(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019118
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】試験測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20240201BHJP
【FI】
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122505
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/392,845
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/357,941
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・エヌ・プロニン
(72)【発明者】
【氏名】メアリー・アン・タプタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・アラン・シェトラー
(57)【要約】
【課題】MOSFETの特性を正確に測定する。
【解決手段】試験測定装置は、ユーザ・インタフェースと、MOSFETを含む被試験デバイスに接続するように構成された1つ以上のプローブと、1つ以上のプロセッサとを有し、1つ以上のプロセッサが、MOSFETの両端間で測定される目標電圧を設定し、MOSFETに強制電圧を印加し、MOSFETのドレイン電流及びドレイン電圧を1つ以上のプローブで測定し、測定されたドレイン電圧と目標電圧との差が閾値を満たすかどうかを判断し、その差が上記閾値を満たさない場合に、測定されたドレイン電圧、測定されたドレイン電流及び負荷抵抗を用いて、負荷抵抗を補償する新たな強制電圧値を決定し、強制電圧を上記新しい強制電圧の値に設定し、必要に応じて、印加するステップ、測定するステップ及び判断するステップを繰り返す処理を1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ・インタフェースと、
MOSFETを含む被試験デバイスに接続するように構成された1つ以上のプローブと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
上記MOSFETの両端間で測定される目標電圧を設定するステップと、
上記MOSFETに強制電圧を印加するステップと、
上記MOSFETのドレイン電流とドレイン電圧を1つ以上のプローブで測定するステップと、
測定されたドレイン電圧と上記目標電圧の差が閾値を満たしているかどうかを判断するステップと、
上記差が上記閾値を満たさない場合に、必要に応じて、測定されたドレイン電圧、測定されたドレイン電流及び負荷抵抗を使用して、該負荷抵抗を補償する新しい強制電圧値を決定し、上記強制電圧を上記新しい強制電圧値に設定し、上記印可するステップ、上記測定するステップ及び上記判断するステップを反復するステップと
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記差が上記閾値を満たすか否かを判断するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記差が許容誤差により小さいか否か判断するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせる請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項3】
上記1つ以上のプロセッサは、上記差が閾値を満たす場合に、新しい強制電圧値を決定するステップと、上記印可するステップ、上記測定するステップ及び上記判断するステップを反復するステップとを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項4】
上記1つ以上のプロセッサは、上記差が上記閾値を満たす場合に、上記MOSFETに対して上記強制電圧を使用するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項5】
上記測定されたドレイン電圧、上記測定されたドレイン電流及び上記負荷抵抗を使用して、該負荷抵抗を補償する新しい強制電圧値を決定するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、
上記強制電圧から上記測定されたドレイン電圧を差し引き、その結果を上記測定されたドレイン電流で割ることによって上記負荷抵抗を求めるステップと、
上記負荷抵抗と予想ドレイン電流の積を上記目標電圧の値に加算することによって上記新しい強制電圧値を決定するステップと
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項6】
上記1つ以上のプロセッサが、上記測定されたドレイン電流に、上記ドレイン電圧で割った上記強制電圧を乗じることによって、上記予想ドレイン電流を求めるステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項5に記載の試験測定装置。
【請求項7】
上記1つ以上のプロセッサは、上記ドレイン電圧及び上記ドレイン電流を少なくとも2回測定して、以前の測定値及び目下の測定値を生成するステップと、次いで、
上記強制電圧に上記以前の測定値及び上記目下の測定値の間のラインの傾きを乗算した積を求め、
上記ラインのy切片を上記積に加えることによって、上記予想ドレイン電流を計算するステップと
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項5に記載の試験測定装置。
【請求項8】
MOSFETを含む被試験デバイスの両端間で測定される目標電圧を設定する処理と、
上記MOSFETに強制電圧を印加する処理と、
上記MOSFETの少なくとも1つのドレイン電流及び少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理と、
測定されたドレイン電圧と上記目標電圧との差が閾値を満たすかどうかを判断する処理と、
上記差が上記閾値を満たさない場合に、
負荷抵抗を計算する処理と、
予想ドレイン電流を計算する処理と、
予想される負荷抵抗、予想ドレイン電流及び上記目標電圧を使用して、上記強制電圧の新しい電圧値を求める処理と、
上記差が上記閾値を満たすまで、上記設定する処理、上記印可する処理、上記測定する処理及び上記判断する処理を繰り返す処理と
を具える試験測定方法。
【請求項9】
上記差が上記閾値を満たすかどうかを判断する処理が、上記差が許容誤差よりも小さいか否かを判断する処理を含む請求項8に記載の試験測定方法。
【請求項10】
上記予想ドレイン電流を計算する処理は、上記少なくとも1つの測定されたドレイン電流に、上記少なくとも1つのドレイン電圧で割った上記強制電圧を乗じる処理を含む請求項8に記載の試験測定方法。
【請求項11】
少なくとも1つのドレイン電流及び少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理が、以前のドレイン電流及び目下のドレイン電流の2つのドレイン電流を測定する処理を含み、少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理が、以前のドレイン電圧及び目下のドレイン電圧の少なくとも2つのドレイン電圧を測定する処理を含む請求項8に記載の試験測定方法。
【請求項12】
上記予想ドレイン電流を計算する処理が、上記以前のドレイン電流及び上記以前のドレイン電圧の測定値と上記目下のドレイン電流及び上記目下のドレイン電圧の測定値との間のラインの傾きと上記強制電圧との積を求める処理と、上記ラインのy切片を上記積に加算する処理とを含む請求項11に記載の試験測定方法。
【請求項13】
上記ラインの傾きが、上記以前のドレイン電流の量から上記目下のドレイン電流を引いた量を、上記以前のドレイン電圧から上記目下のドレイン電圧を引いた量で割ったものに等しい請求項12に記載の試験測定方法。
【請求項14】
上記y切片が、上記以前のドレイン電流から上記強制電圧を引いたものに上記ラインの傾きを乗じたものに等しい請求項12に記載の試験測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置、より詳細には、電流-電圧(I-V)測定を行うための試験測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFETの電流-電圧(I-V)測定では、多くの場合、10Aを超えるような高いドレイン電流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ソース・メジャー・ユニット(SMU)」、ケースレー製品紹介サイト、テクトロニクス/ケースレー、[オンライン]、[2023年7月26日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/keithley/source-measure-units>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このドレイン電流を測定する場合、試験回路中の負荷抵抗が小さい場合でも、不要な大きな電圧降下が発生し、強制したドレイン電圧が減衰する可能性がある。これにより、測定されるドレイン電流が予想よりも小さくなり、誤った結果になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施形態は、負荷抵抗の両端間の電圧降下によるドレイン電圧の低下を補償する試験測定装置及び方法を含む。これら実施形態は、以前に測定されたドレイン電圧の値及び以前に測定されたドレイン電流の値を使用して、予想されるドレイン電流を決定する。これらの方法は、測定されたドレイン電圧が、デバイス両端間の目標の電圧と一致するまで、反復的して動作しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、負荷抵抗を示すパワー・モジュール回路を示す。
【
図2】
図2は、負荷抵抗を補償する実施形態で用いるパワーモジュール回路を示す。
【
図3】
図3は、線形特性を有する実施形態について、負荷抵抗がある場合と無い場合のId-Vd曲線のグラフを示す。
【
図4】
図4は、非線形特性を有する実施形態に対する負荷抵抗の影響を示すId-Vd曲線のグラフを示す。
【
図5】
図5は、反復する実施形態のId-Vd曲線のグラフを示す。
【
図6】
図6は、負荷補正なしで生成したId-Vd曲線のグラフを示す。
【
図7】
図7は、非線形特性を有する実施形態において負荷補正有りで生成したId-Vd曲線のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、
図1を参照して本願で定義されるいくつかのパラメータを使用する。
図1に示す構成では、測定対象のデバイス、即ち、被試験デバイス(DUT:device under test)は、「ロー・サイドMOSFET」のラベルが付いた下側のトランジスタである。Vdは、このデバイスのドレイン電圧で、Vtは、このデバイスの目標(target)のドレイン電圧である。Idは、ドレイン電圧がVtであるときのドレイン電流である。Vfは、強制電圧(forced voltage:印加電圧)であり、実施形態の方法は、負荷抵抗の両端間の電圧降下を補償するために、必要に応じて強制電圧を調整する。Vmは、測定されたドレイン電圧、Imは測定されたドレイン電流である。負荷抵抗は、様々な抵抗から構成される。これらには、RdsOn(上側MOSFETのドレイン・ソース間抵抗に等しい定数)、Rc(接点、リード線及びその他の回路抵抗を表す)及びRs(電流検出抵抗を表す)が含まれる。しかし、この検出抵抗が負荷抵抗に寄与することは比較的小さいため、その実効抵抗値は、RL=Rc+RdsOnになる。
【0009】
電圧源が、強制電圧Vfを強制したとする。デバイスの両端間で測定される電圧が、Vmである。理想的には、手順の完了後、デバイス両端間の測定電圧は、目標のドレイン電圧と等しい、つまり、Vm=Vtである必要がある。この状態では、測定されたドレイン電流(Im)は、Idとして返答(リターン)される。測定されたドレイン電流Imは、VfからLOに流れる。負荷抵抗RL((Rc+Rs+RdsOn)に等しい)の両端間に不要な電圧降下が発生し、これは、測定されるドレイン電圧Vmと測定されるドレイン電流Imを減少させる。
【0010】
望ましくない負荷抵抗と、これに続いて生じるドレイン電流とドレイン電圧の測定値の低下を補償するために、線形モデル法と期待値法という2つの類似する方法が開発されている。
【0011】
線形モデル法では、負荷とDUTの抵抗値は一定であると仮定されるが、これは、通常、MOSFETのId-Vd曲線の線形領域の場合である。この場合、RdsOnは、定数である。従って、パワーMOSFET回路は、
図2に示すようにモデル化できる。
【0012】
図3は、線形回路のId-Vd曲線を示し、負荷抵抗RLがあるのがライン12であり、負荷抵抗RLがないのがライン10である。Vfが強制されると、負荷抵抗の両端間の電圧降下のため、測定電圧Vmと測定電流Imは小さくなるであろう。Vf2は、負荷抵抗を補償し、ドレインにおいて必要な目標電圧Vtを与えるために必要な強制電圧の量である。点(Vm,Im)は、RLによって減少した測定電流と測定電圧を示す。点(Vt,Id)は、RLによる電圧降下のないドレイン電流とドレイン電圧を示す。(Vf2,Id)は、RLを補償するために電圧が増加し、測定されたドレイン電流Imが補償されたドレイン電流Idに等しい点を示す。
【0013】
強制電圧と、測定電流及び電圧から、負荷抵抗(RL)を次のように計算できる。
【数1】
Vf2は、線形法モデルで負荷補償に使用する強制電圧である。Vf2は、負荷抵抗RL、補償されたドレイン電流Id及び目標ドレイン電圧Vtから次のように決定できる。
[数2]
Vf2=Vt+(RL*Id)
この補償されたドレイン電流Idは、次のように、ドレイン電流がドレイン電圧に比例するグラフから求めることもできる。
【数3】
従って、
【数4】
ドレイン電流Im1とドレイン電圧Vm1の第1セットの測定後、補償に使用される強制電圧は次のようになる。
【数5】
【0014】
グラフ及び導出された式から、負荷抵抗を補正又は補償する方法の一実施形態は、次の通りである。
1.Vtを強制し、ImとVmを測定する。最初の反復処理では、Vtは、Vfと等価である。
2.VtとVmを比較する。もし|Vt-Vm|>許容誤差なら、手順3に進む。この差分が許容誤差より小さい場合には、十分な負荷の補償が達成されたので、プロセスを停止しても良い。
3.次の式を使用してRLを計算する。
【数6】
4.次のように、補償されたドレイン電流を計算する。
【数7】
5.次の式を使用して、強制する次の強制電圧値を計算する。
[数8]
Vf2=Vt+(RL*Id)
6.手順1においてVf2を強制電圧の次の値とし、反復する(繰り返す)。
【0015】
非線形デバイスでは、線形アプローチの仮定は必ずしも有効ではない。これらのタイプのデバイスの場合、期待値法は反復的なアプローチを使用して、目標ドレイン電圧Vtに対する正確なドレイン電流を予測する。この方法は、非線形デバイスに適している。
図4は、負荷抵抗がドレイン電流とドレイン電圧に及ぼす影響をグラフで示している。上の曲線20は、負荷(RL=0)無しのId-Vd依存性を示し、下の曲線22は、RLを原因とするドレイン電流の減少を示す。
【0016】
反復アプローチの各ステップで、電流Imと電圧Vmが測定され、次に、負荷抵抗(RL)、予想される電流Iexp、必要な強制電圧Vf及び目標電圧と測定電圧の差|Vt-Vm|が計算される。この計算は、最初は、最初の2つの測定値に依存し、その後、前の測定値から最新の測定値(本願では「目下の(instant:インスタント、その瞬間の)」測定値と呼ぶ)に依存する。これらの計算は、次のとおりである。
【数9】
[数10]
Iexp: Iexp=(a×Vf)+b
ここで、aは、ラインの傾きであり、各反復ステップの最初の2つの前の測定値から次のように計算される。
【数11】
bは、y切片であり、次のように計算される。
[数12]
b=Im1-aVf1
そして、
[数13]
Vf=Vt+(Iexp×RL)
【0017】
グラフ及び導出された式から、負荷抵抗を補正又は補償する方法のもう1つの実施形態は、一旦これらの値が計算されると、以下の手順を繰り返して、非線形デバイスにおけるRLを補正するために必要なId及び強制電圧を求めることができる。
1.強制電圧の目標値Vtを設定する。
2.ドレイン電圧Vmとドレイン電流Imを測定する。
3.RL、Iexp、Vf及び|Vt-Vm|を計算する。
4.|Vt-Vm|をプリセットされた精度の仕様と比較して、新たな反復処理が必要かどうかを判断する。
5.達成されない場合は、ステップ1において計算されたVfを用い、反復する(繰り返す)。
6.Idを返答(リターン)する。
【0018】
図5は、DUTの実際のId曲線上で、予想電流を収束させる処理を示す。この場合、目標電圧に達するには、生成を3回繰り返す必要があった。最後の反復処理では、測定値は、Vm3=VtとIm3=Idである。
【0019】
この例で実行した3つのステップを表1に示す。
【表1】
【0020】
実際の例は、期待値法を使用する利点を示している。
図6は、パワーMOSFETのドレイン電圧に対するドレイン電流(出力特性)を測定した場合の負荷抵抗の影響を示している。この例では、ゲート電圧の各ステップにおいて、目標ドレイン電圧を0から10Vまで掃引するように設定された。しかし、負荷抵抗のため、最大のドレイン電圧及びドレイン電流が低下していた。グラフに示されている負荷線の傾きは、1/RLである。
【0021】
図7は、同じパワーMOSFETについて、出力特性を生成する場合の期待値法を用いた場合の効果を示している。この場合、最大目標ドレイン電圧10Vが、ゲート電圧の各ステップにおいて測定されたことに注意されたい。
【0022】
要約すると、これら2つの方法は、以前に測定したドレイン電流及び電圧を使用して、測定されたドレイン電圧が目標電圧と一致するまで、負荷抵抗を補償する強制電圧の新しい値を求めるという類似する方法を使用する。2つの方法の違いは、Idの決定方法に基づいている。線形モデル法では、比率(ratio)の手法を使用し、期待値法では、反復アプローチにおける複数の測定値を使用する。
【0023】
これら実施形態の方法は、試験測定装置の処理能力によって実行される命令又はコード(プログラム)として実行されても良いことに留意すべきである。
図8は、測定装置の実施形態を示す。「試験測定装置」という用語は、オシロスコープ、ソース・メジャー・ユニット、マルチメータなど、DUTの試験測定に使用されるあらゆる種類の装置に適用される。
【0024】
図8は、これら実施形態の方法を実施するための試験測定装置50の一例のブロック図を示す。試験測定装置50は、プローブ又は接続部58を介してDUTからの信号を受信できる1つ以上の入力ポート52と、任意の電気信号伝達媒体であっても良い1つ以上の出力ポート54とを含む。ポート52、54は、レシーバ、トランスミッタやトランシーバを有していても良い。入力ポート52は、DUT、MOSFET、パワーMOSFET又は試験対象の他の物体などの接続されたデバイスから信号を受信するために使用される。出力ポート54は、デバイス又はDUTに印加される試験測定装置50から生成された信号を出力して搬送するために使用される。出力信号の例には、波形、定電流及び定電圧が含まれ、被試験デバイスに印可されても良い。各入力ポート52は、試験測定装置50の1つのチャンネルから構成されても良い。入力ポート52は、1つ以上の被試験デバイスからポート52で受信された信号や波形を処理するために、1つ以上のプロセッサ66と結合される。出力ポート54は、プロセッサ66又は適切な出力信号を生成する装置50内の他のコンポーネントに結合されても良い。
図8は、説明を簡単にするために、1つのプロセッサ66のみを示しているが、当業者には理解されるように、単一のプロセッサ66ではなく、様々なタイプの複数のプロセッサ66を組み合わせて使用しても良い。
【0025】
入力ポート52は、試験測定装置50内の測定ユニットにも接続できるが、説明を簡単にするためにここでは図示していない。このような測定ユニットは、入力ポート52を介して受信される信号の電圧、アンペア数、振幅などの特性を測定できる任意のコンポーネントを含むことができる。出力ポート54も、電圧源、電流源又は波形発生器など、試験測定装置50の様々なコンポーネントに接続することができるが、これらは、説明を簡単にするため、図示していない。試験測定装置50は、コンディショニング(調整)回路、更なる分析のために受信信号を波形に変換するアナログ・デジタル・コンバータその他の回路などの追加のハードウェアやプロセッサを含んでもよい。得られた波形は、次いで、メモリ60に記憶されても良いだけでなく、ディスプレイ62に表示されても良い。
【0026】
1つ以上のプロセッサ66は、本開示技術の実施形態に従って、メモリ60からの命令を実行するように構成されてもよく、また、結合されたデバイスに測定された値を表示するなど、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。メモリ60は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ又は任意の他のメモリ形式として実装されても良い。メモリ310は、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト及び他の命令を記憶するための媒体として機能する。
【0027】
ユーザ入力部64は、プロセッサ66に結合されてもよく、また、ユーザが利用可能なキーボード、マウス、トラックボールや他の任意の操作装置を含み、ディスプレイ62上のグラフィカル・ユーザ・インタフェースと連携して、ユーザからの入力を受ける。試験装置50のコンポーネントは、試験測定装置50内に統合されているものとして描かれているが、当業者であれば、これらのコンポーネントは、いずれも試験測定装置50の外部にあっても良く、従来の任意の方法で試験測定装置50に結合できることが理解できよう。
【0028】
このようにして、負荷線の抵抗を補償する実施形態が提供される。従来の負荷線の補償方法では、通常、適切な補償が見つかるまでに、更に多くの反復処理が必要である。本願の実施形態は、負荷効果を補償するのに、パルス/測定の反復処理が、もっと少なくてすむ。これら実施形態の計算は、以前の測定の情報に依存しており、各ステップにおける負荷線の抵抗のダイナミック(動的)な計算が可能になる。
【0029】
この手法がユニークで効率的なのは、ダイナミックなデバイス・モデルを構築し、前の反復処理のデータを使用して、次の反復処理を高速化することである。
【0030】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0031】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0032】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様との関連においても利用できる。
【0033】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0034】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
実施例
【0035】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0036】
実施例1は、試験測定装置であって、ユーザ・インタフェースと、MOSFETを含む被試験デバイスに接続するように構成された1つ以上のプローブと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、上記MOSFETの両端間で測定される目標電圧を設定するステップと、上記MOSFETに強制電圧を印加するステップと、上記MOSFETのドレイン電流とドレイン電圧を1つ以上のプローブで測定するステップと、測定されたドレイン電圧と上記目標電圧の差が閾値を満たしているかどうかを判断するステップと、上記差が上記閾値を満たさない場合に、必要に応じて、測定されたドレイン電圧、測定されたドレイン電流及び負荷抵抗を使用して、該負荷抵抗を補償する新しい強制電圧値を決定し、上記強制電圧を上記新しい強制電圧値に設定し、上記印可するステップ、上記測定するステップ及び上記判断するステップを反復するステップとを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0037】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記差が上記閾値を満たすか否かを判断するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記差が許容誤差により小さいか否か判断するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせる。
【0038】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記差が閾値を満たす場合に、新しい強制電圧値を決定するステップと、上記印可するステップ、上記測定するステップ及び上記判断するステップを反復するステップとを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0039】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記差が上記閾値を満たす場合に、上記MOSFETに対して上記強制電圧を使用するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0040】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定装置であって、上記測定されたドレイン電圧、上記測定されたドレイン電流及び上記負荷抵抗を使用して、該負荷抵抗を補償する新しい強制電圧値を決定するステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記強制電圧から上記測定されたドレイン電圧を差し引き、その結果を上記測定されたドレイン電流で割ることによって上記負荷抵抗を求めるステップと、上記負荷抵抗と予想ドレイン電流の積を上記目標電圧の値に加算することによって新しい強制電圧値を決定するステップとを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0041】
実施例6は、実施例5の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記測定されたドレイン電流に、上記ドレイン電圧で割った上記強制電圧を乗じることによって、上記予想ドレイン電流を求めるステップを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0042】
実施例7は、実施例5の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記ドレイン電圧及び上記ドレイン電流を少なくとも2回測定して、以前の測定値及び目下の測定値を生成するステップと、次いで、上記強制電圧に上記以前の測定値及び上記目下の測定値の間のラインの傾きを乗算した積を求め、上記ラインのy切片を上記積に加えることによって、上記予想ドレイン電流を計算するステップとを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0043】
実施例8は、方法であって、MOSFETを含む被試験デバイスの両端間で測定される目標電圧を設定する処理と、上記MOSFETに強制電圧を印加する処理と、上記MOSFETの少なくとも1つのドレイン電流及び少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理と、測定されたドレイン電圧と上記目標電圧との差が閾値を満たすかどうかを判断する処理と、上記差が上記閾値を満たさない場合に、負荷抵抗を計算する処理と、予想ドレイン電流を計算する処理と、予想される負荷抵抗、予想ドレイン電流及び上記目標電圧を使用して、強制電圧の新しい電圧値を求める処理と、上記差が上記閾値を満たすまで、上記設定する処理、上記印可する処理、上記測定する処理及び上記判断する処理を繰り返す処理とを具える。
【0044】
実施例9は、実施例8の方法であって、上記差が上記閾値を満たすかどうかを判断する処理が、上記差が許容誤差よりも小さいか否かを判断する処理を含む。
【0045】
実施例10は、実施例8又は9のいずれかの方法であって、上記予想ドレイン電流を計算する処理は、上記少なくとも1つの測定されたドレイン電流に、上記少なくとも1つのドレイン電圧で割った上記強制電圧を乗じる処理を含む。
【0046】
実施例11は、実施例8から10のいずれかの方法であって、少なくとも1つのドレイン電流及び少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理が、以前のドレイン電流及び目下の(インスタント)ドレイン電流の2つのドレイン電流を測定する処理を含み、少なくとも1つのドレイン電圧を測定する処理が、以前のドレイン電圧及び目下のドレイン電圧の少なくとも2つのドレイン電圧を測定する処理を含む。
【0047】
実施例12は、実施例11の方法であって、上記予想ドレイン電流を計算する処理が、上記以前のドレイン電流及び上記以前のドレイン電圧の測定値と上記目下のドレイン電流及び上記目下のドレイン電圧の測定値との間のラインの傾きと上記強制電圧との積を求める処理と、上記ラインのy切片を上記積に加算する処理とを含む。
【0048】
実施例13は、実施例12の方法であって、上記ラインの傾きが、以前のドレイン電流の量から目下のドレイン電流を引いた量を、以前のドレイン電圧から目下のドレイン電圧を引いた量で割ったものに等しい。
【0049】
実施例14は、実施例12の方法であって、上記y切片が、上記以前のドレイン電流から上記強制電圧を引いたものに上記ラインの傾きを乗じたものに等しい。
【0050】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0051】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0052】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0053】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0054】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0055】
50 試験測定装置
52 入力ポート
54 出力ポート
58 被試験デバイスへのプローブ又は接続
60 メモリ
62 ディスプレイ
64 ユーザ入力部
66 プロセッサ
【外国語明細書】