(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019113
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ステントセット及びステント搬送デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20240201BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122346
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022121686
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】横田 知明
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA45
4C267AA54
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC23
4C267GG02
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く、ステントを好適に留置可能なステント搬送デバイス及びステントセットを提供する。
【解決手段】ステント搬送デバイスは、ステントと、ステントを体内に搬送する搬送用シースと、を有する。ステントは、第1ステント3と、第2ステント4と、で構成されている。第1ステント3は、樹脂膜で形成されたスリーブを有する。搬送用シースは、第1ステント3を支持する遠位側の第1支持部6aと、第1支持部6aよりも近位側に設けられて第2ステント4を支持する第2支持部6bと、を有して、第1ステント3及び第2ステント4を大動脈弓内で独立して展開可能である。第2ステント4における軸心方向の中間部の自己拡開力が、第1ステント3のスリーブの自己拡開力よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントと、該ステントを体内に搬送する搬送用シースと、を有するステント搬送デバイスであって、
前記ステントは、第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、
前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、
前記搬送用シースは、前記第1ステントを支持する遠位側の第1支持部と、該第1支持部よりも近位側に設けられて前記第2ステントを支持する第2支持部と、を有して、前記第1ステント及び前記第2ステントを体管腔内で独立して展開可能であり、
前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とするステント搬送デバイス。
【請求項2】
前記第1ステントは、前記スリーブの遠位側又は近位側の少なくとも一方に接続された自然拡開可能であり生体管に係止可能な係止部を備える請求項1に記載のステント搬送デバイス。
【請求項3】
前記スリーブは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している拡径部を全周に亘って有する請求項2に記載のステント搬送デバイス。
【請求項4】
前記第2ステントは、軸方向の近傍よりも自己拡開力の大きな付勢部を有し、
該付勢部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて体内に留置する留置状態において前記拡径部に対向する位置に設けられている請求項3に記載のステント搬送デバイス。
【請求項5】
前記拡径部は第1拡径部であり、
前記第2ステントは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している第2拡径部を有し、
該第2拡径部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて体内に留置する留置状態において前記第1拡径部に対向する位置に設けられている請求項4に記載のステント搬送デバイス。
【請求項6】
前記係止部は、複数のワイヤが交絡した網目を有しており、
前記係止部に接続された前記スリーブの端部は、前記係止部の前記網目に沿ってジグザグに形成されている請求項5に記載のステント搬送デバイス。
【請求項7】
前記第2ステントは、複数のワイヤが交絡した網目を有しており、
該網目は、目の小さい細目部と、目の大きな粗目部と、を有し、
前記細目部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて前記体内に留置する留置状態において前記スリーブの前記端部に対向する位置に設けられており、
前記細目部の外径は、自然状態における前記スリーブの前記端部の内径よりも大径に形成されている請求項6に記載のステント搬送デバイス。
【請求項8】
前記係止部は、前記スリーブの両端部に設けられており、
前記スリーブにおいて、前記係止部が設けられていない領域の軸心方向の長さは、前記係止部が設けられている領域の軸心方向の長さよりも長い請求項7に記載のステント搬送デバイス。
【請求項9】
前記スリーブには、軸心方向に延在する捻転防止部が設けられている請求項8に記載のステント搬送デバイス。
【請求項10】
前記第2ステントは、軸心方向中間部に軸心方向に延在する筒状部を有し、
該筒状部の長さは、前記スリーブの全長と同じ又はそれ以上の長さである請求項9に記載のステント搬送デバイス。
【請求項11】
前記第2ステントは、軸心方向において複数部品に分かれて構成されている請求項10に記載のステント搬送デバイス。
【請求項12】
前記第2ステントに、末端に向かうにつれて拡径するフレア部が設けられており、
前記フレア部の開口径は、前記第1ステントの開口径よりも大きい請求項11に記載のステント搬送デバイス。
【請求項13】
前記第1ステントは、前記フレア部の拡径度よりも低い拡径度の末端部を有する請求項12に記載のステント搬送デバイス。
【請求項14】
前記第1ステントに、末端に向かうにつれて拡径する第1フレア部が設けられており、
前記フレア部は第2フレア部であり、
前記第2フレア部の軸心方向長さは、前記第1フレア部の軸心方向長さ以上である請求項13に記載のステント搬送デバイス。
【請求項15】
前記第2フレア部は、前記複数部品のうち遠位端部にある部品に設けられている請求項14に記載のステント搬送デバイス。
【請求項16】
第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、
前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、
前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とするステントセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管内に留置されるステントセット、及びステントセットを搬送するためのステント搬送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用に体内に留置される留置具として、ステント等がある。ステントには、シリコーン樹脂や延伸ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂膜(グラフトともいう。)を有するステントグラフトがあり、消化管(胃、十二指腸又は大腸等)や血管(大動脈弓等)等の体管内に自己拡張力を発揮して留置され、細胞の浸潤を抑制し、長期間の閉塞抑制を期待できるものがある。
これらのステントは、搬送デバイスによって体管内の病変部等の目的とする位置に搬送される。
【0003】
特許文献1には、樹脂膜(グラフト)と、樹脂膜の拡張をサポートするサポートステントと、を含むステントグラフトが開示されている。このサポートステントにおける少なくとも片側の端部がグラフトに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような樹脂膜を有するステント(ステントグラフト)は、樹脂膜を有しないステント(ベアステント)と比較して、厚みが大きくなるために、ステントを収容するシース(アウターシース)の内径は相対的に大径のものが必要となる。このため、シースを通すことが可能な内視鏡が制限されることがあり、汎用性が低くなってしまう。
【0006】
仮に、シースの内径を小径として、ステントの収容空間を狭めた場合には、シースからステントを露出させる際に、シースにステントが引っかかってしまい、ステントの放出抵抗が増大することが考えられる。特にステントが小径になるほど、ステントの拡張力が高くなり、ステントの放出抵抗の増大は顕著となる。この場合、所望の位置でステントを展開することが困難となることがあった(病変部への到達成功率の低下)。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、汎用性が高く、ステントを好適に留置可能なステント搬送デバイス及びステントセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステント搬送デバイスは、ステントと、該ステントを体内に搬送する搬送用シースと、を有するステント搬送デバイスであって、前記ステントは、第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、前記搬送用シースは、前記第1ステントを支持する遠位側の第1支持部と、該第1支持部よりも近位側に設けられて前記第2ステントを支持する第2支持部と、を有して、前記第1ステント及び前記第2ステントを体管腔内で独立して展開可能であり、前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明のステントセットは、第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汎用性が高く、ステントを好適に留置可能なステント搬送デバイス及びステントセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るステント搬送デバイスにより、大動脈弓の大動脈瘤部分にステントを留置している状態を示す模式図である。
【
図4】ステントセット(第1ステント及び第2ステント)を模式的に示す図である。
【
図5】インナーシースにおける第1ステントと第2ステントの配置を模式的に説明する図である。
【
図6】捻転防止ワイヤを含む第1ステントを模式的に示す図である。
【
図7】第1変形例に係る第2ステントを模式的に示す図である。
【
図8】第2変形例に係る第1ステントを模式的に示す図である。
【
図9】
図2のIX部に対応する部分を拡大して示す図であり、(a)は、第3変形例に係るスリーブの端部を示す図、(b)は、第4変形例に係るスリーブの端部を示す図である。
【
図10】第2変形例に係る第1ステント、及び第5変形例に係る第2ステントを模式的に示す図である。
【
図11】第6変形例に係る第2ステントの端部を模式的に示す図である。
【
図12】第6変形例に係る第2ステントを第1ステント内に収容した状態のステントセットの端部を模式的に示す図である。
【
図13】第7変形例に係る第2ステントの端部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るステント搬送デバイス1及びステントセットSについて、図面を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0013】
また、本実施形態で用いる図面は、本発明のステント搬送デバイス及びステントセットの構成、形状、ステント搬送デバイス及びステントセットを構成する各部材(各部位)の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。また、図面は、ステント搬送デバイス及びステントセットの長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
なお、近位側(基端側)は、施術時に術者の近くに配置される側をいい、遠位側(先端側)は、施術時に術者の遠くに配置される側をいう。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
<概要>
まず本発明のステント搬送デバイスの概要について、実施形態に係るステント搬送デバイス1を例に、
図1から
図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステント搬送デバイス1により、大動脈弓50の大動脈瘤55部分にステント2を留置している状態を示す模式図である。
図2は、第1ステント3を模式的に示す図、
図3は、第2ステント4を模式的に示す図である。
図4は、ステントセットS(第1ステント3及び第2ステント4)を模式的に示す図、
図5は、インナーシース6における第1ステント3と第2ステント4の配置を模式的に説明する図である。
なお、
図1のインナーシース6においては、
図5に示して後述する太径部6dの図示を省略している。
【0015】
本発明の実施形態に係るステント搬送デバイス1は、ステント2と、ステント2を体内に搬送する搬送用シース5と、を有する。
ステント2は、第1ステント3と、第2ステント4と、で構成されている。第1ステント3は、
図2に示すように、樹脂膜で形成されたスリーブ3aを有する。搬送用シース5は、
図5に示すように、第1ステント3を支持する遠位側の第1支持部6aと、第1支持部6aよりも近位側に設けられて第2ステント4を支持する第2支持部6bと、を有して、第1ステント3及び第2ステント4を体管腔(
図1に示す大動脈弓50)内で独立して展開可能である。
第2ステント4における軸心方向の中間部4aの自己拡開力(弾性復元力)が、第1ステント3のスリーブ3aの自己拡開力よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
つまり、ステント搬送デバイス1は、第1ステント3と第2ステント4とをずれた位置で支持でき、これらを独立して展開させる構成となっている。第1支持部6a及び第2支持部6bは、ステント搬送時に、径方向においてインナーシース6とアウターシース7との間に位置する部位である。第1支持部6a及び第2支持部6bは、例えば、不図示の縫合糸等によって第1ステント3及び第2ステント4をインナーシース6に固定されることによって、第1ステント3及び第2ステント4を支持するものであってもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1ステント3と第2ステント4が搬送時に重ねられて肉厚に形成されているものと比較して、第1ステント3と第2ステント4が搬送時に重ねられていないことで、ステント2の収容空間内での第1ステント3、第2ステント4による外径方向の拡がりを抑制できる。
【0018】
したがって、樹脂膜で形成されたスリーブ3aを厚くしたとしても、ステント2(第1ステント3及び第2ステント4)の充填率を低めることができる。このため、第1ステント3のスリーブ3aの厚みを確保でき、強度を高めることが可能となり、ステント2の充填率を低めることができることでステント2を好適に留置可能となる。
【0019】
ここで「充填率」とは、搬送用シース5に設けられたステント2の収容空間の断面におけるステント2の占める割合をいうものとする。
例えば、カバー・ステント一体成形品の場合で、充填率約80%の場合では、カバー(スリーブ3a)の厚みが約10μm以下に制限されていた。この場合と同じ充填率の場合で、第1ステント3と第2ステント4が搬送時に重ねられていない構成のときには、スリーブ3aの厚みを約37μmにすることができた。このため、長期間機能を維持した状態でステント2を体内に留置することが可能となる。
【0020】
一方で、例えば、カバー(スリーブ3a)の厚みが約50μmで同じ場合で比較したときには、カバー・ステント一体成形品に比べ、充填率を約80%から約20%に低めることができる。このため、ステント2を覆うアウターシース7(搬送用シース5)を小径にすることができ、狭い体管内や内視鏡にも搬送用シース5を通しやすくなり、汎用性を高めることができる。
【0021】
本実施形態に係るステントセットSは、第1ステント3と、第2ステント4と、で構成されている。
第1ステント3は、樹脂膜で形成されたスリーブ3aを有し、第2ステント4における軸心方向の中間部の自己拡開力が、第1ステント3のスリーブ3aの自己拡開力よりも大きいことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第2ステント4における軸心方向の中間部4aの自己拡開力が、第1ステント3のスリーブ3aの自己拡開力よりも大きいことで、第1ステント3の内側に第2ステント4を配置し、第2ステント4を拡開するようにして、第1ステント3のスリーブ3aの拡開を第2ステント4の中間部4aの拡開力で補うことができる。
【0023】
<全体構成>
次に、ステント搬送デバイス1の全体構成について、
図1及び
図5を主に参照して説明する。
本実施形態に係るステント搬送デバイス1は、大動脈弓50の大動脈瘤55にステント2を留置するために、血管内にステント2を搬送するものである。
ステント搬送デバイス1は、ステント2を搬送できればよく、このような部位に用いられるものに限定されない。例えばステント搬送デバイス1は、消化管(胃、十二指腸又は大腸等)に用いられるものであってもよい。
また、ステント搬送デバイス1(搬送用シース5)は、上記のように内視鏡に通されるものであってもよい。
【0024】
ステント搬送デバイス1は、ステント2と、ステント2を搬送する搬送用シース5と、を備える。
ステント2(
図4においてステントセットSと記載。)は、第1ステント3と、第1ステント3の径方向内側で展開される第2ステント4と、を備える。
搬送用シース5は、ステント2が取り付けられるインナーシース6と、搬送時にステント2の外周を覆うアウターシース7と、を備える。
【0025】
図5に示すように、インナーシース6は、第1ステント3を支持する第1支持部6aとなる細径部6cと、第2ステント4を支持する第2支持部6bとなる太径部6dと、を備える。また、インナーシース6の先端部に先端チップ12(
図1参照)が取り付けられている。
【0026】
後述するように、第1ステント3は、直筒状に形成された第2ステント4と比較して、フレア部3cを有して径方向の大きさが異なる部位がある。このため、第1ステント3がインナーシース6とアウターシース7との間に縮径した状態で収容されると、フレア部3cから先にかさばりができることになる。
この点、第1ステント3が、第1支持部6aとなる細径部6cで支持されており、第2ステント4が、第2支持部6bとなる太径部6dで支持されていることで、アウターシース7内で第1ステント3及び第2ステント4を好適に支持することができる。
つまり、細径部6cとアウターシース7の間の相対的に広い空間で上記のかさばり部分を収容することができる。
【0027】
<第1ステント>
第1ステント3は、上記のように樹脂膜で形成されたスリーブ3aと、スリーブ3aの遠位側又は近位側の少なくとも一方(本実施形態においては両側)に接続された自然拡開可能であり生体管(大動脈弓50)に係止可能な係止部(アンカー3b)を備える。
【0028】
本実施形態に係る「係止部」は、樹脂製のスリーブ3aよりも拡開力(弾性復元力)の高い金属ワイヤで構成されたものである。なお、「係止部」としてのアンカー3bは、金属ワイヤで構成されるものに限定されず、パイプからレーザーカットしたものや、生体内で分解・吸収される樹脂で形成されるものであってもよい。この内容については、後述する第2ステント4(14)を構成するものについても同様である。
本実施形態に係る係止部としてのアンカー3bは、複数のワイヤが交絡したものである。
本書において「交絡」とは、複数のワイヤが上下に重ねられるように接触して交差している状態、複数のワイヤがフック状に折り返されて交差している状態を含むものとする。
しかしながら、このような構成に限定されず、アンカー3bは、1つのワイヤが繰り返し折り返されて重ねられた構成であってもよい。
【0029】
上記構成によれば、第1ステント3が係止部(アンカー3b)を備えることで、第1ステント3を生体管(大動脈弓50)内に好適に係止させたうえで、第2ステント4を第1ステント3の内側から展開することができる。
【0030】
複数のワイヤが交絡して形成されたアンカー3bの自己拡開力は、樹脂製のスリーブ3aの自己拡開力、及び後述する捻転防止ワイヤ10の自己拡開力よりも高い。
このようにアンカー3bが形成されていることで、スリーブ3aにおけるアンカー3bに接続された接続部3eを拡開することができる。
つまり、拡開状態のアンカー3bの断面が円筒状に形成されていることで、接続部3eの断面も円筒状に拡開することになる。
【0031】
アンカー3bは、スリーブ3aと接続する接続部3eを有し、接続部3eから開放端側に向かって拡径している。本実施形態に係る接続部3eは、
図2においてスリーブ3aとアンカー3bの境界部分を示しているが、スリーブ3aにワイヤが重なるように構成されていれば、その重なる領域をいうものとする。
本実施形態に係るスリーブ3aは、外径22mm、厚み0.050から0.120mmで、シリコーン樹脂で形成されている。
【0032】
係止部(アンカー3b)は、スリーブ3aの両端部に設けられている。スリーブ3aにおいて、アンカー3bが設けられていない領域の軸心方向の長さは、アンカー3bが設けられている領域の軸心方向の長さよりも長い。
【0033】
なお、上記の「スリーブ3aにおいて、・・・アンカー3bが設けられている領域の軸心方向の長さ」は、ゼロを含むものとする。
上記構成によれば、第1ステント3を係止部(アンカー3b)で生体管(大動脈弓50)に係止することができ、好適である。しかしながら、スリーブ3aには自然拡開可能な係止部(アンカー3b)が形成されずに直筒状に形成されている構成であってもよい。
【0034】
図2に示すように、第1ステント3のアンカー3bに、末端に向かうにつれて拡径する第1フレア部(フレア部3c)と、フレア部3cの先に直筒状に延在する末端部3dと、が設けられている。
末端部3dは、フレア部3c(及び後述する第2ステント14のフレア部14c)の拡径度よりも低い拡径度を有する。
【0035】
「拡径度」は側面視における不図示の軸線に対する傾斜角の度合いをいい、ゼロを含むものとする。つまり、直筒状に形成された
図2に示す末端部3dは、フレア部3c(及び後述する第2ステント14のフレア部14c)の拡径度よりも低い拡径度を有することとなる。
【0036】
なお、必ずしも直筒状に延在する末端部3dが設けられる必要はなく、フレア部3cよりも緩やかに拡径しているものであってもよい。
しかしながら、このような構成に限定されず、末端までフレア部3cが形成されている構成であってもよい。
【0037】
<第2ステント>
本実施形態に係る第2ステント4は、交絡した金属ワイヤによって形成された所謂ベアステントであり、複数のワイヤが交絡したものであり、軸心方向に延在して円筒状に形成されている。
【0038】
第2ステント4は、軸心方向中間部に軸心方向に延在する筒状部4bを有する。筒状部4bの長さは、スリーブ3aの全長と同じ又はそれ以上の長さである。
上記の「軸心方向中間部に・・・延在する」とは、少なくとも軸心方向中間部に延在するという意味であり、
図3に示す本実施形態に係る第2ステント4のように、全体に亘って筒状部4bが設けられていてもよい。
一方で、
図7に示して後述するように、上記の軸心方向中間部ではなく、端部に設けられたフレア部14cは、上記の筒状部4b(筒状部14b)に勿論含まれないものとする。
【0039】
上記の「軸心方向に延在する筒状部」とは、軸心方向成分を含んで延在する筒状部を意味し、直筒状に限定されず、軸心方向にずれた位置で径方向の大きさが異なるもの(芋虫状のもの)をも含むものとする。例えば、芋虫状に形成されたものを用いれば、スリーブに対する筒状部の滑りを抑制できる。
上記構成によれば、スリーブ3aの全長と同じ又はそれ以上の長さである筒状部4bにより、拡径力の弱い樹脂製のスリーブ3aをその全長に亘って拡開させることができる。
【0040】
<留置方法>
ステント搬送デバイス1によるステント2の留置方法について説明する。
まず、術者は、搬送用シース5を血管内に挿入して、大動脈瘤55に対向する位置に第1ステント3を配置する。そして、術者は、アウターシース7をインナーシース6に対して近位側に引いて、第1支持部6aに対する第1ステント3の取付状態を解除する。アウターシース7から露出した第1ステント3は、自己拡開して体管(大動脈弓50)内の大動脈瘤55に接触する部位に留置される。
【0041】
次に、術者は、搬送用シース5をさらに挿入して、留置された第1ステント3の内側に、第2支持部6bを配置する。そして、術者は、アウターシース7をインナーシース6に対して近位側にさらに引いて、第2支持部6bに対する第2ステント4の取付状態を解除する。アウターシース7から露出した第2ステント4は、自己拡開して、第1ステント3の樹脂製のスリーブ3aを押し広げることができ、拡張力を補助することができる。つまり、このような方法によれば、展開力(拡径方向の弾性復元力)が生じにくい樹脂製のスリーブ3aを、大動脈弓50における大動脈瘤55の全長に亘って拡張可能となる。
【0042】
例えば、第1ステント3の第1支持部6aからの取付状態の解除方法、第2ステント4の第2支持部6bからの取付状態の解除方法としては、不図示のトリガーワイヤを引っ張ることによって、トリガーワイヤに取り付けられた不図示の縫合糸であって、第1ステント3及び第2ステント4の開口を縛ってインナーシース6に結び付ける縫合糸を切断して行われる。
【0043】
<捻転防止部>
次に、第1ステント3に設けられた捻転防止部(捻転防止ワイヤ10)について、
図6を参照して説明する。
図6は、捻転防止ワイヤ10を含む第1ステント3を模式的に示す図である。
【0044】
スリーブ3aには、軸心方向に延在する捻転防止部(捻転防止ワイヤ10)が設けられていてもよい。
本実施形態における捻転防止ワイヤ10は、スリーブ3aが捻じれることを防止するためのものであり、ニッケル-チタン合金等の金属製であり、樹脂製のスリーブ3a内に埋設されている。
【0045】
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、捻転防止部は、スリーブ3aの内面又は外面に沿って設けられていてもよく、スリーブ3aから露出して設けられていてもよい。
【0046】
また、上記の「軸心方向に延在する」とは、具体的には、軸心方向成分を含んで延在するという意味である。本実施形態に係る捻転防止ワイヤ10は、スリーブ3aのところに軸方向に1本通されているが、このような構成に限定されない。つまり、
図6に示す直線的に延在するものの他、螺旋状に延在するものも含むものとする。
【0047】
なお、捻転防止部としては、金属製中実の捻転防止ワイヤ10に限定されず、樹脂製であってもよく、中空状のものであってもよい。さらに、捻転防止ワイヤ10は、第1ステント3の周回方向に複数設けられていてもよい。
特に、捻転防止部が、複数のワイヤで構成されている場合には、これらが平行に延在する等、交絡していなければ、第1ステント3の厚みを薄くするできるために好適である。
【0048】
上記構成によれば、樹脂膜で形成されていることにより変形しやすいスリーブ3aの捻じり変形を好適に防止することができ、第1ステント3を好適に拡開させることができる。換言すると、スリーブ3aの内径が窄まり、第2ステント4が通過するスペースがなくなることを防止することができる。
【0049】
<第1変形例>
上記実施形態においては、第2ステント4は、直筒状に形成されているものとして説明したがこのような構成に限定されない。
次に、第1変形例に係る複数品で構成される第2ステント14について、
図7を主に参照して説明する。
図7は、第1変形例に係る第2ステント14を模式的に示す図である。
【0050】
第1変形例に係る第2ステント14は、軸心方向において複数部品(近位側部品15及び遠位側部品16)に分かれて構成されている。
本実施形態においては、面対称形状の近位側部品15及び遠位側部品16の2つの部品によって第2ステント14は構成されているが、このような構成に限定されない。例えば、第2ステント14は、第1ステント3を径方向外側に押し広げることができればよく、面対称形状に限定されず、異形の部品で構成されていてもよい。また、さらに複数の部品で構成されていてもよい。例えば近位側部品15と遠位側部品16の間に設けられる筒状部品をさらに備える構成であってもよい。
【0051】
上記構成によれば、第2ステント14の位置を、第1ステント3の一方側に偏って配置されることを防いで、第1ステント3の遠位端及び近位端の位置に合うように配置しやすくなる。第2ステント14の近位側部品15及び遠位側部品16を展開する位置で、第2ステント14全体の長さを調整することができる。
【0052】
例えば、屈曲した体管内にステントセットS(第1ステント3及び第2ステント14)を留置する場合に、屈曲した状態で留置された第1ステント3の長さに合わせた好適な位置に、第2ステント14(近位側部品15及び遠位側部品16)を展開させることができる。
【0053】
また、第2ステント14に、末端に向かうにつれて拡径するフレア部14cが設けられている。フレア部14cの開口径は、第1ステント3の開口径よりも大きい。
なお、フレア部14cは、複数部品に分かれた第2ステント14に限定されず、
図3に示す複数部品に分かれていない第2ステント4に設けられていてもよい。
【0054】
上記構成によれば、第2ステント14のフレア部14cを第1ステント3の開口に係合させることで、第1ステント3と第2ステント14との間に、内容物(流動物)が溜まることを抑制できる。
【0055】
第1変形例に係る第2ステント14は、全体としての軸心方向中間部に軸心方向に延在する(本例においては直筒状の)筒状部14bを有する。筒状部14bの長さは、スリーブ3aの全長以上の長さである。しかしながら、このような構成に限定されず、筒状部14bの長さとスリーブ3aの全長は、同じ長さであってもよい。
【0056】
このように、複数部品で構成されている第2ステント14においては、筒状部14bの長さは、各部品(近位側部品15及び遠位側部品16)の筒状部14bの長さを合計した長さとする。
つまり、近位側部品15、遠位側部品16それぞれの筒状部14bにおける軸心方向長さの合計の長さが、スリーブ3aの全長と同じ又はそれ以上の長さとなっている。そして、第2ステント14の筒状部14bがスリーブ3aの全長以上の長さである場合には、近位側部品15及び遠位側部品16それぞれの筒状部14bは、重ねられて留置されることとなる。
【0057】
上記のように、フレア部14cの拡径度よりも第1ステント3の末端部3dの拡径度は低く形成されている。このため、フレア部14cから第1ステント3の末端部3dに拡径方向の荷重がかかりやすくなり、両者が係合しやすくなる。
【0058】
第2フレア部(フレア部14c)の軸心方向長さは、フレア部3cの軸心方向長さ以上であると好適である。
上記構成によれば、第2フレア部(フレア部14c)の軸心方向長さが長いことで、第1フレア部(フレア部3c)を内側から覆いやすくなり、フレア部3cとフレア部14cの間で、内容物(流動物)が溜まることを抑制できる。
【0059】
第2フレア部(フレア部14c)は、複数部品のうち遠位端部にある部品に設けられていると好適である。本例においては、
図7に示すようにフレア部14cは、第2ステント14の両端部に設けられている。
【0060】
上記のように少なくとも第2ステント14の遠位端部にある部品(遠位側部品16)に設けられていることで、第2ステント14のフレア部14cを第1ステント3のフレア部3cの内側に係合させつつ、第2ステント14の近位側にある部品の位置を第1ステント3の近位端の位置に合わせるように配置できる。
【0061】
特に、本実施形態においては、第2ステント14の近位端部と遠位端部の両方にフレア部14cが設けられている。
このような第2ステント14の留置方法としては、大動脈弓50内に先に留置された第1ステント3の遠位側にあるフレア部3cに、遠位側部品16のフレア部14cが重なる位置で、第2ステント14の遠位側部品16を展開する。
次に、インナーシース6を押し進め、第1ステント3の近位側にあるフレア部3cに、近位側部品15のフレア部14cが重なる位置で、アウターシース7をさらに退行させて第2ステント14の近位側部品15を展開する。このとき、本実施形態においては、近位側部品15及び遠位側部品16それぞれの筒状部14bは、重ねられて留置されることとなる。
【0062】
このようにして、第1ステント3の遠位側にあるフレア部3cと第2ステント14を構成する遠位側部品16のフレア部14c、及び第1ステント3の近位側にあるフレア部3cと第2ステント14を構成する近位側部品15のフレア部14cの位置を合わせることで、第1ステント3と第2ステント14が好適に係合することとなる。
【0063】
<第2変形例>
上記実施形態においては、第1ステント3のスリーブ3aは、直筒状に形成されている例を説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、第2変形例に係る拡径部8fを有する第1ステント8について、
図8を主に参照して説明する。
図8は、第2変形例に係る第1ステント8を模式的に示す図である。
【0064】
第2変形例に係る第1ステント8のスリーブ3aは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している拡径部8fを全周に亘って有する。
本例に係る拡径部8fは、
図8に示すように、側面視において、不図示の軸線に対して5度から15度の傾斜で形成され、角張って形成された山状(三角形状)の膨らみである。しかしながら、拡径部8fは、このような形状であるものに限定されず、丸みを帯びて形成されていてもよい。さらには、拡径部8fは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出していればその形状を限定されず、側面視で台形状であったり、おねじ状に外周から突出するものであってもよい。
【0065】
上記構成によれば、樹脂膜で形成されたスリーブ3aの一部である拡径部8fが径方向外側に突出していることで、挿入される血管又は消化管等の体管内壁に対するスリーブ3aのシール性(密着性)を高めることができる。
具体的には、第1ステント8が体管内で拡張したときに、径方向に弾性復元可能な拡径部8fが、体管内壁に押し当てられて変形し、拡径方向の弾性復元力が加わることで、体管内壁に密着することが可能となる。
このため、血液や消化物が第1ステント8と体管内壁との間を通る(リークする)ことを抑制できる。
【0066】
<第3及び第4変形例>
上記実施形態における第1ステント3においては、
図2に示すように、スリーブ3aの端部(縁)は、直線的に径方向に周回して形成されていたが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、第3及び第4変形例に係るスリーブ3aの端部8gについて、
図9を主に参照して説明する。
図9は、
図2のIX部に対応する部分を拡大して示す図であり、
図9(a)は、第3変形例に係るスリーブ3aの端部8gを示す図、
図9(b)は、第4変形例に係るスリーブ3aの端部8gを示す図である。
【0067】
図9(a)に示すように、本例に係る係止部(アンカー3b)は、複数のワイヤが交絡した網目30を有しており、アンカー3bに接続されたスリーブ3aの端部8gは、アンカー3bの網目30(を構成する、アンカー3bにおいて軸方向基端側にあるワイヤ)に沿ってジグザグに形成されている。
換言すると、スリーブ3aの端部8gは、アンカー3bの網目30を構成して、軸方向に振れながら周回するワイヤに沿ってジグザグに(複数の連なる山を形成するように)形成されている。
【0068】
上記の「スリーブ3aの端部8gは、・・・網目30に沿って・・・形成されている」とは、側面視において、スリーブ3aの端部8gが、網目30のワイヤの位置に完全に一致するものに限定されず、網目30から、網目30を構成するワイヤの線径の5倍以内の範囲内に設けられていることを意味する。
上記構成によれば、スリーブ3aの端部8gがアンカー3bの網目30に沿ってジグザグに形成されていることで、スリーブ3aの端部8gと網目30との間に浮き(隙間)が生じることを抑制でき、この間に、血液や消化物が入り込むことを抑制できる。
【0069】
上記の
図9(a)に示す第3変形例においては、スリーブ3aの端部8gが、網目30を構成する、軸方向基端側にあるワイヤに沿ってジグザグに形成される例について説明したが、このような構成に本発明は限定されない。
【0070】
例えば、
図9(b)に示すように、網目30を構成するものとしてアンカー3bの基端側から1列目30a、2列目30bのワイヤがある場合に、スリーブ3aの端部8gは、アンカー3bの網目30の2列目30bに沿ってジグザグに形成されていてもよい。
【0071】
このように、スリーブ3aの端部8gが、アンカー3bの網目30の2列目30b以降(つまり先端側)に列に沿って形成されていることで、スリーブ3aとアンカー3bとの接続強度を高くすることができる。
さらには、スリーブ3aの端部8gは、網目30(を構成するワイヤ)に沿って形成されていればよく、網目30の複数列に亘って形成されていてもよい。
【0072】
<第5変形例>
図3に示して説明した上記実施形態に係る第2ステント4は直筒状に形成されたものであったが、このような構成に本発明は限定されない。
次に、第1ステント8に対して好適に付勢可能な第5変形例に係る第2ステント9について、
図10を主に参照して説明する。
図10は、第2変形例に係る第1ステント8、及び第5変形例に係る第2ステント9を模式的に示す図である。
【0073】
本例に係る第2ステント9は、軸方向の近傍よりも自己拡開力の大きな付勢部9cを有し、付勢部9cは、第2ステント9を第1ステント8の内部に配設させて体内に留置する留置状態において拡径部8fに対向する位置に設けられている。
付勢部9c及び後述する第2拡径部9dについては、拡径部8fを内側から付勢できればいいため、全周に亘って形成されているものの他、間欠的に複数箇所に形成されているものを含む。
【0074】
なお、「付勢部」としては、後述する第2拡径部9dのように、形状として軸方向近傍よりも径方向外側に突出して形成されているものに限定されず、弾性復元力の大きな素材、構造によって形成されることによって、拡張力が大きく形成されたものであってもよい。
上記構成によれば、第2ステント9に付勢部9cが設けられていることで、対向する拡径部8fに対して拡径方向の荷重を付与して、拡径部8fが体管の内壁に密着することをアシストできる。
【0075】
本例においては、拡径部8fは第1拡径部であり、第2ステント9は、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している付勢部9cとしての第2拡径部9dを有する。第2拡径部9dは、第2ステント9を第1ステント8の内部に配設させて体内に留置する留置状態において拡径部8fに対向する位置に設けられている。
また、第2拡径部9d(の外面形状)は、拡径部8f(の内面形状)と同一又は相似の形状であると、拡径部8fに対して満遍なく付勢ができるため好適であるが、このような構成に限定されず、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出していればよい。
【0076】
上記構成によれば、第2ステント9に第2拡径部9dが設けられていることで、対向する拡径部8fに対して拡径方向の荷重を付与して、拡径部8fが体管の内壁に密着することをアシストできる。
【0077】
<第6及び第7変形例>
上記実施形態においては、第2ステント4、9、14について網目の大きさを異ならせることについて言及していなかったが、網目の大きさを異ならせるようにしてもよい。
この点に関する第6変形例に係る第2ステント11について
図11及び
図12を参照し、第7変形例に係る第2ステント13について
図13を参照して説明する。
なお、
図12においては、第1ステント3の径方向に拡径したアンカー3bを直筒状に示している。アンカー3bについては、直筒状であっても、上記実施形態のように、他の部位よりも拡径したフレア部3cを有する構成であってもよい。
【0078】
図11は、第6変形例に係る第2ステント11の端部を模式的に示す図、
図12は、第6変形例に係る第2ステント11を第1ステント3内に収容した状態のステントセットの端部を模式的に示す図である。
図13は、第7変形例に係る第2ステント13の端部を模式的に示す図である。
【0079】
図11に示す第2ステント11は、複数のワイヤが交絡した網目40を有している。網目40は、目の小さい細目部40aと、目の大きな粗目部40bと、を有する。細目部40aは、
図12に示すように第2ステント11を第1ステント3の内部に配設させて体内に留置する留置状態において、スリーブ3aの端部に対向する位置に設けられている。細目部40aの外径は、自然状態におけるスリーブ3aの端部の内径よりも大径に形成されている。
「スリーブ3aの端部に対向する位置」とは、具体的にはスリーブ3aの端部の縁に重なる位置のことである。
【0080】
上記構成によれば、第2ステント11の網目のうち細目部40aが、第1ステントのスリーブ3aの端部を、内側から拡張させることで、スリーブ3aの端部が網目内に入り込むことを抑制でき、スリーブ3aの端部に、体管内壁との密着性を阻害するしわが生じることを抑制できる。
【0081】
本例に係る第2ステント11においては、細目部40aが、第2ステント11の端部(両端部)に設けられている。
しかしながら、スリーブ3aの端部に対向する位置に細目部40aが配設されていればよい。
第7変形例に係る第2ステント13は、第2ステント13の中央側に粗目部40b、粗目部40bよりも端部側であって、スリーブ3aの端部に対向する位置に細目部40a、細目部40aよりも先の端部に粗目部40cが設けられている。
【0082】
第2ステント13によれば、製造の手間がかかる細目部40aの範囲を狭くすることができるため、製造コストを低く抑えることができる。
【0083】
なお、本発明のステント搬送デバイス1及びステントセットSに係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0084】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
ステントと、該ステントを体内に搬送する搬送用シースと、を有するステント搬送デバイスであって、
前記ステントは、第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、
前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、
前記搬送用シースは、前記第1ステントを支持する遠位側の第1支持部と、該第1支持部よりも近位側に設けられて前記第2ステントを支持する第2支持部と、を有して、前記第1ステント及び前記第2ステントを体管腔内で独立して展開可能であり、
前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とするステント搬送デバイス。
(2)
前記第1ステントは、前記スリーブの遠位側又は近位側の少なくとも一方に接続された自然拡開可能であり生体管に係止可能な係止部を備える(1)に記載のステント搬送デバイス。
(3)
前記スリーブは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している拡径部を全周に亘って有する(1)又は(2)に記載のステント搬送デバイス。
(4)
前記第2ステントは、軸方向の近傍よりも自己拡開力の大きな付勢部を有し、
該付勢部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて体内に留置する留置状態において前記拡径部に対向する位置に設けられている(3)に記載のステント搬送デバイス。
(5)
前記拡径部は第1拡径部であり、
前記第2ステントは、軸方向の近傍よりも径方向外側に突出している第2拡径部を有し、
該第2拡径部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて体内に留置する留置状態において前記第1拡径部に対向する位置に設けられている(3)又は(4)に記載のステント搬送デバイス。
(6)
前記係止部は、複数のワイヤが交絡した網目を有しており、
前記係止部に接続された前記スリーブの端部は、前記係止部の前記網目に沿ってジグザグに形成されている(2)に記載のステント搬送デバイス。
(7)
前記第2ステントは、複数のワイヤが交絡した網目を有しており、
該網目は、目の小さい細目部と、目の大きな粗目部と、を有し、
前記細目部は、前記第2ステントを前記第1ステントの内部に配設させて前記体内に留置する留置状態において前記スリーブの前記端部に対向する位置に設けられており、
前記細目部の外径は、自然状態における前記スリーブの前記端部の内径よりも大径に形成されている(1)から(6)のいずれか一項に記載のステント搬送デバイス。
(8)
前記係止部は、前記スリーブの両端部に設けられており、
前記スリーブにおいて、前記係止部が設けられていない領域の軸心方向の長さは、前記係止部が設けられている領域の軸心方向の長さよりも長い(2)又は(6)に記載のステント搬送デバイス。
(9)
前記スリーブには、軸心方向に延在する捻転防止部が設けられている(1)から(8)のいずれか一項に記載のステント搬送デバイス。
(10)
前記第2ステントは、軸心方向中間部に軸心方向に延在する筒状部を有し、
該筒状部の長さは、前記スリーブの全長と同じ又はそれ以上の長さである(1)から(9)のいずれか一項に記載のステント搬送デバイス。
(11)
前記第2ステントは、軸心方向において複数部品に分かれて構成されている(1)から(10)のいずれか一項に記載のステント搬送デバイス。
(12)
前記第2ステントに、末端に向かうにつれて拡径するフレア部が設けられており、
前記フレア部の開口径は、前記第1ステントの開口径よりも大きい(1)から(11)のいずれか一項に記載のステント搬送デバイス。
(13)
前記第1ステントは、前記フレア部の拡径度よりも低い拡径度の末端部を有する(12)に記載のステント搬送デバイス。
(14)
前記第1ステントに、末端に向かうにつれて拡径する第1フレア部が設けられており、
前記フレア部は第2フレア部であり、
前記第2フレア部の軸心方向長さは、前記第1フレア部の軸心方向長さ以上である(12)又は(13)に記載のステント搬送デバイス。
(15)
前記第2フレア部は、前記複数部品のうち遠位端部にある部品に設けられている(14)に記載のステント搬送デバイス。
(16)
第1ステントと、第2ステントと、で構成されており、
前記第1ステントは、樹脂膜で形成されたスリーブを有し、
前記第2ステントにおける軸心方向の中間部の自己拡開力が、前記第1ステントの前記スリーブの自己拡開力よりも大きいことを特徴とするステントセット。
【符号の説明】
【0085】
1 ステント搬送デバイス
2 ステント
3 第1ステント
3a スリーブ
3b アンカー(係止部)
3c フレア部(第1フレア部)
3d 末端部
3e 接続部
4 第2ステント
4a 中間部
4b 筒状部
5 搬送用シース
6 インナーシース
6a 第1支持部
6b 第2支持部
6c 細径部
6d 太径部
7 アウターシース
8 第1ステント
8f 拡径部(第1拡径部)
8g 端部
9、11、13 第2ステント
9c 付勢部
9d 第2拡径部
10 捻転防止ワイヤ
12 先端チップ
14 第2ステント
14b 筒状部
14c フレア部(第2フレア部)
30 網目
30a 1列目
30b 2列目
40 網目
40a 細目部
40b、40c 粗目部
50 大動脈弓(体管腔、生体管)
55 大動脈瘤
S ステントセット