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特開2024-1912調味料用または酸乳製品用増粘剤、調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001912
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】調味料用または酸乳製品用増粘剤、調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/238 20160101AFI20231228BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20231228BHJP
   A23C 9/154 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L29/238
A23L29/269
A23L27/00 D
A23C9/154
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100774
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 洋
【テーマコード(参考)】
4B001
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001BC01
4B001BC07
4B001BC08
4B001DC01
4B001EC01
4B001EC04
4B041LC01
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH07
4B041LH16
4B041LK06
4B041LK11
4B041LK37
4B041LK50
4B041LP01
4B041LP16
4B047LB03
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF10
4B047LG24
4B047LG30
4B047LG37
4B047LG56
4B047LG65
4B047LG66
4B047LP05
4B047LP06
(57)【要約】
【課題】調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れている調味料用または酸乳製品用増粘剤、その調味料用または酸乳製品用増粘剤を含む調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法を提供する。
【解決手段】アマシードガムを含有する、調味料用または酸乳製品用増粘剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマシードガムを含有することを特徴とする調味料用または酸乳製品用増粘剤。
【請求項2】
請求項1の記載の調味料用または酸乳製品用増粘剤であって、
さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする調味料用または酸乳製品用増粘剤。
【請求項3】
アマシードガムを含有することを特徴とする調味料または酸乳製品。
【請求項4】
請求項3の記載の調味料または酸乳製品であって、
さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする調味料または酸乳製品。
【請求項5】
アマシードガムを用いることを特徴とする調味料または酸乳製品の作製方法。
【請求項6】
請求項5の記載の調味料または酸乳製品の作製方法であって、
さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする調味料または酸乳製品の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料用または酸乳製品用増粘剤、その調味料用または酸乳製品用増粘剤を含む調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシングやタレ等の調味料またはヨーグルト等の酸乳製品に粘性を付与したり、ゲル状態とすることを求められることがあり、このために増粘剤が用いられることがよくある。増粘剤として、食品添加物であるカロブビーンガム(別名ローカストガム)は世界中で増粘剤(タレ、ドレッシング等)、安定剤(ヨーグルト、冷菓)、ゲル化剤(ゼリー)として加工食品に使われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし近年、不作等の影響でカロブビーンガムの価格の高騰や供給不安が続き、業界では調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れている代替品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-048829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れている調味料用または酸乳製品用増粘剤、その調味料用または酸乳製品用増粘剤を含む調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アマシードガムを含有する、調味料用または酸乳製品用増粘剤である。
【0007】
前記調味料用または酸乳製品用増粘剤において、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0008】
本発明は、アマシードガムを含有する、調味料または酸乳製品である。
【0009】
前記調味料または酸乳製品において、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0010】
本発明は、アマシードガムを用いる、調味料または酸乳製品の作製方法である。
【0011】
前記調味料または酸乳製品の作製方法において、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れている調味料用または酸乳製品用増粘剤、その調味料用または酸乳製品用増粘剤を含む調味料または酸乳製品、および調味料または酸乳製品の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<調味料用または酸乳製品用増粘剤>
本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、アマシードガムを含有する増粘剤である。本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0015】
本発明者らは、カロブビーンガムとは原料由来が異なるアマシードガムを用いて検討した結果、調味料用または酸乳製品用増粘剤としてアマシードガムを用いることによって、調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れていることを見出した。また、本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、乳化力が高く、耐熱性にも優れ、カロブビーンガムに比べて少量で粘性付与の効果を発揮する。アマシードガムは、カロブビーンガムに比べて、供給量等の問題が少ない。
【0016】
アマシードガムは、アマ科アマ(Linum usitatissimum LINNE)の種子から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。アマシードガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0017】
キサンタンガムは、とうもろこしや大豆等を栄養分として微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が発酵する際に産生される天然の増粘多糖類であり、グルコース、マンノース、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。キサンタンガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0018】
グァーガムは、マメ科のグァー豆(Cyamopsis tetragonoloba)の種子の胚乳部から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。グァーガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0019】
タラガムは、マメ科のタラ豆(Tara spinosa)の種子の胚乳部から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。タラガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0020】
本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤において、キサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有する場合のキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つの含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して、1質量%~99質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~90質量%の範囲である。キサンタンガムの含有量がアマシードガム100質量%に対して1質量%未満であると、相乗効果が得られない場合があり、99質量%を超えても、相乗効果が得られない場合がある。
【0021】
本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、アマシードガム、キサンタンガム、グァーガム、タラガムの他に、澱粉、加工澱粉、寒天、カラギナン、ジェランガム、こんにゃく粉(芋)、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、アルギン酸エステル、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カラヤガム、プルラン、カードラン、トラガントガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、大豆水溶性多糖類、メチルセルロ-ス、ウェランガム、カシアガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、グァーガム酵素分解物、ファーセレラン、および発酵セルロース等の他の成分を含んでもよい。
【0022】
他の成分の含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して5質量%~95質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~90質量%の範囲である。
【0023】
本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、特に限定されず、例えば粉末の形態であってもよいし、粒状に造粒した顆粒の形態であってもよい。
【0024】
<調味料または酸乳製品>
本実施形態に係る調味料または酸乳製品は、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤を含有する調味料または酸乳製品であり、アマシードガムを含有する調味料または酸乳製品である。本実施形態に係る調味料または酸乳製品は、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0025】
調味料としては、料理等の調味に使用するものであればよく、特に制限はないが、例えば、ドレッシング、タレ、マヨネーズ風調味料、鍋の素、ジュレ状調味料等が挙げられる。本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、これらのうち、特にドレッシング、タレに好適に適用することができる。
【0026】
酸乳製品としては、牛乳や脱脂乳を乳酸菌により発酵させて得られる酸味を有する液状または半流動状の製品であればよく、特に制限はないが、例えば、ヨーグルト、チーズ、クリーム等が挙げられる。本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤は、これらのうち、特にヨーグルト、チーズ、クリームに好適に適用することができる。
【0027】
本実施形態に係る調味料または酸乳製品中のアマシードガムの含有量は、調味料または酸乳製品全体の質量に対して、例えば、0.05質量%~3質量%の範囲であり、好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲である。調味料または酸乳製品中のアマシードガムの含有量が、調味料または酸乳製品全体の質量に対して0.05質量%未満であると、増粘、安定の機能が得られない場合があり、3質量%を超えると、粘度が高過ぎて食品への利用に向かない場合がある。
【0028】
キサンタンガムを含有する場合の本実施形態に係る調味料または酸乳製品中のキサンタンガムの含有量は、調味料または酸乳製品全体の質量に対して、例えば、0.01質量%~1質量%の範囲であり、好ましくは0.05質量%~1質量%の範囲である。調味料または酸乳製品中のキサンタンガムの含有量が、調味料または酸乳製品全体の質量に対して0.01質量%未満であると、粘性、安定性が不十分な場合があり、1質量%を超えると、粘度が高過ぎて食品への利用に向かない場合がある。
【0029】
グァーガムまたはタラガムを含有する場合の本実施形態に係る調味料または酸乳製品中のグァーガムまたはタラガムのそれぞれの含有量は、調味料または酸乳製品全体の質量に対して、例えば、0.1質量%~1質量%の範囲であり、好ましくは0.2質量%~0.5質量%の範囲である。調味料または酸乳製品中のグァーガムまたはタラガムのそれぞれの含有量が、調味料または酸乳製品全体の質量に対して0.1質量%未満であると、粘性、安定性が不十分な場合があり、1質量%を超えると、粘度が高過ぎて食品への利用に向かない場合がある。
【0030】
本実施形態に係る調味料または酸乳製品は、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤の他に、一般的に調味料または酸乳製品に用いられる調味料用の素材または酸乳製品用の素材、調味料用の添加物または酸乳製品用の添加物等の他の成分を含んでもよい。
【0031】
調味料または酸乳製品中の他の成分の含有量は、各種調味料または各種酸乳製品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0032】
本実施形態に係る調味料または酸乳製品は、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤を含有することにより、適度な粘度が与えられ、口当りや臭いの面で優れている。また、本実施形態に係る調味料または酸乳製品は、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤を含有することにより、乳化力が高く、耐熱性にも優れ、カロブビーンガムに比べて少量で粘性付与の効果を発揮する。
【0033】
<調味料または酸乳製品の作製方法>
本実施形態に係る調味料または酸乳製品の作製方法は、アマシードガムを含有する調味料用または酸乳製品用増粘剤を用いる方法であり、アマシードガムを用いる方法である。本実施形態に係る調味料または酸乳製品の作製方法は、さらにキサンタンガム、グァーガム、およびタラガムのうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0034】
調味料または酸乳製品の作製方法は、各種調味料または各種酸乳製品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0035】
ドレッシングは、例えば、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤を一般的に用いられる水および油等に分散する方法により作製すればよい。また、ヨーグルトは、例えば、上記調味料用または酸乳製品用増粘剤を水に加え加熱後、50℃以下に冷却し、30℃以上の酸乳に加える方法により作製すればよい。
【0036】
本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤を調味料または酸乳製品に添加することにより、調味料または酸乳製品に適度な粘度が与えられ、口当りや臭いの面で優れている。また、本実施形態に係る調味料用または酸乳製品用増粘剤を調味料または酸乳製品に添加することにより、乳化力が高く、耐熱性にも優れ、カロブビーンガムに比べて少量で粘性付与の効果を発揮する。
【実施例0037】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1、比較例1,2、参考例1>
表1に示す配合比(質量%)で各材料を水に加え、85℃まで加熱した後、常温(20±2℃)まで冷却して混合液を調製した。混合液を調製してから20℃で2時間静置した後の粘度(mPa・s)を、B型粘度計(東機産業製、TV10M型)を用いて、20℃、各回転数で60秒、ローターは粘度に合わせ変更して測定した。
【0039】
また、同様にして混合液を調製し、20℃で2時間静置した後の口当りおよび臭いについて官能評価を行い、下記基準で評価した。官能評価は、パネラー8名による評価である。結果を表2に示す。
【0040】
[評価基準]
(口当り)
5:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)と同等
4:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)とほぼ同じ
3:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)に似ている
2:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)に近くない
1:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)と全く違う
(臭い)
5:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)と同等
4:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)とほぼ同じ
3:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)と若干臭いが異なる
2:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)よりやや異臭がする
1:カロブビーンガムを用いた場合(参考例1)より異臭がする
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
アマシードガムを使用した実施例1は、カロブビーンガムと同等で適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れていた。
【0044】
<実施例2~19、比較例3~5、参考例2,3>
表3、表4、表5に示す配合比(質量%)で各材料を水に加え、85℃まで加熱した後、常温(20±2℃)まで冷却して混合液を調製した。混合液を調製してから20℃で2時間静置した後の粘度(mPa・s)を、B型粘度計(東機産業製、TV10M型)を用いて、20℃、各回転数(6rpm、12rpm、30rpm、60rpm)で60秒、ローターは粘度に合わせ変更して測定した。6rpmの粘度/60rpmの粘度を「分散・のど越し指数」として示した。この「分散・のど越し指数」が大きければ大きいほど、分散性が優れ、のど越しがよいことを示す。結果を表3、表4、表5に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
「分散・のど越し指数」は、グァーガム単独、タラガム単独に比べて、アマシードガム単独であっても良好であったが、アマシードガムに、グァーガム、タラガム、キサンタンガムを併用しても良好であった。アマシードガムはたれ、ドレッシングに使用した際、ごま等の具材の分散安定性がカロブビーンガムより優れていながら、のど越しは良好であった。また、のど越しは、アマシードガム単独であっても良好であったが、グァーガム、タラガム、キサンタンガムと併用しても良好であった。これらを「分散・のど越し指数」として示すことができる。
【0049】
<実施例20、比較例6,7、参考例4>
表6に示す配合比(質量%)で各材料を水に加え、80℃まで加熱した後、常温(20±2℃)まで冷却して混合液を調製した。調製した混合液を、ミキサーで崩した市販のヨーグルトに加え、混合した。混合後、2時間冷蔵庫(5℃±1℃)で静置後、実施例1と同様にして、粘度(mPa・s)を測定した。
【0050】
また、実施例1と同様にして口当りおよび臭いについて官能評価を行い、上記基準で評価した。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
アマシードガムを使用した実施例20のヨーグルトは、カロブビーンガムと同等で適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れていた。
【0053】
以上のように、実施例によって、調味料または酸乳製品に適度な粘度を与え、口当りや臭いの面で優れている調味料用または酸乳製品用増粘剤を得ることができた。