工程後、(4)はトップシール包装後の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1はこの発明の実施の形態による紙容器の全体形状を示した平面図であり、図2図1で示した紙容器の全体構造を示した断面図である。
【0053】
図1及び図2を参照して、紙容器1は、長円形状の底部2と、底部2に接続された側壁部3と、側壁部3の上端に接続され、外方に水平方向に延びるフランジ部4と、フランジ部4の外周縁に接続された縁巻部5とから構成されている。
【0054】
紙容器1の側壁部3、フランジ部4及び縁巻部5の全周には、外周に向かって放射状に延びる複数のシワ6(後述する圧潰シワ7を含む)が形成されている。シワ6の詳細については後述する。
【0055】
縁巻部5は、フランジ部4の外周縁から下向き方向に位置し、縁巻部5の端部は縁巻部5の内部に巻き込まれるように形成されると共に、フランジ部4の外周縁に全周に沿って形成されており、縁巻部5の断面は環状に形成されている。又、縁巻部5の環状の高さが最も高い部分がフランジ部4の上面と同一高さに位置するように形成されている。
【0056】
このように構成することで、蓋材を用いた際に、蓋材の取付面の外方延長上に縁巻部5がフランジ部4の上面よりも上方へ突出するようには位置しないため、蓋材、特にトップシールフィルムのような蓋材を用いてトップシールを行う場合には、トップシール時に縁巻部5が邪魔にならず、トップシールがし易くなるので、蓋材の取付が容易となり、歩留まりが向上する。
【0057】
次に、紙容器1をプレス成形して形成するための板紙原紙について説明する。
【0058】
図3図1で示した紙容器をプレス成形して形成するための板紙原紙の全体形状を示した平面図である。
【0059】
図3を参照して、板紙原紙10は、紙基材の両面に押出ラミネート法による樹脂層が形成されたシート体を打ち抜いたものよりなり、長円形状を有する。板紙原紙10の中央部は紙容器1の底部2に対応する部分である底部対応部12であり、その外周側は紙容器1の側壁部3、フランジ部4及び縁巻部5に対応する部分である側壁部対応部13、フランジ部対応部14及び縁巻部対応部15である。
【0060】
側壁部対応部13、フランジ部対応部14及び縁巻部対応部15には、放射状に延びる複数の罫線21が形成されている。
【0061】
次に、紙容器1におけるシワ6に着目して、紙容器1の製造方法について説明する。
【0062】
図4図3で示した板紙原紙に形成された罫線の紙容器製造時における変化状態を示した図であり、(1)はプレス工程前、(2)はプレス工程後、(3)は超音波加工によるシワ押圧工程後、(4)はトップシール包装後の状態を示した図である。
【0063】
まず、板紙原紙10を準備する。図4の(1)を参照して、板紙原紙10に形成された罫線21は、容器内面側から容器外面側へ折り込まれて形成されている。即ち、罫線21の凸部23及び凹部22がそれぞれ容器内面側と容器外面側とに形成されている。
【0064】
次に、成形装置の型部材によって板紙原紙10を上下から押圧し、プレス成形する。これにより、板紙原紙10から底部2と、底部2に接続された側壁部3と、側壁部3の上端に接続され、外方に水平方向に延びると共にその下面から上面へ折り込みされて形成されたシワ6を有するフランジ部4とを備える紙容器1が形成される。
【0065】
このように、板紙原紙10の側壁部対応部13、フランジ部対応部14及び縁巻部対応部15に罫線21を形成していると、プレス成形時に発生しやすい不規則なシワが罫線21に吸収され圧縮される。このため、紙容器1の美感が向上する。又、フランジ部4への不規則なシワの発生を抑制できることで、フランジ部4にトップシールフィルムを用いてトップシールを行う場合には、トップシール性の品質にバラツキが生じにくくなる。
【0066】
図4の(2)を参照して、プレス工程後の紙容器1の側壁部3及びフランジ部4には、容器内面側の凸部23を中心としたシワ6が形成されている。紙容器1のフランジ部4においては、フランジ部4の下面から上面に向けた方向に折り込まれるようにシワ6が形成されている。
【0067】
そして、フランジ部4の外周縁は縁巻成形されて縁巻部5が全周に形成される。縁巻部5はフランジ部4の外周縁に環状に形成されており、縁巻部5の上端(高さが最も高い部分)がフランジ部4の上面より上方に位置している。
【0068】
次に、プレス工程の後に、フランジ部4のシワ6を超音波加工により更に押圧する。
【0069】
図5図1で示した紙容器の製造方法によるシワ押圧工程を示す概略断面図である。
【0070】
併せて図5を参照して、プレス工程の後に、超音波加工装置の台座41上に紙容器1を載置し、超音波ホーン42を紙容器1の上方から降下させ、台座41と超音波ホーン42とで紙容器1のフランジ部4を挟む。そして、所定の超音波振動を与えながら上下方向から押圧する。すると、フランジ部4の樹脂層が超音波加工により局部的に加熱される。樹脂層は熱可塑性を有するために、罫線21と共に折り込まれた部分が溶融して融着層となって互いに融着する。その状態で押圧すると、フランジ部4のシワ6が全体的に平坦化される。
【0071】
尚、超音波加工装置の台座41の縁巻部5に対応する部分は切欠かれていて、超音波ホーン42の紙容器1に接する面は縁巻部5に対応する部分も含めて全面が平坦であるため、超音波ホーン42をフランジ部4の上面まで降下させると、フランジ部4の上面より上方に位置していた縁巻部5の高さが最も高い部分は、超音波ホーン42により下向きへ押されるが、台座41の縁巻部5に対応する部分は切欠かれているので、超音波ホーン42による押圧でも縁巻部5が潰されることはなく、超音波ホーン42の降下にしたがって縁巻部5がフランジ部4の上面と同一高さまで押し下げられる。このようにして、図1に示した紙容器1が製造される。尚、実施の形態では図5に示すように超音波ホーン42がフランジ部4の上面と接する向きとなるように紙容器1を設置して超音波加工を行ったが、超音波ホーン42がフランジ部4の下面に接する向き(すなわち、紙容器1の開口が下向きとなる向き)に紙容器1を設置して超音波加工を行っても本発明と同様の効果を得ることができる。
【0072】
次に、フランジ部4のシワ6の紙容器製造時における変化状態について説明する。
【0073】
図4の(2)を参照して、上述したように、板紙原紙10に対してプレス加工されると、容器内面側(フランジ部4の上面)の罫線21の凸部23を中心としたシワ6が形成される。このとき、容器内面側(フランジ部4の上面)に形成されていた罫線21の凸部23の両側には、一対の隙間26a、26bが形成される。又、容器外面側(フランジ部4の下面)に形成されていた罫線21の凹部22は、その両側の部分から圧縮され、シワ6の内方に空間24が形成される。
【0074】
次に、図4の(3)を参照して、プレス工程後に、押圧されながら超音波加工によりシワ6が加熱される。すると、隙間26a、26bが閉じられると共に隙間26a、26b周辺の樹脂層が溶融して融着層となって隙間26a、26bを埋めるように互いに融着するので、一対の隙間跡27a、27bとなる。これにより、シワ6が平坦化され、容器内面側(フランジ部4の上面)の一対の隙間跡27a、27bの間には平坦状部分28が形成される。即ち、平坦状部分28とは、シワ6が超音波加工などのシワを押圧する工程を経て押しつぶされ、容器内面側(フランジ部4の上面)に形成された、圧潰シワ7の表面部分のことを言う。又、平坦とは、トップシールを阻害しない程度に全体として凹凸等の高さの変化が無い状態のことを言う。尚、本実施の形態においては、シワ6の上部の少なくとも一部に平坦状部分が形成されている。
【0075】
容器外面側(フランジ部4の下面)に形成されていた空間24は、押圧されながら超音波加工によりシワ6が加熱されると、容器外面側のシワ6の表面の樹脂層が溶融して融着層となって近接する周辺の樹脂層同士が互いに融着し、容器外面側のシワ6がある程度平坦化されるが、空間24は隙間26a、26bに比してかなり大きいので、シワ6の内方の空間24を完全には無くすことができず、シワ6(圧潰シワ7)の内方に空隙25が残る。
【0076】
次に、図4の(4)を参照して、このような紙容器1に水分を含む食品(内容物)を収容して紙容器1のフランジ部4にトップシール性を有する蓋材29としてプラスチックフィルムによるトップシール包装を行った場合、フランジ部4の上面は超音波加工によるシワ押圧工程後に形成された平坦状部分28を有するため、フランジ部が平坦化され、フランジ部4に漏れなくトップシールすることができる。又、シワ6(圧潰シワ7)の内方側の微細な空隙25はフランジ部4の下面に現れるため、トップシールへの影響を与えない。このため、トップシール性が向上した紙容器1となる。そして、フランジ部4が平坦化されているため、シワが平坦化されていない従来の紙容器に比べて強度が向上する。特に、シワ押圧工程はシワへの超音波加工を含むため、フランジ部の平坦化が容易になり、紙容器の生産性が向上する。
【0077】
尚、上記の実施の形態では、紙容器は外縁が長円形状のものであったが、フランジ部を備えた紙容器であればその形状は特に限定されない。例えば、容器開口上方から見た形状が円形、四角形、多角形、直線部を含む略楕円形などが挙げられる。容器の大きさも特に限定しない。又、容器形状は内方部に仕切りを備えるものも含む。
【0078】
又、上記の実施の形態では、プレス成形により形成される複数のシワは板紙原紙に形成された複数の罫線に基づいて形成されたものであったが、板紙原紙に予め罫線が形成されていなくても同様に強度向上やトップシール性向上の効果を奏する。
【0079】
更に、上記の実施の形態では、フランジ部の上面に現れるシワはフランジ部の上面の側壁部側の端部から縁巻部側の端部までに平坦状部分が形成されていたが、側壁部側の端部から縁巻部側の端部の少なくとも一部に平坦状部分が形成されていれば良い。又、フランジ部の上面に現れる複数のシワのうち、その一部のシワのみに平坦状部分が形成され、他のシワには平坦状部分が形成されていなくても良い。例えば、紙容器の外縁が長円形状である場合に、長手方向のフランジ部のシワのみに平坦状部分を形成することで長手方向の容器強度を向上させることが可能となるので、このように特定の方向や部位の強度を向上させることも可能となる。
【0080】
更に、上記の実施の形態では、平坦状部分がフランジ部の全周に形成されていたが、少なくともフランジ部の一部に形成されていれば良い。又、側壁部に形成されていても良い。即ち、側壁部(のシワ)に対して超音波加工を行っても良い。
【0081】
更に、図4の(2)及び図4の(3)を参照して、上記の実施の形態では、平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚み(S1)と平坦状部分を有さないシワの紙容器断面厚み(S2)との比が0.7以下であることが好ましい。このように構成することで、平坦状部分を有するシワである圧潰シワが平坦状部分を有さないシワに対して確実に扁平化するため、トップシール性が更に向上する。尚、S2は側壁部における超音波加工がされていないシワの紙容器断面厚みとして測定することもできる。
【0082】
更に、上記の実施の形態では、フランジ部は水平方向に延びていたが、水平方向とは、紙容器を水平面に載置したときの水平方向のみならず、水平方向へ向かって斜め上や斜め下へと延びている場合も含む。又、成形工程及び紙の特性から不可避の誤差を含む。
【0083】
更に、上記の実施の形態では、縁巻部はその高さが最も高い部分がフランジ部の上面と同一高さに位置していたが、フランジ部の上面より上方に位置していても良いし、下方に位置していても良い。
【0084】
更に、上記の実施の形態では、紙容器には縁巻部が形成されていたが、縁巻部が形成されていない紙容器であっても良い。
【0085】
更に、上記の実施の形態では、側壁部のシワは容器外面側から容器内面側へ折り込まれて形成されていたが、内面から外面へ折り込まれて形成されていても良い。この場合において、板紙原紙では、側壁部のシワに対応する罫線とフランジ部のシワに対応する罫線との間に罫線同士が繋がっていない箇所を設けることもできる。
【0086】
このように構成することで、シワの凹部が側壁部の内面側に位置する。すると、食品を収容してスプーン等を用いて喫食する際に内面側にシワの凸部が無いため、スプーン等が容器内面側のシワの凸部に引っ掛かることがない。又、紙容器の内面から外面へ折り込まれるシワが延びるのは側壁部の上部までとなるため、シワの内方に存在する微細な空隙による毛細管現象が発現したとしても毛細管現象により吸収された水分等は側壁部の上部に到達するだけでフランジ部には到達しない。このため、良好なトップシール性と喫食のし易さを両立できる。
【0087】
更に、上記の実施の形態では、トップシールフィルムのような蓋材を用いてトップシールを行っていたが、紙やプラスチックやアルミニウムなどの金属等からなる蓋材を嵌合しても良い。又、シュリンク包装されていても良い。
【0088】
尚、トップシールフィルムを用いる場合、蓋材となるトップシールフィルムにてシールすることで紙容器を密封できるものであれば、その種類、構成やシール態様は特に限定されず、又、トップシールフィルムが完全シールタイプであるかイージーピールタイプであるかも問わない。もちろん、汎用されている公知のヒートシール性を備えたトップシールフィルムも用いることができる。したがって、トップシールフィルムはシール性を備えるのであれば単層の樹脂で構成されるフィルムでもかまわないし、耐熱性やバリア性を備えるために単層のみならず複層の樹脂が積層されたフィルムであってもかまわない。特に、トップシールフィルムが高いガスバリア性が付与されたものを本発明の紙容器の蓋材として用いた場合には、ガスバリア性の高いトップシール紙容器とすることが可能となる。
【0089】
又、トップシールフィルムに用いる樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエンなどのジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、前述の熱可塑性樹脂が生物由来のバイオマス樹脂として製造されたものや、ポリブチレンサクシネート(PBS)やポリ乳酸(PLA)やセロファンなどの生分解性樹脂を用いることもできる。又、その中でも、特に、食品収容用包装容器のトップシールフィルムとして用いた場合にオーブンや電子レンジによる高温加熱に耐えうるような耐熱性を有する樹脂であることがより好ましい。又、紙容器に酸素のようなガスや水蒸気の透過を遮断や抑制するバリア性を付与したい場合には、このようなバリア性を備えた樹脂をフィルムやコーティングにて積層することもできる。バリア性を備えた樹脂の種類は特に限定されないが、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。又、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンのフィルム表面にアルミニウムなどの金属蒸着膜やシリカやアルミナのような無機系蒸着膜を形成したものもバリア性付与の目的で用いることができる。又、前述したような各種樹脂を複数組み合わせて積層してトップシールフィルムとしても良い。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂とエチレンビニルアルコール共重合樹脂やポリビニルアルコール樹脂などの高いガスバリア性を備えた樹脂とを少なくとも積層したトップシールフィルムが例示できる。特に、ポリエチレンテレフタレートにエチレンビニルアルコール共重合樹脂とを少なくとも積層したトップシールフィルムを用いた場合には、本発明の紙容器にトップシールした場合に高いガスバリア性を付与できるとともに耐熱性も高いトップシール紙容器とすることが可能となるので好ましい。もちろん、当該構成において他の樹脂(例えば、熱シールの場合におけるシーラント層)を積層したり、他の構成(例えば、紙やアルミニウム箔などの金属箔)を積層したりすることを排除するものではない。又、シーラント層も公知のシーラントフィルムのほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤により形成されていても良い。このようなトップシールフィルムの厚みも特に限定されないが、例えば、5μm~200μm程度の厚みのものが挙げられる。好ましくは、20μm~80μm程度の厚みであれば良い。
【0090】
更に、本発明の紙容器に用いる板紙原紙にあっては、紙の種類は特に限定されないが、例えば純白ロール紙、クラフト紙、コートボール紙、パーチメント紙、アイボリー紙、マニラ紙、カード紙、カップ紙、グラシン紙等のほか、耐水処理又は耐油処理を施した板紙又は合成紙等を用いることができ、用途に応じて所望の材質を選択すれば良い。又、使用目的に応じて樹脂フィルムを板紙に張り合わせたものや、押出ラミネート法による樹脂押し出し、樹脂コーティングした板紙等を組み合わせて用いることもできる。特に食品収納用途に用いる場合は、板紙の少なくとも片面(食品と接する面)に押出ラミネート法による樹脂層が形成されていることが好ましく、両面に樹脂層を形成したものを用いるのがより好ましい。
【0091】
更に、上記の板紙原紙の厚みは特に限定されないが、0.1~0.5mm(坪量重量100~500g/m)程度のものを好ましく使用できる。本発明の紙容器は、フランジ部のシワを超音波加工等により平坦状にした場合には、フランジ部の強度が向上するので、容器全体の変形に対する強度が高くなる。したがって、板紙原紙の厚みを従来よりも薄い板紙原紙を用いて成形することも可能であり、そのような薄い板紙を用いた場合でも、従来と遜色のない強度を確保することが可能となる。
【0092】
更に、板紙原紙の層間強度は、T字剥離法の場合は500mN/cm以上であることが好ましく、700mN/cm以上であることがより好ましい。インターナルボンドテスタ法(JAPAN TAPPI No.18-2「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」)に従う試験方法による場合は200J/m以上であることが好ましく、290J/m以上であることがより好ましい。紙容器の成形に通常用いられる板紙原紙は、抄紙による複数のパルプ層から構成されるため、層間強度が低いとパルプ層の間での層間剥離が生じ易くなると共に、成形時の座屈が生じ易くなる。板紙原紙の層間強度がT字剥離法の場合で500mN/cm以上又はインターナルボンドテスタ法の場合で200J/m以上であれば、紙容器成形時の板紙原紙の座屈、特に縁巻部形成時の板紙原紙の座屈の発生を抑えることができる。板紙原紙の層間強度の上限は特にないが、T字剥離法の場合は1500mN/cm以下が好ましく、1000mN/cm以下であることがより好ましい。インターナルボンドテスタ法の場合は800J/m以下が好ましく、500J/m以下であることがより好ましい。層間強度が上記の上限値を超えると、板紙原紙の剛性が高くなり過ぎて、成形性が低下したり、成形後のスプリングバックが生じ易くなったりするおそれがある。ここで層間強度とは、第1層と第2層の間や第2層と第3層の間の各々の層間の耐剥離強度のことを指すものである。層間強度を上記範囲内とすることにより、層間剥離を抑制することができ、特に縁巻部の成形性を向上させることが可能となる。尚、板紙原紙が3層や5層のように多層のパルプ層で構成される場合には、いずれの層間においても層間強度が上記範囲内であることがより好ましい。
【0093】
更に、板紙原紙は、所定の耐折強度を備えることが望ましい。一枚の板紙原紙をプレス成形することにより得られる紙容器の場合、紙容器の側壁部特にシワが多数集まるコーナー部に紙の破れが生じやすい。これは、板紙原紙におけるコーナー部に対応する部分は、プレス成形時に金型で垂直方向に立体的に折り曲げられ、更に複数のシワを形成するために複数方向から外力が作用するためである。そこで本例に用いる板紙原紙は、JIS P8115(2001)「紙および板紙のMIT試験機による耐折強さ試験方法」に準じて計測した耐折回数が、縦方向及び横方向いずれも800回以上2000回以下であるものとする。より好ましくは、耐折回数が1000回以上1800回以下である。耐折回数が800回未満の板紙原紙では、プレス成形時に紙容器の側壁部、特にコーナー部の成形時に紙の破れが生じてしまうおそれがある。耐折回数が2000回を超える板紙原紙では、紙の折り曲げ性が強すぎるため、プレス成形後に縁巻部のスプリングバックが発生し易く、紙容器の保形性を低下させるおそれがある。
【0094】
更に、上記の板紙原紙の表面には、樹脂のフィルムやコーティングが積層されていても良い。板紙原紙の少なくとも片面に樹脂層を形成する場合、樹脂の種類は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエンなどのジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、前述の熱可塑性樹脂が生物由来のバイオマス樹脂として製造されたものや、ポリブチレンサクシネート(PBS)やポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂を用いることもできる。又、その中でも、紙容器成形後の超音波加工に適した熱可塑性樹脂であることが好ましく、特に、食品収容用包装容器として用いた場合にオーブンや電子レンジによる高温加熱に耐えうるような耐熱性を有する熱可塑性樹脂であることがより好ましい。又、紙容器に酸素のようなガスや水蒸気の透過を遮断や抑制するバリア性を付与したい場合には、このようなバリア性を備えた樹脂をフィルムやコーティングにて積層することもできる。バリア性を備えた樹脂の種類は特に限定されないが、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などが挙げられる。又、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンのフィルム表面にアルミニウムなどの金属蒸着膜やシリカやアルミナのような無機系蒸着膜を形成したものもバリア性付与の目的で用いることができる。又、前述したような各種樹脂を複数組み合わせて板紙原紙表面に積層しても良い。例えば、板紙原紙の表面から順に、第1層目の樹脂層としてポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、第2層目の樹脂層としてエチレンビニルアルコール共重合樹脂やポリビニルアルコール樹脂などの高いガスバリア性を備えた樹脂、第3層目の樹脂層として第1層目と同様にポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂、というように複数の樹脂を積層することが例示できる。特に、板紙原紙の表面から順に、第1層目の樹脂層としてポリプロピレン、第2層目の樹脂層としてエチレンビニルアルコール共重合樹脂、第3層目の樹脂層としてポリプロピレン、との積層構成とした場合には、紙容器に高いガスバリア性を付与できるとともに耐熱性も高くて加工性が良く、又、原料コストも安価な構成とすることが可能となるので好ましい。もちろん、当該構成において他の樹脂を積層したり他の構成(例えば、アルミニウム箔などの金属箔)を積層したりすることを排除するものではない。樹脂層の形成方法としては、押出ラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネート、樹脂溶液のコーティングなどが例示できる。樹脂が積層されていることにより成形後の紙容器に耐熱性、耐水性、耐気液透過性などの特性を付与することできる。又、前述したような紙容器に高いガスバリア性を付与したい場合には、ガスバリア性樹脂フィルムを予め準備しておき、板紙原紙の表面に別の樹脂層を押出ラミネートする際にその樹脂層の上に当該ガスバリア性樹脂フィルムを積層するとの方法を採用することもできる。このような方法を用いた場合、別途接着剤を用いることなく、板紙原紙の表面に複数の樹脂層を形成することができる。例えば、前述したような、板紙原紙の表面から順に、第1層目の樹脂層としてポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、第2層目の樹脂層としてエチレンビニルアルコール共重合樹脂やポリビニルアルコール樹脂などの高いガスバリア性を備えた樹脂、第3層目の樹脂層として第1層目と同様にポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂、というように複数の樹脂を積層する場合には、第2層目の樹脂層と第3層目の樹脂層が積層されたガスバリア性樹脂フィルムを予め準備しておき、板紙原紙の表面に第1層目の樹脂層としてポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂を押出ラミネートする際に、第1層目の樹脂層の上にこのガスバリア性樹脂フィルムを積層することで、紙容器に簡便にガスバリア性を付与することが可能となる。したがって、ガスバリア性樹脂フィルムとして市販されているような公知のガスバリア性樹脂フィルムも用いることもできる。
【0095】
更に、上記の板紙原紙の表面の樹脂の厚みは特に限定されないが、例えば、厚さ10μm~50μmの範囲が挙げられる。特に好ましくは20μm~30μmの範囲内である。ただし、前述のように樹脂層として複数の樹脂層を積層する場合には、この範囲を超えても良く、例えば、複数の樹脂層を積層する場合の総合計厚みとしては、10μm~200μmの範囲が挙げられ、特に好ましくは30μm~100μmであり、更に好ましくは50μm~70μmである。この範囲内であれば、樹脂層形成による所望の効果を付与することができる。又、厚みのある樹脂層とすることでフランジ部を平坦化した際にフランジ部表面に紙の凹凸がより現れにくくなるので、フランジ部のさらなる平坦化にも寄与する。樹脂層の厚みがこの範囲を下回る場合には樹脂層形成による所望の効果が期待できないおそれがあり、樹脂層の厚みがこの範囲を上回る場合にはコストが高くなる。又、複数の樹脂層を積層する場合の総合計厚みが200μmを上回る場合には、板紙原紙の厚み又は重量との関係で、もはや紙容器とは言えなくなってしまうおそれがある。
【0096】
更に、上記の板紙原紙の表面には、印刷が施されていても良い。これによって意匠性を向上させることができる。
【0097】
更に、上記の板紙原紙には、側壁部、フランジ部及び縁巻部に対応する部分の全周において罫線が形成されていたが、側壁部及びフランジ部の少なくとも一部において形成されていれば良い。又、罫線が形成されていなくとも良い。
【0098】
更に、図4の(2)及び図4の(3)を参照して、シワ押圧工程は、超音波加工前のシワの紙容器断面厚み100%に対し、超音波加工により平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚みを70%とすることが更に好ましい。このように構成することで、フランジ部のシワが超音波加工前のシワに対して確実に扁平化するため、トップシール性が更に向上した紙容器となる。
【0099】
更に、本発明の実施の形態による紙容器は特定の製造方法により製造されていたが、他の製造方法により製造されるものであっても良い。
【0100】
更に、本発明の実施の形態による紙容器のフランジ部は超音波加工によってシワを押圧して平坦状部分を形成する製造方法であったが、超音波加工以外の方法で押圧して平坦状部分を形成する製造方法であっても良い。
【実施例0101】
以下、実施例に基づいて本発明について具体的に説明する。尚、本発明の実施の形態は実施例に限定されるものではない。
【0102】
本発明の実施例及び比較例の試験体を準備し、これらの試験体についてシワの紙容器断面の厚みを比較するシワの紙容器断面の厚み測定試験、トップシールの密着性を評価するエア漏れ試験、及び、紙容器の強度を測定する強度測定試験を行った。
<試験体の準備>
・実施例1
まず、両面に樹脂層が形成されると共に、側壁部対応部、フランジ部対応部及び縁巻部対応部に罫線が形成された板紙原紙を準備し(準備工程)、この板紙原紙をプレス成形することにより紙容器を形成した(プレス工程)。尚、板紙原紙は板紙厚みが約0.3mm、坪量約260g/mであり、両面それぞれに約20μmのポリプロピレン樹脂を押出ラミネートしたものである。紙容器の大きさは、平面視長辺方向長さが約179mm(フランジ部を含む)、短辺方向長さが約120mm(フランジ部を含む)、底部からフランジ部までの高さが約30mm、縁巻部直径が約3mmであった。又、板紙原紙の罫線は容器外面側から容器内面側へ折り込まれて形成されているため、プレス成形後の紙容器の側壁部及びフランジ部には、容器外面側(フランジ部の下面)から容器内面側(フランジ部の上面)へ折り込まれるようにシワが形成されている(以下、容器外面側から容器内面側へ折り込まれるようにシワが形成されている状態を「逆目」と称する)。
【0103】
次に、図5で示すような超音波加工装置の台座上にプレス成形後(プレス工程後)の紙容器を載置し、超音波ホーンを紙容器の上方から降下させ、台座と超音波ホーンとで紙容器のフランジ部を挟み、フランジ部に3.0kwの超音波振動を0.5秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした(シワ押圧工程)。この紙容器を実施例1とした。
・実施例2
実施例1と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.0秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例2とした。
・実施例3
実施例1と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.5秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例3とした。
・実施例4
実施例1に用いた板紙原紙に代えて、板紙厚みが約0.3mm、坪量約260g/mであり、板紙原紙の片面に約20μmのポリプロピレン樹脂を押出ラミネートするとともに反対面には板紙原紙の表面から順に、第1層目の樹脂層として約20μmのポリプロピレン樹脂、第2層目の樹脂層として約20μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂、第3層目の樹脂層として約20μmのポリプロピレン樹脂を積層した板紙原紙を用いた以外は、実施例1と同様にして板紙原紙のポリプロピレン樹脂のみを形成した側が容器外面側となるようにしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.0秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例4とした。尚、板紙原紙への第1層目から第3層目の樹脂層の形成は、第2層目の樹脂層と第3層目の樹脂層が積層された複合フィルム(ガスバリア性樹脂フィルム)を予め準備しておき、板紙原紙の表面に第1層目の樹脂層としてポリプロピレン樹脂を押出ラミネートする際に、第1層目の樹脂層の上にこのガスバリア性樹脂フィルムを積層することにより形成した。
・実施例5
実施例1に用いた板紙原紙に代えて、板紙厚みが約0.3mm、坪量約260g/mであり、板紙原紙の片面に約20μmのポリプロピレン樹脂を押出ラミネートするとともに反対面には板紙原紙の表面から順に、第1層目の樹脂層として約20μmのポリプロピレン樹脂、第2層目の樹脂層として約20μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂、第3層目の樹脂層として約20μmのポリプロピレン樹脂を積層した板紙原紙を用いた以外は、実施例1と同様にして板紙原紙のポリプロピレン樹脂のみを形成した側が容器内面側となるようにしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.5秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例5とした。尚、板紙原紙への第1層目から第3層目の樹脂層の形成は、実施例4と同様の方法で行った。
・実施例6
実施例1の準備工程における板紙原紙への罫線の形成を後述する態様とした以外は、実施例1と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.0秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例6とした。ここで、実施例6の紙容器を得るにあたり、板紙原紙の罫線は、プレス成形後の紙容器の側壁部に対応する部分の罫線は容器内面側から容器外面側へ折り込まれるように形成されているとともに、プレス成形後の紙容器のフランジ部に対応する部分の罫線は容器外面側から容器内面側へ折り込まれるように形成され、側壁部のシワに対応する罫線とフランジ部のシワに対応する罫線との間に罫線同士が繋がっていない箇所を設けた。これにより、プレス工程後であって超音波加工装置を用いたシワ押圧工程前の紙容器は、その側壁部には容器内面側から容器外面側へ折り込まれるようにシワが形成されている(以下、容器内面側から容器外面側へ折り込まれるようにシワが形成されている状態を「順目」と称する)とともに、そのフランジ部には、逆目のシワが形成されており、超音波加工装置を用いたシワ押圧工程によりフランジ部のシワが押しつぶされる。
・実施例7
実施例6と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例6と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.5秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけ上下方向からシワを押しつぶした。この紙容器を実施例7とした。
・比較例1
実施例1と同様にしてプレス成形した紙容器を比較例1とした。すなわち、超音波加工装置を用いたシワ押圧工程を行っていない紙容器である。
・比較例2
実施例1と同様にしてプレス成形した紙容器に、フランジ部には超音波加工装置を用いたシワ押圧工程を行わずに、単にフランジ部に0.4Mpa/cmの圧力のみをかけシワを押しつぶした。この紙容器を比較例2とした。すなわち、超音波加工装置を用いたシワ押圧工程を行っていない紙容器である。
・比較例3
両面に樹脂層が形成されると共に、側壁部対応部、フランジ部対応部及び縁巻部対応部に罫線が形成された板紙原紙をプレス成形することにより紙容器を形成した。尚、板紙原紙は板紙厚みが約0.3mm、坪量約260g/mであり、両面それぞれに約20μmのポリプロピレン樹脂を押出ラミネートしたものである。紙容器の大きさは、平面視長辺方向長さが約179mm(フランジ部を含む)、短辺方向長さが約120mm(フランジ部を含む)、底部からフランジ部までの高さが約30mm、縁巻部直径が約3mmであった。又、板紙原紙の罫線は容器内面側から容器外面側へ折り込まれて形成されているため、プレス成形後の紙容器の側壁部及びフランジ部には、順目のシワが形成されている。この紙容器を比較例3とした。すなわち、実施例1とはシワの形成方向が異なる紙容器であり、超音波加工装置を用いたシワ押圧工程を行っていない紙容器である。
・比較例4
比較例3と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.0秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけシワを押しつぶした。この紙容器を比較例4とした。すなわち、実施例1とはシワの形成方向が異なる紙容器であり、実施例2と同じ条件にて超音波加工装置を用いてシワ押圧工程を行った紙容器である。
・比較例5
比較例3と同様にしてプレス成形した紙容器に、実施例1と同様の超音波加工装置を用いてフランジ部に3.0kwの超音波振動を1.5秒与え、0.4Mpa/cmの圧力をかけシワを押しつぶした。この紙容器を比較例5とした。すなわち、実施例1とはシワの形成方向が異なる紙容器であり、実施例3と同じ条件にて超音波加工装置を用いてシワ押圧工程を行った紙容器である。
・比較例6
実施例4と同様にしてプレス成形した紙容器を比較例6とした。すなわち、超音波加工装置を用いたシワ押圧工程を行っていない紙容器である。
<シワの紙容器断面の厚み測定試験、エア漏れ試験及び強度測定試験>
・試験1-1.シワの紙容器断面の厚み測定試験
マイクロメーターでフランジ部の4点のシワの紙容器断面厚みを測定した。
【0104】
マイクロメーターは、株式会社ミツトヨ製、品番:M110-25を用いた。
【0105】
図1を参照して、測定点はフランジ部の長手方向の両側2点(測定点A及び測定点C)及び短手方向の両側2点(測定点B及び測定点D)とした。
【0106】
結果は以下の表1に示す通りであった。
【0107】
【表1】
次に、各実施例及び比較例の測定点A~測定点Dの下につながる側壁部のシワの紙容器断面の厚み(S2)を測定した。
【0108】
そして、フランジ部の超音波加工前と超音波加工後のシワの紙容器断面の厚みを比較するため、フランジ部のシワの紙容器断面の厚み(S1)/側壁部のシワの紙容器断面の厚み(S2)を計算した。尚、本試験において、側壁部には超音波加工がされていないため、側壁部のシワの紙容器断面厚みをフランジ部の超音波加工前のシワの紙容器断面の厚みとして用いている。
【0109】
結果は以下の表2に示す通りであった。
【0110】
【表2】
表2を参照して、超音波加工がされた実施例1~実施例7の4点平均はいずれも、S1/S2<0.7であった。又、超音波加工が1.0秒以上された実施例2~実施例7の4点平均は、S1/S2≦0.59であった。以上の測定結果から、超音波加工によりシワが確実に扁平化することが分かった。尚、超音波加工がされた比較例4及び比較例5の4点平均は、S1/S2≦0.57であった。
・試験1-2.エア漏れ試験
シワの紙容器断面の厚み測定試験のサンプルにトップシールし、0.1Mpaの圧縮エアを封入して水没させ、シール面からのエア漏れを目視確認した。シール条件は、加熱温度を180度、加熱時間を2秒、圧力を0.5Mpa/cm、シール回数を1回で行った。
【0111】
又、エア漏れが無かったものを◎、エア漏れが超音波加工無し、圧縮無しのものより減少し微量だったものを〇、エア漏れがあり不良なものを×として評価した。
【0112】
結果は以下の表3に示す通りであった。
【0113】
【表3】
表3を参照して、実施例1~実施例7はいずれも、エア漏れが減少し、トップシール性が向上することが確認された。
【0114】
又、S1/S2<0.7であった実施例2~実施例7は、エア漏れが無くなり、トップシール性が更に向上することが確認された。
・試験1-3.酸素ガス透過度測定試験
1.測定サンプルの準備
測定サンプルとして、実施例4及び実施例5の紙容器を準備した。又、実施例5-2として、実施例5の紙容器において、第2層目の樹脂層が約10μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂であること以外は実施例5と同様にして得られた紙容器を準備した。尚、いずれの紙容器もシワ押圧工程を経たものである。次いで、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)/ナイロン/PP(ポリプロピレン樹脂)用イージーピールシーラント層の構成を備えた合計厚みが50μmである積層フィルム(三菱ケミカル社製、商品名ダイアミロンVM60)と12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルムとをドライラミネートすることで、PET/EVOH/ナイロン/イージーピールシーラント層との構成を備えるトップシール性を有する蓋材を作製し、実施例4、実施例5及び実施例5-2の紙容器に対して、この蓋材のイージーピールシーラント層が紙容器に面するようにして紙容器のフランジ部にヒートシールにてトップシールすることで、本発明のトップシール紙容器を準備した。
2.測定サンプルによる測定試験
上記1で得られた実施例4,実施例5及び実施例5-2のトップシール紙容器の酸素ガス透過度をJIS K7126-2に準拠した方法にて測定した。
【0115】
尚、測定装置と測定条件等は以下のとおりとし、トップシール紙容器そのものを測定サンプルとして測定に供した。
測定装置:OX-TRAN2/21(MOCON社製)
温度及び湿度:23℃ 50%RH空気(外側 試験ガス)、23℃ 乾燥状態の窒素(内側 キャリヤーガス)
透過ガス:空気(21%酸素)
透過方向:外側から内側へ透過
結果は以下の表4に示す通りであった。
【0116】
【表4】
表4を参照して、上記1で得られた実施例4、実施例5及び実施例5-2のトップシール紙容器はいずれも酸素ガス透過性が良好になることが確認された。又、第2層目の樹脂層が約20μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂である実施例4及び実施例5は、約10μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂である実施例5-2よりも酸素ガス透過性がより良好になることが確認された。
・試験2.強度測定試験
I.測定試験の準備
実施例として、上述した実施例1~実施例3を準備した。
【0117】
比較例として、上述した比較例1を準備した。
【0118】
これらの実施例及び比較例を用いて、それぞれの円周方向強度(長手方向、短手方向)を測定した。
【0119】
測定装置として、株式会社島津製作所製材料試験機「オートグラフ」(登録商標)及びそのデータ処理ソフト「TRAPEZIUM」(登録商標)を用いた。
【0120】
測定試験は上記「TRAPEZIUM」(登録商標)の円周方向試験に準じたが、切替ストロークの数値を10mmから20mmへと変更している。
II.長手方向の測定試験
図6図1で示した紙容器等を対象とした測定試験の様子を示した模式図である。
【0121】
図6を参照して、紙容器1を測定装置30により下端を固定しながら、図の矢印で示される方向から押圧し、その応力を測定装置30により測定した。
【0122】
当該測定試験を実施例及び比較例のそれぞれ3個ずつに対して行い、その3回の算術平均を計算し、測定試験の結果とした。
【0123】
図7図6で示した測定試験の結果を示したグラフであって、(1)は長手方向のものであり、(2)は短手方向のものである。
【0124】
図7の(1)を参照して、実施例及び比較例の紙容器に対して長手方向に同じ試験力[N]が加えられたとき、実施例は比較例よりも変形量[mm]が低下することが分かった。又、実施例1~実施例3では、超音波加工時間が最も長い実施例3が最も変形量[mm]が低下することが分かった。
III.短手方向の測定試験
測定方法として、紙容器を90度傾けて設置したほかは上記の長手方向の測定試験に準じた。
【0125】
図7の(2)を参照して、実施例及び比較例の紙容器に対して短手方向に同じ試験力が加えられたとき、実施例は比較例よりも変形量が低下することが分かった。又、実施例1~実施例3では、超音波加工時間が最も長い実施例3が最も変形量[mm]が低下することが分かった。
【0126】
以上の測定試験の結果から、超音波加工された本発明の紙容器にあっては、紙容器の強度が向上していることが確認された。
【符号の説明】
【0127】
1…紙容器
2…底部
3…側壁部
4…フランジ部
5…縁巻部
6…シワ
10…板紙原紙
14…フランジ部対応部
21…罫線
28…平坦状部分
29…トップシール性を有する蓋材
S1…平坦状部分を有するシワの紙容器断面厚み
S2…平坦状部分を有さないシワの紙容器断面厚み
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10