(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019110
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】可撓性無機エレメントおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/09 20060101AFI20240201BHJP
C03C 3/076 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/064 20060101ALI20240201BHJP
C03C 3/066 20060101ALI20240201BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240201BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C03B33/09
C03C3/076
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/064
C03C3/066
C03C21/00 101
C03C15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122286
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22187862
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】512139847
【氏名又は名称】ショット グラス テクノロジーズ (スゾウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT GLASS TECHNOLOGIES (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】79 Huoju Road, Science & Technology Industrial Park, Suzhou New District, Suzhou, Jiangsu 215009, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハイス-シュケ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ザイベアト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ グレーサー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ロイグナー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】フオン ホー
(72)【発明者】
【氏名】ユリア ヴァイスフーン
【テーマコード(参考)】
4G015
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G015FA09
4G015FB01
4G015FC05
4G059AA01
4G059AB05
4G059AB11
4G059AC01
4G059BB04
4G059HB00
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
4G059HB24
4G059HB25
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DA07
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4G062DB04
4G062DC01
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4G062JJ01
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4G062JJ10
4G062KK01
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM12
4G062MM15
4G062NN01
4G062NN33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無機脆性材料を含む可撓性エレメントおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】2つの対向面と周縁部とを有する無機脆性材料のエレメントであって、エレメントは、1つの第1のセクション(9)と2つの第2のセクションとを含む少なくとも3つのセクションを含み、第2のセクションは、第1のセクション(9)が第2のセクションの間に配置されるように第1のセクションに隣接しており、第1のセクション(9)は、開口部(90)および相互接続部(91)の配列を含み、それにより、第1のセクション(9)は、第2のセクションよりも高い可撓性を有する、エレメントにおいて、少なくとも1つの開口部(90)が、交差して頂上部を形成する少なくとも2つの延在部(8,10)を含む折り曲げの形状を有することを特徴とするエレメントが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向面(3,5)と周縁部(7)とを有する無機脆性材料のエレメント(1)であって、前記エレメント(1)は、1つの第1のセクション(9)と2つの第2のセクション(11,13)とを含む少なくとも3つのセクションを含み、前記第2のセクションは、前記第1のセクション(9)が前記第2のセクション(1,13)の間に配置されるように前記第1のセクションに隣接しており、前記第1のセクション(9)は、開口部(90)および相互接続部(91)の配列を含み、それにより、前記第1のセクション(9)は、前記第2のセクション(11,13)よりも高い可撓性を有する、エレメント(1)において、
- 少なくとも1つの開口部(90)が、交差して頂上部(4)を形成する少なくとも2つの延在部(8,10)を含む折り曲げの形状を有する
ことを特徴とする、エレメント(1)。
【請求項2】
前記エレメント(1)が、互いに隣接する折り曲げ状の少なくとも2つの開口部(90)を含み、前記開口部(90)の間の前記相互接続部(91)は、突出部(14)を形成している、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項3】
以下の特徴:
- 前記第1のセクション(9)が、前記第2のセクション(11,13)の曲げ方向(95)を規定し、前記曲げ方向(95)と、前記折り曲げの前記延在部(8,10)の少なくとも1つおよび/または少なくとも1つの相互接続部(91)とが、角をなしている、
- 前記開口部(90)が、前記開口部(90)の頂点(21,22,23)によって画定される隣接する三角形(90)が重なり合って、ある三角形(20)のある辺が隣接する三角形(20)の領域内に位置するように配向され、分布している
のうち少なくとも1つを有する、請求項1または2記載のエレメント(1)。
【請求項4】
棒状部(92)の長さ(l)、前記エレメント(1)の前記曲げ方向に対して垂直な前記長さ(l)の成分(h
l)、前記曲げ方向に対して平行な前記長さ(l)の成分(s)、前記エレメント(1)の材料のヤング率(E)、厚み(d)、前記開口部および相互接続部の配列の周期長(p)、および前記エレメント(1)の曲げ半径(R)が、以下の関係:
【数1】
のうちの少なくとも1つ、好ましくは双方を満たす、請求項1から3までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項5】
前記折り曲げ状の開口部(90)が、列をなして並べて配置されており、前記列が、前記曲げ方向に対して平行に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項6】
前記開口部(90)が、経路を規定できるように配置および形成されており、前記経路は、相互接続部(91)に沿って、次いでさらに前記相互接続部(91)に接続された棒状部(92)に沿って、次いで前記棒状部(92)の端部にある別の相互接続部(91)に沿って、次いで前記別の相互接続部(91)の反対側の端部にある別の棒状部(92)に沿って延び、前記経路は、線状のセグメントで構成されており、各セグメントは、開口部(90)の縁部で始まり、開口部(90)の縁部で終わり、前記経路(30)の隣接する線状のセグメントは、少なくとも1つの鋭角と少なくとも1つの鈍角とを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項7】
前記線状のセグメントはそれぞれ、開口部(90)または相互接続部(91)の突出部のいずれかの頂点(25,26,27,28,29)で始まり、前記頂点(25,26,27,28,29)で終わる、請求項6記載のエレメント(1)。
【請求項8】
前記開口部(90)の前記配置、サイズおよび形状が、前記エレメント(1)を曲げた際に以下の条件:
【数2】
が満たされるように選択され、ここで、「E」は、ヤング率であり、dは、前記エレメント(1)の厚みを表し、前記変数c
1,底部,y,c
2,底部,y,c
2,頂部,y,c
3,頂部,yは、前記経路(30)に沿った前記頂点のy座標を表し、前記変数c
1,底部,x,c
2,頂部,x,c
2,底部,xおよびc
3,頂部,xは、前記経路(30)に沿った前記頂点のx座標を表し、前記x座標は、曲げ軸の方向に沿って延び、y方向は、前記曲げ軸の方向に対して垂直である、請求項7記載のエレメント(1)。
【請求項9】
前記第1のセクション(9)の前記可撓性が、前記第2のセクション(11,13)に比べて少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも4倍の高さである、請求項1から5までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項10】
以下の特徴:
- 前記エレメント(1)が、脆性材料としてガラスを含む、
- 前記第1のセクション(9)が、前記第2のセクション(11,13)のヒンジを形成する、
- 前記エレメント(1)が、少なくとも5つのセクションを含み、前記少なくとも5つのセクションは、3つの第2のセクション(11,12,13)と、2つの第1のセクション(9a,9b)とを含み、前記第1のセクション(9a,9b)はそれぞれ、前記第1のセクション(9a,9b)が前記第2のセクション(11,12,13)のヒンジを形成するように2つの第2のセクション(11,12,13)の間に配置されており、好ましくは前記第1のセクション(9a,9b)は、異なるように形成されている
のうち少なくとも1つを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項11】
前記エレメント(1)のガラス組成物が、重量%で各成分を以下の実施形態:
- 第1の実施形態:
SiO2 30~85
B2O3 3~20
Al2O3 0~15
Na2O 3~15
K2O 3~15
ZnO 0~12
TiO2 0.5~10
CaO 0~0.1
- 第2の実施形態:
SiO2 55~75
Na2O 0~15
K2O 2~14
Al2O3 0~15
MgO 0~4
CaO 3~12
BaO 0~15
ZnO 0~5
TiO2 0~2
- 第3の実施形態:
SiO2 58~65
B2O3 6~10.5
Al2O3 14~25
MgO 0~3
CaO 0~9
BaO 3~8
ZnO 0~2、ここで、前記第3の実施形態によれば、前記ガラスは、好ましくは実質的にアルカリ金属酸化物を含まない、
- 第4の実施形態:
SiO2 50~65
Al2O3 15~20
B2O3 0~6
Li2O 0~6
Na2O 8~17
K2O 0~5
MgO 0~5
CaO 0~7、好ましくは0~1
ZnO 0~4、好ましくは0~1
ZrO2 0~4
TiO2 0~1、好ましくは実質的にTiO2を含まない、
のうちの1つに従って含む、請求項10記載のエレメント。
【請求項12】
前記エレメント(1)が、以下の特徴:
- 前記開口部(90)が、可変の幅を有する、
- 前記開口部(90)が、不規則な輪郭を有する、
- 前記エレメント(1)が、化学強化または熱強化されている、
- 少なくとも一部の数の開口部(90)が、プラスチックで充填されている
のうち少なくとも1つを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項13】
以下の特徴:
- 前記開口部(90)中にプラスチックが存在しないエレメント(1)について、前記エレメント(1)の撓みによる曲げ力の変化が、最大でも30%である、
- 前記プラスチック(30)が、透明である、
- 前記プラスチック(30)が、前記エレメント(1)の前記脆性材料の屈折率と一致している、
- 前記プラスチック(30)が、エラストマーを含む、
- 前記プラスチック(30)が、シリコーンを含む
のうち少なくとも1つを有する、請求項12記載のエレメント(1)。
前記エレメント(1)が、化学強化されており、かつ以下の特徴:
- 前記エレメント(1)が、100MPa超、好ましくは250MPa超の圧縮応力を有する、
- 前記エレメント(1)が、1500MPa未満、好ましくは1300MPa未満の圧縮応力を有する、
- DoLが、1μm超、好ましくは3μm超である、
- 前記DoLが、0.4・t未満、好ましくは0.3・t未満である、
- 前記構造化および化学強化が施された第1のセクション(9)が、500t以下、好ましくは30t以下の曲げ半径で破損することなく曲げることができ、ここで、tは、前記ガラスの厚みである
のうち少なくとも1つを有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のエレメント(1)。
【請求項14】
互いに可動である少なくとも2つのセクションを有する請求項1から13までのいずれか1項記載の平坦なエレメント(1)を備えた、物品。
【請求項15】
前記平坦なエレメント(1)が、前記第1のセクションで曲げられかつ折り曲げられており、前記面(3,5)のうち一方の前記第2のセクション(11,13)の表面が互いに対向している、請求項14記載の物品。
【請求項16】
以下の特徴:
- 前記平坦なエレメント(1)が、互いに対向する前記第2のセクション(11,13)の前記表面が平行となるかまたは鋭角に配置されるように曲げられている、
- 互いに対向する前記第2のセクション(11,13)の前記表面が、前記第1のセクション(9)が外側に膨らんで、前記折り曲げられた平坦なエレメントの厚みが、前記第1のセクション(9)と前記第2のセクション(11,13)との間の境界線または前記第2のセクション(11,13)が対向する位置よりも前記第1のセクション(9)においてより大きくなるように互いに接近した位置にある、
- 前記エレメント(1)が、サンドイッチ構造体のうちの1つの層を形成している、
- 前記エレメント1の少なくとも一方の面(3,5)が、有機層、特にプラスチック層(35)に積層されている、
- 積層体が、前記エレメント(1)に積層された板ガラスを含む、
- 前記物品が、折り曲げ可能なディスプレイである、
- 前記物品が、押しスイッチを備え、前記押しスイッチの押しボタンが、前記第2のセクション(11,13)のうちの1つにより形成されている
のうち少なくとも1つを有する、請求項15記載の物品。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項記載の無機脆性材料のエレメント(1)の製造方法であって、以下の工程:
- 脆性材料のプレート状のエレメント(1)を提供する工程、
- 前記エレメント(1)に超短パルスレーザのレーザビームを照射して集束させる工程であって、ここで、前記レーザビーム(50)は、前記エレメント(1)の前記脆性材料が透過する波長を有するため、前記レーザビームは、前記エレメント(1)を透過することができるものとする工程、
- 前記レーザビームを集束させて前記エレメント(1)内に細長い焦点を生成する工程であって、ここで、前記レーザビームの強度は、前記焦点に沿って前記エレメント(1)内にフィラメント状損傷ゾーンを生成するのに十分であるものとする工程、
- 前記レーザビームを前記エレメントに対して相対的に移動させて、複数のフィラメント状損傷ゾーンを、多数のリング状の経路に沿って並べて導入する工程、
- 前記エレメントをエッチング液に曝してエッチングする工程であって、前記エッチング液が前記フィラメント状損傷ゾーンに侵入することで、前記フィラメント状損傷ゾーンが広がってチャネルが形成され、前記チャネルが広がって結合して前記開口部(90)が形成され、その結果、1つの第1のセクション(9)と2つの第2のセクション(11,13)とを含む少なくとも3つのセクションが形成され、ここで、前記第2のセクションは、前記第1のセクション(9)が前記第2のセクション(11,13)の間に配置されるように前記第1のセクションに隣接しており、前記第1のセクション(9)は、前記開口部(90)を含み、それにより、前記第1のセクション(9)は、前記第2のセクション(11,13)よりも高い可撓性を有するものとする、工程
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機脆性材料を含む可撓性エレメントおよびその製造方法に関する。特に本発明は、可撓性ガラスエレメントに関する。
【0002】
背景技術
無機材料は、高い温度安定性および硬度を有する。しかし、これらの材料は脆い傾向があるため、可撓性エレメントの材料が必要な場合、通常は、脆性材料が材料として選択されることはない。
【0003】
しかし、近年、表示装置などのカバーとしての使用に向けて可撓性が高められた高透過性ガラスエレメントの使用が進められている。通常、板ガラスなどのガラスエレメントの可撓性を高めるためには、その厚みを減少させることが行われている。しかし、ガラスエレメントの厚みを減少させると、その強度、例えば衝撃強度も低下する。このことは、ポリマーとガラスエレメントとを用いたサンドイッチ設計を用い、例えば積層法によりそれらを組み合わせることにより補償することができる。しかし、サンドイッチは層間剥離を起こしやすく、また、界面で屈折率にずれが生じる結果として、このようなサンドイッチ積層体を通過する光の透過率がさらに低下する可能性がある。上記の長所および短所は、他の無機脆性材料にも当てはまり、ガラスエレメントのみに限定されるものではない。
【0004】
したがって、少なくとも3つのセクションを含む無機脆性材料のエレメントであって、1つの第1のセクションが2つの第2のセクションに隣接しており、この第1のセクションがこれらの第2のセクションの間に配置されているエレメントを提供することが提案されている。第1のセクションは、第2のセクションよりも高い可撓性を有するように形成されている。これは、エレメントの「第1のセクション」となる部分を細くするか、またはエレメントの将来の「第1のセクション」に貫通穴もしくは止まり穴となり得る穴を導入することによって達成することができる。例えば、第1のセクションは、エレメントを貫通する、すなわちエレメントの一方の面と他方の面との間に通路を形成する開口部の配列を有することができる。第1のセクションを細くし、また第1のセクションに穴を導入することで、第1のセクションが第2のセクションよりも高い可撓性を有するようになり、これにより、第1のセクションは第2のセクションのヒンジセクションを形成することもできる。言い換えれば、第1のセクションは、曲げセクションである。例えば、一般的に使用されている構造体は、欧州特許出願公開第3936485号明細書、国際公開第2020/226939号および国際公開第2013/123353号に記載されており、曲げ軸に対して平行に配向した平行の線または溝で構成され、これらは、稜線部(相互接続部とも呼ばれる場合がある)によって相互に接続されている。
【0005】
非常に一般的には、このような穴は、屈折率を一致させた充填材、例えばプラスチックやゴム、または接着剤で充填される。しかし、充填材の屈折率とガラスなどの無機脆性材料の屈折率とを100%完全に一致させることは不可能であり、これが光学的歪みの原因となる。開口部の壁の粗さは、さらに光学的歪みを助長する。これは、先行技術に対する提案された平行構造体の主要な欠点であり、なぜならば、ディスプレイのような電気光学デバイスのカバーとして使用されると、モアレ効果のような光学干渉現象が生じるためである。
【0006】
前述の細長い平行穴とは異なる形状の穴を含む他のパターンも提案されている。例えば、パターンには、円形、正方形または菱形の構造が含まれ得る。
【0007】
しかし、これらの構造は依然として対称的な形状であり、エレメントの一方向の曲げに対して最適化されていない。特に、このような穴あき板ガラスを画素ディスプレイのカバーとして使用する場合、穴の規則的で周期的な配列によって、総じて、知覚可能なモアレパターンが生じる。
【0008】
発明の目的
よって、本発明の目的は、先行技術の欠点を少なくとも部分的に克服する曲げセクションを含む無機脆性材料エレメントを提供することである。さらなる目的は、該エレメントの製造方法を提供することである。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、本開示の従属請求項、明細書および図面に開示されている。
【0010】
したがって、本開示は、2つの対向面と周縁部とを有する無機脆性材料のエレメントに関する。エレメントは、少なくとも3つのセクションを含み、該エレメントは、1つの第1のセクションとこの第1のセクションに隣接する2つの第2のセクションとを含み、第1のセクションは、第2のセクションの間に配置されている。第1のセクションは、開口部および相互接続部の配列を含み、第1のセクションは、第2のセクションよりも高い可撓性を有する。開口部の少なくとも1つは、少なくとも延在部を含む折り曲げの形状を有しており、該延在部は、交差して頂上部を形成している。
【0011】
本発明の範囲において、折り曲げとは、少なくとも2つの延在部を有する開口部の屈曲または湾曲した形状であって、該延在部は、交差して頂上部またはヒンジを形成するものとする、形状を指すと理解される。例えば、開口部は、山型のような形状であってもよいし、総じてV字型やU字型であってもよい。さらに、本開示の趣意において、折り曲げとは、方向転換を示す任意の形状であると理解される。その意味で、ドーム状の開口部だけでなく、弧も、折り曲げであると理解される。円弧の場合、頂上部は、変向点、例えば特に曲げ軸に沿ったまたは曲げ軸に対して平行な方向の極小部や極大部であるとも理解することができる。開口部の境界線は、直線であってもよいが、境界線が正弦波状または不規則な形状であることも可能であり、好ましい場合もある。例として、
図6、
図8および
図9に、本発明の趣意での折り曲げの形状を有する開口部の例示的な形状を、正確な縮尺によらずに概略的に示す。
【0012】
このような開口部の形状は、曲げ応力低減の点で非常に有利であることが本発明者らによって見出された。すなわち、折り曲げ様の形状を有する開口部の経路に沿った方向転換があるため、エレメントを曲げた際に、折り曲げ様の形状を有する開口部に隣接する相互接続部を持ち上げることができる。これが、相互接続部の機械的応力の低減を大きく支援することが判明した。
【0013】
好ましくは、一実施形態によれば、エレメントは、互いに隣接する折り曲げ状の少なくとも2つの開口部を含み、これらの開口部の間の相互接続部は、突出部を形成している。
【0014】
その場合、相互接続部も、例えば、山型に交差する少なくとも2つの延在部を有する折り曲げの形状を有することができる。
【0015】
すべての開口部が折り曲げとして形成されることが好ましい場合がある。
【0016】
さらなる一実施形態によれば、第1のセクションは、第2のセクションの曲げ方向を規定し、曲げ方向と、折り曲げの延在部の少なくとも1つおよび/または相互接続部とが、角をなしている。つまり、開口部および相互接続部のパターンは、曲げ方向に対して傾いており、開口部は、曲げ方向に対して平行でも垂直でもない。これは、エレメントがディスプレイまたは画素アレイを含む他のデバイスのカバーとして使用される場合に、第1のセクションの開口部のパターンとその下の画素アレイとの間の干渉効果を低減するのに有利である。しかし、傾斜した一方向の開口部は、曲げた際に曲げ応力の増加を招くため、本開示は、交差した2つの延在部を有する折り曲げの形状を有する少なくとも1つの開口部を含むエレメントに、第1のセクションを導入することを提案するものである。
【0017】
このようにして、干渉効果の低減と曲げ応力の低減とを、非常に簡便かつ効率的に組み合わせることができる。
【0018】
エレメントの最も好ましい材料は、ガラスである。しかし、他の脆性材料、例えばガラスセラミック、サファイア、または半導体、例えばシリコンを用いてエレメントを作製することも企図される。
【0019】
使用される材料とは無関係に、エレメントは、可撓性の第1のセクションで容易に曲げることができ、さらには折り曲げることもできる。したがって、本開示による平坦なエレメントを含む物品であって、平坦なエレメントが第1のセクションで曲げられかつ折り曲げられており、面のうち一方の第2のセクションの表面が互いに対向している物品を提供することも企図されている。さらに、エレメントは、互いに対向する第2のセクションの表面が平行となるかまたは少なくとも鋭角に位置するまで容易に曲げることができる。しかし、第2のセクションが「負の角」をなすことも可能であり、これは、第2のセクションの外端部が内端部、すなわち第1のセクションに隣接する端部よりも互いに近接し得ることを意味する。
【0020】
同様に、特に可撓性の第1のセクションが十分に広い場合には、第2のセクションを互いに接近させることができる。可撓性の第1のセクションが外側に膨らむ自由度を有している場合には、第2のセクションは、互いに接近した位置をとり得る。したがって、一改良形態によれば、平坦なエレメントは、折り曲げられており、互いに対向する第2のセクションの表面は、第1のセクションが外側に膨らんで、折り曲げられた平坦なエレメントの厚みが、第1のセクションと第2のセクションとの間の境界線よりも第1のセクションにおいてより大きくなるように互いに接近した位置をとっている。同様に、この場合の折り曲げられた平坦なエレメントの厚みは、第2のセクションと対向する位置よりも第1のセクションにおいてより大きくなっている。
【0021】
最大引張ひずみの減少によって、構造化セクションの可撓性、すなわち、本開示の範囲では、所与の板ガラスおよび/または構造化セクションの曲げ性を著しく改善することができる。ガラスの最小曲げ半径、ひいては可撓性は、例えば2点曲げ試験セットアップにおける破壊時のギャップによって表すことができる。好ましい一実施形態によれば、構造化部分、すなわち第1のセクションの可撓性は、非構造化部分、すなわち第2のセクションに比べて少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも4倍の高さである。可撓性は総じて、エレメントの逆剛性に比例すると理解される。具体的には、可撓性fは、f=α/Fとして定義することができ、ここで、Fは、その面法線に沿って第2のセクションのうちの1つに加えられる力であり、αは、それによって生じる曲げ角度、すなわち2つの第2のセクション間の角度である。2点曲げは、ガラスの曲げ強さや曲げ性能を測定する試験である。破壊時の曲げ半径は、サンプルについて室温約20℃、相対湿度約50%でUTM(universal testing machine、万能試験機)を用いて測定される。ガラスエレメントを、曲げられた位置にし、その対向する端部は、平行な2枚のプレート(鋼板)の間に配置されている。その後、プレート間の距離を小さくしてガラスエレメントの曲げ半径が小さくなるようにし、その際、荷重速度は、例えば60mm/minである。プレート間の距離は、ガラスエレメントがよじれた、破損した、または破壊されて2つまたはいくつかの破片となった際に記録され、これは、UTMソフトウェアの信号によって決定される。その距離から、破壊時のガラスエレメントの対応する曲げ半径が算出される。可撓性は、プレートの距離に反比例する。したがって、構造化部分の可撓性が非構造化セクションの可撓性の2倍であれば、破壊前にプレートの距離を半分にすることができる。この2点曲げ試験は調整可能であり、極薄ガラスエレメントに特に適している。本明細書に記載されたエレメントの可撓性ゆえに、本方法を完全に採用することができる。試験方法は、本出願人自身の出願である欧州特許出願公開第3936485号明細書にも記載されている。
【0022】
ガラスの化学強化により、構造化部分でも非構造化部分でも可撓性をさらに向上させることができる。
【0023】
典型的には、化学強化には、Na+イオンもしくはK+イオンまたはこれらの混合物を含む溶融塩が使用される。一般に使用される塩は、NaNO3、KNO3、NaCl、KCl、K2SO4、Na2SO4、Na2CO3およびK2CO3である。化学強化中のイオン交換速度、CS(compressive stress、圧縮応力)およびDoL(depth of layer、層の深さ)をより良好に制御するために、NaOH、KOHおよび他のナトリウム塩やカリウム塩のような添加剤を使用することもできる。さらに、Ag+含有塩浴やCu2+含有塩浴を使用して、ガラスに抗菌機能を付与することもできる。化学強化は、単一工程に限定されるものではない。より良好な強化性能を得るために、化学強化は、様々な濃度のアルカリ金属イオンを含む塩浴にガラスディスクを浸漬する多段工程を含むこともできる。
【0024】
したがって、本発明による化学強化ガラス物品は、1工程で強化することも、複数工程、例えば2工程で強化することもできる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、エレメントは、100MPa超、好ましくは250MPa超、好ましくは400MPa超、より好ましくは500MPa超、より好ましくは600MPa超、またはさらには700MPa超、またはさらには800MPa超のCS(すなわち表面での圧縮応力)に達するように化学強化することができる。しかし、十分な可撓性が維持されるように圧縮応力を制限することが好ましい。したがって、さらなる一実施形態では、CSは、1500MPa未満であり、好ましくは1300MPa未満であり、より好ましくは1200MPa未満である。さらに、エレメントは、1μm超、好ましくは3μm超、より好ましくは5μm超、より好ましくは7μm超、より好ましくは8μm超、より好ましくは10μm超、より好ましくは12μm超、最も好ましくは15μm超のDoL(DoL=「depth of layer、層の深さ」)に達するように化学強化することができる。しかし、ガラスエレメントの厚みに関してDoLを制限することが有利である。したがって、さらなる実施形態によれば、DoLは、0.5・t未満、好ましくは0.4・t未満、最も好ましくは0.3・t未満であり、ここで、tは、ガラスの厚みである。DoL値は、圧縮応力が導入されるガラス表面への深さである。これは、物理的表面からガラス内部のゼロ応力点までの距離であると定義される。
【0026】
構造化部分および非構造化部分は、有利には(共通の強化工程で)一緒に強化することができ、そのためCS値およびDoL値は、非構造化部分に基づいて測定される。しかし、一般的には、板ガラス両面を異なる方法で強化することも企図することができる。いずれにせよ、構造化部分および非構造化部分の可撓性を、化学強化により向上させることができる。2PB曲げ試験で測定する場合、試験サンプルの曲げ半径は、曲げ半径r=d/2.4として概算することができ、ここで、dは、2点曲げ試験における2枚のプレート間の距離である。エレメントのいくつかの実施形態によれば、構造化および化学強化が施された第1のセクションは、500t以下、好ましくは300t以下、より好ましくは100t以下、より好ましくは50t以下、より好ましくは40t以下、より好ましくは30t以下、より好ましくは25t以下、より好ましくは20t以下、より好ましくは15t以下、より好ましくは10t以下、より好ましくは7.5t以下、より好ましくは5t以下、より好ましくは4t以下、より好ましくは3t以下、またはさらには2t以下の曲げ半径で、破損することなく曲げることができ、ここで、tは、ガラスの厚みである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】隣接する第1および第2のセクションに異なる構造化が施された無機脆性材料のエレメントを示す図である。
【
図2】エレメントの第1のセクションを示す図である。
【
図3】異なる形状の開口部を有する第1のセクションを示す図である。
【
図4】曲げによって変形した第1のセクションの側面図である。
【
図5】曲げられた第1のセクションの透視図である。
【
図6】非周期的に配置された開口部を有するエレメントを示す図である。
【
図7】異なる形状の開口部の組み合わせを有する実施形態を示す図である。
【
図8】異なる長さの延在部を有するフック状の開口部を有する実施形態を示す図である。
【
図9】丸みを帯びた開口部を有する実施形態を示す図である。
【
図10】第1のセクションを複数有するエレメントの実施形態を示す図である。
【
図11】第1のセクションを複数有するエレメントの実施形態を示す図である。
【
図12】折り曲げられた状態のエレメントのさらなる実施形態を示す図である。
【
図13】複数の頂部を有する開口部を有する第1のセクションの変形例を示す図である。
【
図14】
図3の実施形態を、第1のセクションの開口部の構造化および配列を特徴付ける経路とともに示す図である。
【0028】
詳細な説明
次に、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【0029】
図1は、無機脆性材料エレメント1を正確な縮尺によらずに概略的に示す平面図であり、エレメント1の面3を観察者に向けた状態で示したものである。エレメント1は、周縁部7と、3つのセクション9,11および13とを含む。セクション11および13は、それぞれ第2のセクションとして形成されており、一方で、セクション9は、第1のセクションとして形成されている。第2のセクション11および13は、第1のセクション9に隣接しており、第1のセクション9は、第2のセクション11および13の間に配置されている。第1のセクション9により、第2のセクション11および13の曲げ方向95が定められる。
【0030】
図2は、第1のセクション9の一部を正確な縮尺によらずに概略的に示す図である。見てわかるように、第1のセクション9は、開口部90および相互接続部91の配列を含む。このため、総じて、セクション9は、セクション11および13よりも高い可撓性を有する。総じて、第1のセクション9は、曲げによって発生する表面での応力が同じ厚みの非構造化エレメントと比較して少なくとも50%減少するように構造化することができる。代替的または追加的に、第1のセクション9は、200μm~2mmのエレメント1の厚み範囲内で、曲げによる第1のセクションの表面での応力変化が最大でも10%となるように構造化されている。
【0031】
さらに、すでに
図1に示されているとおり、第1のセクション9により、第2のセクション11,13(ここには図示せず)の曲げ方向95が定められる。曲げ方向95は、曲げ軸95と理解することもでき、曲げ軸という用語と曲げ方向という用語とは、本開示の範囲において同義語として用いられる。
【0032】
ここで、開口部90は、山型またはV字型の形状を示す。しかし、
図2に示す例示的な実施形態に限定されるものではないが、総じて、山型の形状は必須ではない。さらに、総じて、いくつかの開口部、またはさらにはすべての開口部が折り曲げの形状を有することが好ましい場合があるが、1つの開口部90のみが折り曲げの形状を有することができる。ここで、折り曲げとは、総じて、交差して頂上部を形成する少なくとも2つの延在部を含む形状を指す。折り曲げ様の形状は、
図2の例示的な図示のように、V字型、山型または逆山型の形状をとることができる。しかし、総じて、折り曲げは、その経路に沿って方向の変化が生じる限り、不規則に形成されていてもよい。例えば、開口部は、例えば
図9に概略的に示されているように円形セクションとして形成されていてもよい。さらに、セクション9内のすべての開口部が折り曲げの形状を有する必要はなく、さらに、折り曲げ状の開口部が同一に形成されていなくてもよいことに留意すべきである。
図7には、折り曲げ状の開口部および非折り曲げ状の開口部の各種配列が、正確な縮尺によらずに概略的に示されている。
図8および
図9には、例としてさらなる折り曲げ状の開口部90が示されており、例えば円形セクションのような形状の折り曲げ(
図9)やチェックマークのような形状の折り曲げ(
図8)が示されている。総じて、頂上部は、曲線の極値の局所的な点、特に、曲げ軸に沿った方向の極値、または、本開示の趣意では、セクション9の平面図で見たときの開口部の形状の極値であると理解することができる。
【0033】
さらに、曲げ方向95が示されている。見てわかるように、角αは、曲げ方向95と開口部90の延在部のうちの1つとがなすものである。さらに、
図2の図示から、短い相互接続部91が
図2の例示的な図示では曲げ軸95に対して垂直に配置されていることがわかる。
図2の相互接続部91は、列状に並んでいる。各列の相互接続部91間の一定の距離dは、保持されている。さらに、曲げ方向95において、相互接続部の位置は距離dの半分だけずれており、その結果、相互接続部の位置は、1列目おきに同じになる。角αは、ある列内の隣接する2つの相互接続部91の中心を結ぶ線と、ある相互接続部91の中心と隣接する列の次の相互接続部91の中心とを結ぶ線との間の角と定義することもできる。総じて、例えば、開口部のパターンが変化しかつ/または対称でない場合、平均角αは、パターン内の様々な角度の平均値と定義することができる。図面の具体例とは独立した一実施形態によれば、この角度は、少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°である。しかし、さらなる一実施形態によれば、この角度は大きすぎてはならない。このことは特に、曲げた際の突出部14のはみ出しを制限するのに有利である。この点で、この角度が多くとも60°、好ましくは多くとも40°であることが好ましい。
【0034】
曲げ方向95に対して垂直な相互接続部91の最高点を「上端」と呼び、一方で最低点を「下端」と呼ぶ。相互接続部91の各下端には、それぞれ2つのウェブまたは棒状部97が接続されており、それらは、隣接する列の相互接続部91の上端に接続されている。
【0035】
ここで
図3を参照すると、開口部90および相互接続部91~94の配列は、
図2と類似しているが若干異なっている。ここで、相互接続部91~94は、わずかに「小板状」または「矢じり状」である。さらに、相互接続部92の下端には2つのウェブまたは棒状部97が取り付けられており、これらは隣接する相互接続部91,94の上端に接続している。さらに、相互接続部91,94の下端には2つのウェブまたは棒状部98が取り付けられており、これらは隣接する相互接続部93の上端に接続している。
【0036】
ウェブまたは棒状部97,98は、総じて、直線状の境界線を有する形状であってもよいが、例えば、エレメントが画素アレイのカバーとして使用される場合には、画素アレイとのモアレ干渉を最小限に抑えるために、棒状部がジグザグ状に形成されるか、正弦波状の形状を有するか、またはそうではなく不規則な形状であることも可能であり、好ましい場合さえある。
【0037】
さらに、ウェブまたは棒状部97,98の幅および長さは様々であってよく、高い機械的強度、例えば第1のセクション9の高い曲げ強さ、ひいてはエレメント1の高い曲げ強さを提供するために最適化することができる。したがって、例として、
図2の相互接続部91のより矩形に近い形状の代わりに、
図3のように、相互接続部91をより小板状または「矢じり状」に近い形状にすることが好ましい場合がある。
【0038】
少なくとも1つの開口部90の折り曲げ様の形状は、エレメント1の高い可撓性の提供という点で総じて非常に有利である。このことを、次に
図4および
図5を参照して説明する。
【0039】
図4は、曲げられた状態の
図3の第1のセクション9を正確な縮尺によらずに概略的に示す側面図である。この図において、曲げ軸は、視線方向に沿って延びている。
図3の実施形態に関して、相互接続部92,93の上端および相互接続部94の下端はわずかに突出しており、すなわち、相互接続部92,93,94の先端形状の端部は、持ち上げられている。これにより、取り付けられた棒状部(ここでは図示せず)の応力を大幅に低減することができる。本発明者らは、棒状部および相互接続部の寸法を慎重に選択することで、棒状部の長さを長くすることができ、これによって第1のセクション9の曲げ性、ひいてはエレメント1の曲げ性を高めることができることを見出した。
【0040】
図5は、
図2と同様にセクション9の一部を示す図である。見てわかるように、エレメント1は、方向95に沿って曲げられている。セクション9は、互いに隣接する折り曲げ状の少なくとも2つの開口部90を含む。相互接続部91は、突出部14を形成している。頂上部4、すなわち開口部90の延在部8,10の交差部で突出部14が形成されている。
【0041】
本発明者らはさらに、好ましい最小曲げ半径と同様に、エレメント1の材料の所与の厚みdおよびヤング率Eに対して、以下の関係の少なくとも一方、好ましくは双方が満たされる場合に、相互接続部の寸法の好ましいパラメータ範囲を見出すことができることを見出した:
【数1】
【0042】
式(1)において、h
lは、
図3に示すように、棒状部97の長さlの曲げ方向95に対して垂直な成分であり、sは、長さlの曲げ方向95に対して平行な成分である。さらに、pは、開口部および相互接続部の配列の周期長であり、ある相互接続部と2列先のさらなる相互接続部との間の距離である。しかし、いくつかの実施形態では、開口部のパターンの並進対称性がない場合がある。この場合、長さpは、距離の平均値となる。
【0043】
製造者の観点からは、周期的なパターンで配置された同一形状の開口部90および相互接続部91を製造することが好ましい場合があり、ここで、pは、周期長である。しかし、開口部、相互接続部および棒状部を周期的ではなく非周期的なパターンで配置することも企図することができる。これは、モアレ干渉効果を最小限に抑えるかまたはさらには完全に抑制するという点で好ましい可能性がある。この場合、pは、平均周期長であると理解される。
【0044】
このような非周期的な構造の一例を、
図6に示す。ここでは、棒状部も相互接続部も同様に長さおよび幅が異なり、さらに棒状部は不規則な形状の境界を有する。見てわかるように、開口部90はそれぞれ折り曲げの形状を有し、つまり、2つの延在部8および10が交差して頂上部4を形成している。
【0045】
図7は、第1のセクション9の開口部90、相互接続部91および棒状部97の配列のさらなる一例を示している。ここで、すべての開口部90が折り曲げ状であるわけではない。セクション9の少なくとも1つの部分19は、(折り曲げ状の開口部90とは異なって)直線状の開口部90を含む。
【0046】
図8および
図9は、例として、エレメント1のさらなる第1のセクション9を示す。
【0047】
図8は、折り曲げの形状を有する開口部90を含む第1のセクション9を、正確な縮尺によらずに概略的に示す。ここで、延在部10は延在部8よりも短いため、開口部90の形状は、チェックマークの形状に似ている。
【0048】
一方で
図9は、円形セクション、すなわち
図9に示す例示的な実施形態では半円形の形状を有する開口部90を含む第1のセクション9を、正確な縮尺によらずに概略的に示す。延在部8および10は、頂上部4で交差している。
【0049】
開口部90が折り曲げ状である、すなわち、交差して頂上部を形成する2つの延在部を含む限り、本発明の図面に示されている形状以外の開口部90の形状も可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、総じて、複数の頂部を含むジグザグ状の開口部や、より不規則な形状の開口部も企図することができる。延在部8,10と頂上部4とを含む開口部90の形状は、代替的または付加的に、延在部8,10の端部と頂上部4とを結ぶ三角形の規定により特徴付けることもできる。具体的には、開口部90は、頂点21,22,23を画定して三角形20の辺を形成することができるように形成されている。頂点21,22,23は、各開口部90の縁部のうち、曲げ軸95に対して垂直にずらしたときに曲げ軸に対して平行な線が縁部に接する点であると定義される。具体的には、
図9に示す点21は、平行線が頂上部4で開口部90の縁部に接する点であり、点22,23は、平行線が延在部8,10の端部に接する点である。本開示による開口部90の配置および形状の特定の特徴は、開口部90が曲げ軸に対して垂直な方向に格子状に組まれていることである。これは、例えば、ある開口部90の延在部が、隣接する開口部の三角形20と重なることを意味する。これはまた、
図9に示すように、ある開口部90の1つの縁部23が、隣接する開口部90の三角形20の領域内、特に開口部90の隣接する列の三角形20の領域内に存在することを意味する。したがって、要するに、開口部90は、開口部90の頂点21,22,23によって画定される隣接する三角形90が重なり合って、ある三角形のある辺が隣接する三角形20の領域内に位置するように、第1のセクション9内に配向され、分布している。しかし、この特徴は、低い曲げ力を達成するのに有利であるが、相互接続部の列間の距離を広くして、上記の三角形間の重なりが生じないようにすることもできる。しかし、この場合も、曲げた際に相互接続部の先端が持ち上がる。
【0050】
エレメント1は、好ましくは、開口部90を導入するために容易に構造化でき、かつ構造化後に十分な安定性を維持するガラスから作製されている。
【0051】
本組成物の第1の実施形態によれば、エレメントのガラスは、重量%で以下の成分を含む:
SiO2 30~85
B2O3 3~20
Al2O3 0~15
Na2O 3~15
K2O 3~15
ZnO 0~12
TiO2 0.5~10
CaO 0~0.1
【0052】
本組成物の第2の実施形態によれば、エレメントのガラスは、重量%で以下の成分を含む:
SiO2 55~75
Na2O 0~15
K2O 2~14
Al2O3 0~15
MgO 0~4
CaO 3~12
BaO 0~15
ZnO 0~5
TiO2 0~2
【0053】
本組成物の第3の実施形態によれば、エレメントのガラスは、実質的にアルカリ金属酸化物を含まない。ガラスは、重量%で以下の成分を含む:
SiO2 58~65
B2O3 6~10.5
Al2O3 14~25
MgO 0~3
CaO 0~9
BaO 3~8
ZnO 0~2
【0054】
好ましくは、本ガラスの組成物において、MgO、CaOおよびBaOの含有量の合計は、8~18重量%の範囲内である。
【0055】
第4の実施形態では、ガラス組成物は、重量%で以下の成分を含む:
SiO2 50~65
Al2O3 15~20
B2O3 0~6
Li2O 0~6
Na2O 8~16
K2O 0~5
MgO 0~5
CaO 0~7、好ましくは0~1
ZnO 0~4、好ましくは0~1
ZrO2 0~4
TiO2 0~1、好ましくは実質的にTiO2を含まない。
【0056】
さらに、ガラスは、0~1重量%のP2O5、SrO、BaO;0~1重量%の清澄剤、好ましくはSnO2、CeO2またはAs2O3を含むことができる。
【0057】
一実施形態によれば、エレメント1は、機械的強度を高めるために化学強化されている。化学強化には、脆性材料としてのガラスの内部でのイオン交換が含まれ、その際、ガラスのイオンは、表面に隣接するガラス領域でより大きなイオンと交換され、それにより、より大きなイオンがガラスに圧縮応力を付与する。通常、アルカリイオンの交換により強化効果が生じる。したがって、上記で列挙したガラスは、十分な量のアルカリイオンを含む限り、化学強化に適している。さらに、ガラスの風冷強化により表面に圧縮応力領域を設けることも可能である。風冷強化または熱強化では、ガラスが軟化するまで加熱し、その後ガラスエレメントを急速に冷却して、表面がエレメントの内部のガラスよりも強く収縮するようにする。熱強化は、特に厚いガラスエレメントに有効である。
【0058】
用途によっては、エレメント1の表面が閉じていることが望ましい。この目的のために、開口部90を有機材料、すなわちプラスチック、ゴムまたは接着剤で充填することができる。用途によっては、開口部90の一部を開放しておくことが有用な場合もある。総じて、特にエレメントをディスプレイカバーとして使用する場合には、開口部90を透明材料で充填することが望ましい場合がある。したがって、総じて、図示されているような特定の実施例に限定されずに、少なくとも部分集合または一部の数の開口部90がプラスチック、好ましくは透明プラスチックで充填されたエレメント1が提供される。好ましくは、開口部90は、充填物によって閉じられている。しかし、1つ以上の開口部、例えば細いチャネルを形成する開口部を有する充填物を提供することも可能であろう。
【0059】
プラスチックで充填された開口部90を有する実施形態の一改良形態によれば、プラスチックを、エレメントの撓みによる曲げ力の変化が最大でも30%、好ましくは最大でも20%、特に最大でも10%、特に好ましくは最大でも1%となるように選択し、適合させることが企図される。この変化は、開口部90が開いた状態、すなわち開口部90にプラスチックが存在しない状態の構成に対して相対的に測定される。実際には、この特徴は、開口部90が充填された状態で撓み時のエレメント1の反力を測定し、次いでプラスチックを取り除いて測定を繰り返すことにより、容易に検証することができる。総じて、反力の上記条件に制限されることなく、プラスチックは、エラストマーであってもよいし、少なくともエラストマーを含むこともできる。これにより、プラスチックの充填は十分な可撓性を保ち、剛性の大きな増加が回避される。
【0060】
さらなる一改良形態によれば、プラスチックは透明である。特に、プラスチックは、エレメント1の脆性材料の屈折率と一致する屈折率を有することができる。完全に一致させる必要はない場合がある。本開示内では、プラスチックの屈折率と脆性材料の屈折率との一致とは、屈折率差が0.3未満、好ましくは0.2未満、より好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、より好ましくは0.05未満、より好ましくは0.02未満、または0.01未満、または0.005未満、またはさらには0.002未満であることと理解される。
【0061】
適切なプラスチックは、ポリマーとしてシリコーンを含むことができる。シリコーンは、大半の適切なガラスのようなケイ素含有無機脆性材料への結合に特に適している。また、シリコーンは、エラストマーであっても透明プラスチックであってもよい。
【0062】
さらなる一実施形態では、第1のセクション9内で、エレメント1の表面は、部分的にプラスチックで形成されている。用途によっては、これはエレメント1の用途にとって好ましくない場合がある。例えば、エレメント1の無機脆性材料と比較すると、プラスチックは、面3,5のうちの一方に施与されるコンポーネントや層に対する密着性が低い場合がある。このため、面3,5のうちの少なくとも一方に任意の無機層を堆積させることができる。一実施形態によれば、無機層として酸化ケイ素が堆積されている。例えば、化学気相成長法(CVD)または火炎熱分解によって層を堆積させることができる。層が脆性材料とプラスチック33との双方にまたがる場合、エレメント1の材料が異なるにもかかわらず、均一な表面特性が達成される。
【0063】
本明細書に記載のエレメント1は、多種多様な物品の一部として使用することができる。本明細書に記載の平坦なエレメント1を含む物品は、例えば、フレキシブルな、特に折り曲げ可能なディスプレイであってよい。典型的には、第1のセクションの構造化により付与されるエレメント1の高い可撓性によって、エレメント1を含む物品は、互いに可動である少なくとも2つのセクションまたは部分を有する。
【0064】
一実施形態によれば、脆性材料のエレメント1を含む物品は、サンドイッチ構造体を含み、その際、エレメント1は、サンドイッチ構造体のうちの1つの層を形成する。
【0065】
総じて、サンドイッチ構造体は、積層体を含むことができる。好ましい一実施形態では、積層体は、有機層、特にエレメント1の片面に積層されたポリマー層またはプラスチック層を含むことができる。有機層はまた、シリコーンを含むことも、シリコーンからなることもできる。また、有機層、特にプラスチック層またはポリマー層は、エレメント1の両面3,5に積層されていてよい。よって、エレメント1の少なくとも一方の面3,5にポリマー層などの有機層を積層することにより、ガラスなどの脆性材料の高硬度と高可撓性とを兼ね備えたサンドイッチ構造体が得られる。ポリマー層は、接着剤、すなわち光学透明接着剤でエレメント1に積層することができ、それによってさらなる有機層が形成され、またはグルーなしでエレメント1の表面にコーティングすることもできる。保護層のコーティング、例えば、化学気相成長法(CVD)、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット、キャスティング、スクリーン印刷、塗装および吹付けが挙げられる。しかし、本発明はこれらの手順に限定されるものではない。適切な材料も当技術分野で知られている。例えば、それらは、フェノプラスト、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アミノプラスト、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェナクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、架橋ポリウレタン樹脂、ポリメタクリレート反応樹脂およびポリアクリレート反応樹脂からなる群から選択されるポリマーである熱硬化性反応樹脂を含むことができる。
【0066】
積層の場合、ポリマー材料は、例えば、シリコーンポリマー、ゾル-ゲルポリマー、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリイミド(PI)、無機シリカ/ポリマーハイブリッド、シクロオレフィンコポリマー、ポリオレフィン、シリコーン樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリプロピレンポリビニルクロリド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テトラフルオロエチレンから構成されるターポリマー、ヘキサフルオロプロピレンから構成されるターポリマー、フッ化ビニリデン(THV)から構成されるターポリマーもしくはポリウレタン、またはそれらの混合物からなる群から選択することができる。ポリマー層は、公知の方法でエレメント1に施与することができる。
【0067】
エレメント1のさらなる実施形態は、本出願人自身の出願である欧州特許出願公開第3936485号明細書からも得ることができる。
【0068】
第1のセクション9は、隣接する第2のセクション11,13のヒンジを提供することができる。このヒンジは、可撓性を有することができるため、第2のセクション11,13が互いに対向するようにエレメントを合わせて折り曲げることができる。第1のセクション9の折り曲げおよび外側への膨らみにより、総じて、第1のセクション9の2つの凹状に曲げられた部分が、中間の凸状部分を伴って形成される。
【0069】
ここまでに説明した実施形態では、可撓性の第1のセクション9は、第2のセクション11,13間にヒンジジョイントが提供されるように、第2のセクション11,13の間に連続ストリップを形成していた。別の実施形態では、第1のセクション9は、同様に第2のセクション11,13の間に配置されている。しかし、本実施形態によれば、第1のセクション9は、第2のセクションのうち一方を包含している。
【0070】
本明細書に記載されるエレメント1は、独国特許出願公開第102018100299号明細書またはPCT出願PCT/CN2019/086830に記載の方法で製造することができる。レーザによりエレメントの開口部90をプレスコアする工程が採用される。次に、プレスコアされたエレメントをエッチングして開口部を形成する。具体的には、以下の工程を有する方法を採用することができる:
- 脆性材料のプレート状のエレメント1を提供する工程、
- 超短パルスレーザのレーザビームをエレメント1に照射して集束させる工程であって、ここで、このレーザビームは、エレメント1の脆性材料が透過する波長を有するため、レーザビームは、エレメント1を透過することができるものとする工程、
- レーザビームを集束させてエレメント内に細長い焦点を生成する工程であって、ここで、レーザビームの強度は、焦点に沿ってエレメント1内にフィラメント状損傷ゾーンを生成するのに十分であるものとする工程、
- レーザビームをエレメントに対して相対的に移動させて、複数のフィラメント状損傷ゾーンを、多数のリング状のまたは閉じた経路に沿って並べて導入する工程、
- エレメントをエッチング液に曝してエッチングする工程であって、エッチング液がフィラメント状損傷ゾーンに侵入することで、フィラメント状損傷ゾーンが広がってチャネルが形成され、このチャネルが広がって結合し、それにより、リング状の経路で包囲されたエレメントの部分が脱離して開口部90が形成され、その結果、1つの第1のセクション9と2つの第2のセクション11,13とを含む少なくとも3つのセクションが形成され、ここで、第2のセクションは、第1のセクション9が第2のセクション11,13の間に配置されるように第1のセクションに隣接しており、第1のセクション9は、開口部90を含み、それにより、第1のセクション9は、第2のセクション11,13よりも高い可撓性を有するものとする、工程。
【0071】
一改良形態によれば、エッチング後にエレメント1の化学強化を行うことができる。
【0072】
図10に正確な縮尺によらずに概略的に示すさらなる一実施形態によれば、エレメント1は、少なくとも5つのセクションを含み、これらの少なくとも5つのセクションは、3つの第2のセクション11,12,13と、2つの第1のセクション9a,9bとを含み、第1のセクション9a,9bはそれぞれ、第1のセクション9a,9bが第2のセクション11,12,13のヒンジを形成するように2つの第2のセクション11,12,13の間に配置されており、第1のセクション9a,9bは、好ましくは異なるように形成されている。そのようなエレメント1は、
図10aに示されており、その際、第1のセクション9a,9bは、異なる向きのハッチングの使用により異なるように形成されていることが示されている。
図10の例示的な実施形態では、第1のセクション9aは、第2のセクション11および12の間に配置されており、第1のセクション9bは、第2のセクション12および13の間に配置されている。総じて、
図10に正確な縮尺によらずに概略的に示されているエレメント1の例示的な実施形態に限定されることなく、エレメント1は、5つ以上のセクション、例えば、7つのセクションを含むことができ、これらの7つのセクションのうちの4つのセクションが、第2のセクションとして形成されており、3つのセクションが、第2のセクション間のヒンジとして機能し得る第1のセクションとして形成されている。
【0073】
このようなエレメント1の場合、エレメント1は、例えば
図10の実施形態b)に正確な縮尺によらずに概略的に示されているように、S字型またはジグザグ状に折り曲げることができる。すなわち、ここに図示されている例示的な実施形態におけるエレメント1は、2箇所での折り曲げに適しており、好ましくは、折り曲げ時に、第1のセクションの一方、例えば第1のセクション9aが「内折れ」として形成され、第1のセクションの他方、例えば第1のセクション9bが「外折れ」として形成されている。内折れおよび外折れとは、本明細書において、エレメント1の面3,5に関連して理解され、面3は、ここでは、例えば、携帯電話などのデバイスに向けられるように適合され、面5は、ここでは、デバイスの外側に向けられるものと理解される。その場合、内折れ領域と外折れ領域とが異なる曲げ角度を有することがあり、したがって、第1のセクション9a,9bが異なるように形成されることが好ましい場合がある。例えば、外折れの最小曲率半径を、内折れの最小曲率半径よりも大きくすることができる。
【0074】
例えば、折り曲げ時に外折れを形成する第1のセクション、すなわち、
図10の実施形態b)に図示されている実施例の第1のセクション9bは、このように最小曲率半径が大きくなるように最適化することができ、それにより、より大きな機械的強度を有する。
【0075】
このような、例えば異なるように形成された第1のセクション9a,9bを含むエレメント1は、セクション9a,9bに形成された構造が、例えばエレメント9内に形成された構造または開口部90(ここでは図示せず)の幅および/または長さの点で互いに異なるように構造化パラメータを慎重に調整することによって得ることができる。
【0076】
しかし、例えば同一方向に曲げることができ、それにより2つの内折れを得ることができるような2つの第1のセクション9a,9bが生成されるように双方のエレメント1を構成することも可能であり、好ましい場合さえある。そのようなエレメント1は、
図10cに正確な縮尺によらずに概略的に示されている。そのようなエレメント1の構成は好ましい場合があり、なぜならば、特に第1のセクション9a,9bが内折れを形成するように構成されている場合には、面5を中にして折り曲げるとデバイスのディスプレイが常に保護されるためである。ここでも、好ましくは、セクション9a,9bは異なるように形成されており、一方のセクション、例えばセクション9bは、さらなる第1のセクション9aが「第2の内折れ」を形成するように適合される場合よりも小さい最小曲率半径で「第1の内折れ」を形成するように適合させることができ、その際、より大きい最小曲率半径が必要とされ、したがって、より大きい機械的強度で形成することができる。しかし、双方の第1のセクション9a,9bが等しく形成されることも可能である。そのようにして、第2のセクション11,13は、
図10の実施形態d)に正確な縮尺によらずに概略的に示されているように、ドアのように、すなわちドアの翼部として機能してセクション12の面5を覆うように内側に折り曲げることができる。総じて、構造化された第1のセクションによって形成されるヒンジは、曲げ軸を有することができ、この曲げ軸は、平行である必要はない。例えば、曲げ軸は、互いに垂直であってもよい。この場合、例えば、エレメント1を2つの異なる方向に折り曲げることができる。
【0077】
図11は、本開示によるエレメント1の2つの実施形態を、正確な縮尺によらずに概略的に示す。
図11のa)に示された実施形態では、例えば
図10のc)に正確な縮尺によらずに概略的に示されている実施形態と同様に、第1のセクション9aは、より大きい最小曲率半径を有する第1の内折れが形成されるように適合されており、第1のセクション9bは、より小さい最小曲率半径を有する第2の内折れが形成されるように適合されている。ここで、第1のセクション9aは、第2の第1のセクション9bと同様に、第1のセクション9a内で変化しない単一の曲げ半径が得られるように形成されている。これは、第1のセクションの開口部、相互接続部および棒状部のパターンを規則的に形成することによって、すなわち、同一に形成された開口部ならびに並進対称性を有する開口部、相互接続部および棒状部の配列を伴って形成することによって達成することができる。このような開口部、相互接続部および棒状部の配列は、例えば
図2、
図3、
図8および
図9に示されている。
【0078】
しかし、最小曲げ半径が第1のセクション内で変化し得るように、第1のセクション-例えば第1のセクション9a-を形成することも可能であり、好ましい場合がある。これは、例えば
図6および
図7に正確な縮尺によらずに概略的に示されているように、セクション全体にわたって開口部、相互接続部および棒状部を異なるように配置することによって、例えば、相互接続部および開口部の向きおよび/もしくは形状を変えることによって、ならびに/または相互接続部、棒状部および開口部の長さおよび/もしくは幅を変えることによって達成することができる。このような配置により、例えば
図12のb)に示すような折り曲げを得ることができ、その際、曲げ半径が第1のセクション9全体にわたって変化し、これによって、エレメント11の折り曲げ時に第1のセクション9の「はみ出し」が生じる。
【0079】
さらに、第1のセクション9a,9bの間に小さな第2のセクション12が形成されるようにエレメントを形成し、それにより、非曲げセクションを含む折り曲げが生じることも企図することができる。これは、
図11b)に正確な縮尺によらずに概略的に示されている。
【0080】
なおもさらなる一実施形態によれば、エレメント1は、折り曲げではなく巻き取るように設計することができる。このような実施形態は、第1のセクションの幅と第2のセクションの幅とを適合させることにより容易に実現することができる。総じて、第1のセクションは、第2のセクションのうちの1つより広い幅を有することも、またはさらには第2のセクションの幅の合計より広い幅を有することもできる。さらに、エレメント1を安定させる剛縁部を形成するために、第2のセクションの幅を狭くすることができる。例えば、第1のセクションは、エレメント1の全幅の75%超、またはさらには85%超を占めることができる。なおもさらなる一実施形態によれば、第2のセクションを省略することすら可能である。
【0081】
図12は、第2のセクション11,12が同様に配置された、いくつかの折り曲げられたエレメント1を示している。例えば、折り曲げ時に第2のセクション11,12および13(該当する場合)が互いに平行に配置されるようにエレメント1を形成することを企図することができる。例えば、
図12a)は、折り曲げ時に第2のセクション11,12が互いに平行になるように第1のセクション9が形成されたエレメント1を示している。
【0082】
また、
図12b)では、第1のセクション9が、第1のセクション9全体で異なる最小曲率半径となるように形成されており、その結果、折り曲げ時に第1のセクション9がはみ出し、第2のセクション11,12は、平行に配置されている。しかし、折り曲げ時に「負の」角が生じるように、すなわち、第1のセクション9を伴うセクション11,12の縁部よりもセクション11,12の外縁部が互いに近接するように第1のセクション9を形成することも可能であり、好ましい場合がある。
【0083】
図13は、開口部90を有する第1のセクション9の一変形例を示し、開口部は、複数の頂上部を有する。ここまでに説明した実施形態は、単一の頂上部4を有する開口部90を有する。本実施形態は総じて好ましいが、複数の頂上部を有する実施形態も可能であり、また、特定の用途に有利でかつ好ましい場合もある。例えば、エレメント1によって覆われるディスプレイの画素配列によっては、複数の頂上部4および/または3つ以上の延在部8,10を有する開口部90が、モアレ効果をさらに低減するのに有利な場合がある。本実施形態の一改良形態によれば、第1のセクション9のすべての開口部90が、複数の頂上部4を有することができる。しかし、異なる形状の開口部90を組み合わせることが可能である。したがって、別の改良形態によれば、第1のセクション9は、単一の頂上部4を有する少なくとも1つの開口部90と、複数の頂上部4を有する少なくとも1つの開口部との双方を含む。
図2の実施形態の一変形例である例を、
図13に示す。
図13に示す第1のセクション9の部分は、単一の頂上部4を有する多数の開口部90とともに、3つの頂上部4をそれぞれ有する3つの開口部90を有する。複数の頂上部4を有する開口部および単一の頂上部4を有する開口部のうちの1つに、参照符号90が付されている。当然のことながら、第1のセクション9において、複数の頂上部を有するが頂上部の数が異なる開口部90、例えば2つ、3つおよび4つの頂上部4を有する開口部90を組み合わせることも可能である。
【0084】
ここまで、第1のセクション9の構造化について、開口部90の形状に基づいて説明してきた。以下では、先行技術の欠点の克服、特に可撓性の増大および/またはモアレパターンの低減に適した構造化の代替的または追加的な説明を行う。再び
図6を参照する。見てわかるように、5つの点25,26,27,28,29が付されている。点25は、開口部90の頂上部4の頂端である。点26は、点25を起点とする相互接続部91の突出部の頂端である。点27は、頂点26を有する相互接続部に隣接する相互接続部91の突出部の頂点であり、点26を有する相互接続部と点27を有する相互接続部とは、棒状部またはウェブを通じて接続されている。図示の例では、相互接続部91は、棒状部97を通じて接続されている。点28は、頂点27を有する接続部91の起点となる開口部90の頂上部4の頂点である。最後に、点29は、頂点26を有する相互接続部91の突出先となる開口部90の頂上部の頂点である。これら5つの点25,26,27,28,29に沿って、分割された経路30を規定することができる。この経路を点25から始めて点26,27,28を経由して点29に向かう場合、この経路の最初の2つのセグメント(すなわち、点26で始まるセグメントおよび点27で始まるセグメント)が鋭角を含むのに対し、点28で始まるセグメントは鈍角を含むことが明らかである。
【0085】
第1のセクション9の構造化を説明する経路30を、異なる、より一般的な方法で説明することもできる。本発明のさらなる一実施形態によれば、少なくとも1つの開口部90が、交差して頂上部4を形成する少なくとも2つの延在部8,10を含む折り曲げの形状を有するか否かにかかわらず、以下の特徴を有するエレメント1が提供される:
対向面3,5と周縁部7とを有する無機脆性材料のエレメント1は、1つの第1のセクション9と2つの第2のセクション11,13とを含む少なくとも3つのセクションを含み、第2のセクションは、第1のセクション9が第2のセクション11,13の間に配置されるように第1のセクションに隣接しており、第1のセクション9は、開口部90と、ウェブまたは棒状部97で接続された相互接続部91との配列を含み、それにより、第1のセクション9は、第2のセクション11,13よりも高い可撓性を有し、開口部90は、経路を規定できるように配置および形成されており、経路は、相互接続部91に沿って、次いでさらに相互接続部91に接続された棒状部97に沿って、次いで棒状部97の端部にある別の相互接続部91に沿って、次いでこの別の相互接続部91の反対側の端部にある別の棒状部97に沿って延び、経路は、線状のセグメントで構成されており、各セグメントは、開口部の縁部で始まり、開口部の縁部で終わる。
【0086】
好ましくは、各セグメントはそれぞれ、開口部90または相互接続部91の突出部のいずれかの頂点25,26,27,28,29で始まり、またそこで終わる。この経路30の隣接する線状のセグメントが、少なくとも1つの鋭角と少なくとも1つの鈍角とを含むことが好ましい。
【0087】
さらに、好ましい一実施形態によれば、一連の線状のセグメントは、2つの鋭角と1つの鈍角とを含む。この特徴は、エレメント1の第1のセクション1における、格子状に組まれ、かつ総じて折り曲げられた形状の複数の開口部90を有する特定の構造を特徴付けるものである。経路30は、相互接続部91において開口部90の縁部で始まり、次いで相互接続部91に沿って進むため、点25と点26との間の線状のセグメントは、典型的にはy方向に沿って延び、x方向は、曲げ軸に対して平行に延びる。x座標軸およびy座標軸を、
図14に示す。周期的なパターンの場合、経路30または点25~点29は、パターンの共通の単位セルとみなすことができる構造を形成している。
【0088】
第1のセクション内の応力を算出するために、各点を、座標系におけるxの位置およびyの位置で定める。次いで、第1のセクションの各単位セルについて、最大応力を算出することができる。以下では、数学的処理のため、点25~点29を以下の記号に割り当てる:点25をc
3,底部、点26をc
3,頂部、点27をc
2,底部、点28をc
2,頂部、点29をc
1,底部とする。わかりやすくするために、
図14に、ある経路30と、対応する点25~点29と、割り当てられた上記の参照符号とを有する第1のセクション9の別の例を示す。本例では、
図3の例と同一の構造化が選択されている。さらに、経路30のセグメント31,32,33,34に注釈が付されている。鋭角はα
1およびα
2と表記され、鈍角にはωの符号が付されている。
【0089】
点25~点29および経路のセグメントを用いて、棒状部97および相互接続部91の最大応力を算出することができる。好ましい一実施形態によれば、開口部90の配置、サイズおよび形状は、エレメント1を曲げた際の少なくとも1つの経路について以下の条件が満たされるように選択される:
【数2】
【0090】
式(i)および式(ii)において、変数「E」は、ヤング率である。dは、エレメント1の厚みを表す。変数c1,底部,y,c2,底部,y,c2,頂部,y,c3,頂部,yは、点29,27,28および26のy座標をこの順に表す。同様に、変数c1,底部,x,c2,頂部,x,c2,底部,xおよびc3,頂部,xは、点29,28,27および26のx座標をこの順に表す。上述したように、x座標は曲げ軸の方向に沿って延び、y方向は、それに対して垂直である。
【0091】
好ましくは、開口部およびその配置は、エレメント1を曲げた際に、上記の式にしたがって発生する最大応力が、10000MPa未満となるだけでなく、さらには5000MPa未満となるように設計されている。より好ましくは、最大応力は、3000MPa未満、またはさらには2000MPa未満である。
【符号の説明】
【0092】
1 エレメント
3,5 1の面
4 頂上部
7 周縁部
8,10 延在部
9,9a,9b 1の第1のセクション
11,12,13 1の第2のセクション
14 突出部
15 9と11および9と13との境界線
19 第1のセクションの部分
20 三角形
21 頂上部4の頂点
22,23 延在部8,10の端部の頂点
25,28,29 開口部90の頂上部4の頂点
26,27 相互接続部91の頂点
30 点25~点29に沿った経路
31,32,33,34 30のセグメント
90 開口部
91,92,93,94 相互接続部
95 曲げ軸
97,98 棒状部
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向面(3,5)と周縁部(7)とを有する無機脆性材料のエレメント(1)であって、前記エレメント(1)は、1つの第1のセクション(9)と2つの第2のセクション(11,13)とを含む少なくとも3つのセクションを含み、前記第2のセクションは、前記第1のセクション(9)が前記第2のセクション(1,13)の間に配置されるように前記第1のセクションに隣接しており、前記第1のセクション(9)は、開口部(90)および相互接続部(91)の配列を含み、それにより、前記第1のセクション(9)は、前記第2のセクション(11,13)よりも高い可撓性を有する、エレメント(1)において、
- 少なくとも1つの開口部(90)が、交差して頂上部(4)を形成する少なくとも2つの延在部(8,10)を含む折り曲げの形状を有する
ことを特徴とする、エレメント(1)。
【請求項2】
前記エレメント(1)が、互いに隣接する折り曲げ状の少なくとも2つの開口部(90)を含み、前記開口部(90)の間の前記相互接続部(91)は、突出部(14)を形成している、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項3】
以下の特徴:
- 前記第1のセクション(9)が、前記第2のセクション(11,13)の曲げ方向(95)を規定し、前記曲げ方向(95)と、前記折り曲げの前記延在部(8,10)の少なくとも1つおよび/または少なくとも1つの相互接続部(91)とが、角をなしている、
- 前記開口部(90)が、前記開口部(90)の頂点(21,22,23)によって画定される隣接する三角形(90)が重なり合って、ある三角形(20)のある辺が隣接する三角形(20)の領域内に位置するように配向され、分布している
のうち少なくとも1つを有する、請求項1または2記載のエレメント(1)。
【請求項4】
棒状部(92)の長さ(l)、前記エレメント(1)の前記曲げ方向に対して垂直な前記長さ(l)の成分(h
l)、前記曲げ方向に対して平行な前記長さ(l)の成分(s)、前記エレメント(1)の材料のヤング率(E)、厚み(d)、前記開口部および相互接続部の配列の周期長(p)、および前記エレメント(1)の曲げ半径(R)が、以下の関係:
【数1】
のうちの少なくとも1つ、好ましくは双方を満たす、請求項
1記載のエレメント(1)。
【請求項5】
前記折り曲げ状の開口部(90)が、列をなして並べて配置されており、前記列が、前記曲げ方向に対して平行に形成されている、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項6】
前記開口部(90)が、経路を規定できるように配置および形成されており、前記経路は、相互接続部(91)に沿って、次いでさらに前記相互接続部(91)に接続された棒状部(92)に沿って、次いで前記棒状部(92)の端部にある別の相互接続部(91)に沿って、次いで前記別の相互接続部(91)の反対側の端部にある別の棒状部(92)に沿って延び、前記経路は、線状のセグメントで構成されており、各セグメントは、開口部(90)の縁部で始まり、開口部(90)の縁部で終わり、前記経路(30)の隣接する線状のセグメントは、少なくとも1つの鋭角と少なくとも1つの鈍角とを含む、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項7】
前記線状のセグメントはそれぞれ、開口部(90)または相互接続部(91)の突出部のいずれかの頂点(25,26,27,28,29)で始まり、前記頂点(25,26,27,28,29)で終わる、請求項6記載のエレメント(1)。
【請求項8】
前記開口部(90)の前記配置、サイズおよび形状が、前記エレメント(1)を曲げた際に以下の条件:
【数2】
が満たされるように選択され、ここで、「E」は、ヤング率であり、dは、前記エレメント(1)の厚みを表し、前記変数c
1,底部,y,c
2,底部,y,c
2,頂部,y,c
3,頂部,yは、前記経路(30)に沿った前記頂点のy座標を表し、前記変数c
1,底部,x,c
2,頂部,x,c
2,底部,xおよびc
3,頂部,xは、前記経路(30)に沿った前記頂点のx座標を表し、前記x座標は、曲げ軸の方向に沿って延び、y方向は、前記曲げ軸の方向に対して垂直である、請求項7記載のエレメント(1)。
【請求項9】
前記第1のセクション(9)の前記可撓性が、前記第2のセクション(11,13)に比べて少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも4倍の高さである、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項10】
以下の特徴:
- 前記エレメント(1)が、脆性材料としてガラスを含む、
- 前記第1のセクション(9)が、前記第2のセクション(11,13)のヒンジを形成する、
- 前記エレメント(1)が、少なくとも5つのセクションを含み、前記少なくとも5つのセクションは、3つの第2のセクション(11,12,13)と、2つの第1のセクション(9a,9b)とを含み、前記第1のセクション(9a,9b)はそれぞれ、前記第1のセクション(9a,9b)が前記第2のセクション(11,12,13)のヒンジを形成するように2つの第2のセクション(11,12,13)の間に配置されており、好ましくは前記第1のセクション(9a,9b)は、異なるように形成されている
のうち少なくとも1つを有する、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項11】
前記エレメント(1)のガラス組成物が、重量%で各成分を以下の実施形態:
- 第1の実施形態:
SiO2 30~85
B2O3 3~20
Al2O3 0~15
Na2O 3~15
K2O 3~15
ZnO 0~12
TiO2 0.5~10
CaO 0~0.1
- 第2の実施形態:
SiO2 55~75
Na2O 0~15
K2O 2~14
Al2O3 0~15
MgO 0~4
CaO 3~12
BaO 0~15
ZnO 0~5
TiO2 0~2
- 第3の実施形態:
SiO2 58~65
B2O3 6~10.5
Al2O3 14~25
MgO 0~3
CaO 0~9
BaO 3~8
ZnO 0~2、ここで、前記第3の実施形態によれば、前記ガラスは、好ましくは実質的にアルカリ金属酸化物を含まない、
- 第4の実施形態:
SiO2 50~65
Al2O3 15~20
B2O3 0~6
Li2O 0~6
Na2O 8~17
K2O 0~5
MgO 0~5
CaO 0~7、好ましくは0~1
ZnO 0~4、好ましくは0~1
ZrO2 0~4
TiO2 0~1、好ましくは実質的にTiO2を含まない、
のうちの1つに従って含む、請求項10記載のエレメント。
【請求項12】
前記エレメント(1)が、以下の特徴:
- 前記開口部(90)が、可変の幅を有する、
- 前記開口部(90)が、不規則な輪郭を有する、
- 前記エレメント(1)が、化学強化または熱強化されている、
- 少なくとも一部の数の開口部(90)が、プラスチックで充填されている
のうち少なくとも1つを特徴とする、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項13】
以下の特徴:
- 前記開口部(90)中にプラスチックが存在しないエレメント(1)について、前記エレメント(1)の撓みによる曲げ力の変化が、最大でも30%である、
- 前記プラスチックが、透明である、
- 前記プラスチックが、前記エレメント(1)の前記脆性材料の屈折率と一致している、
- 前記プラスチックが、エラストマーを含む、
- 前記プラスチックが、シリコーンを含む
のうち少なくとも1つを有する、請求項12記載のエレメント(1)。
【請求項14】
前記エレメント(1)が、化学強化されており、かつ以下の特徴:
- 前記エレメント(1)が、100MPa超、好ましくは250MPa超の圧縮応力を有する、
- 前記エレメント(1)が、1500MPa未満、好ましくは1300MPa未満の圧縮応力を有する、
- DoLが、1μm超、好ましくは3μm超である、
- 前記DoLが、0.4・t未満、好ましくは0.3・t未満である、
- 前記構造化および化学強化が施された第1のセクション(9)が、500t以下、好ましくは30t以下の曲げ半径で破損することなく曲げることができ、ここで、tは、前記ガラスの厚みである
のうち少なくとも1つを有する、請求項1記載のエレメント(1)。
【請求項15】
互いに可動である少なくとも2つのセクションを有する請求項1記載の平坦なエレメント(1)を備えた、物品。
【請求項16】
前記平坦なエレメント(1)が、前記第1のセクションで曲げられかつ折り曲げられており、前記面(3,5)のうち一方の前記第2のセクション(11,13)の表面が互いに対向している、請求項15記載の物品。
【請求項17】
以下の特徴:
- 前記平坦なエレメント(1)が、互いに対向する前記第2のセクション(11,13)の前記表面が平行となるかまたは鋭角に配置されるように曲げられている、
- 互いに対向する前記第2のセクション(11,13)の前記表面が、前記第1のセクション(9)が外側に膨らんで、前記折り曲げられた平坦なエレメントの厚みが、前記第1のセクション(9)と前記第2のセクション(11,13)との間の境界線または前記第2のセクション(11,13)が対向する位置よりも前記第1のセクション(9)においてより大きくなるように互いに接近した位置にある、
- 前記エレメント(1)が、サンドイッチ構造体のうちの1つの層を形成している、
- 前記エレメント1の少なくとも一方の面(3,5)が、有機層、特にプラスチック層(35)に積層されている、
- 積層体が、前記エレメント(1)に積層された板ガラスを含む、
- 前記物品が、折り曲げ可能なディスプレイである、
- 前記物品が、押しスイッチを備え、前記押しスイッチの押しボタンが、前記第2のセクション(11,13)のうちの1つにより形成されている
のうち少なくとも1つを有する、請求項16記載の物品。
【請求項18】
請求項1記載の無機脆性材料のエレメント(1)の製造方法であって、以下の工程:
- 脆性材料のプレート状のエレメント(1)を提供する工程、
- 前記エレメント(1)に超短パルスレーザのレーザビームを照射して集束させる工程であって、ここで、前記レーザビーム(50)は、前記エレメント(1)の前記脆性材料が透過する波長を有するため、前記レーザビームは、前記エレメント(1)を透過することができるものとする工程、
- 前記レーザビームを集束させて前記エレメント(1)内に細長い焦点を生成する工程であって、ここで、前記レーザビームの強度は、前記焦点に沿って前記エレメント(1)内にフィラメント状損傷ゾーンを生成するのに十分であるものとする工程、
- 前記レーザビームを前記エレメントに対して相対的に移動させて、複数のフィラメント状損傷ゾーンを、多数のリング状の経路に沿って並べて導入する工程、
- 前記エレメントをエッチング液に曝してエッチングする工程であって、前記エッチング液が前記フィラメント状損傷ゾーンに侵入することで、前記フィラメント状損傷ゾーンが広がってチャネルが形成され、前記チャネルが広がって結合して前記開口部(90)が形成され、その結果、1つの第1のセクション(9)と2つの第2のセクション(11,13)とを含む少なくとも3つのセクションが形成され、ここで、前記第2のセクションは、前記第1のセクション(9)が前記第2のセクション(11,13)の間に配置されるように前記第1のセクションに隣接しており、前記第1のセクション(9)は、前記開口部(90)を含み、それにより、前記第1のセクション(9)は、前記第2のセクション(11,13)よりも高い可撓性を有するものとする、工程
を有する、方法。
【外国語明細書】